年末調整に関するメモ書き


目次

0 総論
1 扶養控除等申告書
2の1 基礎控除申告書
2の2 配偶者控除等申告書
2の3 所得金額調整控除申告書
3 保険料控除申告書
4 住宅借入金等特別控除申告書
5 ふるさと納税及びワンストップ特例制度
6 年末調整の計算サイト
7 年末調整で過納額が出た場合の取扱い
8 関連記事その他

0 総論
(1) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には,「年末調整を行う理由」として以下の記載があります。
 年末調整とは、源泉徴収された税額の年間の合計額と、年税額を一致させる精算の手続です。
 年末調整の対象となっているのは、原則として、勤務先に「扶養控除等申告書」を提出している人ですが、給与の収入金額が2,000万円を超える人など、一定の人は年末調整の対象とはなりません。
 この精算の手続をするためには、「扶養控除等申告書」のほか、「基礎控除申告書」、「配偶者控除等申告書」、「所得金額調整控除申告書」、「保険料控除申告書」又は「住宅借入金等特別控除申告書」を勤務先に提出する必要があります。
(2) 年末調整の場合,以下の書類を従業員に提出してもらうこととなります。
① 扶養控除等申告書
② 基礎控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書 兼 配偶者控除等申告書
③ 保険料控除申告書
④ 住宅借入金等特別控除申告書
(3) オフィスステーションHP「年末調整で必要な提出書類には、どのようなものがある?」には以下の記載があります。
 年末調整では、さまざまな 書類を集めたり、作成したりする必要があります。年末調整の計算に使った給与所得者の扶養控除等(異動)申告書などの書類は、税務署に提出する必要がありません。
 しかし、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表や源泉徴収票、支払調書、給与支払報告書は、税務署や市区町村などに提出する必要があります。

1 扶養控除等申告書
(1) 国税庁HPに扶養控除等申告書の記載例が載っています。
(2) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には以下の記載があります。
 従業員の方は「扶養控除等申告書」を、その年の最初の給与の支払を受ける日の前日までに勤務先(2か所以上から給与の支払を受けている人は、主たる給与の支払を受けている勤務先。)に提出することになっています。
 この申告書は、扶養親族や源泉控除対象配偶者などがいない人でも提出しなければならないこととされており、この申告書の提出のない人が支払を受ける給与に対する源泉徴収税額は、税額表の「乙」欄が適用されることになります(この申告書を提出した場合よりも高い税率が適用されます。)。
 また、年末調整においては、勤務先はこの申告書の情報から、扶養控除等の額(扶養控除、障害者控除、寡婦控除、ひとり親控除、勤労学生控除)を確認することとなります。
 そのため、まだ申告書を提出していない場合や、控除対象扶養親族等に異動があって「異動申告書」(注)の提出をしていない場合は、早急に提出をしましょう。
(注) 控除対象扶養親族であった人の就職、結婚などにより控除対象扶養親族の数が減少した場合など、年の中途で「扶養控除等申告書」の記載内容に変更があった場合には、その都度、「異動申告書」を提出することになっています。
(3) 非居住者である親族に係る扶養控除又は障害者控除の適用を受ける場合,その年最後に給与の支払を受ける日の前日までに,その親族と生計を一にする事実を記載した上で提出すれば足ります(国税庁HPの「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」参照)。

