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科目別のリンクから個別記事へ進み,問題文の設問に対応する評価項目,答案,解説及び出典を確認する。別年度との比較や他の科目を探すときは,司法試験の過去問・参考答案一覧を参照されたい。試験制度と受験資格は,司法試験とはで説明している。
本記事は,令和7年司法試験の論文式試験のうち,選択科目8科目(倒産法,租税法,経済法,知的財産法,労働法,環境法,国際関係法(公法系)及び国際関係法(私法系))の第1問と第2問,計16問について,山中弁護士ブログに掲載した模範解答の記事16本を一覧にして案内するものである。
受験者が選択するのは,この8科目のうち1科目である。
16本の記事は,いずれも法務省が公表した「出題の趣旨」及び「採点実感」から答案の評価項目を抽出し,5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答と,出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説を示している。
16本で抽出した評価項目は合計463項目であり,そのうち重み5(答案の骨格又は採点実感が評価の分かれ目とした事項)に当たるのは94項目である。
評価項目と重みは,各記事が公式資料から独自に抽出したものであり,法務省の採点基準や配点ではない。
第2の一覧表で科目と問題を選び,第3で各問題の概要と重み5の事項を確かめてから個別の記事を読むと,どこで答案の差がついたのかをつかみやすい。
主要7科目(憲法,行政法,民法,商法,民事訴訟法,刑法及び刑事訴訟法)の論文式試験と短答式試験は,本記事の対象としていない。
本記事の記載は,令和8年10月9日時点で公開している16本の記事の内容に基づく。
第2 16記事の一覧
| 科目・問題 | 主な論点 | 評価項目 | 重み5 |
|---|---|---|---|
| 倒産法第1問 | 破産手続開始時に係属する訴訟の中断と受継,和解後の弁済の否認,遺産分割合意の否認と価額償還 | 38項目 | 6項目 |
| 倒産法第2問 | DIP型の再生手続と公平誠実義務,管理命令,再生手続廃止後の破産手続への移行,再度の再生手続開始の申立て | 28項目 | 4項目 |
| 租税法第1問 | 水没した自家用車の損失と雑損控除,定住奨励金の所得分類,無届けの民泊の所得分類,必要経費 | 33項目 | 5項目 |
| 租税法第2問 | 債務確定と寄附金,早期予約販売の益金算入時期,ギフト券・株主優待の所得区分と年度帰属,確定申告の要否 | 43項目 | 11項目 |
| 経済法第1問 | 事業者団体の決定(独占禁止法8条4号・1号),特例取引の禁止,割増料金の基準料金 | 25項目 | 4項目 |
| 経済法第2問 | 拘束条件付取引,市場画定,市場閉鎖効果,正当化事由 | 25項目 | 4項目 |
| 知的財産法第1問 | 特許法の試験研究の例外,並行輸入,リサーチツール,存続期間経過後の譲渡の申出 | 25項目 | 5項目 |
| 知的財産法第2問 | 要約の掲載と公衆送信権・引用,公開の演説の利用,同一性保持権,名誉回復等の措置 | 35項目 | 5項目 |
| 労働法第1問 | 競業避止の合意,退職金支給制限条項,産前産後休業・育児休業後の降格 | 24項目 | 5項目 |
| 労働法第2問 | ピケッティングと戒告処分,現場監督者の発言と支配介入,弁当代の支給,救済命令の限界 | 33項目 | 5項目 |
| 環境法第1問 | 土壌汚染対策法の届出・区域の指定・規制,自然由来の汚染,掘削除去費用の請求 | 26項目 | 3項目 |
| 環境法第2問 | 環境影響評価法の第二種事業の判定,条例による項目の追加と手続の拡充,景観利益と原告適格 | 28項目 | 7項目 |
| 国際関係法(公法系)第1問 | 署名国の義務,留保と解釈宣言,脱退規定のない条約からの脱退 | 19項目 | 5項目 |
| 国際関係法(公法系)第2問 | 海峡の通航権,機雷による損害と国家責任,国際海洋法裁判所の管轄権 | 22項目 | 4項目 |
| 国際関係法(私法系)第1問 | 外国の裁判所を指定した管轄合意,労働契約の準拠法と強行規定,使用者責任の準拠法 | 30項目 | 6項目 |
| 国際関係法(私法系)第2問 | 失踪宣告の管轄・準拠法・効力の範囲,失踪宣告の取消し,外国の失踪宣告の承認と婚姻の解消 | 29項目 | 4項目 |
評価項目の数と重みは,各記事の独自の分析によるものであり,法務省の配点ではない。
第3 各問題の概要と重み5の事項
以下の番号は,各記事の評価表の現在の通し番号である。
番号は記事ごとに1から始まるので,個別の記事の評価表で同じ番号の項目を確かめることができる。
1 倒産法
(1) 第1問
本問は,架空の投資話で借入れをした会社員Aの個人の破産事件を素材に,破産手続開始の決定の時に係属していた二つの訴訟(Bに対する不法行為に基づく損害賠償請求訴訟と,Eに対する名誉毀損による慰謝料請求訴訟)の取扱い(設問1)と,破産管財人による否認権の行使(設問2)を問うものである。
設問2⑴は,任意整理の和解契約の成立後にAが知人Cにだけ支払った弁済を否認できるかを,Cの反論を踏まえて問い,設問2⑵は,弟Dに兄の遺産を取得させた遺産分割合意の否認を前提に,Dに価額償還として請求できる額を問う。
問題文は,令和7年1月1日現在で施行されている法令に基づいて答えるよう指示しており,設問2⑵では附帯請求を考慮しなくてよいとされている。
設問2⑴については,記事によれば,出題の趣旨がいずれの結論もあり得るとしている。
