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所得税の確定申告に関するメモ書き(AIリライト)

第1 所得税の確定申告とは

1 確定申告の意義と復興特別所得税

所得税の確定申告とは,毎年1月1日から12月31日までの1年間に生じた全ての所得の金額とこれに対する所得税等の額を計算し,申告期限までに確定申告書を提出して,源泉徴収された税金や予定納税で納めた税金等との過不足を精算する手続である(国税庁「所得税の確定申告とは」)。平成25年分の所得税から,東日本大震災からの復興を図るための施策に必要な財源を確保するため,復興特別所得税(税率2.1%)が所得税と併せて課され,申告・納付することとされている。

令和8年分の復興特別所得税の税率は2.1%である。令和8年3月31日に公布された所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)により,令和9年分以後は,基準所得税額の1%を課す防衛特別所得税が創設されるとともに,復興特別所得税の税率は1.1%に引き下げられ,その課税期間は令和29年分まで延長される。これらは大綱段階の案ではなく,令和9年1月1日施行の成立済みの改正である(防衛財源確保法5条の5・5条の9,復興財源確保法9条・13条,国税庁「防衛特別所得税の創設及び復興特別所得税の税率等の見直しに関するQ&A」参照)。

2 実務で参照される解説サイト

青色申告決算書(一般用)の具体的な記入方法については,個人事業主向けの実務解説サイトである「個人事業主メモ」の「青色申告決算書(一般用)の書き方・記入例」が参考になる。

第2 確定申告の種類と申告期限

所得税の確定申告には,通常の確定申告のほか,納税者が年の中途で死亡し,又は出国した場合の準確定申告があり,それぞれ申告期限が異なる。

1 確定申告(所得税法120条1項)

通常の確定申告は,その年の翌年の2月16日から3月15日までの間に行う必要がある(所得税法120条1項)。

2 死亡による準確定申告(所得税法124条・125条)

納税者が年の中途で死亡し,その年分について確定申告義務がある場合,その相続人は,相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月を経過した日の前日までに,被相続人のその年分の所得税について準確定申告をしなければならない(所得税法125条1項)。同法124条1項は,前年分の確定申告義務がある者が,翌年1月1日から申告期限までの間に申告をしないで死亡した場合について,相続人による前年分の申告を定める規定である。還付を受けるための死亡年分の申告は,同法125条2項に定められている。

死亡による準確定申告の要否,4か月の期限,必要書類,e-Tax及び相続税との関係については,準確定申告-4か月の期限・必要書類・書き方・e-Taxと相続税(AI作成)を参照されたい。

3 出国による準確定申告(所得税法126条・127条)

納税者が年の中途で出国する場合,その年1月1日から出国の時までの所得について確定申告義務があるときは,その出国の時までに準確定申告をしなければならない(所得税法127条1項)。ここでいう居住者の「出国」は,納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいい,単なる海外旅行等を意味しない(同法2条1項42号)。納税管理人の届出をしている場合には,この出国前申告の規定は適用されない。

対象資産,納税管理人と納税猶予の確認順序は,海外移住・海外在住者への贈与と相続で問題となる国外転出時課税―対象資産,納税管理人と納税猶予で説明している。

4 申告手続に関する国税庁・国税局の運用

平成31年4月1日以降に確定申告書を提出する場合,給与所得等の源泉徴収票の添付又は提示は不要となった(国税庁「平成31年4月1日以後の申告書の提出の際、源泉徴収票等の添付が不要となりました」)。申告書の様式・記載要領は,国税庁の法令解釈通達(「個人課税事務提要(様式編 Ⅰ)」の制定について(平成12年11月15日付の国税庁長官の法令解釈通達))に定められている。

