第1 この記事の対象
本記事は,令和元年司法試験論文式試験の選択科目8科目・16問について,公開済みの模範解答記事を案内するものである。
対象は,倒産法,租税法,経済法,知的財産法,労働法,環境法,国際関係法(公法系)及び国際関係法(私法系)の各第1問・第2問である。
主要7科目,短答式試験,予備試験及び旧司法試験は含めない。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 対象年度・区分 | 令和元年司法試験・論文式試験の選択科目 |
| 試験実施日 | 令和元年5月15日(選択科目) |
| 対象範囲 | 8科目・各2問,計16問 |
| 集計 | 評価項目394項目,重み5は88項目,重みの合計1462 |
| 資料の状態 | 16記事はいずれも,出題の趣旨・採点実感から評価項目を抽出した記事として公開されている。各記事の資料の確認範囲は,各記事の第7に示されている。 |
| 子記事の確認日 | 令和8年10月23日 |
| 他年度への案内 | 第6の総合索引と他年度の選択科目の一覧を参照。 |
集計は,16記事の現在の評価表の各行から計算した。
重みは各記事の独自の分析であり,法務省の公式の採点基準・配点・予想得点ではない。
第2 16記事の一覧
| 科目・問題 | 主な論点 | 評価項目 | 重み5 |
|---|---|---|---|
| 倒産法第1問 | 租税の第三者納付と代位,請負人破産と53条,現存額主義と査定 | 20項目 | 6項目 |
| 倒産法第2問 | 清算価値保障の基準時,平等原則の例外,計画外事業譲渡と決議 | 29項目 | 6項目 |
| 租税法第1問 | 低額譲渡の益金・損金,過大退職給与,雑損控除 | 26項目 | 6項目 |
| 租税法第2問 | 取得費の承継と譲渡所得,低額譲受けの益金,借用概念 | 31項目 | 5項目 |
| 経済法第1問 | 入札談合の基本合意,Bの離脱,Jの中途参加と終期 | 18項目 | 5項目 |
| 経済法第2問 | 水平合併の競争制限,問題解消措置,情報遮断 | 24項目 | 4項目 |
| 知的財産法第1問 | 職務発明と冒認,補償金請求と再警告,国外使用と間接侵害 | 27項目 | 6項目 |
| 知的財産法第2問 | 仏像の著作物性,絵はがきの譲渡権と消尽,死後の改変 | 31項目 | 7項目 |
| 労働法第1問 | 普通解雇の効力と予告,経歴詐称と理由の追加・再解雇 | 24項目 | 5項目 |
| 労働法第2問 | 協約に基づくビラ撤去,協約の解約とチェックオフ中止,支配介入 | 23項目 | 5項目 |
| 環境法第1問 | 環境基準の設定方法,県の水質対策と上乗せ,市の横出し条例 | 27項目 | 5項目 |
| 環境法第2問 | 廃棄物の不要物性と委託,有害使用済機器,措置命令と妨害予防 | 26項目 | 5項目 |
| 国際関係法(公法系)第1問 | 公海の立法・執行管轄権,海賊の私的目的,選択条項の留保 | 19項目 | 5項目 |
| 国際関係法(公法系)第2問 | 外交的保護,反政府勢力の行為帰属,集団的自衛権 | 23項目 | 6項目 |
| 国際関係法(私法系)第1問 | 養子縁組の準拠法と国内での実現,隠れた反致,保護条項の範囲 | 20項目 | 6項目 |
| 国際関係法(私法系)第2問 | 人格権侵害・翻訳権侵害の準拠法,懲罰的賠償判決,直接郵便送達 | 26項目 | 6項目 |
第3 各問題の概要と重み5の事項
以下の番号は,各記事の現在の公開評価表の通し番号であり,記事ごとに1から始まる。
16記事の評価表に旧IDの併記はないため,番号だけを示す。
各項目の根拠の頁・節及び適用条件の詳しい説明は,各記事の同じ番号の評価表と解説で確認できる。
1 倒産法
(1) 第1問
建設会社Aの破産を素材に,開始前にBが代位弁済した租税の扱い,請負人Aの破産における請負契約の処理,連帯保証人Fの開始前後の弁済と届出を扱う。
設問1はBの権利とXの主張,設問2(1)は管財人Xの契約処理,設問2(2)は解除後の完成費と撤去費に関するCの権利,設問3はFの届出に対する裁判所の判断を問う。
租税の納期限は開始後であり,設問2(1)ではAによる完成が可能で財団に利益があるとされている。