重み5は6項目である。
番号6:慰謝料の具体的な金額が当事者間において客観的に確定しない間は,原則として破産財団に帰属しない(最判昭和58年10月6日)
番号8:本件訴訟は「破産財団に関する訴訟手続」に当たらず,中断しない
番号14:受任通知は申立て前1年以内のものではないから,支払不能は推定されない(162条3項括弧書き)
番号15:Cへの弁済は申立ての日から1年以上前の行為であるから,支払停止を理由として否認できない(166条)
番号16:以上から,支払停止によらず支払不能そのもの及び支払不能についての悪意を検討する必要があるという構造を整理する
番号37:無償行為として否認の対象となるのは法定相続分を超える部分のみであり,相続分を超えて全額を請求できるとしない
記事:令和7年度司法試験倒産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した38項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
本問は,資金繰りに窮した運送会社A社の再生手続(監督命令が発せられた,いわゆるDIP型の手続)を素材として,民事再生法が原則として管財人を選任しないこととした趣旨と,スポンサーの選定に不服を持つ再生債権者C社から管理命令の申立てがされた場合の裁判所の判断(設問1),再生計画案の否決による再生手続廃止の決定後の破産手続への移行(設問2)及び再度の再生手続開始の申立て(設問3)を問うものである。
設問1⑵は,スポンサー選定において再生債務者が果たすべき義務の具体的内容に言及しつつ論じることを求め,設問2は,再生手続廃止の決定の確定の前後に分けて説明することを求めている。
問題文は,令和7年1月1日現在において施行されている法令に基づいて答えるよう指定している。
重み5は4項目である。
番号5:スポンサー選定において再生債務者が果たすべき公平誠実義務の具体的内容(債権者の利益を犠牲にして専ら自己又は第三者の利益を図るような選定をしてはならないこと等)を指摘する
番号14:確定前の申立てに係る破産手続開始の決定は,廃止決定の確定後でなければできないこと(249条2項)を説明する
番号23:25条4号について,再度の申立てが,否決された再生計画案の問題点(譲渡価格)を改善した上でされたものであることを評価する
番号26:25条3号について,E銀行その他の債権者が反対しておらず,再生計画案の作成・可決・認可の見込みがないことが明らかとはいえないことを検討する
記事:令和7年度司法試験倒産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した28項目と5段階の重み付け
2 租税法
(1) 第1問
本問は,会社員Aについて,豪雨で水没した自家用の軽自動車の損失(設問1),移住先の市から5年間に限り毎年交付される定住奨励金(設問2),住宅宿泊事業法の届出をせずに営んだ民泊の収入(設問3)及び民泊に関する三つの支出(祈祷料,古井戸の解体・撤去費用及び交通法規違反の罰金)(設問4)の所得税法上の扱いを問うものである。
解答は,令和7年1月1日現在において施行されている法令に基づき,租税特別措置法の適用は考慮しないとされ,無届けの民泊が旅館業法に抵触し刑事罰の対象となることが前提とされている。
重み5は5項目である。
番号1:「生活に通常必要でない資産」に該当する場合(62条1項)と該当しない場合(72条の雑損控除)に分け、それぞれの適用条文と法的帰結を述べた上で自説を述べる
番号7:「生活に通常必要でない資産」を日本語として解釈せず、62条1項の委任を受けた施行令178条1項2号・3号の条文操作を経てその意義を明らかにする
番号17:5年間継続して交付を受けられる仕組みが「一時の所得」といえるかを立ち入って検討する
番号25:事業所得か雑所得かを社会通念上「事業」といえるかで区別し、給与の4分の1程度・拡張の見込みなし(副業的)、遊興費への充当、違法営業で廃業の可能性(継続性)等の事実を丁寧に拾う【適用条件】社会通念上事業といえるかの具体的検討。説得的な事業所得構成も許容
番号32:45条1項7号が37条1項の「別段の定め」であることを指摘する
記事:令和7年度司法試験租税法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
本問は,ホテルを経営する上場会社A社が行った懸賞キャンペーン(海外旅行のギフト券),早期予約販売及び株主優待(宿泊券)を素材として,法人税法上の損金・益金の帰属年度と寄附金該当性,所得税法上の所得区分と年度帰属,及び給与所得者である株主の確定申告の要否を問うものである。
解答に当たっては,租税特別措置法の適用は考慮せず,令和7年1月1日現在において施行されている法令によるものとされ,設問2では消費者契約法を考慮する必要はないとされている。
重み5は11項目である。
番号5:中心論点として,最終価格が実費・為替で増減し対象期間満了時に精算され未使用分は全額返還されることから,令和5事業年度末に金額を合理的に算定できず債務が確定しないとして,同年度の損金算入を否定する(この論点を見落とすと「不良」)【適用条件】債務確定基準により令和5事業年度の損金算入を否定する構成
番号6:令和5事業年度での金額の合理的算定可能性(債務の確定)を肯定する構成も,問題文の事実に適切に当てはめれば説得力に応じて評価される【適用条件】債務の合理的算定可能性を肯定する別構成。元5と累積しない
