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最高裁家庭局第二課長書簡「成年後見人等の選任及び報酬付与の在り方」(平成31年1月24日)の内容と現在の運用(AI作成)

第1 この記事の対象

本記事は,最高裁判所事務総局家庭局第二課長が平成31年1月24日付けで高等裁判所事務局長及び家庭裁判所事務局長に宛てた書簡の内容を,本文と別添ごとに整理するものである。
この書簡の写し(全61頁)は,本ブログに成年後見人等の選任及び報酬付与の在り方に関する文書(平成31年1月24日付の最高裁判所家庭局第二課長の書簡)として掲載している。
書簡自体には表題が付いておらず,「成年後見人等の選任及び報酬付与の在り方」は,本文が扱う二つの事項を示す名称として本ブログが付けたものである。

書簡は,後見人等の選任の考え方と報酬付与の在り方について,最高裁判所と専門職団体との議論の到達点を各家庭裁判所へ伝えたものであり,その後の運用改善の出発点となった。
他方で,書簡から7年以上が経過し,報酬の決め方は書簡の案どおりには進まなかった。
そこで本記事は,書簡の内容を紹介した上で,令和8年9月18日現在の公表資料により,現在の運用と同じ点と違う点を確認する。
生成AIを用いて書簡の全頁と関係資料を通読し,本文の記載を原資料と照合して構成した。

第2 書簡の位置付けと構成

1 本文が述べていること

(1) 選任と専門職の役割は「概ね共有」された

書簡の本文によれば,最高裁判所家庭局は,日本弁護士連合会,日本司法書士会連合会,公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート及び公益社団法人日本社会福祉士会(以下「専門職団体」という。)との間で,成年後見制度利用促進基本計画を踏まえた後見人等の選任と専門職に期待する役割等について議論を重ねてきた。
その結果について,本文は,「後見人等の選任及び専門職に期待する役割についてその基本的な考え方が概ね共有されました」と述べ,その内容を別添1-1から1-3までに示している。
その上で本文は,各家庭裁判所に対し,専門職団体の単位会等との間で,後見人等の選任及び専門職に期待する役割について認識の共有に向けた協議を行うよう求めている。

(2) 報酬は最高裁の案に対する意見の段階にとどまった

報酬付与の在り方について,本文は,家庭局が作成した資料(別添1-4・1-5)に対して専門職団体から意見(別添2-1から2-4まで)が示された段階であるとしている。
本文は,「各家庭裁判所が後見事務の内容に応じた報酬の付与という基本的な方向性に基づいて検討をしていくことについて専門職団体の理解を得られた」とする一方で,具体的な後見事務の評価,評価の対象となる事務の内容や負担,その前提となる報告事務の在り方については様々な意見が示されているとし,各家庭裁判所に対して地域の実情を踏まえた意見交換等を求めている。
つまり,選任については考え方の共有まで進んだが,報酬については方向性の理解を得た段階にとどまっていたことが,書簡の本文から読み取れる。

2 別添の構成

書簡の記に掲げられた別添は,次のとおりである。
①別添1-1 基本計画を踏まえた裁判所における後見人等の選任イメージ
②別添1-2 「基本計画を踏まえた裁判所における後見人等の選任イメージ」の補足説明
③別添1-3 専門職の関与を必要とする事案と専門職に期待する役割
④別添1-4 新たな報酬算定基準検討のための参考資料
⑤別添1-5 「新たな報酬算定基準検討のための参考資料」の補足説明
⑥別添2-1 最高裁判所の後見人報酬に係る提案について(日本弁護士連合会作成)
⑦別添2-2 「新たな報酬算定基準検討のための参考資料」に関する意見(日本司法書士会連合会作成)
⑧別添2-3 最高裁判所「新たな報酬算定基準検討のための参考資料」及びその補足説明並びに「新たな後見報酬算定に向けた考え方(案)」に対する意見書(公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート作成)
⑨別添2-4 「新たな報酬算定基準検討のための参考資料」(補足説明含む)への意見(公益社団法人日本社会福祉士会作成)

別添1が最高裁判所家庭局の作成した資料であり,別添2は専門職団体がそれぞれ作成した意見書である。
別添2の内容は各団体の見解であり,最高裁判所の考え方ではない。

第3 後見人等の選任イメージ(別添1-1・1-2)

