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令和7年度司法試験国際関係法(私法系)第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した29項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は,令和7年司法試験の論文式試験のうち,選択科目の国際関係法(私法系)第2問を対象として,法務省が公表した「出題の趣旨」及び「採点実感」から答案の評価項目を抽出し,5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答を示すものである。

本問は,甲国籍の女性Aが甲国で行方不明となった事案について,日本の裁判所がする失踪宣告の国際裁判管轄と準拠法及びその効力の及ぶ範囲(設問1),日本でされた失踪宣告の取消しの国際裁判管轄と準拠法(設問2小問1),並びに甲国でされた失踪宣告の日本での承認と婚姻の解消(設問2小問2)を問うものである。

公式資料から抽出できた評価項目は29項目であり,重み5(答案の骨格又は採点実感が評価の分かれ目とした事項)に当たるのは,不動産ア・イ・ウを財産ごとに区別した法の適用に関する通則法6条2項の当てはめ,失踪宣告の取消しの管轄を認めた後の特別の事情(家事事件手続法3条の14)の検討,家事事件手続法79条の2による民事訴訟法118条の準用の指摘,同条2号が失踪宣告の性質に反する理由,及び婚姻の解消の性質決定(婚姻の効力か離婚か)の5項目である。

第5の模範解答は,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で,2,500字以下に収めて示し,その後に出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説を付けている。

本記事の評価項目と重みは,公式資料の記述から本記事が独自に抽出・設定したものであり,法務省の公式の採点基準や配点ではない。
また,法令は試験の実施日(令和7年7月16日)当時のものを前提としている。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価項目は,本問の出題の趣旨(国際関係法(私法系)〔第2問〕の部分)又は採点実感(同)の記述から抜き出したものに限り,一つの項目に一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形に言い換えた。

各項目には,出題の趣旨と採点実感のどこに根拠があるかを,PDFの頁と見出し(採点実感の「3⑵ア」は「3 採点実感等」の「⑵[第2問]について」のアを指す。)で示し,一方の資料に記載がない場合は「記載なし」と表示した。

公式資料の文章は,評価の強さを示す短い語句を除いて引用せず,根拠となる記述の趣旨を要約して示している。

採点実感が不十分な答案として指摘した事項のうち,独立の注意点となるものは「〜しない」の形の項目(番号6・8・14・23・28)とし,同じ5段階の中で重みを付けた。
番号29は,採点実感が答案全体の注意として述べ,本問の〔設問2〕〔小問2〕を例に挙げた事項であるため,「答案全体」の表に置いた。

2 5段階の重み付けの基準

重みは,公式資料の書きぶりの強さから本記事が付けたものであり,法務省の配点ではない。

①重み5:採点実感が「優秀」と判断した,漏れた答案が「非常に多かった」「かなりの数に上った」等と述べた事項,又は答案の骨格そのもの
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け又は当てはめ,又は評価を下げる誤りとして指摘された事項
④重み2:一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項
⑤重み1:一方が控えめに触れるだけの事項,又は許容される扱い

結論が複数あり得る論点(不動産イに効力が及ぶか,婚姻の解消を婚姻の効力と離婚のどちらと性質決定するか)は,結論ではなく検討の有無を項目にした。
採点実感も,学説が分かれている論点については,結論それ自体によって得点に差を設けず,自説の論拠と論理的な展開を基本として採点したとしている(41頁2)。

第3 本問の概要

甲国籍のA(父Bは甲国籍で死亡,母Cは日本国籍で甲国在住)は,日本国籍のDと甲国で婚姻した。
問題文は甲国法として,失踪宣告の管轄(最後に生存が確認された時点で甲国民又は甲国に常居所),準拠法(その時点の本国法),要件(10年の生死不明)及び効果(最後の生存確認から5年経過時に死亡とみなす)の4か条を与え,各設問は独立した問いで,反致は検討しなくてよいとしている。

