第1 国際公法の過去問を探すときの入口
司法試験で国際公法を学ぶ場合の正式な選択科目名は「国際関係法(公法系)」である。
本記事は,令和元年~令和8年の第1問・第2問について,ブログに掲載した16問の答案と評価項目の解説を,年度別・論点別に探せるよう整理したものである。
第2 令和元年~令和8年の年度別一覧
| 年度・問題 | 主な論点 | 答案・解説 |
|---|---|---|
| 令和8年・第1問 | 外交的保護・犯罪人引渡し・外交官免除 | 参考答案・評価項目 |
| 令和8年・第2問 | 難民・武器供与・ICJ管轄権 | 参考答案・評価項目 |
| 令和7年・第1問 | 条約の署名・留保・脱退 | 模範解答・評価項目 |
| 令和7年・第2問 | 国際海峡・国家責任・ITLOS管轄権 | 模範解答・評価項目 |
| 令和6年・第1問 | 国家承認・自決権・国連の紛争解決 | 模範解答・評価項目 |
| 令和6年・第2問 | 公海衝突・武力の威嚇・国家責任 | 模範解答・評価項目 |
| 令和5年・第1問 | 仮保全措置・海洋境界画定・軍艦通航 | 模範解答・評価項目 |
| 令和5年・第2問 | 条約違反・国際組織の請求・緊急避難 | 模範解答・評価項目 |
| 令和4年・第1問 | 個別的・集団的自衛権・締約国間対世的義務・政府交替・財産収用・外交的保護 | 模範解答・評価項目 |
| 令和4年・第2問 | 条約終了・国内適用・政治犯不引渡し | 模範解答・評価項目 |
| 令和3年・第1問 | 国家承認・分離独立・庇護・公館保護 | 模範解答・評価項目 |
| 令和3年・第2問 | 島の権原・海洋境界・資源利用・実力行使 | 模範解答・評価項目 |
| 令和2年・第1問 | 国家免除・裁判合意・外交使節団口座への執行 | 模範解答・評価項目 |
| 令和2年・第2問 | 国際河川・環境影響評価・条約終了・対抗措置 | 模範解答・評価項目 |
| 令和元年・第1問 | 公海の管轄権・海賊・選択条項留保 | 模範解答・評価項目 |
| 令和元年・第2問 | 外交的保護・行為の帰属・集団的自衛権 | 模範解答・評価項目 |
令和元年~令和7年の記事は,公式の出題の趣旨・採点実感を参照した独自の答案・評価項目として読む。
令和8年の記事は,令和8年9月30日の作成時点で,それらを読まずに問題文と法的資料から作成した参考答案である。
各記事の確認範囲・基準時を確かめ,5段階の重みを公式の配点として扱わない。
公式問題,出題の趣旨・採点実感及び条約・判例の確認先は,各答案記事の資料欄を参照されたい。
第3 論点別に過去問と個別解説を読む
1 条約法―署名,留保,解釈宣言,脱退
令和4年・第2問は条約の終了と国内適用,令和5年・第2問は条約解釈と国際機構の請求能力を扱う。
条約の国際的な効力と,国内の個別事件でどのように用いられるかを分けて検討する例として読める。
条約法の基本問題をまとめて検討するには,令和7年・第1問が入口となる。署名と条約に拘束されることへの同意を分け,声明の名称だけでなく,法的効果に着目して留保か解釈宣言かを考える。脱退については,条約の規定とウィーン条約法条約上の要件を確認する。
条約と慣習国際法を区別する問題は,令和8年・第2問及びICJ選択条項受諾宣言と留保にもつながる。まず条約上の請求を特定し,別に慣習国際法上の請求が成り立つかを検討する。
条約法の全体像,署名・批准・加入の違い,留保,31~33条の解釈規則及び脱退の基本は,条約法に関するウィーン条約の総合解説(AI作成)で確認できる。
一般的な規則を同記事で押さえた上で,各年度の問題が指定する条約,当事国,時期及び事実関係に沿って答案を検討する。
条約の終了・対抗措置は令和2年・第2問,条約の国内適用と政治犯不引渡しは令和4年・第2問にも現れる。
条約の効力,国内での適用,個人に対する具体的な処分の可否を分けて検討する。
2 国家承認,自決権,国連の紛争解決
令和3年・第1問は国家承認と分離独立,外交的庇護を扱う。
国家成立・承認の問題と,公館への庇護や国家責任の問題を分けて整理する。
令和6年・第1問では,国家成立・国家承認と自決権を区別し,安全保障理事会の表決や国連内で利用できる紛争解決の経路を検討する。制度名を並べるだけでなく,当事者,権限,手続上の条件を問題文の事実に対応させることが大切である。
3 海洋法―公海衝突,領海,国際海峡
令和5年・第1問は,仮保全措置,海洋境界画定及び軍艦の通航を扱う。
島の扱い,基線の有効性,海域の区分及び通航権を,一つの結論へまとめず検討する。
令和6年・第2問では公海上の衝突後の刑事管轄,令和7年・第2問では海峡の通航制度が問題となる。いずれも,海域,船舶の種類,関係国の条約締約国性を整理してから,適用される規則を確かめる。
