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令和3年司法試験倒産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した38項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和3年司法試験の倒産法第1問について,法務省の出題の趣旨及び採点実感から評価項目を抽出し,模範解答を示す。
評価項目と重みは本記事独自の分析であり,法務省の公式採点基準・配点ではない。

第1 この記事の対象と結論

本問の早見表
項目内容
対象令和3年度 倒産法第1問
問題・基準時問題文と設問の指定及び第7の出典・確認範囲による。問題の与件と指定された法令の時点を前提とする。
資料出題の趣旨・採点実感に基づく分析。版・対象範囲・留保は第7の確認状態を参照。
評価項目38項目(重み5:2項目)
重みの合計139(本記事独自の整理であり,公式の配点ではない。)
答案の字数2023字(答案部分の見出しを含み,空白・改行を除く可視文字数)
判例・法改正の留保第7の法令・裁判例と資料の範囲を参照。既存の確認日・参照頁・未確認部分の留保を引き継ぐ。
年度別の案内令和3年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答と評価項目(AI作成)

対象は令和3年司法試験論文式試験・選択科目の問題の倒産法第1問である。
請負契約解除後の代金処理と,振込時期の異なる二つの相殺場面を扱う。
設問1は民法642条の特則により既払5000万円の返還を要せず,未払1億円は破産債権となる。
設問2ではB銀行は相殺によって支払を拒絶でき,設問3では拒絶できない。

重み5は2項目である。該当項目は後掲の評価表の重み欄で示す。条件付き項目はその条件を満たす答案について評価し,採用しない経路を累積して要求しない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

各項目は一つの判定対象に整理し,必須,高評価,誤りの回避,許容分岐を区別した。
重みと区分は別であり,高評価事項を全答案に一律要求するものではない。
番号15は支払不能時点を5月31日とする構成と6月1日とする構成の許容幅であり,両方の結論を書く必要はない。
根拠欄の頁はPDFの実頁である。
「当該細目としての個別の明示なし」は倒産法第1問及び関連する共通記述を読んだ結果であり,未閲覧を意味しない。

2 5段階の重み付けの基準

①重み5:結論又は主要な法的判断の骨格となる核心事項。
②重み4:主要な理由付け・当てはめ。
③重み3:通常の法的処理・事情評価。
④重み2:補強・個別事情・注意。
⑤重み1:補充的記述。

重要度は重み1~5だけで示す。注意は項目の性質を示すものであり,自動的な低い重み又は別枠の減点を意味しない。条件付き項目はその適用条件を満たす答案について評価し,採用しない理論・構成の項目を累積して要求しない。各段階の件数に割当てを設けず,重みの単純合計を公式配点,満点,予測得点又は合格可能性へ換算しない。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

A社は倉庫の建設代金1億5000万円のうち5000万円を前払いし,E建設は工事を完成したが引渡しは終えていない。
一方,A社の水濡れ商品を買ったF商店は,B銀行・C信用金庫・D銀行の3口座のいずれかへ300万円を振り込むこととされた。
A社は融資を得られず買掛金の支払を徒過し,6月3日の内密の協議を経て8日に支払停止等の通知を発送し,9日にB銀行がこれを受領した。
15日に破産申立て,25日に開始決定がある。
3設問は独立し,設問2の振込日は5日,設問3は16日で申立てについてBが善意であった。

2 設問が求めること

設問が求めること
設問立場・対象指定・仮定・除外答えるべき到達点
設問1倉庫請負と注文者の破産完成済み・未引渡し。既払5000万円。民法642条の特則と既払・未払報酬の帰趨を示す。
設問25日の振込とB銀行の相殺各問は独立。通知発送と9日受領を区別。71条各号,支払不能と支払停止を順に検討する。
設問316日の振込と相殺Bは15日の申立てを知らない。4号不適用だけで止めず,3号と2項例外から終点を示す。

