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令和6年司法試験知的財産法第2問の模範解答・評価項目―40項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和6年司法試験の知的財産法第2問について,公式の出題の趣旨・採点実感から抽出した40項目と5段階の重み,模範解答を掲載します。評価表と答案は記事独自の分析であり,法務省の公式採点基準ではありません。

第1 この記事の対象と結論

本問は,建築の著作物の保護と自由利用,絵画の写り込み,建築物の同一性保持権を扱います。公式問題(PDF22頁)を対象とし,設問1,設問2の二つの小問,設問3を順に検討します。

採用答案では,店舗の部分改築はBの複製権を侵害する一方,建物の写真による絵はがきの印刷・販売は46条により許されるとします。絵画αについては30条の2を認め,Cの販売差止めを否定します。屋根の撤去は同一性保持権の例外を検討した上で,Bとの関係で信義に反する改変として工事の予防請求を認める構成を採ります。特に設問3では,実用目的との調整を説明することが重要であり,この結論が公式の唯一指定結論であるとはしていません。

評価項目は40件,重み5は7件です。番号2・7・13・16・22・37・39に対応し,詳しくは重みの分布と枠外解説で説明します。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一つの行を一つの判定対象に分け,答案だけから記載の有無を判断できる形にしました。「必須」「高評価」「負例」と重みは別の区分です。高評価項目を全答案の必須条件としたり,条件付きの主張を累積的に要求したりする趣旨ではありません。

頁はPDFの物理頁です。出題の趣旨の第2問は30頁,採点実感の本問は主に22~24頁にあります。表の引用は短い原文の抜粋です。「記載なし」は本問の関連範囲を実読した結果,その粒度の独立した明示がないという意味です。評価項目は公式資料の説明から独自に抽出したもので,項目数や重みを実際の得点へ換算できません。

2 5段階の重み付けの基準

重み5=採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格。
重み4=出題の趣旨が検討を求め,採点方針・採点実感も評価又は具体的な不足・誤りの指摘を通じて取り上げた事項。
重み3=どちらか一方が明示する中核の理由付け。
重み2=一方が軽く触れる補強又は典型的な誤り。
重み1=一方が控えめに触れる事項。

本記事の重み4では「高く評価された事項」と「不足・誤りの指摘を通じて取り上げられた事項」を区別して確認しています。各段階に件数を割り当てることはしていません。

第3 本問の概要

A市は,誰でも自由に入れる公園に,Bが斬新な屋根と外壁を設計した図書館を建築しました。ホールの奥には,独特の色彩でA山を描いたCの絵画αが展示されています。Dは店舗を図書館と同じ形に部分改築し,図書館を正面から撮影した絵はがきβも印刷・販売しました。建物は画面の5分の3ほどを占め,絵画は小さいものの代表作と分かる程度に写っています。入口の扉は開館時間中常に開いています。

建築10年後,市長の嗜好を理由に,屋根の突出部分だけを撤去する計画が立てられました。設問1はBの著作権侵害,設問2⑴はBの請求と妥当性,⑵はCとDの攻撃防御,設問3はBの工事阻止の請求と妥当性を問います。

