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令和7年度司法試験環境法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した26項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は,令和7年司法試験の論文式試験のうち,選択科目(環境法)第1問を対象として,法務省が公表した「出題の趣旨」及び「採点実感」から答案の評価項目を抽出し,5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答を示すものである。

本問は,砒素を使用していた貯木場の跡地に大規模なトラックターミナルを建設しようとする土地所有者Xを題材に,土壌汚染対策法の形質変更時の届出・調査,形質変更時要届出区域の指定とその規制,自然由来の汚染の場合の規制の違い,及び汚染原因者に対する民法709条に基づく掘削除去費用の請求の範囲を問うものである。

公式資料から抽出できた評価項目は26項目であり,重み5(答案の骨格又は採点実感が評価の分かれ目とした事項)に当たるのは,届出制度の理由としての土地の広さ(番号2),計画変更命令(番号10),汚染土壌処理業者への委託義務(番号12),自然由来の汚染が「公害」に当たらないこと(番号18),法8条が直接は適用されないこと(番号23),法8条の趣旨の及ぼし方(番号24)及び健康被害のおそれが低いという本件の事実(番号25)の7項目である。

模範解答の結論は,小問⑴が法4条1項の届出,小問⑵が形質変更時要届出区域の指定,小問⑶が法12条(届出・計画変更命令)と法16条以下(搬出の届出・処理委託・管理票)の規制,小問⑷が法18条1項2号による処理委託義務の免除,小問⑸が掘削除去費用の全額は請求できないというものである。
第5の模範解答は,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で示し,その後に出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説を付けている。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価項目は,本問の出題の趣旨(選択科目の環境法〔第1問〕の部分)又は採点実感(環境法の【第1問】の部分)の記述から抜き出したものに限り,一つの項目に一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形に言い換えた。
法務省の公式の採点基準ではなく,公式資料から本記事が独自に抽出したものである。

各項目には,出題の趣旨と採点実感のどこに根拠があるかを,PDFの頁と小問の番号(採点実感の「3」は「3 採点実感」の【第1問】の部分を指す。)で示し,一方の資料に記載がない場合は「記載なし」,一般的な記述から導いたものは「間接」と表示した。
「記載なし」は,両資料の該当部分を全て読んだ上でのものである。

公式資料の文章は,評価の強さを示す短い語句を除いて引用せず,根拠となる記述の趣旨を要約して示している。
採点方針のうち両問に共通する一般的な記述(事実に基づくこと,体系的理解に基づくこと,論理的に記述すること等)は,独立の評価項目にせず,番号20の根拠として示した。

番号16と番号17は,小問⑷でどちらの緩和を挙げるかによって一方だけが問題となる項目(許容分岐)であり,全ての答案に両方を求めるものではない。

2 5段階の重み付けの基準

重みは,公式資料の書きぶりの強さから本記事が付けたものであり,法務省の配点ではない。

①重み5:採点実感が「記述できていない答案も多く見受けられた」「期待されたが、少数であった」等として評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け
④重み2:一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項
⑤重み1:一方が控えめに触れるだけの事項

第3 本問の概要

A県の甲土地は,過去に貯木場として使われ,その事業で使われていた砒素が土壌内に放置されたまま整地され,現在は運送事業者Xが事業場として使っている。
Xは,地上5階のトラックターミナルを建設するため,5000平方メートルの掘削工事や地盤改良のための土砂の搬出・搬入を予定し,建設に先立つ調査で環境基準を超える砒素が検出され,A県知事は甲土地を土壌汚染対策法に基づく区域に指定した。
甲土地内に井戸はなく,周辺でも地下水を飲用している状況は確認されていない。

小問⑴は調査のきっかけとなった届出とその理由,小問⑵は健康被害のおそれの政令基準に該当しない場合の区域の指定,小問⑶はその区域でXの工事に課される規制,小問⑷は汚染が自然由来であった場合の規制の違いとその理由,小問⑸は,Xが他の対策方法を検討せずに自主的に掘削除去をした場合に,汚染原因者Yに対して民法709条に基づき掘削除去費用の全額を請求できるかを問う。
各小問は独立したものとされ,小問⑸では不法行為責任を問うことができることが前提とされ,時効には触れなくてよいとされている。
問題文の資料として,土壌汚染対策法施行規則22条(法4条1項の届出の対象となる規模を3000平方メートルとする規定)が示されている。

