メインコンテンツへスキップ
       

取引相場のない株式(出資)の評価明細書の書き方―令和8年様式の第1表から第7表の3まで(AI作成)

第1 令和8年様式の対象と表番号

1 令和8年様式を使う取得日と提出方法

取引相場のない株式(出資)の評価明細書は,相続,遺贈又は贈与により取得した取引相場のない株式,持分会社の出資等及びこれらに関する権利の価額を,相続税又は贈与税の申告のために計算する書類である。相続税法22条は取得時の時価による評価を原則とし,この明細書は財産評価基本通達169から194までに基づく計算過程を表ごとに示すものである。制度全体の評価方式については,遺産相続における非上場株式の評価方法(AI作成)で説明している。

令和8年様式の対象は,令和8年4月1日以後に相続,遺贈又は贈与により取得した財産である。令和6年1月1日から令和8年3月31日までに取得した財産には令和6年様式を使うため,申告書を作成する年ではなく,相続開始日又は贈与による取得日を最初に確認する必要がある。完成した明細書は相続税又は贈与税の申告書に添付し,e-TaxではPDFファイルへ変換して添付する。

2 令和8年様式には第8表がないこと

国税庁の令和8年様式は全13頁であり,第1表の1,第1表の2,第2表,第3表,第4表の1,第4表の2,第5表,第6表,第7表の1,第7表の2及び第7表の3から成る。したがって,令和8年様式に「第8表」は存在せず,末尾は「第7表の3」である。

これに対し,令和6年様式は,第4表,第7表及び第8表という表番号を用いていた。令和8年様式では,旧第4表が第4表の1・第4表の2に,旧第7表と旧第8表が第7表の1・第7表の2・第7表の3に再編され,旧第8表の純資産価額の修正,S1,S2及び最終価額の計算は第7表の3へ移っている。旧書籍又は旧記事の「第8表」という説明を参照するときは,令和8年様式の第7表の3へ読み替える必要がある。

令和8年改正では,純資産価額方式における評価差額に対する法人税額等相当額の割合も37%から38%へ変更された。国税庁が令和8年3月に公表した改正説明は,当時の表番号に従って第5表と第8表の改正予定を記載しているが,令和8年6月26日に公表された最終様式では第5表と第7表の3に38%が表示されている。表番号と割合の双方について,新旧様式を混在させてはならない。

3 この記事が扱う株式と出資の範囲

以下は,株式会社の普通株式を中心に,令和8年様式の各表へ何を記載するかを説明するものである。財産評価基本通達194は持分会社の出資を同通達178から193までに準じて評価すると定めるが,医療法人の出資には同通達194-2による固有の調整があり,農業協同組合等又は企業組合等の出資にも別の定めがある。出資であるという理由だけで,株式会社の株式数,議決権及び配当の欄を機械的に置き換えることはできない。

また,本明細書は相続税又は贈与税の評価に用いる書類であり,会社法上の株式売買価格,M&Aの企業価値又は従業員持株会の譲渡価格を直接決定する書類ではない。従業員持株会の譲渡価格については,従業員持株会における株式譲渡価格の税務上の取扱い(AI作成)で別に説明している。

第2 作成前に集める資料と実際の作成順序

1 各表に必要となる基礎資料

国税庁の手続案内は添付書類を「評価に際し,参考となる書類」としており,個々の会社に共通する閉じた一覧を示していない。もっとも,明細書は株主判定,法人税申告上の数値及び各資産の相続税評価額を相互に転記するため,少なくとも次の資料を先にそろえなければ,表の途中で計算が止まる。

資料群主な資料主に使う表
会社・株主関係履歴事項全部証明書,定款,株主名簿,種類株式の内容,単元株式数,自己株式数,相続又は贈与による取得後の持株数第1表の1・第1表の2
決算・法人税関係直前3期分の決算書,法人税申告書,別表四,別表五(一),勘定科目内訳明細書,総勘定元帳,株主資本等変動計算書第1表の2,第2表,第3表,第4表の1・第4表の2,第7表の1
資産・負債関係固定資産台帳,不動産・有価証券・保険契約等の評価資料,借入金残高,未払税金,退職手当金等の決議・計算資料第2表,第5表,第7表の3
売上・従業員関係事業別売上高,雇用契約,就業規則,賃金台帳,勤務期間及び労働時間の集計第1表の1・第1表の2,第4表の2
直前期末後の異動増減資,配当,株式割当て,組織再編,資産取得・売却,借入れ及び返済を示す議事録・契約書・会計記録第1表の2,第4表の2,第5表