第4 評価項目と重み

1 設問1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1〔必須〕著作物の定義を2条1項1号に基づいて示す。4PDF 30頁,知的財産法第2問 2(総論1を併せて参照)。
「建築物としてのA図書館の著作物性」
PDF 24頁,2⑵採点方針・ア/3⑵採点実感。
「同法第2条第1項第1号を挙げない答案」
2〔高評価〕建築の鑑賞性と実用性を区別し,保護に値する美的創作性の判断基準を示す。5PDF 30頁,知的財産法第2問 2(総論1を併せて参照)。
「建築の著作物の著作物性の判断基準」
PDF 22頁,2⑵採点方針・ア/3⑵採点実感。
「A図書館が観賞性と実用性を併有」
3〔必須〕屋根の突出・曲面と連続する外壁を創作的表現として評価する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 2(総論1を併せて参照)。
「建築物としてのA図書館の著作物性」
PDF 22頁,2⑵採点方針・ア/3⑵採点実感。
「事案に即した当てはめ」
4〔必須〕Bが創作者で著作者となり,2条1項2号・17条1項により著作権を享有する旨を示す。3関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 22頁,2⑵採点方針・ア/3⑵採点実感。
「その著作権のBへの帰属」
5〔必須〕Dの部分改築を,創作的表現の有形的再製として複製権の対象に位置付ける。4PDF 30頁,知的財産法第2問 2(総論1を併せて参照)。
「複製権(法第21条)侵害の成否」
PDF 22頁,2⑵採点方針・ア/3⑵採点実感。
「改築行為の複製該当性」
6〔必須〕建築の著作物には46条柱書の自由利用が原則適用されることを示す。4PDF 30頁,知的財産法第2問 2(総論1を併せて参照)。
「権利制限(法第46条)」
PDF 22・24頁,2⑵採点方針・ア/3⑵採点実感。
「同法第46条柱書」
7〔高評価〕建築による複製は46条2号により自由利用から除外されると本件改築に当てはめる。5PDF 30頁,知的財産法第2問 2(総論1を併せて参照)。
「公開の美術の著作物等の利用」
PDF 22頁,2⑵採点方針・ア/3⑵採点実感。
「建築の著作物を建築により複製」
8〔負例〕10条1項5号だけを著作物性の根拠とし,2条1項1号を落とす誤りを避ける。2関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 24頁,2⑵採点方針・ア/3⑵採点実感。
「同法第2条第1項第1号を挙げない答案」

2 設問2⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
9〔必須〕絵はがきの印刷を21条の複製という法定利用行為として特定する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 3(総論1を併せて参照)。
「複製権(法第21条)」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑴/3⑵採点実感。
「絵はがきβの印刷が複製権」
10〔必須〕販売を公衆への譲渡として26条の2第1項に接続する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 3(総論1を併せて参照)。
「譲渡権(法第26条の2第1項)」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑴/3⑵採点実感。
「その販売が譲渡権」
11〔必須〕112条1項により絵はがきの印刷停止を請求候補として特定する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 3(総論1を併せて参照)。
「停止請求(法第112条第1項)」
PDF 22・24頁,2⑵採点方針・イ小問⑴/3⑵採点実感。
「絵はがきβの印刷・販売の停止請求」
12〔必須〕112条1項により絵はがきの販売停止を請求候補として特定する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 3(総論1を併せて参照)。
「停止請求(法第112条第1項)」
PDF 22・24頁,2⑵採点方針・イ小問⑴/3⑵採点実感。
「絵はがきβの印刷・販売の停止請求」
13〔高評価〕112条2項の在庫廃棄請求を印刷・販売の停止と区別する。5PDF 30頁,知的財産法第2問 3(総論1を併せて参照)。
「廃棄請求(同条第2項)」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑴/3⑵採点実感。
「その在庫の廃棄請求」
14〔必須〕民法709条に基づく損害賠償請求を差止めとは別に挙げる。4PDF 30頁,知的財産法第2問 3(総論1を併せて参照)。
「損害賠償請求(民法第709条)」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑴/3⑵採点実感。
「損害賠償請求(民法第709条)」
15〔必須〕建築の写真による複製・販売について46条の適用を検討する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 3(総論1を併せて参照)。
「これらの請求の妥当性の問題」
PDF 22・24頁,2⑵採点方針・イ小問⑴/3⑵採点実感。
「公開の美術の著作物等の利用に係る権利制限」
16〔高評価〕46条4号が美術の著作物のみを掲げ,建築を掲げない文言差を説明する。5PDF 30頁,知的財産法第2問 3(総論1を併せて参照)。
「権利制限(法第46条)」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑴/3⑵採点実感。
「建築の著作物を挙げていないこと」
17〔負例〕より事案に適する権利制限の検討を引用32条より優先する。2関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 24頁,2⑵採点方針・イ小問⑴/3⑵採点実感。
「そちらの検討を優先するべきである」