第4 評価項目と重み

1 設問1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1開始時にAの残代金支払義務とEの引渡義務が残り,双方未履行であると捉える。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。本件請負契約が双方未履行の状態にある誤答への批判・PDF実頁1:倉庫が完成したことだけで請負人の義務が履行済みとする答案への批判。引渡しが未了である点を踏まえ,民法642条1項本文を破産法53条1項の特則として検討する。
2民法642条1項本文を破産法53条1項の特則として適用し,両規律を任意選択の関係にしない。5関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。破産法第53条第1項の特則である民法第642条関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF1頁。「特則」の意義を理解していない
3【注意】解除が認められるという設問の仮定に従い,解除の可否そのものを長く論じない。2当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁20・21・22。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF2頁。破産管財人による解除が可能かどうかについて長々と論じている
4民法642条による解除の効果が出来高部分には及ばないと説明する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。Xによる解除の効果が出来高部分には及ばない関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF2頁。解除の効果が出来高部分には及ばない
5仕事完成債務の全部履行に対し,既払額は全報酬の3分の1にとどまると評価する。3関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。支払済みの報酬は5000万円(全体の3分の1)にすぎず関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF2頁。支払済みの報酬は全体の3分の1にすぎない
6既払5000万円について原状回復の必要がなく,返還・配当処理の対象とならないとする。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。原状回復の必要がない関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF2頁。破産手続における処理の対象とはならない
7未払1億円を民法642条2項の既にした仕事の報酬として破産債権に分類する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。「既にした仕事の報酬」に当たることから,破産債権関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF2頁。民法第642条第2項
8【注意】財団が財団債権者として自己に対する原状回復請求権を持つという主体の取り違えをしない。3当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁20・21・22。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF2頁。破産財団が財団債権として原状回復請求権を有する
9【注意】工事開始前の予算額登記という与件がないのに不動産工事の先取特権の成立を断定しない。2当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁20・21・22。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF2頁。工事開始前に予算額を登記することが必要

2 設問2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
10Bの貸金返還請求権を開始前の原因による破産債権(破産法2条5項)と位置付ける。3関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。貸金返還請求権は,破産手続開始前の原因に基づいて関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF2頁。破産法第2条第5項
11Bの預金払戻債務は6月5日の振込受入時に発生すると捉える。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。B銀行がA社に対して債務を負担誤答への批判・PDF実頁2:預金払戻債務の発生時期を払戻請求時とする答案への批判。消費寄託による寄託物の引渡しに伴う返還義務の発生を説明する。
12開始時の債権債務の対立を指摘し,破産法67条1項の原則的相殺権から検討を始める。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。破産法第67条第1項関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF2頁。同法第67条第1項により,原則として相殺が可能
1371条1項各号を個別に検討し,合理的期待の一般論だけで相殺可否を決めない。5関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。破産法第71条第1項各号の適用の有無誤答への批判・PDF実頁2:71条各号の適用を検討せず,一般論として相殺の合理的期待だけで結論を導く答案への批判。
14破産法2条11項を根拠に,支払能力を欠き期限到来債務を一般的・継続的に弁済できない状態を支払不能と定義する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。同法第2条第11項を摘示して支払不能の定義関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。同法第2条第11項
15【許容分岐】支払不能時点を5月31日又は理由を示して6月1日と認定し,振込がその後であると示す。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。同年6月1日との考え方もあり得る。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。同年6月1日との考え方もあり得る。
16融資不調・G以外の買掛金・借入金の弁済見込みの欠如を,一般性・継続性の要件に結び付ける。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。事例に掲げられた具体的な事実を拾い出して関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。「一般的かつ継続的」との要件への当てはめ
1771条1項2号は支払不能後の債務負担一般を禁ずるものではなく,加重要件により不当な相殺状態の作出を対象とすると説明する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。これらの加重要件が設けられている趣旨関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。評価に大きな差が生ずる論点となった
18専相殺目的は相殺権者Bの主観的意図を対象とすることを理解して検討する。3当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁20・21・22。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。相殺権者の主観的意図のみが問題となる
19Bの関与がなくFの口座選択による入金であることから,Bの専相殺目的を否定する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。B銀行の関与がなく,F商店の選択によって関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。B銀行の関与がなく,F商店の選択によって
20Fの振込にAの財産処分行為が介在せず,BがAと財産処分契約を締結した場合に当たらないと検討する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。破産者の財産の処分を内容とする契約関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。破産者の行為が介在しない
21Bが既発生のFの売買代金債務を引き受けたわけではないと検討する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。既に発生している他人の「債務を引き受ける」関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。既に発生している他人の「債務を引き受ける」ものではない
226月5日は開始前・申立前であり,71条1項1号・4号も適用されないと明示する。3関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。同項第1号,第3号及び第4号関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。同項第1号及び第4号の適用がないことは明らか
23支払停止を一般的・継続的な弁済不能の外部表示行為と定義し,客観的な支払不能と区別する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。外部に表示する行為関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。債務者の外部的態度
246月3日の内密の協議に外部表明性がなく,支払停止に当たらないと評価する。3当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁20・21・22。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。外部表明性がないとして支払停止に該当しない
25支払停止の時期は通知到達日の6月9日ではなく,発送日の6月8日と特定する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。令和2年6月8日に本件通知を発送したことが支払停止関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF3頁。通知の発送時である令和2年6月8日
266月5日は支払停止前であるから3号を排除し,まだない停止への悪意の有無を排除理由にしない。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF21頁。支払停止後の債務負担に当たらない関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF4頁。同月5日の時点で支払停止について悪意かどうかを論ずる余地はない
27禁止事由を全て排除した上で,Bは相殺により300万円の支払請求を拒絶できると答える。3当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁20・21・22。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF4頁。「拒絶することができる」とすべき

