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成年後見制度利用支援事業とは―後見人報酬・申立費用の自治体助成を比較する(AI作成)

本稿は,家庭裁判所への成年後見開始の申立てに要する費用及び成年後見人等に対する報酬について,市区町村が低所得者を対象に助成する「成年後見制度利用支援事業」を扱う。
制度の法的根拠,助成を受けられる要件,実際の助成額の水準及び自治体による違いを,厚生労働省の全国調査並びに複数の市区町村の公表資料に基づいて整理する。

成年後見人等に対する報酬そのものの算定基準及び全国の実績については,別稿「成年後見人等の報酬額の目安――大阪家裁の基準,令和7年全国実績及び申立手続」で扱っている。

成年後見制度そのものの全体像及び令和8年の抜本改正の内容は,別稿「令和8年成年後見制度改正と関係法律61本の整備」を参照されたい。

助成の可否及び金額は,居住する市区町村の要綱及び審査によって定まる。
実際に申請する場合は,居住する市区町村の高齢者福祉又は障害者福祉の担当窓口に個別に確認する必要がある。

第1 成年後見制度利用支援事業とは

1 制度の内容――申立費用と後見人等の報酬を市区町村が助成する

成年後見制度利用支援事業とは,家庭裁判所に対する後見開始,保佐開始又は補助開始の審判の申立てに要する費用(収入印紙代,登記手数料,鑑定費用等)及び選任された成年後見人等に対する報酬について,これを負担することが困難な低所得の高齢者又は障害者を対象に,市区町村がその全部又は一部を助成する制度である。

判断能力の低下した高齢者について,身寄りがない等の理由で親族等が後見開始の審判を申し立てることができない場合,市町村長が本人に代わって申立てを行うことができる。
この「市町村長申立て」の権限は,成年後見制度利用支援事業とは別に,老人福祉法32条に定められている。
同条は,「市町村長は、六十五歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、民法第七条、第十一条、第十三条第二項、第十五条第一項、第十七条第一項、第八百七十六条の四第一項又は第八百七十六条の九第一項に規定する審判の請求をすることができる」と定める(老人福祉法32条)。
知的障害者については知的障害者福祉法28条に同趣旨の規定があり,精神障害者についても精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2に同様の規定がある。
利用支援事業による助成は,この市町村長申立てに係る事案に限られず,本人又は親族による申立ての事案も対象となり得る。

2 高齢者向けと障害者向けで法律上の位置づけが異なる

成年後見制度利用支援事業は,高齢者を対象とするものと障害者を対象とするものとで,根拠法及び制度上の位置づけが異なる。

(1) 高齢者向け――介護保険法の任意事業

高齢者向けの成年後見制度利用支援事業は,介護保険法上の地域支援事業のうち,任意事業に位置づけられる。
同法115条の45第2項2号は,市町村が地域支援事業として行う事業の一つに,「被保険者に対する虐待の防止及びその早期発見のための事業その他の被保険者の権利擁護のため必要な援助を行う事業」を掲げる(介護保険法115条の45第2項2号)。
もっとも,同条の文言上は「成年後見制度利用支援事業」という名称は用いられておらず,この事業名及び具体的な内容は,厚生労働省老健局長通知「地域支援事業の実施について」(平成18年6月9日老発第0609001号)が定める「地域支援事業実施要綱」の別記6「任意事業」において与えられている。
同要綱は,任意事業のうち「その他の事業」の一類型として,「成年後見制度利用支援事業 市町村申立て等に係る低所得の高齢者に係る成年後見制度の申立てに要する経費や成年後見人等の報酬の助成等を行う」と定めている(同要綱別記6)。
同要綱はまた,「本事業は、市町村申立てに限らず、本人申立て、親族申立て等についてもその対象となりうるものであることに留意されたい」と付言している(同要綱別記6)。