3 設問2⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
18〔必須〕αの独特の色彩による山の描写を,2条1項1号の著作物として評価する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 4(総論1を併せて参照)。
「絵画αが著作物に該当」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「絵画αが著作物」
19〔必須〕Cが絵画の創作者として2条1項2号・17条1項により著作権者となる旨を示す。3関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「Cがその著作権者」
20〔必須〕Cは撮影・印刷をαの複製権侵害と主張する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 4(総論1を併せて参照)。
「複製権及び譲渡権の侵害」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「著作物の類似性の否定」
21〔必須〕CはDの絵はがき販売をαの複製物の譲渡として主張する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 4(総論1を併せて参照)。
「複製権及び譲渡権の侵害」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「Dの行為が絵画αの複製物の譲渡」
22〔必須〕C側の複製・譲渡主張とD側の抗弁を別々の攻撃防御として配置する。5PDF 30頁,知的財産法第2問 4(総論1を併せて参照)。
「これに対抗するDの主張」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「これに対抗するDの主張」
23〔必須〕Dの主張として,本質的特徴の直接感得ができず類似性を欠くという反論を明示する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 4(総論1を併せて参照)。
「著作物の類似性」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「著作物の類似性の否定」
24〔必須〕小さく写ることと独特の色彩による識別可能性を用いて類似性否定の妥当性を判断する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 4(総論1を併せて参照)。
「本問の事実関係を踏まえて検討」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「本問の事実関係を踏まえて適切に検討」
25〔必須〕30条の2の付随対象著作物という権利制限をDの抗弁として特定する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 4(総論1を併せて参照)。
「付随対象著作物の利用」
PDF 22・24頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「付随対象著作物の利用に係る権利制限」
26〔高評価〕写り込みの軽微性を,割合・再製精度等に照らして検討する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 4(総論1を併せて参照)。
「本問の事実関係を踏まえて検討」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「軽微性や正当範囲」
27〔高評価〕30条の2第1項の正当な範囲を,利益目的・分離困難性の程度・作品の役割等から検討する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 4(総論1を併せて参照)。
「本問の事実関係を踏まえて検討」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「軽微性や正当範囲」
28〔高評価〕付随利用の各要件を図書館主体・小さな絵画・開放された扉等の本件事実へ当てはめる。4PDF 30頁,知的財産法第2問 4(総論1を併せて参照)。
「これらの主張の妥当性の問題」
PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「それぞれ本問の事実関係を」
29〔必須〕Dの別の主張として46条の公開美術の自由利用を検討する。
46条の別抗弁を検討する場合。適用否定でも理由があれば充足。
3関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 22・24頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「公開の美術の著作物等の利用に係る権利制限」
30〔高評価〕46条柱書の屋外恒常設置という要件を4号と区別する。
46条の別抗弁を検討する場合。適用否定でも理由があれば充足。
3関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「屋外恒常設置に当たるか」
31〔高評価〕館内壁面と開館中常時開放された扉の事情を,屋外恒常設置該当性の解釈・当てはめに使う。
46条の別抗弁を検討する場合。適用否定でも理由があれば充足。
3関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「屋外恒常設置に当たるか」
32〔高評価〕46条4号の専ら美術の複製物の販売を目的としたかを,建物主体・絵画の小ささから判断する。
46条の別抗弁を検討する場合。適用否定でも理由があれば充足。
3関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 22頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「専ら美術の著作物の複製物の販売を目的」
33〔負例〕30条の2のどの要件を論じているか不明瞭な記載を避ける。2関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 24頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「条文のどの要件について述べているのかが不明瞭」
34〔負例〕46条柱書・4号を検討せず当然に自由利用とする処理を避ける。2関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 24頁,2⑵採点方針・イ小問⑵/3⑵採点実感。
「当然に同条の適用がある旨」

