令和元年司法試験環境法第2問について,公式の出題の趣旨・採点実感を実読した上で,評価項目と模範答案を示す。
評価項目と重みは本記事独自の整理であり,法務省の採点基準・配点ではない。
第1 この記事の対象と結論
本問の中心は,廃棄物の分類を出発点に,自己処理と他人への委託,廃棄物になる前後の行政措置,稲に対する財産権上の救済をつなぐことである。
評価項目は26項目,重み5は8項目,重み合計は95である。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象問題 | 令和元年司法試験・環境法第2問 |
| 公式問題文 | 選択科目合冊・PDF実頁32 https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf |
| 答案の基準時 | 令和元年の試験時。法令は平成30年4月1日施行版を用いた。 |
| 問題の確認状態 | 実読済み:環境法第2問の実頁32。 |
| 出題の趣旨 | 実読済み:実頁36の第2問開始から38の同問末尾まで。 |
| 採点実感 | 実読済み:実頁36の共通採点方針,第2問部分の37末尾〜40。第1問本文は分析対象外。 |
| 主要事項 | 不要物の総合判断,自己処理原則,有害使用済機器,稲の所有権に基づく妨害予防請求 |
| 項目数・重み | N=26,n5=8,W=95。配点ではない。 |
| 主要裁判例 | 最高裁第二小法廷平成11年3月10日決定(おから事件)。不要物の判断方法を参照。 |
| 答案分量 | 2408字。改行だけを除き,空白・見出し・「以上」を含む。 |
| 試験後の法令 | 後発の改正・判例を試験時の答案へ取り込んでいない。現在の実務適用は別途確認を要する。 |
| 年度・科目への案内 | 司法試験の過去問・参考答案一覧 https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/11/shihoushiken-kakomon-touan-index/ |
| 確認日 | 令和8年10月19日(日本時間)。 |
答案ではCへの加工依頼を通常の処理委託と捉える。ただし,非混合・残渣を含む全量返還という事情から自己処理の延長と捉える構成も許容される。
設問2(1)は有害使用済機器規制の準用を,(2)は劣化後の廃棄物に対する直接の規制を用い,Dらは稲の所有権に基づく妨害予防請求を検討する。
評価表は第4,答案は第5の2,採用した構成と許容分岐の解説は第5の3にある。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一項目につき一つの判定対象となるよう,公式資料の説明を答案で確認できる命題に言い換えた。
必須,補充・加点,誤りの回避,条件付き分岐の区分と,重要度を示す重みは別である。
肯定命題の裏返しとなる負例は同じ項目へ統合し,件数を増やしていない。
公式の頁は親PDFの実頁である。「記載なし」は本問の対象範囲を実読した結果であり,法令上不要という意味ではない。
条件付き分岐はその構成を採った答案に適用し,全答案に累積要求しない。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | 採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの。 |
| 4 | 出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した事項を含む)。 |
| 3 | どちらか一方が明示する中核の理由付け。 |
| 2 | 一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項。 |
| 1 | 一方が控えめに触れるだけの事項。 |
この重みは公式配点を推定したものではない。各段階の件数をあらかじめ割り当てず,資料上の位置付けから決めた。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
法務省の公式問題文 https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf
Aは使用済み家電を収集し,金属類を再資源化する。解体で生じるプラスチック片は不純物が多く,特殊な加工を経なければ利用できず,利用できる部分も僅かである。
CはAから加工費を受け,ほかの物と混合せずに加工し,ペレットと残渣を全て返す。設問2では,機器が処理能力を超えて山積みになり,さらに放置により劣化・変色し,有害物質を含む液体が農業用水路へ流出する。Dらは栽培中の稲の汚染を危惧する。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・仮定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | AからCへのプラスチック片の加工依頼とA自身の加工 | 非混合,ペレットと残渣の全量返還を評価。再生目的だけで規制を外さない。 | 廃掃法上の規律の異同と理由 |
| 2(1) | 山積み機器に対するB県知事の措置 | 劣化・有害液流出という後問の事情を遡及させない。 | 法的分類から調査・命令へ接続 |
| 2(2)前半 | 劣化・有害液流出後の知事の措置 | 廃棄物化を改めて判定。Aが許可業者という事実は補わない。 | 改善・措置命令,条件付きの自ら措置 |
| 2(2)後半 | DらからAへの請求 | 自家消費・健康被害・既発生損害は与件にない。 | 稲の財産的侵害を予防する具体的請求 |
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 【必須】廃プラスチック片の不要物性を総合判断し,性状・有償加工・利用割合へ当てはめる | 5 | 36頁「不要物」 | 38頁「廃棄物性の検討」 |
| 2 | 【必須】不要物性を前提に,事業活動由来の廃プラスチック類を産業廃棄物と分類する | 4 | 36頁「産業廃棄物」 | 38頁「産業廃棄物」 |
| 3 | 【必須】事業者の自己処理原則を委託との比較の出発点に置く | 5 | 36頁「自ら処理」 | 38頁「自ら処理」 |
| 4 | 【必須】自己処理にも処理・保管基準が適用されることを示す | 4 | 37頁「処理基準」 | 38頁「処理基準」 |
| 5 | 【必須】自己処理には処分業許可が不要であることを委託と対比する | 5 | 37頁「許可は不要」 | 39頁「自ら処分」 |
| 6 | 【必須】通常の処理委託では適法な許可業者等を選び,Cの処分業許可と処理基準を区別する | 4 | 36頁「産業廃棄物処分業者」 | 38頁「産業廃棄物処分業者」 |
| 7 | 【必須】通常委託では書面契約等の委託基準を守ると説明する | 4 | 36頁「委託基準」 | 38頁「委託基準」 |
| 8 | 【必須】委託時の管理票交付等による処理追跡を示す | 3 | 記載なし(対象範囲実読) | 38頁「マニフェスト」 |
| 9 | 【補充・加点】所定の処理施設を設置する場合は業許可とは別の施設許可を検討する | 1 | 37頁「必須ではない」 | 記載なし(対象範囲実読) |
| 10 | 【補充・加点】非混合・ペレットと残渣全量返還の特殊性を取り上げ,委託該当性を理由付きで評価する | 4 | 37頁「混同」 | 38頁「加点事由」 |
| 11 | 【条件付き分岐】加工委託を自己処理の延長等と捉える場合は委託規制を適用しない理由を一貫させる | 3 | 37頁「自己処理の一部」 | 38頁「延長に過ぎない」 |
| 12 | 【条件付き分岐】再生利用特例を採る場合は環境大臣の認定等の要件を伴わせる | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 38頁「再生利用の特例」 |
| 13 | 【条件付き分岐】専ら物の例外を採る場合は判例及び古紙等4品目に限定する行政運用を踏まえる | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 38頁「古紙等4品目」 |
2 設問2(1)
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 14 | 【必須】山積みの家電機器を直ちに不要物と断定せず,再資源化目的と状態から検討する | 5 | 37頁「不要物」 | 38頁「廃棄物には至っていない」 |
