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(AI作成)貸倒損失の計上基準

◯本記事は,法人税及び消費税における貸倒損失(貸倒れ)の計上基準を,弁護士の実務目線(債権回収,債権放棄,破産・清算,税務争訟)からAIで整理したものです。個別事案の判断は,必ず最新の法令・通達及び顧問税理士の確認を経てください。

第1 はじめに──なぜ「計上基準」が問題になるのか

1 貸倒れは「いつ・いくら」を落とせるかが争いになる

取引先の資力が悪化し,売掛金や貸付金が回収できなくなったとき,その金額を「貸倒損失」として損金に算入できれば,法人税の負担は軽くなります。しかし,税務調査で最も指摘されやすい論点の1つが,この貸倒損失です。ポイントは,「本当に回収不能か」だけでなく,「どの事業年度で,いくらを落とせるか」という点にあります。

弁護士が債権回収や事業再生,破産・清算に関与する場面では,依頼者(債権者側)から「この債権はもう落とせますか」と問われることが少なくありません。計上基準を正確に理解しておくことは,税理士との連携を円滑にし,依頼者の意思決定を支えるうえで有用です。

2 根拠条文は法人税法22条3項3号

貸倒損失の根拠は,個別の条文ではなく,損金の一般規定である法人税法22条3項3号に求められます。

法人税法22条3項
内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額に算入すべき金額は,別段の定めがあるものを除き,次に掲げる額とする。
三 当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るもの
(同条4項)第二項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は,別段の定めがあるものを除き,一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従つて計算されるものとする。

すなわち,貸倒れによって金銭債権という資産が失われた「損失の額」を,その損失が生じた事業年度の損金に算入する,という構造です。もっとも,「いつ・いくらの損失が生じたか」は外形から判定しにくいため,国税庁は法人税基本通達9-6-1から9-6-3までで具体的な基準を示しています。以下では,この3つの基準を軸に整理します。

第2 貸倒損失の3類型と適用順位

1 3類型の全体像

貸倒損失は,根拠条文はいずれも法人税法22条3項3号ですが,通達上,次の3類型に分けて基準が示されています。損金経理(確定した決算で費用・損失として経理すること)の要否が異なる点が実務上重要です。

類型通達実体損金経理対象債権一部貸倒れ
法律上の貸倒れ9-6-1法律上,債権が(一部)消滅不要(申告調整で損金算入可)金銭債権一般切り捨てられた部分は可
事実上の貸倒れ9-6-2資産状況・支払能力から全額回収不能が明らか必須金銭債権一般不可(全額のみ)
形式上の貸倒れ9-6-3取引停止1年以上等の外形基準必須(備忘価額を残す)売掛債権のみ備忘価額を控除した残額

2 適用順位の考え方

(1) 法的消滅の有無による分岐

3類型は,おおむね次の順で当てはめます。

ア 法的消滅が「有り」 → 法律上の貸倒れ(9-6-1)
イ 法的消滅が「無し」で,全額回収不能が明らか → 事実上の貸倒れ(9-6-2)
ウ 法的消滅が「無し」で,全額回収不能とまでは言えない売掛債権 → 形式上の貸倒れ(9-6-3。取引停止1年以上,又は取立費用に満たない少額債権)
エ いずれにも当たらない一部回収不能 → 貸倒損失ではなく,個別評価金銭債権の貸倒引当金を検討

(2) 個別評価金銭債権の貸倒引当金との関係

債権の一部だけが回収困難という段階では,貸倒損失(全額回収不能が前提)ではなく,法人税法52条・同法施行令96条1項に基づく個別評価金銭債権の貸倒引当金の繰入れを検討します。貸倒損失と貸倒引当金は「全額の滅失か,見積りか」という点で場面が異なります。この切り分けを誤ると,後述の年度帰属の問題(第8)と絡んで否認リスクが高まります。

第3 法律上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-1)

1 4つの事実類型

法人税基本通達9-6-1は,次の事実が生じた場合に,切り捨てられた部分の金額を,その事実の発生した事業年度の損金に算入するとしています。

(1) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定により切り捨てられた部分(会社更生法・民事再生法)
(2) 特別清算に係る協定の認可の決定により切り捨てられた部分(会社法の特別清算)
(3) 法令の整理手続によらない関係者の協議決定(債権者集会の協議決定で合理的基準により負債整理を定めるもの,第三者のあっせんによる契約でこれに準ずるもの)
(4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し,弁済を受けることができないと認められる場合に,書面により明らかにした債務免除額