設問2(2)の完成費と撤去費は別契約であり,各設問は独立している。
設問3では開始前後の弁済を分け,査定決定で認める額まで示す。
重み5は6項目である。
番号2:求償権と代位取得する原債権を別の権利として検討する。
番号5:租税の公共的性格を踏まえて代位又は財団性の自説を理由付ける。
番号7:請負人破産にも53条を適用するかを理由付きで検討する。
番号11:完成費1000万円の損害性を未払800万円の負担免除を考慮して検討する。
番号13:撤去費の財団性を肯定する場合は,必要な148条各号の解釈と具体的な当てはめで根拠を示す。
番号19:開始後200万円について全額消滅がないため104条4項の参加制限を適用する。
記事:令和元年司法試験倒産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した20項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
完全親会社Bの支配下にあった機械メーカーAの民事再生を扱う。
設問1は清算価値保障の基準時と,Bの債権を劣後させない計画案の付議の可否,設問2⑴は計画外の全部事業譲渡の許可,⑵はCが同意しない場合の決議と否決後の手続を問う。
各設問は独立しており,設問1の5%計画を設問2⑵の15%計画へ混ぜず,設問2⑴の事業譲渡を⑵で行ったものとして扱わない。
設問2⑵は,他の計画案がなく,事業譲渡をせずに自力再建する場面である。
重み5は6項目である。
番号4:清算価値の基準時を問題とし,開始時・認可時等から自説を定める
番号7:採用時点の清算配当率と計画弁済率を比較し,清算配当率同士の比較で済ませない
番号14:本文・ただし書の文理と趣旨から自説を論証し,専ら価値判断と信義則で処理しない
番号21:Aの申立てによる43条代替許可と債務超過要件を示し当てはめる
番号23:42条の再生必要性と43条の継続必要性を,両制度の趣旨・機能から対比する
番号25:Bのみ賛成では,額20/30を満たしても出席2名中1名は頭数過半数を満たさないとする
記事:令和元年司法試験倒産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した29項目と5段階の重み付け
2 租税法
(1) 第1問
A社の代表取締役の長男乙が,退職に際して時価4000万円の別荘を帳簿価額3000万円で取得し,その後の賃貸中に建物へ災害損失が生じた事例である。
設問1・2はA社の益金と損金,設問3は乙の必要経費と雑損控除の関係,設問4は損失に関する一般規定の有無とその理由を問う。
いずれも制度・事例の中立的な説明を求める問題である。
同記事は,乙の取得時の所得,源泉徴収,贈与税,消費税,会社法上の責任及び具体的な争訟手続を答案の対象外としている。
重み5は6項目である。
番号4:低額譲渡で現実の対価だけを収益とすると無償譲渡との公平を欠くことを論理的に説明する。
番号9:時価と対価の差額1000万円の経済的利益を退職給与と認定し,22条3項2号の費用に位置付ける。 給与に寄附金規定を重複適用しない。
番号15:損金不算入額が利益供与部分の1000万円であり,3000万円又は4000万円ではないと示す。
番号18:51条4項の括弧書きにより,必要経費算入の判定に雑損控除の適用可否を先行して検討する。
番号22:雑損控除を適用するため51条4項の必要経費算入はないと結論付け,重複控除をしない。
番号25:自然人は所得稼得活動と消費活動の双方を行うが法人には消費活動がないことを差異の理由として説明する。
記事:令和元年司法試験租税法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した26項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
Aから低額で土地を取得したXが,さらに保育所を開設するB社へ低額で売る場合の所得税・法人税と,医療費控除の前提となる借用概念の解釈を扱う。
設問1はXの平成30年分の所得税,設問2はB社の取得年度の法人税,設問3はXが前提とする解釈方法を問う。
設問1は租税特別措置法を除いて根拠条文に触れ,設問2は有償譲受けが列挙されていないことに留意して22条2項の文言を特定する。