| 15 | 【必須】廃棄物でない機器にも17条の2の有害使用済機器規制を接続する | 5 | 37頁「第17条の2」 | 38頁「第17条の2」 |
| 16 | 【必須】準用される報告徴収・立入検査により事実確認する手段を示す | 3 | 37頁「報告の徴収」 | 記載なし(対象範囲実読) |
| 17 | 【必須】17条の2第3項準用の改善命令を基準違反と結び付ける | 4 | 37頁「改善命令」 | 39頁「改善命令」 |
| 18 | 【必須】準用の措置命令について基準違反と生活環境上の支障又はそのおそれ,必要な限度を示す | 4 | 37頁「措置命令」 | 39頁「措置命令」 |
3 設問2(2)の行政措置
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 19 | 【必須】劣化・変色・再資源化放棄による不要物への変化を認定する | 5 | 37頁「劣化・変色」 | 38頁「廃棄物と化している」 |
| 20 | 【必須】廃棄物の分類と権限主体を接続し,採った分類に応じた命令根拠を示す | 3 | 37頁「産業廃棄物」 | 記載なし(対象範囲実読) |
| 21 | 【必須】流出の具体的事実に改善・措置命令を当てはめ,前問の準用と直接適用を区別する | 5 | 38頁「措置命令」 | 39頁「措置命令」 |
| 22 | 【補充・加点】不履行や緊急性等の要件を満たせば知事自ら措置し費用を徴収できると示す | 2 | 38頁「代執行」 | 記載なし(対象範囲実読) |
4 Dらの請求
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 23 | 【必須】生育中の稲の所有権を根拠に妨害予防請求として差止めを構成する | 5 | 38頁「所有権」 | 39頁「所有権」 |
| 24 | 【必須】用水路への有害液流出と稲への具体的危険を結び,汚染源除去又は流出防止という請求を特定する | 4 | 38頁「用水路」 | 間接:39頁「その要件を丁寧に検討」 |
| 25 | 【誤りの回避】自家消費・健康危険の与件がないのに人格権差止めを当然視しない | 2 | 38頁「人格権」 | 39頁「人格権」 |
| 26 | 【誤りの回避】損害未発生を踏まえ,709条の賠償と物権的差止めを混同しない | 2 | 38頁「損害賠償」 | 39頁「709条」 |
5 重みの分布
重み5は8項目,重み4は8項目,重み3は4項目,重み2は5項目,重み1は1項目であり,総数26,重み合計95となる。
重み5は番号1・3・5・14・15・19・21・23である。不要物の判断,自己処理の原則と許可の異同,機器の状態に応じた根拠の選択,具体的な行政措置,稲の所有権を根拠とする予防請求が答案の骨格となる。
番号10は特殊事情の検討という加点事項であり,番号11〜13は採用した構成に応じた分岐である。施設許可の番号9は必須ではない補充事項として重み1とした。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
試験時の法令・判例を基準とし,設問1,設問2(1),設問2(2)の順に論ずる。答案の階層は1・(1)・アの順を基本とし,本答案では必要な二段階を用いた。
平成11年3月10日決定は不要物の総合判断を参照する趣旨であり,プラスチックの加工委託そのものを同決定が判断したという意味ではない。Cへの委託を通常の処理委託と捉える点は本答案の選択である。
字数は改行を除き2408字。空白・見出し・末尾の「以上」を含み,2500字以内である。
2 答案
1 設問1
(1) 廃棄物処理法(以下「法」という。
)2条1項の「不要物」かは,物の性状,排出状況,通常の取扱形態,取引価値及び占有者の意思等を総合して判断する(最決平成11年3月10日参照)。
再生目的だけでは廃棄物性を否定できない。
本件プラスチック片は,有害物質を含む不純物が多く,特殊な加工をしなければ利用できず,利用可能部分も僅かである。
Aが対価を支払って加工させることも考慮すると,加工前の物は不要物であり,Aの事業活動に伴う廃プラスチック類として産業廃棄物に当たる(2条4項1号)。
加工後に一部が有価のペレットになることと,搬出時点のプラスチック片が不要物であることとは区別すべきである。