3 設問3

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
28申立後の6月16日の負担であっても,申立てを知らなかったため71条1項4号を適用しない。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF22頁。同号の適用はない関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF4頁。同号の適用はないとの論述
29【注意】申立予定の認識・重過失・合理的期待の欠如により,設問が明示する申立てについての善意を覆さない。3当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁20・21・22。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF4頁。問題文において明示されている指示を無視ないし曲解
30Bは9日に支払停止を知り,その後の16日に預金債務を負担したため71条1項3号が適用されるとする。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF22頁。支払停止後の債務負担に当たることから関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF4頁。破産法第71条第1項第3号の適用があるとした上で
31【注意】6月16日を6月25日の開始後と取り違えて71条1項1号を適用しない。3当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁20・21・22。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。誤答への批判・PDF実頁4:6月16日の債務負担を開始後と取り違えて71条1項1号を適用する答案への批判。開始日は6月25日である。
323号該当で終えず,71条2項各号の相殺禁止の例外を検討する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF22頁。同条第2項各号の適用の有無関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF4頁。同条第2項の相殺禁止の例外
332項2号の趣旨を,相殺の担保的効力に対する合理的期待の保護と説明する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF22頁。相殺の担保的効力に対する破産債権者の合理的な期待を保護関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF4頁。その趣旨に触れつつ
34前に生じた原因を,相殺期待を直接かつ具体的に基礎付ける原因に限定する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF22頁。期待を直接かつ具体的に基礎付ける関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF4頁。相殺の合理的な期待があるとする答案
35従前の当座取引関係と3口座からFが選べる事情を踏まえ,本件振込について具体的な相殺期待がないと評価する。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF22頁。事例に掲げられた具体的な事実に照らし関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF4頁。複数の金融機関の中から振込先として
36Bが主要取引銀行であるだけの入金期待は抽象的であり,例外の根拠にはならないと検討する。3当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁20・21・22。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF4頁。抽象的な期待にとどまるもの
37【注意】振込預金債務を停止条件付債務と決め付け,67条2項だけで相殺可否を処理しない。3当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁20・21・22。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。誤答への批判・PDF実頁4:預金払戻債務を停止条件付債務として67条2項だけで処理する答案への批判。
384号不適用でも3号と2項の検討を経て,相殺では支払請求を拒絶できないと答える。4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):PDF22頁。基本的には消極の方向で結論誤答への批判・PDF実頁4:71条1項4号を否定しただけで,3号を検討せず相殺を肯定する答案への批判。

4 重みの分布

重み1:0項目,2:2項目,3:11項目,4:23項目,5:2項目である。
総数は0+2+11+23+2=38,重み合計は1×0+2×2+3×11+4×23+5×2=139となる。

番号2:民法642条1項本文を破産法53条1項の特則として適用し,両規律を任意選択の関係にしない。
本設問の処理を支える骨格として重み5とした。
適用条件は,本設問の標準ルートに適用。

番号13:71条1項各号を個別に検討し,合理的期待の一般論だけで相殺可否を決めない。
本設問の処理を支える骨格として重み5とした。
適用条件は,本設問の標準ルートに適用。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

問題文の指定に従い,令和3年5月12日の試験時施行法を用いる。
答案の文字数は改行・空白を含めて2,056字,空白を除くと2,023字であり,2,500字以内である。
設問1は解除が認められるという仮定に従う。
本文中の条文引用は同日時点の民法及び破産法である。