設問3は,サプリメントの費用の具体的な控除の可否を論じない。
重み5は5項目である。
番号8:60条1項2号により取得者Xが引き続き所有したものとみなし,Aの取得費1400万円を引き継ぐ。Aを擬制の主体とせず,Xの代金を加算・承継取得費を減額しない。
番号13:特別控除後の長期譲渡所得金額の2分の1を22条2項2号で総所得金額へ算入し,収入を先に半減しない。
番号16:「その他の取引」構成を採る場合は,有償譲受けは22条2項に列挙されないことを踏まえ,本件を同項の「その他の取引」に包摂する。
番号27:取引法からの借用と規制法固有の目的による特別定義とを区別し,薬機法定義の当然の移植には批判の余地があると評価する。
番号28:医薬品の概念の外延と「治療又は療養に必要な」という別の限定要件を区別し,定義が広いことだけで統一説を否定しない。
記事:令和元年司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した31項目と5段階の重み付け
3 経済法
(1) 第1問
農業施設工事の指名競争入札について,7社が受注予定者の決定と指定価格での応札を内容とする合意を形成した入札談合の事例である。
Bの違反行為と離脱,当初の会合に参加しなかったJの参加範囲,それぞれの違反行為がなくなった時点を問う。
問題文所与の基本合意,個別入札及び各社の行動を用い,Jが何に,いつ,どの範囲で合意したかを区別する。
違反行為の終期は,採用した合意の単位と整合させる。
重み5は5項目である。
番号6:参加者の構成・指名実態,外部業者の協力及び落札率を用いて基本合意の競争制限性を評価する
番号7:基本合意成立時に違反が成立し,後発個別調整はその時点の要件該当を推認する事情と位置付ける
番号10:Bの発言・復帰可能性・独自低価格入札・除名を評価して,理由のある終期を特定する(適用:全答案。6月15日・7月30日・8月1日の各結論を理由次第で許容)
番号12:Jの意思の連絡の有無を論じ,認める場合はその時期及び合意の範囲を具体的に特定する(適用:全答案。採用構成の合意単位で判定)
番号14:相互拘束の意味を解釈し,Jの情報提供・指定価格応札による制約と採用規範を整合させる(適用:全答案。肯定・否定の結論自体を採点しない)
記事:令和元年司法試験経済法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した18項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
国内の針甲市場でシェア30%と25%のメーカーが合併し,統合会社55%と他の1社45%の2社になる水平合併を扱う。
設問1は合併の独占禁止法上の問題,設問2は問題があるとの前提で競争を回復する計画の修正を問う。
届出基準は充足済みであり,合併を私的独占等の問題へ置き換えない。
設問2では流通業者M社に関する追加事実を用い,排除措置命令の発令を必須としない一方,新たな垂直関係や情報の集中による問題まで評価する。
重み5は4項目である。
番号6:X・Y間競争の消滅,合算55%・市場1位を値上げの能力・誘因に結び付ける。
番号14:X又はYの針甲事業のどの範囲を誰へ譲渡するかを具体化し,設備・人材・ノウハウ等の包括移転を設計する。
番号17:第三者M社を独立した競争単位とし,3社間競争を維持・回復する効果を説明する。
番号19:M社によるセット販売等が下流市場を閉鎖する能力・誘因を具体的に検討する。
記事:令和元年司法試験経済法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した24項目と5段階の重み付け
4 知的財産法
(1) 第1問
食品成分の測定方法の特許について,従業者とXとの権利帰属,製品の製造販売差止めと廃棄,出願公開後の補償金,国外で使われる専用品の供給を扱う。
設問1はYの反論とその妥当性,設問2⑴⑵は当初発明と補正後の補償金請求に対するYの反論,設問3は専用機器Mの製造販売差止めの可否を問う。
各設問は独立しており,追加事実を別の設問へ流用しない。
設問1の請求は製品の製造販売差止めと廃棄であり,方法の使用の差止めと区別する。
設問3では,外国特許が与えられていないことを前提とする。
重み5は6項目である。
