第1 総論
住民税とは,毎年1月1日現在に住所がある都道府県及び市町村に対して納める税金であり,「道府県民税」(東京都は都民税)と「市町村民税」(東京23区は特別区民税)の2つから成る(マネーフォワードクラウド給与HPの「住民税が非課税になる条件と受けられる恩恵のポイントまとめ」参照)。個人事業主は,この住民税とは別に,道府県税である個人事業税も負担することがあるが,個人事業税については別稿「個人事業税に関するメモ書き」で扱うこととし,本稿では,個人事業主本人が負担する住民税(道府県民税及び市町村民税)を対象とする。
第2 所得割及び均等割
総務省HPの「個人住民税」によれば,個人住民税は,所得に応じた負担を求める「所得割」と,所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」の2つから成る。所得割の税率は,所得に対して10%(道府県民税4%,市町村民税6%。政令指定都市の区域内に住所を有する場合は道府県民税2%,市町村民税8%)とされており,前年の1月1日から12月31日までの所得により算定される(地方税法35条,38条,314条の3)。均等割は,個人住民税が「地域社会の会費」的な性格を持つことを反映したものであり,その標準税率は,道府県民税1,000円,市町村民税3,000円の合計4,000円である(地方税法38条,310条)。これに加えて,令和6年度以降は,個人住民税均等割と併せて,国税である森林環境税(年額1,000円)が徴収されており,住民1人当たりが実際に負担する均等割相当額の合計は5,000円となる(森林環境税の導入の経緯は後記第5の1で述べる。総務省HPの「個人住民税」参照)。
第3 個人事業主本人の住民税の申告及び納付
1 確定申告書の提出による住民税申告の省略
個人住民税(市町村民税)の課税に必要な事項は,本来,納税義務者が市町村長に申告書を提出することとされている(地方税法317条の2第1項)。もっとも,前年分の所得税につき確定申告書を提出した者については,当該確定申告書が提出された日に住民税の申告書が提出されたものとみなされ,改めて住民税の申告書を提出する必要はない(地方税法317条の3第1項)。個人事業主本人は,通常,所得税の確定申告を行うため,この規定により,別途住民税の申告手続を行わなくてよいのが通常である。
2 普通徴収による年4回の納付
個人事業主本人の住民税は,給与から天引きされる特別徴収(従業員の住民税について事業主が天引きして納付する方法である。別稿「従業員から特別徴収した住民税に関するメモ書き」参照)ではなく,市区町村から送付される納税通知書及び納付書により,年4回に分けて納める普通徴収の方法による(地方税法320条)。普通徴収の納期は,6月,8月,10月及び1月中で市町村の条例により定められており,大阪市の場合,例年,6月30日,8月31日,10月31日及び翌年1月31日が納期となっている(地方税法320条)。大阪市では,市民税・府民税納税通知書は,例年,6月上旬に郵便で送付される(大阪市HPの「令和4年度 個人市・府民税納税通知書の送付について」参照)。
第4 令和3年度以降の住民税
令和3年度(令和2年分)以降の住民税は,令和2年度(令和元年分)以前の住民税と比べて,次の点が異なる(大阪府箕面市HPの「令和3年度からの個人住民税(市・府民税)の主な改正点」参照)。①基礎控除が33万円から43万円に引き上げられた。②給与所得控除が65万円から55万円に引き下げられた。③寡婦控除(特別の寡婦)につき,父子家庭も対象に加えてひとり親控除(控除額30万円)に改められた。なお,令和2年分以降の所得税については,基礎控除は48万円,給与所得控除は55万円,ひとり親控除は35万円である(国税庁HPの「ひとり親控除」,国税庁タックスアンサーNo.1410「給与所得控除」参照)。
第5 令和6年度以降の住民税
1 森林環境税の導入と均等割の内訳変更
令和6年度以降,個人住民税の均等割は,本則の道府県民税1,000円・市町村民税3,000円の合計4,000円に戻っている。これは,東日本大震災復興基本法に基づき,平成26年度から令和5年度までの10年間,均等割に臨時的に上乗せされていた年額1,000円(道府県民税・市町村民税各500円)の措置が終了したことによるものである。もっとも,これに代えて,令和6年度以降,森林の整備等に必要な費用を確保する目的で創設された国税である森林環境税(年額1,000円)が,個人住民税均等割と併せて徴収されることとなったため,住民1人当たりが実際に負担する均等割相当額の合計は,従前と同じ5,000円のままである(総務省HPの「個人住民税」,「森林環境税及び森林環境譲与税について」参照)。
2 令和6年度限りの定額減税
令和6年度分の個人住民税については,1回限りの措置として,定額減税が実施された。前年(令和5年分)の合計所得金額が1,805万円以下である所得割の納税義務者について,1人当たり1万円が減税され,令和6年6月分は徴収せず,控除後の税額を同年7月分から令和7年5月分までの11か月に分けて徴収するという方法がとられた。定額減税額を控除しきれない場合には,別途,調整給付金が支給された(総務省HPの「個人住民税における定額減税について」参照)。
3 令和8年度分以降の給与所得控除等の見直し
令和7年度税制改正により,令和8年度分(令和7年分の所得に係る分)以降の住民税について,給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられた。もっとも,住民税の基礎控除(合計所得金額2,400万円以下の場合,最高43万円)自体は改正されていない(地方税法314条の2第2項第1号)。この結果,給与収入のみの単身者について,住民税がかからない給与収入の上限(非課税限度額)は,100万円から110万円に変わった。あわせて,大学生年代の子等がいる場合を対象とする「特定親族特別控除」が,所得税と同様の対応として,住民税にも新設された(地方税法314条の2第1項12号,総務省「地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律の概要」参照)。