1 検討の順序

(1) 親族等の候補者を選任してよいか

別添1-1は,後見開始の申立てがされた事案について,家庭裁判所が後見人等を選ぶ際の検討の順序を図で示している。
まず,本人のニーズ・課題を確認するとともに,親族等の後見人候補者がいるかどうかを確認する。
候補者がいる場合は,親族間の対立など,親族等の候補者を選任することが相当でない事情があるかを検討する。
この検討では,本人の意向や,候補者と本人の従前の関係等も考慮するとされている。

(2) 選任の形態を振り分ける

選任が相当でない事情がない場合は,課題の専門性,候補者の能力・適性及び不正行為防止の必要性に照らして,親族等の候補者が本人のニーズ・課題に対応できるかを検討する。
対応できると判断された場合も,中核機関等による継続的な支援があるかどうかによって,選任の形態が分かれる。
図が示す選任の形態は,次の4つである。
①専門職後見人を単独で選任し,又は専門職後見人と親族等後見人を選任する
②親族等後見人と専門職後見監督人を選任する
③親族等後見人を選任する
④専門職後見人を選任する(親族等の候補者がいない場合)
いずれの形態でも,ニーズ・課題の状況,親族等後見人の状況,支援の有無及び不正行為防止の必要性などに照らして,選任形態等を定期的に見直すことが図の最後に置かれている。

2 選任イメージの性格と注記

(1) 過渡期の検討過程を示す図である

別添1-2は,選任イメージについて,「中核機関等による親族等後見人の支援が十分に機能するまでの過渡期における,家庭裁判所での後見人等選任の検討過程をイメージとして図示したもの」であると説明している。
また,選任イメージは「家庭裁判所と専門職団体との間で共通認識を形成する目的で作成したもの」であり,中核機関等における候補者のマッチングの検討過程を示したものではないとしている。
法令や規則ではなく,中核機関の整備が進むまでの暫定的な整理であることが,補足説明自体に書かれている。

(2) 「親族等」と「能力・適性」の意味

補足説明の注2は,「親族等」を,専門職以外の者で本人にとって身近な支援者と定義し,本人をよく知り支えてゆく意欲と能力のある人であれば,親族に限らず近隣の知人なども候補者になり得ると考えられるとしている。
注3は,研修を受けた市民が候補者の場合には,市町村の研修の内容,研修終了者の経験・実績及び支援態勢等も考慮し,法人が候補者の場合には,法人の性質,実績及び本人との利害関係の有無等も考慮して判断することになると考えられるとしている。
注4は,候補者の「能力」を後見事務を処理する能力,「適性」を本人の意思の尊重や権利擁護の理念を理解し関係機関と連携して本人の利益のために後見事務を行うことができる資質と説明している。

3 中核機関の支援が期待できない場合の運用

補足説明の注5は,過渡期には,家庭裁判所が審判の時点で本人のニーズ・課題や候補者の能力・適性を的確に把握することが困難な場合もあると考えられるとしている。
その上で,候補者が中核機関等の支援があれば一応対応できると判断されるのに,継続的な支援が期待できないときは,親族等後見人に加えて専門職後見監督人を選任し,監督人が監督事務を通じて確認した結果に基づいて専門職関与の要否や選任の形態を見直すという運用を行うことが考えられるとしている。
親族を後見人に選んだ上で専門職の監督人を付け,後で見直すという運用は,この注5に由来する。
後見監督人の職務と責任については,後見監督人とは――選任基準,職務,責任及び令和8年改正による制度再編で扱っている。

第4 専門職の関与が必要な事案と期待される役割(別添1-3)

1 専門職を後見人に選任する事案

(1) 親族等を選任することが相当でない事案

別添1-3は,親族等の候補者を選任することが相当でない事情がある事案として,次の4つを挙げている。
①本人が親族等から虐待を受けている事案
②本人が親族等の候補者を選任することに反対しており,他に適切な候補者がいない事案
③親族間に対立があり,親族等の候補者を選任した場合にトラブルが予想される事案(候補者の選任に反対する親族がいる場合を含む。)
④前任の後見人による不正が発覚した事案
これらの事案で専門職に期待される役割として,本人と虐待者の隔離,本人財産の保護,本人意思の尊重,後見事務処理の中立性・透明性の確保,親族の意見についての必要な調整,前任者の不正内容の調査及び報告が挙げられている。