番号5:職務発明該当性を肯定する場合は,事前規程を35条3項に当てはめ,Xへの原始帰属から冒認抗弁の成否を導く。
番号10:方法使用の侵害と,請求されたY製品の製造販売の差止めとを区別する。
番号13:測定済み食品の廃棄は方法使用の予防に必要な範囲を超えると具体的に当てはめる。
番号21:工程bの追加は範囲の減縮であり,Y方法が補正前後とも範囲内であると当てはめ,拡張と誤解しない。
番号22:拒絶・未登録へのYの期待を保護するかを,減縮補正の原則との関係で理由を示して論じる。
番号26:Zの輸出前のYの国内製造販売を独立に評価し,外国で直接侵害が成立しないこととの関係を踏まえて,間接侵害の成否を理由付ける。
記事:令和元年司法試験知的財産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した27項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
仏師X1が宗教法人Y1のために製作した青銅の仏像を素材に,著作物性,絵はがきの販売,著作者の死後の頭部の交換を扱う。
設問1は仏像Aの外観αと小型の量産品Bの外観βの著作物性,設問2⑴は無許諾の絵はがきの販売差止め,⑵は許諾後に対価が支払われていない場合の許諾の効力と消尽,設問3は配偶者X2による名誉回復等の措置の請求を問う。
設問2・3はαが美術の著作物であることを前提とし,設問2⑴と⑵は独立の事案である。
重み5は7項目である。
番号2:仕来りによる制約と独自の世界観・宗教観を対比して個性を判断する
番号6:採用した立場を一貫してβへ当てはめる
番号13:直接の譲渡権侵害とみなし侵害を別々の根拠として検討する
番号18:支払義務の法的性質・発生根拠と利用範囲の違反を区別する
番号23:頭部保存と像全体の表現の改変を区別する
番号26:60条ただし書を20条の制限と別に検討する
番号31:原状回復・周知・謝罪広告等から事案に適当かつ相当な措置を論じる
記事:令和元年司法試験知的財産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した31項目と5段階の重み付け
5 労働法
(1) 第1問
有期契約を経て無期の常勤スタッフとなったXが,店長との対立の後に即日普通解雇され,後に採用時の経歴詐称が判明した事例である。
設問1はXの相談を受ける弁護士の立場から解雇の効力と請求を,設問2はY社の立場から経歴詐称への対応を問う。
設問1では,Xの自己評価を客観的事実と区別する。
設問2は,当初の普通解雇を争う訴訟の中で,解雇前に存在し解雇後に認識された詐称を扱い,理由の追加と再解雇を区別する。
重み5は5項目である。
番号5:就業規則該当性・客観的合理性・社会的相当性の位置付けを示して説得的に評価する
番号9:細谷服装判決の効力発生条件を踏まえ,予告違反を絶対的無効としない
番号14:当初解雇への理由追加と別個の再解雇という二つの対応を区別する
番号17:理由追加の当否を当事者への具体的影響を踏まえて理由付ける
番号21:新たな解雇の効力発生時と賃金請求権の発生期間を対応させる
記事:令和元年司法試験労働法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した24項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
無期の労働協約に基づく掲示板・苦情処理・チェックオフをめぐり,会社がビラを撤去し,協約を解約してチェックオフを中止した事例である。
設問1はX組合がビラの撤去を争う方法,設問2はチェックオフが中止された場合のX組合の救済を問う。
賞与査定・団交の経緯は撤去を評価する前提であり,組合員個人の請求が主題ではない。
毎年の賃金等の有期協約と本件の無期協約は別であり,セクハラの存在は確定した事実ではない。
設問2では,協約の解約の効力と支配介入の成否を分ける。
重み5は5項目である。
番号3:撤去要件該当性の判断枠組み・考慮要素を明示し,施設管理権や一般的な組合活動の正当性だけへ置き換えない
番号8:査定・セクハラ・団交拒否の各記載を評価した上で,ビラ全体を撤去できるか一貫して理由付ける
