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令和7年度司法試験知的財産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した35項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は,令和7年司法試験の論文式試験のうち,選択科目の知的財産法第2問を対象として,法務省が公表した「出題の趣旨」及び「採点実感」から答案の評価項目を抽出し,5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答を示すものである。

本問は,政治家を目指すAが駅前広場で披露した文章Pと,その様子を編集した動画Qを素材として,文章Pを要約した文章P’をブログに掲載した個人ブロガーBに対する削除請求(設問1)と,動画Qの映像をゆがんで表示させる再生ソフトRを公開し,その利用を呼びかけたプログラマーCに対する著作者人格権に基づく請求(設問2)を問うものである。

公式資料から抽出できた評価項目は35項目である。
重み5(答案の骨格又は採点実感が評価の分かれ目とした事項)に当たるのは,番号1・3・7・11・20・21・25・29の8項目であり,その内容は次のとおりである。
①設問1・2の権利の発生・帰属の主張(番号1・20)
②28条を介した公衆送信権の侵害の主張(番号3)
③類似性がないとの反論(番号7)
④要約引用を容認すべき理由の説明(番号11)
⑤同一性保持権の侵害を理由とする請求の構成(番号21)
⑥名誉回復等の措置の検討(番号25)
⑦最高裁平成13年2月13日判決【ときめきメモリアル事件】を踏まえた検討(番号29)

答案の結論は,設問1では,P’の掲載は公開の演説の利用(40条1項)及び引用(32条1項)として適法であり,削除請求は認められない,というものである。
設問2では,Cに対し,損害賠償と名誉回復等の措置は請求でき,差止めは書き込みの削除に限り認められる,というものである。
第5の模範解答は,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で約2,400字に収め,その後に出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説を付けている。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価項目は,本問の出題の趣旨(知的財産法〔第2問〕の部分)又は採点実感(知的財産法の部分)の記述から抜き出したものに限り,一つの項目に一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形に言い換えた。
各項目には,出題の趣旨と採点実感のどこに根拠があるかを,PDFの頁と見出し番号で示した。
出題の趣旨の「(2)」「(3)」は〔第2問〕の段落番号2・3を,採点実感の「2⑵ア」は「2 採点方針」の「⑵ 第2問」の「ア 設問1」を,「3⑵イ」は「3 採点実感」の「⑵ 第2問」の「イ 設問2」を,「3⑶」は「全体を通しての感想」を,「5」は「今後の法科大学院教育に求めるもの」を指す。
一方の資料に記載がない場合は「記載なし」,一般的な記述から導いたものは「間接」と表示した。
「記載なし」は,その資料の知的財産法第2問に関する部分を全部読んだ上で,該当する記述がなかったことを意味する。

採点実感が不十分な答案として指摘した事項のうち,独立の注意点は「〜しない」の形の項目にした(番号5・6・13・16・32・33・35)。
公式資料は,設問1の反論の当否や設問2の各請求の可否について結論を一つに定めていないため,結論そのものではなく,理由を示して検討したかを項目にした。
公式資料の文章は,評価の強さを示す短い語句を除いて引用せず,根拠となる記述の趣旨を要約して示している。

2 5段階の重み付けの基準

重みは,公式資料の書きぶりの強さから本記事が付けたものであり,法務省の配点ではない。
①重み5:採点実感が「相当低い評価」「僅か」「ごく少数」「限られており」等と,評価の分かれ目として取り上げた事項,又は答案の骨格そのもの
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた(言及の多少や不足を指摘した)事項
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け又は当てはめ,又は評価を大きく下げる誤り
④重み2:一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項(「散見」等)
⑤重み1:一方が控えめに触れるだけの事項

第3 本問の概要

政治家を目指しているAは,日本の将来について熱く論じる約1万字の文章Pを創作し,通勤客であふれる早朝の駅前広場で披露した。
Aは,その様子を撮影した映像に自ら編集を加えて動画Qを作成し,自己のウェブサイトに掲載したところ,空前の再生数を記録し,マスメディアにも取り上げられた。

