本記事は,令和5年司法試験経済法第2問の模範解答と,公式資料から独自に抽出した35項目を示す。
評価の重みは1~5の5段階であり,法務省の公式配点や得点を示すものではない。
第1 この記事の対象と結論
対象は令和5年司法試験経済法第2問である。
主位構成は,競争関係にあるリース4社による共同・直接の購入拒絶と,独占禁止法19条違反の検討である。
D社の沈黙だけで意思の連絡を認定せず,会合への参加,情報共有,その後の一致した行動を合わせて評価する。
公正競争阻害性と競争の実質的制限を分け,市場の分母と各シェアの役割を使い分ける。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価表の読み方
各行は,答案の規範・事実評価・法的効果など,具体的に判定できる評価項目である。
「必須」「高評価」「負例」「許容分岐」は重要度とは別の区分であり,許容分岐はその構成を採用した場合に限って適用する。
公開表は35行,内部の追跡単位は37件である。
共同性に関する2つの逆向きの負例を,公開番号2の肯定命題と同じ行に併記しており,評価内容を削除していない。
2 5段階の基準と分布
重み5は採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格,4は出題の趣旨が検討を求め採点実感も取り上げた事項,3は一方が明示した中核の理由付け,2は軽い補強又は典型的な誤り,1は控えめに触れられた事項である。
本記事の重み4は,両資料の対応記載から定めており,すべてを「高く評価された」と扱う趣旨ではない。
重み1が0件,2が1件,3が9件,4が20件,5が5件で,N=35,W=134である。
Wは各公開行の重みを合計した値であり,公式配点ではない。
3 重み5の項目
番号2は意思の連絡の規範,4はD社の具体的な認定,12は公正競争阻害性と競争の実質的制限の区別,20は競争手段としての評価,22は正当な理由である。
いずれも規範と具体的事情をつなぐ主位構成の骨格として重み5としている。
番号2に併記した負例の監査も行い,他社の行為を知っただけで共同性を認めることや,明示的合意を必須とすることを避ける。
第3 本問の概要
メーカーX・Y社が甲機械をユーザーへ直接リースするようになり,リースA~D社がその中止を求めて甲機械の購入を拒絶する問題である。
会合ではD社の担当者が途中から発言しなくなったが,その後リース3社が同日に,D社がその2日後に,同趣旨の申入れ・通知をしている。
リース市場の4社合計41%と,メーカーからの購入額の4社合計22%は異なる分母である。
メーカーの在庫,買い手としての4社の重要性,直接リースからの撤退,なお多数存在する競争者も検討する。
第4 評価項目と重み
1 行為類型
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | リース事業を営む4社の事業者性を法2条1項に結び付けて示す【必須】(全答案) | 3 | 関連範囲実読の結果,記載なし | PDF20頁・経済法第2問:確認済み/「事業者性に全く言及」 |
| 2 | 共同・直接の購入拒絶に一般指定1項1号及び法19条を選択する【必須】(全答案)。負例:他社の行為の一方的認識だけで認定すること/明示的合意を必須とすること。 | 5 | PDF25頁・経済法第2問:確認済み/「共同・直接・」 | PDF19頁・経済法第2問:確認済み/「一般指定第1項第1号」 |
2 共同性
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 3 | リース4社相互の競争関係を行為要件の相手方関係として捉える【必須】(全答案) | 4 | PDF25頁・経済法第2問:確認済み/「競争関係にあるリース4社」 | PDF20頁・経済法第2問:確認済み/「行為要件である」 |
| 4 | 相互の認識・予測と歩調をそろえる意思を示し,黙示の意思連絡で足りると説明する【必須】(全答案) | 5 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「これと歩調をそろえる意思」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「黙示的な合意で足りる」 |
| 5 | A・B・C社の発言内容とその後の行動から3社の合意を認定する【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「事前の情報交換」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「会合における各社の出席者の発言内容」 |
| 6 | D社が大きな影響を受け,会合を招集した背景をD社の意思の判断に用いる【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「特にD社については」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「D社の当時置かれていた状況」 |
| 7 | D社の途中からの沈黙・異議の不表明を,沈黙のみの自動合意とはせず評価する【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「暗黙合意参加」 | PDF20頁・経済法第2問:確認済み/「会合の途中から発言しなくなった」 |
| 8 | 3社がD社の状況を知っていたことを相互の協調期待の根拠として使う【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:間接/「本問の事実関係を挙げつつ」 | PDF21頁・経済法第2問:間接/「D社の状況に関するリース3社の認識」 |
