メインコンテンツへスキップ
       

交通事故による踵骨骨折の後遺障害等級――足関節,可動域,疼痛及び立証資料(AI作成)

◯山中弁護士への事件のご依頼・ご相談は「交通事故のお問い合わせ」から可能です。

第1 踵骨骨折の後遺障害を三つに分けて考える

1 本記事の対象

本記事は,交通事故による踵骨骨折後に荷重時痛,凹凸路での歩行困難,足関節の可動域制限又はしびれが残った場合について,自賠責保険の後遺障害等級とその立証資料を説明するものである。生成AIを用いて資料を収集し,法令,行政基準,公的裁決及び医学文献の原文と照合して作成した一般的な情報であり,特定の個別事案に対する法的助言ではない。

2 機能障害,疼痛及び変形の切分け

踵骨骨折後の訴えを一括して「足首の後遺症」と扱うと,等級の対象と医学的所見とがずれやすい。本記事では,①足関節の背屈・底屈制限という機能障害,②踵骨部又は距骨下関節部の疼痛・しびれという神経症状,③踵骨の変形治癒,距骨下関節症,外側壁膨隆又は腱・神経の障害を分けて検討する。

3 踵骨は足関節を直接構成しない

足関節は脛骨・腓骨と距骨から構成され,踵骨は足関節を直接構成しない。踵骨は距骨との間に距骨下関節を構成するため,踵骨骨折後の内がえし・外がえしの制限,凹凸路歩行時痛及び荷重時痛は,足関節よりも距骨下関節又は踵骨部に由来することがある。この解剖学的な区別が,等級認定の出発点である。

足関節の背屈・底屈と第12級7号の測定方法は,足関節の可動域制限と後遺障害12級7号で詳しく扱っている。本記事は,その一般基準を繰り返さず,踵骨骨折に固有の距骨下関節障害,疼痛及び画像との対応を中心とする。

第2 画像で確認すべき骨折型と後遺症の機序

1 初診時単純X線とCTの役割

踵骨骨折は,高所からの転落等で踵に軸圧が加わって生じることが多く,交通事故では二輪車からの転落,車体との挟圧その他の強い外力で生じ得る。高エネルギー外傷では脊椎圧迫骨折その他の合併損傷にも注意を要するが,等級認定では事故直後に撮影された踵骨側面像・軸位像とCTを確保し,関節内骨折か,後距踵関節面に段差又は陥没があるかを確認する必要がある。

単純X線は骨折,踵骨高,幅及び配列を経時的にみるために有用であり,CTは後距踵関節面の骨折線,骨片数,段差及びギャップを立体的に評価するために有用である。MRIは一律に追加する検査ではなく,腱,神経,軟部組織又は単純X線・CTでは説明しにくい症状が残る場合に,具体的な疑問を定めて検討する資料となる。

2 骨癒合と機能回復は同じではない

関節内骨折では,後距踵関節面の不整,踵骨高の低下,幅広化,内反・外反変形が,距骨下関節の運動低下,外傷後関節症,外側インピンジメント,腓骨筋腱障害及び荷重時痛につながり得る。このため,診療録に「骨癒合良好」と記載されていても,関節面の適合性,距骨下関節の動き又は疼痛まで回復したことを直ちに意味しない。

踵骨外側壁の膨隆は,腓骨筋腱との衝突,外果周辺痛又は靴装着困難を生じさせることがある。足根管周辺の脛骨神経枝,腓腹神経,足底脂肪体,手術材料又は感染が症状の主座となる場合もあるため,痛む場所,圧痛点,知覚異常及び画像上の異常を位置の面で対応させることが重要である。

3 分類,角度及び手術歴の限界

Sanders分類は,主として冠状断CTに基づいて関節内骨折の骨折線・骨片数を整理する分類であり,Böhler角は踵骨高及び後方関節面陥没をみる指標である。いずれも骨折の重症度や予後を考える重要な資料であるが,分類名,角度又は手術の有無だけで後遺障害等級は決まらない。撮影条件,関節面不整,症状固定時の画像,診察所見及び機能を併せて評価する必要がある。