番号14:私法上有効な協約解約と,チェックオフ中止の支配介入該当性を別問題として検討する
番号16:中止の理由・経緯・時期や組合への影響等を整理して,支配介入の成否に当てはめる
番号23:チェックオフ中止に対する救済命令の裁量権と限界を検討する
記事:令和元年司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した23項目と5段階の重み付け
6 環境法
(1) 第1問
生活環境項目の環境基準が長く達成されないB川・C湾の水質改善と,国の規制対象外の物質Pに対するG市の独自の排水基準を扱う。
設問1は健康項目と生活環境項目の環境基準の設定方法とその理由,設問2はA県が採り得る追加的な水質対策,設問3はG市がPの排水基準を設けることの可否を問う。
設問2は既存の一律排水規制以外の措置を検討し,電気めっき業に適用される暫定の亜鉛基準への上乗せも扱う。
設問3は県条例と市条例を区別し,設問にない政令指定済みという事実を補わない。
重み5は5項目である。
番号6:利水目的の多様性から生活環境項目を一律に設定しない理由を示し,科学的知見不足という説明で済ませない。
番号11:亜鉛暫定基準の経過措置・技術的困難・直罰の趣旨を踏まえ,県の現状と調整して上乗せ可否を論じる。
番号14:法の総量規制は政令指定と環境大臣の基本方針を要し,県単独では完結しないと説明する。
番号24:Pの独自排水基準を29条1号の横出しとして,上乗せ3条3項と根拠を区別する。
番号26:29条1号の有害物質を2条2項1号の政令指定物質と解釈し,規制対象外のPが除外されないと説明する。
記事:令和元年司法試験第1問(環境法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した27項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
使用済み家電を再資源化するAが,解体で生じたプラスチック片の加工をCへ依頼する場面と,処理能力を超えて山積みになった機器から有害な液体が農業用水路へ流出する場面を扱う。
設問1は廃棄物処理法上の規律の異同,設問2(1)は山積みの機器に対するB県知事の措置,(2)は劣化・流出後の知事の措置とDらからAへの請求を問う。
設問2(1)に劣化・流出という後の事情を遡らせず,(2)では廃棄物に当たるかを改めて判断する。
Dらについては自家消費・健康被害・既に生じた損害は与件になく,稲への財産的侵害を予防する請求を特定する。
重み5は5項目である。
番号1:廃プラスチック片の不要物性を総合判断し,性状・有償加工・利用割合へ当てはめる
番号10:非混合・ペレットと残渣全量返還の特殊性を取り上げ,委託該当性を理由付きで評価する
番号15:廃棄物でない機器にも17条の2の有害使用済機器規制を接続する
番号20:廃棄物の分類と権限主体を接続し,採った分類に応じた命令根拠を示す
番号24:用水路への有害液流出と稲への具体的危険を結び,汚染源除去又は流出防止という請求を特定する
記事:令和元年司法試験環境法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した26項目と5段階の重み付け
7 国際関係法(公法系)
(1) 第1問
排他的経済水域と隣接する公海にまたがるタラ資源をめぐり,A国が公海を含む禁漁区と外国漁船の拿捕・逮捕を定め,環境保護団体による妨害と,国際司法裁判所の選択条項受諾宣言の留保が問題となる。
設問1はA国の禁漁区・拿捕・逮捕の国際法上の許容性,設問2はB国の海賊取締りの要求に対するA国の反論,設問3は新たな留保と先決的抗弁の成否を問う。
公海と排他的経済水域,立法管轄権と執行管轄権を区別し,設問3では本案の違法性と管轄への同意を分ける。
重み5は5項目である。
番号4:外国漁船に対する公海禁漁区の設定を沿岸国の立法管轄権の限界から論じる。
番号5:Yの拿捕及び船長・乗組員逮捕を立法とは区別して執行管轄権の限界から論じる。
番号12:私的目的の要件を独立して検討し,環境保全の公益的目的を理由とするAの非該当の反論を理由とともに示す。
番号16:一方的な選択条項受諾宣言の留保へ条約留保規則を当然にそのまま適用しない。
番号19:本件留保の有効性及び国内法・執行紛争への適用を論じ,Aの先決的抗弁の成否まで示す。