2 「損金経理が不要」であることの意味

9-6-1の大きな特徴は,損金経理が要件とされていない点です。法律上,債権が消滅している以上,会社が帳簿上で費用計上していなくても,税務上は損金に算入されます。したがって,計上を失念していた場合でも,「貸倒損失認定損」として申告調整(減算)ができ,更正の請求の根拠にもなり得ます。この点は,損金経理が必須の9-6-2・9-6-3とは決定的に異なります。

3 書面による債務免除(9-6-1(4))の3要件

弁護士が最も関与しやすいのが,この(4)の債務免除(債権放棄)です。損金算入が認められるには,論理的に次の3要件をすべて満たす必要があります。

(1) 債務超過の状態が相当期間継続

ここでの「相当期間」とは,形式的に何年という基準ではなく,債権者が債務者の経営状態をみて回収不能かどうかを判断するのに必要な合理的期間をいいます。実務上は,少なくとも数年以上にわたり債務超過が続いていることが目安とされ,回収努力の期間としては通常1年から2年程度が意識されます。ただし,災害や取引先の倒産など経済事情の激変によって債務超過・回収不能に陥った場合には,必ずしもこの原則によらないと解されています。

(2) 弁済を受けられないこと(時価ベースで判定)

「弁済を受けることができない」かどうかは,債務者の実質的な財産状態で判断します。ここで重要なのは,債務超過か否かを時価ベースで判定する点です。含み益のある土地等を保有しながら簿価ベースで債務超過と判断すると,安易に貸倒れを認めることになり,かえって寄附金(債務免除益の供与)と評価されるおそれがあります。

(3) 書面により明らかにすること(内容証明に限らない)

債権放棄は債権者の一方的な意思表示(民法519条)であり,債権債務の消滅を客観的に確認しにくいため,債務者に対して書面で明らかにすることが求められます。もっとも,この書面は公証力のあるものに限られず,内容証明郵便による必要もありません。特定の債務のいくらの金額を免除したかを明示し,債権放棄に至った具体的理由(回収努力の結果等)を書面で説明できる状態にしておけば足ります。特定調停による場合は,調停調書がこの書面に当たります。

第4 事実上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-2)

1 3つの要件(全額回収不能・損金経理・担保処分後)

法人税基本通達9-6-2は,金銭債権につき,債務者の資産状況・支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合に,その明らかになった事業年度において貸倒れとして損金経理をすることができるとしています。担保物があるときは,その担保物を処分した後でなければ損金経理はできません。

論理構造は,①全額回収不能が客観的に明らか + ②その事業年度に損金経理 + ③担保物は処分後,の3つです。9-6-1と違い,会社が帳簿上で費用計上していなければ税務上も損金になりません(申告調整では救えません)。

2 一部貸倒れが認められない理由(法人税法33条)

9-6-2は「全額」の回収不能を要件とし,一部だけの回収不能では計上できません。その理由は,第1に一部回収不能額の算定が困難であること,第2に,一部貸倒れを認めることは実質的に債権の評価損を認めるのと同じであり,資産の評価損の損金不算入を定める法人税法33条1項に反することにあります。一部が回収困難という段階では,前述のとおり貸倒引当金で対応します。

3 保証債務・求償権の取扱い

9-6-2は,注書きで「保証債務は,現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできない」としています。ここから,次の実務ルールが導かれます。

 保証人は,保証債務を履行して初めて求償権を取得する。履行前の段階では,事前求償権を会計上の債権として計上して貸倒れにすることはできない。
 保証債務を履行したときは,求償権(未収金)を計上し,その求償権が全額回収不能であれば貸倒損失となる。
 人的保証(連帯保証等)がある場合も,保証人からの回収可能性が回収不能の判断上重要な要素となる。ただし,保証人に支払能力がなければ「担保物」があるとはみられない。

第5 形式上の貸倒れ(法人税基本通達9-6-3)