個別解説:日本の領海,直線基線,国際海峡の通航制度。
基線の引き方,領海の幅,海峡の通航制度は互いに関連するが,それぞれの判断条件を順に確認する必要がある。
海洋法に関する別年度の問題として,令和3年・国際公法第2問は,島の帰属と海洋境界,暫定取決めに向けた努力義務と自制義務,発砲事件の仲裁管轄を扱う。
探査の手法と実施場所を区別し,資源に関する権利の有無と,取締りで用いた実力行使の適法性を別々に検討する例として参照できる。
別年度の問題として,令和元年・第1問は公海での立法・執行管轄権と海賊,令和5年・第1問は仮保全措置・海洋境界・軍艦通航を扱う。
海域の区分と,立法・執行・裁判の各権限を区別して読むと,年度間の比較がしやすい。
4 国家責任,武力行使,不干渉原則
令和2年・第2問は河川環境と国家責任,令和4年・第1問は自衛権等,令和5年・第2問は国家責任と国際機構の請求能力の検討にもつながる。
実体上の義務と,請求主体・管轄権・手続前提を分けることが共通の確認点となる。
令和6年・第2問,令和7年・第2問,令和8年・第2問が関連する。適用法,国家への行為の帰属,義務違反,違反後の救済を分けて答案を組み立てる。
武器供与の評価については,ニカラグア事件も参照。反政府勢力の行為が国家に帰属するかという問題と,援助国自身の支援行為が義務違反となるかという問題を混同しないことが必要である。
行為帰属と支援国自身の責任は令和元年・第2問,私人行為と国家自身の公館保護義務は令和3年・第1問で比較できる。
国際組織の自己損害請求と緊急避難等を扱う令和5年・第2問も,国家責任の一般論との共通点と相違点を確認する例となる。
5 外交的保護,犯罪人引渡し,外交官の免除
令和2年・第1問は国家免除,裁判合意及び外交口座への執行を扱い,令和4年・第1問は国籍と外交的保護,政府交替の問題にも関係する。
外交官個人の免除,外国国家の免除及び中央銀行等の財産の保護は,制度と対象を区別して読む必要がある。
令和8年・第1問が関連する。同じ国際的な個人の問題でも,外交的保護を行う国の資格,犯罪人引渡しの義務の根拠,外交官の裁判権免除は別の制度である。
個別解説:外交的保護,犯罪人引渡し,外交官の民事裁判権免除。
国内裁判との接点を確認する場合は,外国国家を被告とする民事訴訟も参照。
国家免除の設例は,令和2年・第1問を参照されたい。
裁判管轄の合意と準拠法の合意,裁判権免除と執行免除を別々に検討する。
外交的保護と行為の帰属を併せて考える問題として,令和元年・第2問及び令和4年・第1問も関連する。
6 難民と国際司法裁判所の管轄権
令和8年・第2問では,難民該当性,武器供与の国際法上の評価,ICJの管轄権がそれぞれ問われる。
個別解説:難民条約上の難民,ICJ選択条項受諾宣言と留保。実体法上の義務違反があるかと,裁判所がその請求を審理できるかを分けて検討する。
第4 答案と評価項目の使い方
1 問題文を読んで自分の答案を作る
最初に公式問題を読み,設問ごとの当事者,請求又は反論,前提事実,条約の締約国性を整理する。その上で,自分の答案を作ってからブログの答案・解説と比較するという使い方を提案する。
結論が異なる場合には,結論だけを直すのではなく,採用した規則,事実の評価,例外の要件のどこで分かれたかを確認する。
2 5段階の重みを公式の点数に換算しない
各記事で,評価項目と公式資料の対応及び確認範囲を確かめる。
令和8年の記事は,作成時点で公式の出題の趣旨・採点実感を読まずに作成した参考答案・予想評価項目として区別して読む。
3 掲載問題だけで出題範囲を限定しない
この一覧の対象は令和元年~令和8年の16問である。
掲載問題に現れた論点だけで,国際公法の学習範囲が尽くされるわけではない。
法務省のQ&Aは,国際公法の体系に含まれる範囲では国際人権法及び国際経済法も出題範囲から除外されないことを説明している。
年度ごとの実施要領・公式案内も確認する必要がある。
参照:法務省・司法試験に関するQ&A
第5 年度別の選択科目記事と公式資料
8科目をまとめて比較する場合は,次の年度別の記事を参照されたい。
①令和8年の選択科目8科目
②令和7年の選択科目8科目
③令和6年の選択科目8科目
④令和5年の選択科目8科目
⑤令和4年の選択科目8科目
⑥令和3年の選択科目8科目
⑦令和2年の選択科目8科目
⑧令和元年の選択科目8科目
国際公法の基礎から確認する場合は,国際公法とは―国際法・国際私法との違いに戻り,必要な個別論点の解説に進める。
本記事は答案を転載したページではなく,既存の答案と解説への索引である。
問題文,条約,判例及び公式の出題の趣旨・採点実感の確認先は,各答案記事の資料欄にも示している。
他の科目・年度も併せて探す場合は,司法試験の過去問・参考答案一覧を参照されたい。