番号7:支出済みの対価には債務確定は元来問題とならないとした上で,公正処理基準(22条4項)に従い同様の結論を導く構成も評価される【適用条件】支出済み対価への債務確定基準の適合性を否定し公正処理基準で検討する別構成
番号15:役務の提供に係る収益は,22条2項・4項の「別段の定め」である22条の2第1項により,役務の提供の日の属する事業年度の益金に算入することを根拠条文として示す(公正処理基準だけで決めない)
番号20:1500万円部分を令和6事業年度における「宿泊の確保」という役務の提供の対価と解し,22条の2第1項の文理と権利確定主義に整合させて令和6年度の益金に算入する【適用条件】1500万円を令和6年度の宿泊確保役務の対価と捉える構成
番号21:7500万円全額を「宿泊」の対価と捉え,令和7年度中に現に宿泊があって初めて益金に算入する(1500万円部分を意識した上で)【適用条件】1500万円の性質を意識し全額を実宿泊役務の対価と捉える構成。元20との択一
番号27:当選の通知を受けた令和5年分か,ギフト券を受領し現に旅行して利益を享受した令和6年分かという年度帰属の論点を意識して検討し,令和6年分の収入金額(所得税法36条1項)とする【適用条件】原典の想定する令和6年実現の結論。考慮要素を検討した別結論にも加点を認める趣旨を明記
番号31:他の8種類の所得に当たらない一時の偶発的な収入について,雑所得と区別する基準(非対価性・非継続性)を正確に指摘し,条文(34条1項)に当てはめて一時所得とする
番号39:(別の立論に対する評価)株主たる地位に基づく利益として配当所得とする構成は、採点実感では『正答とは評し難い』とされるが、挙げられた判例・裁判例・通達の一般論に依拠する立論には、その一貫性・説得性に応じた評価が認められる【適用条件】配当所得構成を検討する場合。原典は『正答とは評し難い』が一貫性・説得性に応じて評価すると述べる。雑所得構成と同等の公式正答という意味ではない
番号40:一時所得該当性を検討し,毎年10月末時点の株主に付与される継続性から「一時の所得」(34条1項)に当たらないとして,雑所得(35条1項)とする(端的に一時所得としない)【適用条件】配当所得を否定し雑所得とする原典の想定構成。元39と累積しない
番号42:設問3のギフト券(処分不能・利用期間の制限)との条件の違いを踏まえて算入時期を説明する
記事:令和7年度司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した43項目と5段階の重み付け
3 経済法
(1) 第1問
本問は,建築資材Aの製造販売業者を会員とする県内唯一の団体であるX協会が,⑴幹事会の決定により,乙市内の建築現場を運搬先とする特例取引を一切禁止したこと,⑵総会の決定により,過小積載及び不使用返送の際の割増料金の基準料金を従来の平均の10パーセント増しと定めたことについて,それぞれ全会員に遵守させている行為の独占禁止法上の問題点を検討させるものである。
記事によれば,出題の趣旨は,⑴を独占禁止法8条4号(構成事業者の機能又は活動の不当な制限)の問題,⑵を同条1号(一定の取引分野における競争の実質的制限)の問題としている。
設問⑵は,設問⑴の事情はなく独立して検討するものとされている。
重み5は4項目である。
番号2:定款上の決定機関は総会であるが,幹事会の決定が慣行上の事実上の決定としてX協会の決定に当たり,その遵守を求めた行為がX協会の「行為」と評価されることを,規範(事業者団体の決定には事実上の決定も含まれる)を立てて当てはめる
番号10:地理的範囲について,禁止対象の特例取引が乙市周辺の会員を売手とし,乙市内の建築現場を運搬先に指定する需要者を買手とするものである点に着目し,特例取引の内容とAの商品特性を踏まえた理由で市場を画定する
番号15:本件決定①について8条1号又は5号を検討する構成も,論述の内容に応じて評価される【適用条件】行為①を8条1号又は5号で検討する別構成。元3~14と全部累積させない
番号19:各割増料金がAの販売代金とは別に請求されてきた点に着目し,本件決定②が各割増料金に係るカルテルであることを意識して,影響を受ける市場(甲県における各割増料金に係る取引)を画定する【適用条件】割増料金カルテルの構成
記事:令和7年度司法試験経済法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
本問は,甲地域の農家のほとんどを組合員とするX農業協同組合が,農業用設備βの調達資金を低金利で融資するに当たり,組合員が生産する農産品αの80パーセントまでをX農協に出荷することを条件とする計画について,独占禁止法上の評価を問うものである。
立場の指定はなく,計画はまだ実施されていない。
重み5は4項目である。
番号2:排他条件付取引,取引妨害,抱き合わせ販売等の別の行為類型で構成する場合は,その行為類型の行為要件への当てはめを的確に行う。【適用条件】拘束条件付取引以外の類型を採る場合。当該類型の要件に即して検討し一律に全類型を累積しない
番号12:商品役務範囲を,αの販売委託(甲地域産αを全国市場に出すまでの流通サービス)の市場と画定する(全国のα販売市場と見る場合は,他地域産αの競争圧力を考慮する)。【適用条件】販売委託の流通サービス市場を画定する構成。全国の販売市場を採る構成は他地域産の競争圧力も検討
番号18:80%の系統出荷によって商系業者の集荷に大きな影響が出る作用機序(Theory of harm)を明確に示す(定量的に示す必要はなく,「おそれ」で足りる)。
番号23:目的との関係で,80%の系統出荷を義務付けることが手段として相当かを具体的に検討する。【適用条件】目的を正当とする場合も80%出荷義務の相当性を別途検討する