この表は作業資料の目安であり,全資料を無条件に申告書へ添付するという意味ではない。実際には,採用した数値,評価方法及び省略した欄の根拠を説明できる資料を選び,会社名,事業年度,課税時期及び金額が明細書と一致するかを確認する。

2 表番号順ではない実際の作成順序

国税庁の記載方法は,第1表の1・第1表の2で株主区分と会社規模を判定し,第2表で特定の評価会社に当たるかを判定した後,評価方式に応じて第3表以下を作成するという全体構造を示している。しかし,第2表の比準要素数の判定は第4表の1を,第2表の株式等保有割合及び土地保有割合は第5表を参照するため,実際の入力作業を単純な表番号順に進めることはできない。

実作業は,①取得日を確定して様式を選ぶ,②第1表の1で取得後の株主・議決権を整理し,第1表の2で少数株主と会社規模を判定する,③第4表の1で比準要素を,第5表で相続税評価額による資産・負債を必要な範囲まで計算する,④その数値を第2表へ戻して特定の評価会社該当性を確定する,⑤一般の評価会社なら第4表の2及び第5表から第3表へ,特定の評価会社なら第5表及び必要な第7表から第6表へ転記する,という順序が分かりやすい。

もっとも,評価会社が特定の評価会社に明らかに該当しない場合,第2表は省略できる。また,配当還元方式を使う株主について,原則的評価方式等による価額が配当還元価額より高いことが明らかで,原則的評価方式等の計算を省略する場合も第2表を省略できる。省略できるかを確認せず,全社について第4表から第7表までを一律に作成する必要はない。

3 単位,端数処理及び転記の共通ルール

各欄の金額は,各表に別段の定めがない限り,表示単位未満を切り捨てる。他の欄から転記する金額は,転記先で再計算又は再度の端数処理をせず,転記元に表示した金額をそのまま記載する。表間で1円又は1千円の差が生じたときは,独自に合わせるのではなく,転記元,表示単位及び切捨て位置を確認する。

指定された欄で,表示単位未満を切り捨てると0になる場合は,その値を0にせず,分数で記載することが原則である。納税義務者は小数表示を選べるが,課税時期基準の欄では課税時期の発行済株式数,直前期末基準の欄では直前期末の発行済株式数の桁数に応じた小数位未満を切り捨てる。どちらの基準を使う欄かは,国税庁の記載方法等で個別に確認する必要がある。

第3 第1表及び第2表による評価方式の判定

1 第1表の1―取得後の株主,議決権及び株主グループ

第1表の1は,会社概要,課税時期,直前期末,事業内容及び課税時期現在の株式等の所有状況を記載し,納税義務者が原則的評価方式等を使う株主か,配当還元方式を使う株主かを最初に判定する表である。事業内容は単なる登記目的ではなく,実際の取扱品目と製造・卸売・小売等の区分,直前期末以前1年間の事業別取引金額の構成比を具体的に記載する。

株主欄の株式数は,相続,遺贈又は贈与による取得前ではなく,取得後の株式数である。単元株制度がなければ原則として1株1議決権であるが,単元株,議決権制限株式その他の種類株式,会社法308条1項により議決権を有しない会社の保有株式及び自己株式がある場合は,株式数と議決権数を分けて記載する。普通株式以外を保有するときは種類ごとに行を分け,同じ株主が持つ各種類の議決権数を合計して議決権割合を判定する。

相続税申告時に株式が未分割である場合は,納税義務者の「未分割の株式の株式数」欄へ未分割株式数を記載し,実際の持株数に未分割株式数を加えた議決権数で判定する。同族関係者は配偶者と近い親族だけではなく,6親等内の血族,3親等内の姻族及び支配関係にある法人等を含み得るため,家族だけを記載して判定を終えてはならない。第1表の1・第1表の2に付属する「同族関係者の範囲等」に照らし,納税義務者の属するグループと筆頭株主グループを分けて集計する。

議決権割合は原則として1%未満を切り捨てるが,グループ割合が50%超から51%未満までのときは51%と記載する特則がある。第1表の1の判定後,同族株主等に当たる納税義務者自身の議決権割合が5%未満である場合は,直ちに配当還元方式とせず,第1表の2の少数株式所有者の判定へ進む。