| 9 | D社の同趣旨の申入れ・通知と時期のずれを総合して共同性を論じる【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「事後行為の一致」 | PDF20頁・経済法第2問:確認済み/「通知の時期がリース3社とD社で数日ずれている」 |
3 購入拒絶
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 10 | X社についても条件付きの購入停止申入れを拒絶と評価する理由を示す【必須】(全答案) | 4 | PDF25頁・経済法第2問:確認済み/「今後も行うメーカーからは甲機械を購入しない」 | PDF20頁・経済法第2問:確認済み/「本来X社が自らの事業判断」 |
| 11 | Y社への購入停止通知を供給を受ける拒絶として当てはめる【必須】(全答案) | 4 | PDF25頁・経済法第2問:確認済み/「甲機械の供給を受けることを拒絶」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「要件充足を確認」 |
4 効果規範
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 12 | 公正競争阻害性は競争の実質的制限に至らない程度で足りると示す【必須】(全答案) | 5 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「競争の実質的制限に至らない程度」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「競争の実質的制限に至らない程度」 |
| 13 | 「正当な理由がないのに」を公正競争阻害性の規範に接続する【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「文言が公正競争阻害性を意味し」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「文言が公正競争阻害性を意味し」 |
| 14 | 自由競争減殺として価格維持又は市場閉鎖の競争阻害を規範化する【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「価格維持(競争回避)又は市場閉鎖」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「価格維持(競争回避)又は市場閉鎖」 |
5 市場画定
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 15 | 市場画定が競争への影響を分析する前提であると説明する【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「検討対象市場を画定する意義」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「検討対象市場を画定する意義」 |
| 16 | 市場画定の方法として商品・役務の代替性と地理的範囲を示す【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「その画定方法を簡潔」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「その画定方法を簡潔」 |
| 17 | 甲機械の非代替性を対象商品範囲の根拠として用いる【高評価】(全答案) | 3 | PDF26頁・経済法第2問:間接/「本問の事実関係に即して」 | PDF21頁・経済法第2問:間接/「本問の事実関係に即して」 |
| 18 | リース固有のメリットを用いて購入とリースの代替性を評価する【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:間接/「甲機械のリース取引市場」 | PDF21頁・経済法第2問:間接/「甲機械のリース取引市場」 |
| 19 | 競争阻害効果の検討市場を我が国の甲機械リース取引市場と画定する【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「我が国における甲機械のリース取引市場」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「我が国における甲機械のリース取引市場」 |
6 効果分析
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 20 | 購入割合22%とリースシェア41%を,圧力と排除後の競争状況にそれぞれ対応させる【必須】(全答案) | 5 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「国内の甲機械購入数量」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「両者を混同している」 |
| 21 | 大口買手の地位と在庫増を購入拒絶の取引上の圧力に接続する【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:間接/「取引上の圧力を掛ける」 | PDF21頁・経済法第2問:間接/「共同拒絶の意味合い」 |
| 22 | 購入拒絶の圧力からX・Yの撤退,リース市場閉鎖への因果経路を示す【必須】(全答案) | 5 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「参入阻止の意味での市場閉鎖効果」 | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「参入阻止による市場閉鎖効果」 |
| 23 | 原則違法の立場では市場参入の自由侵害等の理由及び具体的当てはめを付す【許容分岐】(原則違法の立場を採る場合) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「市場参入の自由」 | PDF22頁・経済法第2問:確認済み/「本件行為を原則違法として取り扱うべき理由」 |