第4 評価項目と重み

1 小問⑴(土地の形質の変更の届出とその理由)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1一定規模以上の土地の形質の変更をしようとする者の法4条1項の届出義務を指摘する436頁小問⑴(届出義務の指摘を求める)34頁3小問(1)(ほとんどの答案が挙げた)
2届出制度の理由として,3000平方メートル以上の広い土地では土壌汚染が存在する可能性が大きいこと(土地の広さ)に触れる536頁小問⑴(面積の大きい形質変更では汚染が存在する可能性が高い)34頁3小問(1)(土地の広さへの言及が期待されたが,言及できていない答案が多かった)
3届出制度の理由として,形質の変更による汚染の拡散のリスクが高いことを説明する336頁小問⑴(拡散のリスクが高い)間接(34頁3小問(1)。届出制度の理由を適切に説明した答案は少なかった)
4一定規模の形質の変更の時を調査の契機としたという制度趣旨を説明する336頁小問⑴(調査の契機とした制度趣旨の説明を求める)記載なし

2 小問⑵(区域の指定)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
5法11条1項の形質変更時要届出区域の指定を指摘する436頁小問⑵(指定の指摘を求める)34頁3小問(2)(ほとんどの答案が正解)
6設例の事情(基準を超える砒素の検出,井戸がなく地下水の飲用もないこと)を法6条1項1号・2号に当てはめて説明する336頁小問⑵(設例の事情を踏まえた説明を求める)記載なし

3 小問⑶(形質変更時要届出区域の規制)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
7予定工事に掘削工事と土砂の搬出があることを指摘し,形質の変更の届出に関連する規制と搬出時の規制の二つの局面に分けて説明する436頁小問⑶(掘削工事と土砂の搬出の指摘を求める)34頁3小問(3)(二つの局面の記述が期待された)
8土地の掘削工事が「土地の形質の変更」に当たることを指摘する436頁小問⑶(掘削工事が形質の変更に当たることの指摘)34頁3小問(3)(説明できていない答案があった)
9法12条1項の届出義務(着手の14日前まで)を説明する436頁小問⑶(法12条1項の届出義務)34頁3小問(3)(形質変更の届出に関連する規制)
10法12条5項の計画変更命令を説明する536頁小問⑶(同条5項の計画変更命令)34頁3小問(3)(記述できていない答案も多かった)
11土砂の搬出について法16条1項の届出義務を説明する436頁小問⑶(法16条1項の届出義務)34頁3小問(3)(土壌搬出時の届出)
12汚染土壌の処理を汚染土壌処理業者に委託する義務(法18条1項)を説明する536頁小問⑶(法18条の委託義務)34頁3小問(3)(触れていない答案も少なくなかった)
13管理票の交付(法20条)を説明する436頁小問⑶(法20条の管理票)34頁3小問(3)(言及できていた答案もあった)
14条文の列挙で終えず,本問のXが負う具体的な義務として説明する336頁小問⑶(Xの具体的な義務の説明を求める)記載なし

4 小問⑷(自然由来の場合の違いとその理由)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
15自然由来の場合の規制の緩和を一つ指摘する(法12条1項1号による事前届出の不要と同条4項の事後届出,又は法18条1項2号による処理委託義務の免除)436頁小問⑷(いずれか一つの指摘を求める)34頁3小問(4)(両方の挙げ方を取り上げる)
16事前届出の不要を挙げる場合に,法12条4項の事後の届出義務を指摘する(許容分岐)336頁小問⑷(事後の届出で足りる)34頁3小問(4)(指摘できたのはごく少数)
17処理委託義務の免除を挙げる場合に,その具体的な要件を記述する(許容分岐)336頁小問⑷(法18条1項2号)34頁3小問(4)(要件を記述できていない答案も多かった)
18違いの理由として,自然由来の汚染は人為的活動によるものではなく,環境基本法の「公害」に当たらないことを説明する536頁小問⑷(「公害」「人為的活動」の観点)34頁3小問(4)(違いの理由の説明に説得力がない答案が多かった)
19公害に当たらなくても,形質の変更や搬出には汚染拡大のリスクがあるから,リスク管理の観点から規制自体は必要であることを論じる436頁小問⑷(「リスク管理」の観点)34頁3小問(4)(規制が必要であることを論じる必要がある)

