令和3年司法試験の行政法の問題を,屋台営業の不選定から取消判決後の救済まで一つの流れで確認します。公式資料から整理した全69項目と,Bを支持する立場の模範解答を掲載します。
第1 この記事の対象と結論
この記事は,令和3年司法試験公法系科目第2問(行政法)について,法務省の問題文,出題の趣旨及び採点実感を踏まえた模範解答と評価項目を示すものです。法務省が公表した模範解答又は公式採点基準ではありません。
本問は,市道の屋台営業候補者に選定されなかったBの救済を扱います。答案は,不選定決定の処分性と訴えの利益を認め,Bの従前の地位・実績,未公表の申合せ,新規応募者の利益及び必要的諮問の趣旨から,市長の判断内容と判断過程の違法を主張する構成を採ります。争点については,結論だけでなく理由と反論への応答が評価対象です。
評価項目は全69項目,重み5は17項目です。処分性の制度分析,中間決定と代替救済の比較,競願と再審査,規則各号に即した実績評価,新規者の利益,市長の判断内容及び推薦尊重が中心です。第4に全項目,第5に約5500字の答案と解説を掲載します。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
公式資料の要求・高評価・誤りの指摘を,一項目につき一つの判定対象となるよう独自に整理しました。「必須」は本問の主ルートに必要な検討,「高評価」は論証の深度,「負例」は避けるべき誤りを示します。重みと区分は別です。負例の回避だけで積極的な理解が証明されるわけではなく,高評価項目を全答案への累積的な必須条件とはしません。
番号は全表で連続しています。出典の頁はPDFファイルの頁です。「記載なし」は第2問の関連範囲を読んだ上で,その粒度の明示がないとの意味です。法令・判決原文の独立確認とは区別します。公式が結論を固定しない争点では,採用結論自体を独立の加点・減点項目にしていません。
2 5段階の重み付けの基準
重み5=採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格,4=出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項,3=どちらか一方が明示する中核の理由付け,2=一方が軽く触れる補強又は典型的な誤り,1=一方が控えめに触れる事項です。重み4を両資料が一様に「高く評価」したとの意味では用いません。各段階への件数割当てはせず,公式配点や得点換算を表すものでもありません。
第3 本問の概要
A市は市道上の屋台営業の利益と通行・衛生等の問題を調整する条例を制定し,名義貸しの解消を目指しました。場所ごとの公募では,委員会が規則19条の4基準を各25点で審査し,市長が候補者を選定します。Bは他人名義で10年以上営業し,市とのトラブルはありませんでしたが,市長が委員会の申合せによる各号5点を控除した結果,Bは2位となりCが選定されました。
設問1⑴は不選定決定の処分性,⑵は処分性を前提にCの決定が残る中での訴えの利益を問います。設問2は訴訟が適法との前提で,Bを支持する立場から,Bの地位と委員会の申合せの合理性を検討し,市長の判断内容及び推薦を覆したこと自体の瑕疵を論じます。条例自体の違法を論じる設問ではなく,条例9条は行政手続法上の審査基準であるとの指定があります。
第4 評価項目と重み
1 設問1⑴:不選定決定の処分性
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 公権力の主体たる行政庁による直接の権利義務形成・確定という処分性の定式を示す。 区分:必須 | 5 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF5頁・1 出題の趣旨/2 採点方針/3 答案に求められる水準 「処分性判断の定式」 |
| 2 | 候補者への選定が利益を付与する処分かを先に検討し,不選定を申請拒否として位置付ける。 区分:必須 | 5 | PDF3頁・〔第2問〕・設問1⑴ 「選定が申請に対する処分に当たるか」 | PDF7頁・4 採点実感・⑴ 全体的印象/⑵ 設問1⑴・(①本件条例等の仕組みに即した申請に対する処分該当性の検討) 「選定の処分性を検討する必要」 |
| 3 | 条例25条1項の場所指定公募と候補者の制度上の地位を処分性へ結び付ける。 区分:必須 | 4 | PDF3頁・〔第2問〕・設問1⑴ 「屋台営業候補者であること」 | PDF7頁・4 採点実感・⑴ 全体的印象/⑵ 設問1⑴・(①本件条例等の仕組みに即した申請に対する処分該当性の検討) 「本件条例第25条第1項」 |
