第1 この記事の対象と結論(法務省とは関係のない独自の予想)
本記事は,司法試験の国際公法(正式科目名「国際関係法(公法系)」)の令和8年・第2問を扱う。主な論点は,難民・武器供与・ICJ管轄権である。参考答案,評価項目と重み付け,設問別の解説を掲載している。年度をまたいで論点を復習する場合は,司法試験の国際公法―過去問・答案と論点別ガイドを参照。分野の基本は,国際公法とは―国際法・国際私法との違いと基本事項で説明している。
本記事は,法務省が公表した令和8年司法試験の国際関係法(公法系)第2問(問題冊子40頁)を対象とする。
以下の評価項目,重み付け,解説及び参考答案は,問題文,条約及び国際司法裁判所(ICJ)の判決から独自に作成した予想であり,法務省の採点基準,配点又は出題の趣旨を示すものではない。
令和8年9月30日の原稿作成時点では,本問の出題の趣旨及び採点実感は公表されておらず,本記事の作成に当たって読んでいない。
本記事の答案は,令和8年の出題の趣旨及び採点実感を踏まえたものではないため,「模範解答」ではなく「参考答案」と呼ぶ。
結論として,設問1のYは政治的意見を理由とする迫害を恐れてA国の外にいる難民に該当し,設問2のB国による反政府武装組織への武器供与は国連憲章2条4項の武力不行使原則に違反すると考える。
設問3では,B国の多数国間条約留保を前提としても,A国は憲章上の請求とは独立した慣習国際法上の武力不行使義務違反を主張し,その請求についてICJに管轄権があると反論できる。
設問3が問うのはA国の管轄権に関する反論であり,本案で必ず勝訴するとの断定ではない。
第2 本記事独自の評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の作り方
各項目は一つの判定対象に絞った。
問題文の事実から法的要件へのつながりを示す項目,条約・判決の中核命題を示す項目,設問の除外指示を守る項目を区別した。
以下の「重み」は答案で欠けた場合に主たる法的経路がどの程度崩れるかという本記事の見立てであり,公式配点を推測した数字ではない。
2 5段階の基準
①重み5:設問が明示に問う事項のうち,答案の骨格となる要件・判決命題・当てはめ又は結論。
②重み4:問題文の事実が強く示唆する事項,又は中心に近い判決命題・重要な反論。
③重み3:具体的事実から導く重要な理由付け又は法的区別。
④重み2:結論を補強し,典型的な誤りを避ける事項。
⑤重み1:設問の除外指示の遵守などの補助的事項。
この区分は,令和8年度司法試験の主要7科目の参考答案一覧に示された5段階の基準の骨格と整合する。重み別の件数や割合は,設問構成と評価項目の切り方によって変わるため,科目間で同じ分布にそろえず,配点又は得点にも換算しない。
第3 本問の概要
A国ではα党が議席の約9割を占め,党首Xの大統領就任後,β党員への弾圧が始まった。
β党員Yは人権保障と民主制を訴えるデモに参加し,α党への転向を拒んだ後,A国官憲から反復して意識を失うほどの暴行を受け,B国に逃れた。
一方,β党員の一部はA国でβ自由戦線を結成して武装闘争を開始し,B国はA国政府の打倒を目的として同戦線に武器を供与した。
A国・B国は国連加盟国及び難民条約・議定書の当事国であり,いずれもICJ規程36条2項の選択条項受諾宣言をしたが,B国には「多数国間条約の下で生ずる紛争」を除く留保がある。
設問1はYの難民該当性,設問2はB国自身の武器供与が国連憲章上の武力不行使原則に違反するか,設問3はA国がB国の管轄権不存在の主張にどう反論できるかを問う。
設問1は難民条約の時間的・地理的制約,設問2は違法性阻却事由を検討対象から外している。
第4 本記事が独自に予想した評価項目と重み(法務省の資料ではない)
1 設問1―Yの難民該当性
| 番号 | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり・根拠 |
|---|---|---|---|
| 1 | 難民条約1条A(2)の国籍国の外にいること,迫害を受ける十分に理由のある恐怖,条約上の理由,国籍国の保護を受けられない又は望まないことを示す | 5 | YはA国国民でB国に入国。難民条約1条A(2) |
| 2 | β党員としての政治的意見又は当局がYに帰属させた意見を迫害理由として特定する | 5 | Yのデモ参加,α党への転向要求と拒絶 |
| 3 | 意識を失うほどの暴行の反復が単なる不利益を超える迫害であると評価する | 5 | A国官憲による反復した暴行 |
