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令和3年司法試験経済法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した37項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和3年司法試験経済法第2問について,公式の出題の趣旨・採点実感から独自に抽出した37の評価項目と,2500字以内の答案例を示す。
重み1~5は本記事の分析であり,法務省の公式採点基準・配点ではない。

第1 この記事の対象と結論

対象は令和3年司法試験論文式試験・選択科目の経済法第2問である。
出題の趣旨と採点実感を踏まえ,設問1では措置1の競争者に対する取引妨害と措置2の拘束条件付取引を,設問2では措置全体の排除型私的独占を検討する。
評価項目は37項目,重み5は14項目である。
第5には2188字の完成答案と,条件付きの別構成・数値の読み方を説明する解説を置く。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

各項目は公式資料の該当範囲から,一つの判定対象に一つの番号を付けて抽出・具体化したものである。
条文選択の許容幅,優れた理由付け,典型的な誤りの回避も含む。
表の番号は記事全体で連続する。

根拠欄の頁はリンク先の合冊PDFの実頁である。
「記載なし」は対象範囲を読んだ上で直接の対応記述がないもの,「間接」は共通方針や関連説明から当該評価へ具体化したものを指す。
公式資料の記載と,本記事の評価項目化・重み付けを区別する。

標準構成以外を採る場合にだけ適用される番号7・8・25・28・37を,全答案へ累積的に要求するものではない。
負例のうち正しい論証の裏返しになるものは,番号15・16・30・35などの項目文へ含めた。
独立した注意点である番号18と26には個別の重みを付けた。

2 5段階の重み付けの基準

重み5は答案の骨格そのもの,又は採点実感が示す評価の分かれ目である。
重み4は,出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項とする。
重み3は一方の資料が明示する中核の理由付け,重み2は一方が触れる補強や典型的な誤り,重み1は一方が控えめに触れるだけの事項である。
必須・高評価・負例・許容分岐という区分と,重みの大小は別の軸である。

第3 本問の概要

甲製品は固有の機能・効用と公的な安全規格を持ち,代替品がない。
令和元年の国内販売台数シェアはX社45%,A社25%,B社15%,低価格を特徴とする新規参入Y社15%である。
併売が一般的な販売店の助言・推奨が,需要者のメーカー選択を左右する。

措置1は,Y社製品の積極的推奨を続ける販売店への不利益の示唆と実施である。
措置2は,特約店の専属的推奨の約束を条件とする累進リベートと,監視・指導・支援削減による実効確保である。
設問2では,令和3年5月までに約束率が特約店の約70%に達し,競争各社の販売に影響が出て,X社のシェアが60%となる一方,価格水準が従来のまま安定しているという追加事情が与えられる。

第4 評価項目と重み

1 共通の構造と市場

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1設問1の各措置を19条,設問2の全体を3条へ対応させ,効果の強度を区別する。528頁・第2問(規範・当てはめ)13頁・採点方針(規範・当てはめ)
2競争に影響する商品・地域の範囲を基準として,設問1の効果分析に先立って市場を画定する。429頁・第2問(規範・当てはめ)13頁・採点方針(規範・当てはめ)
3機能・効用の固有性,代替品不存在,公的規格及び国内供給から国内甲製品製造販売市場を画定する。429頁・第2問(規範・当てはめ)17頁・第2問(規範・当てはめ)

2 設問1・措置1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
4一般指定4・2・14項から事実に適合する類型を一つ選び,19条へ接続する。528頁・第2問(規範・当てはめ)16頁・第2問(規範・当てはめ)
5一般指定14項を選ぶ場合,XとYの国内競争関係を特定する。3間接:28頁・第2問(規範・当てはめ)間接:17頁・第2問(規範・当てはめ)
6推奨抑制によるYと販売店との取引の妨害を,推奨と需要獲得のつながりから説明する。429頁・第2問(規範・当てはめ)間接:17頁・第2問(規範・当てはめ)
712項を選ぶ場合,拘束する相手方の範囲・具体的条件・実効性を示す。【条件:措置1に12項を採る場合のみ】428頁・第2問(構成の許容範囲)17頁・第2問(構成の許容範囲)
811項を選ぶ場合,Y推奨をしないことを取引しないことと同視する理由を示す。【条件:措置1に11項を採る場合のみ】428頁・第2問(構成の許容範囲)17頁・第2問(構成の許容範囲)
9公正競争阻害性を排除・市場閉鎖による自由競争減殺と捉え,実質的制限の前段階又は危険性で足りると示す。528頁・第2問(規範・当てはめ)17頁・第2問(規範・当てはめ)
10不利益の現実化と情報流布から,個別の圧力が他の取引先へ広がる過程を説明する。529頁・第2問(具体的な論証)間接:17頁・第2問(具体的な論証)
11Xの45%シェア・ブランド力・取扱不可欠性・支援の重要性を,圧力を無視できない理由へつなぐ。4間接:27頁・第2問(規範・当てはめ)間接:17頁・第2問(規範・当てはめ)
12低価格Yの推奨中止・取扱断念から,競争者の販路縮小のおそれを導く。429頁・第2問(規範・当てはめ)間接:17頁・第2問(規範・当てはめ)
13対抗自体は許されても,総合メーカーの地位による狙い撃ちは通常の競争を超えるとして正当化を検討する。329頁・第2問(規範・当てはめ)記載なし