(2) 専門性の高い課題がある事案

財産管理面では,継続的に法律上の専門的な対応が必要とされる課題がある事案と,訴訟,債務整理等が予定されているなど一時的に法律上の専門的な対応が必要とされる課題がある事案が挙げられている。
後者については,「将来的には個別受任による効果的な関与が考えられる」との注記があり,一時的な法律問題のために専門職を後見人として選任し続けることを必ずしも前提としていない。
身上監護面では,本人の障害特性に配慮した対応が必要となる事案と,施設・病院からの地域移行などで随時の柔軟な対応が必要な事案が挙げられ,福祉的知見を活かした本人対応と課題解決が期待されている。

2 専門職を監督人に選任する事案

専門職を監督人として選任する事案として,別添1-3は,中核機関等による後見人支援機能が不十分である事案と,不正行為防止の必要性が高い事案を挙げている。
後者の例として,財産が多額・複雑で後見制度支援信託等を利用しない事案と,本人と後見人候補者との間に利害関係がある事案が示されている。
監督人に期待される役割は,報告書,財産目録及び収支予定表等の作成支援,課題の洗い出しと対応策の助言・指導,並びに不正行為防止である。

第5 新たな報酬算定基準の参考資料(別添1-4・1-5)

1 たたき台としての位置付けと基本的な考え方

別添1-5は,別添1-4の参考資料について,「各家庭裁判所において新たな報酬算定基準の策定に向けた検討を行うための議論のたたき台として作成したものであり,各家庭裁判所における運用の指針ではない」と明記している。
その上で,新たな報酬算定基準では,各後見事務に対応する標準的な報酬額(標準額)を定め,報酬の加減要素がある場合には裁判官の裁量により標準額から加算・減額することを想定しているとしている。
リーガルサポートの意見書(別添2-3)によれば,最高裁判所が同じ時期に示した「新たな後見報酬算定に向けた考え方(案)」は,後見事務の内容を問わずに一定の報酬額を付与する「基本報酬」という考え方と,財産額を基準に報酬を算定する考え方を採用しない方向を示していた。

2 事務の時期区分と基本的事務・付加的事務

参考資料は,後見開始から終了までを,①就任時から初回報告まで,②初回報告後から終了まで,③終了時の3つの時期に分け,それぞれの主要な後見事務を「基本的」事務と「付加的」事務に分けて列挙している。
基本的事務は後見人が全ての事案において行う事務であり,付加的事務は必要に応じて行う事務である。
基本的事務には,財産目録の作成,収支予定表の作成,本人の心身・生活状況の把握,定期報告,本人死亡後の債務の弁済,管理計算及び財産の引継ぎ等が含まれる。
付加的事務には,後見制度支援信託・支援預金の契約,不動産の任意売却・賃貸管理,相続手続,訴訟外示談,債務整理,遺産分割協議,訴訟,調停・審判,保険金請求,確定申告,年金・生活保護・介護保険等の各種申請,医療契約,住宅の増改築契約,転居(入居先の選定・入居契約を含む。),火葬・埋葬の契約,葬儀契約,相続人調査,相続財産管理人選任申立て等が含まれる。
後見制度支援信託等の利用を検討した結果として契約を締結しなかった場合にも,付加的事務として報酬を付与することが考えられるとされている。
参考資料の冒頭には,専門職後見人と親族後見人を複数選任した場合には,各後見人の役割及び行った事務の内容を考慮して報酬を按分することを想定している旨の注記がある。

3 報酬の加減要素

(1) 業者等への委託

補足説明は,保険金請求や確定申告手続のように,後見人自身が行うことが想定される事務を業者等に委託した場合には,委託が報酬の減額要素となると考えられるとしている。
これに対し,不動産の任意売却,賃貸不動産の管理及び不動産登記手続のように,業者等に委託するのが一般的な事務を後見人自身が行った場合には,報酬の加算要素となると考えられるとしている。
委託先の選定や契約締結等の事務を行った場合には,その点を付加的事務として評価することが考えられるともされている。