設問1では,Aが甲国でCと暮らし,Dが日本で暮らす中で,子E(日本・甲国の重国籍)の出生から1年後にAが甲国内で行方不明となり,12年後にCが死亡した。
CはAに不動産ア(日本所在)・不動産イ(甲国所在)を譲渡しており,不動産ウ(日本所在)はCに残っていた。
Dの申立てにより日本の裁判所がAの失踪宣告をしたことを前提に,⑴管轄を認めた判断の過程,⑵死亡が擬制される時点,⑶不動産ア・イ・ウのそれぞれに死亡擬制の効力が及ぶかが問われている。

設問2では,A・Dは婚姻直後から日本で生活しており,Aは甲国のCを訪ねた際に行方不明となった。
小問1は,日本の裁判所がした失踪宣告について,生存していたAが日本で取消しを申し立てた場合の⑴管轄と⑵準拠法を問う。
小問2は,甲国の裁判所がした失踪宣告の裁判書と確定証明書により,Dの戸籍に婚姻解消事項が記載されたことを前提に,⑴戸籍管掌者が民事訴訟法118条の要件の具備の検討を必要とし,同条2号を不要とした理由と,⑵婚姻が解消したと判断した過程の説明を求めている。

第4 評価項目と重み

1 設問1⑴(失踪宣告の国際裁判管轄)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1失踪宣告の国際裁判管轄は法の適用に関する通則法6条が定めていることを示す(家事事件手続法には失踪宣告自体の管轄規定がない)440頁〔第2問〕〔設問1〕の⑴(6条に照らした説明を求める)43頁3⑵ア(多くの答案が6条に定められていることを示した)
26条1項(原則的管轄)は,Aが生存していたと認められる最後の時点で日本国籍も日本の住所も有しないため満たさないことを示す440頁〔設問1〕の⑴(いずれも満たさない)43頁3⑵ア(1項では管轄が認められないことを摘示できていた)
36条2項の例外的管轄の要件(日本所在の財産,日本法によるべき法律関係,その他日本に関係がある法律関係)と,管轄が「その財産」「その法律関係」についてのみに限られることを示す440頁〔設問1〕の⑴(同項の文言を事案に当てはめる)43頁3⑵ア(同項の三つの場合と「についてのみ」の限定を説明)
4不動産アはAの日本所在財産であるから,6条2項前段により不動産アについて管轄が認められることを当てはめる440頁〔設問1〕の⑴(事案に当てはめて裁判所の判断過程を説明)43頁3⑵ア(不動産アは不在者の日本所在財産)
5日本人Cの相続は日本法を準拠法とする(通則法36条)Aに関する法律関係であるから,不動産ウについて6条2項後段により管轄が認められることを当てはめる440頁〔設問1〕の⑴(「日本法によるべきとき」への当てはめ)43頁3⑵ア(不動産ウは日本人Cの相続に関わる)
6⑴では管轄の判断過程を答え,不動産イに触れるとしても,効力が及ばない旨の付記にとどめる(効力の範囲を⑴で長く論じない)1記載なし43頁3⑵ア(付記すれば足りる)

2 設問1⑵(死亡擬制の準拠法)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
7死亡の擬制は失踪宣告の直接的効果であり,通則法6条により日本法(民法30条1項・31条)が適用され,行方不明から7年の期間満了時に死亡したものとみなされることを示す440頁〔設問1〕の⑵(6条により日本法(民法31条))43頁3⑵イ(多くの答案が民法31条を適用し正しく導いた)
8死亡擬制の準拠法を,通則法4条(行為能力)により本国法とする誤りをしない2記載なし43頁3⑵イ(それほど少なくない答案が4条により本国法とした誤り)

