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相続税の障害者控除―対象となる相続人,特別障害者の範囲,85歳までの年数の計算,扶養義務者からの控除及び所得税との違い(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 本記事の対象と基準日

本記事は,相続人に障害者がいる場合に相続税額から差し引かれる障害者控除(相続税法19条の4)について,対象となる人,障害者と特別障害者の範囲,控除額の計算,控除しきれない額の扱い及び所得税の障害者控除との違いを,条文,政令,通達及び国税庁の公表資料に基づいて整理するものであり,AIを用いて作成した。
法令は令和8年9月17日時点でe-Gov法令検索に掲載されている現行条文により,通達及び国税庁の資料は同日に国税庁ウェブサイトで確認した内容による。
計算例は,条文の定めに当てはめた本記事の試算であり,国税庁が示した例ではない。

2 結論の要旨

相続税の障害者控除は,一定の要件を満たす障害者である相続人の相続税額から,85歳に達するまでの年数に応じた金額を差し引く制度である。
①控除額は,85歳に達するまでの年数1年につき10万円,特別障害者であれば20万円であり,1年未満の端数は1年に切り上げる。
②対象は,相続又は遺贈で財産を取得した時に日本国内に住所がある人に限られ,放棄がなかったものとした場合の法定相続人でなければならない。
③成年被後見人のように精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある人は,特別障害者に当たる。
④本人の相続税額から引き切れない控除額は,その人の扶養義務者の相続税額から差し引く。
⑤「常に就床を要し、複雑な介護を要する者」は,所得税では認定がなくても特別障害者とされるが,相続税では市町村長等の認定を受けていることが要件となるため,所得税で障害者控除を受けていたことだけで相続税の要件を満たすとは限らない。

第2 障害者控除の仕組み

1 条文と控除額

(1) 相続税法19条の4第1項

相続税法19条の4第1項は,「相続又は遺贈により財産を取得した者(第一条の三第一項第二号から第四号までの規定に該当する者を除く。)が当該相続又は遺贈に係る被相続人の前条第一項に規定する相続人に該当し、かつ、障害者である場合には、その者については、第十五条から前条までの規定により算出した金額から十万円(その者が特別障害者である場合には、二十万円)にその者が八十五歳に達するまでの年数(当該年数が一年未満であるとき、又はこれに一年未満の端数があるときは、これを一年とする。)を乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。」と定めている。
国税庁の「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」は,年数を「相続開始の日からその人が満85歳に達するまでの年数」と説明している。

(2) 控除の順序

条文は,相続税法15条から19条の3までの規定により算出した金額から障害者控除額を差し引くとしている。
19条の2は配偶者に対する相続税額の軽減,19条の3は未成年者控除であるから,障害者控除は,これらの規定を適用した後の各人の相続税額から差し引くことになる。
配偶者の税額軽減の計算方法は,相続税における配偶者の税額の軽減で説明している。

2 障害者と特別障害者の定義

相続税法19条の4第2項は,障害者を「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者、失明者その他の精神又は身体に障害がある者で政令で定めるもの」とし,特別障害者を「同項の障害者のうち精神又は身体に重度の障害がある者で政令で定めるもの」としている。
これを受けた相続税法施行令4条の4は,所得税法施行令10条の障害者及び特別障害者の範囲を大部分でそのまま引用しつつ,後記第5で述べる点で異なる定めを置いている。

第3 控除を受けられる人

1 財産を取得した時に日本国内に住所がある人

障害者控除の条文は,相続税法1条の3第1項2号から4号までに該当する者を除いている。
そのため,控除を受けられるのは,同項1号に当たる者,すなわち相続又は遺贈により財産を取得した時に日本国内に住所を有する者に限られる。
国税庁のタックスアンサーも,対象者を「相続や遺贈で財産を取得したときに日本国内に住所がある人(一時居住者で、かつ、被相続人が外国人被相続人または非居住被相続人である場合を除きます。)」としている。
これに対し,未成年者控除の条文(相続税法19条の3第1項)が除いているのは同項3号及び4号だけであり,日本国内に住所がない無制限納税義務者も対象になる点で,障害者控除とは範囲が異なる。

