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令和元年司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した23項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

令和元年司法試験の労働法第2問について,ビラ撤去とチェックオフ廃止を労働協約の効力及び支配介入から検討する。
公式の出題の趣旨・採点実感から独自に抽出した公開評価項目は23項目,重みの合計は86である。
これは法務省の公式採点基準,項目別配点又は得点予測ではない。

項目内容
対象令和元年司法試験・労働法第2問(選択科目)
公式問題法務省の問題PDF(https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf)・実頁24~25,実読済み
答案の基準時2019年試験当時の法令・判例
出題の趣旨実読済み。合冊実頁34の本件第2問だけ
採点実感実読済み。実頁31の科目共通部分,32頁末の第2問から35頁まで。第1問は除外
主要事項協約の撤去要件,支配介入意思,無期協約解約,財政的基盤,機関別救済
項目と重み23項目。重み5は7項目。重み合計86
主要裁判例東海旅客鉄道・東京高判平成29年3月9日,大阪市チェックオフ廃止・東京高判平成30年8月30日
答案の分量2407字(空白・改行除外)。改行込み2432字。上限2500字
試験後の改正・判例答案へ後発の改正・判例を適用していない。調査の基準と範囲は第7参照
確認日2026年10月19日(日本時間)

本答案では,ビラ撤去は協約上許されず支配介入に当たり,チェックオフ中止も,協約が有効に終了していても支配介入に当たるとの構成を採る。
裁判所の私法上の請求と,労働委員会の正常な労使関係を回復する救済を区別する。
判決と同一の構成・結論だけが要求されているわけではなく,規範と具体的な評価を一貫させることが重要である。

第4に評価項目,第5に答案と項目の対応・解説を置く。
重み5の番号1・2・3は撤去の主構成,6は論述の配分,13・14は解約と支配介入の分離,15はチェックオフの財政・団結への意義を扱う。
重み5でも「高評価」とされた項目を,当然に全答案の必須事項へ格上げする趣旨ではない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

公式資料を,一つの項目につき一つの判定対象となるように言い換えた。
「必須」「高評価」「負例」「許容分岐」と,重みの数字は別の区分である。
表の「記載なし」は対象範囲を実読した上で個別の明示記載がないという意味であり,資料未読を意味しない。

施設管理権へ置き換える負例は番号2の裏返しなので,独立の公開項目にせず番号2にまとめた。
不利益取扱い又は団交拒否そのものへ置き換える負例は番号1の裏返しなので,番号1にまとめた。
内部対照では両負例を独立に保持しており,公開23項目と内部25単位の集計は異なる。
重みを付していない法令補足は公開表の集計へ混ぜていない。

2 5段階の重み付けの基準

重み判断基準
5採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの
4出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項(高く評価した・多数の答案の不足を指摘した)
3どちらか一方が明示する中核の理由付け
2一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項
1一方が控えめに触れるだけの事項

数字は記事独自の分析であり,公式配点,合格可能性や科目の難易度を示さない。
ある段階の項目数が0でも,他の段階から割り当て直すことはしない。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

問題の全文は法務省の公式問題(https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf)を参照されたい。
本問は,無期の労働協約に基づく掲示板・苦情処理・チェックオフをめぐる労使紛争である。
Aの賞与査定について苦情処理が物別れとなり,会社が団交を拒否したため,組合が社内掲示板に会社を批判するビラを掲示した。
会社はビラを撤去し,春闘難航後に無期協約を90日前予告で解約して,その失効後のチェックオフ中止を通告した。
毎年の賃金等の有期協約と本件無期協約は別であり,セクハラの存在は確定事実ではない。

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・射程到達点
1X組合がY社のビラ撤去を争う査定・団交は撤去評価の前提。A個人の請求が主題ではない機関と具体的救済,協約撤去要件及び支配介入
2実際にチェックオフが中止された場合のX組合無期協約の全体解約。3か月後の給与支給日以降という時点を維持解約の効力と支配介入を分け,各機関の請求・命令を示す