3 設問1⑶(死亡擬制の効力の及ぶ範囲)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
9⑶は死亡擬制の効力の及ぶ範囲の問題であり,6条2項により,日本所在の財産又は日本に関係がある法律関係についてのみ効力が生ずることを示す440頁〔設問1〕の⑶(同項により効力の範囲が限られる)43頁3⑵ウ(正に死亡擬制の効力の範囲)
10不動産ア(Aの財産で日本所在)には,D及びEの相続の関係で効力が及ぶ440頁〔設問1〕の⑶(ア・ウには効力が及ぶ)43頁3⑵ウ(不動産アには効力が及ぶ)
11不動産イ(Aの財産で日本に所在しない)には当然には効力が及ばないとする。及ぶとするなら,日本に関係がある法律関係であることを説得的に論ずる440頁〔設問1〕の⑶(イに及ぶとするには説得力を持った論証が必要)43頁3⑵ウ(当然には効力が及ばない)
12不動産ウ(Aの財産ではないが日本人Cの相続財産)は,日本法を準拠法とするCの相続という法律関係との関連で,Eの代襲相続の関係で効力が及ぶ440頁〔設問1〕の⑶(日本法により相続による承継が判断される)43頁3⑵ウ(Cの相続は日本法を準拠法とするため効力が及ぶ)
13不動産ア・イ・ウを財産ごとに区別し,6条2項を各財産へ丁寧に当てはめて結論を導く540頁〔設問1〕の⑶(それぞれにつき効力の発生が問題)43頁3⑵ウ(できた答案は「優秀」,それほど多くなかった)
14⑶を失踪宣告の間接的効果の問題と捉えて,相続の準拠法の検討に流れない3記載なし43頁3⑵ウ(相対的に多く,問題文の理解不足と評価)
15各財産と日本との関連性を⑴で詳しく検討していれば,⑶の検討は簡潔でもよい1記載なし43頁3⑵ウ(簡潔でも積極的に評価)

4 設問2小問1(失踪宣告の取消し)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
16失踪宣告の取消しの国際裁判管轄は家事事件手続法3条の3が定めることを示す(人事訴訟法・民事訴訟法や通則法6条で検討しない)442頁〔設問2〕〔小問1〕(家事法3条の3に規定がある)43頁~44頁3⑵エ(人訴法・民訴法や通則法6条による答案があった)
17日本で失踪宣告がされたから,家事事件手続法3条の3第1号により日本の管轄が認められることを当てはめる442頁〔小問1〕の⑴(同条1号)43頁3⑵エ(1号により正しく導けていた)
18家事事件手続法3条の3で管轄を認めた後,同法3条の14の特別の事情の有無を検討する5記載なし44頁3⑵エ(検討しなければならず,漏れが「非常に多かった」)
19取消しの準拠法には通則法に明文がないから,通則法6条の類推適用又は同条を踏まえた条理により日本法によるとする442頁〔小問1〕の⑵(6条の類推適用又は条理により日本法)44頁3⑵オ(通常の考え方であり,そのような答案が多い)

5 設問2小問2⑴(外国失踪宣告の承認と民事訴訟法118条)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
20外国裁判所の失踪宣告の効力は,家事事件手続法79条の2が外国裁判所の家事事件の確定裁判に民事訴訟法118条を準用することにより判断されるから,同条の要件の検討が必要であることを示す542頁〔小問2〕の⑴(79条の2が「その性質に反しない限り」118条を準用)44頁3⑵カ(摘示を欠く答案が「かなりの数」),44頁5⑴(79条の2を知らない受験生が目立った)
21118条2号は対審手続における被告の手続的保護を図るもので,裁判所の後見的機能に基づく,利益の対立する相手方のない失踪宣告には,その適用が「その性質に反する」ことを示す542頁〔小問2〕の⑴(2号は被告の手続的保護,失踪宣告には相手方がない)44頁3⑵カ(79条の2に触れない答案はこの点を指摘できていない)
22118条の2号以外の要件は失踪宣告の性質に反しないから,2号のみ検討を要しないとされたことを示す342頁〔小問2〕の⑴(他の要件は性質に反しない)記載なし
232号を不要とした理由を問われているのに,必要のない118条全体の要件の具備を検討しない2記載なし44頁3⑵カ(全体の要件具備を検討した答案が目立った)