3 設問1・措置2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
14約束と取引条件の関係から12項の拘束条件付取引を選び,19条へ接続する。528頁・第2問(規範・当てはめ)16頁・第2問(規範・当てはめ)
15併売下の専属的推奨と取引禁止の相違を,11項との識別に用いる。428頁・第2問(規範・当てはめ)17頁・第2問(規範・当てはめ)
16経済的不利益による実効性を拘束の基準とし,監視・指導・不供与・支援削減を当てはめる。528頁・第2問(規範・当てはめ)間接:17頁・第2問(規範・当てはめ)
17増販率による累進性と全家庭用電動器具仕入額の計算基礎から,強い誘因を説明する。4間接:29頁・第2問(規範・当てはめ)間接:17頁・第2問(規範・当てはめ)
18全家庭用電動器具を基礎にするリベートを,理由なく甲製品だけの対価修正と扱わない。2記載なし17頁・第2問(誤りの指摘)
19代替取引先を容易に確保できず競争者の取引機会が減少するおそれを市場閉鎖の基準として示す。429頁・第2問(規範・当てはめ)間接:17頁・第2問(規範・当てはめ)
20約束と実効確保手段により措置1より強い制約が働くことを比較する。329頁・第2問(具体的な論証)記載なし
21推奨による需要選択の下で,専属推奨が実質的専売店化へつながる過程を説明する。529頁・第2問(具体的な論証)間接:17頁・第2問(具体的な論証)
22特約店割合と約束割合により影響範囲を検討し,分母を市場全体の販売量と取り違えない。3間接:29頁・第2問(具体的な論証)記載なし
23Yの既存取扱店の限定性と新規獲得への懸念を代替流通確保の困難へ接続する。429頁・第2問(規範・当てはめ)間接:17頁・第2問(規範・当てはめ)
24リベートによる販促という反対論と,排他的推奨・総合取引利益による制限の正当化を区別する。329頁・第2問(規範・当てはめ)記載なし
2511項を選ぶ場合,専属推奨を競争者と取引しない条件と同視できる理由を示す。【条件:措置2に11項を採る場合のみ】428頁・第2問(構成の許容範囲)17頁・第2問(構成の許容範囲)
26設問1の資料不足を無視して価格維持効果だけで違反を導かず,市場閉鎖を検討する。229頁・第2問(誤りの指摘)17頁・第2問(誤りの指摘)

4 設問2・措置全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
27追加事情の下で措置全体を私的独占として検討し,19条だけで終わらない。529頁・第2問(規範・当てはめ)18頁・第2問(規範・当てはめ)
28支配型を採る場合,支配の意義と程度を示し具体的事実を当てはめる。【条件:支配型を採る場合のみ】3記載なし13頁・採点方針(構成の許容範囲)
29排除について,正常な競争手段を逸脱する人為性と参入等を著しく困難にする効果を示す。529頁・第2問(規範・当てはめ)18頁・第2問(規範・当てはめ)
30総合メーカーの地位と利益・不利益の組合せによる人為性を,単なる19条違反と同視せず説明する。529頁・第2問(規範・当てはめ)間接:18頁・第2問(規範・当てはめ)
31約束率70%への増加とY・A・Bへの影響を追加的排除効果の判断に組み込む。5間接:29頁・第2問(具体的な論証)間接:18頁・第2問(具体的な論証)
32設問1と同じ市場を一定の取引分野とし,商品・地域の画定を一貫させる。429頁・第2問(規範・当てはめ)間接:18頁・第2問(規範・当てはめ)
33競争の実質的制限を価格等をある程度自由に左右できる市場支配的状態の形成・維持・強化と示す。529頁・第2問(規範・当てはめ)18頁・第2問(規範・当てはめ)
34Y参入前の限定的価格競争,Y伸長とX漸減,措置後の変化を期間も含めて比較する。529頁・第2問(具体的な論証)18頁・第2問(具体的な論証)
3560%シェアだけでなく販路停滞・他社販売減少・価格維持から競争圧力低下と市場支配力を論証する。529頁・第2問(具体的な論証)間接:18頁・第2問(具体的な論証)
36公共の利益に反しない特段の事情がないことを簡潔に示し,3条違反へ接続する。329頁・第2問(規範・当てはめ)記載なし