2 法定相続人であること

(1) 「相続人」の意味

障害者控除の条文は,対象者を被相続人の「前条第一項に規定する相続人」としており,相続税法19条の3第1項は,これを「民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)」と定めている。
したがって,遺言で財産を受けた人でも,法定相続人でない人は障害者控除を受けられない。

(2) 相続放棄をした人

相続を放棄した人でも,遺贈や生命保険金のようなみなし遺贈によって財産を取得していれば,「相続又は遺贈により財産を取得した者」に当たり,放棄がなかったものとした場合の相続人にも当たるから,条文の文言上は対象になると読める。
国税庁のタックスアンサーも,要件を「相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人(相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人)であること」としている。
もっとも,未成年者控除については,相続放棄をした場合にも適用があることを明示した相続税法基本通達19の3-1があるのに対し,障害者控除について同じことを明示した通達は置かれていない。
相続放棄によって何も取得しなかった人は,そもそも「相続又は遺贈により財産を取得した者」に当たらない。

3 財産を取得した時に障害者であること

国税庁のタックスアンサーは,要件の一つを「相続や遺贈で財産を取得したときに障害者である人」としている。
手帳の交付を受けていない場合の取扱いを定めた相続税法基本通達19の4-3も,「相続開始の時の現況」によって障害の程度を判断するとしている。
所得税の障害者控除が原則としてその年12月31日の現況で判定する(所得税法85条1項)のとは,判定の時点が異なる。

第4 障害者・特別障害者の範囲

1 一般障害者

相続税法基本通達19の4-1は,特別障害者以外の障害者(一般障害者)として,次の者を掲げている。
①児童相談所,知的障害者更生相談所,精神保健福祉センター又は精神保健指定医の判定により知的障害者とされた者のうち,重度の知的障害者とされた者以外の者
②精神障害者保健福祉手帳に障害等級が2級又は3級である者として記載されている者
③身体障害者手帳に身体上の障害の程度が3級から6級までである者として記載されている者
④戦傷病者手帳に一定の程度の障害がある者として記載されている者
⑤常に就床を要し,複雑な介護を要する者のうち,障害の程度が知的障害者又は身体障害者に準ずるものとして市町村長又は特別区の区長(以下「市町村長等」という。)の認定を受けている者
⑥精神又は身体に障害のある65歳以上の者で,障害の程度が知的障害者又は身体障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者

2 特別障害者

相続税法基本通達19の4-2は,特別障害者として,次の者を掲げている。
①精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者又は重度の知的障害者と判定された者
②精神障害者保健福祉手帳に障害等級が1級である者として記載されている者
③身体障害者手帳に身体上の障害の程度が1級又は2級である者として記載されている者
④戦傷病者手帳に恩給法別表第一号表の二の特別項症から第三項症までである者として記載されている者
⑤原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律11条1項の規定による厚生労働大臣の認定を受けている者
⑥常に就床を要し,複雑な介護を要する者のうち,障害の程度が重度の知的障害者又は1級・2級の身体障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者
⑦精神又は身体に障害のある65歳以上の者で,障害の程度が同様に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者

3 手帳の交付を受けていない場合

相続税法基本通達19の4-3は,相続開始の時に精神障害者保健福祉手帳,身体障害者手帳又は戦傷病者手帳の交付を受けていない者でも,次の二つの要件をいずれも満たせば,手帳に対応する一般障害者又は特別障害者に該当するものとして取り扱うとしている。
①相続税の申告書を提出する時に,手帳の交付を受けていること又は交付を申請中であること
②手帳の交付を受けるための医師の診断書等により,相続開始の時の現況において,明らかに手帳に記載される程度の障害があると認められること
そのため,相続開始後に初めて手帳を申請する場合でも,申告書の提出時までに申請しておけば,この取扱いを受ける余地がある。