記事:令和7年度司法試験経済法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け
4 知的財産法
(1) 第1問
本問は,特許法の問題であり,農薬の特許権者Xが,①後発品の農薬登録のための試験用の生産(行為①),②A国で子会社が販売した検査・実験装置の輸入と使用(行為②)及び③存続期間経過後に販売する旨の存続期間中の申出(行為③)について損害賠償を請求する場合の,Xの主張,相手方の反論及びその妥当性を問うものである。
損害額と農薬取締法固有の問題は論じる必要がないとされている。
設問⑶の結論については,記事によれば,出題の趣旨が指定しておらず,反対の結論もあり得る。
重み5は5項目である。
番号4:妥当性として,存続期間制度の趣旨(存続期間終了後は何人でも自由に発明を利用できること)を述べ,本問の事実関係の下で行為①に69条1項を適用できないと存続期間制度の趣旨を達成できず特許制度の根幹に反することを論じる【適用条件】判例に沿い69条1項の適用を肯定する構成。異説は元7の理由付けが必要
番号7:最高裁判決と異なる見解を採る場合は,その理由付けを十分に説明する【適用条件】最高裁判例と異なる見解を採用する場合
番号13:BBS事件の要件②として,譲受人との合意の上で製品に明確に表示したかを検討し,ウェブサイト上の表示のみで製品それ自体に表示がないことから要件を充足しないことを示す【適用条件】BBS判決に沿って第三者・転得者への権利行使を検討する部分
番号16:装置Qがリサーチツールに当たることを踏まえ,69条1項の趣旨からリサーチツールの使用に同項が適用されるかを具体的に検討する
番号19:譲渡等の申出が譲渡等と並んで独立した実施行為と規定されている理由(例:申出の時点で需要者の買い控えが生じ,特許発明の需要が失われるおそれ)を論じ,それを踏まえて主張の妥当性を具体的に検討する
記事:令和7年度司法試験知的財産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
本問は,著作権法の問題であり,政治家を目指すAが駅前広場で披露した文章Pと,その様子を編集した動画Qを素材として,文章Pを要約した文章P’をブログに掲載した個人ブロガーBに対する削除請求(設問1)と,動画Qの映像をゆがんで表示させる再生ソフトRを公開し,その利用を呼びかけたプログラマーCに対する著作者人格権に基づく請求(設問2)を問うものである。
設問1はAの主張,Bの反論及びそれらの妥当性を,設問2はAがCにどのような請求ができるかとその妥当性を問う。
重み5は5項目である。
番号3:P’のブログ掲載が,28条を介してAが有する公衆送信権(23条1項)の侵害に当たることを,28条と23条1項の両方を挙げて主張する
番号11:47条の6第1項2号が翻訳のみを許容しているのに,なぜ翻案に当たる要約による引用を容認すべきか(又は否定すべきか)を説明する【適用条件】翻案に当たる要約による引用の可否を検討する部分
番号27:自ら改変行為をしているとは言い難いCが請求の相手方となり得るかを,理由を示して論じる(理由なくCを侵害主体としない)
番号28:請求の相手方について,差止請求と損害賠償請求の違いを意識して論じる
番号31:差止請求について,侵害行為の幇助者に対する差止請求の可否をめぐる従来の議論を踏まえて検討する
記事:令和7年度司法試験知的財産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した35項目と5段階の重み付け
5 労働法
(1) 第1問
本問は,退職後1年間の競業避止を定めた労働契約上の条項に違反して同業他社に就職した労働者Xに対し,Y社が退職金の半額を不当利得として返還請求できるか(設問1)と,産前産後休業及び育児休業から復職する際に役職を外され役職手当を支給されなくなったXが,役職手当の支払を請求できるか(設問2)を問うものである。
いずれの設問も,検討すべき法律上の論点を挙げて論じることが求められ,不正競争防止法の適用は検討不要とされている。
重み5は5項目である。
番号1:①競業避止の合意(本件条項)の有効性とXの違反の有無と,②就業規則の退職金支給制限条項の有効性とXへの適用を,別個の論点として区別して論じる
番号14:均等法9条3項(最高裁平成26年10月23日判決)及び育児介護休業法10条(同判例を踏まえた裁判例・行政解釈)が強行規定であり,違反する不利益取扱いは違法・無効であることを示す(努力義務規定として公序違反・人事権濫用の判断に流れない)
番号16:例外⑴(有利・不利な影響の内容や程度,事業主の説明の内容その他の経緯,労働者の意向等に照らし,自由な意思に基づく承諾を認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとき)を,考慮要素を含めて規範として示す【適用条件】同判決の枠組みに基づく例外1を検討する構成。例外2の検討も必要
番号17:例外⑵(降格せずに復職させることに業務上の必要性から支障があり,その必要性の内容・程度と有利・不利な影響に照らし,法の趣旨・目的に実質的に反しない特段の事情があるとき)を示す【適用条件】同判決の枠組みに基づく例外2を検討する構成。例外1との両方の成立まで要求しない
番号19:適法の評価に傾く事実(異議を留保せず受け入れたこと,ポストが埋まっていたこと等)と違法の評価に傾く事実を対比し,互いの評価を検討して総合的に判断する(並列的に列挙して直ちに結論を出さない)