4 設問3

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
35〔必須〕A図書館の著作者Bに著作者人格権が帰属することを明示する。3関連範囲実読。この粒度の独立明示なし。PDF 24頁,2⑵採点方針・ウ/3⑵採点実感。
「A図書館の著作者人格権がBに帰属」
36〔必須〕突出する屋根の撤去を20条1項のBの意に反する改変として論じる。4PDF 30頁,知的財産法第2問 5(総論1を併せて参照)。
「同一性保持権侵害の成否」
PDF 22・24頁,2⑵採点方針・ウ/3⑵採点実感。
「同一性保持権」
37〔必須〕未着工の撤去工事について,112条1項の侵害予防請求として中止を求める。5PDF 30頁,知的財産法第2問 5(総論1を併せて参照)。
「撤去工事の予防請求」
PDF 24頁,2⑵採点方針・ウ/3⑵採点実感。
「侵害行為の「予防」請求」
38〔必須〕20条2項2号の建築物の増改築等による改変という例外を検討する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 5(総論1を併せて参照)。
「第2項第2号該当性」
PDF 22頁,2⑵採点方針・ウ/3⑵採点実感。
「改変が建築物の増改築等」
39〔高評価〕建築物の実用目的と人格的利益の調整という例外の趣旨を示す。5PDF 30頁,知的財産法第2問 5(総論1を併せて参照)。
「第2項第2号該当性」
PDF 23頁,2⑵採点方針・ウ/3⑵採点実感。
「的との調整という同号の趣旨」
40〔高評価〕市長の嗜好による屋根の一部撤去を,実用面との関係と改変内容から具体的に評価する。4PDF 30頁,知的財産法第2問 5(総論1を併せて参照)。
「本問の事実関係を踏まえて検討」
PDF 24頁,2⑵採点方針・ウ/3⑵採点実感。
「実用面とは無関係なものである点」

5 答案全体

権利の発生,著作者性・帰属,対象行為と支分権,権利制限,請求の具体的内容を順に示し,事実がどの要件を支えるかを論じます。これは全体の読み方であり,新たな重み付き項目へ加算していません。

6 重みの分布

重み1は0件,2は4件,3は7件,4は22件,5は7件です。総項目数N=40,重みの単純合計W=152です。これらは難易度,公式配点,合格可能性を示す数字ではありません。

番号2:建築の鑑賞性と実用性を区別し,保護に値する美的創作性の判断基準を示す。 鑑賞性と実用性の区別は良好・優秀の評価分岐。
番号7:建築による複製は46条2号により自由利用から除外されると本件改築に当てはめる。 建築による複製の認識は良好・優秀の評価分岐。
番号13:112条2項の在庫廃棄請求を印刷・販売の停止と区別する。 在庫廃棄と停止の区別は良好・優秀の評価分岐。
番号16:46条4号が美術の著作物のみを掲げ,建築を掲げない文言差を説明する。 美術と建築の文言差は評価分岐であり,実感は誤りも指摘。
番号22:C側の複製・譲渡主張とD側の抗弁を別々の攻撃防御として配置する。 C/Dの攻撃防御は設問が指定する骨格。
番号37:未着工の撤去工事について,112条1項の侵害予防請求として中止を求める。 未着工の侵害予防という法的段階と請求類型は骨格。
番号39:建築物の実用目的と人格的利益の調整という例外の趣旨を示す。 実用目的との調整と丁寧な当てはめは良好・優秀の評価分岐。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

選択科目の試験日は令和6年7月10日です。出題法令は同年1月1日現在に施行されている法令を基準とし,判例は試験日以前のものを用いています。答案は空白・改行を除いて2099字で,2500字以内です。法は著作権法を指します。建物の所有と著作者の権利を区別し,設問3は原則的な改変許容に信義の限界を認める構成で統一しています。

2 答案

1 設問1

(1) A図書館は,曲面状の屋根が右上方に伸び,端部が大きく突出し,外壁も屋根と連続した曲面をなす。これは市の発展というBの思想を個性的な造形として表現したものであり,通常の実用的建物の形状を超え,実用性とは別に美的鑑賞の対象となる造形芸術性を有するから,建築の著作物である(著作権法2条1項1号,10条1項5号)。創作者Bが著作者であり,著作権を享有する(2条1項2号,17条1項)。

(2) 複製とは既存の著作物に依拠し,その創作的表現を有形的に再製することである(2条1項15号,21条)。全部を再現する必要はなく,創作的な部分の再製でも足りる。DはA図書館を参考に,特徴的な屋根及び外壁と同じ形に店舗を改築しており,Bの創作的表現を建築によって再製している。改築が建物の一部でも複製に当たる。