| 4 | 転向の拒絶と暴行の時間的・内容的なつながりから政治的意見と迫害の因果関係を示す | 5 | 転向拒否後に官憲が暴行 |
| 5 | 過去の被害と全国的弾圧を用い,将来の迫害への恐怖に客観的根拠があると示す | 4 | β党員への同種暴行はA国全土で発生 |
| 6 | 加害者が官憲自身であるため,A国の保護を期待できないと論じる | 4 | A国官憲が加害者 |
| 7 | A国内の別地域への移動では危険を避けにくいと評価する | 3 | 同種暴行がA国全土で発生 |
| 8 | β党員の一部による武装闘争をY自身の行為と混同せず,条約1条Fの除外を党籍だけから推認しない | 3 | 武装組織を結成したのは「β党員の一部」 |
| 9 | 時間的・地理的制約の検討を広げない | 1 | 設問1の除外指示 |
2 設問2―B国の武器供与
| 番号 | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり・根拠 |
|---|---|---|---|
| 10 | A国・B国が国連加盟国であり,国連憲章2条4項が適用されると示す | 4 | 問題文の加盟国という前提 |
| 11 | 2条4項の武力による威嚇・武力行使の禁止を示し,直接の軍事行動に限定しない | 5 | 国連憲章2条4項 |
| 12 | ニカラグア事件の1986年本案判決228項を用い,反政府勢力への武装・訓練が武力の威嚇又は行使に当たると示す | 5 | B国によるβ自由戦線への武器供与 |
| 13 | 単なる資金援助と武器供与を区別し,本問の供与の軍事的性質を評価する | 3 | 供与対象は資金ではなく武器 |
| 14 | 政府打倒の目的とA国内での武装闘争を,A国の政治的独立に対する行為として評価する | 4 | B国の明示された目的と同戦線の活動 |
| 15 | 武力行使と,自衛権の発動要件となる「武力攻撃」の重大性を区別する | 3 | ニカラグア事件本案判決の区別 |
| 16 | 同戦線の個別の戦闘行為をB国に帰属させることを,B国自身の武器供与の評価の前提にしない | 3 | 評価対象は「B国の…武器供与」 |
| 17 | B国の供与が2条4項に違反すると結論付ける | 5 | 設問2の問い |
| 18 | 違法性阻却事由を論じない | 1 | 設問2の除外指示 |
3 設問3―ICJの管轄権に関するA国の反論
| 番号 | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり・根拠 |
|---|---|---|---|
| 19 | 裁判権には国家の同意を要し,双方の選択条項受諾宣言が重なる範囲で管轄権が生じると示す | 5 | ICJ規程36条2項,双方の宣言 |
| 20 | B国の留保はICJへの付託範囲を限る宣言上の留保であると正確に位置付ける | 4 | B国による国連事務総長への通告 |
| 21 | 国連憲章だけを根拠とする請求には「多数国間条約の下で生ずる紛争」の留保が及び得ると認める | 4 | B国の主張と留保の文言 |
| 22 | 武力不行使義務が憲章と独立に慣習国際法上も存在すると示す | 5 | ニカラグア事件1986年本案判決 |
| 23 | 同事件1984年管轄権判決73項が,多数国間条約留保だけで独立の慣習法請求を排除できないと述べた点を示す | 5 | 同判決73項 |
| 24 | 同じ事実・近い内容であっても,憲章上の義務と慣習法上の義務の法源を区別する | 5 | 同事件両判決,武器供与という共通事実 |
| 25 | A国の請求を慣習法上の武力不行使義務違反として独立に構成する | 5 | B国自身の武器供与 |
| 26 | 紛争の事実的一体性を根拠とするB国の反論を示し,留保の「条約の下で生ずる」は請求の法的根拠を問題にすると再反論する | 4 | B国の管轄権不存在の主張 |
| 27 | ニカラグア事件の留保は本問の留保と同一文言ではないことを認め,法源独立の命題を本問へ適用する | 3 | 判決の射程 |
| 28 | 慣習法上の請求について管轄権があり得るという結論に止め,本案の勝訴と区別する | 3 | 設問3は「管轄権を有すると主張するため」の反論を問う |
| 29 | 管轄権の存否に争いがあれば裁判所自身が判断することを補足する | 2 | ICJ規程36条6項 |
