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決算賞与の支給日在籍要件と税務―退職者への支給義務,未払賞与の損金算入及び源泉徴収(AI作成)

第1 支給条件と税務上の計上条件を一緒に確認する

決算前に社員へ賞与の金額を知らせ,翌期に支払う場合,支給日に在籍する社員だけに払うという条件があると,翌期1か月以内に支払う方法で通知年度の損金に算入するための通知要件を満たさない。労働法上の支給条件として在籍要件を設けることと,法人税上の通知要件を満たすことは,別の問題である。
人事担当が作った賞与規程と,経理担当が使う支給通知書が食い違うと,退職者との支給紛争と申告上の誤りが同時に生じる。人事・経理・決裁者は,支給対象者,金額,条件,支給予定日,決算日及び実際の支払日を同じ資料で確認する必要がある。
本稿は令和8年10月10日に確認した法令・国税庁の説明を基準とし,一般の使用人に対する賞与を中心に扱う。役員としての職務に対する賞与は,役員給与の損金算入要件も別途問題となる。

第2 退職者への賞与支給義務をどう判断するか

1 賞与の具体的な根拠と通知の意味

賞与は,評価対象期間に働いたという一点だけで,予定額全額の請求権が当然に生じるものではない。就業規則,労働協約,個別合意,確立した慣行等から,支給対象者,計算方法,金額決定手続及び在籍条件を確認する。
金額を記載したメールでも,「見込額」「最終査定で変更」「支給日在籍者に限る」という留保がある場合と,条件を付けず確定額を支払う個別合意が成立している場合とでは意味が異なる。文書の表題だけで判断せず,規程と通知文面を合わせて読む。

2 在籍要件の合理性と個別の適用

厚生労働省の大和銀行事件の紹介によれば,支給日に在籍する者だけに賞与を払う従来の慣行を就業規則に明文化した事案で,最高裁昭和57年10月7日判決は,その内容の合理性を認め,支給日前に退職した者の請求を認めなかった。この紹介から,退職・解雇・死亡の全事案で不支給が有効になると一般化することはできない。
任意退職,定年,整理解雇,懲戒解雇,死亡では,退職日を選べるか,雇用終了の原因,賞与制度の目的及び例外条項が異なる。規定自体の合理性と,その人への適用を分けて検討する。解雇の有効性が争われている場合には,支給日の在籍という前提も確定していない。
茨城労働局の相談資料は,支給が遅れた場合の支給予定日と現実の支払日の区別にも注意を促している。会社が支払を遅らせた後,その間に退職したことだけを理由に,予定日に在籍していた者の権利が失われたと扱うことは避けるべきである。
在籍要件を外すと税務上有利になるとしても,税務担当だけで既存の労働条件を変更してはならない。規程の変更,個別合意,労使手続及び周知の要否を,変更内容に応じて検討する。

第3 使用人賞与の損金算入時期

1 支給予定日が到来した賞与

法人税法施行令72条の3第1号は,労働協約又は就業規則で定められた支給予定日が到来し,使用人に支給額を通知し,所定の年度に損金経理した賞与について,支給予定日と通知日のうち遅い日の属する事業年度に算入する扱いを定めている。支給予定日,通知及び経理の条件をそれぞれ確認する。

2 翌期1か月以内に支払う決算賞与

同条第2号の方法では,①各人別に,同時期に支給を受ける全使用人へ金額を通知すること,②通知した全使用人へ,通知年度終了日の翌日から1か月以内に通知どおりの金額を支払うこと,③通知年度に損金経理することが必要である。
国税庁の法人税基本通達9-2-43は,支給日に在職する使用人だけに払う条件付きの支給額通知について,「支給額の通知には該当しない」としている。この通知要件は,同条第2号イの要件である。未払賞与を計上したことや,支払までが1か月以内だったことだけで足りるわけではない。
例えば3月決算法人が3月25日に各人へ金額を通知し,4月20日に支払う計画でも,通知に「4月20日在籍者のみ」との条件があれば,第2号の方法で3月期の損金にできる通知とは扱われない。これは退職者分の金額だけの問題ではなく,同時期の賞与の通知・支払要件全体を点検する契機となる。
計算式だけの周知では,各人別の具体額を通知したかが不明確になる。対象者別の確定額,通知日,到達を確認できる記録,退職者への扱い及び実際の振込額を残す。

3 その他の賞与

第1号・第2号の方法に当たらない賞与は,同条第3号により,支払った日の属する事業年度に損金算入する。条件付き通知が第2号を満たさないからといって,支払後も永久に損金にできないという意味ではない。

第4 社員の収入年分と会社の源泉徴収時期

給与所得の収入すべき時期と,会社が源泉徴収する時期も分ける。所得税基本通達36-9は,支給日が定められた一般の給与等について,その支給日を収入すべき時期としている。他方,所得税法183条1項は源泉徴収について「その支払の際」と定める。
国税庁は,給与等が未払の場合,原則として実際に払う際に源泉徴収すると説明している。会社側の未払計上年度,社員側の収入年分,実際の支払日及び源泉徴収時期が常に一致すると考えてはならない。
ただし,具体的な支給額・請求権の存否自体が未確定な見込通知を,確定した給与と同様に扱うこともできない。後の合意・判決で賞与の支払が決まった場合は,元の支給義務を確認したものか,新たに支給内容を定めたものか等を資料で確認して年分を判断する。
役員賞与には,支払確定後1年を経過しても未払の場合の源泉徴収のみなし規定がある。一般社員の未払賞与の説明を,役員賞与へそのまま適用しない。

第5 通知を出す前と決算・支払時の確認

人事担当は通知前に,適用される規程・労働協約・個別合意の版,評価期間,基準日,在籍条件,退職予定者・解雇を争う者の扱いを整理する。経理担当は,同じ資料で施行令のどの類型を使うかを決め,決算日と支給予定日を並べる。条件が合わない場合は,支払年度での損金算入も含めて決裁者へ示す。
通知後は,各人の具体額と通知先を一覧にし,通知文書と到達記録を保管する。第2号を使う場合は,年度終了日の翌日から1か月以内という支払期限,通知した全員への支払及び損金経理を,決算処理と振込記録で照合する。通知後に退職者が出たときは,人事と経理で支給条件及び税務への影響を再確認する。
弁護士への相談資料は支給義務と規程・合意の問題を,税理士への相談資料は損金算入年度・収入年分・源泉徴収を区別してまとめる。支払義務がある金額を,税務上の都合だけで不支給にすることはできない。
これらの担当分担と照合表は実務上の提案であり,国税庁が特定の社内様式を義務付けたという意味ではない。

第6 関連記事と出典

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2 法令・行政資料と確認範囲

法人税法施行令72条の3,所得税法36条1項・183条の原文を確認した。
国税庁「使用人賞与の損金算入時期」及び法人税基本通達9-2-43の本文を確認した。
国税庁「給与所得の収入金額の収入すべき時期」,所得税基本通達36-9及び「給与が一部未払の場合の源泉徴収」の該当部分を確認した。
厚生労働省「賞与不払い」の大和銀行事件の紹介と,茨城労働局の支給日在籍条項の相談資料を参照した。これらの裁判例について本稿で判決原文を独立に全文確認したものではなく,行政資料が紹介する範囲で述べている。個別の規程・合意・雇用終了原因による結論は別途判断する。