設問1では,個人ブロガーBが,動画Qが注目を集めていることを紹介する投稿の中で,文章P全体を分かりやすく1000字程度に要約した文章P’を掲載し,その内容を批判する3000字程度の文章を添えた。
Aが文章Pに係る「著作権」の侵害を理由にP’の削除を請求した場合に,Aがすべき主張,Bの反論及びそれらの妥当性が問われている。

設問2では,プログラマーCが,動画ファイルを視聴すると映像が変容して表示される再生ソフトRを無料で公開しており,Rで動画Qを見ると滑稽にゆがむことに気付いて,自己のウェブサイトに「みんなこの再生ソフトRでAのウェブサイトにある動画Qを見てみろ」と書き込んだ。
これを見た多くの人がRで動画Qを視聴し,Aはすっかり笑いものになった。
Aが動画Qに係る「著作者人格権」に基づいてCにどのような請求ができるか,その妥当性が問われている。

第4 評価項目と重み

1 設問1(Aの主張)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1文章Pの著作物性(2条1項1号),Aが著作者であること(同項2号)及び著作権を有すること(17条1項)を,条文を挙げて主張する5PDF32頁(2):文章Pの著作物性,著作者及び著作権の帰属の主張を求めるPDF23頁(3⑵ア):権利の発生・帰属の記述が十分でない答案は「相当低い評価」
2P’が文章Pを原著作物とする二次的著作物(2条1項11号)に当たることを示す4PDF32頁(2):P’を,Pを要約した二次的著作物(2条1項11号)と位置付けるPDF23頁(3⑵ア):二次的著作物であることを指摘できない答案が「散見」
3P’のブログ掲載が,28条を介してAが有する公衆送信権(23条1項)の侵害に当たることを,28条と23条1項の両方を挙げて主張する5PDF32頁(2):28条を介して有する公衆送信権(23条1項)の侵害を理由とするPDF23頁(3⑵ア):23条1項だけ,又は28条だけを挙げる答案が「散見」(採点方針2⑵アは一応の水準の要素とする)
4差止請求(112条)として文章P’の削除を求め得ることを示す4PDF32頁(2):削除を求める差止請求(112条)が可能である旨を求めるPDF23頁(3⑵ア):権利侵害の効果としての差止請求を条文とともに論じるべきとする
5「著作権の侵害」を理由とする請求であるのに,同一性保持権等の著作者人格権の侵害を論じない2記載なしPDF23頁(3⑵ア):「著作権の侵害」が明示されているのに著作者人格権を論じる答案が「散見」
6ブログからの削除請求の根拠を,公衆送信権でなく翻案権の侵害に置かない2記載なしPDF23頁(3⑵ア):ブログからの削除請求なのに翻案権侵害を理由とする答案が「散見」