また,令和7年1月から,税務署に紙で提出した申告書等の控えへの収受日付印の押なつが廃止された(国税庁「令和7年1月からの申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」)。この見直しに関連する大阪国税局・国税庁内部の実施留意事項として,令和3年分の確定申告書(案)の国税庁ホームページへの掲載について(令和3年7月9日付の国税庁個人課税課課長補佐の事務連絡),確定申告期における申告書等の収受に関する取扱いについて(令和5年1月20日付の大阪国税局長の指示),令和5年分確定申告期における事務実施上の留意事項について(令和5年12月12日付の大阪国税局長の指示),申告書等の控えへの収受受付印の押なつの見直しに係る納税者への周知等について(令和5年12月18日付の国税庁長官の指示)の各内部文書を掲載している。これらの内部文書は,収受日付印の押なつに関する当時の運用経緯を示す資料である。ただし,現行の手続を確認するときは,e-Gov法令検索並びに国税庁及びe-Taxの現行ページを優先する必要がある。また,当サイトに掲載したファイルは内容自体を確認できるものの,原本との同一性及び取得経緯を国税庁の公式サイト上で独立に確認できたわけではない。

収受日付印廃止後に残すべき提出証拠,申告書等情報取得サービス,申告書等閲覧サービス並びに弁護士代理・相続人による閲覧については,収受日付印廃止後の申告書提出証明と申告書等閲覧サービス-弁護士代理・相続人・e-Tax(AI作成)で詳しく整理している。

令和5年12月12日付けの大阪国税局長の指示の全体(確定申告会場の運営,申告相談,還付審査及び照会文書)については,確定申告期の税務署の事務運営-令和5年分の大阪国税局長指示に見る申告相談・還付審査・照会文書(AI作成)で整理している。

第3 所得控除の種類及び限度額

所得控除は,納税者の個人的な事情を所得税の計算に反映させる制度であり,令和7年度税制改正(令和7年12月1日施行,原則として令和7年分以後の所得税に適用)により,基礎控除・給与所得控除の見直し,特定親族特別控除の創設,扶養親族等の所得要件の引上げという3本柱の大きな改正が行われた(国税庁「令和7年度税制改正(基礎控除の見直し等関係)Q&A」)。 さらに,令和8年度税制改正による基礎控除等の見直しは,原則として令和8年12月1日に施行され,令和8年分以後に適用される。以下の表は令和8年分・令和9年分の年税額計算を対象とし,令和8年中の月次の源泉徴収計算とは区別する(国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」参照)。

1 所得控除一覧

主な所得控除の対象・要件と令和8年分・令和9年分の控除額は,次のとおりである。

控除の種類対象・要件控除額(令和8年分・令和9年分)
社会保険料控除健康保険・国民年金・厚生年金保険・船員保険の保険料,国民健康保険の保険料又は国民健康保険税,介護保険料,雇用保険の被保険者として負担する労働保険料,国民年金基金の掛金等を支払った場合その年に支払った全額
小規模企業共済等掛金控除小規模企業共済,個人型確定拠出年金(iDeCo),企業型確定拠出年金(企業型DC)又は心身障害者扶養共済の掛金を支払った場合その年に支払った全額
生命保険料控除平成24年以後に締結した保険契約につき,生命保険料,介護医療保険料又は個人年金保険料を支払った場合各4万円が限度(合計12万円が限度)※1
地震保険料控除民間の保険会社に一定の地震保険料を支払った場合5万円が限度
寡婦控除夫と死別して再婚していないか夫の生死が明らかでない場合,又は夫と離婚して再婚せず扶養親族を有する場合で,ひとり親に該当せず,合計所得金額が500万円以下,事実婚相当の相手がいない等の要件を満たす場合27万円
ひとり親控除現に婚姻をしていない者等で,生計を一にする子(総所得金額等62万円以下)があり,本人の合計所得金額が500万円以下の場合※2令和8年分35万円,令和9年分38万円
勤労学生控除給与所得等がある学生等で,合計所得金額が89万円以下で,自己の勤労によらない所得が10万円以下の場合※227万円
障害者控除納税者や控除対象親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合原則27万円(特別障害者40万円,同居特別障害者75万円)
配偶者控除合計所得金額62万円以下の控除対象配偶者がいる場合(本人の合計所得金額1000万円以下)※2本人の合計所得金額900万円以下は原則38万円(老人控除対象配偶者48万円),900万円超は逓減
配偶者特別控除配偶者の合計所得金額が62万円を超え133万円以下で,配偶者控除の適用がない場合(本人の合計所得金額1000万円以下)※2最高38万円(本人及び配偶者の所得金額に応じ逓減)
扶養控除合計所得金額62万円以下の控除対象扶養親族がいる場合※2原則38万円(特定扶養親族63万円,老人扶養親族48万円又は58万円)
特定親族特別控除(令和7年分新設)生計を一にする19歳以上23歳未満の親族(配偶者及び一定の事業専従者を除く)で,合計所得金額が62万円を超え123万円以下の場合最高63万円(所得金額に応じ逓減)
基礎控除合計所得金額2500万円以下の納税者2(1)を参照
雑損控除災害や盗難等によって損害を受けた場合損失額に応じて算定
医療費控除一定額を超える医療費を支払った場合3を参照
寄附金控除寄付をした場合(ふるさと納税を含む)特定寄附金の額から2000円を控除した額