(3) 46条は建築の著作物の利用を原則自由とするが,建築による複製は同条2号の除外に当たる。したがって,Dの行為はBの複製権を侵害する。

2 設問2

(1) 小問⑴

ア 撮影及び印刷は複製,販売は複製物の公衆への譲渡である。Bは複製権及び譲渡権(26条の2第1項)を根拠に,Dへ印刷・販売の停止及び絵はがきβの在庫の廃棄を請求し得る(112条1項,2項)。故意又は過失,損害及び因果関係があれば民法709条による損害賠償も考えられる。

イ 写真からは屋根と外壁の特徴が明瞭に判別でき,創作的表現の再製に当たる。しかし,46条は建築の著作物を方法を問わず利用できるとし,写真による複製・販売は2号に当たらない。4号は専ら「美術の著作物」の複製物を販売する場合であり,別類型の建築の著作物には及ばない。建物が画面の5分の3を占め,絵はがき販売により収益を得てもこの結論は変わらず,Bの上記請求は認められない。

(2) 小問⑵

ア 絵画αは独特の色彩によるA山の描写に創作性がある美術の著作物である(2条1項1号,10条1項4号)。創作者Cが著作者として著作権を享有する(2条1項2号,17条1項)。Cは,独特の色彩が再現された撮影・印刷が複製権を侵害すると主張する。Dは,αが小さく写るだけで表現上の本質的特徴を直接感得できないと反論し得る。しかし,Cの代表作と分かる独特の色彩が残っており,創作的表現の同一性を認めるべきである。CはDの販売が譲渡権を侵害するとして,112条1項による販売差止めを主張すべきである。

イ Dは46条による自由利用を主張し得る。Cは,αが玄関ホール奥の屋内にあり,45条2項の屋外の場所に恒常的に設置された原作品ではないと反論できる。扉が開館時間中常に開き,外から見えるとしても,設置場所を要求する文言からは屋外設置に当たらないと解する。46条は適用されない。これに対し,公衆に継続して公開される状態を重視して屋外設置と同視する解釈では,絵はがきの主題が建物でαは小さな背景であることから,専ら美術の複製物の販売を目的とする4号に当たらず,自由利用となり得る。

ウ Dは更に30条の2による付随対象著作物の利用を主張できる。主たる撮影対象は画面の5分の3を占める図書館で,αは奥に小さく写るだけであり,撮影対象に付随する。独特の色彩が判別できることは複製の成立を基礎付けるが,画面に占める割合,再製の精度及び役割を総合すると軽微な構成部分といえる。

 正当な範囲かは,αの利用から利益を得る目的,分離困難性の程度,αの役割等によって判断する。Dは販売益を得るが,建物の外観を正面から示す撮影に付随し,α自体を鑑賞させて収益を得る利用とはいい難い。扉が常に開く状況とαの小ささも併せれば正当な範囲である。分離困難性は独立の必須要件ではない。

 また,αの鑑賞用複製物に代替する態様ではなく,Cの利益を不当に害するとは認め難い。撮影時の利用は同条1項で,その写真に基づく印刷・販売は作成伝達物の利用に伴う利用として2項で許され,2項ただし書にも当たらない。よって,Cの販売差止請求は認められない。

3 設問3

(1) A図書館の創作者Bには,著作者人格権である同一性保持権が帰属する(2条1項2号,17条1項)。Bは屋根の切除が同一性保持権(20条1項)を侵害するおそれがあるとして,112条1項による工事の予防を請求し得る。特徴的な突出部分の撤去はBの意に反する著作物の改変である。

(2) A市は建築物の改築等に当たるとして20条2項2号を主張できる。同号は所有者の経済的利用と著作者の人格的利益を調整するものであり,必要な増改築に限るという明文はない。他方,所有者による一切の改変を無条件に許すと著作者の利益が空洞化するから,著作者との関係で信義に反する特段の事情がある改変には及ばないと解する。

 本件では,建築後10年というだけで老朽化や安全上の必要性を補うことはできず,市長が奇抜と考えたことだけを理由に,市の発展を表す最も特徴的な屋根の突出部を撤去する。Bの創作意図を直接損なう恣意的な改変であり,信義に反する特段の事情を認めるべきである。20条2項4号のやむを得ない改変ともいえず,工事の差止めが認められる。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