2 設問1(Bの反論とその妥当性)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
7Bの反論として,PとP’の間に創作的表現の共通性がなく,表現上の本質的特徴を直接感得できない(類似性がない)と主張する5PDF32頁(2):創作的表現の共通性がなく類似性がない旨の主張を求めるPDF24頁(3⑵ア):類似性否定の反論に言及した答案は「僅か」
8約1万字の文章Pを1000字程度に要約したという事実から,表現上の本質的特徴を直接感得できるかを具体的に検討する3PDF32頁(2):反論の妥当性の具体的な検討を求めるPDF21頁(2⑵ア):約1万字を1000字程度にした要約から本質的特徴を直接感得できるかの検討を良好・優秀の要素とする
9Bの反論として,引用(32条1項)による適法を主張する4PDF32頁(2):引用(32条1項)を反論に挙げるPDF23頁(3⑵ア):引用の要件論・該当性を詳細に検討した答案が多い
10要約引用の可否について,引用に伴う利用として47条の6第1項2号が翻訳のみを掲げていることに言及する4PDF32頁(2):要約引用の可否の検討を求めるPDF23頁(3⑵ア):47条の6第1項2号に言及できない答案を指摘
1147条の6第1項2号が翻訳のみを許容しているのに,なぜ翻案に当たる要約による引用を容認すべきか(又は否定すべきか)を説明する5PDF32頁(2):要約引用の可否など,妥当性の具体的な検討を求めるPDF24頁(3⑵ア):翻訳しか許容しない同号の下でなぜ要約を容認すべきかの説明が不十分な答案が「散見」(採点方針2⑵アは要約引用の可否について東京地裁の裁判例を参照に挙げる)
12引用の要件(公正な慣行・引用の目的上正当な範囲)を,批判の目的や分量(約3000字の批判と約1000字の要約)等の事実に当てはめる3PDF32頁(2):反論の妥当性の具体的な検討を求めるPDF23頁(3⑵ア):引用の要件該当性を詳細に検討した答案が多い
13要約を複製権侵害としながら,翻案の場合にだけ問題となる47条の6第1項2号を論じる一貫しない構成をとらない2記載なしPDF24頁(3⑵ア):要約を複製権侵害としつつ,翻案の場合にだけ問題となる同号を論じる答案が「少なからず」
14Bの反論として,公開して行われた政治上の演説の利用(40条1項)を主張する4PDF32頁(2):公開の演説の利用(40条1項)を反論に挙げるPDF24頁(3⑵ア):論じた答案は「相当数」
1540条1項の要件(公開して行われた,政治上の演説)を,本問の事実(政治家を目指していること,日本の将来を論じたこと,駅前広場で披露したこと等)に正しく当てはめる4PDF32頁(2):反論の妥当性の具体的な検討を求めるPDF24頁(3⑵ア):40条1項の要件を正しく当てはめられない答案が「散見」
16「同一の著作者のものを編集して利用する場合」は同一著作者の複数の演説をまとめる場合であり,一つの演説の要約はこれに当たらないと理解する(誤解しない)3記載なしPDF24頁(3⑵ア):一つの演説の要約を「編集」と誤解した答案が「少なからず」
17Bの反論として,時事の事件の報道のための利用(41条)を主張する4PDF32頁(2):時事の事件報道(41条)を反論に挙げるPDF24頁(3⑵ア):論じた答案は「多くなく」
1841条に伴って許容される行為として47条の6第1項2号が翻訳のみを掲げていることを検討する4PDF32頁(2):要約引用の可否「など」の妥当性の検討を求める(間接)PDF24頁(3⑵ア):41条に伴う利用を翻訳に限る同号を検討した答案は「僅か」
19個人ブロガーが,動画Qが大きな注目を集めていることを紹介する際に文章Pを要約して掲載することが,時事の事件の報道のための利用といえるかを具体的に検討する3PDF32頁(2):反論の妥当性の具体的な検討を求めるPDF21頁(2⑵ア):個人ブロガーの紹介が時事の事件報道のための利用といえるかの検討を良好・優秀の要素とする

