第1 個人事業税とは
1 課税対象となる事業と弁護士業の区分
個人事業税は,都道府県内に事務所又は事業所を設けて,地方税法72条の2第3項が定める第一種事業,第二種事業又は第三種事業のいずれかを営む個人に課される都道府県税である。同条第8項は物品販売業,不動産貸付業,製造業等37業種を第一種事業と定め,第9項は畜産業,水産業,薪炭製造業の3業種を第二種事業と定め,第10項は医業,弁護士業,税理士業,公認会計士業等30業種を第三種事業と定めている。弁護士業は同項8号に掲げられており,第三種事業に区分される。
2 税率と事業主控除
個人事業税の額は,事業所得等から必要経費及び各種控除を差し引いた課税標準額に,事業区分ごとの税率を乗じて算出する(地方税法72条の49の17)。標準税率は,第一種事業が5%,第二種事業が4%であり,第三種事業も原則5%であるが,あん摩・マッサージ又は指圧,はり,きゅう,柔道整復その他の医業に類する事業及び装蹄師業に限り3%とされている。弁護士業は第三種事業のうち5%の対象業種であるから,弁護士は,事業所得の金額から事業主控除額290万円を控除した金額の5%を,個人事業税として納付することになる。
事業主控除額は,事業を行った期間が1年に満たない場合には月割りとなる(地方税法72条の49の14)。また,所得税の青色申告特別控除額は,個人事業税の課税標準の計算上考慮されないため,所得税の確定申告書に記載された事業所得の金額(青色申告特別控除後の金額)に青色申告特別控除額を加算した,いわば青色申告特別控除前の所得金額を基準に,事業主控除額290万円を超えるかどうかを判断することになる。個人事業税の対象業種一覧及び税率は,大阪府「個人事業税」のページ及び東京都主税局「個人事業税」のページにも一覧表の形で掲載されている。
第2 所得税の確定申告をしていれば個人事業税の申告は不要であること
個人事業税の納税義務者は,原則として,当該年度の初日の属する年の3月15日までに,前年中の事業の所得等を,事務所又は事業所所在地の都道府県税事務所(東京都の場合は都税事務所・支庁)に申告しなければならない(地方税法72条の55第1項)。もっとも,当該納税義務者が前年分の所得税の確定申告書又は個人住民税の申告書を提出した場合には,当該申告書が提出された日に個人事業税の申告があったものとみなされる(同法72条の55の2第1項)。この点について,東京都主税局「個人事業税」のページは次のとおり案内している。
個人で事業を営んでいる方は、毎年3月15日までに前年中の事業の所得などを、都税事務所(都税支所)・支庁に申告することになっています。ただし、所得税の確定申告や住民税の申告をした方は個人の事業税の申告をする必要はありません。この場合には、それぞれの申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記入してください。
なお、上記に関わらず年の中途で事業を廃止した場合は、所得税の確定申告や住民税の申告とは別に、廃止の日から1か月以内(死亡による廃止の場合は4か月以内)に個人の事業税の申告をしなければなりません。
したがって,所得税の確定申告又は住民税の申告を行っている個人事業主は,個人事業税について別途の申告書を提出する必要はなく,各申告書の「事業税に関する事項」欄に必要事項を記載すれば足りる。ただし,年の中途で事業を廃止した場合は,所得税の確定申告や住民税の申告とは別に,廃止の日から1か月以内(納税義務者の死亡による廃止の場合は4か月以内)に,個人事業税の申告をしなければならない点に注意を要する。
第3 個人事業税額の計算と納付後の扱い
1 事業主控除の月割額と自動計算ツール
事業を行った期間が1年に満たない場合の事業主控除額は,290万円に事業を行った月数を乗じて12で除した金額となり(地方税法72条の49の14第2項),1か月に満たない端数は1か月として計算する(同条第3項)。月数ごとの事業主控除額は,次のとおりである。
| 事業を行った月数 | 事業主控除額 |
|---|---|
| 1か月 | 242,000円 |
| 2か月 | 484,000円 |
| 3か月 | 725,000円 |
| 4か月 | 967,000円 |
| 5か月 | 1,209,000円 |
| 6か月 | 1,450,000円 |
| 7か月 | 1,692,000円 |
| 8か月 | 1,934,000円 |
| 9か月 | 2,175,000円 |
| 10か月 | 2,417,000円 |
| 11か月 | 2,659,000円 |
| 12か月 | 2,900,000円 |
課税所得の見込額から個人事業税の概算額を試算する場合には,自動計算サイトの「事業税の計算」のページを利用すると,業種区分ごとの税率を選択した上で簡便に試算できる。
2 納付した個人事業税は必要経費に算入できること
個人事業税は,賦課課税方式による地方税であり,納付した個人事業税は,所得税の計算上,事業所得の必要経費(租税公課)に算入することができる。国税庁の所得税基本通達37-6は,賦課課税方式による租税について,各納期の税額を,それぞれ納期の開始の日又は実際に納付した日のいずれかの属する年分の必要経費に算入することができると定めている。個人事業税の納税通知書は,所得税の確定申告からしばらく経った8月頃に送付されるため,前年に納付した個人事業税を,当年分の必要経費として計上し忘れる例が実務上見られるとの指摘もあり,申告の際には留意する必要がある。
出典
1 法令
2 文献
- 横田寛『弁護士・事務職員のための法律事務所の確定申告入門』(日本加除出版,2016年)110頁
3 ウェブ資料