1 売掛債権に限定・備忘価額を残す

法人税基本通達9-6-3は,回収不能の判断について一種の外形基準を用いて簡素化を図ったものです。対象は売掛債権(売掛金・未収請負金その他これらに準ずる債権)に限られ,貸付金その他これに準ずる債権は含まれません。処理の際は,売掛債権の額から備忘価額(通常1円)を控除した残額を貸倒れとして損金経理します。備忘価額は「金額」ではなく,貸倒処理した債務者名や後日の回収状況を明らかにするために補助簿を残す趣旨であり,連記式に一括して1円を記帳することも認められます。

2 取引停止から1年の起算点

9-6-3(1)は,債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時がそれ以後であれば,これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合に適用されます(担保物のある場合を除く)。支払期限の定めがなければ,最後の納品日を起点として1年以上を判断します。また,9-6-3(2)は,同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用(集金出張の旅費・日当等)に満たない場合に,督促しても弁済がないときに適用されます。この総額は,一取引先ごとではなく,同一地域の債務者に対する債権の合計額で判断する点に注意が必要です。

3 「継続的な取引」の判定(スポット取引は対象外)

9-6-3(1)の「取引の停止」は,継続的な取引を行っていた債務者について,その資産状況・支払能力等が悪化したためにその後の取引を停止した場合をいいます。したがって,不動産取引のように,たまたま1回だけ取引した相手方(スポット取引)に対する売掛債権には,1年以上回収できなくても適用がありません。この判定は経済実態に即して行われ,債権金額の多寡そのものは基準になりません。少額の返済が現に続いている場合も,「取引停止後に弁済がない場合」に当たらないため適用できません。

なお,通信販売のように,一度でも注文した顧客について継続・反復して販売することを期待して顧客情報を管理している場合には,結果として取引が1回限りでも「継続的な取引を行っていた債務者」として取り扱える余地があるとされています。

第6 「全額回収不能」の判断基準──最高裁興銀事件

1 興銀事件の判断枠組み

9-6-2の「全額が回収できないことが明らか」とは,具体的にどう判断するのか。この点についての指導的な最高裁判例が,いわゆる興銀事件です。

最高裁判所第二小法廷 平成16年12月24日判決
(事件番号 平成14年(行ヒ)第147号,法人税更正処分等取消請求事件,民集58巻9号2637頁)

最高裁は,金銭債権を法人税法22条3項3号の損失として損金に算入するには,その全額が回収不能であることが客観的に明らかでなければならない,としたうえで,その判断枠組みを次のように示しました。

2 債権者側の事情・経済的環境まで考慮する

全額が回収不能であることは,「債務者の資産状況,支払能力等の債務者側の事情のみならず,債権回収に必要な労力,債権額と取立費用との比較衡量,債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる経営的損失等といった債権者側の事情,経済的環境等も踏まえ,社会通念に従って総合的に判断」される(最高裁平成16年12月24日判決の判示)。

ここで重要なのは,回収不能の判断が,債務者が無資力かどうかという債務者側の事情だけで決まるのではない,という点です。取立てにかかる労力や費用,強引な回収によって他の債権者との関係が悪化して生じる経営上の損失といった債権者側の事情や,その時々の経済的環境まで含めて,社会通念に従い総合的に判断されます。

3 立証責任は事実上納税者に寄る(「特別の経費」論)

税務訴訟では,課税処分の適法性(所得金額の存在)についての立証責任は,原則として課税庁が負うと考えられています。もっとも,貸倒損失については,これを分析した実務文献において,次の考え方が紹介されています。

貸倒損失の有無が争われる場合,形式的には,所得の一定額の存在を主張する課税庁の側が,貸倒損失の不存在を立証すべき責任を負う。しかし,貸倒損失は,取引の相手方の破産等の特別の事情がない限り生ずることのない,いわば「特別の経費」というべき性質のものであるため,納税者の側で,債権の存在と回収不能を合理的に推認させるに足りる立証をしなければ,貸倒損失は認められない方向に働く。

この文献が取り上げた事例では,そもそも工事代金債権の発生(契約の締結と代金の支払)を裏づける立証がなく,貸倒損失の前提となる債権の存在自体が認められませんでした。前記の興銀事件の総合判断と併せて考えると,債権者が備えておくべきものは,「回収不能」という結論だけではありません。