第6 住民税等の計算サイト
所得税・住民税簡易計算機HPには,「税金計算機(生命保険料控除,医療費控除,扶養控除,ふるさと納税対応)」が掲載されている。また,ふるさとチョイスHPには,「控除限度額シミュレーション」が掲載されている。
第7 所得証明書
suumoの「所得証明書とは?課税証明書との違いや必要な場面,取り方を紹介」によれば,「所得証明書」と「課税証明書」には次の違いがある。所得証明書は,市区町村が発行する「所得額」が記載された書類であり,所得額とは,各年(1月1日から12月31日まで)の収入(年収)から必要経費(会社員の場合は給与所得控除額)を差し引いた金額であって,市区町村が住民税(市区町村税・道府県民税等)を計算する際の基準となる。このため,所得証明書は,収入を証明する公的な書類(収入証明書)の一つとして,住宅ローンや賃貸住宅の申込みなどの際に提出を求められることがある。一方,「課税証明書」は,市区町村が発行する「住民税の課税額」を証明する書類であり,課税額の計算基準となる「所得額」も記載されているため,「所得証明書」としても利用できる。実際のところ,「所得証明書」に代えて「課税証明書」を発行する市区町村も少なくない。大阪市の場合,課税(所得)証明書として発行され(大阪市HPの「市税に関する証明書を請求される方へ」参照),堺市の場合,市民税・府民税(所得・課税)証明書として発行される(堺市HPの「市税の証明をとるには」参照)。
第8 関連記事その他
財務省HPには,「住民税について教えてください。所得税とはどう違うのですか?そもそも国税と地方税の違いはなんですか?」が掲載されている。以下の記事も参照されたい。
そろそろ確定申告の時期ですが、会社に副業がバレたくない人は税金の基礎を知っておいた方が良いです。 pic.twitter.com/216KSM0F3B
— ねこみち|毎日図解でお金を学ぶ (@Tomojidien) January 12, 2023
出典
1 法令
- 地方税法35条(道府県民税の所得割の税率)
- 地方税法38条(道府県民税の均等割の税率)
- 地方税法310条(市町村民税の均等割の税率)
- 地方税法314条の2(市町村民税の所得控除)
- 地方税法314条の3(市町村民税の所得割の税率)
- 地方税法317条の2(市町村民税の申告等)
- 地方税法317条の3(確定申告書を提出した場合の市町村民税申告書のみなし提出)
- 地方税法320条(普通徴収に係る個人の市町村民税の納期)
- e-Gov法令検索(地方税法) https://laws.e-gov.go.jp/law/325AC0000000226
2 ウェブ資料
- 総務省「個人住民税」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/150790_06.html
- 総務省「森林環境税及び森林環境譲与税について」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/04000067.html
- 総務省「個人住民税における定額減税について」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/02zeimu04_04000129.html
- 総務省「地方税法及び地方税法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律の概要」(PDF) https://www.soumu.go.jp/main_content/001002521.pdf
- 国税庁タックスアンサーNo.1410「給与所得控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1410.htm
- 国税庁タックスアンサーNo.1171「ひとり親控除」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1171.htm
- 大阪府箕面市「令和3年度からの個人住民税(市・府民税)の主な改正点」 https://www.city.minoh.lg.jp/siminzei/33nendokaisei.html
- マネーフォワードクラウド給与「住民税が非課税になる条件と受けられる恩恵のポイントまとめ」 https://biz.moneyforward.com/payroll/basic/13062/
- 所得税・住民税簡易計算機 https://www.zeikin5.com/calc/
- ふるさとチョイス「控除限度額シミュレーション」 https://www.furusato-tax.jp/about/simulation?header_guide
- suumo「所得証明書とは?課税証明書との違いや必要な場面,取り方を紹介」 https://suumo.jp/article/oyakudachi/oyaku/sumai_nyumon/money/syotoku_syoumeisyo/
- 大阪市「市税に関する証明書を請求される方へ」 https://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000005908.html
- 堺市「市税の証明をとるには」 https://www.city.sakai.lg.jp/kurashi/zei/shizeishomei/shomei.html
- 大阪市「令和4年度 個人市・府民税納税通知書の送付について」 https://www.city.osaka.lg.jp/zaisei/page/0000394590.html
- 財務省「住民税について教えてください。所得税とはどう違うのですか?そもそも国税と地方税の違いはなんですか?」 https://www.mof.go.jp/tax_information/qanda020.html