目次
1 人身傷害補償保険の死亡保険金と税金
2 人身傷害補償保険の後遺障害保険金及び医療保険金と税金
3 関連記事その他
1 人身傷害補償保険の死亡保険金と税金
(1)ア 日本損害保険協会HPの「保険金と税金」によれば,人身傷害補償保険の死亡保険金のうち被保険者自身の過失部分だけが課税対象となります(平成11年10月18日付の国税庁法令解釈通達「人身傷害補償保険金に係る所得税、相続税及び贈与税の取扱い等について」参照)。
そして,被相続人が保険料を負担している場合は相続税となり,保険金受取人が保険料を負担している場合は所得税(一時所得)となり,第三者が保険料を負担している場合(例えば,父親が保険料を負担し,被保険者としての母親が死亡した場合において,子どもが保険金受取人となる場合)は贈与税となります。
イ リンク先の説明と異なり,搭乗者傷害保険の死亡保険金は定額の保険金給付であって損害をてん補する性質を有しません(最高裁平成7年1月30日判決)から,傷害保険の死亡保険金と同様にその全額が所得税(一時所得),相続税又は贈与税の課税対象になると思います。
(2) 死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません。)である場合、全ての相続人が受け取った保険金の合計額が次の算式によって計算した非課税限度額を超えるとき、その超える部分が相続税の課税対象になります(国税庁タックスアンサーの「No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金」参照)。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額
2 人身傷害補償保険の後遺障害保険金及び医療保険金と税金
心身に加えられた損害に起因して取得する保険金・共済金及び損害賠償金は非課税所得です(所得税法9条1項18号(令和3年度税制改正前の所得税法9条1項17号)及び所得税法施行令30条1号)。
そのため,人身傷害補償保険の後遺障害保険金及び医療保険金は,被保険者自身の過失部分についても非課税となります。
3 関連記事その他
(1)ア 最高裁令和4年3月24日判決は,被害者を被保険者とする人身傷害条項のある自動車保険契約を締結していた保険会社が,被害者との間でいわゆる人傷一括払合意をし,上記条項の適用対象となる事故によって生じた損害について被害者に対して金員を支払った後に自動車損害賠償責任保険から損害賠償額の支払を受けた場合において,被害者の加害者に対する損害賠償請求権の額から上記損害賠償額の支払金相当額を全額控除することはできないとされた事例です。
イ 最高裁令和5年10月16日判決は,人身傷害保険の保険会社が被害者の遺族に対して人身傷害保険金額に相当する額を支払った場合において,上記遺族の加害者に対する損害賠償請求権の額から上記の支払額を全額控除することはできないとされた事例です。
(2) 吐物(とぶつ)の誤嚥(ごえん)は,傷害保険普通保険約款において保険金の支払事由として定められた「外来の事故」に該当します(最高裁平成25年4月16日判決)。
(3)ア 生命保険契約に付加された災害割増特約における災害死亡保険金の支払事由を不慮の事故による死亡とする約款に基づき,保険者に対して災害死亡保険金の支払を請求する者は,発生した事故が偶発的な事故であることについて主張,立証すべき責任を負います(最高裁平成13年4月20日判決)。
イ 普通傷害保険契約における死亡保険金の支払事由を急激かつ偶然な外来の事故による死亡とする約款に基づき,保険者に対して死亡保険金の支払を請求する者は,発生した事故が偶然な事故であることについて主張,立証すべき責任を負います(最高裁平成13年4月20日判決)。
(4) 以下の記事も参照してください。
・ 車両保険
・ 相続事件に関するメモ書き