(2) 事業者による自己処理が原則であるが(11条1項),適法な他人への処理委託も認められる。
再生加工も法の処分に含まれるから,通常の委託であれば,Aは処分を適法に受託できる業者に委託し(12条5項),書面契約等の委託基準を守り(同条6項),管理票を交付して処理状況を確認する必要がある(12条の3)。
運搬も委託するなら適法な運搬業者を選ぶ。
Cは原則として処分業の許可を要し(14条6項),処理基準を守る(同条12項)。
Aが費用を支払えば処理責任から離脱できるわけではなく,加工依頼という契約名だけでもこれらの義務を免れない。
(3) もっとも,Cが他の物と混ぜず,加工したペレットだけでなく残渣も全てAへ返す点は,廃棄物の処理責任をCへ移す通常の委託と異なる。
Aの自己処理の延長として加工工程だけを依頼したと捉え,委託基準等の適用を否定する構成も考えられる。
残渣の引受けまでAが行い,物の同一性と処理の追跡可能性が維持されることは,この構成を支える。
しかし,所有権や最終的な残渣処理責任をAに残しても,Cの加工段階での環境上の危険は残る。
非混合と返還は処理後の帰属を明らかにするが,加工中の飛散・流出等を防ぐ規制の必要性まで失わせない。
独立した事業者Cが廃棄物の再生処分を実行する以上,本件では通常の処理委託に当たると解し,前記の規制を及ぼすべきである。
返還された残渣もAが適正に処理する必要がある。
(4) Aが自ら加工する場合,処分業の許可は不要であり(14条6項ただし書),処理委託を前提とする委託基準・管理票交付も適用されない。
他方,自己処理にも処理・保管基準が適用される(12条1・2項)。
実行主体がAかCかによって許可や委託規制は異なるが,環境上の危険を抑える基準に従う必要がある点は共通する。
設備が15条1項所定の処理施設に当たれば,別に施設設置許可が必要である。
2 設問2(1)
(1) 収集した家電機器は,金属回収による再資源化を目的としており,処理能力を超えて山積みになっただけで直ちに不要物と断定できない。
しかし,廃棄物でない使用終了機器でも,一部に原材料として相当の価値があり,不適正な保管等によって健康又は生活環境に被害を生ずるおそれのある政令所定の機器は,有害使用済機器として規制される(17条の2第1項)。
本件のエアコン・テレビはこれに当たり,Aは原則として届出をし,保管・処分基準を守る必要がある(同条1・2項)。
資源価値があることと不適正な保管の危険は両立するため,廃棄物性を否定しても知事の措置が全て失われるわけではない。
(2) B県知事は,17条の2第3項により準用される18条1項・19条1項による報告徴収・立入検査で保管状況を調べることができる。
基準違反があれば,準用される19条の3により,期限を定めて保管方法の変更等を命ずることができる。
さらに生活環境保全上の支障又はそのおそれがあれば,準用される19条の5第1項1号により,必要な限度でAへ支障除去等の措置を命じ得る。
山積みの不適正保管と被害が生じ得る状態を調査し,基準に適合する保管への変更及び危険防止を求めるべきであり,実害が発生するまで待つ必要はない。
3 設問2(2)
(1) 原形をとどめないほど劣化・変色し,再資源化せず放置された機器は,性状と取扱状況から資源としての利用可能性を失った不要物と判断できる。
Aの再資源化事業で不要となった廃プラスチック類・金属くず等として産業廃棄物に当たる。
知事は18条・19条による調査を行い,基準違反の保管について19条の3第2号の改善命令を発し得る。
有害物質を含む液体が隣接の農業用水路へ現に流出し,周囲の生活環境保全上の支障又はそのおそれがあるため,19条の5第1項1号により,期限を定め,流出防止設備の設置や適正な撤去等をAへ命じ得る。
鉛・水銀等を含む液体が周囲の田に通じる用水路へ漏れる状態では,機器を単に整然と積み直すだけでは支障を防げず,流出経路を遮断する措置が必要となる。
前問と措置は似ていても,本問では廃棄物に対する直接の適用である。
Aが命令を履行しない場合や,命令するいとまのない緊急の場合等には,19条の8の要件を満たす限度で知事自ら措置し,費用をAに負担させ得る。
(2) Dらは,栽培する稲の所有権に基づく妨害予防請求として,Aに汚染源の除去又は有害液の流出防止措置を求め得る。
稲には所有権による保護が及び,汚染による生育障害や収穫物の販売不能も財産権侵害となる。