第4 評価項目と重み

1 設問1・ビラ撤去

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1【必須】ビラ撤去を労組法7条3号の支配介入として検討する5実頁34・第2問。支配介入の不当労働行為実頁32・第2問。支配介入(労働組合法第7条第3号)
2【必須】掲示板利用は協約27条に基づくことを起点に,協約28・29条の解釈・適用を行う5実頁34・第2問。労働協約の解釈・適用実頁33・第2問。労働協約の解釈・適用の問題である
3【必須】撤去要件該当性の判断枠組み・考慮要素を明示し,施設管理権や一般的な組合活動の正当性だけへ置き換えない5実頁34・第2問。枠組み・考慮要素で判断するか実頁33・第2問。労働協約の撤去要件該当性の問題
4【高評価】査定問題の団交事項性と団交拒否の理由を,ビラの真実性・撤去要件の評価へ接続する4実頁34・第2問。苦情処理制度や団交拒否をどう考えるか実頁33・第2問。ビラの内容の真実性の点から
5【高評価】苦情処理制度の存在・協議経緯を評価し,団交拒否の非難が合理的か検討する4実頁34・第2問。苦情処理制度や団交拒否をどう考えるか実頁33・第2問。ビラを掲示するに至った経緯やビラの内容の真実性の点から,団交拒否を論ずることは必要である
6【高評価】団交拒否は撤去を判断する前提として必要な範囲で論じ,主争点に即した分量にする5関連範囲に個別の明示記載なし実頁33・第2問。論述のバランスが考慮されているもの
7【高評価】社内の組合員等への情報発信と,企業外の第三者への名誉毀損の判断観点の差を示す3関連範囲に個別の明示記載なし実頁33・第2問。企業外の第三者に向けての情報発信
8【必須】査定・セクハラ・団交拒否の各記載を評価した上で,ビラ全体を撤去できるか一貫して理由付ける3関連範囲に個別の明示記載なし実頁33・第2問。最終的な結論に至る理由付けを説得的に論じていないものもあった
9【高評価】協約51条の秘密保持条項を28条と関連付け,守秘違反だけで機械的に撤去の正当性を決めない3関連範囲に個別の明示記載なし実頁33・第2問。51条と関連付けて組合のビラの評価を検討するものは意外に少なく
10【必須】支配介入意思の要否と判断枠組みを示してから,本件での認定に進む3関連範囲に個別の明示記載なし実頁33・第2問。その要否や判断枠組み
11【必須】裁判所へ求める協約上の掲示権に基づく具体的請求を示す4実頁34・第2問。具体的な救済方法実頁34・第2問。請求の内容,救済命令の内容については検討不足の答案が多かった
12【必須】労働委員会へ撤去に関する支配介入の排除・再発防止等の具体的救済を示す4実頁34・第2問。具体的な救済方法実頁34・第2問。請求の内容,救済命令の内容については検討不足の答案が多かった