2 答案

1 設問1

(1) 本件では,A社には残代金1億円の支払義務が,E建設には完成した倉庫の引渡義務が残る。
したがって,開始時に双方未履行である。
注文者の破産については,破産法53条1項の特則である民法642条1項本文が適用される。
設問は解除が認められることを前提としており,その効果を検討する。

(2) 民法642条2項は,既にした仕事の報酬について請負人が破産財団の配当に加入できるとする。
既履行部分を清算の基礎として維持する規定であるから,同条による解除の効果は出来高部分には及ばない。

本件では,E建設は仕事完成債務の全部を履行しているのに対し,既払報酬5000万円は全報酬1億5000万円の3分の1にすぎない。
既払額は完成済みの仕事の報酬として保持されるから,原状回復を要せず,Xは解除を理由とする返還を求められない。
既払5000万円は破産手続における処理の対象とはならない。

他方,未払1億円は,既に完成した仕事に対する報酬であり,同条2項の「既にした仕事の報酬」に当たる。
したがって,E建設は破産債権者として配当に加入する。
これは同条3項の解除による損害賠償債権ではなく,管財人の解除から生じたことを理由に財団債権とすることもできない。

2 設問2

(1) B銀行の貸金返還請求権5000万円は,破産手続開始前の原因に基づく財産上の請求権であり,財団債権ではないから,破産債権に当たる(破産法2条5項)。
Bは6月5日の振込受入時にA社に対する預金払戻債務300万円を負担し,開始時には相互の債権が対立している。
よって,67条1項により,原則として対当額で相殺できるが,71条1項各号による禁止を検討する。

(2) まず,同項2号について,支払不能とは,支払能力を欠くため,弁済期にある債務を一般的かつ継続的に弁済できない状態をいう(2条11項)。

A社は3金融機関への融資申込みが実らず,5月31日のG木工への支払を徒過し,他の仕入先への買掛金も借入金も弁済のめどがない。
一債務の一時的な遅延にとどまらず,支払手段の調達も見込めないから,同日時点で支払不能であった。
6月5日の債務負担はその後である。

しかし,同号は,支払不能後の債務負担一般を禁ずるものではなく,専ら相殺に供する目的で破産者との財産処分契約等により相殺状態を不当に作出する場合を規制する。
専相殺目的はBの主観的意図の問題である。
本件振込にはBの関与がなく,Fが3口座からBを選択したにすぎず,Bに専相殺目的は認められない。
また,Fの振込にA社の財産処分行為は介在せず,BがA社との間で財産処分契約を締結したものではない。
Bが負担するのは新たな預金払戻債務であり,既発生のFの売買代金債務を引き受けたものでもない。
したがって,同号は適用されない。

(3) 次に,支払停止とは,債務者が支払能力の欠如により債務を一般的かつ継続的に弁済できないと考え,その旨を外部に表示する行為をいう。

6月1日の経理担当者は事務ミスを理由として近日中の支払を約束しており,そのような表示はない。
3日の協議も参加した経営陣とH限りの秘密で,外部表明性を欠く。
支払停止に当たるのは,破産申立予定及び支払停止を記した通知を外部へ発送した8日であり,Bへの到達日9日とは区別される。

したがって,5日の負担は支払停止前であり,同項3号は適用されない。
また,開始前なので1号,申立前なので4号にも当たらない。
以上より,Bは300万円を相殺し,Xの支払請求を拒絶できる。

3 設問3

(1) 6月16日の振込受入れは15日の申立後であるが,Bが申立てを知らなかったとの設問の前提に従えば,71条1項4号は適用されない。
申立予定の認識と申立ての認識は異なる。

もっとも,8日に支払停止があり,Bは9日の通知到達によりこれを知った後,16日に預金払戻債務を負担したから,同項3号本文が適用される。
A社は支払不能であり,同号ただし書にも当たらない。
なお,25日の開始前であるから1号は適用されない。