※1 令和8年分・令和9年分は,23歳未満の扶養親族を有する場合,新生命保険料に係る一般生命保険料控除の限度額が6万円となる(租税特別措置法41条の15の5)。新個人年金保険料控除及び介護医療保険料控除の限度額は各4万円であり,生命保険料控除全体の合計限度額は12万円のままである。旧契約がある場合は,新旧契約の組合せに応じた計算を確認する。

※2 令和7年度税制改正により,扶養親族・同一生計配偶者・配偶者特別控除の対象配偶者・勤労学生・ひとり親の生計を一にする子について,それぞれの所得要件が引き上げられた(令和7年12月1日施行,令和7年分以後の所得税に適用)。改正前は,配偶者控除の対象となる配偶者及び扶養控除の対象となる扶養親族の合計所得要件は48万円以下,勤労学生の合計所得要件は75万円以下であった。令和8年度改正後の要件及び控除額は,上表及び次の2を参照。

雑損控除,医療費控除及び寄附金控除の適用を受けるためには,確定申告をする必要がある。また,控除額の目安をつかむための実務解説として,個人事業主向けサイトの「所得控除の一覧表【まとめ】個人事業主・会社員の所得控除」,及び「マネージャーナル」の「ひとり親控除と寡婦控除の違いを徹底解説!あなたはどちらに該当する?」がある。

2 令和7年度・令和8年度税制改正による主要な変更点

(1) 基礎控除の時限的な引上げ

基礎控除(所得税法86条)は,合計所得金額に応じて改正された。令和8年分及び令和9年分は,租税特別措置法41条の16の2の上乗せを含め,合計所得金額489万円以下は104万円,489万円超655万円以下は67万円,655万円超2350万円以下は62万円となる。合計所得金額が2350万円を超える部分(2350万円超2400万円以下48万円,2400万円超2450万円以下32万円,2450万円超2500万円以下16万円,2500万円超0円)は変わらない。給与所得控除の最低保障額は,令和7年分の65万円から,令和8年分・令和9年分は74万円となる(同法29条の4)。これらの見直しは,原則として令和8年12月1日施行で,令和8年分以後の年税額計算に適用される。

(2) 特定親族特別控除の創設

特定親族特別控除(所得税法84条の2)は,令和7年度税制改正で新設された控除であり,居住者と生計を一にする19歳以上23歳未満の親族(配偶者及び一定の事業専従者を除く)で,令和8年分以後は合計所得金額が62万円を超え123万円以下(給与収入のみの場合,令和8年分・令和9年分は136万円超197万円以下)である場合に,その所得金額に応じて最高63万円を控除するものである。この年齢層の親族は,従来の扶養控除では,合計所得金額が48万円(給与収入103万円)を超えると特定扶養親族としての控除(63万円)が一気に失われる仕組みであったため,特定親族特別控除の創設により,控除が段階的に逓減する仕組みへと改められた(国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」及び令和7年度改正Q&A1-5)。