2 設問2・チェックオフ中止

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
13【必須】本件を無期協約と特定し,労組法15条3・4項の書面と90日前予告による解約を示す5実頁34・第2問。解約が可能であることの正確な理解と明示が不可欠実頁33・第2問。期間の定めのない労働協約の90日前予告解約
14【必須】私法上有効な協約解約と,チェックオフ中止の支配介入該当性を別問題として検討する5実頁34・第2問。チェックオフの私法上の法律関係と支配介入の成否は実頁33・第2問。解約の効力と不当労働行為の成否は別
15【高評価】チェックオフの組合財政・団結の基盤としての意義と,一方的廃止の影響を具体的に評価する5関連範囲に個別の明示記載なし実頁33・第2問。組合の財政的基盤を支えるものであり
16【必須】中止の理由・経緯・時期や組合への影響等を整理して,支配介入の成否に当てはめる4実頁34・第2問。支配介入の該当性の判断における考慮要素や考え方実頁33・第2問。支配介入の成否を適切に論述できている答案
17【負例】信頼関係破壊や正当理由を,無期協約の通常解約の当然の要件として追加しない2関連範囲に個別の明示記載なし実頁33・第2問。解約には正当理由が必要である
18【負例】組合員の労働条件の余後効で,組合のチェックオフ債務の当然継続を導かない2関連範囲に個別の明示記載なし実頁33・第2問。余後効は,労働協約失効後の組合員の労働条件の問題
19【負例】毎年の有期賃金協約との混同や,本件協約の一部解約という与件に反する読み方をしない2関連範囲に個別の明示記載なし実頁33・第2問。期間の定めのある協約であるとの誤解
20【負例】労働協約の解約を,単に民法上の委任契約解除の問題へ置き換えない2関連範囲に個別の明示記載なし実頁33・第2問。委任契約の解除の問題とする答案
21【必須】裁判所へ求めるチェックオフに関する私法上の請求の根拠と限界を具体化する4実頁34・第2問。具体的な救済方法実頁34・第2問。裁判所に対する司法的救済
22【必須】労働委員会へ中止の支配介入を理由とする具体的救済を示す4実頁34・第2問。具体的な救済方法実頁34・第2問。請求の内容,救済命令の内容については検討不足の答案が多かった
23【高評価】チェックオフ中止に対する救済命令の裁量権と限界を検討する3関連範囲に個別の明示記載なし実頁34・第2問。労働委員会の裁量権とその限界を論じたものについては加点した

3 重みの分布

重み1は0項目,重み2は4項目,重み3は5項目,重み4は7項目,重み5は7項目で,合計23項目である。
重みの合計は,1×0+2×4+3×5+4×7+5×7=86となる。
重み5の番号1・2・3は撤去の法律構成,6は前提論と主争点の配分,13・14は通常解約と集団法統制,15は財政的基盤への作用である。
特に番号6・15は「高評価」の区分であり,重みだけから必須へ変更していない。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

試験当時の法令・判例を基準とし,両設問の救済から書き始める。
答案は「1→(1)→ア」の階層とし,調査記録は含めない。
空白・改行を除く2407字であり,改行を含めても2432字である。
具体的な撤去要件の解釈及び支配介入意思には異なる構成の余地があるが,採用した基準と事実評価を対応させている。

2 答案

1 設問1

(1)X組合は,裁判所に,協約27条による掲示板利用権に基づき,ビラ掲示の妨害禁止等を求めることが考えられる。
また,労働委員会に,労組法7条3号の支配介入を理由とする救済を申し立て,撤去したビラの再掲示を妨げないこと及び再発防止の文書交付等を求める。
個々の組合員への不利益取扱いが対象なのではない。

(2)掲示板は協約27条に基づいて貸与され,撤去は28・29条を根拠に行われている。
したがって,施設管理権一般ではなく,協約上の撤去要件の解釈・適用が問題となる。

28条の信用毀損等を字義どおり広く解すれば,会社への批判を伴う組合の宣伝・報道を保障した27条の意義が失われる。
他方,会社・個人の信用や秘密も保護される。
そこで,掲示の場所・対象読者,労使関係と掲示の経緯,記載事項の性質,信用・名誉や職場秩序への影響を考慮し,協約上保障された宣伝活動として許容される範囲を逸脱したかによって撤去要件該当性を判断する。

ア 本件は,企業外の第三者への情報発信による名誉毀損ではなく,社内の組合員に労働条件紛争を報告し,団結の維持を図る活動である。
この文脈では,批判的・強調的な表現も直ちに信用毀損等とはならない。

査定の不当性やセクハラは未確定であり,組合も遅刻・ミスを認めている。
セクハラや隠蔽を断定することは,上司の名誉及び会社の信用を害するとの反論がある。
しかし,加算ゼロという取扱いと飲食の誘いを断った経緯には説明を求める必要があり,会社側の主張も紹介した組合員向けの報告であるから,読者は係争中の組合側の見解として受け止め得る。

遅刻等が評価対象となることと,加算分を全く支給しないことの合理性は別である。
加算部分は最大2割に及ぶから,その運用への疑問を組合員に知らせる必要性も小さくない。
他方,会社説の併記だけでセクハラ断定の真実性が補われるわけではなく,記載全体の趣旨と閲覧範囲を併せて評価する。