記事:令和元年司法試験国際関係法(公法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した19項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
クーデター後のA国でB国籍の甲が上訴を拒まれて経営企業が破綻し,B国がA国の反政府勢力を支援し,A国軍の越境攻撃に対してC国が空爆した事例である。
設問1はB国からA国への主張,設問2は反政府勢力の活動に関するB国の責任,設問3はC国の立場からの空爆の正当化を問う。
人権条約・投資条約への加入は仮定せず,甲の無実は甲の主張として確定事実と区別する。
設問2では支援と具体的な作戦の指揮・支配を同一視せず,設問3ではC国が直接攻撃を受けていないことを前提とする。
重み5は6項目である。
番号1:行使要件の列挙だけで止めず,外国籍のみを理由とする上訴拒否をA国の国際違法行為として評価する。
番号6:上訴拒否・判決確定・確定後救済なしを使い,国内救済が残らないと論証する。
番号12:訓練・武器・大規模財政支援と個別作戦の支配を区別し,単なる援助から全活動を一括帰属させない。
番号13:戦線の行為の帰属のみで止めず,帰属を否定した場合もB政府自身の支援行為の責任を別に論じる。
番号18:均衡性・比例性を発生している武力攻撃と措置の釣合いとして,基地・規模・目的に即して評価する。
番号20:被攻撃国の認識・援助要請という追加要件を示し,B国の介入要請に当てはめる。
記事:令和元年司法試験・国際関係法(公法系)第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した23項目と5段階の重み付け
国際関係法(公法系)は,一般に「国際公法」と呼ばれる分野である。
ほかの年度も含めて論点から探す場合は,司法試験の国際公法―令和元年~令和8年の過去問・答案と論点別ガイドを参照。
基礎事項は,国際公法とは―国際法・国際私法との違い,条約・慣習国際法と主な分野で説明している。
8 国際関係法(私法系)
(1) 第1問
日本に住所を有する夫婦ABが,日本に住所を有するCの非嫡出子Dを養子に迎えようとする国際養子縁組を扱う。
設問1は準拠法と縁組の国内での実現,設問2はCDの親子関係を維持できる構成,設問3は乙国法の指定と反致及び実子の同意の範囲を問う。
日本の国際裁判管轄はあるものとされ,設問ごとに当事者の国籍と外国法の内容が変わるため,その設定を混ぜない。
設問1は反致が成立しないこと,設問2は甲国の管轄権的構成を与件とする。
重み5は6項目である。
番号4:Dの日本法上の要件として民法797条の代諾と798条の家裁許可を適用する。
番号9:31条2項により実方関係の終了の準拠法も示し,断絶型とCD関係維持の希望の衝突を処理する。
番号12:管轄権的構成の管轄行使と法廷地法適用の結合を説明し,日本住所と甲国管轄欠如から隠れた反致を論証する。(隠れた反致の構成を採用する場合。別の許容構成に累積要求しない)
番号16:反致肯否につき自説の根拠を示し,本問で適用される法へ到達する。
番号18:養親の実子Eの同意がセーフガード条項の範囲に含まれるかを本問の事実に即して検討する。
番号19:実子同意の範囲について肯定・否定いずれかの理由を示し,縁組可否まで一貫して適用する。
記事:令和元年司法試験国際関係法(私法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した20項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
日本在住のYが甲国を常居所とする詩人Xをモデルにした小説をブログに掲載し,名誉毀損,プライバシー侵害及び詩の無断翻訳が問題となる事例と,甲国判決の日本での執行を扱う。
設問1は名誉毀損・プライバシー侵害と日本・甲国の翻訳権侵害の準拠法,設問2は懲罰的損害賠償を命じた判決と直接郵便送達がされた判決の承認・執行を問う。
設問1では管轄を論じず,日本と甲国の権利を区別する。
設問2小問1は他の執行要件の充足を前提とし,小問2は甲国の送達条約への加入が設定されていないことを前提とする。
重み5は6項目である。