(2) そこで,71条2項の例外を検討する。
預金債務は契約に基づき負担するもので,1号の法定の原因には当たらない。

2号は,相殺の担保的効力に対する合理的期待を保護する規定であるから,「前に生じた原因」は,その期待を直接かつ具体的に基礎付けるものでなければならない。

従前の当座取引契約があっても,個別の預金債務は振込受入れにより発生する。
FはC信用金庫又はD銀行の口座も選べたので,Bへの入金は確定していない。
Bが主要取引銀行であることも,FがBを選ぶという抽象的期待にとどまり,具体的な相殺期待を基礎付けない。
したがって,2号の原因に当たらない。
3号についても,古い基本契約の存在だけでは,本件の個別預金債務が申立ての1年以上前に生じた原因に基づくとはいえない。

(3) よって,相殺禁止の例外は認められず,Bは相殺により300万円の支払請求を拒絶できない。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

評価項目と答案の対応表

重み5・4及び条件付きの項目の参照箇所を示す。注意は誤った記述を避けるための項目であり,別構成の記載を一律に求めるものではない。
表に掲げない重み3以下の番号は,3・8~9・18・24・27・29・31・36~37である。対応する設問の答案と,以下の解説を併せて参照する。

評価項目と答案の対応(重み5・4及び条件付きの項目)
番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
14開始時にAの残代金支払義務とEの引渡義務が残り,双方未履行であると捉える。答案1
25民法642条1項本文を破産法53条1項の特則として適用し,両規律を任意選択の関係にしない。答案1
44民法642条による解除の効果が出来高部分には及ばないと説明する。答案1
53仕事完成債務の全部履行に対し,既払額は全報酬の3分の1にとどまると評価する。答案1
64既払5000万円について原状回復の必要がなく,返還・配当処理の対象とならないとする。答案1
74未払1億円を民法642条2項の既にした仕事の報酬として破産債権に分類する。答案1
103Bの貸金返還請求権を開始前の原因による破産債権(破産法2条5項)と位置付ける。答案2
114Bの預金払戻債務は6月5日の振込受入時に発生すると捉える。答案2
124開始時の債権債務の対立を指摘し,破産法67条1項の原則的相殺権から検討を始める。答案2
13571条1項各号を個別に検討し,合理的期待の一般論だけで相殺可否を決めない。答案2
144破産法2条11項を根拠に,支払能力を欠き期限到来債務を一般的・継続的に弁済できない状態を支払不能と定義する。答案2
154【許容分岐】支払不能時点を5月31日又は理由を示して6月1日と認定し,振込がその後であると示す。答案2。条件・構成の選択は評価項目欄及び従来の解説による。別構成を累積要求しない。
164融資不調・G以外の買掛金・借入金の弁済見込みの欠如を,一般性・継続性の要件に結び付ける。答案2
17471条1項2号は支払不能後の債務負担一般を禁ずるものではなく,加重要件により不当な相殺状態の作出を対象とすると説明する。答案2
194Bの関与がなくFの口座選択による入金であることから,Bの専相殺目的を否定する。答案2
204Fの振込にAの財産処分行為が介在せず,BがAと財産処分契約を締結した場合に当たらないと検討する。答案2
214Bが既発生のFの売買代金債務を引き受けたわけではないと検討する。答案2
2236月5日は開始前・申立前であり,71条1項1号・4号も適用されないと明示する。答案2
234支払停止を一般的・継続的な弁済不能の外部表示行為と定義し,客観的な支払不能と区別する。答案2
254支払停止の時期は通知到達日の6月9日ではなく,発送日の6月8日と特定する。答案2
2646月5日は支払停止前であるから3号を排除し,まだない停止への悪意の有無を排除理由にしない。答案2
284申立後の6月16日の負担であっても,申立てを知らなかったため71条1項4号を適用しない。答案3
304Bは9日に支払停止を知り,その後の16日に預金債務を負担したため71条1項3号が適用されるとする。答案3
3243号該当で終えず,71条2項各号の相殺禁止の例外を検討する。答案3
3342項2号の趣旨を,相殺の担保的効力に対する合理的期待の保護と説明する。答案3
344前に生じた原因を,相殺期待を直接かつ具体的に基礎付ける原因に限定する。答案3
354従前の当座取引関係と3口座からFが選べる事情を踏まえ,本件振込について具体的な相殺期待がないと評価する。答案3
3844号不適用でも3号と2項の検討を経て,相殺では支払請求を拒絶できないと答える。答案3。条件・構成の選択は評価項目欄及び従来の解説による。別構成を累積要求しない。