イ 団交拒否の非難にも理由がある。
個人の査定でも,組合員の労働条件であり会社が処分可能な事項だから,義務的団交事項となる。
苦情処理制度の設置だけで団交義務は消滅せず,長時間の協議も,説明が尽くされ交渉継続が無益かを実質的に検討すべきである。
上司の説明に依拠して対立したままであり,更なる調査・説明の余地があるから,Y社の拒否には正当な理由がない。

ウ 51条の非公開・秘密保持は,率直な協議と関係者の秘密を保護するものであり,会社の査定理由等の公表がこれに抵触する可能性はある。
しかし,そのことだけで28条該当性は決まらない。
個別査定を争う報告の必要性に対し,具体的な秘密や個人情報の漏示,協議の萎縮等による支障がどの程度あるかを評価する。
本件では社内掲示で,会社説も紹介して紛争を報告しており,重大な支障が生じる事情は示されていない。

以上の各記載と掲示方法を全体としてみると,批判に過度な面はあるものの,協約が保障する宣伝活動の範囲を逸脱したとまではいえず,29条による撤去は許されない。
上記の妨害禁止等を求め得る。

(3)撤去は,組合員への情報伝達を妨げ,組合運営を阻害する。
支配介入意思を必要と解しても,特別な組合弱体化目的までは要せず,団結を阻害する行為の認識で足りると解する。
Y社は紛争経緯とビラ内容を認識して自ら撤去しており,その意思も認められる。
よって7条3号に該当し,労働委員会による上記の原状回復・再発防止救済が問題となる。

2 設問2

(1)本件協約は,1年間の賃金等の協約とは別の無期協約である。
労組法15条3・4項により,署名又は記名押印した文書によって少なくとも90日前に予告すれば解約でき,信頼関係破壊や正当理由は通常解約の要件ではない。
本件書面がこの形式を満たすなら,3か月後の中止時には原則として協約は失効する。
組合員の労働条件に関する余後効により,組合に対する債務的義務を存続させることもできない。

(2)労基法24条1項但書の賃金控除協定は全額払原則の例外を認めるもので,チェックオフを行う私法上の義務を生む協約とは別である。
協約の失効は,控除協定の失効と当然に同じではない。
しかし,控除が許されることから履行義務が導かれるわけでもない。

したがって,裁判所に協約上のチェックオフ継続を請求しても,協約が有効に終了した以上,認められない。
ただし,後述の支配介入が団結権を違法に侵害すれば,不法行為による具体的損害の賠償を求める余地がある。
組合費債権自体は残るため,未控除額全額が当然に損害になるわけではない。

(3)私法上の協約終了と,労組法7条3号の支配介入の成否は別問題である。
チェックオフは便宜供与であるが,継続すれば組合の財政的基盤と団結を支え,一方的廃止は徴収事務の増大・収入不安定化をもたらす。
廃止の理由・経緯,時期,手続的配慮,組合運営への影響等を総合し,組合の弱体化・活動妨害となるかを判断する。

Y社は,自ら団交を拒否してビラを撤去した後,組合の反発と春闘難航を理由に協約を解約しており,中止の業務上の必要性は示されていない。
90日前の通知はあるものの,代替徴収への協議・配慮も示されず,安定した財源を断つ不利益に対する説明として信頼関係破壊だけでは不十分である。
一連の組合活動への対抗措置としての性格とその認識が認められ,中止は支配介入に当たると解する。

(4)X組合は,労働委員会に中止前の状態への回復としてチェックオフ再開及び文書交付等を求め得る。
救済方法には正常な集団的労使関係を回復するための裁量があるから,協約上の履行義務が消滅したことだけで再開命令が排除されるものではない。
他方,救済は侵害の除去に必要かつ相当な範囲に限られ,新たな実体的権利の創設や恒久的な協約締結の強制に及ぶことはできない。
再開の必要性・範囲を吟味し,文書交付等との組合せも検討すべきである。