4 答案全体
| 番号 | 評価項目 | 重み | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 30 | Y個人・β党・β自由戦線・B国の各行為を区別し,3設問の主語と法的効果を取り違えない | 4 | 問題文の主体構造 |
| 31 | 根拠規定・判決命題から具体的事実を評価して各設問の結論へつなぐ | 4 | 各設問の指示 |
31項目の内訳は,重み5が12項目(番号1~4,11,12,17,19,22~25),重み4が9項目,重み3が7項目,重み2が1項目,重み1が2項目である。
設問1では転向拒否と国家官憲の暴行を,設問2では武器供与自体の軍事的性質を,設問3では条約と慣習法という法源の独立性を中心に据えた。
第5 参考答案
1 答案の位置付け
以下は,第4の主たる評価項目を踏まえて作成した本記事独自の完成例である。
同一の問題に許容される論述が一つに限られると主張するものではない。
見出しを含めて92行,各行30字以内に整形した答案を示す。本文は2,636字である。
2 答案
第2問
第1 設問1 Yの難民該当性
難民条約1条A⑵の難民とは、人種、宗教、国籍、特定の社会的集
団への所属又は政治的意見を理由に迫害を受ける十分に理由のある
恐怖を有し、国籍国の外にいて、その国の保護を受けられず、又は
その恐怖のため望まない者をいう。1967年議定書1条は、この
定義を時間的制約なしに適用する。YはA国国民で、既に国境を越
えB国にいる。政治的意見は政府への反対意見も含む。政治的意見
は本人が現に抱くもののほか、当局が本人に帰属させたものも問題
となる。政党活動に対する国家の通常の法執行と、反対意見を理由
とする迫害とは、その目的、手段及び重大性で区別する。Yはβ党
員として人権保障と民主制を訴えるデモに繰り返し参加してきた。
地元当局はα党への転向を再三求め、Yが拒むと官憲が何度も意識
を失うほどの暴行を加えた。暴行は身体の安全を深刻に侵害し、単
なる不利益を超える迫害である。転向要求と拒絶の直後の暴行とい
う経緯から、β党員としての政治的意見が迫害の理由である。
α党議員が多数を占めること自体では足りないが、大統領となった
党首がβ党員の社会的排除と弾圧を始め、官憲の暴行が全国的に反
復されている事実は、Yへの加害が偶発的な私的暴力ではなく政治
的迫害であることを裏付ける。Yがデモに参加したことも、身体を
失神させる暴行を正当化しない。既に反復して被害を受け、A国全
土で同じ暴行が行われる以上、再迫害を恐れる主観にも客観的根拠
にも欠けない。加害者はA国官憲自身であり、Yは国家の保護を期
待できず、国内の別の地域に逃れても危険を免れ難い。
β党員の一部が武装したことから、Y自身の武装参加や重大犯罪を
推認できない。条約1条Fの重大な非政治犯罪等の除外は個人ごと
に判断すべきである。β自由戦線はβ党員の一部が後に結成した組
織であり、Yの所属も戦闘への関与も示されていない。武装勢力と
同じ党籍だけでYを難民保護から外すことはできない。除外条項該
当事実もない。したがって、Yは難民条約の適用を受ける難民であ
る。申請・認定はこの該当性を確認する手続で、申請前でも要件充
足自体は左右されない。なお、B国の認定行為は難民性を創設する
ものではない。現時点の問はYの定義該当性であり、送還禁止義務
の違反やB国での申請手続の適否について別個の結論を要しない。
第2 設問2 武器供与と武力不行使
国連憲章2条4項は加盟国に、他国の領土保全又は政治的独立に対
する武力行使とその威嚇を禁じる。直接の軍事行動に限らず、他国
の反政府武装勢力に武器を供与する間接的な武力行使も含み得る。
ニカラグア事件ICJ本案判決は、反政府勢力への武装・訓練は武
力の威嚇又は行使に当たるとした。他方、単なる資金援助を当然に
は同じものとせず、武力攻撃とも区別した。同判決は、憲章と並行
する慣習法上の武力不行使義務を認め、反政府勢力の武装・訓練は
武力行使を含むが、支援全てが同じ性質を持つわけではないとした
。また、武器供与が武力行使に当たることと、憲章51条の自衛権
を発動させる重大な「武力攻撃」に当たることは別である。
本問が後者を問うわけではない。B国はA国政府を倒す目的で、A
国内で武装闘争するβ自由戦線へ武器を供与する。これは同勢力の
軍事活動を可能にする直接の軍事的支援であり、A国の政治的独立
に向けた武力行使に当たる。B国は憲章2条4項に違反する。
