第1 この記事の対象
本記事は,令和3年度司法試験論文式試験の選択科目8科目について,第1問・第2問を別々に扱う16本の模範解答記事を案内する。
対象は倒産法,租税法,経済法,知的財産法,労働法,環境法,国際関係法(公法系)及び国際関係法(私法系)であり,主要7科目と短答式試験は対象外である。
令和8年10月21日時点の子記事の公開評価表を集計すると,評価項目は計557項目,重み5は計58項目である。
評価項目の分け方,重み及び模範解答は各記事の独自の分析であり,法務省の公式採点基準・項目別配点ではない。
本記事は子記事の整理であり,16問について公式資料の要求を独立に審査し直したものではない。
第2 16記事の一覧
| 科目・問題 | 主な論点 | 評価項目 | 重み5 |
|---|---|---|---|
| 倒産法第1問 | 請負解除後の報酬処理,相殺禁止の時点と要件 | 38項目 | 2項目 |
| 倒産法第2問 | 非金銭債権の届出,再生計画取消しと必要的廃止 | 33項目 | 3項目 |
| 租税法第1問 | 財産分与と譲渡所得,学費の必要経費,賃料の帰属 | 31項目 | 3項目 |
| 租税法第2問 | 低額譲渡と寄附金,重加算税,年度をまたぐ原価 | 30項目 | 3項目 |
| 経済法第1問 | 入札談合,相互拘束,基本合意からの離脱 | 32項目 | 4項目 |
| 経済法第2問 | 取引妨害,拘束条件付取引,排除型私的独占 | 37項目 | 4項目 |
| 知的財産法第1問 | 均等侵害,特許権の消尽,間接侵害と損害算定 | 41項目 | 3項目 |
| 知的財産法第2問 | 非公表写真の職務著作,中古販売・貸与,改変への同意 | 46項目 | 4項目 |
| 労働法第1問 | 小規模企業の懲戒,労働者の賠償責任,整理解雇 | 30項目 | 4項目 |
| 労働法第2問 | 罷業・投稿の正当性,懲戒事由,懲戒解雇の量定 | 33項目 | 3項目 |
| 環境法第1問 | 環境評価と認可,原告適格,SEA,共同不法行為 | 41項目 | 3項目 |
| 環境法第2問 | 廃棄物処理の主体別責任,緊急代執行,住民救済 | 41項目 | 4項目 |
| 国際関係法(公法系)第1問 | 国家承認と分離独立,外交的庇護,作為・不作為の国家責任 | 28項目 | 5項目 |
| 国際関係法(公法系)第2問 | 島の領域権原,未画定海域の資源利用,発砲と仲裁管轄 | 26項目 | 4項目 |
| 国際関係法(私法系)第1問 | 婚姻無効訴訟の管轄,重婚の準拠法,嫡出性,領事婚 | 33項目 | 5項目 |
| 国際関係法(私法系)第2問 | 交通事故の国際裁判管轄,不法行為・生産物責任の準拠法 | 37項目 | 4項目 |
各問題を別々の行で示している。
項目数の多寡は,科目の難易度や公式の配点の大小を示すものではない。
第3 科目別の概要と重み5の事項
以下の番号は,子記事の現在の公開評価表の通し番号であり,記事ごとに1から始まる。
同じ番号でも別の記事では内容が異なるため,科目と第何問を併せて読む必要がある。
重み5の事項は全件を掲げるが,重み1~5,注意事項及び適用条件・条件付き分岐を維持し,全項目を全答案へ累積して要求しない。
1 倒産法
(1) 第1問
工事完成後・引渡し前に注文者の破産手続が開始した請負契約と,銀行の貸金債権による相殺を扱う。
子記事は,既払代金の返還を要せず未払報酬を破産債権とし,設問2の相殺を認め,設問3の相殺を否定する構成である。
3設問は独立する。
設問1は解除が認められるとの仮定に従い,解除の可否自体を詳論しない。
振込日は設問2が6月5日,設問3が16日であり,後者では銀行が破産申立てを知らなかったとの前提を維持する。
重み5は2項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号2:民法642条1項本文を破産法53条1項の特則として適用し,両規律を任意選択の関係にしない。
請負に関する特則と破産法の一般規律の関係が,解除後の債権の扱いを決める。
番号13:71条1項各号を個別に検討し,合理的期待の一般論だけで相殺可否を決めない。
相殺禁止の各号と例外を具体的に適用することが,相殺可否の判断経路になる。
記事:令和3年司法試験倒産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した38項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
