倒産事件に関するメモ書き

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目次
1 信販会社による留保所有権の行使
2 大阪地裁の破産事件において0円評価となる自動車
3 破産事件に関する電気代,ガス代,携帯電話代及び水道代の取扱い
4 破産管財人による帳簿類の保管
5 個人再生に関するメモ書き
6 関連記事その他

1 信販会社による留保所有権の行使
・ 信販会社のために破産者の購入した普通自動車に所有権留保がされている場合,信販会社が別除権者として管財人に対して権利を行使することができるかに関する取扱いは以下のとおりと思います。
① 当初から所有者の登録が信販会社とされている場合,管財人に対して権利を行使できることに問題ありません(破産管財手続の運用と書式[第3版]159頁)。
② 販売会社,信販会社及び購入者の三者間において,販売会社に売買代金残額の立替払をした信販会社が,販売会社に留保された自動車の所有権について,売買代金残額相当の立替金債権に加えて手数料債権を担保するため,販売会社から代位によらずに移転を受け,これを留保する旨の合意がされたと解される場合(実務的には,信販会社が購入者の連帯保証人をしていない場合),信販会社は別除権者として管財人に対して権利を行使することはできません(最高裁平成22年6月4日判決)。
③ 自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権が売買代金債権を担保するため販売会社に留保される旨の合意がされ,売買代金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払った後,購入者の破産手続が開始した場合(実務的には,信販会社が購入者の連帯保証人をしている場合)において,その開始の時点で当該自動車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは,保証人は,上記合意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができます(最高裁平成29年12月7日判決)。
→ 保証人は,自動車につき保証人を所有者とする登録なくして,販売会社から法定代位により取得した留保所有権を別除権として行使することができるということです。


2 大阪地裁の破産事件において0円評価となる自動車
(1) 大阪地裁第6民事部(倒産部)の運用として,破産管財手続の運用と書式[第3版]76頁には以下の記載があります。
a 評価額
    白動車は,査定評価額が評価額となる。
    しかし,普通自動車で初年度登録から7年,軽自動車・商用の普通自動車で5年以上を経過しており,新車時の車両本体価格が300万円未満であって,外国製自動車でない場合には,損傷状況や付属品等からみて価値があるとうかがわせる特段の事情がない限り,査定評価を受けることなく0円と評価してよい。
(2)ア 普通自動車の初年度登録がいつであるかについては,車検証記載の「初度登録年月」を見れば分かります(保険の窓口インズウェブHP「車の初度登録年月とは?どこで確認できる?」参照)。
イ 検査対象軽自動車の場合,自動車登録制度(道路運送車両法4条)の適用がないため,新規検査(道路運送車両法59条)の年月である,初度検査年月から5年以上が経過していれば原則として0円評価になります。
    なお,検査対象軽自動車の初度検査年月がいつであるかについては,車検証記載の「初度検査年月」を見れば分かります。(生駒市HPの「【軽自動車税】初度検査年月とは、何ですか?」参照)。
ウ 250CC以下のバイクについては車検証がないのであって,①50CCから125CCまでのバイクについては標識交付証明書が交付され(登録申告済証といった書類で代用されていることがあります。),②125CCから250CCまでのバイクについては軽自動車届出済証が交付されます。
(3)  動産の購入代金を立替払し立替金債務の担保として当該動産の所有権を留保した者は,第三者の土地上に存在しその土地所有権の行使を妨害している当該動産について,その所有権が担保権の性質を有することを理由として撤去義務や不法行為責任を免れることはできません(最高裁平成21年3月10日判決)。


3 破産事件に関する電気代,ガス代,携帯電話代及び水道代の取扱い
(1) 破産法55条1項は「破産者に対して継続的給付の義務を負う双務契約の相手方は、破産手続開始の申立て前の給付に係る破産債権について弁済がないことを理由としては、破産手続開始後は、その義務の履行を拒むことができない。」と定めていますから,破産手続開始決定後につき,破産手続開始決定前に電気代,ガス代,携帯電話代又は水道代を滞納していたことを理由として,電気,ガス,携帯電話又は水道の供給を停止されることはないですそこが知りたい!借金問題HP「自己破産したらガス、電気は止められるの?」参照)。
(2)ア 破産手続開始の申立日及び決定日が属する月の電気代,ガス代,携帯電話代及び上水道代は財団債権となります(破産法55条2項参照)。
イ 下水道代は租税等の請求権となる(地方税法231条の3第3項・附則6条3号)ために破産手続開始決定の1年以上前のものだけが破産債権となり,その後に発生したものは財団債権となります(破産法148条1項1号参照)。
(3)ア 破産手続開始決定開始決定前に発生した電気代,ガス代,携帯電話代及び上水道代は破産法55条2項により財団債権となった部分も含めて免責許可決定により免責されます。
    つまり,破産手続開始決定後の代金を支払えば,電気,ガス及び水道の供給を維持できるということです(弁護士江木大輔のブログ「水道・下水道料金と破産法の規定など」参照)。
イ 下水道代は租税等の請求権となるため,そのすべてが非免責債権です(破産法253条1項1号)。
(4) 破産実務Q&A220問117頁には以下の記載があります。
    債務者が個人の場合は携帯電話やインターネットを継続利川したいと希望するケースが多いと思われます。管財業務には不要ですので利用料を財団債権として破産財団から支弁することはできませんが、契約を継続したままにして破産者に利川料を負担してもらう対応が考えられます。