6 設問2小問2⑵(婚姻の解消)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
24失踪宣告の効果は死亡の推定(擬制)だけであり,婚姻や相続への影響(間接的効果)はそれぞれの単位法律関係の準拠法によることを示す442頁〔小問2〕の⑵(一般的な理解)44頁3⑵キ(個々の法律関係の準拠法によることを示す)
25このことは,外国でされた失踪宣告が承認された場合の日本における効果にも当てはまることを示す342頁〔小問2〕の⑵(外国の失踪宣告が承認された場合にも当てはまる)記載なし
26婚姻の解消を婚姻の効力と性質決定するか離婚と性質決定するかを論じ,それにより通則法25条か27条かが適用されることを示す(説明なく25条・27条を適用しない)542頁〔小問2〕の⑵(性質決定により25条か27条か)44頁3⑵キ(説明なく適用した答案が「非常に多かった」),44頁5⑵(性質決定を欠く傾向が顕著)
27いずれに性質決定しても,25条では同一常居所地法,27条ではただし書(日本人条項)により日本法が準拠法となり,日本法上死亡により婚姻が解消することを示す342頁〔小問2〕の⑵(同一常居所地又は日本人条項により日本法)記載なし
28婚姻解消の判断過程を問う⑵で,民事訴訟法118条の要件の具備を改めて検討しない2記載なし44頁3⑵キ(118条の要件具備を検討するものが多かった)

7 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
29問題文に帰結が書いてある問い(〔設問2〕〔小問2〕等)では,結論の明らかな事項を簡潔にし,その理由と帰結を踏まえた法的関係に紙幅を割く2記載なし45頁5⑷(メリハリのある論述を求め,本問の〔設問2〕〔小問2〕を例示)

8 重みの分布

29項目の内訳は,重み5が5項目,重み4が14項目,重み3が4項目,重み2が4項目,重み1が2項目であり,重みの合計は103点である。

設問別では,設問1が15項目・52点(⑴6項目・21点,⑵2項目・6点,⑶7項目・25点),設問2が13項目・49点(小問1が4項目・17点,小問2⑴が4項目・15点,小問2⑵が5項目・17点),答案全体が1項目・2点である。
問題文は第2問全体の配点(50点)だけを示し,設問ごとの配点を示していないため,設問別の重みと配点の対応は確認できない。

重み5の5項目は,設問1⑶の財産ごとの当てはめ(番号13),設問2小問1⑴の特別の事情(番号18),設問2小問2⑴の家事事件手続法79条の2による民事訴訟法118条の準用(番号20)と同条2号が性質に反する理由(番号21),及び設問2小問2⑵の婚姻の解消の性質決定(番号26)である。
番号13は採点実感が「優秀」の基準として示した事項,番号18・20・26は採点実感が漏れ又は不十分な答案の多さを指摘した事項,番号21は小問2⑴の答えの骨格そのものである。

このほか,重みを付けない一般的な指摘として,採点実感は,国際裁判管轄の問いで「手続の問題なので法廷地である日本の手続法に従って判断する」,準拠法の問いで「法廷地である日本の国際私法に従って判断する」といった題意と無関係な記述から始めないこと(45頁5⑷),及び問題文を丁寧に読んで事実関係を誤解しないこと(特に〔第2問〕。45頁5⑸)を挙げている。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

以下の答案は,第4の評価項目をすべて満たすように作成したものであり,試験の実施時(令和7年7月16日)の法令を前提にしている。

答案は,旧司法試験の時代から論文式答案で広く使われてきた型によっている。
見出しを「1」「(1)」「ア」の順に下げ,論点ごとに,問題提起,規範の定立(「思うに,〜。よって,〜と解する。」),当てはめ(「本問では,〜といえる。」)及び結論(「よって」「したがって」「以上より」)の順に書き,反対の立場は「確かに,〜。しかし,〜。」の形で取り上げ,最後に「以上」と書く型である。

もっとも,本問の設問2小問2は,問題文に帰結が書いてあり,その理由と帰結を踏まえた法的関係を問うものであるから(第4の番号29),結論の再検討はせず,理由の説明に字数を割いた。

本問で問われているのは条文の適用と性質決定であり,公式資料も判例を引用していないため,答案では判例を用いていない。

字数は見出しを含めて約2,400字であり,選択科目の1問の目安として2,500字以下に収めた。
さらに分量を減らす場合は,重み5の評価項目(番号13・18・20・21・26)に対応する部分を残し,その他の部分を短くすることになる。