披露宴の役務請求権の届出,架空債権による議決操作と再生計画の取消し,計画遂行不能後の手続を扱う。
子記事は,権利の内容と議決権額を分け,設問2では因果関係を肯定した上で裁量棄却とし,設問3では必要的廃止と職権破産を検討する。
3設問は独立する。
設問1は料金全額前払済みであり,双方未履行との前提を加えない。
設問2の計画は履行可能であるのに対し,設問3は計画弁済の継続が不能となった別の場面である。
因果関係について理由を伴う否定構成も排除しない。
重み5は3項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号15:清算型である破産では非金銭債権も金銭化することを制度趣旨に遡って説明する。
再生の役務請求権の内容の届出と,清算型の破産での金銭評価を制度目的から区別する。
番号22:不正の方法と独立して,不正と計画成立との因果関係を抽出・検討する。
不正行為の存在と,その不正によって計画が成立したかは別の要件として検討する必要がある。
番号26:189条1項のできるという文言を示し,取消事由があっても裁量棄却できると説明する。
取消事由があっても裁量があることを踏まえ,取消しと棄却の双方の事情を評価する。
記事:令和3年度司法試験倒産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け
2 租税法
(1) 第1問
離婚時の土地の財産分与とその後の売却,生花・鍼灸の学費,遺産分割前の建物賃料を扱う。
子記事は,分与義務又は請求権の消滅と資産の時価を結び,学費を必要経費と家事費等に分け,賃料を資産の所有関係から検討する。
設問ごとに,分与者・受領者・学費支出者・相続人という主体を区別する。
学費の否認は子記事が採用する論証であり,公式資料が両学費の否認だけを唯一の結論に指定したとは扱わない。
問題文にない譲渡費用等や,実取引の税額を補わない。
重み5は3項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号3:分与義務の消滅という経済的利益を譲渡対価と捉える
財産分与義務の消滅という経済的利益を把握することが,譲渡所得の課税関係を説明する鍵になる。
番号11:消滅した財産分与請求権の価額を資産取得に要した金額と捉える
B自身の取得の対価を捉えることで,Aの取得費を当然に承継する処理と区別できる。
番号29:C死亡後・遺産分割前の所有関係に基準を当てはめ,賃料の帰属主体を導く
C死亡後の権利関係を所得の帰属基準へ当てはめ,誰の所得かを具体的に決める必要がある。
記事:令和3年司法試験租税法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した31項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
土地の低額譲渡,転売価格の特約,重加算税,代表者が受領した協力金の所得区分を扱う。
子記事は,譲渡収益と原価を分け,B社の受贈益を取得年度に認識し,翌年度の原価と整合させる構成である。
各法人は暦年決算であり,取得年度と転売年度を分ける。
グループ法人税制と同族会社の行為計算否認規定は検討対象外である。
受贈益を取得年度に認識しない別構成の項目を,先行認識の構成へ累積して要求しない。
重み5は3項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号9:低額譲渡差額に37条8項の寄附金規定を適用する
時価との差額を寄附金の規定に接続することが,単なる譲渡損益計算との相違になる。
番号12:過少申告自体とは別個の隠蔽仮装行為が必要と説明する
過少申告自体と別個の隠蔽仮装行為の要否が,重加算税の判断を分ける。
番号27:34条1項の役務等の対価でないことという要件を特定する
リベートが役務等の対価に当たるかという法定要件を特定することが,所得区分の判断につながる。
記事:令和3年司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した30項目と5段階の重み付け
3 経済法
(1) 第1問
総合評価落札方式の工事入札について,基本合意への参加者認識,相互拘束,違反の成立時期と離脱を扱う。
子記事は,Y14の認識と無受注希望の主張を分け,Y15について既に成立した違反と将来の離脱を区別する。
各社の独占禁止法上の問題点と,Y14・Y15の主張への応答が対象である。
課徴金の賦課と犯則事件は検討対象外である。
