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交通事故の加害者が自己破産した場合の損害賠償請求権-免責と保険請求(AI作成)

第1 加害者が破産したときの結論

1 破産手続開始と免責の確定は異なる

(1) 開始決定だけでは賠償責任はなくならない

交通事故の加害者が自己破産を申し立てたり,破産手続開始決定を受けたりしただけで,被害者の損害賠償請求権が直ちになくなるわけではない。
被害者への支払責任が免責の対象になるかは,免責許可決定の確定と,その請求権が破産法253条1項の例外に当たるかによって分かれる。

事故が破産手続開始後に起きた場合,その事故に基づく請求権は,開始前の原因に基づく破産債権ではない。
そのため,当該破産手続の免責許可決定によって,この事故の賠償責任を免れることはない。

(2) 本記事が扱う事故と破産の当事者

本記事は,令和8年10月2日を調査の基準日として,破産するのが加害者である場合の請求先と法的な限界を扱う。
被害者自身が破産した場合の請求権の帰属は,交通事故の被害者が自己破産した場合の損害賠償請求権の帰属で扱っている。

2 免責されない請求権と,実際に支払を受けられるかは別である

(1) 非免責債権となり得る損害賠償請求権

交通事故による損害賠償請求権のうち,破産者が悪意で加えた不法行為によるもの,または故意・重大な過失で人の生命・身体を害する不法行為によるものは,破産法253条1項2号・3号の非免責債権となり得る。
非免責と認められても,加害者に支払原資がなければ,そのことだけで賠償金を回収できるわけではない。

(2) 債権者名簿への記載漏れも確認する

破産法253条1項6号は,破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権も免責の例外とする。
ただし,被害者が破産手続開始決定を知っていた場合は,同号の例外から除かれる。
事故後に加害者の破産手続を知った被害者は,自分の請求権が名簿に記載されているか,いつ開始決定を知ったかも確認する必要がある。

(3) 保険からの支払を別に確認する

そこで,被害者は,加害者本人への請求の見通しと並行して,自賠責保険・共済,任意保険その他の補償経路を確認することになる。
保険による支払は,事故が契約の補償対象に入るか,保険金額はいくらか,どの請求方法を使えるかによって決まる。

第2 人身損害と物損で異なる非免責の要件

1 悪意による不法行為-破産法253条1項2号

破産法253条1項2号は,破産者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権を免責の例外とする。
この規定は損害の対象を人の生命・身体に限定していないが,通常の交通事故について,加害者に過失があるというだけで2号に当たるわけではない。

2号の「悪意」に関する判断と主張立証の一般論は,破産法253条1項2号の「悪意で加えた不法行為」で説明している。
交通事故では,故意の加害行為であったのか,どの損害がその行為から生じたのかを,事故状況に即して分けて考える。

2 故意・重大な過失による生命・身体の侵害-同項3号

破産法253条1項3号は,破産者が故意又は重大な過失により加えた,人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権を免責の例外とする。
治療費,休業損害,後遺障害に伴う損害及び慰謝料などの人身損害について,事故時の運転行為がこの要件を満たすかが問題となる。

重大な過失の有無は,交通違反の名称だけで決められない。
運転時の認識,速度,信号・前方の状況,回避可能性及び事故との関係など,具体的な事実を確認して判断する必要がある。

3 車両修理費などの物損

(1) 3号の対象は人の生命・身体を害する不法行為である

車両修理費などの物損は,人の生命・身体を害した損害とは異なるため,重大な過失による人身侵害を対象とする3号だけで非免責とはいえない。
ただし,加害者の行為が2号の悪意による不法行為に当たる可能性まで一律に否定するものではない。

(2) 対物賠償保険への請求可能性

また,物損が加害者本人への請求について免責の対象となる場合でも,事故を補償する対物賠償保険があれば,保険会社への請求の可否を別に検討する。
物損は自賠責保険・共済の補償対象ではないため,人身損害と同じ請求先を前提にしない。

第3 自賠責保険と任意保険への請求

1 自賠責保険・共済の被害者請求

(1) 法律上の被害者請求

自動車損害賠償保障法16条1項は,自賠責保険会社に対する被害者の請求を定める。
国土交通省の制度説明も,加害者側から賠償を受けられない場合に,被害者が保険会社又は共済組合に直接請求できることを示している。

(2) 人身損害の支払範囲と限度額

自賠責保険・共済の対象は人身損害であり,国土交通省が示す支払限度額は,傷害による損害が被害者1人につき120万円,死亡による損害が同3000万円である。
後遺障害については等級等により限度額が異なり,損害の全額が自賠責だけで支払われるとは限らない。

2 任意保険の直接請求と先取特権

(1) 約款に基づく直接請求

任意の対人・対物賠償保険では,約款が定める条件を満たすと,被害者が保険会社へ損害賠償額を直接請求できる場合がある。
日本損害保険協会の説明は,任意保険の直接請求が約款に基づくものであり,自賠責保険の法律に基づく被害者請求とは異なると説明している。

(2) 責任保険の保険給付請求権に対する先取特権

これとは別に,保険法22条1項は,責任保険契約の被保険者に対する損害賠償請求権を有する人に,保険給付請求権上の先取特権を認めている。
直接請求権と先取特権は根拠も行使方法も異なるため,事故時の保険契約,約款及び保険会社の回答を確認する。

第4 被害者が先に確認する資料と期限

1 保険契約と破産手続の現在地

(1) 事故・保険・破産の資料

最初に,交通事故証明書,保険会社との連絡書面,加入している自賠責・任意保険の情報,破産手続開始決定の有無及び免責許可決定が確定したかを確認する。
「破産する予定」と聞いた段階と,免責許可決定が確定した後とでは,加害者本人への請求を考える前提が異なる。

(2) 事故状況と重大な過失を示す資料

加害者本人の重大な過失を争点とする場合は,事故状況を示す写真,ドライブレコーダーの映像,警察に届け出た事故の情報及び医療記録など,手元にある資料から時系列を作る。
相手方や警察だけが持つ資料は当然に取得できるものではないため,まず保険会社とのやり取りと手元の資料で,争点と不足部分を特定する。

2 自賠責の請求期限を先に確認する

(1) 被害者請求の起算点

国土交通省の請求期限の説明によると,自賠責の被害者請求は原則として3年であり,傷害は事故,後遺障害は症状固定,死亡は死亡の日をそれぞれ起算点として扱う。
同省は,平成22年3月31日以前に発生した事故の期間は2年と注記しており,古い事故では現在の一般例をそのまま当てはめられない。

(2) 請求先ごとに期限を区別する

加害者本人に対する損害賠償請求の時効と,保険会社への請求期限は同一とは限らない。
事故日,症状固定日,保険金の請求状況及び破産・免責の時点を一つの年表に置き,どの請求をいつまでに行うかを個別に確認する。

第5 出典・参考資料

1 法令

①破産法2条5項,253条1項2号・3号・6号。
②自動車損害賠償保障法16条・19条。
③保険法22条。

2 所管行政機関の解説

国土交通省「損害賠償を受けるときは?」自賠責保険・共済の制度概要,請求方法及び請求期限。

3 業界団体の解説

一般社団法人日本損害保険協会「損害保険Q&A・くるまの保険・問7」任意の対人賠償責任保険の直接請求と自賠責保険との差異。