記事:令和7年度司法試験労働法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した24項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
本問は,冬季一時金をめぐるストライキに関連して,①ストライキを指揮した組合委員長Cに対する戒告処分,②現場監督者Aによる組合批判の発言,③ストライキ当日に深夜まで勤務した従業員への「弁当代」の支給について,X組合が労働委員会に救済を申し立てる場合に,いかなる主張に基づきどのような救済を求めるべきか,労働委員会はどのような命令を発すると考えられるかを問うものである。
X組合が労働組合法5条1項の要件を満たすことは,設問の前提とされている。
記事によれば,③の不利益取扱いの成否と支払命令の可否は,労働委員会の命令例でも結論が分かれている。
重み5は5項目である。
番号7:予告協定に違反したストライキの正当性について,協定の目的,使用者の予測可能性,違反の具体的影響等を組み込んだ判断枠組みを示す
番号11:本件ピケッティングの状況(小型乗用車1台,午前4時から9時,入構を妨げない,側面の出入口,運搬業者の迂回,構外のデモ・集会)を,羅列でなく分析・評価して当てはめる
番号22:「使用者の意を体して」を,使用者に反組合的意図ないし組合嫌悪をうかがわせる行為があることを前提とする意味で理解し,X組合に対するY社の態度を検討して当てはめる(Aが使用者のように振る舞ったことだけで帰責しない)
番号31:不利益取扱いと支配介入の両面から検討し,1号については,組合員でない者でも所定時間を超えて勤務しなかった者は支給対象外であることから,不利益取扱いに当たらないとする余地を検討する【適用条件】1号否定・3号肯定という評価もあり得ることを検討。両方成立という元24の当事者主張と裁判判断を区別
番号33:③の救済として組合員への金銭の支払まで命じ得るかを検討し,支払命令以外の方法(ポストノーティス,スト不参加者に弁当代等の名目で金員を支給するなどして支配介入してはならない旨の命令)を示す【適用条件】支払命令の適法性を検討した上で代替救済を提示する部分。支払命令を必ず認容すべきという項目ではない
記事:令和7年度司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け
6 環境法
(1) 第1問
本問は,砒素を使用していた貯木場の跡地に大規模なトラックターミナルを建設しようとする土地所有者Xを題材に,土壌汚染対策法の形質変更時の届出とその理由(小問⑴),健康被害のおそれの政令基準に該当しない場合の区域の指定(小問⑵),その区域でXの工事に課される規制(小問⑶),汚染が自然由来であった場合の規制の違いとその理由(小問⑷),及び汚染原因者Yに対する民法709条に基づく掘削除去費用の請求の範囲(小問⑸)を問うものである。
各小問は独立したものとされ,小問⑸では不法行為責任を問うことができることが前提とされ,時効には触れなくてよいとされている。
重み5は3項目である。
番号7:予定工事に掘削工事と土砂の搬出があることを指摘し,形質の変更の届出に関連する規制と搬出時の規制の二つの局面に分けて説明する
番号18:違いの理由として,自然由来の汚染は人為的活動によるものではなく,環境基本法の「公害」に当たらないことを説明する
番号24:法8条の趣旨を709条の損害の範囲に及ぼすべきか否かを論じる【適用条件】709条の損害の範囲について8条の趣旨の影響を論じる構成。8条の直接適用とは区別
記事:令和7年度司法試験環境法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した26項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
本問は,太陽光発電事業者Aが甲川沿いの土地に太陽光発電施設を設置する事業を題材に,環境影響評価法の第二種事業の判定とその導入の理由(設問1),環境影響評価の項目と,条例による項目の追加及び手続の拡充が同法に抵触するか(設問2),景観の保全を理由に施設の設置許可の取消しを求める住民Cの原告適格(設問3)を問うものである。
問題文に挙げられた以外の条例の内容は考慮しなくてよいとされている。
記事によれば,設問2の二つの後段について,出題の趣旨と採点実感は,抵触する・しないのいずれの結論もあり得るとしている。
重み5は7項目である。
番号7:環境基本法14条各号(環境の自然的構成要素の良好な状態の保持,生物の多様性の確保及び自然環境の体系的保全,人と自然との豊かな触れ合い)には,歴史的・文化的環境などの人工的環境要素が含まれないことを示す
番号10:法61条2号の「この法律の規定に反しないものに限る」という文言を解釈して,法の評価項目以外の項目への条例による横出しが認められるかの結論を導く(結論はいずれも可)
番号11:抵触するとの結論を採る場合,法の義務を超えて事業者に不当な負担を課すことになるという観点から論じる【適用条件】横出し条例の抵触を肯定する構成の理由の一例
番号12:抵触しないとの結論を採る場合,法で規定されていない内容であるという観点から論じる【適用条件】横出し条例の抵触を否定する構成の理由の一例。元11と択一
番号16:方法書の段階で知事に公聴会を義務付けるという純然たる手続の上乗せについて,法61条2号を解釈して結論を導く(結論はいずれも可)
番号17:抵触しないとの結論を採る場合,事業者に不当な負担を課すものではないことを理由とする【適用条件】手続上乗せの抵触を否定する構成の理由の一例