(2) 困難な事案と加算

参考資料は,財産調査困難,本人・親族等の意向調整困難,維持管理困難,売却困難,紛争複雑・調整困難,引継困難及び特定困難を加算要素として挙げている。
これについて補足説明は,「単に困難な事案であることだけが加算要素となるのではなく,困難な事案に適切に対処したことが加算要素となる」としている。
報酬を求める側から見れば,困難であった事情と,それにどう対処したかの両方を示す必要があることになる。

(3) その他の加減要素

補足説明は,多数の預貯金口座を一つにまとめた場合にはその事務を加算要素と評価することも考えられ,新規に支援者ネットワークを構築した場合には報酬を加算することを想定しているとしている。
本人の求めに応じて頻繁な面会や電話対応など特別な対応を行った場合も,加算要素となり得ると考えられるとしている。
他方で,火葬や埋葬の契約について,後見人と本人が親子関係にある場合など,通常は親族としてこれらの契約を行う身分関係にあるときは,報酬の減額要素となり得ると考えられるとしている。
報告書の提出の遅延や添付書類の不足も,減額要素の例として挙げられている。

4 報告の在り方

補足説明は,基本的事務に対応する報酬については,定期報告の書式を改定した上で報告内容に基づいて算定し,付加的事務に対応する報酬については,後見人が実際に行った付加的事務の内容を報酬付与申立書に記載させ,それに基づいて算定するという方法が考えられるとしている。
また,本人との面会の頻度については,目安となる回数を一律に定めることは困難であると考えられるとした上で,初回報告で適切な状況把握の方法・頻度とその理由を報告させ,定期報告でその実施状況を報告させる方法を例示している。
報酬の見直しと報告書式の見直しを一体で考えるこの発想は,後に第7の3で述べる全国統一書式につながっている。

第6 専門職団体の意見(別添2-1~2-4)

1 日本弁護士連合会

日本弁護士連合会の意見(平成31年1月16日付け)は,専門職後見人等の報酬が職責に見合ったものであることが必要であるという基本的な視点を示した上で,本人の財産から報酬を支出できない無報酬事案への対応として,成年後見制度利用支援事業による報酬助成の拡充が不可欠であるとしている。
また,基本的事務の内容と標準額を予測可能性の確保の観点からあらかじめ開示・提示すること,管理財産額が多額であることを原則として標準額の算定要素に反映させることを求めている。
さらに,親族間紛争や虐待を伴う困難事案の評価が不十分であること,遺産分割協議や損害賠償請求など一回的な法的課題には受任事件に準じた水準による評価が行われるべきこと,後見監督人の事務内容について共通認識を持つ必要があることを指摘している。
各家庭裁判所に対しては,参考資料が運用の指針ではないことを踏まえ,専門職団体と十分に協議した上で報酬基準を策定し,これを開示することを求めている。

2 日本司法書士会連合会

日本司法書士会連合会の後見制度対策部利用促進ワーキングチームの意見(平成31年1月22日付け)は,参考資料に対する具体的な追加・修正の提案が中心である。
複数選任の場合に報酬を1名分の額の範囲で按分することには実情に応じた柔軟な対応を求め,財産管理事務に「動産処分」を,身上保護事務に「同行支援」を加えることを提案している。
確定申告を税理士に依頼したことを一律に減算要素とすることや,添付書類の不足を一律に減算要素とすることには再考を求め,引取りを拒否された遺骨を長期間保管した場合を加算要素とすることを提案している。
本人の金融資産が算定された報酬額に満たない場合の審判の扱いについて,統一的な処理を求めてもいる。

3 成年後見センター・リーガルサポート

リーガルサポートの意見書(平成31年1月22日付け)は,後見事務の難易度及び質に応じて報酬を評価する方向性には賛成しつつ,後見人等の報告事務と家庭裁判所の監督事務が膨大になることを懸念し,導入には慎重な配慮を求めている。
報酬助成制度の適正運用が担保されない限り専門職後見人の報酬の実質的な切下げになるおそれがあるとして,報酬助成の拡充を必須とし,十分な周知期間や導入後の検証を求めている。
財産額については,管理財産額が多額であること自体によって財産管理の責任が重くなるとして,財産額に応じた基本報酬体系を一定の範囲で残すべきであるとしている。