2 第1表の2―少数株主判定,会社規模及びLの割合

第1表の2の少数株主判定は,納税義務者が役員か,中心的な同族株主か,納税義務者以外に中心的な同族株主又は中心的な株主がいるかを順番に判定する。役員については課税時期現在だけでなく,課税時期の翌日から法定申告期限までに役員となった者も「役員である」として扱うため,課税時期の登記事項だけでは足りない場合がある。

会社規模は,直前期末の総資産価額の帳簿価額,直前期末以前1年間の取引金額及び従業員数により,大会社,中会社又は小会社を判定し,中会社ではLの割合を0.90,0.75又は0.60に区分する。従業員数が70人以上の会社は大会社であり,70人未満の会社は業種別の総資産・従業員基準と取引金額基準を組み合わせる。様式には基準額が印刷されているため,数値を別資料から転記せず,課税時期に対応する様式の基準へ直接当てはめる。

総資産価額は直前期末の確定決算上の各資産の帳簿価額の合計であり,間接法で表示した減価償却累計額は控除する一方,売掛金等に対する貸倒引当金は控除しない。前払費用,繰延資産及び繰延税金資産等は確定決算上の資産に含め,従業員数は継続勤務従業員とそれ以外の従業員の年間労働時間を1,800時間で換算した数を加えて求める。社長等の一定の役員や,週30時間未満の継続勤務者の扱いを給与台帳の人数だけで処理しないことが重要である。

第1表の2の末尾には,直前期末後の増減資,課税時期以前3年間の社名変更・事業年度変更・合併等,種類株式の内容,配当の基準日と効力発生日その他の評価上の参考事項を記載する。この欄は,第4表の2及び第5表で直前期末の数値を課税時期へつなぐための照合欄でもある。

3 第2表―特定の評価会社に当たるか

第2表は,①比準要素数1の会社,②株式等保有特定会社,③土地保有特定会社,④開業後3年未満の会社等,⑤開業前又は休業中の会社,⑥清算中の会社の順に該当性を判定する。後順位の区分に該当すると先順位の一部を記載しない構造になっているため,複数の欄へ機械的に「該当」と記載してはならない。

比準要素数1又は0の判定要素は第4表の1から,株式等保有割合及び土地保有割合の総資産・株式等・土地等の価額は第5表から転記する。株式等保有割合と土地保有割合は1%未満を切り捨てる。第5表を直前期末の資産・負債で作成できる例外を使う場合は,第2表の特定会社判定,第5表の純資産価額及び第7表の3のS2について,同じ直前期末時点にそろえなければならない。

株式等保有特定会社と土地保有特定会社については,課税時期前に合理的理由なく資産構成を変動させ,特定会社の判定を免れるためのものと認められるときは,その変動がなかったものとして判定する旨が財産評価基本通達189に定められている。判定日前の一時的な資産移動がある場合は,貸借対照表の割合だけで結論を出さず,取引目的,資金の流れ及び継続状況を確認する必要がある。

第4 一般の評価会社で使う第3表から第5表

1 第4表の1―評価会社の配当,利益及び簿価純資産

第4表の1は,評価会社の1株当たりの資本金等の額と,類似業種比準価額に用いる配当,利益及び簿価純資産の3要素を計算する表である。直前期末の資本金等の額は法人税申告書別表五(一)の差引翌期首現在資本金等の額から,利益積立金額は同表の差引翌期首現在利益積立金額の差引合計額から確認する。発行済株式数から自己株式数を除き,資本金等の額を50円とした場合の株式数へ換算するため,登記上の資本金又は実際の1株価額だけでは作成できない。

年配当金額は,直前期末以前2年間に配当の効力が発生した経常的な剰余金配当を基にし,特別配当・記念配当等の非経常的な配当を除く。年利益金額は会計上の当期純利益ではなく,法人税の課税所得を起点に,非経常的な利益,受取配当等の益金不算入額,所得税額及び繰越欠損金控除額等を所定欄で調整する。直前期1年の金額と直前2年間の平均額のいずれを選べるか,また比準要素数1・0の判定のため直前々期以前を記載する必要があるかを分けて考える。