A国によるβ党員への深刻な弾圧は事実だが、B国が民主制の回復
を掲げることにより、武器供与の軍事的性質が消えるわけではない
。B国が自ら軍隊をA国内に派遣していないことも決定的ではない
。国連総会友好関係原則宣言も、他国の内乱への参加・援助を武力
不行使及び不干渉の文脈で扱う。
武器供与はA国の体制選択にも干渉するが、設問の結論は憲章上の
武力不行使違反で閉じる。β自由戦線の個々の戦闘行為がB国へ帰
属するかは、この結論の前提でない。本件で評価すべきはB国自身
の供与行為である。戦線の全行為についてB国の実効的支配がある
と仮定したり、個々の攻撃をB国の行為に帰属させたりする必要は
ない。違法性阻却事由は設問が除外している。
第3 設問3 ICJの管轄権
ICJの裁判権には当事国の同意を要する。規程36条2項の選択
条項受諾宣言は、相互主義により両国の宣言が重なる範囲で管轄権
を基礎付ける。A国もB国も宣言をしたが、B国は多数国間条約の
下で生ずる紛争を除く留保を付した。同項は法的紛争について、同
じ義務を受諾する国に対し特別の合意なく管轄権を認める制度であ
る。留保があれば相手国も受諾の共通範囲を超える裁判を強制でき
ない。A国は留保の効力を無視して憲章請求の裁判を当然に求める
ことはできない。ゆえに国連憲章2条4項違反だけを請求原因とす
れば、その留保が及び得る。しかし、A国は、武力不行使が憲章と
独立に慣習国際法上も存在すると主張できる。慣習法規則は条約に
明文化されても消滅しない。ニカラグア事件ICJの1984年管
轄権判決73項は、多数国間条約留保が、同じ内容の慣習国際法に
基づく請求を一律に遮断しないとした。1986年本案判決も、憲
章と慣習法を別個の法源として扱っている。
両法源の文言・内容が近接し、基礎事実が同一でも、法的義務の発
生根拠は別である。前記本案判決が武装勢力への軍事的支援を武力
不行使との関係で評価したことは、慣習法上の請求を憲章違反の単
なる呼び替えではなく、独立の法律上の主張とする根拠になる。
A国は国家実行と法的確信により当該慣習法規則を基礎付けるべき
である。A国は、武器供与が慣習法上の武力不行使義務にも反する
と独立に構成し、その請求は憲章の下で生ずる紛争でなく、留保の
文言に含まれないと反論できる。B国は紛争の事実的一体性から留
保が慣習法上の請求にも及ぶというだろう。しかし「条約の下で生
ずる」は請求の法的根拠を指すと読むべきであり、同一事実から条
約違反も主張できるというだけでは、独立の慣習法請求が条約の下
で生じることにはならない。ニカラグア事件の留保は本問と同文で
はないが、この法源の独立性は本問にも妥当する。したがって、両
宣言の共通範囲にあるこの慣習法上の請求について、ICJは管轄
権を有するとの主張が成り立つ。管轄権の存否を争う場合は規程3
6条6項により裁判所が決める。A国が管轄権を主張し得ることと
、武力不行使違反という本案での勝訴とは区別される。
3 設問別の解説と答案の射程
(1) 設問1
難民条約1条A(2)の迫害理由は,人種や宗教に限らず政治的意見も含む。
本問ではYのβ党籍だけでなく,人権保障と民主制を訴えるデモ,α党への転向要求,その拒絶を理由とする官憲の暴行という連鎖が重要である。
暴行の重大性,反復,A国全土での同種行為は,「十分に理由のある恐怖」と国籍国の保護を受けられないことをともに支える。
β自由戦線はβ党員の「一部」が後に結成した組織であり,Yの加入や武装活動は問題文にない。
Yへの難民条約1条Fの除外を,党籍のみから認めることはできない。
他方,仮にY本人による重大犯罪等の事実が別途判明すれば,その事実ごとに除外を検討することになる。
これは問題文の事実を超える仮定であり,答案の中心ではない。
(2) 設問2
国連憲章2条4項は,武力の威嚇又は行使を禁止する。
ニカラグア事件の1986年本案判決228項は,反政府勢力への武装・訓練を武力の威嚇又は行使との関係で評価し,単なる資金援助と区別した。
B国はA国政府の打倒を目的に,A国内で武装闘争するβ自由戦線へ武器を供与しているから,B国自身の行為として2条4項違反を論じられる。
同戦線の個別の攻撃をB国の行為に帰属させる必要はない。
武器供与が武力行使に当たることと,「武力攻撃」として自衛権の発動を許すことは別問題である。
本問は前者を問うており,後者や違法性阻却事由に答案の中心を移さない。
(3) 設問3
ICJ規程36条2項の宣言は,双方が受諾した範囲で管轄権の基礎となる。