設問1は番号1~8,設問2⑴は9~17,設問2⑵は18~34,設問3は35~40に対応します。負例は誤った処理を避けるための項目であり,その誤記を答案へ書くことを求めるものではありません。

(2) 建築の保護と絵はがき

番号2・7は,実用的な建物のありふれた形状と創作的造形を区別し,その表現を建築によって再製したことを論じる点です。写真による複製と混同してはいけません。番号13では停止と在庫廃棄,番号16では「美術」と「建築」の法文上の区別をそれぞれ明示します。

(3) 絵画の写り込みと攻撃防御

番号22はC・D両者の主張を回収する骨格です。Dの類似性否定は,その結論を採らなくても,独立の主張として示してから評価します。小さいことは複製を当然に否定する理由にはなりませんが,写り込みの軽微性・正当な範囲の判断では重要です。30条の2第1項の各要件と,印刷・販売についての同条2項は区別しました。同条各項ただし書の不当な利益侵害も検討していますが,公式に独立の評価事項として挙げられたものとは区別した補足です。

46条については,αの屋内設置という文言上の障害を示す構成を採り,外から恒常的に見える状態を重視する解釈も検討しました。4号の「専ら」の判断は,屋外恒常設置の要件とは別です。両解釈の相違は示しつつ,付随対象著作物の抗弁を独立に判断するのが本答案です。

(4) 同一性保持権と工事の予防

番号37は既にされた侵害の停止ではなく,計画中の工事の予防です。番号39は実用目的との調整であり,市長の好みという目的と,創作的な屋根の突出部を切るという内容を具体的に評価します。改変の必要性に言及しただけで20条2項2号を当然に排除するのではなく,原則許容と信義の限界を分けています。

(5) 答案の弱点と扱わなかった事項

設問3の信義に反する特段の事情の認定は,裁判例の法理を本問へ当てはめた独自の評価です。部分撤去を認める結論を採る場合も,実用性と人格的利益の関係を丁寧に論じる必要があります。建築後10年という与件だけから,危険や老朽化を補ってはいません。全部滅失との違い,翻案権,名誉・声望を害する利用は中核の請求をぼかさないため詳論していません。

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他人の文章や講演を要約してブログ・SNSに載せると著作権侵害か―翻案,要約引用,公開の演説及び時事の事件の報道(AI作成)

建物・展示美術の写真を広告や商品に使えるか―著作権法46条と写り込みの判断(AI作成)

著作権全部譲渡後の改変と著作者人格権―著作権法20条・59条・61条(AI作成)

自己の著作権を会社へ低額譲渡したときの所得税―長期譲渡所得・時価課税・契約実務(AI作成)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①令和6年司法試験論文式問題・選択科目(知的財産法第2問,22頁)
②令和6年司法試験論文式試験出題趣旨(30頁第2問)
③令和6年司法試験の採点実感・選択科目(知的財産法の本問は主に22~24頁)
④令和6年司法試験の実施について(出題法令の基準時)

2 法令

①著作権法(令和6年1月1日施行版):2条,10条,17条,20条,21条,26条の2,30条の2,45条,46条,112条。
②民法:1条2項,709条。
③文化庁・令和2年著作権法改正(写り込み規定の見直し)

3 裁判例

①大阪高裁・平成15年(ネ)第3575号判決:一般住宅の建築著作物性に関する判示の8~9頁を確認。住宅事案の法理を図書館へ無条件に移すものではありません。
②大阪地裁平成25年9月6日決定・平成25年(ヨ)第20003号:庭園への20条2項2号の類推,改変と信義の限界に関する23~26頁を確認。本問は建築物への直接適用です。

4 確認状態

法務省の問題・出題の趣旨・採点実感は公式PDF正本を確認しました。出題の趣旨は知的財産法第2問の全記載,採点実感は本問の採点方針・実感と関連する科目総論・末尾注記を読んでいます。別科目・第1問の評価内容は本記事へ使用していません。

法令の文言及び上記裁判例の実読部分は一次資料確認済み(Confirmed),公式が述べた評価事項は資料記載(Source statement),本答案の個別事実への評価は独自推論(Inference)です。本問と完全に同型の確定裁判例,具体的な公式配点,契約による権利処理の詳細は未確認(Unknown)であり,推測で補っていません。