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外交官の民事裁判権免除|私的な有償活動とウィーン条約31条・42条(AI作成)

第1 外交官の裁判権免除の原則

外交関係に関するウィーン条約31条1項は,外交官が接受国の刑事裁判権から免除され,原則として民事裁判権及び行政裁判権からも免除されると定める。

この免除は,外交官が公務としてした行為にだけ認められる機能的免除ではない。在任中の外交官については,私的行為も原則的免除の出発点に含まれ,条約が定める例外の有無を検討する。

第2 民事・行政裁判権免除の三つの例外

31条1項は,民事・行政裁判権免除について,次の三つの例外を置く。

  1. 公館の目的のために派遣国に代わって保有する場合を除き,接受国にある私有不動産に関する物権訴訟
  2. 私人として遺言執行者,遺産管理人,相続人又は受遺者となる相続訴訟
  3. 接受国内で,公の任務の範囲外で行う職業上又は商業上の活動に関する訴訟

有償の講演,副業,事業取引などでは,3番目の例外が中心となる。

第3 私的な有償活動に関する例外

31条1項(c)の要件は,①接受国内での活動,②職業上又は商業上の活動,③外交官の公の任務の範囲外,④訴訟がその活動に関すること,である。

ILCの1958年外交交渉・免除条文案注釈は,このような活動は外交官の地位と通常両立しないが,現実に行われた場合,取引相手から通常の救済手段を奪うべきではないと説明した。この説明は,例外の趣旨を理解する上で重要である。

第4 ウィーン条約42条との関係

ウィーン条約42条は,外交官が接受国内で個人的利益を目的とする職業上又は商業上の活動を行ってはならないと定める。

しかし,「42条に違反したから自動的にすべての免除を失う」と論じるのは正確でない。民事裁判権免除が否定される直接の根拠は31条1項(c)であり,42条は,問題の活動が外交官の通常の職務ではなく個人的利益を目的とする活動であることを評価する際に関係する。

第5 有償講演の返金請求への当てはめ

外交官が,自ら「個人的な利得を目的とする」と説明して講演を引き受け,講演料を個人口座で受領したのに会場へ現れず,主催者が返金を求める事例を考える。

講演が大使館又は派遣国の公式行事ではなく,外交官個人の収益活動として接受国内で行われる予定であったなら,公の任務の範囲外の職業上又は商業上の活動と評価する事情が強い。返金請求はその有償活動に直接関係するため,31条1項(c)により民事裁判権免除が認められないとの結論が導かれる。

単発の活動が常に「商業上の活動」に当たると抽象的に断定するのではなく,対価性,反復性の有無,個人口座への支払,公式職務との関係及び当事者自身の説明を総合して当てはめる。

第6 裁判権免除と強制執行免除は別である

31条3項は,三つの例外に該当する場合でも,外交官の身体又は住居の不可侵を害さずに実施できる場合に限って執行措置を認める。民事判決を言い渡せることと,外交官の財産へ強制執行できることは別問題である。

したがって,設問が民事裁判権免除の有無だけを問う場合,執行可能性まで混同して結論を変えない。

第7 免除の放棄

32条によれば,裁判権免除を放棄できるのは派遣国であり,放棄は明示されなければならない。民事訴訟に応訴したことによる一定の効果や反訴の規定もあるが,裁判権免除の放棄は,判決の執行についての免除の放棄を当然には含まない。

第8 出典

① Vienna Convention on Diplomatic Relations, 1961(31条,32条,42条)。
② ILC, Draft Articles on Diplomatic Intercourse and Immunities with commentaries, 1958(当時の29条注釈7項)。
③ United Nations Audiovisual Library of International Law, Vienna Convention on Diplomatic Relations。