以上。

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

公開番号答案の対応確認内容
11(1)・(3)ビラ撤去を労組法7条3号の支配介入として検討する。答案「労組法7条3号の支配介入を理由とする救済」
21(2)掲示板利用は協約27条に基づくことを起点に,協約28・29条の解釈・適用を行う。答案「協約上の撤去要件の解釈・適用が問題となる」
31(2)撤去要件該当性の判断枠組み・考慮要素を明示し,施設管理権や一般的な組合活動の正当性だけへ置き換えない。答案「掲示の場所・対象読者,労使関係と掲示の経緯」
41(2)査定問題の団交事項性と団交拒否の理由を,ビラの真実性・撤去要件の評価へ接続する。答案「会社が処分可能な事項だから,義務的団交事項となる」
51(2)苦情処理制度の存在・協議経緯を評価し,団交拒否の非難が合理的か検討する。答案「苦情処理制度の設置だけで団交義務は消滅せず」
61(2)団交拒否は撤去を判断する前提として必要な範囲で論じ,主争点に即した分量にする。答案「団交拒否の非難にも理由がある」
71(2)社内の組合員等への情報発信と,企業外の第三者への名誉毀損の判断観点の差を示す。答案「企業外の第三者への情報発信による名誉毀損ではなく」
81(2)査定・セクハラ・団交拒否の各記載を評価した上で,ビラ全体を撤去できるか一貫して理由付ける。答案「以上の各記載と掲示方法を全体としてみると」
91(2)協約51条の秘密保持条項を28条と関連付け,守秘違反だけで機械的に撤去の正当性を決めない。答案「そのことだけで28条該当性は決まらない」
101(3)支配介入意思の要否と判断枠組みを示してから,本件での認定に進む。答案「支配介入意思を必要と解しても」
111(1)裁判所へ求める協約上の掲示権に基づく具体的請求を示す。答案「ビラ掲示の妨害禁止等を求める」
121(1)労働委員会へ撤去に関する支配介入の排除・再発防止等の具体的救済を示す。答案「撤去したビラの再掲示を妨げないこと及び再発防止の文書交付等」
132(1)本件を無期協約と特定し,労組法15条3・4項の書面と90日前予告による解約を示す。答案「労組法15条3・4項により」
142(3)私法上有効な協約解約と,チェックオフ中止の支配介入該当性を別問題として検討する。答案「私法上の協約終了と,労組法7条3号の支配介入の成否は別問題である」
152(3)チェックオフの組合財政・団結の基盤としての意義と,一方的廃止の影響を具体的に評価する。答案「組合の財政的基盤と団結を支え」
162(3)中止の理由・経緯・時期や組合への影響等を整理して,支配介入の成否に当てはめる。答案「廃止の理由・経緯,時期,手続的配慮,組合運営への影響等」
172(1)信頼関係破壊や正当理由を,無期協約の通常解約の当然の要件として追加しない。答案「信頼関係破壊や正当理由は通常解約の要件ではない」
182(1)組合員の労働条件の余後効で,組合のチェックオフ債務の当然継続を導かない。答案「組合に対する債務的義務を存続させることもできない」
192(1)毎年の有期賃金協約との混同や,本件協約の一部解約という与件に反する読み方をしない。答案「1年間の賃金等の協約とは別の無期協約」
202(2)労働協約の解約を,単に民法上の委任契約解除の問題へ置き換えない。答案「私法上の義務を生む協約とは別である」
212(2)裁判所へ求めるチェックオフに関する私法上の請求の根拠と限界を具体化する。答案「不法行為による具体的損害の賠償を求める余地がある」
222(4)労働委員会へ中止の支配介入を理由とする具体的救済を示す。答案「チェックオフ再開及び文書交付等を求め得る」
232(4)チェックオフ中止に対する救済命令の裁量権と限界を検討する。答案「救済は侵害の除去に必要かつ相当な範囲に限られ」