3 設問2(著作者人格権に基づく請求)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
20動画Qの著作物性(2条1項1号),Aが著作者であること(同項2号)及び著作者人格権を有すること(17条1項)を,条文を挙げて主張する5PDF32頁(3):動画Qの著作物性,著作者及び権利の帰属の主張を求めるPDF24頁(3⑵イ):権利の発生・帰属の記述が十分でない答案は「相当低い評価」
21Cに対する同一性保持権(20条)の侵害を理由とする請求を構成する5PDF32頁(3):Cに対する同一性保持権(20条)の侵害を理由とする請求の検討を求めるPDF21頁(2⑵イ):一応の水準の要素とする
22著作者の名誉声望を害する方法による利用として著作者人格権の侵害とみなされる行為(113条11項)に当たることを主張する3記載なしPDF21頁(2⑵イ):113条11項に当たる旨の指摘を一応の水準の要素とする
23差止請求(112条)の可否を検討する4PDF32頁(3):差止請求(112条)の可否の検討を求めるPDF21頁(2⑵イ):一応の水準の要素とする
24損害賠償請求(民法709条)の可否を検討する4PDF32頁(3):損害賠償請求(民法709条)の可否の検討を求めるPDF20頁(2⑵イ):一応の水準の要素とする
25名誉回復等措置請求(115条)の可否を検討する5PDF32頁(3):名誉回復等措置請求(115条)の可否の検討を求めるPDF24頁(3⑵イ):言及した答案は「限られており」,論述も不十分なものが「散見」
26どの行為がどの権利の侵害に当たり,どの請求が可能となるかを対応させて説明し,侵害の成否だけで終わらず請求内容まで論じる3記載なしPDF24頁(3⑵イ):どの行為がどの権利の侵害に当たりどの請求ができるかを説明できない答案が「少なからず」
27自ら改変行為をしているとは言い難いCが請求の相手方となり得るかを,理由を示して論じる(理由なくCを侵害主体としない)4PDF32頁(3):Cに対する各請求の可否の検討を求める(間接)PDF24頁(3⑵イ):理由を示さずにCを侵害主体とする答案が「散見」
28請求の相手方について,差止請求と損害賠償請求の違いを意識して論じる4PDF32頁(3):請求ごとの可否の検討を求める(間接)PDF24頁(3⑵イ):差止めと損害賠償の相手方の違いを意識した答案は「少数」
29損害賠償請求について,最判平成13年2月13日【ときめきメモリアル事件】(専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードの販売が他人による同一性保持権侵害を惹起する不法行為に当たる)を踏まえて検討する5PDF32頁(3):最判平成13年2月13日【ときめきメモリアル事件】を踏まえた検討を求めるPDF24頁(3⑵イ):同判決を踏まえた答案は「ごく少数」
30ときめきメモリアル事件の判断内容と本件の事案との差異(Rが専ら動画Qの改変を目的としないこと,Cの書き込み等)を踏まえて具体的に検討する4PDF32頁(3):同判決を踏まえた具体的な検討を求めるPDF24頁(3⑵イ):同判決と本件の事案の差異を踏まえた答案を「高く評価」
31差止請求について,侵害行為の幇助者に対する差止請求の可否をめぐる従来の議論を踏まえて検討する3記載なしPDF22頁(2⑵イ):幇助者に対する差止めの議論を踏まえた検討を良好・優秀の要素とする
32著作者人格権侵害に基づく請求を問われているのに,説明なく著作権の制限規定に言及しない2記載なしPDF24頁(3⑵イ):説明なく著作権の制限規定に言及する答案が「散見」
33同一性保持権(20条)・名誉声望侵害(113条11項)について,条文を正確に挙げ,結論だけを述べるのでなく理由を示す2記載なしPDF24頁(3⑵イ):20条・113条11項の条文の摘示が不正確な答案,結論のみの答案が「散見」

4 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
34考えられる主張・反論・請求を,訴訟代理人として主張する場面を想定して網羅的に挙げる(一つの反論だけを詳しく論じて他を落とさない)3記載なしPDF24頁(3⑵ア・5):可能性のある主張は「網羅的に指摘すべき」とし,今後の教育でも網羅的な記述の徹底を求める
35条文を項・号まで正確に挙げ(例:17条1項・23条1項。10条1項各号だけで著作物性を示さない),最高裁判例の内容を正確に理解して示す2記載なしPDF23頁(3⑵ア・⑶):17条・23条の項の欠落や誤記が多く,条文・最高裁判例の正確な摘示を求める

5 重みの分布

35項目の内訳は,重み5が8項目,重み4が13項目,重み3が8項目,重み2が6項目,重み1が0項目であり,重みの合計は128点である。
設問別では,設問1のAの主張が6項目・22点,設問1のBの反論とその妥当性が13項目・48点,設問2が14項目・53点,答案全体が2項目・5点である。
本問の配点は50点であるが,設問ごとの配点は公表されていないため,上記の点数は配点の割合を示すものではない。

重み5の8項目のうち,番号1・3・20・21は請求の骨格であり,採点実感は,権利の発生・帰属の記述が十分でない答案は設問1・2とも「相当低い評価にとどまった」としている。
番号7・11は設問1の反論の検討の深さを分ける事項であり,類似性の否定に言及した答案は「僅か」,要約引用を容認すべき理由の説明が不十分な答案は「散見」とされた。
番号25・29は設問2の請求の検討の深さを分ける事項であり,名誉回復等措置請求に言及した答案は「限られており」,ときめきメモリアル事件を踏まえた答案は「ごく少数」とされた。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