有害物質を含む液体が稲の生育に用いる用水路へ現に流出している以上,稲への侵害の具体的危険がある。
危険を防ぐために必要な措置を特定して差止めを求めるべきである。
流出防止だけで危険を十分に除けるならその措置を求め,それでは足りない場合には原因となる放置機器の除去を求めるなど,侵害の予防に対応する範囲で請求を組み立てる。
自家消費や生命・身体への危険は示されておらず,人格権を根拠とする差止めは直ちに導けない。
また,損害発生はまだ示されていないため,現段階で損害賠償請求を肯定すべきではない。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
| 評価項目 | 答案の対応箇所と意味 |
|---|---|
| 1〜2 | 1(1)で,不純物,有償加工,利用割合から不要物性を判断し,産廃へ分類した。 |
| 3〜8 | 1(2)〜(4)で,自己処理原則,AとCの義務,処理基準・委託基準・業許可の異同を接続した。 |
| 9〜11 | 1(3)・(4)で,所定施設に限る許可と,加工委託を自己処理の延長と捉える可能性を示した。番号11の結論は採用していない。 |
| 12〜13 | 本答案では採らず,次項で適用を論ずる場合の前提を整理する。 |
| 14〜18 | 2で,未解体機器の資源価値を考え,有害使用済機器に対する調査・改善命令・措置命令を示した。 |
| 19〜22 | 3(1)で,劣化後の不要物化,産廃分類,直接適用と準用の違い,条件付きの自ら措置を示した。 |
| 23〜26 | 3(2)で,稲の所有権と具体的危険に基づく妨害予防請求を示し,人格権及び損害賠償との混同を避けた。 |
(2) 自己処理と委託の比較・許容される別構成
番号3の自己処理原則を先に置くと,通常委託との違いを説明しやすい。Aが自ら処理しても処理・保管基準は守るが,処分業の許可は要しない。Cへ通常委託する場合は,適法な受託者を選び,委託基準と管理票の規律を守る。C自身の業許可・処理基準はAの委託義務と区別する。
非混合・残渣を含む全量返還は,Aの自己処理の延長という構成を支える。その構成を筋の通る理由で採る答案も許容され,採点実感は特殊性への言及を加点事由とする。通常委託の基本構造と異同を十分に説明した答案に,この別構成を必須として要求してはいけない。
再生利用特例を採る場合は15条の4の2の環境大臣の認定等を要する。「再生だから無許可」と結論してはならない。採点実感はこの点を「許可」と表記するが,本記事は当時の条文の「認定」によった。専ら物の例外を採る場合は,公式が指摘する判例及び古紙等4品目へ限定する行政運用を踏まえた説明が必要となる。これらの例外は本答案では採用していない。
(3) 機器の前後の状態と知事の措置
番号14・15では,使用済みであることだけで廃棄物としない。問題文の保管状況と被害のおそれは17条の2へ進む手掛かりになる。公式資料は,政令指定機器の暗記自体を試したものではないと説明する。理由を示して小問(1)の段階から廃棄物と認定する構成も評価される。
小問(2)では原形をとどめないほどの劣化・変色と放置を評価する。番号19・21の要点は,同じような命令を挙げる場合でも,廃棄物でない機器への準用と,廃棄物への直接適用を区別することである。改善命令は基準違反に,措置命令は基準違反に加え生活環境保全上の支障又はそのおそれに対応する。代執行に相当する知事自らの措置は不履行・緊急性等の法定要件が必要である。
本答案はAの事業に伴い不要となったプラスチック・金属くず等として産廃を主位とする。一般廃棄物という別の分類を採る場合は,市町村長の権限との区別を要し,知事に19条の4・19条の7の権限が当然にあるとしてはならない。
(4) Dらの請求と被侵害利益
危険にさらされているのはDらが栽培する稲であり,番号23の所有権に基づく妨害予防請求が素直な構成である。有害物質を含む液体が農業用水路へ流出する経路から具体的危険を示し,汚染源の除去又は流出防止という請求を特定する。
コメが販売できなくなる危険も財産的利益の問題である。自家消費や健康上の危険を補って人格権へ移ること,未発生の損害について直ちに賠償を認めること,民法709条を挙げるだけで差止めを導くことは避ける。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