(2) 障害者向け――障害者総合支援法上の地域生活支援事業

障害者向けの成年後見制度利用支援事業は,障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)77条1項4号に,条文上明記されている。
同号は,市町村が地域生活支援事業として行う事業の一つとして,「障害福祉サービスの利用の観点から成年後見制度を利用することが有用であると認められる障害者で成年後見制度の利用に要する費用について補助を受けなければ成年後見制度の利用が困難であると認められるものにつき、当該費用のうち主務省令で定める費用を支給する事業」を掲げる(障害者総合支援法77条1項4号)。
同項柱書は「市町村は、主務省令で定めるところにより、地域生活支援事業として、次に掲げる事業を行うものとする」と規定している(同法77条1項)。
同法施行規則65条の10の2は,助成の対象となる費用として,①民法上の後見開始等の審判の請求に要する費用,②当該審判に基づく登記の嘱託及び申請の手数料,③民法862条に基づく後見人等の報酬,④その他市町村が適当と認めた費用を掲げ,これらの全部又は一部を助成すると定めている(障害者総合支援法施行規則65条の10の2)。
厚生労働省の令和7年度概算要求資料によれば,本事業の実施主体は市町村であり,国が2分の1以内,都道府県が4分の1以内を補助する(厚生労働省「令和7年度概算要求の概要〔障害保健福祉部〕」23頁)。
この点は,条文上に「成年後見制度利用支援事業」という名称も助成対象費用の内訳も明示されない高齢者向けの制度と比較して,法令上の規定がより具体的である。

第2 助成を受けられるのはどのような場合か

1 資力要件

助成の対象となるのは,低所得の高齢者又は障害者に限られる。
厚生労働省の令和7年度調査によれば,資力要件の内容は,「生活保護受給者(世帯)のみを対象としている」自治体が高齢者関係で1.2%,障害者関係で1.3%にとどまり,「生活保護受給者(世帯)に限らず、広く低所得者(世帯)を対象としている」自治体が高齢者関係98.8%,障害者関係98.7%を占める(厚生労働省「令和7年度成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果〔詳細版〕」24頁,28頁)。
低所得の判断基準は,高齢者関係でみると,申立費用助成では住民税非課税基準を採用する自治体が36.5%,収入・資産等の基準を採用する自治体が44.3%である一方,報酬助成では住民税非課税基準38.7%,収入・資産等の基準54.6%となっており,具体的な基準額は自治体ごとに異なる(同調査〔詳細版〕25頁)。

2 対象となる申立人の範囲

助成の対象となる申立人の範囲も,自治体によって異なり得る。
令和7年度調査によれば,助成対象を「市町村長申立て」とする自治体は高齢者関係99.8%,障害者関係99.9%とほぼ全ての自治体に共通するが,「本人申立て」も対象とする自治体は高齢者関係75.9%,障害者関係75.4%,「親族申立て」も対象とする自治体は高齢者関係73.7%,障害者関係73.0%にとどまる(同調査〔詳細版〕24頁,28頁)。
つまり,およそ4分の1の自治体では,本人又は親族が申し立てた事案が助成の対象外となる可能性がある。

3 後見人等が親族である場合の扱い

複数の自治体の要綱を確認すると,成年後見人等が一定の親等内の親族である場合は,報酬助成の対象から除外する例がみられる。
①新宿区の要綱は,助成の要件の一つとして,成年後見人等が「四親等以内の親族ではないこと」を掲げている(新宿区「成年後見人等の報酬助成(本人・親族申立の場合)」)。
②堺市も,成年後見人等が「配偶者又は4親等内の親族である場合は、給付の対象とはなりません」と定めている(堺市成年後見制度利用支援給付金交付要綱6条)。
③世田谷区も,親族後見人を助成の対象から除外している(世田谷区「成年後見人等の報酬助成」)。
他方,大阪市,静岡市及び下関市の公表資料には,このような親族後見人を除外する記載は確認できなかった。
親族が後見人等に選任されている場合に報酬助成を受けられるかどうかは,居住する自治体に個別に確認する必要がある。