番号24:条例の許可基準が景観の著しい悪化のおそれを挙げること、又はCが許可時に意見を聴かれる対象地域住民であることなどを、行政事件訴訟法9条2項に即して個別的利益保護の理由として検討する【適用条件】条例による個別的利益保護の理由付け。許可基準と住民意見聴取のいずれか又は両方という原典の評価を明記
記事:令和7年度司法試験環境法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した28項目と5段階の重み付け
7 国際関係法(公法系・国際公法)
国際関係法(公法系)は,一般に「国際公法」と呼ばれる分野である。ほかの年度も含めて論点から探す場合は,司法試験の国際公法―過去問・答案と論点別ガイドを参照。基礎事項は,国際公法とは―国際法・国際私法との違いと基本事項で説明している。
(1) 第1問
本問は,経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)と市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)を素材として,署名した条約の当事国とならない旨の大統領の通告の国際法上の意義(設問1),公務員に団結権を認めない趣旨の声明に対する他国の異議が基づく主張(設問2)及び脱退規定のない自由権規約からの脱退の可否(設問3)という,条約法の基本問題を問うものである。
登場するA国からE国は,いずれも条約法に関するウィーン条約(条約法条約)の当事国とされている。
重み5は5項目である。
番号5:通告が,18条の義務を終了させる効果を持つことを指摘する(意図を明らかにするものと述べるにとどめない)
番号7:B国の声明を,条約法条約2条1項(d)の留保の定義(特定の規定の自国への適用上の法的効果を排除・変更する意図の単独声明,名称を問わない)に照らして性質決定する
番号8:声明の表現から解釈宣言と捉える余地もあることを踏まえ,留保か解釈宣言かを理由を付して示す(いずれの性質決定も許容)【適用条件】定義に照らし留保か解釈宣言かを決める検討。表現上の名称だけで決めない
番号10:留保を付することができるかの基準は,自由権規約の趣旨及び目的と両立するかどうか(19条(c))であることを示す【適用条件】B声明を留保と捉える場合
番号18:自由権規約は終了・廃棄・脱退の規定を含まない条約であるから,56条1項の「廃棄又は脱退の可能性を許容する意図」又は「条約の性質上廃棄又は脱退の権利」に当たるかが基準となることを示す
記事:令和7年度司法試験国際関係法(公法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した19項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
本問は,A国が領有するX島と本土との間の海峡(X海峡)を舞台に,国連海洋法条約上の通航権(設問1),国連海洋法条約の非締約国であるB国の軍艦の触雷による損害についてA国の責任を追及する根拠(設問2),締約国であるC国が国際海洋法裁判所に付託した場合に管轄権を否定するためのA国の主張(設問3)を問うものである。
記事によれば,出題の趣旨は,海洋法,国家責任法及び慣習国際法と条約との関係という国際法の基本的分野の知識と理解を確認する問題としている。
重み5は4項目である。
番号4:38条1項ただし書(島の海側に同様に便利な排他的経済水域等の航路があるときは通過通航を認めない)を,X島の海側12海里以上の水路の事実に当てはめる【適用条件】38条1項ただし書の適用を本件の島と航路に即して検討する部分。12海里という距離だけで同様に便利を当然に認定しない
番号6:45条2項により,その無害通航は停止してはならないことを示す【適用条件】45条1項により無害通航が適用される本件海峡
番号10:A国が負う慣習国際法上の義務として,自国の領海内の航行上の危険(機雷の存在)を外国船舶に通告・公表する義務と,接近する軍艦に差し迫った危険を警告する義務を指摘する
番号19:298条3項(宣言国は,除外された種類の紛争を他の締約国の同意なしに付託できない)に依拠して,A国が管轄権を否定することを示す
記事:令和7年度司法試験国際関係法(公法系)第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した22項目と5段階の重み付け
8 国際関係法(私法系)
(1) 第1問
本問は,甲国法人Y社に雇われ,入社1年後から日本で働いている甲国人Xが,乙国への出張中の交通事故について損害賠償を求める事案である。
〔設問1〕では,甲国の裁判所を専属的に指定した管轄合意がある場合の日本の国際裁判管轄権(〔小問1〕)と,準拠法を甲国法とする合意がある場合の労働契約法5条の適用の可否(〔小問2〕)を,〔設問2〕では,乙国で起きた交通事故についての使用者責任の準拠法を問うている。
〔設問1〕と〔設問2〕は独立した問いとされている。
記事によれば,〔設問2〕の結論は,公式資料が結論を指定していない許容分岐である。
重み5は6項目である。
番号4:①条項の効力の否定で止めず,本件訴えについて日本の裁判所の国際裁判管轄権が肯定されるか(管轄原因)も検討し,(a)管轄合意と(b)管轄原因の2点を論じる
番号16:当初の労務提供地が後に変更され,短期出張中の出来事が問題となっている場合の労務提供地の解釈を示した上で,事案に当てはめて日本法を最密接関係地法とする【適用条件】日本を労務提供地・最密接関係地とする原典の想定構成。甲国説も事情の十分な理由付け次第
番号21:通則法17条本文の「結果」が法益侵害の直接の結果に限られるか派生的な損害も含むかを,理由を付けて示した上で事案に当てはめる(直接の結果に限る通説によれば人身傷害を負った乙国の法)