子記事の答案は離脱を認めるが,理由を伴う離脱否定の構成も排除しない。
重み5は4項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号16:Y14の参加者範囲の不知を認識の程度の問題と特定し,正確な特定を不要とする基準を置く
参加者の正確な特定まで必要かという認識の基準を示し,Y14の主張を評価する必要がある。
番号20:拘束の相互性の採用解釈を明示し,受注利益の相互性と取決めによる事実上の拘束を区別する
受注を希望しないY14についても,相互拘束の解釈と取決めによる拘束を区別して検討する。
番号23:違反の成立時期を理由付きで示す。基本合意時に成立すると解する場合は,競争を実質的に制限する合意で足り,個別調整・入札実施を要しない理由を説明する。
違反成立の時期に関する理由ある解釈が,Y15の応諾と撤回の法的評価を左右する。基本合意時成立の結論だけを要求しない。
番号25:離脱には内心の決意を超える事情を要するとし,採用する外部的基準を定立する
内心の意思変更だけで離脱を認めず,採用する外部的な基準に即して撤回の効果を判断する。
記事:令和3年司法試験経済法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した32項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
競争者製品の推奨を抑える不利益措置と,専属的推奨を条件とするリベートを扱う。
子記事は,設問1では措置を分けて不公正な取引方法を,設問2では追加事情の下で措置全体の排除型私的独占を検討する。
設問1と設問2で競争への影響の程度を区別する。
約束率約70%と市場シェア60%は別の数値であり,約束率をそのまま市場閉鎖率としない。
措置1の類型選択や排他条件付取引等の別構成は,採用する場合の追加論証とともに扱う。
重み5は4項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号1:設問1の各措置を19条,設問2の全体を3条へ対応させ,効果の強度を区別する。
各措置の不公正な取引方法と,全体としての私的独占では,必要とする競争上の効果の強度が異なる。
番号10:不利益の現実化と情報流布から,個別の圧力が他の取引先へ広がる過程を説明する。
特定の販売店への圧力が情報の流布を通じて他店に及ぶ過程が,市場への効果の説明になる。
番号21:推奨による需要選択の下で,専属推奨が実質的専売店化へつながる過程を説明する。
推奨が購入者の選択に影響する市場で,専属推奨が販路を閉ざす仕組みを説明する必要がある。
番号35:60%シェアだけでなく販路停滞・他社販売減少・価格維持から競争圧力低下と市場支配力を論証する。
販売シェアという数値に加え,販路・他社の販売・価格の事情から市場支配力を判断する必要がある。
記事:令和3年司法試験経済法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した37項目と5段階の重み付け
4 知的財産法
(1) 第1問
医療用器具の針の材質変更,使用済み製品の再処理,医療機関での組合せと部材供給を扱う。
子記事は,設問1・2では侵害を否定し,設問3では差止めと,主観的要件充足前及び非侵害用途の販売を分けた損害算定を検討する。
各設問は独立する。
均等論の特段の事情と再処理による新製造は,理由を伴う別の結論も排除しない。
損害不発生の構成と推定覆滅の構成を無条件に累積せず,番号39は後者を採る場合の項目として読む。
重み5は3項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号11:代替を認識しながらあえて請求項に記載しなかった旨の客観的・外形的表示を第5要件の判断基準とする
単に代替手段が容易だったかではなく,意識的除外を示す客観的・外形的な表示を検討する必要がある。
番号19:元の製品と同一性を欠く製品の新たな製造なら権利行使が可能という基準を示す
使用済製品の再処理が元の製品と同一性を欠く新たな製造かどうかが,消尽後の権利行使を分ける。
番号35:主観的要件充足前の販売は間接侵害不成立であり算定対象から除外する
間接侵害の知情要件を満たす前後で,損害算定の対象となる販売を区別する必要がある。
記事:令和3年度司法試験知的財産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した41項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