4 破産管財人による帳簿類の保管
(1) 破産事件における書記官事務の研究-法人管財事件を中心として-308頁には以下の記載があります(ただし,平成29年の債権法改正により民法171条を含む短期消滅時効に関する条文は削除され,消滅時効期間は一律に5年又は10年となっています(民法166条1項)。)。
    商人は,帳簿閉鎖の時から10年間,その商業帳簿及びその営業に関する重要な資料を保存しなければならない(商法19Ⅲ)。
    株式会社及び持分会社は,会計帳簿の閉鎖の時から10年間,その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない(会社432Ⅱ, 615Ⅱ)。
    一般社団法人及び一般財団法人は,会計帳簿の閉鎖の時から10年間,その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない(一般法人120Ⅱ,199)。
    清算人は,清算株式会社の清算結了の時から10年間,その帳簿並びに清算に関する重要な資料を保存しなければならない(会社5081)。
    これらの規定によると,破産管財人が破産者から引渡しを受けた商業帳簿類は,破産手続終了後も保存すべきものであり,破産手続終了に伴い,保存義務が破産管財人から破産者に移ると考えられる。
◯ しかし,実務においては,破産者代表者や破産者本人の所在不明,引取り拒否などにより引渡しできない場合がある。このような場合には,会社法508条2項の帳簿資料を保存する者の選任申立てが認められるなどしない限り,破産管財人が破産手続終了前に保管料・処分費用につき裁判所から財団債権の承認を得て,倉庫業者等に寄託することになる。破産財団の費用負担を考慮して,重要でないものは破棄し,保存する帳簿類についても3年間保存した後(民法171を根拠にしていると思われる。)は廃棄して差し支えないものとする運用がある。重要でないものは裁判所の許可の下に廃棄し,重要な帳簿のみ保存期間を1年から3年の範囲で認め,その期間経過後は裁判所の許可を得て廃棄するという運用もある。
(2) 破産事件21のメソッド67頁には以下の記載があります。
    各種法令をみると、書類の保存期間は、商法・会社法は上記のとおり10年ですが、税法上は7年となっているものが多く、労働関係は3年、社会保険関係は2年となっているものが多いです(あくまで目安です。また同じ書類の保存期間が社会保険関係と税法で異なる場合もあります)。実務上破産手続終了後も参照する必要性が生じる可能性が高いのは労働・社会保険関係だと思われますので、3年は今後も保存期間の一つの目安になると思われます。


5 個人再生に関するメモ書き
(1) 民事再生法174条2項3号所定の「再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき」には,議決権を行使した再生債権者が詐欺,強迫又は不正な利益の供与等を受けたことにより再生計画案が可決された場合はもとより,再生計画案が信義則に反する行為に基づいて可決された場合も含まれます(最高裁平成20年3月13日決定)。
(2)  小規模個人再生において,再生債権の届出がされ(民事再生法225条により届出がされたものとみなされる場合を含む。),一般異議申述期間又は特別異議申述期間を経過するまでに異議が述べられなかったとしても,住宅資金特別条項を定めた再生計画案の可決が信義則に反する行為に基づいてされた場合に当たるか否かの判断に当たっては,当該再生債権の存否を含め,当該再生債権の届出等に係る諸般の事情を考慮することができます(最高裁平成29年12月19日決定)。



6 関連記事その他

(1) 破産手続開始前に成立した第三者のためにする生命保険契約に基づき破産者である死亡保険金受取人が有する死亡保険金請求権は,破産法34条2項にいう「破産者が破産手続開始前に生じた原因に基づいて行うことがある将来の請求権」に該当するものとして,上記死亡保険金受取人の破産財団に属します(最高裁平成28年4月28日判決)。
(2) 大阪地裁第6民事部(倒産部)が執筆した「はい6民です お答えします vol.271」には「親族等の協力が得られるなら、当該協力者が直接第三者弁済をするのであれば偏頗弁済の問題にはなりません」とか,「せっかく協力者が資金を提供しても、いったん申立人がこれを受け取って自分で弁済してしまうと、やはり偏頗弁済となってしまいます。」と書いてあります(月刊大阪弁護士会2022年5月号56頁)。
(3) 破産手続中,破産債権者は破産債権に基づいて債務者の自由財産に対しても強制執行をすることはできません(最高裁平成18年1月23日判決参照)。
(4) 株式会社の清算人の員数は,法律上必ずしも2人以上であることを要せず,1人しか選任されなったときは,同人が当然にその会社を代表する権限を有します(最高裁昭和46年10月19日判決)。
(5)ア 以下の資料を掲載しています。
・ 差押禁止債権が振り込まれた預貯金口座に係る預貯金債権の差押えについて(令和2年1月31日付の国税庁徴収部長の指示)
→ 大阪高裁令和元年9月26日判決(裁判長は36期の中村也寸志裁判官)を踏まえた取扱いを指示した文書です。
イ 以下の記事も参照してください。
・ 破産管財人の選任及び報酬
・ 司法研修所弁護教官の業務は弁護士業務でないものの,破産管財人として行う業務は弁護士業務であること
・ 大阪弁護士会の負担金会費
→ 大阪弁護士会所属の弁護士が破産管財人報酬を受領した場合,税抜価格の7%を負担金会費として大阪弁護士会に支払う必要があります。

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