5 構成の許容幅

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
37標準類型以外にも論証に応じた評価の余地があり,別構成を唯一解として一律排除しない。【条件:別構成の評価に言及する場合】328頁・第2問(構成の許容範囲)19頁・第2問(構成の許容範囲)

6 重みの分布

重み1は0項目,重み2は2項目,重み3は8項目,重み4は13項目,重み5は14項目である。
総項目数は37,重みの単純合計は150である。
これは公式の得点,科目の難易度又は合格可能性を表す数値ではない。

重み5に当たる事項と対応番号は次のとおりである。

番号1:設問1の各措置を19条,設問2の全体を3条へ対応させ,効果の強度を区別する。(適用:全答案)

番号4:一般指定4・2・14項から事実に適合する類型を一つ選び,19条へ接続する。(適用:標準構成・全類型の累積検討は不要)

番号9:公正競争阻害性を排除・市場閉鎖による自由競争減殺と捉え,実質的制限の前段階又は危険性で足りると示す。(適用:全答案)

番号10:不利益の現実化と情報流布から,個別の圧力が他の取引先へ広がる過程を説明する。(適用:全答案)

番号14:約束と取引条件の関係から12項の拘束条件付取引を選び,19条へ接続する。(適用:標準構成)

番号16:経済的不利益による実効性を拘束の基準とし,監視・指導・不供与・支援削減を当てはめる。(適用:全答案)

番号21:推奨による需要選択の下で,専属推奨が実質的専売店化へつながる過程を説明する。(適用:全答案)

番号27:追加事情の下で措置全体を私的独占として検討し,19条だけで終わらない。(適用:全答案)

番号29:排除について,正常な競争手段を逸脱する人為性と参入等を著しく困難にする効果を示す。(適用:排除型を採る場合)

番号30:総合メーカーの地位と利益・不利益の組合せによる人為性を,単なる19条違反と同視せず説明する。(適用:排除型を採る場合)

番号31:約束率70%への増加とY・A・Bへの影響を追加的排除効果の判断に組み込む。(適用:排除型を採る場合)

番号33:競争の実質的制限を価格等をある程度自由に左右できる市場支配的状態の形成・維持・強化と示す。(適用:全答案)

番号34:Y参入前の限定的価格競争,Y伸長とX漸減,措置後の変化を期間も含めて比較する。(適用:全答案)

番号35:60%シェアだけでなく販路停滞・他社販売減少・価格維持から競争圧力低下と市場支配力を論証する。(適用:全答案)

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

試験実施日である令和3年5月12日時点の法令・判例を基準とする。
措置1は一般指定14項,措置2は12項,設問2は排除型私的独占を採る。
字数は見出し・句読点・全角空白を含み,改行だけを除いて2188字である。
条文番号は独占禁止法を指し,一般指定は不公正な取引方法の一般指定を指す。

2 答案

1 設問1

 市場とは競争への影響を検討する商品・地域の範囲をいい,需要・供給の代替性等から画定する。
甲製品は固有の機能・効用を持ち代替品がなく,共通の公的規格の下で4社が国内に供給するため,我が国の甲製品製造販売市場を検討する。

(1)措置1

 X社がY社製品の積極的推奨を続ける販売店に不利益を示唆し,実際に不利益を与えることは,競争者に対する取引妨害(一般指定14項,独占禁止法2条9項6号ヘ)として,同法19条に違反しないか。

 同項は,方法を問わず競争者とその相手方との取引を不当に妨害することを禁ずる。
取引契約の直接の阻止に限らず,競争者の販売活動を支える販売店の推奨を抑制し,取引機会を減少させる行為も含む。
不当性は競争手段の不公正さも考慮し,主に競争者排除・市場閉鎖による自由競争減殺のおそれから判断する。
その程度は競争の実質的制限に達する前段階又はその危険性で足りる。

 X社とY社は甲製品の供給で競争する。
ユーザーが販売店の助言・推奨に従う傾向が強いから,推奨の抑制はY社と販売店との取引の縮小につながる。
X社のシェアは45%であり,そのブランド力と取扱いの不可欠性,販促・技術支援の重要性から,販売店は不利益を無視し難い。
現に推奨中止やY社製品の取扱断念が生じ,不利益の情報も流布している。
したがって,個別の示唆が他の販売店にも波及してY社の流通経路を狭め,自由競争を減殺するおそれがある。