開発参考用の非公表写真の職務著作,ゲームの中古販売と返品条件付きサービス,楽曲の全部譲渡後の改変を扱う。
子記事は,写真の印刷・譲渡の予防とデータ消去,サービスの貸与該当性,丁の同一性保持権侵害を否定する反論を組み立てる。
写真とゲームを別の著作物として扱い,ゲーム内の映画・プログラム・楽曲の権利を分ける。
設問3は丁の反論を求めるものである。
サービスを譲渡と捉える構成や不行使特約の援用は,その構成を採る場合の理由付けを要する。
重み5は4項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号6:持出禁止・廃棄命令により写真の公表予定がない点を公表名義要件の問題として特定する。
写真の公表予定がない事情を,職務著作の公表名義要件の解釈につなぐ必要がある。
番号29:サービスの性質を民法上の契約名でなく2条8項の貸与定義から判断する。
サービスの表示名や民法上の名称ではなく,著作権法上の貸与に該当するかを判断する必要がある。
番号32:映画αの貸与部分について譲渡消尽と区別し,対価回収機会から非消尽を論証する。
譲渡による消尽と貸与部分の対価回収機会を区別することが,サービスの差止めを判断する基礎になる。
番号39:全部譲渡の意義と人格的利益の保護の双方を失わない調整の必要を示す。
著作権の全部譲渡の実質を確保しつつ,著作者の人格的利益も保護する調整が求められる。
記事:令和3年司法試験知的財産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した46項目と5段階の重み付け
5 労働法
(1) 第1問
就業規則のない6人規模の会社で,情報媒体紛失後の出勤停止・賠償請求と,別の労働者に対する整理解雇を扱う。
子記事は出勤停止と整理解雇を無効とし,使用者の賠償請求を公平な損害分担の範囲に制限する構成である。
各処分・請求について,法的根拠,濫用審査及び具体的事情を分ける。
整理解雇に関する30日前の予告だけで有効性を決めない。
個別契約による懲戒の根拠付けや4要素説等は,採用する解釈と事実評価の一貫性を要する。
重み5は4項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号3:判例法理の趣旨を掘り下げて個別契約書の合意による実現可能性を理由付ける
懲戒の根拠を事前に明確化する判例法理の趣旨が,個別契約による実現の可否を判断する基礎になる。
番号10:使用者から労働者への直接請求として債務不履行又は不法行為を法的入口に置く
使用者の直接請求について,成立根拠を示してから責任制限を検討する順序が必要である。
番号14:公平な損害分担に基づく信義則上の責任範囲制限を規範として示す
労働関係での公平な損害分担が,成立した損害賠償責任の範囲を制限する根拠になる。
番号26:1事業場の小規模会社という実情を踏まえ実行可能な回避措置を具体的に検討する
小規模事業場で実施できる回避措置を具体的に検討し,大企業の措置を機械的に要求しない。
記事:令和3年司法試験労働法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した30項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
労働組合の支部長が行った罷業とインターネット投稿を理由とする懲戒解雇を扱う。
子記事は,不当労働行為と懲戒権濫用を別の無効根拠として検討し,各行為の正当性,懲戒事由,最重処分の相当性を分ける。
問われるのはXの懲戒解雇の効力であり,Bの地位確認・賃金請求を独立に詳論しない。
子記事の答案は解雇有効とするが,公式資料がその結論だけを指定したとは扱わない。
就業規則の周知がある場合を論じるという答案の前提にも留意する。
重み5は3項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号1:不当労働行為と懲戒権濫用を,解雇の効力を妨げる別の根拠として併せて検討する。
不当労働行為に当たることと懲戒権濫用は,解雇の効力を判断する別の法的根拠になる。
番号5:操業停止を意図する罷業と,操業停止自体を意図しない投稿を区別し,それぞれの正当性を評価する。
操業停止を目的とする罷業と投稿行為では,行為の性質に応じた正当性の判断が必要である。
番号29:最重処分の量定で,行為の悪質性と経済損失・企業秩序への結果の重大性を衡量する。
懲戒解雇という最重処分を選ぶことが相当かを,行為と結果の双方から具体的に判断する。