(3) 扶養親族等の所得要件の引上げ

扶養親族及び同一生計配偶者の合計所得要件は,令和7年分に48万円以下から58万円以下へ,令和8年分以後は62万円以下へ引き上げられた。勤労学生の合計所得要件は令和8年分以後89万円以下となるが,自己の勤労によらない所得が10万円以下という要件も満たす必要がある。ひとり親と生計を一にする子の総所得金額等の要件も令和8年分以後62万円以下となる。ひとり親控除の控除額は令和8年分35万円,令和9年分以後38万円である(所得税法2条・81条,国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等について」参照)。

配偶者特別控除についても,対象となる配偶者の合計所得要件が連動して引き上げられており,令和8年分以後は,配偶者の合計所得金額が62万円を超え(給与収入のみの場合,令和8年分・令和9年分は136万円を超え)133万円以下の場合に適用される。

3 医療費控除,雑損控除及び寄附金控除は確定申告が必要

医療費控除は,自己又は生計を一にする配偶者その他の親族の医療費を自ら一定以上支払った場合の控除であり,原則として,実際に支払った医療費の合計額から,保険金等による補填額及び10万円を控除した額が控除額となる。その年の総所得金額等が200万円未満の場合は,総所得金額等の5%の金額を超えれば医療費控除を受けることができる。控除額の上限は200万円である。保険金等の補填額は,その給付の対象となった医療費を限度に差し引き,余りを他の医療費から差し引かない(所得税法73条,国税庁「医療費を支払ったとき(医療費控除)」参照)。

この基準について,X(旧ツイッター)上の実務者からは,「1年間の医療費が10万円超(所得200万円未満の人は所得の5%)なら,確定申告で所得税・住民税が安くなる。一緒に生活する家族が,病院・薬局で払った費用はまとめられる。別居していても,両親や子どもに毎月仕送りをしていれば対象になり得る」という説明がされている。

また,市販薬の購入費用を対象とするセルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は,令和4年度税制改正により,適用期限が令和8年12月31日まで延長されている。医療費控除とセルフメディケーション税制はいずれか一方の選択適用であり,通常の医療費控除の方が高額になる場合も多いため,実際に適用を受ける際にはいずれが有利かを試算する必要がある。

医療費控除の対象範囲については,近視及び乱視矯正用の眼鏡及びコンタクトレンズの購入費用並びにその購入に当たり医師がした検眼費用が医療費控除の対象にならないとしてされた所得税更正処分を適法とした東京高裁平成2年6月28日判決(平成1(行コ)第73号)がある。同判決は,治療を目的としない眼鏡等の購入費用は,治療に直接必要な費用とは認められないとの理解に立つものである。

雑損控除は,災害,盗難又は横領によって,本人又は生計を一にする一定の親族が所有する資産に損害を受けた場合の控除である(所得税法72条)。もっとも,別荘や,1個又は1組の価額が30万円を超える貴金属・書画・骨とう等の「生活に通常必要でない資産」の損失は雑損控除の対象から除かれ,損失を受けた年分又はその翌年分の譲渡所得の金額の計算上控除すべき金額とみなされるにとどまる(同法62条1項)。自家用車がこれに当たるかは保有目的や使用状況によって分かれる。その年の所得から控除しきれない雑損失の金額は,原則として翌年以後3年間繰り越すことができ(同法71条),災害による住宅や家財の損害では,災害減免法による所得税の軽減免除と有利な方を選ぶことができる。詳しくは,災害で自家用車や家財が損害を受けたときの所得税―雑損控除,「生活に通常必要でない資産」及び災害減免法の選択(AI作成)を参照されたい。