ア 債権が確かに存在すること ── 契約書,請求書,納品書,入金記録等
イ その債権が回収不能に至った経緯 ── 回収努力の記録,債務者の資産状況・支払能力の資料,担保処分や保証人への請求の経過,他の債権者との関係等

これらを客観的な資料として時系列で残しておくことが,税務調査・税務争訟における立証の鍵になります。

出典=『税経通信』2014年10月号(税務経理協会)の連載「判例・裁決例でチェック! 貸倒損失の現場判断」第21回(林仲宣・竹内進)。二次資料のため,具体の裁判例を引用する際は,その原文を裁判所ウェブサイト等で確認のうえ用いる。

4 通達との関係と実務への含意

通達9-6-2は「債務者の資産状況,支払能力等からみて」と書いていますが,興銀事件は,法律(法人税法22条3項3号)の解釈として,これより広い考慮要素を認めたものと理解されています。実務的な含意は次のとおりです。

 「債務者に多少でも資産があるから回収不能とはいえない」という画一的な反論は,必ずしも通らない。債権者側の事情・経済的環境まで含めた総合判断が求められる。
 逆に,債権者としては,回収不能を基礎づける事情(回収努力の内容,取立費用との比較,他の債権者との関係等)を,客観的な資料として時系列で残しておくことが,立証の鍵になる。
 もっとも,総合判断であるがゆえに,事案ごとの当てはめの幅が大きい。安易な計上は否認リスクを伴うため,計上時期・金額の判断は慎重に行うべきである。

第7 消費税の貸倒れ(消費税法39条)

貸倒れは,法人税だけの問題ではありません。課税売上に対応する売掛金等が回収不能になった場合には,消費税の側でも手当てがあります。弁護士が債権放棄・貸倒れに関与するときは,法人税と消費税の両方を意識する必要があります。

1 貸倒れは消費税額の控除もできる

消費税法39条1項は,貸倒れに係る消費税額の控除を定めています。

消費税法39条1項(貸倒れに係る消費税額の控除等)の要旨
事業者(免税事業者を除く)が国内で行った課税資産の譲渡等に係る売掛金その他の債権につき,更生計画認可の決定による債権の切捨てその他これに準ずるものとして政令で定める事実が生じ,税込価額の全部又は一部を領収できなくなったときは,その領収できないこととなった日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から,領収できなくなった税込価額に係る消費税額(税込価額に110分の7.8,軽減税率対象は108分の6.24を乗じた額)を控除する。

「政令で定める事実」は消費税法施行令59条に列挙されており,①再生計画認可の決定による切捨て,②特別清算に係る協定の認可の決定による切捨て,③債務者の財産の状況・支払能力等からみて全額を弁済できないことが明らかであること,④これらに準ずる財務省令で定める事実,です。要するに,法人税の法律上の貸倒れ(9-6-1)・事実上の貸倒れ(9-6-2)に対応する事実が生じたときに,消費税額を控除できるという構造です。対象は課税売上に対応する債権に限られます。

2 控除の要件と回収後の戻し入れ

ア 書類の保存が要件 ── 貸倒れの事実が生じたことを証する書類を保存しない場合には,控除の適用はありません(消費税法39条2項。ただし,災害その他やむを得ない事情による場合は別)。
イ 回収したら戻し入れ ── 控除を受けた後にその税込価額の全部又は一部を領収(回収)したときは,その消費税額を,領収した日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算します(消費税法39条3項)。

3 貸倒損失が否認されると消費税も修正になる

法人税の貸倒損失と消費税の貸倒れ控除は,同じ「回収不能」を基礎とするため,実務上は連動します。したがって,税務調査で法人税の貸倒損失が否認されると,消費税の貸倒れ控除も否認され,消費税の修正申告が必要になります。簡易課税制度を採用している場合でも,貸倒れに係る消費税額の調整は生じます。弁護士として債権放棄・貸倒れを助言するときは,法人税・消費税の双方への影響を念頭に置くことが大切です。