B国の留保を無視して憲章上の請求だけを押し通す構成は弱い。
ニカラグア事件の1984年管轄権判決73項は,多数国間条約に規定された原則であっても慣習国際法上の原則として独立に存在し得るため,条約留保を理由に慣習法上の請求まで一律に排除できないとした。
A国は,B国による武器供与が憲章とは別個の慣習国際法上の武力不行使義務に違反すると請求を構成する。
同じ武器供与が基礎事実であることだけでは,慣習法に基づく請求が「多数国間条約の下で生ずる紛争」に変わるわけではない,と論じる。
ただし,1984年判決で問題となった留保には,本問に省かれた条件も含まれる。
本記事が本問に援用するのは,両国の留保が完全に一致するという事実ではなく,条約に記された規則と同内容の慣習法規則も独立の法源たり得るという判決の理由である。
4 公開答案との照合
(1) 本問そのものの公開答案の確認範囲
令和8年9月30日,年度の全角・半角表記,正式科目名・「国際公法」,「第2問」・「第二問」,「参考答案」・「解答例」・「再現答案」の組合せでウェブ検索し,予備校サイト,note,個人ブログ及び山中弁護士ブログの公開結果を確認した。
本問そのものについて全文を公開した答案は,この確認範囲では見つからなかった。
これは未確認の会員限定資料,有料教材,検索に現れない投稿等の不存在を意味しない。
アガルートの過去問解析講座案内は答案例の提供を案内しているが,令和8年第2問の答案本文を公開ページで確認できなかったため,その内容を本記事の根拠としていない。
(2) 類題の公開答案・答案作成例
BEXA「国際公法の試験答案作成法」の1頁~3頁には,反政府組織への武器・訓練・資金援助を例に,国連憲章2条4項,ニカラグア事件判決,慣習法及び不干渉原則を区別して答案を作る例がある。
本記事では,この類題を設問2の比較材料としたが,本問に存在しない資金供与や訓練を事実として追加していない。
令和4年予備試験国際公法の公開答案例は,選択条項受諾宣言と留保を扱うが,留保の内容及び管轄権を主張する国の立場が本問と異なる。
別の同年度答案例も選択条項の相互主義と留保を扱う。
これらは設問3の手続構造の比較に用い,慣習法請求に関する本問の結論は1984年のICJ判決73項で確認した。
令和5年司法試験国際公法の再現答案は,双方の選択条項受諾宣言を前提に管轄権を検討する記載があるものの,本問のような多数国間条約留保を扱わない。
再現答案は受験者の記録であり,公式の採点基準ではない。
第6 関連記事
本問と同じ令和8年度の国際関係法の参考答案は,次の3記事に掲載している。
- 国際関係法(公法系)第1問――外交的保護・犯罪人引渡し・外交官の民事裁判権免除
- 国際関係法(私法系)第1問――船舶衝突・保険者への直接請求・外国判決
- 国際関係法(私法系)第2問――離婚の方式・嫡出否認・国際扶養
選択科目8科目・全16問の案内は,令和8年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の参考答案一覧を参照されたい。
本問の論点別解説:難民条約上の難民とは|迫害・政治的意見・国家による保護の欠如,ニカラグア事件とは|反政府勢力への武器供与・武力行使・不干渉原則,ICJ選択条項受諾宣言とは|相互主義・留保・条約法と慣習国際法。
第7 出典及び確認状態
1 一次資料
①法務省「令和8年司法試験問題」及び論文式試験問題集(国際関係法・公法系)40頁。
②難民の地位に関する条約1条A(2)・1条F及び1967年議定書1条。
③国連憲章2条4項及びICJ規程36条2項・6項。
④ICJ「ニカラグアにおける及びニカラグアに対する軍事的・準軍事的活動事件・1984年11月26日判決」73項。
⑤ICJ「同事件・1986年6月27日判決」174項~179項,228項。
⑥国連総会友好関係原則宣言。
2 参考記事・答案作成例
①BEXA「国際公法の試験答案作成法」。
②令和4年予備試験国際公法の答案例(note)及び別の答案例(はてなブログ)。
③令和5年司法試験国際公法の再現答案(note)。
3 確認状態と残る不確実性
本問の問題文は,法務省の問題冊子40頁を確認した。
難民条約,国連憲章及びICJ判決を法的根拠とし,第4の評価項目と重みは独自の推論である。
公開答案の調査範囲は第5の4のとおりであり,本問そのものの公開全文に基づく照合はできていない。
本問の公式の出題の趣旨・採点実感及び公式配点は未確認である。