番号25:共通常居所の例示について,直接の加害者(被用者)でない使用者も20条の「当事者」に含まれるかを検討する【適用条件】20条の共通常居所の例示に着目する構成
番号26:使用者が「当事者」に含まれるとして,法人であるA社の「常居所」をどこと考えるべきかを検討する【適用条件】直接加害者Cの使用者であるA社を20条の当事者に含める構成。設問1のY社と区別
番号28:共通常居所を例示にとどめて他の事情と併せて検討する場合は,不法行為の準拠法決定の柔軟化と法的安定性とのバランスをとるという20条の趣旨から解釈を論じた上で当てはめる【適用条件】共通常居所の例示に限らずその他事情と併せて20条を検討する構成
記事:令和7年度司法試験国際関係法(私法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した30項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
本問は,甲国籍の女性Aが甲国で行方不明となった事案について,日本の裁判所がする失踪宣告の国際裁判管轄,死亡が擬制される時点及びその効力が不動産ア・イ・ウのそれぞれに及ぶか(設問1),日本でされた失踪宣告の取消しの国際裁判管轄と準拠法(設問2小問1),並びに甲国でされた失踪宣告の日本での承認と婚姻の解消(設問2小問2)を問うものである。
問題文は甲国法の失踪宣告の規定を与え,各設問は独立した問いで,反致は検討しなくてよいとしている。
重み5は4項目である。
番号3:6条2項の例外的管轄の要件(日本所在の財産,日本法によるべき法律関係,その他日本に関係がある法律関係)と,管轄が「その財産」「その法律関係」についてのみに限られることを示す
番号9:⑶は死亡擬制の効力の及ぶ範囲の問題であり,6条2項により,日本所在の財産又は日本に関係がある法律関係についてのみ効力が生ずることを示す
番号21:118条2号は対審手続における被告の手続的保護を図るもので,裁判所の後見的機能に基づく,利益の対立する相手方のない失踪宣告には,その適用が「その性質に反する」ことを示す
番号26:婚姻の解消を婚姻の効力と性質決定するか離婚と性質決定するかを論じ,それにより通則法25条か27条かが適用されることを示す(説明なく25条・27条を適用しない)【適用条件】婚姻効力か離婚かを理由付けて選び対応条文を適用する部分。25条と27条の両方を累積適用するという意味ではない
記事:令和7年度司法試験国際関係法(私法系)第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した29項目と5段階の重み付け
第4 16記事に共通する作り方
1 評価項目の抽出
各記事の評価項目は,法務省が公表した令和7年司法試験の「出題の趣旨」及び「採点実感」のうち,その問題に関する記述から抜き出したものに限っている。
一つの項目には一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形に言い換えている。
各項目には,出題の趣旨と採点実感のどこに根拠があるかを頁等で示し,一方の資料の該当範囲を読んで記載がない場合は「記載なし」と表示している。
一般的な記述から導いた根拠を「間接」と表示している記事もある。
採点実感が典型的な誤りとして指摘した事項を,「~しない」という形の評価項目として表に含めている記事もある(例えば国際関係法(私法系)第1問の番号29)。
2 5段階の重み付け
重みは,公式資料の書きぶりの強さから各記事が付けたものであり,法務省の配点ではない。
16本に共通する基準は,おおむね次のとおりである。
①重み5:答案の骨格そのもの,又は採点実感が評価の分かれ目とした事項
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け
④重み2:一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項
⑤重み1:一方が控えめに触れるだけの事項
もっとも,重み5と重み4の定義の言い回しは,記事ごとに違う。
例えば,重み5について,租税法第1問は採点実感が「不良」「一応の水準」「良好」「優秀」の段階を分けた事項等とし,労働法第2問は採点実感が「評価に差がつく」等と述べた事項等としている。
重み4について,倒産法第1問は採点実感が説明すべき事項として指摘した場合を含むとし,経済法第2問は採点実感が評価又は不足の指摘を通じて取り上げた事項とし,知的財産法第1問は出題の趣旨が間接に求める事項も含めたとしている。
そのため,個別の項目の重みを読むときは,各記事の第2の基準と,評価表の根拠欄を併せて確かめる必要がある。
3 模範解答と解説
各記事の模範解答は,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で書かれ,その後に出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説が付いている。
模範解答は,各問題の設問の指定に応じた構成を採っており,全科目が一つの立場だけを採るものではない。
出題の趣旨が複数の結論を許容している設問(例えば倒産法第1問の設問2⑴,知的財産法第1問の設問⑶,環境法第2問の設問2の後段)では,記事は一つの結論で答案を書いた上で,解説で別の考え方にも触れている。
評価表の重み5の項目や許容分岐の項目は,その問題で答案の差がつきやすい点を示すものであり,すべての答案にすべての分岐を書くことを求めるものではない。