2 答案

1 設問1
(1) 小問⑴
ア 失踪宣告の国際裁判管轄は,家事事件手続法(以下「家事法」という。)に規定がなく,法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)6条が準拠法と併せて定めている。
イ 同条1項は,不在者が生存していたと認められる最後の時点で日本に住所又は国籍を有していたときに原則的管轄を認める。
 本問では,Aは行方不明となった時点で甲国籍のみを有し,Cと同居して甲国に住所を有していた。夫Dと子Eが日本人で日本に住んでいても,A本人の住所・国籍ではない。よって,同項の要件は満たさない。
ウ そこで,同条2項の例外的管轄が問題となる。同項は,不在者の財産が日本に在るときは「その財産についてのみ」,不在者に関する法律関係が日本法によるべきときその他日本に関係があるときは「その法律関係についてのみ」管轄を認める。
 まず,不動産アはAの日本所在財産であるから,同項前段により管轄が認められる。
 次に,EがCを代襲相続できるかはAがCより先に死亡したかにかかるから,Cの相続はAに関する法律関係といえる。そして,相続は被相続人の本国法によるところ(通則法36条),Cは日本人であるから,Cの相続は日本法による。よって,同項後段により,Cの相続関係について管轄が認められる。
 以上より,裁判所は,同項に基づき,不動産ア及びCの相続関係の範囲で管轄を認めたものである。なお,甲国所在の不動産イには宣告の効力は及ばない(後記(3))。
(2) 小問⑵
 死亡の擬制は失踪宣告の直接的効果であり,通則法6条は「日本法により」宣告するとしているから,日本法による。行為能力に関する同法4条により本国法(甲国法S条)によるのではない。
 したがって,民法30条1項・31条により,Aは行方不明となった時から7年の期間が満了した時に死亡したものとみなされる。
(3) 小問⑶
ア 本問は死亡擬制の効力の及ぶ範囲の問題であり,通則法6条2項に基づく宣告の効力は,日本所在の財産又は日本に関係がある法律関係についてのみ生ずる。
イ まず,不動産アは日本に所在するAの財産であるから,D及びEによる相続の関係で効力が及ぶ。
 次に,不動産イはAの財産であるが日本に所在しないから,同項前段の範囲外といえる。
 確かに,相続人D・Eが日本人で日本に住んでいることから,Aの相続を「日本に関係がある」法律関係とみる余地もある。
 しかし,Aの相続の準拠法は甲国法であり,相続人の国籍・住所だけで外国所在の財産まで含めると,前段が日本所在の財産に限った趣旨が失われる。よって,不動産イには当然には効力が及ばない。
 さらに,不動産ウはAの財産ではないが,日本法を準拠法とするCの相続に関わるから,同項後段の範囲内といえ,Eによる代襲相続の関係で効力が及ぶ。