答案は,試験の実施日(令和7年7月16日)時点の著作権法(e-Gov法令APIで同日時点の条文を確認した。)と,それまでに言い渡された判例を前提にしている。
法令名を書かない条文番号は著作権法の条文であり,民法の条文には法令名を付けた。
答案の階層は「1→(1)→ア」とし,各論点を問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書き,反対の立場は「確かに,〜。しかし,〜。」の形で取り上げた。
答案の括弧書きで示した判例は,裁判所ウェブサイトの判決全文で判示を確認したものに限った。
「判例同旨」は判例と同じ規範によるもの,「参照」は事案が異なるが判示の考え方を参考にしたものを示す。
字数は,見出しを含め改行を除いて2,405字である。

設問1の結論(40条1項及び32条1項による適法)と設問2の結論(差止めは書き込みの削除に限る)は,答案が採った一つの立場であり,公式資料は他の結論を排除していない。

2 答案

1 設問1について

(1) Aの主張
 文章Pは,Aの思想を創作的に表現した著作物(2条1項1号)であり,これを創作したAは著作者(同項2号)として著作権を有する(17条1項)。
 P’は,Pに依拠し,その表現上の本質的な特徴を維持しつつ要約して創作されたもので,Pを原著作物とする二次的著作物(2条1項11号)に当たる(判例同旨・最判平成13年6月28日)。
 よって,Aは,BがP’をブログに掲載したことが,28条を介してAが有する公衆送信権(23条1項)の侵害に当たるとして,112条1項に基づきP’の削除を求めるべきである。

(2) Bの反論
 Bは,①PとP’は創作的表現が共通せず類似性がない,②引用(32条1項),③公開の演説の利用(40条1項),④時事の事件の報道のための利用(41条)に当たる,と反論することが考えられる。

(3) 妥当性
ア ①について
 確かに,約1万字を1000字程度に縮め「分かりやすく」言い換えたのであれば,論旨という思想が共通するにすぎないとも思える。
 しかし,本問のP’はPの「全体」を要約したものであり,Pの論点の選択と配列をたどる限り,Pの表現上の本質的な特徴を直接感得できるから,類似性は否定されない。
イ ③について
 では,Aは政治家ではないから,Pは「政治上の演説」に当たらないのではないか。
 思うに,同項の趣旨は,公開の政治的言論を広く伝え自由な批判にさらす点にあるから,政治上の演説か否かは,演説者の地位ではなく内容で判断すべきと解する。
 本問では,Pは「日本の将来について熱く論じる」もので,「政治家を目指して」公衆に向けたものであるから,政治上の演説に当たる。
 また,「通勤客であふれる早朝の駅前広場」で披露したから「公開して行われた」といえ,Pは演説の表現そのものであるから,文章Pにも同項が及ぶ。
 そして,除外される「同一の著作者のものを編集して利用する場合」とは,複数の演説をまとめる場合をいい,一つの演説を要約した本問は当たらない。
 さらに,同項は「いずれの方法によるかを問わず」と定め,48条3項1号は同項により創作された二次的著作物を予定するから,要約も許される。
 したがって,P’の掲載は40条1項により適法である。
ウ ②について
 確かに,47条の6第1項2号は32条による利用に翻訳しか掲げず,要約引用は許されないとも思える。
 しかし,全文の引用が許される場面で,原著作物への影響の小さい要約による引用を禁ずるのは均衡を欠くから,正確な要約で,公正な慣行に合致し正当な範囲内のものは許されると解する。
 本問では,P’は批判の対象を示す批評目的のもので,3000字程度の批判が主,P’が従であり,論旨全体を批判する以上全体の要約も必要といえる。
 また,BはP’をAの熱弁を収めた動画Qの内容として紹介しており,自己の批判と区別し,出所も示しているといえるから,引用に当たる。
エ ④について
 本問では確かに,動画Qは「マスメディアにも取り上げられる」ほど注目を集めており,その紹介は個人ブロガーによる時事の事件の報道ともいえる。
 しかし,Bの投稿の主眼はPの内容の批判にあり,また47条の6第1項2号は41条による利用にも翻訳しか認めないから,要約の掲載は41条によっては許されない。
オ 以上より,Aの削除請求は認められない。