7 正当化
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 24 | 正当化を目的の合理性と手段の相当性に分ける規範を示す【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「目的の合理性」 | PDF22頁・経済法第2問:確認済み/「目的の正当性及び手段の相当性」 |
| 25 | 正当化主張に客観的なデータ・資料の裏付けがあるかを検討する【高評価】(全答案) | 3 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「客観的データや資料等の裏付け」 | PDF22頁・経済法第2問:確認済み/「リース4社の主張する」 |
| 26 | 需要者保護・信頼確保という目的を合理性の候補として検討する【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「目的の合理性」 | PDF22頁・経済法第2問:確認済み/「リース事業への需要者の信頼の確保」 |
| 27 | 既存リース事業者の利益確保という主張を競争回避の目的として評価する【高評価】(全答案) | 3 | PDF26頁・経済法第2問:間接/「本問の事実関係に即して具体的に」 | PDF22頁・経済法第2問:間接/「目的の正当性」 |
| 28 | 直接リース全面禁止の相当性を目的とより制限的でない手段に照らして検討する【必須】(全答案) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:間接/「手段の相当性」 | PDF22頁・経済法第2問:間接/「手段の相当性」 |
8 予備的類型
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 29 | 私的独占等を論じる場合,各定義と禁止条文を対応させる【許容分岐】(私的独占等を追加して論じる場合) | 3 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「排除型私的独占」 | PDF17頁・経済法第2問:確認済み/「排除型私的独占」 |
| 30 | 私的独占等を論じる場合,残存多数社の活発な競争に即して実質制限を検討する【許容分岐】(私的独占等を追加して論じる場合) | 4 | PDF26頁・経済法第2問:確認済み/「競争は活発に行われている」 | PDF17頁・経済法第2問:確認済み/「要件充足を的確かつ説得的に論じるには難」 |
9 誤りの回避
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 31 | リース市場を画定したのに販売市場の影響だけで効果分析を終える誤りを避ける【負例】(全答案) | 2 | 関連範囲実読の結果,記載なし | PDF21頁・経済法第2問:確認済み/「論理的に見て首尾一貫しない」 |
10 許容される別構成
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 32 | 共同・間接供給拒絶を選ぶ場合は,メーカーから需要者への直接リースを止めさせる行為として論証する【許容分岐】(共同・間接供給拒絶を主位に選ぶ場合) | 3 | PDF25頁・経済法第2問:確認済み/「共同・間接・供給拒絶」 | PDF19頁・経済法第2問:確認済み/「共同・間接・供給の拒絶」 |
| 33 | D社の合意参加を否定する場合は,3社の共同拒絶とD社の一般指定2項を分けて検討する【許容分岐】(D社の合意参加を否定する構成の場合) | 3 | PDF25頁・経済法第2問:確認済み/「D社による一般指定第2項該当行為」 | PDF19頁・経済法第2問:確認済み/「D社による一般指定第2項該当行為」 |
| 34 | X社の拒絶性を否定して拘束条件付取引を選ぶ場合も,共同行為の性質と要件を論証する【許容分岐】(X社の拒絶性を否定し拘束条件付取引を選ぶ場合) | 3 | 関連範囲実読の結果,記載なし | PDF20頁・経済法第2問:確認済み/「共同行為としての性質を十分かつ的確に」 |
11 複数の行為類型の併用
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 35 | 複数の行為類型を選ぶ場合は,付加した類型についても的確な検討を行う【高評価】(私的独占等を追加して論じる場合) | 3 | 関連範囲実読の結果,記載なし | PDF20頁・経済法第2問:確認済み/「他方の行為類型も的確な検討」 |
第5 模範解答
1 前提と表記
試験実施日の令和5年7月12日を基準とし,主位構成として一般指定1項1号を採用する。
答案は約1915字で,以下の枠内が完成答案である。
評価表は構成選択に応じた項目も含むため,全行を一つの答案へ累積して書く必要はない。
2 完成答案
1 共同の取引拒絶
(1)リース4社はリース事業を営む「事業者」(独占禁止法2条1項)である。
以下,同法を「法」という。
本件は,メーカー2社の直接リースを止めるため,競争関係にあるリース4社が共同して甲機械の購入を拒絶する行為である。
供給を受けることを自ら拒絶するから,法2条9項6号イ・一般指定1項1号の共同・直接の購入拒絶を主として検討し,その禁止条文は法19条である。
(2)「共同して」とは意思の連絡があることをいう。
他の事業者の取引拒絶を相互に認識・予測し,暗黙に認容して歩調をそろえる意思があれば足り,明示の合意は必要ない。
ただし,一方的な認識だけでは足りない。
a,b,cは,会合でメーカー2社への購入拒絶と4社の結束の有効性を確認し,その後,同日に同趣旨の申入れ・通知を行っている。
したがって,3社間には意思の連絡がある。
dは途中から発言せず,D社の申入れ・通知も3社より2日遅い。