第4表の1で計算したB1・B2,C1・C2及びD1・D2は第2表の特定会社判定へ,評価会社のB,C及びDは第4表の2の比準割合へ進む。負数を0とする欄や,直前3期目を省略できる場合があるため,計算途中の負数をそのまま転記しない。

2 第4表の2―類似業種比準価額

第4表の2では,直前期末以前1年間の取引金額に基づいて類似業種と業種目番号を選び,課税時期の属する年の国税庁公表値A,B,C及びDを記載する。複数業種を営む会社は,単に売上最大の細分類を選ぶのではなく,50%超の業種があるかを確認し,該当しない場合は中分類又は大分類へまとめる財産評価基本通達181-2の順序に従う。

類似業種の株価Aは,課税時期の属する月以前3か月の各月株価のうち最も低いものを原則とし,前年平均株価又は課税時期の属する月以前2年間の平均株価を選ぶこともできる。したがって,令和8年分の業種目及び業種目別株価等で,課税時期の月に対応する公表値がそろっているかを確認し,前年資料のA,B,C又はDを流用しない。

評価会社のB・C・Dと類似業種のB・C・Dから要素別比準割合を求め,各割合は小数点以下2位未満を切り捨てる。算式中のしんしゃく率は大会社0.7,中会社0.6,小会社0.5であり,その後,実際の1株当たり資本金等の額へ戻す。直前期末の翌日から課税時期までに配当の効力発生,株式割当て又は無償交付等があれば,表末尾で比準価額を修正する。

3 第5表―相続税評価額による純資産価額

第5表は,課税時期現在の各資産を財産評価基本通達による相続税評価額へ洗い替え,同じ資産の税務計算上の帳簿価額と並べ,各負債及び評価差額に対する法人税額等相当額を控除して1株当たり純資産価額を計算する表である。第2表の株式等保有割合・土地保有割合,第3表,第6表及び第7表の3にも数値を供給するため,単なる純資産価額方式の計算表にとどまらない。

資産の「相続税評価額」欄は会計上の時価ではなく,資産ごとの財産評価基本通達に従った価額である。課税時期前3年以内に取得又は新築した土地等及び家屋等は,路線価又は固定資産税評価額をそのまま使うのではなく,課税時期の通常の取引価額に相当する金額を用い,帳簿価額が通常の取引価額に相当すると認められるときは帳簿価額を使うことができる。これらは他の土地・家屋と科目を分けて記載する。

評価会社が保有する別の取引相場のない株式等を純資産価額で評価するときは,その発行会社側で評価差額に対する法人税額等相当額を控除しない金額を第5表へ記載する。帳簿価額のない借地権・営業権等でも相続税評価額が生じるときは帳簿価額0とし,反対に帳簿価額があっても財産性がなく相続税評価額を算出しない繰延資産等は記載しない。株式等,土地等及び一定の現物出資等受入れ資産は,総資産中の保有割合等を判定できるよう別集計する。

負債は課税時期現在の金額を記載するが,貸倒引当金,退職給与引当金,納税引当金その他の引当金・準備金及び繰延税金負債相当額は負債に含めない。他方,帳簿に未計上でも,課税時期に未払いの公租公課・利息,課税時期以前に賦課期日のあった固定資産税・都市計画税,被相続人の死亡により支給が確定した退職手当金等及び当期税額の課税時期までの期間対応額は,所定の要件を満たす限り負債に含める。

仮決算をしていないため課税時期の資産・負債が明確でない場合でも,直前期末から課税時期まで著しい増減がなく,評価額への影響が少ないと認められるときは,直前期末の資産・負債を課税時期の相続税評価額又は帳簿価額へ置き換えて計算できる。ただし,死亡保険金請求権,死亡退職金,配当,増減資,大口の資産取得・売却又は借入れ等があれば影響を個別に確認し,第2表及び第7表の3と判定時点をそろえる。

令和8年様式では,相続税評価額による純資産価額と帳簿価額による純資産価額の正の差額に38%を乗じ,法人税額等相当額を計算する。最後に課税時期の発行済株式数から自己株式数を除いた数で割り,取得者と同族関係者の議決権合計が50%以下の株主グループに属するときに限って80%評価の欄を用いる。この80%は非上場株式一般に適用する割引ではない。