| 4 | 条例26条に基づく委員会の推薦と市長の選定を区別して制度を分析する。 区分:必須 | 4 | PDF3頁・〔第2問〕・設問1⑴ 「委員会」 | PDF5頁・1 出題の趣旨/2 採点方針/3 答案に求められる水準 「本件条例等の仕組み」 |
| 5 | 規則18条の応募申請及び21条の諾否の通知から応答義務を検討する。 区分:必須 | 4 | PDF3頁・〔第2問〕・設問1⑴ 「選定又は不選定の決定の通知」 | PDF5頁・1 出題の趣旨/2 採点方針/3 答案に求められる水準 「市長の応答」 |
| 6 | 行手法2条3号の申請は処分を求める行為であり,2条2号・行訴法3条2項との同義性を踏まえて論証する。 区分:高評価 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF7頁・4 採点実感・⑴ 全体的印象/⑵ 設問1⑴・(①本件条例等の仕組みに即した申請に対する処分該当性の検討) 「同義であるため」 |
| 7 | 候補者公募への申請と道路法32条2項の占用許可申請を同一の申請と誤認しない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF7頁・4 採点実感・⑴ 全体的印象/⑵ 設問1⑴・(①本件条例等の仕組みに即した申請に対する処分該当性の検討) 「両者が異なること」 |
| 8 | 候補者の選定それ自体と選定結果の通知を混同しない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF8頁・4 採点実感・⑵ 設問1⑴/⑶ 設問1⑵ 「選定結果の通知を混同」 |
| 9 | 候補者性と条例9条1項2号の占用許可基準との関係を明示する。 区分:必須 | 4 | PDF3頁・〔第2問〕・設問1⑴ 「市道占用許可の要件の一つ」 | PDF8頁・4 採点実感・⑵ 設問1⑴/⑶ 設問1⑵ 「市道占用許可の要件」 |
| 10 | 条例9条の審査基準性を保持し,候補者以外の許可排除の法的意味を吟味する。 区分:必須 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF7頁・4 採点実感・⑴ 全体的印象/⑵ 設問1⑴ 「行政手続法上の審査基準」 |
| 11 | 占用許可を受けられないという不利益のみで具体的法行為性を論証せず,許可の請求権・特許の性質との関係を検討する。 区分:高評価 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF7頁・4 採点実感・⑴ 全体的印象/⑵ 設問1⑴・(①本件条例等の仕組みに即した申請に対する処分該当性の検討) 「国民が請求権を有しない」 |
| 12 | 候補者の決定が占用許可の中間段階であり,別途許可要件の審査が残ることを検討する。 区分:必須 | 5 | PDF3頁・〔第2問〕・設問1⑴ 「中間段階の決定にすぎず」 | PDF5頁・1 出題の趣旨/2 採点方針/3 答案に求められる水準 「中間段階の決定にすぎない」 |
| 13 | 道路法32条2項による占用許可申請・不許可処分を引き出す取消訴訟を代替経路として具体化する。 区分:高評価 | 5 | PDF3頁・〔第2問〕・設問1⑴ 「不許可処分を引き出し」 | PDF8頁・4 採点実感・⑵ 設問1⑴/⑶ 設問1⑵・(②市道占用許可との関係の検討) 「不許可処分の取消訴訟と対比」 |
| 14 | その後続訴訟で不選定の違法を争う可能性と実効性を,前段階の争訟と比較する。 区分:高評価 | 4 | PDF3頁・〔第2問〕・設問1⑴ 「その取消訴訟の中で」 | PDF5頁・1 出題の趣旨/2 採点方針/3 答案に求められる水準 「当該手段の実効性」 |
| 15 | 不選定により占用許可の申請自体ができなくなると断定しない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF8頁・4 採点実感・⑵ 設問1⑴/⑶ 設問1⑵ 「申請自体ができなくなる」 |
| 16 | 不選定には後続処分が予定されないとの一言で成熟性を肯定しない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF8頁・4 採点実感・⑵ 設問1⑴/⑶ 設問1⑵・(②市道占用許可との関係の検討) 「後続処分が予定されていない」 |
| 17 | 市長が公務員又は一方的に行為したという形式だけで公権力性を肯定しない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF8頁・4 採点実感・⑵ 設問1⑴/⑶ 設問1⑵・(その他) 「一方的態様」 |