2 設問2について

(1) 前提
 動画Qは,撮影映像にAが編集を加えた映画の著作物(2条1項1号,同条3項)であり,Aは著作者(2条1項2号,16条)として著作者人格権を有する(17条1項)。

(2) 侵害の成否
 Rを用いると動画Qは「実に滑稽な様子にゆがんで」表示されるから,データ自体は変わらなくても,受け手に提示される影像がAの意に反して改変されており,同一性保持権(20条1項)の侵害が生じている(最判平成13年2月13日参照)。
 確かに,各自の視聴は私的なものであるが,著作者人格権には私的使用の例外がなく(50条),本問では「多くの人」が改変された影像を見ている。
 また,Aは,Cが動画Qを嘲笑の対象として多数人に視聴させたことは,名誉声望を害する方法による利用(113条11項)にも当たると主張し得るが,C自身は動画Qを複製も公衆送信もしておらず,「利用」の主体といえるかには疑問が残る。

(3) Cを相手方とする請求
ア 損害賠償・名誉回復等の措置
 もっとも,改変するのは視聴者であり,Cが自ら改変したとは言い難い。
 この点,前掲最判は,専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを流通に置いた者は,他人による同一性保持権の侵害を惹起したとして不法行為責任を負うとした。
 確かに,Rは動画一般に使え,専ら動画Qの改変を目的とするものではない。
 しかし,本問では,Cは動画Qがゆがむことに「気付き」,これを名指ししてRでの視聴を「みんな」に呼びかけ,多くの人が視聴したから,Rの提供と書き込みが一体として動画Qの改変を惹起したといえる。
 よって,Aは,民法709条に基づき慰謝料を請求できる。
 また,名誉声望は社会から受ける客観的な評価をいうところ(判例同旨・最判昭和61年5月30日),本問ではAが「すっかり笑いもの」になり評価が低下したから,115条に基づき訂正又は謝罪文の掲載も請求できる。
イ 差止め
 差止請求(112条1項)の相手方は,損害賠償と異なり「侵害する者」とされており,幇助者を含まないとの見解もある。
 しかし,幇助行為が侵害に不可欠で,幇助者がこれをやめれば侵害を止められる場合は,侵害主体に準じて差止めの相手方になると解する。
 本問では,Cが書き込みを削除すれば動画Qを狙った視聴の誘導は止まるから,書き込みの削除は認められる。
 他方,本問のRは他の動画にも使え「専ら侵害の行為に供された」器具(同条2項)ではないから,Rの公開の停止は認められない。
以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の1の(1)は番号1〜4・6に,1の(2)は番号7・9・14・17に対応する。
1の(3)は,アが番号7・8に,イが番号14〜16に,ウが番号9〜13に,エが番号17〜19に対応する。
答案の2は,(1)が番号20に,(2)が番号21・22・32・33に,(3)のアが番号24・25・27・29・30に,イが番号23・28・31に対応し,答案全体で番号26・34・35に注意した。
番号5は,設問1で著作者人格権を論じないことで満たしている。

(2) 設問1(文章の要約と著作権)

設問1の出発点は,請求の骨格を条文とともに組むことである。
採点実感は,著作物性(2条1項1号)・著作者(同項2号)・著作権の享有(17条1項)を項まで正確に挙げることを求め,ブログからの削除請求なのに翻案権侵害を理由とする答案を不十分としている(番号1・6・35)。
答案では,P’の作成(翻案)は二次的著作物(2条1項11号)であることを基礎付ける前提にとどめ,削除の根拠は,ブログ掲載について28条を介してAが有する公衆送信権(23条1項)の侵害とした(番号2〜4)。

Bの反論は,採点実感が「網羅的に指摘すべき」とするとおり,類似性の否定,引用,公開の演説の利用及び時事の事件報道の四つを全部挙げる必要がある(番号34)。
特に,類似性の否定は権利制限規定による抗弁とは別の反論であり,言及した答案は僅かであった(番号7)。
答案では,約1万字を1000字程度に「分かりやすく」縮めたことは類似性を否定する方向の事情として先に認め,Pの「全体」の論点の選択と配列をたどる要約である限り類似性は否定されない,とした(番号8)。