(2) ビラ撤去と協約の解釈

貸与の合意が存在する以上,無許可の施設利用をめぐる一般論だけでは本問に答えられない。
協約の撤去要件を判断する際,社内の組合員に紛争を伝える場合と,企業外の第三者に対して信用・名誉を害する情報を広める場合を同じ観点で扱わない。
ただし社内掲示なら全て許されるという意味ではなく,断定的なセクハラ批判,関係者の秘密,協議への萎縮の危険も考慮する。
秘密保持条項への抵触と,協約の撤去要件の充足を同一視せず,部分的な問題からビラ全体の撤去に進めるかを説明する。

(3) チェックオフの終了と救済

無期協約の通常解約に正当理由を追加することで支配介入の問題を解消してはならない。
協約上の債務がなくても,一連の経緯から組合の財政・団結を損なう中止であれば,集団法上の支配介入の判断が残る。
労働委員会の回復命令を,消滅した協約債務の単なる履行請求として説明することも適切でない。
番号23は採点実感が加点対象とした発展事項であり,救済目的と必要相当性を示す。
特定の再開命令が常に適法となるという判例命題を断定したものではない。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

2500字以内であるため,協約の各文言の細かな解釈,異なる支配介入意思論,具体的な民事請求の訴訟物・損害額は詳論していない。
ビラ撤去の結論は,真実性や秘密性の評価を変えれば反対方向も考えられる。
公式資料は近時の2判決と同じ構成だけを要求しておらず,ここでの結論は問題文からの独自の評価である。
A個人の未払賞与請求,ハラスメント損害賠償,政治活動目的の掲示規制及び個人労働条件の余後効を主題にはしていない。

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本問は集団的労使関係を扱う。
他年度を読むときも,個別的労働関係の契約法理と集団法上の支配介入を区別することが役立つ。

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労働委員会関係命令・裁判例データベース(https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/h_index.html)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

令和元年司法試験論文式試験問題・選択科目(https://www.moj.go.jp/content/001293669.pdf)・実頁24~25。
令和元年司法試験論文式試験出題の趣旨(https://www.moj.go.jp/content/001305186.pdf)・実頁34の労働法第2問。
令和元年司法試験の採点実感・選択科目(https://www.moj.go.jp/content/001308864.pdf)・実頁31の共通部分,32頁の第2問冒頭から35頁末尾。
いずれも当該範囲を実読済みである。
他科目及び労働法第1問の内容は,本問の解答根拠に用いていない。

2 法令

労働組合法・平成28年4月1日施行版(https://laws.e-gov.go.jp/law/324AC0000000174/20160401_426AC0000000069?occasion_date=20170401)・7条,15条,27条,27条の12を確認。
労働基準法・平成31年4月1日施行版(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000049/20190401_430AC0000000071?occasion_date=20190401)・24条を確認。
民事損害賠償及び救済の必要相当性に関する説明には,これらの条文だけから直接導かれない一般法理に基づく記事独自の分析が含まれる。

3 裁判例

東海旅客鉄道・東京高判平成29年3月9日(https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/han/pdf/h10627.pdf)・原文の事件・主文,実頁4~5及び12~13の関連部分を実読。
大阪市チェックオフ廃止・東京高判平成30年8月30日(https://www.mhlw.go.jp/churoi/meirei_db/han/pdf/h10670.pdf)・原文の事件・主文,実頁7~10の関連判断を部分実読。
引用される原審判決の全理由まで確認したものではない。
前者からは掲示場所・読者・記載内容等の具体的評価,後者からは財政・団結への作用と廃止の理由・手続的配慮の総合判断を確認した。
本問と異なる事実を答案へ移していない。

4 確認状態

公式資料の関連範囲は実読済みであり,23項目はその記載を基に独自に整理したものである。
法令は試験前の施行版を使用したが,裁判例原文の実読は上記の範囲に限る。
本答案の個別的な事実評価,採用した意思論,救済の必要相当性の限界は記事の分析であり,公式資料や特定判決が同一の結論を指定したものではない。
後発の改正法・判例を当時の答案要求へ遡及適用していない。