記事:令和3年司法試験労働法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け
6 環境法
(1) 第1問
道路建設の環境影響評価と認可,住民・団体の救済,2011年改正と制度改革,供用後の健康損害を扱う。
子記事は,環境評価を認可審査へ接続し,抗告訴訟と住民訴訟,配慮書と政策等の上位段階のSEA,県と事業者の賠償責任を分ける。
設問1のC・Dと,健康被害を懸念するFらの立場を混同しない。
設問4では国への請求を扱わない。
番号16は抗告訴訟の原告適格を否定する場合の条件付きの項目であり,全答案に一律に要求する項目ではない。
重み5は3項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号2:法33条2項3号の横断条項により事業利益と環境保全審査を併せて判断する。
環境影響評価法の横断条項により,事業上の利益と環境保全の双方を認可判断につなぐ。
番号30:政策・計画・プログラム段階のSEAを,配慮書との段階差を示して提案する。
個別事業の配慮書より前の政策・計画段階での環境配慮を,制度の段階差から説明する必要がある。
番号41:選んだ719条構成に応じて因果関係・関連共同性等の主張立証対象を一貫させる。
採用する共同不法行為の解釈によって主張立証対象が変わるため,規範と立証対象を一貫させる。
記事:令和3年度司法試験環境法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した41項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
野積み廃棄物の崩落危険について,処分者C社と元請B社への措置,緊急時及び許可取消後の対応,住民Dの救済を扱う。
子記事は,処分者責任と補完的責任,支障除去と保管等命令,民事差止めと行政上の義務付けを区別する。
再委託と管理票は適法であるとの前提を維持する。
設問1⑴ではB社だけを事業者とし,法21条の3第2項ないし第4項は検討しない。
許可を取り消さない場合,緊急事態,取消後を分け,独立する設問2へD宅の直接隣接や現実の損害を補わない。
重み5は4項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号9:C社の処分者責任とB社の排出事業者としての補完的責任を異なる根拠条文で区別する。
処分者と排出事業者では責任の根拠と要件が異なるため,命令の対象ごとに分けて検討する。
番号13:法19条の8第1項4号を選択し,命令のいとまがない場合の先行命令なしの行政代執行を示す。
命令をする時間がない緊急の場合に,先行命令を要しない措置の根拠を特定する必要がある。
番号16:許可取消し後のC社に法19条の10第2項3号を適用し,19条の5の読替準用を示す。
許可取消し後には,取消前と異なる根拠による保管等命令と読替準用を検討する必要がある。
番号36:現実の危険除去を実現するため,行政代執行そのものの義務付けの可否を検討する。
命令の発出だけでなく,危険を現実に除去する代執行の実施を求められるかまで検討する。
記事:令和3年司法試験環境法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した41項目と5段階の重み付け
7 国際関係法(公法系)
(1) 第1問
少数民族地域の独立承認,外交公館への庇護と犯罪人引渡し,民間警備会社の公館侵入と警備放棄を扱う。
子記事はB国の立場から,国家成立と分離権,地域慣習に基づく庇護,私人行為の帰属による責任と国家自身の不作為責任を論じる。
国家承認の正当化と,国家成立の時期を対応させる。
AB両国に犯罪人引渡条約はなく,両国は外交関係条約の当事国である。
例外的分離権の確立を当然の前提とせず,B国が主張する法的構成と事実評価として読む。
重み5は5項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号2:承認前にPの国家成立を論証し,未成立なら尚早の承認による内政干渉となるという時間的関係を示す。
国家成立の認定と独立承認の前後関係が,承認を内政干渉とする主張の当否を左右する。
番号13:自治終了と長期弾圧を植民地支配等に類似する状況として評価し,最後の手段としての分離権から独立承認の正当化へつなぐ。
内的自決の実現可能性と長期弾圧の事情を踏まえ,最後の手段としての分離と承認の正当化を論じる。