4 所得区分に関する留意点

雑所得の収入が20万円以下であれば,一律に所得税の確定申告が不要となるわけではない。例えば,給与収入が2000万円以下で,1か所から受ける給与の全部が源泉徴収の対象となり,給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下である場合には,確定申告を要しないことがある(所得税法121条1項1号)。この20万円は収入総額ではなく,必要経費等を反映した所得金額で判定する。同族会社の役員等がその会社から賃貸料等を受ける場合などの例外にも注意が必要である。

医療費控除等のために確定申告をする場合には,この制度で申告を省略できた所得も含めて申告する必要がある。所得自体が非課税になる制度ではなく,住民税の申告の要否は別に確認する(国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」及び「確定申告を要しない場合の意義」参照)。

所得区分に関しては,競馬の馬券の払戻金の所得区分も実務上しばしば問題となる。最高裁平成29年12月15日判決(平成28年(行ヒ)第303号,民集71巻10号2235頁)が示した判断枠組みの下では,馬券の払戻金は,一定の要件を満たす場合に例外的に雑所得となることがあるものの,通常は一時所得に区分される(国税庁「競馬の馬券の払戻金に係る課税について」)。一時所得と雑所得とでは,外れ馬券の購入費用を必要経費に算入できるかどうかが異なるため,区分の違いは税額に直結する。

第4 株式譲渡益課税制度

1 特定口座と確定申告の要否

国税庁ホームページの「株式譲渡益課税制度」には,「個人の方が上場株式等を保有・譲渡した場合の金融・証券税制について(令和元年10月)」等が掲載されている。源泉徴収ありの特定口座を利用している場合,上場株式等の譲渡損失に係る損益通算及び繰越控除の適用を受けようとする場合を除き,上場株式等の譲渡所得について確定申告をする必要はない。

2 上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除

上場株式等に係る譲渡損失の金額を翌年以後3年間にわたって繰り越すためには,その年分の確定申告をしておく必要がある(国税庁「令和7年分確定申告特集」)。この繰越控除は,特定口座(源泉徴収あり)を選択している場合であっても,確定申告をしなければ適用を受けることができない点に注意を要する。

3 上場株式等の配当・譲渡所得に係る個人住民税の課税方式

平成29年度税制改正により,上場株式等の配当所得等及び譲渡所得等について,所得税と個人住民税とで異なる課税方式(申告不要制度・総合課税・申告分離課税)を選択できることが一時期明確化されていた。しかし,令和4年度税制改正により,令和6年度分の個人住民税(令和5年分の所得)から,この選択制度は廃止されている。すなわち,令和6年度分以後の個人住民税では,上場株式等の配当所得等・譲渡所得等の課税方式は,所得税の確定申告における選択と一致させることとされ,所得税と住民税とで異なる方式を選ぶことはできない(姫路市「上場株式の譲渡所得及び配当所得の課税方式の選択(令和6年度以降廃止)」,柏市「上場株式等の所得に関する国税と異なる課税方式の選択」)。確定申告において上場株式等の配当所得等・譲渡所得等を申告した場合,その所得は住民税の合計所得金額にも算入されるため,国民健康保険料や各種所得制限の判定に影響し得る点にも留意する必要がある。

この影響は国民健康保険料に限られない。75歳以上が加入する後期高齢者医療制度でも,保険料の所得割額と窓口負担割合の判定が市町村民税の課税所得を基礎としているため,申告するかどうかで負担が変わる。令和8年法律第31号による改正でこの取扱いが見直された経緯を含め,「確定申告しない金融所得と後期高齢者医療の保険料」で扱っている。

4 新NISAとの関係

令和6年(2024年)1月からは,非課税保有期間が無期限化され,制度が恒久化された新NISAが開始されている。新NISA口座内で生じた譲渡益及び配当は,日本国内の所得税及び住民税が非課税とされるため,原則として確定申告は不要である。ただし,新NISA口座で生じた譲渡損失は税務上ないものとみなされ,特定口座(課税口座)で生じた譲渡益と損益通算することはできない点に注意を要する。