5 小問⑸(掘削除去費用の請求)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
20全額請求の可否の結論を明示し,理由と論理的に結び付ける(結論の方向は問わない)336頁小問⑸(結論の明示と論理的な説明を求める)34頁2(採点方針。筋の通った記述を重視)
21不法行為に基づく損害賠償の相当因果関係の枠組みを前提にする436頁小問⑸(相当因果関係の法的枠組み)34頁3小問(5)(相当因果関係の検討に進む答案は少数)
22法の汚染除去等の対策の考え方の中で,掘削除去の位置付けを説明する336頁小問⑸(掘削除去の位置付けの説明を求める)記載なし
23甲土地は形質変更時要届出区域であるから,法8条が直接は適用されないことを指摘する536頁小問⑸(法8条が直接は適用されないこと)34頁3小問(5)(これを前提とする答案が期待されたが少数)
24法8条の趣旨を709条の損害の範囲に及ぼすべきか否かを論じる5間接(36頁小問⑸。法8条の直接不適用を挙げる)34頁3小問(5)(趣旨の及ぼし方の議論が期待された。最も実力差が出た小問)
25健康被害のおそれが低い土地であるという本件の事実(形質変更時要届出区域にすぎないこと,地下水を飲用していないこと,トラックターミナルとして利用予定であること)を踏まえる536頁小問⑸(人の健康に危険が生じるおそれの程度)34頁3小問(5)(事実に即した記述が期待されたが少数)
26他の対策方法の費用を検討しないまま自主的に掘削除去をしたことを踏まえる336頁小問⑸(他の対策方法の費用の検討の有無)記載なし

6 重みの分布

26項目の内訳は,重み5が7項目,重み4が10項目,重み3が9項目,重み2が0項目,重み1が0項目であり,重みの合計は102点である。
小問別では,小問⑴が4項目15点,小問⑵が2項目7点,小問⑶が8項目33点,小問⑷が5項目19点(番号16と番号17はどちらか一方だけが問題となる),小問⑸が7項目28点である。
問題文は第1問全体の配点(50点)だけを示し,小問ごとの配点は示していないので,これらの点数は配点の割合を示すものではない。

重み5の7項目は,小問⑴の土地の広さ(番号2),小問⑶の計画変更命令と処理委託義務(番号10・12),小問⑷の「公害」に当たらないこと(番号18),小問⑸の法8条の直接不適用とその趣旨の及ぼし方及び健康被害のおそれが低いという事実(番号23〜25)であり,いずれも採点実感が多くの答案に欠けていたと指摘した事項である。
重み2・重み1の項目がないのは,本問の採点実感が,軽い表現で触れるだけの事項や典型的な誤りの型を独立に挙げていないためである。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

以下の答案は,第4の評価項目(番号16を除く。)を満たすように作成したものであり,試験の実施時(令和7年7月)の土壌汚染対策法,同法施行令,同法施行規則及び環境基本法を前提にしている。
小問⑷では,番号15の二つの挙げ方のうち法18条1項2号(処理委託義務の免除)を採ったので,番号16は問題とならない。

答案は,旧司法試験の時代から論文式答案で広く使われてきた型によっている。
見出しを「1」「(1)」「ア」の順に下げ,論点ごとに,問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書き,反対の立場は「確かに,〜とも思える。しかし,〜。」の形で取り上げ,最後に「以上」と書く型である。
もっとも,本問の小問⑴から⑷は制度の説明を求めるものなので,条文と制度の趣旨の説明が中心になり,評価の分かれる小問⑸で,規範と当てはめを厚くした。