2 設問2
(1) 小問1⑴
ア 失踪宣告の取消しの国際裁判管轄は,通則法6条ではなく,家事法3条の3による。本問では,本件失踪宣告は,婚姻後日本で生活していたAについて日本の裁判所がしたものであるから,同条1号に当たる。
イ そして,日本で宣告がされ,A自身が日本で取消しを求めており,判断資料も日本にあるから,特別の事情(家事法3条の14)があるとはいえない。
 よって,管轄権は認められる。
(2) 小問1⑵
 通則法には失踪宣告の取消しの準拠法を定める規定がない。
 思うに,取消しは宣告の効力を失わせるもので宣告と表裏の関係にあり,宣告と取消しの準拠法が異なると宣告の効力が不安定になる。また,取消しの管轄は宣告をした日本にある。よって,通則法6条の類推適用(又は同条を踏まえた条理)により,日本法によると解する。
 したがって,民法32条1項により,Aの生存が証明されれば本件失踪宣告は取り消される。
(3) 小問2⑴
ア 118条の検討が必要な理由
 本問の甲国の失踪宣告は,確定証明書が付されており,外国裁判所の家事事件についての確定した裁判である。家事法79条の2は,これに「その性質に反しない限り」民事訴訟法118条を準用し,要件を満たせば特別の手続なく日本で効力が認められる。そのため,戸籍管掌者は同条の要件の具備を審査する必要がある。
イ 2号を要しない理由
 118条2号は,敗訴の被告に防御の機会を保障するもので,対審手続における被告の手続的保護を図る規定である。
 これに対し,失踪宣告は裁判所が後見的立場から行う手続であり,利益の対立する相手方がない。本問でも,Cの申立てに対し,所在不明のAは被告の地位にない。日本法も公告により手続を進め,不在者への告知を要しないとしている(家事法148条3項・4項)。
 したがって,2号の準用は失踪宣告の性質に反するといえる。他方,間接管轄(1号)や公序(3号)等の他の要件は性質に反しないから,2号のみ不要と判断されたのである。
(4) 小問2⑵
ア 失踪宣告の効果は死亡の推定(擬制)だけであり,婚姻や相続への影響は,それぞれの単位法律関係の準拠法による。このことは,外国の失踪宣告が承認された場合も同じである。
 よって,婚姻が解消するかは,婚姻解消の準拠法による。
イ 死亡による婚姻の解消は,当事者の意思や裁判によるものではなく,婚姻の存続に関する効果であるから,婚姻の効力と性質決定し,通則法25条によると解する。離婚と性質決定して27条によるとの見解もある。
 25条によれば,ADの本国法は同一でないが,ADは婚姻直後から日本で生活し,Aの失踪は母Cを訪問中のことにすぎないから,同一常居所地法である日本法による。27条によっても,Dは日本に常居所を有する日本人であるから,同条ただし書により日本法による。
ウ 日本法上,夫婦の一方の死亡により婚姻は解消し,失踪宣告による死亡の擬制(民法31条)も同様である。
 したがって,戸籍管掌者は,ADの婚姻は解消したと判断したものである。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の1(1)は第4の番号1〜6,1(2)は番号7・8,1(3)は番号9〜15,2(1)・(2)は番号16〜19,2(3)は番号20〜23,2(4)は番号24〜28に対応し,番号29(答案全体)は2(3)・(4)で結論の再検討をしない書き方で満たすようにした。

重み5の5項目は,1(3)イの財産ごとの検討(番号13),2(1)イの特別の事情(番号18),2(3)アの家事事件手続法79条の2(番号20),2(3)イの2号が性質に反する理由(番号21)及び2(4)イの性質決定(番号26)に当たる。

(2) 設問1(日本でする失踪宣告)

設問1⑴について,出題の趣旨は,Aが日本国籍も日本の住所も有しないため通則法6条1項を満たさず,同条2項の「不在者の財産が日本に在るとき」又は「不在者に関する法律関係が日本法によるべきときその他…日本に関係があるとき」への当てはめで判断過程を説明することを求めている。
採点実感は,不動産アは不在者Aの日本所在財産であり,不動産ウは日本人Cの相続(日本法を準拠法とする不在者に関する法律関係)に関わることから,少なくともこれらの範囲で日本で失踪宣告をすることが認められるとしている。

答案は,Cの相続が「Aに関する法律関係」といえる理由として,EがCを代襲相続できるかがAの死亡の先後にかかることを示した。
採点実感は,⑴で不動産イに触れるのであれば効力が及ばない旨の付記で足りるとしているため(番号6),答案は⑴の末尾で一文だけ触れた。

設問1⑵について,採点実感は,通則法4条により本国法によるとした答案が少なくなかったが誤りであるとしている(番号8)。
答案は,6条の「日本法により」の文言から,宣告の要件と直接的効果である死亡擬制が一体として日本法によることを示した。
甲国法S条(最後の生存確認から5年経過時に死亡とみなす)は,設問1では使わない。

設問1⑶について,採点実感は,これは正に死亡擬制の効力の範囲の問題であるとし,不動産ア・イ・ウを財産ごとに丁寧に検討した答案を「優秀」と判断した一方,本問を間接的効果の問題と捉えて相続の準拠法を検討する答案が相対的に多かったとしている(番号13・14)。
答案は,⑶の冒頭で効力の範囲の問題であることを明示し,相続人や相続分といった相続の中身には立ち入らなかった。

不動産イについて,出題の趣旨は,効力が及ぶことを認めるためには日本に関係がある法律関係であることを説得力を持って論ずる必要があろうとしており,及ぶとする結論も排除していない(番号11)。
答案は,相続人D・Eが日本人で日本に住んでいることを反対の見方として取り上げた上で,6条2項前段が日本所在の財産に限っている趣旨から,当然には及ばないとした。