しかし,dは会合を招集し,直接リースによる打撃と需要者の信頼低下を述べ,購入拒絶の提案に異を唱えていない。
他の3名もD社が大きな影響を受けていると知っていた。
D社もその後ほぼ同時期に同趣旨の行動を採っており,単なる沈黙や独立判断ではなく,相互に協調を期待する関係が認められる。
よってD社も暗黙の合意に参加している。
(3)4月の申入れは,メーカーが自由に判断できる直接リースの継続を条件として購入を停止する旨の表明であり,条件付きでも「供給を受けることを拒絶」に当たる。
X社が申入れ段階で直接リースを止めたため,確定的通知がなかったことはこれを妨げない。
6月のY社への購入停止通知も同要件を満たす。
(4)一般指定1項の「正当な理由がないのに」は公正競争阻害性を意味する。
これは競争の実質的制限に至らない程度の競争阻害であり,本件では自由競争減殺,すなわち価格維持又は市場閉鎖による競争阻害効果を検討する。
市場画定は,競争への影響を評価する取引の範囲を明らかにするために行い,商品・役務の代替性及び地理的範囲を基礎とする。
甲機械には代替工作機械がなく,リースには初期費用の平準化,管理・事務負担の軽減及び最新機械の導入という利益がある。
これを重視する需要者は購入に代えてリースを選択している。
国内の取引を対象とする本問では,我が国の甲機械リース取引市場を画定する。
(5)4社の購入台数割合は約22%で,他の購入者はいずれも3%未満である。
メーカーには在庫も増えており,4社の大口購入を失う不利益は大きい。
その購入拒絶の圧力によってX社は申入れ後,Y社は購入停止通知後に直接リースから撤退した。
これに対し,4社のリース市場での合算シェアは約41%であり,この数値は排除後の競争状況を評価するためのもので,購入圧力の22%と混同しない。
新たな競争者であるメーカー2社がリース市場から排除され,需要者の選択肢が減るから,市場閉鎖による自由競争減殺が認められる。
共同購入拒絶は市場参入の自由を侵害する点で原則違法と評価できるが,本件ではその実際の排除機序も以上のとおり認められる。
(6)正当化は,競争阻害効果を打ち消し又は上回る事情があるかを,目的の合理性と手段の相当性から判断する。
確かに,十分な説明を通じた需要者保護やリースへの信頼確保という目的には合理性があり得る。
しかし,メーカーの知識・経験不足や説明不足には客観的な裏付けがない。
仮に説明改善が必要でも,説明内容の充実等で対応でき,直接リースを全面的に止める必要はない。
既存事業者の利益を守るために競争を回避すること自体は正当な目的ではない。
よって正当化事由はなく,4社の行為は法19条に違反する。
2 私的独占及び不当な取引制限
(1)本件は,取引上の圧力による競争者の排除として私的独占(法2条5項・3条前段),また,意思の連絡に基づく購入先選択の相互拘束として不当な取引制限(法2条6項・3条後段)も問題となる。
ただし,いずれも一定の取引分野の競争を実質的に制限すること,すなわち競争が減少し価格等をある程度自由に左右できる状態の形成を要する。
(2)メーカー2社の排除は重大であるものの,甲機械リース市場における4社の合算シェアは約41%で,その他のリース業者も多数存在し,競争は活発である。
甲機械の製造への10年間の参入や輸入が乏しいことを,直ちにリース事業への参入困難と読み替えることもできない。
本問の事実から4社の市場支配状態を認めるのは困難であり,競争の実質的制限を欠くから,私的独占及び不当な取引制限は成立しない。
この結論は,より低い効果要件による前記19条違反と両立する。
以上
3 枠外解説
一般指定1項1号は購入を共同して拒絶する本件の主位構成に対応する。
法2条9項1号の供給拒絶との客体・方向の違いを押さえることが重要である。
公式資料は,4社の行為を間接の供給拒絶とみる構成,3社の共同性とD社の単独行為を分ける構成,拘束条件付取引からの検討についても,具体的な論証に応じて評価している。
これらは許容分岐であり,本答案の主位構成と機械的に累積しない。
公正競争阻害性については,競争の実質的制限に至らない程度で足りることを明示した上で,市場と行為の効果を具体的に検討する。
購入額22%はメーカーに対する買い手としての重要性,リースシェア41%は下流での競争の分析に用いる数値である。
双方を混ぜた市場をつくることはできない。
正当な理由については,直接リースを排除する目的だけを述べず,合理的な目的の可能性,裏付ける具体的事情,手段の必要性・相当性を検討する。
私的独占・不当な取引制限では,多数の競争者が残る事情と市場支配の有無を,主位構成のより低い公正競争阻害性の基準と区別する。
第6 関連記事
令和5年司法試験論文式・主要7科目の模範解答(AI作成)
令和6年司法試験経済法第1問の模範解答と評価項目(AI作成)
第7 出典及び確認状態
法務省の次の一次資料を正本としている。
令和5年司法試験論文式試験問題(PDF16~17頁)
令和5年司法試験論文式試験問題の出題の趣旨(経済法第2問・PDF25~26頁)
令和5年司法試験の採点実感・選択科目(PDF16~17・19~23頁の第2問及び科目共通部分)
法令・一般指定の補助確認には,公正取引委員会の独占禁止法及び不公正な取引方法を用いている。
判例の意思の連絡の規範は,出題の趣旨が挙げる東京高裁平成7年9月25日判決(平成6年(行ケ)第144号。東芝ケミカル事件)の判決本文(公正取引委員会の審決等データベース。裁判所HP未掲載)で確認した。
現在掲載されている法令全文を,試験日当日の全文版として独立確認できたという意味ではない。
出題の趣旨が併せて挙げるエイベックス・マーケティング㈱ほか3名審決取消請求事件は,東京高裁平成22年1月29日判決(平成20年(行ケ)第19号等)であり,共同の取引拒絶における意思の連絡の判示を裁判所HPで確認した。
確認日は令和8年10月14日である。
評価表は法務省の公式採点基準ではなく,公式資料から独自に抽出した判定項目である。