 X社は自社製品の品質・価格による競争をしているのでなく,支援の削減をてこに低価格の競争者の販売を抑えている。
Y社製品も公的規格を満たすものであり,安全性を理由に推奨を抑える必要も認められない。
措置1は不当な取引妨害に当たり,19条に違反する。

(2)措置2

 専らX社製品を推奨する約束をリベートの条件とする措置2は,拘束条件付取引(一般指定12項,2条9項6号ニ)に当たるか。

 併売はなお認められ,競争者と取引しないこと自体を条件とするものではないため,一般指定11項より12項によるのが適切である。
拘束には契約上の義務に限らず,経済的不利益による実効的な制限も含む。

 リベートは甲製品の販売台数増加率に応じて累進し,家庭用電動器具全体の仕入額を基礎とするため,特約店は甲製品の推奨を変えると多額の利益を失い得る。
さらにモニタリング,指導,リベート不供与に加えて支援削減の通告があり,約束には実効性があり,個別的な牽制にとどまる措置1より制約が強い。
販売方法という特約店の事業活動を拘束する条件を付けた取引といえる。

 不当性は,競争者が代替的な取引先を容易に確保できず,取引機会が減少する市場閉鎖効果のおそれ等から判断する。
X社は有力で,販売店の推奨は需要獲得を左右するため,形式上併売が可能でも,専属推奨を履行すれば特約店は実質的な専売店に近づく。
X取扱店の約60%を占める特約店の約半数,すなわちX取扱店の約30%が約束し,しかも特約店は販売力・技術力を評価して選ばれているため,影響を店数だけで過小評価できない。
取扱店が限られるY社にとって,残る取引先の開拓が容易とはいえず,現に獲得への懸念が生じている。

 確かにリベート一般は販売促進に資する。
しかし,本件は増販だけでなく専属的推奨を要求し,家庭用電動器具全体の取引利益と支援まで結び付ける。
低価格の競争者を封じる目的に照らしても,通常の販売努力への対価として正当化できない。
市場閉鎖効果のおそれがあり,措置2も19条に違反する。

2 設問2

(1)措置1・2を組み合わせた行為は,排除型私的独占(2条5項)として3条前段に違反するか。

 一定の取引分野は設問1と同じ我が国の甲製品製造販売市場である。

(2)排除とは,自らの市場支配力の形成・維持・強化という観点から正常な競争手段を逸脱する人為性を有し,他の事業者の事業活動を著しく困難にするなどの効果を持つ行為をいう。

 措置1でY社の推奨を中止させ,措置2でX社だけの推奨を誘導・強制することは相互に補完する。
支援を失う不利益と全商品に及ぶ累進リベートの利益を用い,価格・品質の競争によらず販売店の選択を固定するもので,人為性がある。
約束した特約店は約70%,すなわちX取扱店の約42%に増加し,Y社だけでなくA社・B社の販売にもかなりの影響が出ているから,競争者の事業活動を著しく困難にする効果も認められる。
競争者の退出までは不要である。

(3)競争の実質的制限とは,価格等をある程度自由に左右できる市場支配的状態の形成・維持・強化をいう。
従来は価格競争が限定的だったが,低価格のY社の伸長でX社のシェアは漸減していた。
ところが令和2年4月以降の措置から約1年で,令和3年第1四半期のX社シェアは60%に転じた。
もっとも,この比率だけで直ちに認定するのではない。
推奨が需要を左右し,X社製品の取扱いが不可欠な市場で,Y社の推奨店が減り取扱店も増えず,A社・B社の販売も影響を受けている。
低価格のY社による価格引下げ圧力が抑制され,価格水準が従来のまま安定していることは,競争圧力の弱体化を裏付ける。
これらを総合すれば,X社の市場支配力が維持・強化されている。

 競争秩序に反し,これを覆す正当化事情もない。
よって,措置全体は排除型私的独占に該当し,3条前段に違反する。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案1の冒頭が番号2・3,措置1が番号4~13,措置2が番号14~26,答案2が番号27~36に対応する。
番号1は両設問に共通する。
番号7・8・25・28・37は,採らなかった構成の条件又は解説上の許容幅に関する項目である。

(2) 措置1の分類と競争への影響

措置1について,公式趣旨は一般指定4項・2項・14項を選択肢として示す。
本答案は14項を採り,Y社と販売店との取引を,推奨の抑制を通じて妨げる過程を説明する。
12項を採るなら,拘束対象となる相手方の範囲・条件内容・実効性の説明が必要であり,圧力の抽象的危険だけで販売店全般の拘束を認めるべきではない。