4 成年被後見人

東京国税局の文書回答事例(平成26年3月14日回答)は,成年被後見人の相続税における障害者控除について,照会者の見解を「貴見のとおりで差し支えありません。」と回答している。
照会者の見解は,成年被後見人は,所得税法施行令10条2項1号の「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」に該当するから,相続税法施行令4条の4第2項1号により,相続税の障害者控除の対象となる特別障害者に該当するというものであり,後見開始の審判の事実は登記事項証明書で確認できるとしている。
なお,同事例の照会文に記載された控除額は平成26年当時の金額であり,現行の1年当たり10万円(特別障害者は20万円)とは異なる。
相続人の中に判断能力を欠く人がいる場合の遺産分割の進め方は,相続人に認知症・精神障害等で判断能力を欠く人がいる場合の遺産分割で説明している。

5 要介護認定だけでは対象にならない

国税庁は,所得税の障害者控除について,「介護保険法の要介護認定を受けられただけでは障害者控除の対象とはなりません。」と説明し,65歳以上で市町村長等の認定を受けた場合など,対象となる範囲に当たる場合に控除の対象となるとしている。
相続税の障害者の範囲も,相続税法施行令4条の4が所得税法施行令10条の列挙を引用する形で定めており,要介護認定そのものは列挙されていないから,同様に,要介護認定を受けているだけでは相続税の障害者控除の対象にならないと考えられる。
要介護状態の相続人については,市町村長等による障害者控除対象者の認定を受けているかを確認することになる。

第5 所得税の障害者控除との違い

1 常に就床を要し,複雑な介護を要する者

所得税法施行令10条は,1項6号で「常に就床を要し、複雑な介護を要する者」を障害者とし,2項5号でこの者を特別障害者としている。
これに対し,相続税法施行令4条の4は,この者を,障害の程度が知的障害者又は身体障害者に準ずるものとして市町村長等の認定を受けている者に限って障害者とし(1項2号),重度の障害に準ずる認定を受けている者に限って特別障害者としている(2項3号)。

項目所得税相続税
常に就床を要し,複雑な介護を要する者認定がなくても特別障害者市町村長等の認定を受けている場合に限り障害者又は特別障害者
判定の時点原則としてその年12月31日の現況相続や遺贈で財産を取得した時
手帳の交付を受けていない場合の取扱い身体障害者手帳・戦傷病者手帳について通達あり精神障害者保健福祉手帳を含む3種について通達あり

2 所得税で障害者控除を受けていたことの意味

確定申告書で本人又は配偶者・扶養親族について障害者控除を受けていたことは,障害者に当たる根拠資料を探す手掛かりになる。
しかし,前記のとおり,常に就床を要する者の扱いと判定の時点が所得税と相続税とで異なるから,所得税で控除を受けていたことだけで相続税の要件を満たすとはいえない。
相続税の申告では,手帳の写し,市町村長等の認定書,後見開始の審判の登記事項証明書など,相続開始の時に障害者であったことを示す資料で確認する必要がある。

第6 控除額の計算

1 本人の控除額

(1) 計算方法

控除額は,10万円(特別障害者は20万円)に,相続開始の日から満85歳に達するまでの年数を乗じた金額である。
年数に1年未満の端数があるときは,1年に切り上げる(相続税法19条の4第1項括弧書)。

(2) 計算例

次の例は,条文に当てはめた本記事の試算である。
①相続開始の時に40歳3か月の一般障害者の場合,85歳までは44年9か月であり,端数を切り上げて45年となるから,控除額は10万円×45年=450万円となる。
②相続開始の時に70歳6か月の特別障害者の場合,85歳までは14年6か月であり,15年となるから,控除額は20万円×15年=300万円となる。