字数は,見出しを含めて2,346字(改行を除く。)である。
答案では裁判例を引用していない。

2 答案

1 小問⑴について
(1) Xが行った届出は,土壌汚染対策法(以下「法」という。)4条1項の届出である。
 面積が3000平方メートル(法施行規則(以下「規則」という。)22条)以上の土地の形質の変更をしようとする者は,着手日の30日前までにその場所等を都道府県知事に届け出なければならず,5000平方メートルを掘削するXの工事はこれに当たる。
 知事は,汚染のおそれがある基準(規則26条)に該当すると認めるときは調査と報告を命ずることができ(法4条3項),砒素を使用した貯木場跡地である甲土地の調査はこれによるものといえる。
(2) では,なぜこの届出が求められるのか。
 土壌汚染は外部から見えず,法3条の調査は有害物質使用特定施設の廃止時に限られるから,汚染を把握する機会は乏しい。
 そして,面積の大きい土地では汚染が存在する可能性が大きく,形質の変更は汚染土壌の飛散,地下水汚染,搬出による拡散のリスクを伴う。
 そこで,法は,一定規模以上の形質の変更の時を調査の契機とし,汚染が判明すれば区域指定により管理できるようにしたのである。
2 小問⑵について
 法は,①汚染状態が省令の基準に適合せず(法6条1項1号),かつ,②健康被害が生ずるおそれがある政令の基準に該当する(同項2号)土地を要措置区域とし,①に該当し②に該当しない土地を形質変更時要届出区域とする(法11条1項)。
 本問では,砒素の環境基準は土壌溶出量基準(規則31条1項,別表第四)と同じ値であるから,①に該当する。
 他方,甲土地に井戸はなく,周辺でも地下水は飲用されていないから,地下水経由の摂取の要件(法施行令5条1号イ,規則30条)を満たさず,②に該当しない。
 よって,知事は,甲土地を形質変更時要届出区域に指定し,公示することが考えられる(法11条1項・3項,6条2項)。
3 小問⑶について
 この区域では,要措置区域(法9条)と異なり形質の変更は禁止されないが,次の規制が課される。
(1) 掘削工事について
 土地の掘削は「土地の形質の変更」(法3条7項)に当たり,5000平方メートルの掘削や地盤改良は軽易な行為(法12条1項2号,規則50条)でもないから,Xは,着手日の14日前までに,その種類,場所,施行方法等を知事に届け出なければならない(法12条1項)。
 知事は,施行方法が基準(規則53条)に適合しないときは,14日以内に限り計画の変更を命ずることができる(同条5項)。
 地上5階のトラックターミナルの基礎工事や地盤改良は掘削が深くなり得るから,Xは,帯水層に接する場合の施行方法や飛散防止の基準に沿う必要がある。
(2) 土砂の搬出について
 掘削土を区域外へ搬出するときは汚染土壌(法16条1項)に当たるから,Xは,搬出着手日の14日前までに汚染状態,体積,運搬方法,処理施設等を届け出(同項),処理を汚染土壌処理業者に委託し(法18条1項),管理票を交付しなければならない(法20条1項)。
4 小問⑷について
(1) 自然由来の汚染で,第二溶出量基準に適合し,地質的に同質に広がる等の要件を満たせば,甲土地は自然由来等形質変更時要届出区域となる(法18条2項,規則65条の4第1号)。