第5 外国税額控除

1 制度の仕組みと日米租税条約

日米租税条約による配当の限度税率は,日本国籍を有することだけで決まるものではない。日本の条約上の居住者である受益者が通常の米国株式配当を受ける場合には,一般に10%の限度税率が問題となるが,米国市民・居住者の扱い,配当の種類及び所定の届出も確認する。
居住地,米国での納税者資格及び条約の適用条件を確認せず,「日本人なら配当10%・譲渡益は日本だけ」と一般化してはならない。根拠は日米租税条約1条・4条・10条等である。

所得税法95条の外国税額控除は,外国で課された税を無条件に全額返す制度ではない。所得税の控除限度額は,その年分の所得税額に,調整国外所得金額が所得総額に占める割合を乗じて計算する。
控除限度超過額又は控除余裕額は,所定の要件により前年以前3年以内の額と調整する仕組みがある。租税条約の限度税率を超えた税額や,日本で非課税となるNISAの配当等に係る外国所得税は,そのまま控除対象に加えることはできない。

外国税額控除に関する明細書,国外所得の計算資料,外国税を課されたことを証する書類及び過年度の繰越資料をそろえる。控除を申告し忘れた場合も,確定申告書・修正申告書又は更正請求書による適用要件と期限を確認する。
詳細は,国税庁No.1240「居住者に係る外国税額控除」及び米国株の配当金にかかる二重課税を解消し,税金の還付を受ける方法を参照されたい。

2 外国税額控除に関する明細書の書き方

明細書の作成では,外国税を課した国,所得の種類,所得計算の期間,外国税の額及び納付に関する資料をそろえ,その年の様式の欄に対応させる。円換算前の通貨・金額と換算後の金額を区別し,国外所得と外国税との対応が追えるようにする。
複数の証券会社又は国の取引がある場合も,明細を保存せずに外国税額だけを合算することは避ける。条約の限度税率超過額,NISAの配当等に係る税及び過年度繰越額を分けて,控除対象と当年の計算を確認する必要がある。

証券会社の記載例は入力の参考になるが,適用要件の根拠は所得税法95条及び国税庁No.1240等で確認する。電子申告で書類の提出省略が認められる場合も,その範囲と保存・提示の要件を確認すべきである。

3 投資信託等の分配時調整外国税相当額控除

令和2年1月1日以後の一定の分配金について,公募投資信託等の段階で課された外国税を,国内で徴収する所得税等から所定の範囲で調整する制度がある。対象となる国内の投資信託・ETF等の分配時の調整と,投資家自身が申告する所得税法95条の外国税額控除は,異なる仕組みである。
ETFという名称だけで自動調整の対象とは判断できず,国内の商品か外国籍ETFか,商品の税法上の区分,口座及び分配金の明細を確認する。外国籍ETFや個別の外国株式について,同じ調整が自動的に行われると説明してはならない。

調整には対象税額・国内税額の限度があり,外国税を必ず全額回収できるわけではない。NISAでは国内の所得税が非課税であるため,同じ分配時調整や外国税額控除による回収を期待してはならない。
国内上場商品に関する対象範囲と商品別の資料は,日本取引所グループ「証券税制・二重課税調整(外国税額控除)について」で確認する。外国株式の配当について確定申告をする際は,税額だけでなく住民税・保険料等への影響も比較する必要がある。

第6 所得税等の計算サイト

「所得税・住民税簡易計算機」には,「税金計算機(生命保険料控除、医療費控除、扶養控除、ふるさと納税対応)」が掲載されている。これらの簡易計算ツールは,確定申告書の作成に先立って概算の税額を把握する際の目安として利用できる。

第7 白色申告者の記帳義務等

1 記帳義務・帳簿等保存義務の拡大(平成24年度改正)

平成24年度の税制改正により,平成26年分以降の所得税の確定申告では,事業所得,不動産所得又は山林所得のある白色申告対象者は,収入の金額にかかわらず,記帳義務及び帳簿等保存義務を負うこととなった(マネーフォワードクラウド確定申告「白色申告の帳簿のつけ方や保存義務についてわかりやすく解説!」)。