4 第3表―一般の評価会社の最終価額

第3表は,第2表で特定の評価会社に該当しない一般の評価会社について,第4表の2の類似業種比準価額と第5表の純資産価額を会社規模に応じて組み合わせ,1株当たりの原則的評価方式による価額を確定する表である。大会社,中会社及び小会社の各算式に,第1表の2で判定したLの割合と,第4表の2・第5表から転記した金額を入れる。

第1表の判定で配当還元方式を使う株主に当たる場合は,直前期末以前2年間の配当を基に,1株当たり資本金等の額を50円とした年配当金額を計算する。年配当金額が2円50銭未満又は無配の場合は2円50銭とし,10%で還元した後に実際の1株当たり資本金等の額へ戻す。ただし,配当還元価額が原則的評価方式による価額を超えるときは原則的評価方式による価額が上限となるため,両者の比較を忘れてはならない。

課税時期に配当期待権,株式の割当てを受ける権利,株主となる権利又は株式無償交付期待権が発生している場合は,第3表の修正欄と権利評価欄を使う。これらがなければ空欄でよく,株式の評価額と権利の評価額を区別して最終欄へ記載する。

第5 特定の評価会社で使う第6表及び第7表

1 第6表―特定の評価会社の最終価額

第6表は,第2表で特定の評価会社に該当した場合に,第5表の純資産価額,必要な類似業種比準価額又はS1+S2方式の金額を受けて1株当たりの価額を確定する表である。一般の評価会社に使う第3表と同じ結果表ではなく,比準要素数1の会社,株式等保有特定会社,土地保有特定会社,開業後3年未満の会社等又は開業前・休業中の会社の区分に応じ,様式に印刷された該当行だけを使う。

比準要素数1の会社は純資産価額を原則とし,所定のLを0.25とする併用方式を選べる。株式等保有特定会社は純資産価額を原則とし,S1+S2方式を選べる。土地保有特定会社,開業後3年未満の会社等及び開業前・休業中の会社は,それぞれ財産評価基本通達189-4又は189-5に従って純資産価額を基にする。清算中の会社は第6表の定型計算だけで完結せず,清算による分配見込額と分配時期に基づく計算根拠を適宜の様式で示す。

第1表の判定で配当還元方式を使う株主に当たる場合,第6表でも配当還元価額と特定会社としての原則的価額を比較し,低い方を採る。株式に関する権利が発生している場合の修正も,第3表と同様に別欄で行う。

2 第7表の1・第7表の2―S1の類似業種比準価額

第7表の1から第7表の3までを使うのは,評価会社が株式等保有特定会社であり,納税義務者がS1+S2方式を選択する場合である。株式等保有特定会社であっても純資産価額だけで評価する場合や,他の特定会社に該当する場合に,第7表を一律に作るものではない。

第7表の1は,直前期・直前々期の受取配当金等と営業利益から受取配当金等収受割合を求め,株式等に由来する配当,利益及び簿価純資産を控除する形で,S1の比準要素を修正する。受取配当金等収受割合は小数点以下3位未満を切り捨て,直前期末の株式等の税務上の帳簿価額は第5表を直前期末で作成したときの対応欄と一致させる。

第7表の2は,第7表の1で修正したB・C・Dを使い,S1の類似業種比準価額を計算する。類似業種,A・B・C・D,しんしゃく率,1株当たり資本金等の額への換算及び直前期末後の配当・株式割当てによる修正は,第4表の2の記載方法に準じる。

3 第7表の3―旧第8表に相当するS1・S2と最終価額

第7表の3は,令和8年様式の最終頁であり,旧第8表に相当する。第5表の純資産価額から株式等に係る部分を除いてS1の修正純資産価額を計算し,第7表の2の修正後の類似業種比準価額と組み合わせて1株当たりS1を求める。続いて,課税時期現在の株式等の相続税評価額と税務上の帳簿価額との差額に38%を適用し,1株当たりS2を計算する。

最後にS1とS2の合計額を求め,第5表の1株当たり純資産価額と比較し,低い方を株式等保有特定会社の株式価額として第6表へ転記する。第7表の3だけを旧第8表の計算式で作り,第7表の1・第7表の2を省くことはできない。S1の比準要素,修正純資産及びS2は同じ課税時期又は適法に用いた同じ直前期末へそろえる必要がある。