出典=消費税法39条・同法施行令59条(e-Govの法令データで条文を確認)。実務上の取扱いは『税務調整ハンドブック』(ぎょうせい・2021年,山本清次・今西浩之著)第9章「貸倒損失が否認されたときの税務調整」を参照(二次資料のため,引用の際は原本の頁で確認)。

第8 国税不服審判所の裁決に見る失敗パターン

貸倒損失をめぐる国税不服審判所の公表裁決を通覧すると,納税者が敗れる典型的なパターンが見えてきます。弁護士が依頼者に助言する際の「落とし穴」として押さえておく価値があります。

1 貸倒れの「年度帰属」を誤ると全否認される

貸倒損失は,「回収不能となった事業年度」でしか損金に算入できません。早すぎても遅すぎても否認されます。この点を具体的に示したのが,平成15年2月19日裁決(裁決事例集No.65-450頁)です。

ア 担保・保証を残したままでは「まだ回収不能でない」 根抵当権を設定したままであったり,連帯保証人に資力があって履行を求めていない段階では,回収不能とは認められない(早すぎる計上として否認)。
イ 債務者の死亡・相続人の不存在は,債権の消滅原因ではない 兄弟姉妹が相続人になり得るなど,死亡それ自体では債権は消えない。
ウ 過年度に既に回収不能なら,後の年度では落とせない 自己破産手続の完結等により過年度に回収不能が確定していた債権を,後の事業年度の損金にすることはできない(遅すぎる計上として否認)。

2 回収不能でない債権放棄は寄附金になる

債権放棄をしても,それが「回収不能となったことにより行われた」ものでなければ,対価なく経済的価値を放棄したものとして,寄附金(法人税法37条)と評価されます。

ア 平成28年2月8日裁決 代表者への売掛金放棄につき,事業年度末前後の収入・回収状況からみて全額回収不能とは認められず,かつ書面による債権放棄を示す証拠もないとして,9-6-1(4)非該当。放棄額は寄附金とされた。
イ 平成28年4月14日裁決 子会社への売掛債権の放棄につき,放棄自体は有効と認めつつ,子会社の清算に伴う損失負担を行う経済的合理性がなく,債務超過が相当期間継続した事実もないとして,放棄による損失は寄附金とされた。

子会社等を整理・再建するための損失負担等でも,相当な理由がなければ寄附金と扱われます(法人税基本通達9-4-1参照)。「回収不能」と「債務超過の相当期間継続」を客観証拠で固め,書面を残すことが要点です。

3 確定決算・損金経理の壁

損金経理が要件となる項目(9-6-2・9-6-3の貸倒れや貸倒引当金)は,当初の確定決算で費用計上していなければ,後から救済することが困難です。昭和59年7月4日裁決(裁決事例集No.28-241頁)は,申告後の臨時株主総会で承認した新計算書類で新たに貸倒引当金繰入損等を計上しても,「確定した決算」での損金経理には当たらないとしました。これは,更正の請求において9-6-2・9-6-3を根拠にしにくいこととも整合します。

第9 弁護士が付加価値を出せる場面

1 債権放棄・債務免除の書面をどう設計するか

9-6-1(4)の債務免除は,弁護士が最も関与しやすく,かつ書面の巧拙が結論を分ける場面です。免除する債権を特定し,免除額を明示したうえで,「債務者の債務超過が相当期間継続していること」「回収不能であること」を基礎づける事実(回収努力の経過,債務者の財産状態を時価ベースで評価した資料等)を,書面又は関係資料として残すよう助言することに意味があります。特定調停を用いる場合は,調停調書が書面の役割を果たします。

2 破産・清算の場面の計上時期

破産法には,配当されなかった破産債権を法的に消滅させる免責手続がありません。そのため,法人の破産では,破産手続の廃止決定又は終結決定により法人格が消滅した時点で,法人税法22条3項3号に基づき債権が滅失したと扱うのが実務です。もっとも,破産管財人による配当額ゼロの証明があるなど,配当がないことが明らかな場合には,終結決定前でも9-6-2により計上できる余地があります。また,株式会社は解散・清算結了の登記だけでは法人格が消滅せず,清算事務が現実に終了するまで清算の目的の範囲で存続します(会社法476条参照)。登記の外形だけで「債権が消滅した」と即断しないことが肝要です。