番号9・10は,自由競争減殺という語だけでなく,効果の程度と波及の道筋を書く点に意味がある。
取扱断念という結果だけを挙げるのでなく,Xの地位,支援の重要性,現実の不利益と情報流布,推奨による需要選択をつなぐ。

(3) 措置2の拘束と市場閉鎖

番号14~17では,リベートの不供与だけを独立の差別として見るのでなく,専属推奨の約束の実効確保手段として捉える。
競争者製品の取引自体は禁止されていないので,11項を採る場合には併売の事実を踏まえた追加論証が必要である。
全家庭用電動器具の仕入額を基礎にするリベートを,甲製品だけの対価の修正と直結させないことも必要となる。

番号19~23の要点は,形式上の併売と,推奨が実質的に閉じられる効果を区別することである。
推奨が需要を左右するため,約束の履行は特約店を実質的な専売店に近づけ,Y社の代替的取引先確保を難しくする。

問題文の約60%の分母はX社製品を扱う取引先販売店である。
これに約半数又は約70%を乗じた約30%・約42%は,その店数比を示す。
公式趣旨は「販売店全体の3割程度」「4割程度」と説明しているが,これを全市場の販売量の閉鎖率と読み替えることはできない。
店舗ごとの販売量や残存流通の能力は,店数比だけでは分からない。

(4) 設問2の追加事情と許容される構成

番号29~35では,人為性,排除効果,競争の実質的制限を区別する。
19条違反だから当然に排除型私的独占ともいえる,という推論では足りない。
Y参入前の限定的価格競争,低価格Yの成長,措置から約1年後の変化を比べ,推奨・販路・他社販売・価格圧力の変化から市場支配力を論証する。

採点実感は,支配型でも支配の意義・程度と当てはめが十分なら同等に評価したと述べる。
また,標準的類型を一部選べていなくても,行為・効果要件の論証が優れる答案を高く評価している。
番号28・37はこの許容幅を示すもので,排除型と支配型の双方を一つの答案で必ず完走せよという意味ではない。

(5) 答案の限界と扱わなかった事項

本答案は一つの構成を2500字以内にまとめた例である。
各措置について全ての不公正な取引方法を累積的に検討するものではない。
課徴金額,民事差止め・損害賠償の個別要件は設問の対象外なので論じていない。
公的規格の存在から各社製品の品質が完全に同一であるとは推論していない。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の別の模範解答

①令和3年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
②令和3年司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した69項目と5段階の重み付け(AI作成)

2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①司法試験の採点実感から学ぶ法律文書の書き方―準備書面・意見書・相談メモのチェックリスト(AI作成)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

法務省・令和3年司法試験問題:PDF14・15頁,経済法第2問。
法務省・令和3年司法試験論文式試験出題の趣旨:PDF27頁の第2問見出しから30頁冒頭の継続文まで。
法務省・令和3年司法試験の採点実感・選択科目:PDF13頁の科目共通方針・第2問,16~19頁の第2問部分,19~20頁の科目共通末尾。
同じ冊子の第1問や他科目を,本問の評価内容の根拠としていない。

2 法令

独占禁止法・公正取引委員会の令和元年改正関連公表法文:2条5項・9項6号,3条及び19条。
不公正な取引方法・一般指定:2項・4項・11項・12項・14項(平成21年改正・平成22年施行の表示を確認)。
平成29年6月16日改正の流通・取引慣行指針・新旧対照:PDF10~12頁の改正後欄を参照した。

3 裁判例

最高裁平成27年4月28日第三小法廷判決(平成26年(行ヒ)第75号)・JASRAC事件(公取委公式データベース):理由3・4の原文で,排除の人為性と効果を確認した。
同判決は競争の実質的制限まで一括して認定したものではなく,本問への当てはめは独立に行った。
公式趣旨が挙げるNTT東日本事件・最高裁平成22年12月17日第二小法廷判決(平成21年(行ヒ)第348号,民集64巻8号2067頁)は,上記判決の引用先として確認した範囲にとどまり,原判決全文の独立確認済みとはしていない。

4 確認状態

確認日は令和8年10月16日である。
問題文・対象の公式趣旨・採点実感・上記法令及び判決理由の確認と,答案の構成・事実評価・重み付けを区別した。
37項目の一覧は公式資料からの独自抽出であり,法務省の公式採点基準ではない。
判例秘書での検索,店舗別販売量や残存流通能力の定量評価は行っていない。
後発の法令・判例を令和3年当時の答案要求を変更する根拠として用いていない。