2 引き切れない額は扶養義務者から控除する

(1) 扶養義務者の相続税額からの控除

障害者控除額が本人の相続税額を超える場合,超える部分の金額は,その障害者の扶養義務者が同じ被相続人から相続又は遺贈により取得した財産に係る相続税額から控除する(相続税法19条の4第3項,19条の3第2項)。
例えば,前記①の人の相続税額が100万円であれば,本人の納付すべき相続税額は0円となり,残りの350万円を扶養義務者の相続税額から差し引く(本記事の試算)。

(2) 扶養義務者の範囲と複数いる場合の配分

扶養義務者とは,配偶者及び民法877条に規定する親族をいい(相続税法1条の2第1号),相続税法基本通達1の2-1は,三親等内の親族で生計を一にする者も家庭裁判所の審判がなくても扶養義務者として取り扱うとしている。
控除を受けられる扶養義務者が2人以上いるときは,全員の協議により各人の控除額を定めて申告書に記載した場合はその金額により,それ以外の場合は各人の相続税額に応じて按分する(相続税法施行令4条の4第3項,4条の3)。

3 過去の相続で障害者控除を受けていた場合

(1) 控除額の制限

障害者が以前の相続でも障害者控除を受けていた場合,今回控除を受けられる金額は,既に控除を受けた金額の合計額が最初の相続の時に控除を受けることができた金額に満たなかった部分に限られる(相続税法19条の4第3項,19条の3第3項)。
前の相続と今回の相続とで一般障害者と特別障害者の区分が異なる場合の計算は,相続税法施行令4条の4第4項が定めている。

(2) 前回は一般障害者,今回は特別障害者の場合

相続税法基本通達19の4-4は,前の相続で一般障害者として控除を受けた人が今回は特別障害者である場合の算式を「{20万円×(85-Y)+10万円×(Y-X)}-A」と示している。
Xは前の相続開始時の年齢,Yは今回の相続開始時の年齢,Aは前の相続で控除を受けた障害者控除額である。
前の相続から今回の相続までの期間に相当する年数に1年未満の端数があるときは,1年とする(相続税法基本通達19の4-5)。

第7 申告と遺産分割の実務

1 申告で確認する資料

国税庁の「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」は,障害者控除について申告書第6表等を参照するよう案内し,過去に障害者控除を受けた人の控除額や障害の程度が変わった場合の控除額は「税務署にお尋ねください。」としている。
実務上は,相続人ごとに,①相続開始の時の住所,②法定相続人に当たるか,③相続開始の時の障害の程度を示す資料(手帳,市町村長等の認定書,後見登記の登記事項証明書等),④生年月日から計算した85歳までの年数,⑤過去の相続での控除の有無を一覧にしておくことが考えられる。

2 遺産分割との関係

障害者控除は,控除を受ける相続人本人の相続税額から先に差し引き,引き切れない額を扶養義務者の相続税額から差し引く仕組みである。
そのため,控除額を使い切れるかどうかは,障害者本人やその扶養義務者がどれだけの財産を取得し,どれだけの相続税額が算出されるかによって変わる。
遺産分割の内容を決める際には,相続税の総額だけでなく,障害者控除と配偶者の税額軽減を各相続人に当てはめた後の納付税額を,税理士の試算で確認しておくことが考えられる。

第8 出典

1 法令

相続税法1条の2第1号,1条の3第1項,19条の2,19条の3及び19条の4。
相続税法施行令4条の3及び4条の4。
所得税法85条1項。
所得税法施行令10条。

2 通達

①相続税法基本通達19の3-1,19の4-1~19の4-5
②相続税法基本通達1の2-1

3 国税庁の解説・文書回答

①国税庁タックスアンサー「障害者の税額控除」及び同タックスアンサーの対象者の範囲の説明
②国税庁タックスアンサー「市町村長等の障害者認定と介護保険法の要介護認定について」。
③国税庁「相続税の申告のしかた(令和7年分用)」。
④東京国税局文書回答事例「成年被後見人の相続税における障害者控除の適用について」(平成26年3月14日回答)及び照会の別紙