各記事の末尾には,関連記事と,出典及び確認状態の節がある。
第5 重みの分布の比較
| 科目・問題 | 重み5 | 重み4 | 重み3 |
|---|---|---|---|
| 倒産法第1問 | 6 | 28 | 0 |
| 倒産法第2問 | 4 | 20 | 0 |
| 租税法第1問 | 5 | 24 | 0 |
| 租税法第2問 | 11 | 22 | 0 |
| 経済法第1問 | 4 | 20 | 0 |
| 経済法第2問 | 4 | 18 | 0 |
| 知的財産法第1問 | 5 | 16 | 0 |
| 知的財産法第2問 | 5 | 25 | 0 |
| 労働法第1問 | 5 | 17 | 0 |
| 労働法第2問 | 5 | 20 | 0 |
| 環境法第1問 | 3 | 23 | 0 |
| 環境法第2問 | 7 | 17 | 0 |
| 国際関係法(公法系)第1問 | 5 | 13 | 0 |
| 国際関係法(公法系)第2問 | 4 | 13 | 0 |
| 国際関係法(私法系)第1問 | 6 | 18 | 0 |
| 国際関係法(私法系)第2問 | 4 | 18 | 0 |
| 合計(16問) | 83 | 312 | 0 |
| 科目・問題 | 重み2 | 重み1 | 項目数 | 重みの合計 |
|---|---|---|---|---|
| 倒産法第1問 | 4 | 0 | 38 | 150 |
| 倒産法第2問 | 4 | 0 | 28 | 108 |
| 租税法第1問 | 4 | 0 | 33 | 129 |
| 租税法第2問 | 10 | 0 | 43 | 163 |
| 経済法第1問 | 1 | 0 | 25 | 102 |
| 経済法第2問 | 3 | 0 | 25 | 98 |
| 知的財産法第1問 | 4 | 0 | 25 | 97 |
| 知的財産法第2問 | 5 | 0 | 35 | 135 |
| 労働法第1問 | 2 | 0 | 24 | 97 |
| 労働法第2問 | 8 | 0 | 33 | 121 |
| 環境法第1問 | 0 | 0 | 26 | 107 |
| 環境法第2問 | 3 | 1 | 28 | 110 |
| 国際関係法(公法系)第1問 | 1 | 0 | 19 | 79 |
| 国際関係法(公法系)第2問 | 5 | 0 | 22 | 82 |
| 国際関係法(私法系)第1問 | 6 | 0 | 30 | 114 |
| 国際関係法(私法系)第2問 | 7 | 0 | 29 | 106 |
| 合計(16問) | 67 | 1 | 463 | 1798 |
重みの合計は,各問題の評価表の行ごとの重みを足したもの(重み5の項目数×5+重み4の項目数×4+…+重み1の項目数×1)である。
評価項目の数や重みの合計は,科目間の難易度,有利不利又は法務省の配点を比べる指標ではなく,予想得点や合格可能性を示すものでもない。
項目数は,公式資料の記述の量や設問の数にも左右される。
本記事では,16問の分布について,次のとおり整理する。
①16問中13問で,重み4の項目が最も多い。
例外は,重み5が最も多い労働法第1問(24項目中8項目)と国際関係法(公法系)第1問(19項目中7項目),重み2と重み5が各7項目で並ぶ知的財産法第1問である。
②重み5の項目数は3項目(倒産法第2問)から9項目(租税法第1問・第2問)まで分かれる。
もっとも,第4の2のとおり重み5の定義の言い回しは記事ごとに違うので,この差をそのまま問題の性質の差とみることはできない。
③重み1の項目は,6問にだけあり,合計11項目である。
第6 関連記事
①令和7年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目
②令和8年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の参考答案と予想評価項目
③法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧
④司法試験の採点実感から学ぶ法律文書の書き方―準備書面・意見書・相談メモのチェックリスト
⑤司法試験の合格点・採点・成績通知―短答式の足切り,論文式の最低ライン,総合点及び順位
⑥司法試験とは―受験資格,5年間の受験期間,試験科目,合格判定及び合格後の流れ
⑦令和元年司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答と評価項目
第7 出典
1 公式資料
①法務省「令和7年司法試験の実施について」
②法務省「令和7年司法試験問題」
③令和7年司法試験論文式試験問題(選択科目)
④法務省「令和7年司法試験の結果について」
⑤令和7年司法試験論文式試験出題の趣旨
⑥法務省「令和7年司法試験の採点実感」
⑦令和7年司法試験の採点実感(選択科目)
2 確認状態
本記事の一覧,各問題の概要,重み5の事項及び重みの分布は,令和8年10月9日に公開本文を取得した16本の記事から作成した。
各記事の評価表の全行から重み別の件数,項目数及び重みの合計を計算し直し,各記事の題名と本文に記載された項目数・分布と一致することを確かめた。
評価表の番号は,16本とも1から連続し,重複はなかった。
上記①から⑦までの公式資料は,令和8年10月9日に取得できることを確かめ,③の問題と⑦の採点実感に選択科目8科目が,⑤の出題の趣旨に選択科目の部分があることを確かめた。
本記事は各記事の内容を整理したものであり,16問の出題の趣旨及び採点実感を改めて読み直して評価項目を作り直したものではない。
裁判例の書誌と確認の範囲は,各記事の「出典及び確認状態」の節に記載している。