典型的な閉鎖性転位関節内骨折151例を対象とした無作為化比較試験では,手術群に2年時点の機能的優越性が示されず,合併症及び再手術は多かった。他方,2023年の系統的レビューは,手術が機能又は職場復帰の一部を改善する可能性を示しつつ,証拠の確実性と有害事象に留保を付している。したがって,保存療法を選んだこと又は手術を受けたことを,それだけで治療の適否又は後遺障害の有無へ結び付けることはできない。

第3 想定される後遺障害等級

1 現在の自賠責等級の対応

自動車損害賠償保障法施行令別表第二に基づき,踵骨骨折後に検討する主な等級を整理すると,次のとおりである。表は診断名による自動認定を示すものではなく,各行の障害と医学的原因が対応することを要する。

障害の系列主な等級認定上の中心点
足関節の機能障害第8級7号足関節の用を廃した状態であること
足関節の機能障害第10級11号主要運動の可動域が健側の2分の1以下であること
足関節の機能障害第12級7号主要運動の可動域が健側の4分の3以下であること
踵骨部・距骨下関節部の疼痛等第12級13号頑固な神経症状を他覚所見により医学的に証明できること
踵骨部・距骨下関節部の疼痛等第14級9号神経症状を受傷態様,経過及び診察所見から医学的に説明できること

2 足関節機能障害の測定対象

足関節の主要運動は背屈と底屈であり,原則として他動運動の合計値を健側と比較する。健側にも既往障害があって比較に適さないときは参考可動域を用いるが,現行の参考可動域は背屈20度,底屈45度である。後遺障害診断書では,他動・自動の別,健側・患側,測定日及び測定条件を確認し,診療録やリハビリテーション記録の連続値と整合するかをみる必要がある。

距骨下関節を中心とする内がえし・外がえしの制限は,凹凸路歩行や方向転換の困難を説明する重要な所見である。しかし,その角度を背屈・底屈へ加えて第12級7号の数値基準を満たすことにはならない。足関節の数値が正常でも,距骨下関節障害又は踵骨部痛を別に評価する余地がある。

3 第12級13号と第14級9号の分水嶺

第12級13号では,痛みの強さだけでなく,後距踵関節面の段差,部分癒合不全,変形治癒,外傷後距骨下関節症,荷重部の骨性変化,腱又は神経の障害等が,症状の場所及び発生機序と対応することが中心となる。画像上の異常があるだけでも足りず,異常所見がなぜ荷重時痛,凹凸路歩行時痛又は知覚異常を生じさせるのかを示す必要がある。

第14級9号では,決定的な画像所見が弱い場合でも,事故直後から症状固定まで同じ部位の症状が続き,受傷態様,治療経過,圧痛・知覚等の診察所見及び治療反応から医学的に説明できるかが問題となる。通院の空白,訴える部位の変化又は診療録と後遺障害診断書の不一致がある場合は,その理由を確認しないまま申請書類だけを整えても評価は安定しにくい。

4 足関節機能障害と踵骨部痛の併合

厚生労働省の障害等級認定基準は,踵骨骨折治癒後の疼痛が第12級に該当し,同じ下肢の足関節機能障害も第12級に該当する場合について,両者を別の部位・系列として併合し,第11級とする例を掲げている。踵骨と足関節を解剖学的に区別することは,単に診断名を正確にするためではなく,併合の可否に直結する。

もっとも,同一の障害から通常派生する疼痛は,上位の機能障害又は変形障害に含めて評価されることがある。併合を主張するときは,①痛みの主座が踵骨部又は距骨下関節部であること,②足関節可動域制限とは別の画像・診察所見があること,③それぞれが別の動作障害を生じさせることを具体化する必要がある。

5 踵骨変形を長管骨変形又は下肢短縮と混同しない

踵骨は足根骨であり,大腿骨又は脛骨のような長管骨ではない。このため,踵骨の扁平化,幅広化,内反・外反変形又は外側壁膨隆があるだけで,第12級8号の「長管骨に変形を残すもの」に当たるわけではない。また,踵骨高の低下は,制度上の下肢短縮の測定と同じではない。