4 日本社会福祉士会

日本社会福祉士会の意見(平成31年1月16日付け)は,障害年金の遡及請求を加算要素とすること,支援者ネットワークの再編成や機能強化を加算対象とすることを提案している。
本人の状況の把握については,原則として月1回は行うことを標準的な事務と考えることを提案し,身上監護事務の加算を求める際の根拠となる報告書添付書式の案を示している。
生活保護受給者や低所得者の報酬負担については,成年後見制度利用支援事業の必須化・活性化に加え,国レベルでの議論の開始を求めている。
報酬助成の現状は,成年後見制度利用支援事業とは―後見人報酬・申立費用の自治体助成を比較するで扱っている。

第7 現在の運用との比較

1 選任の考え方

(1) 第二期計画と中間検証報告書

選任の考え方は,現在も基本的に維持されている。
第二期成年後見制度利用促進基本計画(令和4年3月25日閣議決定)は,後見等の開始の審判時に後見人等の職務に関する見直しの時期・観点について関係者間で認識を共有し,本人のニーズ・課題の状況や後見人等の適性を定期的に再評価するとしている(同計画14頁)。
成年後見制度利用促進専門家会議の中間検証報告書(令和7年3月7日)は,一部の家庭裁判所では親族後見人を選任した上で一定期間の後見監督人による助言指導により職務に習熟してもらう取組が行われており,親族後見人が候補者として挙げられている事案では8割以上で親族後見人が選任されていること,家庭裁判所が不正事案への対応のために親族後見人の選任をしない等の実情はないことを記載している(同報告書20頁)。
これは,別添1-2の注5が述べた運用が実際に行われていることを示している。

(2) 親族選任の割合と中核機関の整備状況

もっとも,親族が成年後見人等に選任された割合は,平成31年1月から令和元年12月までの約21.8%から,令和7年の約16.4%へ下がっている(最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」各年版)。
令和7年に親族が候補者として申立書に記載されていた事件の割合は約19.7%であり,親族が選任される割合を見るときは,親族の候補者がいる事件自体が少ないことも併せて見る必要がある。
また,選任イメージが前提とした中核機関は,令和7年4月1日時点で1741市町村のうち1340市町村(77.0%)で整備されているにとどまる(厚生労働省「令和7年度成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果(詳細版)」2頁(PDF5頁))。
書簡のいう過渡期は,なお続いていると考えられる。
選任場面における親族の意向の法的な位置付けは,成年後見事件における親族の意向の取扱い――選任,職務遂行及び解任の各場面における法的地位で扱っている。

2 報酬の算定

(1) 事務ごとの標準額を定める方式は採られていない

報酬については,書簡の参考資料が想定した,事務ごとに標準額を定めて加算・減額する方式による算定基準は公表されていない。
最高裁判所が令和5年7月27日の成年後見制度利用促進専門家会議のワーキング・グループに提出した資料は,身上保護について「個々の法律行為等に着目して積算しないことを前提に、プロセス全体を見て身上保護を評価する」とし,財産管理の付加報酬については法テラスの代理援助立替基準を参考にするとしている(同資料7頁)。
同資料は,資産額が非常に高額であるために報酬額も高額になる事案について,事務負担の程度等事案全体を見て評価することで従前よりも減額になることも考えられるとしている(同資料7頁)。
予測可能性については,「報酬付与額の平均などの過去の実績を示すことで、できる限り予測可能性の確保に努める。」としている(同資料7頁)。
事務の内容と負担を評価するという書簡の方向性は維持されたが,その実現方法は,事務ごとの標準額から,過去の実績の公表へと変わったことになる。

(2) 大阪家裁と東京家裁の案内

大阪家庭裁判所の「成年後見人等の報酬額のめやす」令和7年4月版は,成年後見人の基本報酬のめやすを月額2万円とし,管理する流動資産の額が1000万円を超える場合には月額3万円~4万円,5000万円を超える場合には月額5万円~6万円としている。
リーガルサポートの意見書によれば最高裁判所の案は財産額を基準にしない方向であったが,大阪家庭裁判所は管理財産額によるめやすを維持している。
東京家庭裁判所の成年後見制度のページは,「報酬額のめやす」の項目で,最高裁判所家庭局作成の報酬に関する実情調査の集計結果を参照するよう案内している。
各家庭裁判所の報酬の水準は,成年後見人等の報酬額の目安――大阪家裁の基準,令和7年全国実績及び申立手続で扱っている。