第3 実際にいくら助成されるか――7市の実例

1 報酬助成の上限額

厚生労働省の全国調査は,報酬助成の上限額を設定している自治体の割合(高齢者関係95.4%,障害者関係95.1%)までは集計しているが,具体的な金額までは集計していない(厚生労働省「令和7年度成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果〔詳細版〕」25頁,29頁)。
そこで,複数の市区の要綱又は公表資料を個別に確認したところ,次の表のとおり,月額28,000円(在宅の場合)及び18,000円(施設入所の場合)という水準を採用する例が多く確認できた。

自治体在宅施設入所備考
大阪市28,000円以内18,000円以内令和2年度から本人・親族申立ても対象に拡大
堺市28,000円18,000円
静岡市28,000円以内18,000円以内令和7年4月に20,000円・12,000円から増額改定
下関市28,000円18,000円審判で決定された報酬額との,いずれか低い方を助成
新宿区28,000円以内18,000円以内
名古屋市28,000円まで記載なし
世田谷区28,000円を上限記載なし

以上の7市区はいずれも大都市又はその近隣自治体であり,全国1,741市区町村を網羅的に確認した結果ではないが,少なくともこの範囲では,月額28,000円(在宅)・18,000円(施設入所)という水準への収れんがみられる。
もっとも,これが全国共通の標準額であるとまでは確認できておらず,実際の金額は居住する自治体の要綱で確認する必要がある。
静岡市が令和7年4月に上限額を引き上げた例にみられるとおり,金額は改定されることがある。

2 申立費用の助成対象

申立費用の助成対象となる費用の範囲は,自治体の公表資料からおおむね共通している。
下関市及び名古屋市成年後見あんしんセンターの資料によれば,助成の対象となる費用には,家庭裁判所への審判の請求に係る収入印紙代(申立手数料),登記手数料,郵便切手代,鑑定費用,診断書の取得費用及び戸籍謄本等の添付書類の取得費用が含まれる(下関市「成年後見制度利用支援事業の利用に関するQ&A」,名古屋市成年後見あんしんセンター「成年後見制度利用支援事業」)。
これらの費用項目は,障害者総合支援法施行規則65条の10の2が定める「主務省令で定める費用」の内容とも整合する(同施行規則65条の10の2)。

3 申請期限に注意する

報酬助成には,申請期限が定められている例が多く,期限を徒過すると助成を受けられなくなるおそれがある。
大阪市の要綱は,「家庭裁判所の報酬付与の審判から3ヶ月以内の申請」を求めており(大阪市「成年後見制度利用支援事業」),下関市も「家庭裁判所で報酬付与の審判を受けてから3か月以内」の申請を求めている(下関市「成年後見制度利用支援事業の利用に関するQ&A」)。
これに対し,堺市の要綱は,「家庭裁判所による報酬付与の審判があった日から起算して6カ月以内」の申請を求めており(堺市成年後見制度利用支援給付金交付要綱6条),申請期限も自治体によって異なる。
報酬付与の審判を受けたら,居住する自治体の期限を確認した上で,速やかに申請することが重要である。

第4 自治体によってどれだけ違うか――全国調査からみる実態

1 助成制度自体がない自治体も存在する

厚生労働省が令和7年4月1日時点で全国1,741市区町村を対象に行った調査によれば,申立費用助成及び報酬助成のいずれも整備している自治体は,高齢者関係93.2%(1,622自治体),障害者関係93.5%(1,627自治体)に上る(厚生労働省「令和7年度成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果〔詳細版〕」23頁,27頁)。
他方で,いずれの助成制度も持たない自治体が,高齢者関係で42,障害者関係で44存在する(同調査〔詳細版〕23頁,27頁)。
同調査の市区町村別一覧(同調査〔詳細版〕111頁~130頁)を確認すると,これらの自治体には,北海道神恵内村,秋田県上小阿仁村,東京都利島村・御蔵島村・青ヶ島村・小笠原村,長野県南牧村など,人口規模の小さい町村が多く含まれている。