 その汚染土壌を,汚染状況が同様で地質が同じ他の同区域内の形質の変更に使うために搬出する場合には,処理の委託を要しない(法18条1項2号,規則65条の2・65条の3)。
(2) では,なぜこの違いが設けられているのか。
 「公害」は人の活動に伴って生ずる土壌の汚染等による被害であるから(環境基本法2条3項),人為的活動によらない自然由来の汚染は「公害」に当たらない。
 もっとも,自然由来でも形質の変更や搬出で拡散すれば健康被害のおそれがあるから,リスク管理の観点から規制は及ぶ。
 他方,自然由来の汚染は低濃度で特定の地層に同質に広く分布するから,同様の区域へ移しても新たなリスクはほとんどなく,全量の処理委託はリスクに見合わない負担となる。
 そこで,公害でないことを踏まえ,規制を緩和したのである。
5 小問⑸について
(1) 法は,健康被害の防止を目的とし(法1条),そのおそれがある土地だけを要措置区域として,必要な限度で措置を指示する(法6条1項,7条1項)。
 地下水汚染がない溶出量基準不適合の土地の指示措置は地下水の水質の測定であり(規則36条1項,別表第六),掘削除去は同等以上の措置として選択できるにとどまる。
 原因者への費用請求も,指示措置の費用の額が限度である(法8条1項)。
(2) もっとも,甲土地は形質変更時要届出区域で知事の指示がないから,法8条は直接適用されない。
 では,Xは709条により掘削除去費用の全額を請求できるか。損害の範囲が問題となる。
 賠償の範囲は相当因果関係のある損害に限られ,対策費用は,土地の状況に照らし必要かつ相当な範囲で相当因果関係が認められると解する。
 確かに,法8条は709条を当然に制限せず,掘削除去により区域指定が解除され(法11条2項),評価も回復するから,全額が損害とも思える。
 しかし,法8条は,健康被害の防止に必要な対策を超える費用を原因者に転嫁しない考え方を示すから,相当性の判断で考慮すべきである。
 本問では,甲土地は形質変更時要届出区域にすぎず,地下水は飲用されず,トラックターミナルとして利用予定であるから,健康被害のおそれは低い。
 しかも,Xは「他の対策方法を検討することもなく」「自主的に」掘削除去をした。
 したがって,Xは全額を請求できず,合理的な対策の費用の限度で請求できるにとどまる。
 なお,土地の価格の低下は,別の損害として請求する余地がある。
以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の1(1)が番号1,1(2)が番号2から4に,2が番号5・6に対応する。
答案の3(1)が番号7から10・14に,3(2)が番号11から14に,4(1)が番号15・17に,4(2)が番号18・19に対応する。
答案の5(1)が番号22に,5(2)が番号20・21・23から26に対応する。
重み5の7項目は,1(2)の「面積の大きい土地では汚染が存在する可能性が大きく」(番号2),3(1)の計画変更命令(番号10),3(2)の処理の委託(番号12),4(2)の「公害」(番号18),5(2)の法8条の直接不適用(番号23),法8条の趣旨の扱い(番号24)及び「形質変更時要届出区域にすぎず,地下水は飲用されず,トラックターミナルとして利用予定である」という当てはめ(番号25)で回収している。