3 報告書式と報酬実績の公表

(1) 全国統一の後見等事務報告書式

書簡の補足説明が示した,報告書式を改めて事務の内容を把握するという発想は,実現している。
最高裁判所が令和7年10月21日の成年後見制度利用促進専門家会議に提出した資料は,令和7年4月から,身上保護事務や本人の意思確認に関する報告項目を新設した全国統一の後見等事務報告書式の運用を開始したとしている(同資料のPDF5頁)。
報酬付与申立事情説明書では,通常の事務を超えて考慮してもらいたい事情がある事務を選び,事務ごとに別紙で説明する方式が採られている。
書き方は,令和7年4月全国統一書式による後見等事務報告書・報酬付与申立事情説明書の書き方で扱っている。

(2) 報酬付与額の実績の公表

最高裁判所家庭局の「報酬に関する実情調査の集計結果について」は,令和7年7月から12月までに認容で終局した報酬付与申立事件10万2466件を対象として報酬付与額を取りまとめたものであり,成年後見制度の利用者にとって報酬付与額の予測可能性が高まることを目指すものであるとしている(同資料2頁)。
最高裁判所が令和8年7月21日の専門家会議のワーキング・グループに提出した資料によれば,令和8年1月から12月までの集計は令和9年3月に公表予定であり,令和9年以降は法改正後の運用の在り方等を踏まえて検討するとされている(同資料のPDF8頁)。

4 令和8年改正法との関係

現行の民法862条は,「家庭裁判所は、後見人及び被後見人の資力その他の事情によって、被後見人の財産の中から、相当な報酬を後見人に与えることができる。」と定めている。
民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)による改正後の民法876条の19は,「家庭裁判所は、補助の事務の内容、補助人及び補助開始の審判を受けた者の資力その他の事情によって、補助開始の審判を受けた者の財産の中から、相当な報酬を補助人に与えることができる。」と定め,報酬の考慮要素に「補助の事務の内容」を明記している。
事務の内容に応じて報酬を定めるという書簡の方向性は,条文にも表れたことになる。
もっとも,同法の成年後見に関する部分は,公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行されるとされており(同法附則1条),令和8年9月18日現在の報酬付与は現行の民法862条による。
改正が弁護士の後見業務に与える影響は,令和8年成年後見制度改正で弁護士の後見業務は採算が悪化するかで検討している。

第8 出典・参考資料

1 法令

e-Gov法令検索・民法862条及び873条の2
e-Gov法令検索・成年後見制度の利用の促進に関する法律12条
民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)改正後の民法876条の19及び附則1条(法務省ウェブサイト)

2 裁判所の文書・資料

最高裁判所事務総局家庭局第二課長の書簡(平成31年1月24日付け)及び別添1-1~2-4(全61頁,本ブログ掲載の写し)
大阪家庭裁判所「成年後見人等の報酬額のめやす」令和7年4月版
東京家庭裁判所「成年後見制度(後見・保佐・補助)」
最高裁判所事務総局家庭局「報酬に関する実情調査の集計結果について」(令和7年7月~12月)2頁

3 成年後見制度利用促進専門家会議の資料

「第二期成年後見制度利用促進基本計画」(令和4年3月25日閣議決定)14頁
成年後見制度利用促進専門家会議「第二期成年後見制度利用促進基本計画に係る中間検証報告書」(令和7年3月7日)20頁
最高裁判所事務総局家庭局「後見人等の報酬算定に関する議論状況と今後の方向性についての報告資料」(第4回成年後見制度の運用改善等に関するワーキング・グループ資料5,令和5年7月27日)7頁~8頁
最高裁判所事務総局家庭局の報告資料(第20回成年後見制度利用促進専門家会議資料3,令和7年10月21日)PDF5頁
最高裁判所事務総局家庭局「裁判所における適切な後見人等の選任・交代等に係る取組について」(第2回成年後見制度の適切な運用に係るワーキング・グループ資料1-3,令和8年7月21日)PDF8頁

4 統計

最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」(平成31年1月~令和元年12月)
最高裁判所事務総局家庭局「成年後見関係事件の概況」(令和7年1月~12月)
厚生労働省「令和7年度成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果(詳細版)」2頁(PDF5頁)

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