第6 提出前の照合と専門的確認を要する場面

1 提出前の照合項目

①取得日と様式の対応を確認する。令和8年3月31日以前取得分に38%の令和8年様式を使わず,令和8年4月1日以後取得分に37%の旧様式を使わない。

②株式数の時点を確認する。第1表の1の取得後株式数,第5表の課税時期現在の発行済株式数及び第4表の1の直前期末発行済株式数は,同じ数とは限らない。

③株式数と議決権数を照合する。自己株式,単元未満株式,種類株式,議決権を有しない会社の保有株式及び未分割株式を別々に確認する。

④第2表,第5表及び第7表の3の判定時点をそろえる。直前期末の資産・負債を使う例外を一部の表だけに適用しない。

⑤表間の転記額を照合する。転記元の表示額をそのまま転記し,転記先で丸め直さない。0になる指定欄は分数又は所定の小数表示を確認する。

⑥第4表の2の外部数値を確認する。課税時期の属する年と月に対応する業種目番号及びA・B・C・Dを国税庁の当年資料から取得する。

⑦第5表の洗替えを確認する。課税時期前3年以内取得の土地・家屋,評価会社保有の取引相場のない株式,保険金請求権,死亡退職金,未払税金,帳簿外の借地権・営業権等は,決算書の残高だけでは処理できない。

⑧作成しなかった表の理由を確認する。一般の評価会社で第6表以下を省略したのか,配当還元方式で原則的評価の計算を省略したのか,株式等保有特定会社でS1+S2方式を選ばなかったのかを,判定表と資料から説明できる状態にする。

2 申告書へ添付する資料

国税庁は,評価明細書のほかに「評価に際し,参考となる書類」を添付するよう案内している。そこで,株主名簿・種類株式の内容,決算書・法人税申告書別表,資産ごとの相続税評価計算,課税時期までの増減を示す資料等から,実際に明細書の数値と判定を支えるものを選ぶ。資料名だけを増やすのではなく,会社名,事業年度,課税時期,取得者及び転記欄が追えるように整理することが重要である。

書面提出では申告書とともに納税地を所轄する税務署へ提出し,e-Taxでは完成した明細書をPDF化して申告書へ添付する。入力用PDFの見た目だけを確認するのではなく,送信対象PDFに全13頁のうち実際に作成した頁が含まれ,文字切れや未保存がないことを確認する。

3 途中で専門的確認へ切り替える場面

同族関係法人を含む複雑な株主グループ,種類株式又は未分割株式,組織再編・増減資,課税時期前3年以内の不動産取得,評価会社が保有する別の非上場会社株式,死亡保険金・死亡退職金,著しい資産増減,医療法人その他の特殊な出資がある場合は,単なる転記ではなく通達の適用判断が評価額を左右する。根拠資料がなく数値を推測する,旧様式の計算例を現行欄へ当てはめる,又は第2表の判定を未確定のまま結果表を完成させるのではなく,その箇所で作業を止め,税理士等による個別確認へ切り替えるべきである。

取引相場のない株式の評価に関する有識者会議の記事で扱う将来の評価制度見直しと,本記事の令和8年現行様式は別の問題である。将来の見直し案だけを理由に現行様式を変更せず,申告時に施行されている通達,課税時期に対応する様式及び当年の類似業種資料を改めて確認する必要がある。

第7 出典・参考資料

1 法令・通達

相続税法(昭和25年法律第73号)22条(e-Gov法令検索)

財産評価基本通達178・179(国税庁)

財産評価基本通達180~184(国税庁)

財産評価基本通達185~188-6(国税庁)

財産評価基本通達189~189-7(国税庁)

財産評価基本通達194・194-2(国税庁)

⑦国税庁「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」(平成2年12月27日直評23・直資2-293,最終改正令和8年6月26日課評2-46ほか)

2 公的資料・様式

①国税庁「B2-1 取引相場のない株式(出資)の評価明細書

②国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書(令和8年4月1日以降用)」1頁~13頁

③国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書の記載方法等(令和8年4月1日以降用)」1頁~19頁

④国税庁「取引相場のない株式(出資)の評価明細書(令和6年1月1日以降用)」1頁~9頁

⑤国税庁「取引相場のない株式等の評価(純資産価額方式における法人税額等相当額)」1頁~2頁

⑥国税庁「令和8年分の類似業種比準価額計算上の業種目及び業種目別株価等について」(令和8年6月5日課評2-41,最終改正令和8年6月26日課評2-48)