番号3:プライバシー侵害を17条又は19条による関係へ性質決定し,採用した構成の理由を示す
番号8:侵害損害賠償を17条又は保護国法へ性質決定し,選んだ処理の理由を述べる
番号12:不法行為に外国法を適用するときの22条を累積連結と理解し,42条の例外公序と混同しない
番号18:民事判決性を肯定する場合は,118条3号を用い,制度差だけでなく日本の法秩序の基本理念との抵触を理由に懲罰部分の承認を判断する。
番号20:懲罰部分と分離して,慰謝料部分の承認・執行の可否を結論づける
番号24:了知可能性・防御可能性の基準を示し,日本語訳と時間的余裕を評価して結論まで示す
記事:令和元年司法試験国際関係法(私法系)第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した26項目と5段階の重み付け
第4 16記事に共通する作り方
1 評価項目の抽出
各記事は,出題の趣旨と採点実感の記載から,答案の記述によって充足を判定できる単位へ評価項目を整理している。
評価表は「番号|評価項目|重み|出題の趣旨|採点実感」の5列であり,根拠欄には各資料の頁と該当箇所が示されている。
本記事の件数は,各記事の現在の公開評価表の行数である。
肯定的な項目の裏返しである負例を対応する項目へ統合し,内部の検討単位と公開表の項目数が異なると説明する記事もある。
「記載なし」「間接」等の表示の意味は,各記事の第2及び評価表の記載に従って読む。
2 5段階の重み付け
16記事は,いずれも重み1~5の5段階で重みを付け,その基準を第2の2の表で示している。
表の基準は,5を採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格そのもの,4を出題の趣旨が検討を求め採点実感も取り上げた事項,3をどちらか一方が明示する中核の理由付け,2を一方が軽い表現で触れる補強の事項又は典型的な誤りとして指摘された事項,1を一方が控えめに触れるだけの事項とするものである。
本記事は,各記事が付けた重みを換算せず,そのまま集計する。
重み5の件数の差は,評価単位の細かさや負例の統合の仕方にも左右されるため,問題の重要性の差を示すものではない。
3 模範解答と解説
各記事は,答案の前提と表記,枠内の答案,出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説及び出典・確認状態を分けて示している。
答案は,設問で指定された立場と到達点に応じて構成されており,すべての科目が一つの立場や論証の型を採るものではない。
許容される別の構成や条件付きの項目は,その構成を採る答案に限って適用するものであり,すべての分岐を一つの答案に重ねて求めるものではない。
第5 重みの分布の比較
| 科目・問題 | 重み5 | 重み4 | 重み3 |
|---|---|---|---|
| 倒産法第1問 | 6 | 8 | 6 |
| 倒産法第2問 | 6 | 6 | 16 |
| 租税法第1問 | 6 | 5 | 14 |
| 租税法第2問 | 5 | 2 | 20 |
| 経済法第1問 | 5 | 10 | 3 |
| 経済法第2問 | 4 | 17 | 3 |
| 知的財産法第1問 | 6 | 6 | 13 |
| 知的財産法第2問 | 7 | 6 | 18 |
| 労働法第1問 | 5 | 3 | 14 |
| 労働法第2問 | 5 | 8 | 9 |
| 環境法第1問 | 5 | 11 | 9 |
| 環境法第2問 | 5 | 12 | 9 |
| 国際関係法(公法系)第1問 | 5 | 8 | 6 |
| 国際関係法(公法系)第2問 | 6 | 4 | 13 |
| 国際関係法(私法系)第1問 | 6 | 8 | 3 |
| 国際関係法(私法系)第2問 | 6 | 10 | 7 |
| 合計(16問) | 88 | 124 | 163 |
| 科目・問題 | 重み2 | 重み1 | 項目数 | 重みの合計 |
|---|---|---|---|---|
| 倒産法第1問 | 0 | 0 | 20 | 80 |
| 倒産法第2問 | 1 | 0 | 29 | 104 |
| 租税法第1問 | 1 | 0 | 26 | 94 |
| 租税法第2問 | 4 | 0 | 31 | 101 |