公開の演説の利用(40条1項)では,Aが現に政治家ではないことが障害になるが,答案は,政治的言論を広く伝え批判にさらすという趣旨から「政治上の演説」は内容で判断するとした(番号15)。
採点実感は,「同一の著作者のものを編集して利用する場合」とは同一著作者の複数の演説をまとめて出版するような場合であり,一つの演説を要約した本件はこれに当たらないとしている(番号16)。
同項が要約まで許すかについては,同項の「いずれの方法によるかを問わず」の文言と,48条3項1号が「第四十条第一項…の規定により創作された二次的著作物」を予定していることを根拠にした。この条文上の根拠は公式資料には書かれていないが,翻訳・翻案による利用を定める47条の6第1項が40条2項だけを掲げ,同条1項を掲げていないこととも整合する。

要約引用(32条1項)では,引用に伴う利用として47条の6第1項2号が翻訳だけを掲げているのに,なぜ要約を容認すべきかの説明が評価を分けた(番号10・11)。
採点方針は,要約引用の可否について東京地裁の裁判例を参照に挙げているが,本記事はその判決原文を確認していないため,答案では用いず,全文の引用が許される場面との均衡という理由で説明した。
時事の事件報道(41条)は,論じた答案が多くなく,同条に伴う利用も翻訳に限られること(47条の6第1項2号)まで検討した答案は僅かであった(番号17・18)。答案では,個人ブロガーによる紹介が報道に当たり得ることを認めた上で,投稿の主眼が批判にあることと同号の限定から,41条による正当化を否定した(番号19)。

(3) 設問2(再生ソフトによる改変と著作者人格権)

設問2でも,動画Qの著作物性と著作者を条文とともに示すことが前提である(番号20)。
映画の著作物の著作者は16条が定めるが,著作者の定義(2条1項2号)と著作者人格権の享有(17条1項)も併せて挙げた。

侵害の成否について,公式資料は,再生ソフトRによる表示の変容が改変に当たるかの判断枠組みまでは示していない。
答案は,Rを使っても動画Qのデータ自体は変わらない点を認めた上で,受け手に提示される影像が変えられることを改変とし,各自の視聴が私的であることについては,私的使用の例外は著作権の制限であって著作者人格権に影響しないこと(50条)を理由に退けた(番号32)。
名誉声望を害する方法による利用(113条11項)は,採点方針が一応の水準の要素に挙げている(番号22)。答案はAの主張として挙げた上で,C自身が動画Qを複製・公衆送信していないことから,Cが「利用」の主体といえるかには疑問が残るとした。

請求の相手方について,採点実感は,自ら改変行為をしているとは言い難いCが相手方となり得るかを理由とともに論じること,差止請求と損害賠償請求の違いを意識することを求めている(番号27・28)。
損害賠償については,最高裁平成13年2月13日判決(ときめきメモリアル事件)が,専らゲームソフトの改変のみを目的とするメモリーカードを輸入,販売し,他人の使用を意図して流通に置いた者は,他人の使用による同一性保持権の侵害を惹起したものとして不法行為に基づく損害賠償責任を負うとしている(番号29)。
本件のRは動画一般に使える再生ソフトであり,同判決の「専ら」という事情を欠くため,答案では,Cが動画Qを名指しして多数人に視聴を呼びかけた書き込みとRの提供が一体となって動画Qの改変に向けられていることで,その差を埋めた(番号30)。
差止めについては,侵害行為の幇助者に対する差止めの可否をめぐる議論があり(番号31),大阪地裁平成15年2月13日判決(平成14年(ワ)第9435号)は,著作権侵害の主体とはいえない幇助者に対しても,その支配の内容,程度等に照らして差止めを求め得るとしている。
答案は,幇助行為が侵害に不可欠で,やめれば侵害を止められる者は相手方になるとして書き込みの削除を認め,他の動画にも使えるRの公開の停止は,「専ら侵害の行為に供された」器具(112条2項)でないとして否定した。