(1) 答案と評価項目の対応

答案1は番号1~9,答案2は番号10~27,答案3は番号28~38に対応する。
注意のうち,先取特権の成立等は無理に答案へ追加せず,誤った認定をしないことを確認する。

(2) 設問1の特則と出来高

番号2では,民法642条を指摘するだけでなく,破産法53条との特則関係を処理する必要がある。
同じ問題で両者を任意に選べる構成として並べると,既払金の返還と未払代金の残存という効果が混在する。
番号4・7の骨格に従い,完成済みの仕事の報酬として既払金を維持し,未払報酬を同条2項の破産債権に分類する。
番号5の具体的な比較は,完成債務の全部履行に対して支払額が3分の1にとどまるという事実評価である。

(3) 設問2の加重要件と外部表示

番号13・17では,67条から直ちに相殺可能とせず,71条1項各号と2号固有の加重要件を検討する。
支払不能の認定は通知の発送を待たず,番号16の一般性・継続性を具体的事情から評価する。
Bの関与がないことに加え,Fの債務を引き受けたわけではないことまで区別すると,条文の二つの契約類型を検討したことが明確になる。
支払停止は8日の発送行為,Bの知情は9日の受領であり,両者を同じ時点にしない。

(4) 設問3の残存禁止と合理的期待

番号30は,4号が適用されなくても3号の相殺禁止が残るという骨格である。
番号33・34は,従前の取引関係というラベルから,合理的な相殺期待を直接かつ具体的に基礎付ける原因へ検討を進めることを求める。
主要取引銀行であることによる期待は,3口座の選択権を持つFの行動を確定するものではない。

(5) 答案の弱点と扱わなかった事項

答案では,設問の終点である既払・未払代金の処理と支払請求の拒絶可否を優先した。
工事先取特権については事前登記の与件がなく,成立を追加していない。
民法642条3項の解除損害や倉庫所有権の一般論は,代金処理と区別した範囲にとどめる。
71条2項1号・3号は全号確認のため簡潔に処理し,中心である同項2号の検討を厚くした。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の別の模範解答

①令和3年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目(AI作成)
②司法試験の過去問・参考答案一覧(AI作成)
③令和3年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答と評価項目(AI作成)
④令和3年度司法試験倒産法第2問の模範解答と評価項目(AI作成)

2 同じ科目の別の年度の記事

3 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①倒産事件の実務メモ―破産・個人再生・私的整理(AIリライト)
後年の実務解説を本問の試験時法令の根拠として用いるものではない。

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①令和3年司法試験論文式試験問題・選択科目:PDF2~3頁の倒産法第1問。
②令和3年司法試験論文式試験問題出題趣旨:PDF20頁の倒産法見出しから22頁の第2問直前まで。
③令和3年司法試験の採点実感・選択科目:PDF1~4頁の倒産法第1問及び7頁の関連共通事項。
採点実感の法務省掲載ページから資料の対象年度を確認した。

2 法令

①破産法・令和3年4月28日施行版:2条・53条・54条・67条・71条。
②民法・令和3年4月28日施行版:633条・642条。
e-Govの施行履歴と法令本文を照合している。

3 裁判例

本稿の答案は条文と上記公式資料の要求に基づき,特定判決の未確認の書誌を根拠として掲げていない。
支払不能と支払停止の区別,及び相殺禁止規定の各号の検討は,条文と問題文の事実に沿って示した。

4 確認状態

公式資料の状態
資料状態確認範囲・留保
問題実読済み法務省公表の問題PDFの全頁を確認した。
出題の趣旨実読済み法務省公表の出題の趣旨PDFの全頁を確認した。出典欄は,原文の引用と記事による要約・細分化を区別して示す。
採点実感実読済み法務省公表の採点実感PDFの全頁を確認した。「当該細目としての個別の明示なし」は,関連する記述まで存在しないという意味ではない。

資料は,法務省公表の問題・出題の趣旨・採点実感による。
評価項目の区切りと重みは記事独自の整理であり,公式の採点項目・配点を示すものではない。
出典欄は原文の引用と関連記述の要約を区別し,条件付きの項目はその条件を満たす構成に適用する。

法令の施行版と引用箇所は一次資料で確認した。
公式資料の評価内容は資料の記載として区別し,本記事の項目分割・重み付け・答案の構成は独自の分析である。
本稿の項目数や重み合計から公式得点又は合格可能性を推定することはできない。