ただし,踵骨変形が無意味になるのではない。変形は,距骨下関節症,腓骨筋腱との衝突,神経障害,靴装着困難及び荷重時痛を裏付け,神経症状の等級又は具体的な労働能力低下を判断する資料となり得る。

第4 公的裁決が示す評価の分岐

1 平成24年の厚生労働省裁決例

平成24年の厚生労働省裁決例は,トラックによる挟圧で両大腿骨及び右踵骨等を骨折した事案について,右足関節の機能障害と右踵骨骨折に伴う神経症状を別に評価した。右踵骨の変形治癒が頑固な疼痛を裏付ける所見とされた点は,変形それ自体の等級と,変形を根拠とする疼痛等級とを区別する資料となる。

2 平成28年労第533号裁決

平成28年労第533号裁決は,両踵骨粉砕骨折後の事案で,足関節可動域が正常であったことから足関節の機能障害を認めなかった一方,左右各踵骨部の頑固な疼痛をそれぞれ第12級として評価し,両者を合わせて準用第11級相当とした。踵骨骨折という傷病名から足関節機能障害を推定せず,可動域と疼痛を別々に判断した点に実務上の意味がある。

これらは労災保険の行政裁決であって,民事裁判の判決ではない。また,個別の等級は各事件の画像,診察所見及び経過によって決まるため,骨折型が似ているというだけで同じ結論になるものではない。

第5 症状固定前後の立証資料

1 低負担の資料から時系列を作る

最初から専門家意見書を依頼するよりも,まず事故直後から症状固定までの既存資料をそろえ,骨折,治療,画像変化,症状及び機能の時系列を作る方が効率的である。資料の取得主体は原則として被害者側であり,医療機関に対する診療記録の開示手続を利用するが,保存状況や画像形式によって全部を直ちに取得できるとは限らない。

(1) 画像・診療資料

優先して確認する資料は,①救急搬送記録及び事故状況,②初診時から症状固定時までの単純X線・CTのDICOMデータ,③手術記録,術中画像及び退院時サマリー,④診療録及び理学療法記録,⑤後遺障害診断書である。印刷画像だけでは断面又は撮影条件を十分に確認できないことがあるため,画像は可能であればDICOMデータで取得する。

(2) 症状・生活・仕事の記録

医学記録と並行して,①痛む場所と動作,②圧痛,知覚異常及び腫脹,③靴の制限,④立位・歩行可能時間,⑤階段,凹凸路,方向転換,運転及びしゃがみ込み,⑥事故前後の具体的な職務内容を整理する。単に「歩行困難」と書くより,何分で休憩が必要か,安全靴を履けるか,不整地作業又はペダル操作ができるかを示す方が,医学的機序と労働への影響を検討しやすい。

2 可動域測定を監査する

可動域については,①測定対象が足関節か距骨下関節か,②背屈・底屈と内がえし・外がえしが混同されていないか,③他動・自動の別,④健側・患側,⑤膝の肢位,測定日,測定者及び疼痛の有無,⑥反復測定の再現性を確認する。後遺障害診断書の一回の数値だけが診療経過と大きく異なる場合は,測定条件又は記載誤りの確認が先になる。

症状固定前に連続した可動域値が記録されていれば,改善が止まった時期と測定値の再現性を示しやすい。他方で,痛みのため他動測定が医学的に適切でない場合等には自動運動を用いる余地があるため,数値だけでなく,なぜその測定法を選んだかを診療録に残す必要がある。

3 画像所見と症状を結ぶ質問

画像を評価するときは,①関節内骨折の範囲,②後距踵関節面の段差・ギャップ,③踵骨高・幅・軸,④骨癒合又は部分癒合不全,⑤外傷後距骨下関節症,⑥外側インピンジメント,⑦腱・神経・軟部組織との位置関係,⑧各画像時点の変化を分けて確認する。画像上の異常,診断名,事故との因果関係,症状の機序及び法的等級を一つの質問に混ぜると,回答の根拠が不明確になりやすい。

術後13例の歩行解析研究では,CT上の距骨下関節面の段差が大きいほど後足部運動及び患者報告機能が不良である相関が示された。ただし,少数例の観察研究であり,個別の等級を直接証明するものではない。画像所見を具体的な診察所見及び動作障害へ結び付ける補助資料として位置付けるべきである。