番号16:中南米の外交的庇護について地域慣習法・特別法を援用し,南米のAB両国間での適法性を主張する。
一般国際法と地域慣習法の適用関係を分けることが,中南米の両国間での庇護の主張の根拠になる。
番号22:Aの指示に従った乙職員の本件侵入をAの行為と評価し,国家責任条文8条又は同内容の帰属法理に接続する。
国の指示と当該侵入行為を具体的に結び付けることが,私人の行為を国家へ帰属させる根拠になる。
番号28:私人行為の帰属を介した作為責任と,国家自身の警備懈怠による不作為責任を区別し,前者だけで検討を終えない。
私人の侵入の帰属と,国家自身の警備放棄という不作為は,異なる責任の根拠として検討する。
記事:令和3年司法試験国際関係法(公法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した28項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
植民地独立後の島の帰属,境界未画定の海域での探査・開発,沿岸警備隊の発砲を扱う。
子記事は,法的権原と実効的支配の順序,探査・開発の場所と態様,条約紛争としての仲裁管轄と発砲の違法性を接続する。
設問1・2はB国の主張,設問3はA国の仲裁付託と違法性の主張を求める。
2016年の開発地点はA国主張線よりB国側であり,係争海域内との事実に置き換えない。
探査を地震探査と断定しない。
番号7の力による現状変更禁止は,権原に基づく撤退論と併せて論じることもできる。
設問3の条約紛争についての構成は,それぞれの要件に従って別に検討する。
重み5は4項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号2:拘束力ある文書による権原を先に検討し,確定できない場合に実効的支配を検討する。
文書による権原が確定できるかを先に確認してから,実効的支配の意味を判断する必要がある。
番号7:【許容分岐】帰属の確定と独立して,未解決地域の力による現状変更・支配継続の禁止から撤退を構成する。 適用:力による現状変更の禁止を独立の撤退根拠として論じる場合。権原に基づく撤退論と併せて論じることもできる。
権原による撤退の主張とは別に,力による現状変更禁止からも撤退を論じ得る。両者を相互排他的には扱わない。
番号11:最終合意への到達を危うくし又は妨げない自制義務を示す。
暫定的取極の締結努力と,最終合意を妨げない自制の義務は区別して検討する必要がある。
番号17:発砲事件について,条約の解釈又は適用に関する紛争が存在することを286条の入口として示す。
発砲の違法性を論じる前に,条約の解釈・適用に関する紛争として付託できるかを確定する。
記事:令和3年司法試験国際公法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した26項目と5段階の重み付け
国際関係法(公法系)は,一般に「国際公法」と呼ばれる分野である。
ほかの年度も含めて論点から探す場合は,司法試験の国際公法―令和元年~令和8年の過去問・答案と論点別ガイドを参照。
基礎事項は,国際公法とは―国際法・国際私法との違い,条約・慣習国際法と主な分野で説明している。
8 国際関係法(私法系)
(1) 第1問
第三者Bが提起した婚姻無効訴訟について,日本の管轄,重婚の成立要件と瑕疵効果,子の嫡出性を扱う。
子記事は,設問1では日本の管轄と婚姻無効を認め,子の身分を別に保護し,設問2では日本での領事婚の方式を検討する。
全問で反致は検討対象外である。
設問2は独立し,前婚の離婚の有効性と実質的成立要件の充足を争わない。
甲国法は問題文の仮定であり,実在国の外国法の確認とは区別する。
重み5は5項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号2:第三者Bの訴えはAC双方を被告とするため人訴法3条の2第2号によると示す(第1号を用いない)
第三者が身分関係当事者双方を被告とする訴えであることが,人訴法の管轄規定の選択を分ける。
番号6:無効・取消しは成立と表裏一体であり,実質的成立要件の欠缺を婚姻成立の問題と性質決定する(25条の身分的効力と混同しない)
婚姻の成立要件の欠缺として性質決定することが,準拠法指定規定を選ぶ前提になる。
番号19:両準拠法の異なる瑕疵効果を通則法24条1項の趣旨から調整し,理由を伴って請求の成否へ至る
二つの準拠法が定める無効と取消しの異なる効果を調整し,請求の結論へつなぐ必要がある。