(2) 小問⑴

法4条1項の届出を挙げることは容易であるが,採点実感によれば,届出制度がなぜ採用されたのかを適切に説明した答案は少なかった。
出題の趣旨は,面積の大きい土地では土壌汚染が存在する可能性が高く,拡散のリスクも高いため,一定規模の形質の変更の時を調査の契機としたと説明しており,問題文の資料が規則22条の「3000平方メートル」を示しているのもこの点を論じさせる趣旨と考えられる。
調査に至る経緯としては,届出を受けた知事が,汚染のおそれの基準(規則26条)に該当すると認めて調査を命ずる(法4条3項)のが通常の流れである。
届出の際に所有者等全員の同意を得て自ら調査結果を提出する方法(同条2項)もある。

(3) 小問⑵・⑶

小問⑵は,法6条1項1号に該当し2号に該当しない土地を形質変更時要届出区域とする法11条1項を指摘すればよく,採点実感でもほとんどの答案が正解していた。
砒素の土壌溶出量基準(規則別表第四)と土壌環境基準の砒素の値は,いずれも検液1リットル当たり0.01ミリグラム以下である。

小問⑶では,問題文の工事を「掘削工事」と「土砂の搬出」に分け,前者に法12条1項の届出と同条5項の計画変更命令,後者に法16条1項の届出,法18条1項の処理委託義務及び法20条の管理票を当てることが求められた。
採点実感は,掘削が形質の変更に当たることの説明漏れ,計画変更命令の記述漏れ及び処理委託義務の記述漏れを指摘している。
計画変更命令の基準(規則53条)は,汚染土壌が帯水層に接する場合の施行方法,汚染土壌の飛散等の防止,形質の変更後に健康被害のおそれがない状態にすること等を内容とする。
要措置区域では形質の変更が原則として禁止される(法9条)のに対し,形質変更時要届出区域では届出と施行方法の審査で足りるという違いも,制度の理解として押さえておきたい。

(4) 小問⑷

出題の趣旨は,自然由来の場合の緩和として,法12条1項1号イによる事前届出の不要(同条4項による事後の届出)と,法18条1項2号による処理委託義務の免除のいずれか一つを指摘することを求めている。
もっとも,法12条1項1号の特例は,施行管理方針について知事の確認を受けた上で,イ(汚染が専ら自然又は水面埋立て用の土砂に由来すること)とロ(健康被害のおそれがないものとして環境省令で定める要件。規則49条の5は,工業専用地域等にあることなどを定める)の両方に該当する形質の変更に限られる。
甲土地の用途地域は問題文から分からないので,答案では,要件を確かめやすい法18条1項2号を採った。
採点実感は,事前届出の不要を挙げた答案のうち事後の届出義務まで指摘したものはごく少数で,処理委託義務の免除を挙げた答案でもその要件の記述が足りないものが多かったとしている。

理由については,採点実感が筋道を具体的に示している。
自然由来の汚染は人為的活動によるものではないから,環境基本法2条3項の「公害」(事業活動その他の人の活動に伴って生ずる土壌の汚染等による被害)に当たらない。
それでも形質の変更や搬出には汚染拡大のリスクがあるから,リスク管理の観点から規制は必要である。
その上で,公害ではないことから規制内容に違いが設けられている,という三段の説明である。
規制の違いの記述に偏り,理由の説明に説得力がない答案が多かったとされているので,違いを一つ挙げた後は理由に字数を割くのがよい。

(5) 小問⑸

採点実感は,小問⑸を「第1問の中で最も法学的な実力の差が表れた問題」としている。
期待されたのは,甲土地が要措置区域ではなく形質変更時要届出区域に指定されているにすぎず,地下水が飲用されておらず,トラックターミナルとして利用する予定であるから,健康被害が生ずるおそれが低い土地であるという事実を前提に,法8条が直接は適用されないことを確認し,その趣旨をどう及ぼすか(又は及ぼさないか)を論じてから,損害との相当因果関係の検討に進む答案である。

法8条1項は,知事の指示(法7条1項)を受けた土地の所有者等が汚染原因者に請求できる費用を,指示措置に要する費用の額に限っている。
指示措置は,土壌溶出量基準に適合せず地下水汚染が生じていない土地では地下水の水質の測定であり(規則36条1項,別表第六の一の項),掘削除去(土壌汚染の除去)は,指示措置と同等以上の効果を有する措置の一つとして選ぶことができるにとどまる。
環境省の施行通知(平成31年3月1日環水大土発第1903015号)も,掘削除去は汚染の拡散のリスクを防止する観点からできる限り抑制的に取り扱うこととしている。

答案は,法8条の趣旨を709条の相当性の判断で考慮し,全額の請求はできないとした。
もっとも,法8条は要措置区域の指示を前提とする特別の請求権であり,709条の損害の範囲を直接に制限するものではないという考え方から,掘削除去費用の全額又はそれに近い額を損害とする結論も,筋が通っていれば許容されると考えられる(採点方針は,複数の考え方が生じ得る部分は筋の通った記述かどうかを重視するとしている)。
いずれの結論でも,Xが他の対策方法を検討しなかった事実と,健康被害のおそれの程度を評価することが欠かせない。