名誉回復等措置請求(115条)は,言及した答案が限られていた(番号25)。
名誉声望の意義について,最高裁昭和61年5月30日判決は,旧著作権法36条ノ2の声望名誉を,著作者がその品性,徳行,名声,信用等の人格的価値について社会から受ける客観的な評価であり,名誉感情を含まないとしている。答案は,Aが「すっかり笑いもの」になったことを,社会から受ける客観的な評価の低下として当てはめた。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

答案は,字数を2,500字以内に収めるため,次の事項を短くし,又は書いていない。
①要約引用の要件のうち,明瞭区別性と出所の明示(48条1項・3項)は1文にとどめた。
②動画Qの撮影者がA以外の者であった場合の共同著作物の扱い(117条1項,64条)は,問題文に撮影者が書かれていないため扱わなかった。
③C自身が動画Qを視聴した行為による改変は,損害の中心が多数人の視聴にあるため扱わなかった。
④設問2で,Rの公開を全面的に止めるのではなく,Rが動画Qに作用しないようにする措置(112条2項の「侵害の停止又は予防に必要な措置」)を求める構成もあり得るが,答案では書き込みの削除にとどめた。

設問1は,類似性を否定し,又は40条1項を否定して32条1項だけで判断する構成も,理由を示せば成り立つ。
設問2は,幇助者は112条1項の相手方に含まれないとして差止めを否定し,損害賠償と名誉回復等の措置だけを認める構成も成り立つ。

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⑲令和7年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目(AI作成)
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第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省「令和7年司法試験論文式試験問題集[選択科目]」(知的財産法第2問はPDF21頁。掲載元は「試験問題」)
②法務省「令和7年司法試験の論文式試験出題の趣旨」(知的財産法第2問はPDF32頁。掲載元は「令和7年司法試験の結果について」)
③法務省「令和7年司法試験の採点実感(選択科目)」(知的財産法はPDF20頁〜26頁。掲載元は「令和7年司法試験の採点実感」)

2 法令

①著作権法(昭和45年法律第48号):2条1項1号・2号・7号の2・9号の4・9号の5・11号,2条3項,4条,10条1項,16条,17条1項,20条,23条1項,27条,28条,30条1項,32条1項,40条1項・2項,41条,47条の6第1項,48条1項・3項,50条,112条,113条11項,115条,117条1項
②民法(明治29年法律第89号):709条,719条

3 裁判例

①最高裁平成13年6月28日判決(平成11年(受)第922号,民集55巻4号837頁)【江差追分事件】:言語の著作物の翻案の意義
②最高裁平成13年2月13日判決(平成11年(受)第955号,民集55巻1号87頁)【ときめきメモリアル事件】:メモリーカードの使用による同一性保持権の侵害と,専ら改変を目的とするメモリーカードを流通に置いた者の不法行為責任
③最高裁昭和61年5月30日判決(昭和58年(オ)第516号,民集40巻4号725頁):著作者の声望名誉の意義
④大阪地裁平成15年2月13日判決(平成14年(ワ)第9435号)【ヒットワン事件】:幇助者に対する差止請求

4 確認状態

公式資料は,令和8年10月9日に法務省ウェブサイトから取得したPDFで,知的財産法第2問の部分(出題の趣旨PDF32頁,採点実感PDF20頁冒頭・21頁〜22頁の採点方針の第2問・23頁〜25頁の採点実感の第2問・25頁〜26頁の全体の感想以下)を全部読んだ。
条文は,e-Gov法令APIで令和7年7月16日時点の著作権法(令和5年法律第33号による改正後,令和7年6月1日施行の版)と民法を取得して確認した。
裁判例①〜④は,裁判所ウェブサイトの判決全文で判示部分を確認した。
採点方針が要約引用の可否について参照に挙げる東京地裁の裁判例は,裁判所ウェブサイトに掲載がなく,本記事では判決原文を確認していないため,出典として挙げていない。
採点方針の設問2の部分には「Cは、著作物…に当たる映像Qを創作した著作者」との記載があるが,問題文と出題の趣旨に照らし,本記事では動画Qの著作者をAとして扱った。