2 収支内訳書の添付等が必要となる場合(令和2年度改正)

令和2年度の税制改正により,令和4年分以降の所得税の確定申告では,2年前の雑所得の収入金額が1000万円を超える場合は確定申告書に収支内訳書を添付する必要があり,2年前の雑所得の収入金額が300万円を超える場合は,現金預金取引等関係書類を保存する必要がある(国税庁「タックスアンサーNo.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」)。

3 電子帳簿保存法による電子取引データ保存の義務化

これらの記帳・保存義務とは別に,電子帳簿保存法上の電子取引データ保存義務が,令和6年(2024年)1月から全面的に適用されている。電子メールやウェブサイトを通じて授受した請求書・領収書等の電子取引データは,紙に印刷して保存するのではなく,タイムスタンプの付与や訂正削除履歴の残るシステムでの保存等,一定の要件を満たした電子データのまま保存することが義務付けられた。この義務は,青色申告者に限らず,事業所得等を有する白色申告者にも及ぶため,第7の1及び2の記帳・帳簿等保存義務とあわせて対応を要する。

第8 その他の関連資料・判例

1 法人税の青色申告承認取消処分に関する最高裁令和6年判決

所得税の確定申告そのものとは異なる場面であるが,法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については,その処分により制限を受ける権利利益の内容・性質等に照らし,その相手方に事前に防御の機会が与えられなかったからといって,憲法31条の法意に反するものとはいえないと判断した最高裁令和6年5月7日判決(令和5年(行ツ)第334号,最高裁判所第三小法廷,原審福岡高等裁判所)がある。青色申告の承認取消しに関する行政手続上の権利保障の限界を示した判例として参考になる。

2 関連記事

個人事業主の税金,労働保険及び社会保険の全体像については,「個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き」も参照されたい。

弁護士登録初年度に給与と弁護士報酬が併存する場合は,弁護士登録初年度の確定申告-給与・弁護士報酬・源泉徴収票・必要経費(AI作成)を参照されたい。

弁護士が個人事業として独立開業する場合の届出及び消費税・インボイスは,弁護士の独立開業時の税務手続-開業届・青色申告・消費税・インボイス(AI作成)を参照されたい。

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3 参考書籍

弁護士の確定申告実務に関する定番の解説書として,天賀谷茂・呉尚哲・熊澤直・名取勝也・吉川達夫(著者代表)『自分で進める 弁護士のための確定申告と税務 弁理士・司法書士対応』(第一法規)がある。

令和7年度税制改正による基礎控除・給与所得控除・特定親族特別控除の実務上の影響を,世帯構成別の計算例まで踏み込んで解説した書籍として,中島孝一・西野道之助・轟智明(共著)『令和7年度税制改正 基礎控除・給与所得控除・特定親族特別控除等の実務』(日本法令,令和7年8月)がある。

出典

法令・条約

裁判例

公文書

①国税庁「令和8年度税制改正による所得税の基礎控除の引上げ等に関するQ&A」(令和8年5月1日,所管行政機関の解説)
②国税庁「防衛特別所得税の創設及び復興特別所得税の税率等の見直しに関するQ&A」(令和8年5月1日,所管行政機関の解説)
③国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」及び「確定申告を要しない場合の意義」(タックスアンサー,所管行政機関の解説)

文献

  • 天賀谷茂・呉尚哲・熊澤直・名取勝也・吉川達夫(著者代表)『自分で進める 弁護士のための確定申告と税務 弁理士・司法書士対応』第一法規(発売の告知は令和4年12月確認)
  • 中島孝一・西野道之助・轟智明(共著)『令和7年度税制改正 基礎控除・給与所得控除・特定親族特別控除等の実務』日本法令,令和7年8月(弁護士ドットコムライブラリーで目次及び概要を確認)

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