(3) 設問2小問1(失踪宣告の取消し)

失踪宣告そのものの国際裁判管轄は通則法6条が定めるが,失踪宣告の取消しの国際裁判管轄は家事事件手続法3条の3が定めている。
採点実感は,人事訴訟法や民事訴訟法の規定を指摘する答案や,迷いなく通則法6条で検討する答案があったとしている(番号16)。

採点実感は,家事事件手続法3条の3に基づき管轄を認めたときは,同法3条の14の特別の事情の有無を検討しなければならないところ,この検討が漏れているものが非常に多かったとしている(番号18)。
同条は,事案の性質,申立人以外の事件の関係人の負担の程度,証拠の所在地等を考慮して,日本の裁判所が審理・裁判をすることが適正かつ迅速な審理の実現を妨げる特別の事情があるときに,申立ての全部又は一部を却下できるとする規定である。
答案は,日本で宣告がされたこと,A自身が日本で取消しを求めていること及び判断資料が日本にあることを挙げて,特別の事情を否定した。

取消しの準拠法について,出題の趣旨と採点実感は,通則法に明文の規定がないことから,6条の類推適用又は同条を踏まえた条理により日本法によるとしている(番号19)。
答案は,取消しが宣告と表裏の関係にあることと,取消しの管轄が宣告をした日本にあることを理由とし,日本法(民法32条1項)によれば,Aの生存の証明により宣告が取り消されることまで示した。

(4) 設問2小問2(外国の失踪宣告の承認と婚姻の解消)

小問2⑴について,採点実感は,家事事件手続法79条の2を経て民事訴訟法118条の適用に至ることの摘示を欠く答案がかなりの数に上ったとし,総括でも同条の存在を知らない受験生が目立ったのは残念であったと述べている(番号20)。
79条の2は,外国裁判所の家事事件についての確定した裁判(これに準ずる公的機関の判断を含む。)について,「その性質に反しない限り」118条を準用する規定である。

出題の趣旨は,戸籍管掌者の判断の理由として,2号が対審手続で被告を手続的に保護する規定であること,裁判所が後見的に関与する失踪宣告には利益の対立する相手方がなく,2号の適用はその性質に反すること,及び他の要件は性質に反しないことを挙げている(番号21・22)。
答案は,これに加えて,日本法の失踪宣告の手続が公告により進められ,宣告を不在者に告知することを要しないとされていること(家事事件手続法148条3項・4項)を,2号の保護が失踪宣告になじまない補強として挙げた。
採点実感は,2号を不要とした理由を問うているのに,必要のない118条全体の要件具備を検討した答案も目立ったとしているため(番号23),答案は他の号の当てはめをしていない。

小問2⑵について,出題の趣旨は,失踪宣告の直接の効果(死亡の推定)と,婚姻・相続への影響(各単位法律関係の準拠法による)を区別し,その区別が承認された外国の失踪宣告にも及ぶことを説明した上で,婚姻の解消の性質決定(婚姻の効力か離婚か)によって25条と27条のどちらを適用するかを論ずるよう求めている(番号24〜26)。
採点実感は,特に説明をすることなく25条や27条を適用する答案が非常に多かったとし,総括でも,性質決定を第一歩とせずにいきなり条文を引用する傾向が本小問で顕著であったとしている。

答案は,死亡による婚姻の解消は当事者の意思や裁判によるものではないことを理由に婚姻の効力と性質決定したが,離婚と性質決定する見解も示した。
出題の趣旨のとおり,本問では,25条によれば同一常居所地法として,27条によればただし書の日本人条項(夫婦の一方が日本に常居所を有する日本人であるときは日本法)により,いずれにしても日本法が準拠法になる(番号27)。

(5) 答案の弱点と扱わなかった事項

答案の弱点は次の2点である。

第一に,不動産イに効力が及ばないとする理由(6条2項前段の限定の趣旨)は答案の解釈であり,相続人の国籍・住所を重視して「日本に関係がある」法律関係に当たるとする論証もあり得る(番号11)。