番号21:無効婚から出生した子の法的地位を嫡出親子関係の成立と性質決定し,25条又は32条へ無理由に送らない
子の地位を嫡出親子関係の成立の問題と捉えることが,適切な連結規定の選択につながる。
番号29:通則法24条3項ただし書を適用し,同項本文による本国法方式の選択を排除する
日本人条項が適用されると,本国法方式を選べるという原則の適用が排除される。
記事:令和3年司法試験国際関係法(私法系)第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け
(2) 第2問
外国での交通事故後に日本で治療した被害者の請求と,国境を越えて流通した自動車の欠陥による損害を扱う。
子記事は,管轄と準拠法,通常の不法行為と生産物責任を分け,取得地の予見可能性と密接関連性,日本法の累積的制限を検討する。
設問1小問1は応訴管轄を除外し,小問2では国際裁判管轄を論ずる必要がない。
各小問は独立し,準拠法を問う小問は適用国法の決定が終点となる。
番号30の日本法という結論は予見可能性を否定する構成に限られ,与件にない外国実質法による認容判断を加えない。
重み5は4項目であり,該当する項目は次のとおりである。各項目の適用条件は,採用する構成に応じて確認する。
番号5:結果に直接の法益侵害だけを含めるか派生損害も含めるかを,理由を付けて解釈する。
管轄の結果発生地に派生損害まで含めるかを,文言の提示だけでなく理由付きで解釈する必要がある。
番号12:通則法17条の結果発生地を直接の法益侵害地と解する理由を,準拠法選択の問題として示す。
準拠法を選ぶ場面では直接の法益侵害地を捉える理由を示し,管轄の結果発生地と区別する。
番号20:被害者を生産者から直接に引渡しを受けた者に限定せず,A社をバイスタンダーと誤認して17条へ移らない。
18条の被害者を直接購入者だけに限定しないことが,本問を生産物責任として扱う前提になる。
番号27:甲国における引渡しの通常予見可能性を18条ただし書の要件として検討する。
被害者への引渡地と通常予見可能性を対応させることが,18条ただし書による法選択を左右する。
記事:令和3年司法試験国際私法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した37項目と5段階の重み付け
第4 16記事に共通する作り方
1 評価項目の抽出
各子記事は,出題の趣旨・採点実感の対象問と関連する共通記述を基に,一つの判定対象を一つの評価項目へ整理している。
根拠欄の頁・節,重み1~5,注意事項及び適用条件・条件付き分岐の区別を確認する必要がある。
「当該細目としての個別の明示なし」は各記事が実読した範囲で個別の記述がないとの表示であり,未確認とは区別される。
間接との表示がある場合は,関連記述から項目化した分析を含む。
本記事では,公開表に重みが付いた行を集計単位とし,一般的な答案作法や補足説明を追加の項目として数えない。
各行は適用条件を確認して読む。
特に経済法第1問の番号23・24は,違反の成立時期について採用する立場と対応させる。
他方,独立した注意として公開行に残る事項は,付された重みとともに集計する。
2 5段階の重み付け
5はその設問の判断を大きく分ける核心,4は結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ,3は通常押さえる法的処理・事情の評価,2は論証を補強する説明・個別事情・補助的注意,1は補充的な引用・記述範囲の確認を示す。
重みは本記事の独自分析であり,法務省の公式配点・予測得点ではない。
重要度は重み1~5だけで示す。注意は項目の性質であり,自動的な低い重み又は別枠の減点ではない。条件付き項目は当該条件を満たす答案について評価し,採用しない理論・構成を累積して要求しない。段階ごとの件数や割合を先に割り当てず,重みの単純合計を公式配点,満点,予測得点又は合格可能性へ換算しない。
3 模範解答と解説
各子記事は,答案の前提・表記,枠内の答案及び枠外の解説を分ける。
問題の所在,規範,事実への適用及び結論を接続することが基本となるが,模範解答の立場や結論は設問の指定に応じて異なる。
例えば国際関係法(公法系)第2問では,設問1・2のB国と設問3のA国を区別する。
全科目の答案が一つの立場だけを採るとは一般化しない。
第5 重みの分布の比較
| 科目・問題 | 重み5 | 重み4 | 重み3 |
|---|---|---|---|
| 倒産法第1問 | 2 | 23 | 11 |
| 倒産法第2問 | 3 | 17 | 12 |