2の1 基礎控除申告書

(1) 基礎控除申告書は令和2年分から新しく設けられた申告書であり,国税庁HPに基礎控除申告書の記載例が載っています。
(2) 令和元年分までは,合計所得金額に関わらず一律38万円の控除を受けることができましたが,令和2年分以降は,年末調整において基礎控除(最大48万円の控除)の適用を受けるときは,従業員が勤務先に基礎控除申告書を提出する必要があります。
(3)ア 芦屋会計事務所HP「【年末調整】給与所得者の基礎控除申請書の書き方は?収入金額や独身など」には以下の記載があります。
 独身者で「扶養親族等がいない」「特別障害者ではない」のであれば、記入項目は基本情報と給与所得者の基礎控除申請書だけとなります。
イ タウンワークマガジンHP「副業がバレない方法はないの?バレる理由は?バレるとどうなる?」には以下の記載があります。
 年末調整の際に、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」を提出します。その中の「給与所得者の基礎控除申告書」には、「給与所得」記載欄があり、これは副業分も含めて合算で記載する必要があります。また、副業が給与所得でない場合でも、「給与所得以外の所得の合計額」欄に額を記載する仕組みとなっています。

2の2 配偶者控除等申告書
(1) 国税庁HPに配偶者控除等申告書の記載例が載っています。
(2) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には以下の記載があります。
 「配偶者控除」とは、従業員の方の合計所得金額が1,000万円以下で、その従業員の方と生計を一にする配偶者の合計所得金額が48万円以下である場合に受けられる控除で従業員の方の合計所得金額に応じて38万円を限度として控除されます(配偶者が70歳以上の場合は、48万円を限度として控除されます。)。
 「配偶者特別控除」とは、従業員の方の合計所得金額が1,000万円以下で、その従業員の方と生計を一にする配偶者の合計所得金額が48万円を超え133万円以下である場合に受けられる控除です。従業員の方の合計所得金額と配偶者の合計所得金額に応じて38万円を限度として控除されます。
 年末調整において「配偶者控除」又は「配偶者特別控除」を適用するためには、勤務先に「配偶者控除等申告書」を必ず提出する必要があります。

2の3 所得金額調整控除申告書

(1) 国税庁HPに所得金額調整控除申告書の記載例が載っています。
(2) 「所得金額調整控除」とは,年末調整の対象となる給与の収入金額が850万円を超える人が次のいずれかの要件を満たす場合に適用される控除です。
① 23歳未満の扶養親族を有する場合
② 従業員ご本人が特別障害者である場合
③ 従業員の扶養親族や同一生計配偶者が特別障害者である場合
(3) 年末調整において「所得金額調整控除」を適用するためには,勤務先に「所得金額調整控除申告書」を必ず提出する必要があります。

3 保険料控除申告書

(1) 国税庁HPに保険料控除申告書の記載例が載っています。
(2) 生命保険料や地震保険料については「保険料控除申告書」に基づいて控除の適用を受けます。

4 住宅借入金等特別控除申告書
(1) 国税庁HPに住宅借入金等特別控除申告書の記載例が載っています。
(2) 国税庁HPの「給与所得者(従業員)の方へ(令和4年分)」には以下の記載があります。
 「住宅借入金等特別控除」とは、住宅借入金等の年末残高に応じて、一定額を税額から直接差し引くことができる控除です。
 最初の年分は確定申告により適用を受ける必要がありますが、2年目以降は年末調整の際に適用を受けることができますので、年末調整の時までに「住宅借入金等特別控除申告書」を給与の支払者へ提出してください。
 なお、「住宅借入金等特別控除申告書」は、控除を受けることとなる各年分のものを一括して税務署から従業員ご本人に送付しています。
(3) 金融広報中央委員会HPに「7.住宅借入金等特別控除制度の仕組み」が載っています。