第二に,取消しの準拠法を6条の類推適用によるとする理由,及び婚姻の解消を婚姻の効力と性質決定する理由は,いずれも答案の解釈であり,これを直接判断した最高裁判所の判例は本記事では確認していない。

外国の失踪宣告の承認について民事訴訟法118条4号(相互の保証)が要求されるかは,設問が2号を不要とした理由だけを問うているため,答案では扱っていない。
Aの相続の相続人・相続分(甲国法による)や,Eの代襲相続の成否(民法887条2項)といった相続の中身も,設問1⑶が死亡擬制の効力の及ぶ範囲だけを問うているため,答案では扱っていない。

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1 同じ年度の司法試験の別の模範解答

①令和7年度司法試験公法系第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した40項目と5段階の重み付け(AI作成)
②令和7年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した72項目と5段階の重み付け(AI作成)
③令和7年度司法試験民事系第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した96項目と5段階の重み付け(AI作成)
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⑦令和7年度司法試験刑事系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した51項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑧令和7年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
⑨令和7年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答(AI作成)
⑩令和7年度司法試験倒産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した38項目と5段階の重み付け(AI作成)
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⑬令和7年度司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した43項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑭令和7年度司法試験経済法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑮令和7年度司法試験経済法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑯令和7年度司法試験知的財産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑰令和7年度司法試験知的財産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した35項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑱令和7年度司法試験労働法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した24項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑲令和7年度司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け(AI作成)
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㉒令和7年度司法試験国際関係法(公法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した19項目と5段階の重み付け(AI作成)
㉓令和7年度司法試験国際関係法(公法系)第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した22項目と5段階の重み付け(AI作成)
㉔令和7年度司法試験国際関係法(私法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した30項目と5段階の重み付け(AI作成)

2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①令和8年度司法試験・国際関係法(私法系)第2問の参考答案と予想される評価項目――離婚の方式、嫡出否認、国際扶養(AI作成)
②令和8年度司法試験・国際関係法(私法系)第1問の参考答案と予想される評価項目――公海上の船舶衝突、保険者への直接請求、船荷証券の管轄条項、外国判決の手続的公序(AI作成)
③外国籍・国外財産がある相続と遺言―国際裁判管轄・準拠法・反致・遺言方式(AI作成)
④相続人が行方不明の場合の不在者財産管理人―所在調査,申立て,遺産分割,売却,供託及び管理の終わり方(AI作成)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省「令和7年司法試験の実施日程等について」(令和6年7月31日司法試験委員会決定)
②法務省「令和7年司法試験問題」
③令和7年司法試験論文式試験問題集(選択科目)
④令和7年司法試験論文式試験出題の趣旨
⑤法務省「令和7年司法試験の採点実感」
⑥令和7年司法試験の採点実感(選択科目)

2 法令

①法の適用に関する通則法(e-Gov法令検索)
②家事事件手続法(e-Gov法令検索)
③民法(e-Gov法令検索)
④民事訴訟法(e-Gov法令検索)

3 裁判例

本問の出題の趣旨・採点実感は裁判例を引用しておらず,答案でも裁判例を用いていない。

4 確認状態

問題文は,上記③のPDFの40頁~41頁(国際関係法(私法系)〔第2問〕)を読んだ。

出題の趣旨は,上記④のPDFの40頁~42頁の国際関係法(私法系)の部分のうち,〔第2問〕の部分を全て読んだ。

採点実感は,上記⑥のPDFの41頁~45頁(国際関係法(私法系))のうち,総論(1・2),〔第2問〕の部分(3⑵)及び4・5を全て読んだ。
第4の表の頁は,いずれも上記④・⑥のPDFの頁である。

条文は,e-Gov法令APIの時点指定(令和7年7月16日時点)で,法の適用に関する通則法4条~6条・25条~27条・36条・38条・41条・42条,家事事件手続法3条の2・3条の3・3条の14・7条・79条の2・148条・149条,民法30条~32条・887条及び民事訴訟法118条の本文を確認した。
法の適用に関する通則法は,試験の実施日時点の版が施行時(平成19年1月1日)の版であった(e-Gov法令APIの時点指定による)。

本問に直接対応する最高裁判所の判例は確認していない(第5の3⑸)。