| 租税法第1問 | 3 | 13 | 9 |
| 租税法第2問 | 3 | 21 | 4 |
| 経済法第1問 | 4 | 18 | 8 |
| 経済法第2問 | 4 | 23 | 9 |
| 知的財産法第1問 | 3 | 28 | 8 |
| 知的財産法第2問 | 4 | 28 | 14 |
| 労働法第1問 | 4 | 19 | 6 |
| 労働法第2問 | 3 | 19 | 11 |
| 環境法第1問 | 3 | 29 | 8 |
| 環境法第2問 | 4 | 30 | 5 |
| 国際関係法(公法系)第1問 | 5 | 15 | 8 |
| 国際関係法(公法系)第2問 | 4 | 15 | 7 |
| 国際関係法(私法系)第1問 | 5 | 17 | 9 |
| 国際関係法(私法系)第2問 | 4 | 22 | 10 |
| 合計(16問) | 58 | 337 | 139 |
| 科目・問題 | 重み2 | 重み1 | 項目数 | 重みの合計 |
|---|---|---|---|---|
| 倒産法第1問 | 2 | 0 | 38 | 139 |
| 倒産法第2問 | 1 | 0 | 33 | 121 |
| 租税法第1問 | 6 | 0 | 31 | 106 |
| 租税法第2問 | 2 | 0 | 30 | 115 |
| 経済法第1問 | 2 | 0 | 32 | 120 |
| 経済法第2問 | 1 | 0 | 37 | 141 |
| 知的財産法第1問 | 2 | 0 | 41 | 155 |
| 知的財産法第2問 | 0 | 0 | 46 | 174 |
| 労働法第1問 | 1 | 0 | 30 | 116 |
| 労働法第2問 | 0 | 0 | 33 | 124 |
| 環境法第1問 | 1 | 0 | 41 | 157 |
| 環境法第2問 | 2 | 0 | 41 | 159 |
| 国際関係法(公法系)第1問 | 0 | 0 | 28 | 109 |
| 国際関係法(公法系)第2問 | 0 | 0 | 26 | 101 |
| 国際関係法(私法系)第1問 | 2 | 0 | 33 | 124 |
| 国際関係法(私法系)第2問 | 1 | 0 | 37 | 140 |
| 合計(16問) | 23 | 0 | 557 | 2101 |
参照する16記事の評価項目は計557項目であり,重み1=0項目,重み2=23項目,重み3=139項目,重み4=337項目,重み5=58項目となる。重みの単純合計は2101である。条件付き項目を一つの答案へ累積して要求せず,公式配点又は合格可能性を示す値として扱わない。
第6 関連記事
①令和3年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目
②令和7年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答と評価項目
③令和8年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の参考答案と予想評価項目
④法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧
⑤司法試験の採点実感から学ぶ法律文書の書き方―準備書面・意見書・相談メモのチェックリスト
⑥令和元年司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答と評価項目
令和8年度の選択科目ハブは,出題の趣旨・採点実感の公表前に作った参考答案を案内するものであり,本記事の模範解答16記事とは作成時の資料条件が異なる。
第7 出典
1 公式資料
①令和3年司法試験の実施について
②令和3年司法試験問題
③令和3年司法試験論文式試験問題・選択科目
④令和3年司法試験の結果について
⑤令和3年司法試験論文式試験問題出題趣旨
⑥令和3年司法試験の採点実感
⑦令和3年司法試験の採点実感・選択科目
2 確認状態
参照する16記事の評価項目は計557項目であり,重み1=0項目,重み2=23項目,重み3=139項目,重み4=337項目,重み5=58項目となる。重みの単純合計は2101である。条件付き項目を一つの答案へ累積して要求せず,公式配点又は合格可能性を示す値として扱わない。
本記事では裁判例の判旨を直接引用していない。
各問の法令・裁判例の版,実読範囲及び未確認の範囲は,子記事の出典及び確認状態を参照されたい。
評価項目の切り分け,重み付け,答案の論証及び本記事での比較の整理は,公式資料そのものとは区別される。