法人の破産に関する貸倒れの計上時期については,破産手続の廃止・終結決定の時点で法律上の滅失と扱う一方,配当ゼロが明白なら終結前でも9-6-2を適用できるとした国税不服審判所の裁決(平成20年6月26日裁決)が知られています。実際の引用に当たっては,裁決事例集の該当号を別途確認してください。

3 更正の請求の根拠条文の選び方

貸倒損失を計上し損ねた後で更正の請求(国税通則法23条)をする場合,どの根拠を掲げるかで通りやすさが変わります。

 9-6-3は「損金経理をしたとき」を要件とするため,更正の請求の根拠にはなりにくい。
 9-6-2も,税務署が慎重な姿勢を示すことが多く,更正の請求の場面では扱いに注意を要する。
 9-6-1に明記された民事再生・会社更生・特別清算や,書面による債務免除は,明示できる書類があれば税務署も判断しやすい。
 相手方法人が破産・清算結了している場合は,通達を根拠にするより,法人税法22条3項3号を根拠として「法的に債権が消滅した」ことを主張し,閉鎖登記事項証明書を添付する方法が考えられる。

更正の請求では,更正の請求をする理由や請求に至った事情の詳細等を記載した更正請求書を提出し(国税通則法23条3項),その理由の基礎となる事実が一定期間の取引に関するものであるときは,その事実を証明する書類を添付しなければなりません(同法施行令6条2項)。弁護士としては,債権の消滅・回収不能を裏づける資料(登記事項証明書,破産関係書類,債務免除の書面等)を整えることで,税理士による更正の請求を後押しできます。

第10 まとめ

1 貸倒損失の根拠は法人税法22条3項3号。通達9-6-1(法律上)・9-6-2(事実上)・9-6-3(形式上)の3類型で基準が示される。
2 9-6-1は損金経理が不要で申告調整・更正の請求も可能。9-6-2・9-6-3は損金経理が必須。
3 9-6-1(4)の債務免除は,債務超過の相当期間継続(時価ベース)・回収不能・書面(内容証明に限らない)の3要件。
4 「全額回収不能」は,債務者側の事情だけでなく債権者側の事情・経済的環境も踏まえ社会通念で総合判断する(最高裁興銀事件)。
5 立証責任は形式的には課税庁でも,貸倒損失は「特別の経費」的性質ゆえ,実際には納税者が債権の存在と回収不能を立証する備えが要る。
6 貸倒れは消費税でも控除できる(消費税法39条)。書類保存が要件で,回収したら戻し入れ。法人税の貸倒損失が否認されると消費税も修正になる。
7 年度帰属を誤ると全否認され,回収不能でない債権放棄は寄附金になる。書面と客観資料の整備が要。
8 破産・清算の計上時期,更正の請求の根拠選択など,弁護士が付加価値を出せる場面は多い。

本記事は一般的な解説であり,個別の税務判断・申告は,最新の法令・通達を確認のうえ,顧問税理士とご相談ください。


【参考にした主な条文・通達・裁判例・裁決・文献】

  • 法人税法22条3項3号・4項,33条,37条,52条/法人税法施行令96条1項/消費税法39条/消費税法施行令59条/国税通則法23条3項・同法施行令6条2項/民法519条/会社法476条(いずれもe-Govの法令データで条文を確認)
  • 法人税基本通達9-4-1,9-6-1,9-6-2,9-6-3
  • 最高裁判所第二小法廷平成16年12月24日判決(平成14年(行ヒ)第147号,民集58巻9号2637頁。裁判所ウェブサイトの裁判例検索で実在・内容を確認)
    https://www.courts.go.jp/hanrei/52371/detail2/index.html
  • 国税不服審判所 平成15年2月19日裁決(裁決事例集No.65-450頁),平成28年2月8日裁決,平成28年4月14日裁決,昭和59年7月4日裁決(裁決事例集No.28-241頁),平成20年6月26日裁決(公表裁決事例による)
  • 実務文献(二次資料)=『税経通信』2014年10月号(税務経理協会)連載「判例・裁決例でチェック! 貸倒損失の現場判断」第21回(林仲宣・竹内進),『税務調整ハンドブック』(ぎょうせい・2021年,山本清次・今西浩之著)第9章。引用の際は原本の頁で確認。