2 要綱の公表状況にも差がある

助成の要件を定めた要綱等を自治体のホームページ等で公表しているかどうかにも差がある。
令和7年度調査によれば,申立費用助成に関する要綱等をホームページ等で公表している自治体は,高齢者関係で63.2%,障害者関係で66.4%にとどまり,残る3分の1強の自治体では,要綱等がホームページ上で公表されていない(同調査〔詳細版〕23頁,27頁)。
したがって,居住する自治体のホームページで具体的な要件を確認できない場合であっても,助成制度自体が存在しないとは限らず,単に要綱がウェブ上で公表されていないだけであることもあり,福祉担当窓口への直接の問合せが必要になる場合がある。

3 後見監督人の報酬は対象外の自治体が多数

成年後見人等に加えて後見監督人等が選任された場合,監督人に対する報酬についても助成が受けられるかどうかは,自治体によって大きく異なる。
令和7年度調査によれば,監督人への報酬助成制度がある自治体は,高齢者関係で22.8%(386自治体),障害者関係で22.9%(387自治体)にとどまり,8割弱の自治体では監督人の報酬は助成の対象に含まれていない(同調査〔詳細版〕26頁,30頁)。
資力の乏しい被後見人等について後見監督人が選任される見込みがある場合には,あらかじめ居住する自治体に監督人報酬の助成の有無を確認しておくことが重要である。

第5 利用にあたっての実務上の留意点

成年後見制度利用支援事業による助成は,家庭裁判所への後見開始等の申立て又は報酬付与の審判とは別個の手続であり,市区町村への申請が必要である。
申立て自体を家庭裁判所に行った後,改めて居住する市区町村の高齢者福祉又は障害者福祉の担当窓口若しくは地域包括支援センターに助成の申請を行う必要がある。

資力に乏しい者が家庭裁判所への申立てに要する実費及び弁護士費用等の負担が困難な場合には,日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助による立替制度を利用できる場合がある。
法テラスの民事法律扶助業務運営細則の内容については,別稿「法テラスの民事法律扶助業務運営細則の条文」を参照されたい。
もっとも,市区町村の利用支援事業と法テラスの民事法律扶助とは対象及び要件が異なる別個の制度であり,いずれを利用できるか,又は併用できるかは,個別の資力状況及び居住する自治体の要綱によって異なる。

出典・参考資料

1 法令

介護保険法(平成9年法律第123号)115条の45(e-Gov法令検索)
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成17年法律第123号)77条1項4号(e-Gov法令検索)
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則(平成18年厚生労働省令第19号)65条の10の2(e-Gov法令検索)
老人福祉法(昭和38年法律第133号)32条(e-Gov法令検索)
知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)28条(e-Gov法令検索)

2 国の通知・予算資料

①厚生労働省老健局長「地域支援事業の実施について」(平成18年6月9日老発第0609001号)別記6(厚生労働省法令等データベースシステム)
厚生労働省「令和7年度概算要求の概要(障害保健福祉部)」22頁~23頁

3 統計・調査資料

厚生労働省「令和7年度成年後見制度利用促進施策に係る取組状況調査結果(詳細版)」(令和8年4月)23頁~30頁,111頁~130頁

4 地方公共団体の公表資料

大阪市「成年後見制度利用支援事業」
静岡市「成年後見制度利用支援事業 報酬助成の申請」
下関市「成年後見制度利用支援事業の利用に関するQ&A」(令和4年7月版)
堺市成年後見制度利用支援給付金交付要綱
名古屋市成年後見あんしんセンター「成年後見制度利用支援事業」
新宿区「成年後見人等の報酬助成(本人・親族申立の場合)」
世田谷区「成年後見人等の報酬助成」