(6) 答案の弱点と扱わなかった事項

答案は2,500字以下に収めるため,届出事項の細目,運搬基準(法17条),汚染土壌の搬出時の措置命令(法19条),罰則及び汚染土壌の定義から除かれる土壌(法16条1項括弧書)を省いた。
小問⑸の「合理的な対策の費用」の具体的な額は,問題文から算定できないので示していない。
土地の価格の低下を別の損害とする余地には触れたが,その算定方法には立ち入っていない。
建設工事のためにいずれ必要となる掘削の費用は汚染と因果関係がなく,汚染によって増えた処理費用等だけが損害になるという整理もあり得るが,小問⑸は工事と切り離して自主的な掘削除去を問うているので,答案では扱っていない。

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⑨令和7年度司法試験倒産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した28項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑩令和7年度司法試験租税法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑪令和7年度司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した43項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑫令和7年度司法試験経済法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑬令和7年度司法試験経済法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑭令和7年度司法試験知的財産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑮令和7年度司法試験知的財産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した35項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑯令和7年度司法試験労働法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した24項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑰令和7年度司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑱令和7年度司法試験環境法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した28項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑲令和7年度司法試験国際関係法(公法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した19項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑳令和7年度司法試験国際関係法(公法系)第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した22項目と5段階の重み付け(AI作成)
㉑令和7年度司法試験国際関係法(私法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した30項目と5段階の重み付け(AI作成)
㉒令和7年度司法試験国際関係法(私法系)第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した29項目と5段階の重み付け(AI作成)
㉓令和7年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
㉔令和7年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答(AI作成)

2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①地下水・土壌汚染が判明した場合の法的対応―行政法上の措置・証拠保全・民事請求(AI作成)
②令和8年度司法試験環境法第1問の参考答案と予想される評価項目――廃棄物処理法、事務管理、ごみ処理有料化をめぐる47項目(AI作成)
③令和8年度司法試験環境法第2問の参考答案と予想される評価項目――自然公園法の地域制・草原保全・風景地保護協定・損失補償(AI作成)
④令和8年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の参考答案(AI作成)
⑤土壌汚染地の相続税評価と浄化・改善費用―区域の種類,最も合理的な措置,求償権及び対策費用の税務(AI作成)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省「令和7年司法試験の実施について」
②法務省「令和7年司法試験問題」
③令和7年司法試験論文式試験問題(選択科目)
④法務省「令和7年司法試験の結果について」
⑤令和7年司法試験論文式試験出題の趣旨
⑥法務省「令和7年司法試験の採点実感」
⑦令和7年司法試験の採点実感(選択科目)

2 法令

①土壌汚染対策法(e-Gov法令検索)
②土壌汚染対策法施行令(e-Gov法令検索)
③土壌汚染対策法施行規則(e-Gov法令検索)
④環境基本法(e-Gov法令検索)
⑤民法(e-Gov法令検索)
⑥環境省「土壌汚染対策法の一部を改正する法律による改正後の土壌汚染対策法の施行について」(平成31年3月1日環水大土発第1903015号)
⑦環境省「土壌環境基準」別表

3 裁判例

答案及び解説では,裁判例を引用していない。

4 確認状態

問題は,上記③のPDFの30頁(環境法第1問)を全て読んだ。
出題の趣旨は,上記⑤のPDFの36頁の環境法〔第1問〕の部分を全て読んだ。
採点実感は,上記⑦のPDFの34頁(採点方針及び【第1問】)と36頁(今後の出題について等)を読んだ。

土壌汚染対策法,同法施行令,同法施行規則及び環境基本法の条文は,e-Gov法令APIで試験の実施日(令和7年7月16日)時点の版を取得して確認した。
土壌汚染対策法は令和7年6月1日施行の改正後の版,施行令及び施行規則は令和6年4月1日施行の改正後の版であり,いずれも試験の後の令和8年7月1日に改正されている。
土壌環境基準の砒素の値は,上記⑦の現在の表示で確認したものである。

施行通知(上記⑥)は,土壌汚染対策法4条の趣旨(32頁〜33頁),掘削除去の扱い(51頁〜52頁)及び自然由来等の土壌の移動の特例の理由(101頁)の記述を確認した。
本記事の評価項目と重みは公式資料から本記事が独自に抽出したものであり,法務省の採点基準や配点を示すものではない。