4 追加意見を求める条件と停止基準

整形外科医又は画像診断医の追加意見は,既存画像と診療録を整理した後も,等級を左右する特定の争点が残る場合に検討する。例えば,関節面不整が荷重時痛を説明するか,外側壁膨隆が腓骨筋腱障害を生じさせているか,又は足関節と距骨下関節のどちらが運動制限の主座かが結論を分ける場合である。何が判明すれば申請又は異議申立ての結論が変わるかを先に定める必要がある。

反対に,反復された足関節可動域が基準を明らかに上回り,距骨下関節又は踵骨部の症状にも一貫性・医学的説明可能性がなく,追加画像でも新しい争点を解決できない場合は,高額な私的意見書へ進む合理性が乏しい。もっとも,足関節機能障害が難しいことと,疼痛等級の可能性がないことは同じではないため,停止判断も障害系列ごとに行う。

第6 等級認定後の損害評価

1 等級と労働能力喪失は別の判断である

自賠責の後遺障害等級が認定されても,民事上の逸失利益は職種,年齢,症状固定後の収入,配置転換及び具体的な作業制限を踏まえて判断される。踵骨骨折では,長時間立位,不整地歩行,昇降,重量物運搬,安全靴の装着又は車両のペダル操作への影響を,事故前の職務と比較して示す必要がある。

反対に,現実の減収が直ちに生じていなくても,職場の配慮,担当業務の限定,昇進機会の減少又は退職後の転職制限によって将来の不利益が生じることがある。等級表の労働能力喪失率を機械的に当てはめるだけでなく,医学的障害がどの職務動作を制限するかを具体化することが重要である。

2 想定される反論と確認資料

保険会社側からは,①足関節可動域が正常又は基準を超える,②症状が距骨下関節に限られ第12級7号の対象でない,③骨癒合が得られている,④症状の訴え又は通院が一貫しない,⑤既往症又は別の原因がある,⑥就労上の減収がない等の反論が想定される。これに対しては,等級を先に決めて資料を集めるのではなく,各反論が医学的・事実的に成り立つかを,画像,診療経過,可動域及び職務資料の順に確認する必要がある。

第7 出典・参考資料

1 法令・行政資料

e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法施行令」(昭和30年政令第286号)第2条・別表第二

国土交通省「自賠責保険・共済に関する各種資料」掲載の支払基準

厚生労働省労働基準局長「せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準について」(平成16年6月4日基発第0604003号)

厚生労働省「国民年金・厚生年金保険障害認定基準の参考資料の差替え等について」(令和4年3月24日事務連絡)

厚生労働省・平成24年裁決例及び厚生労働省・平成28年労第533号裁決

2 医学文献

①Griffin D et al., Operative versus non-operative treatment for closed, displaced, intra-articular fractures of the calcaneus: randomised controlled trial, BMJ. 2014; PMCID: PMC4109620. Europe PMC全文

②Lewis SR et al., Surgical versus non-surgical interventions for displaced intra-articular calcaneal fractures, Cochrane Database Syst Rev. 2023; PMCID: PMC10628987. Europe PMC全文

③van Hoeve S et al., Gait Analysis and Functional Outcome After Calcaneal Fracture, J Bone Joint Surg Am. 2015; PMCID: PMC6951845. Europe PMC全文

3 書籍

①井樋栄二・津村弘監修『標準整形外科学 第15版』医学書院,2023年,863頁~865頁。

②榎木貴之・小杉晴洋『自賠責・紛争処理事例と判例から読み解く後遺障害等級認定の判断―傾向を踏まえた交通事故事件処理―』新日本法規,2026年,176頁~177頁,397頁~398頁,435頁~437頁。

③加藤義治『医師と損保のためのわかりやすい交通事故外傷ガイドQ&A整形外科編』保険毎日新聞社,2024年,122頁~125頁。

④アディーレ法律事務所編『申請事例からみる交通事故後遺障害の等級認定』中央経済社,2022年,638頁。

4 関連記事

足関節の可動域制限と後遺障害12級7号――認定基準,測定方法,代償動作及び裁判例(AI作成)