本答案は通常委託を主位とするため,加工委託を自己処理の延長と捉える場合の規制範囲を詳述していない。施設許可も所定施設に当たる場合の留保にとどめる。Aが廃棄物処理業の許可を受けている事実はなく,許可取消し等は論じていない。
土壌汚染対策法や水質汚濁防止法を機械的に追加せず,まず廃掃法の根拠を確定した。加工委託の行政一次資料及び専ら物の行政通知・関連判例は本記事では個別に実読しておらず,公式が示す許容幅の紹介と独立の法源確認を区別する。
第6 関連記事
1 同じ年度の司法試験の記事
①司法試験の過去問・参考答案一覧―令和元年〜令和8年の年度別・科目別ガイド(AI作成) https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/11/shihoushiken-kakomon-touan-index/
同年度の個別記事への案内は,この索引の掲載内容から確認できる。
2 同じ科目の別の年度の記事
①令和7年度司法試験環境法第2問の模範解答と評価項目(AI作成) https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/09/r7-shihoushiken-kankyouhou2-mohan-kaitou-hyouka-koumoku/
3 本問の論点に関連する山中弁護士ブログの記事
①産業廃棄物処理業者から適正処理困難通知を受けたとき―排出事業者の調査・措置・報告と措置命令(AI作成) https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/23/sanpai-tekisei-shori-konnan-tsuuchi/
後年の実務記事は学習上の関連情報であり,試験時の答案の根拠とは分けて参照されたい。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①令和元年司法試験論文式選択科目問題・環境法第2問(実頁32) https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf
②令和元年司法試験論文式試験問題出題趣旨・環境法第2問(実頁36〜38) https://www.moj.go.jp/content/001305186.pdf
③令和元年司法試験採点実感・選択科目合冊の環境法共通採点方針及び第2問(実頁36〜40の該当部分) https://www.moj.go.jp/content/001308864.pdf
2 法令
廃棄物の処理及び清掃に関する法律・平成30年4月1日施行版 https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137/20180401_429AC0000000061?occasion_date=20180401
2条,11条,12条,12条の3,14条,15条,15条の4の2,17条の2,18条,19条,19条の3,19条の5,19条の8を照合した。附則中の改正予定条文を本則と混同せず,当時施行の本則を参照した。
出題の趣旨が自己処理基準について14条1〜4項と記す箇所は,当時の本則12条1〜4項と照合し,答案では12条1・2項を用いた。再生利用特例の行政行為は15条の4の2の「認定」とした。
3 裁判例
最高裁第二小法廷平成11年3月10日決定・平成9年(あ)第105号(おから事件) https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-50185.pdf
裁判所公表本文の全2頁を実読した。不要物の判断方法と事案への適用を確認し,本問への適用は性質の異なる物への法的評価であることを区別した。
4 確認状態
問題,出題の趣旨,採点実感はいずれも対象範囲を実読済みである。合冊PDF全体の保管・頁別文字数の点検は,全頁の内容を精読したことを意味しない。対象範囲は前記のとおりであり,他の問題の解説を本問の根拠としていない。
本記事の評価項目・重み・答案結論は独自の分析であり,公式の記述及び公式が許容する別構成と区別している。後発改正,行政通知,周辺判例,公開答案・再現答案の網羅的比較は行っていない。