| 経済法第1問 | 0 | 0 | 18 | 74 |
| 経済法第2問 | 0 | 0 | 24 | 97 |
| 知的財産法第1問 | 2 | 0 | 27 | 97 |
| 知的財産法第2問 | 0 | 0 | 31 | 113 |
| 労働法第1問 | 2 | 0 | 24 | 83 |
| 労働法第2問 | 1 | 0 | 23 | 86 |
| 環境法第1問 | 2 | 0 | 27 | 100 |
| 環境法第2問 | 0 | 0 | 26 | 100 |
| 国際関係法(公法系)第1問 | 0 | 0 | 19 | 75 |
| 国際関係法(公法系)第2問 | 0 | 0 | 23 | 85 |
| 国際関係法(私法系)第1問 | 2 | 1 | 20 | 76 |
| 国際関係法(私法系)第2問 | 3 | 0 | 26 | 97 |
| 合計(16問) | 18 | 1 | 394 | 1462 |
16問の評価項目は合計394項目であり,重み1~5の件数は順に1・18・163・124・88,重みの合計は1462である。
重み1は国際関係法(私法系)第1問の1項目だけであり,重み2も16問で18項目にとどまる。
本記事では,この表を各記事の評価表の規模と分布を確認するためのものとして整理する。
科目ごとに設問の数,評価単位の細かさ,負例の統合の仕方及び重みの基準の示し方が異なるため,項目数や重みの合計を,難易度,科目の有利不利,公式の配点,予想得点又は合格可能性に置き換えない。
第3のとおり,重み5の項目には,規定の適用の可否や手続の区別,事実の当てはめから結論までの接続を扱うものが複数の科目に見られる。
本記事ではこの点を復習の入口として整理するが,特定の法律構成や結論を全問題へ一般化するものではない。
第6 関連記事
①司法試験の過去問・参考答案一覧―令和元年~令和8年の年度別・科目別ガイド
②司法試験の国際公法―令和元年~令和8年の過去問・答案と論点別ガイド
③令和元年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目
④令和2年司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答と評価項目
⑤令和8年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の参考答案と予想される評価項目
⑥法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧
⑦司法試験の採点実感から学ぶ法律文書の書き方―準備書面・意見書・相談メモのチェックリスト
年度・科目を横断して探すときは①の総合索引,国際関係法(公法系)の論点を年度縦断で探すときは②の科目別ガイドが入口となる。
同じ年度の主要7科目は③,翌年度の選択科目は④で一覧できる。
⑤の令和8年度の一覧は,出題の趣旨・採点実感の公表前に作成した参考答案と予想される評価項目の記事を集めたものであり,資料の状態が異なる。
第7 出典
1 公式資料
①法務省・令和元年司法試験の実施について
②法務省・令和元年司法試験問題
③令和元年司法試験論文式試験問題(選択科目)
④法務省・令和元年司法試験の結果について
⑤令和元年司法試験論文式試験出題の趣旨
⑥法務省・令和元年司法試験の採点実感
⑦令和元年司法試験の採点実感(選択科目)
⑧平成31年司法試験の実施日程等について
2 確認状態
本記事の問題の概要,設問の指定,評価項目及び重みは,令和8年10月23日に取得した16記事の現在の本文に基づく。
公開評価表の全394行について番号・項目本文・重みを対応させ,重み5の全88項目と各問の分布・合計を計算し直した。
公式資料は,掲載ページとの対応,リンクの応答,ページの題名及びPDFの冒頭の資料名を確認した。
このハブの作成に際して,出題の趣旨・採点実感の全文を読み直し,16問の公式の要求を独自に審査し直したものではない。
各記事の公式資料の実読範囲,法令の基準時,裁判例の原文の確認範囲及び残る限界は,各記事の第7に示されている。
本記事では,裁判例の判旨や法令の条文を直接引用していない。
評価項目の抽出,重み付け及び答案の採る構成は各記事の独自の分析であり,公式資料の記載そのものとは区別される。