5 ふるさと納税及びワンストップ特例制度
(1) ふるさと納税の控除は年末調整ではできません(ふるさとチョイス「年末調整のとき、会社員はふるさと納税の証明は必要?理由とともに解説」参照)。
(2) ふるさと納税の謝礼として供与された返礼品に係る経済的利益は一時所得に該当します(国税庁HPの「ふるさと納税の返礼品の収入計上時期」参照)。
(3)ア ワンストップ特例制度は,ふるさと納税をした後に確定申告をしなくても寄付金控除が受けられる便利な仕組みでありますところ,ワンストップ特例制度を利用するためには,申請書と必要書類は寄付をした翌年の1月10日必着で寄付先の自治体に送る必要があります(ふるさとチョイスの「ワンストップ特例制度」参照)。
イ さとふるHPの「確定申告を行った場合とワンストップ特例制度を申請した場合、受ける控除は異なりますか?」には以下の記載があります。
 確定申告を行うと、ふるさと納税を行った年の所得税からの控除(還付)と、翌年の住民税から控除されます。
一方、ワンストップ特例制度の場合は、所得税の還付は無く、住民税の減税のみの控除となります。
 多くの方の場合はどちらで控除を受けられても控除額は同等となりますが、ご自身について正確な確認を行いたい場合は、最寄りの税務署や税理士等へお問い合わせいただきますようお願いいたします。

6 年末調整の計算サイト

(1) 最強の税務情報提供サイトMyKomon TAX「年末調整用 給与所得金額計算」が載っています。
(2) 生活や実務に役立つ計算サイト「源泉徴収票(給与所得)」が載っています。

7 年末調整で過納額が出た場合の取扱い
(1) Bizerの「年末調整で還付があった場合の納付書(給与所得等の所得税徴収高計算書)の書き方」には「摘要」欄の記載に関して以下の記載があります。
相談者:年末調整で還付される金額が「172,174円」でも、「年末調整による超課税額」欄は「134,282円」と記入して、「172,174円」ではないのですね。
村田税理士:はい、ここの欄は、今回の納付所得税額から控除する金額を記載するので、本税が0円になる金額の「134,282円」を記載します。
相談者:記載例の吹き出しを見ると、税金0円の場合でも税務署への提出は必要なのですね。忘れないように注意します。
(2)ア 源泉所得税の納期特例を利用している給与等の支払者が年末調整により生じた過納額を給与等の受給者に還付する場合,3月1日までに過納額の還付を受けることはできませんから,所得税法191条及び所得税法施行令313条に基づき,源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求をすることができます(国税庁HPの「[手続名]源泉所得税及び復興特別所得税の年末調整過納額の還付請求」参照)。
イ 年末調整過納額の還付請求をする場合,年末調整により過納額が生じた給与等の受給者各人ごとの給与所得の源泉徴収簿(過納額が生じた年分と過納額を還付する年との2年分)の写し1部が必要となります。
(3)ア 年末調整過納額の還付請求は,所得税法施行令313条及び所得税基本通達191-2(過納額が著しく過大である場合の還付の特例)に基づく取扱いですから,当該請求をしない場合,所得税法施行令312条及び所得税基本通達191-1(過納額の計算上控除された未徴収の税額)に基き,翌年7月の源泉所得税から年末調整還付金を控除できると思います。
イ 所得税基本通達191-1(過納額の計算上控除された未徴収の税額)は以下のとおりです。
法第191条に規定する過納額の計算上同条かっこ内の規定により超過額から控除されたまだ徴収されていない部分の金額に相当する税額は、その後においてはその徴収を要しないものとする。この場合において、当該税額をその後において徴収したときは、その徴収の時に当該徴収した金額に相当する当該過納額が生じたものとする。
ウ 総務の森HPの「納期の特例による源泉所得税の納め過ぎについて」が参考になります。

8 関連記事その他

(1) 国税庁HPの「年末調整計算シート」に,給与所得者に対する源泉徴収簿(PDF)及び年末調整計算シート(エクセル)が載っています。
(2) 税務研究ノート(栗原洋介税理士事務所)「ペーパーレスで年末調整するなら、10月末までに申請しておこう」が載っています。
(3) ウェルスハックHP「【早見表付】年収200万円~1億円の手取り|計算式と簡易計算方法も解説」が載っています。
(4) 「税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書」(平成14年6月6日付)には「年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する。」と書いてあります。
(5) 以下の記事も参照してください。
・ 個人事業主の税金,労働保険及び社会保険に関するメモ書き


広告
スポンサーリンク