2 設問1⑵:競願と訴えの利益
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 18 | 一場所一名の公募であることを踏まえ,他の19区画へ選定される可能性で議論を置き換えない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF9頁・4 採点実感・⑶ 設問1⑵/⑷ 設問2 「他の19箇所」 |
| 19 | Cの候補者決定が残る場合にBの取消しだけで利益を回復できるかという問題を提示する。 区分:必須 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問1⑵ 「失われていないか」 | PDF8頁・4 採点実感・⑵ 設問1⑴/⑶ 設問1⑵・(全体について) 「本件候補者決定が残っている」 |
| 20 | 同一区画の一枠をめぐるBとCの競願・両決定の表裏関係を具体的に説明する。 区分:必須 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問1⑵ 「いかなる関係にあるか」 | PDF5頁・1 出題の趣旨/2 採点方針/3 答案に求められる水準 「競願関係ないし表裏の関係」 |
| 21 | 昭和43年判決の理由を,本件の比較選定と再審査へ対応させる。 区分:必須 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問1⑵ 「最判昭和43年12月24日」 | PDF8頁・4 採点実感・⑵ 設問1⑴/⑶ 設問1⑵・(全体について) 「同判決の論理」 |
| 22 | 行訴法33条2項の拘束力による再応答・比較再審査を説明する。 区分:必須 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問1⑵ 「取消判決の効力」 | PDF5頁・1 出題の趣旨/2 採点方針/3 答案に求められる水準 「第33条第2項」 |
| 23 | 不選定の取消しの形成力とCに対する別の候補者決定の効力を区別する。 区分:必須 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問1⑵ 「正確に追跡」 | PDF9頁・4 採点実感・⑶ 設問1⑵/⑷ 設問2・(②本件不選定決定の取消しの効果の検討) 「形成力は当然には生じない」 |
| 24 | 行訴法32条の第三者効によりCの候補者決定が直ちに消滅するとしない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF9頁・4 採点実感・⑶ 設問1⑵/⑷ 設問2・(②本件不選定決定の取消しの効果の検討) 「第三者効には触れていない」 |
| 25 | 拘束力が直ちにCの決定取消しを義務付けるとしない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF9頁・4 採点実感・⑶ 設問1⑵/⑷ 設問2・(②本件不選定決定の取消しの効果の検討) 「拘束力の及ぶ範囲」 |
| 26 | 再審査でBを選定すべきと判断した場合にC決定を職権取消しする条件付きの帰結を示す。 区分:高評価 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問1⑵ 「生じることになる事態」 | PDF9頁・4 採点実感・⑶ 設問1⑵/⑷ 設問2・(②本件不選定決定の取消しの効果の検討) 「再審査をした結果」 |
| 27 | 比較再審査によってBが候補者に選定され得る回復利益を論証する。 区分:必須 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問1⑵ 「可能性が残っているか」 | PDF9頁・4 採点実感・⑶ 設問1⑵/⑷ 設問2・(②本件不選定決定の取消しの効果の検討) 「間接的な効果」 |
| 28 | 3年後の新たな公募での選定可能性を現処分の取消しによる回復利益としない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF9頁・4 採点実感・⑶ 設問1⑵/⑷ 設問2・(②本件不選定決定の取消しの効果の検討) 「新たな公募によるもの」 |
| 29 | 国家賠償請求のために取消判決が必要であるという理由で訴えの利益を肯定しない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF9頁・4 採点実感・⑶ 設問1⑵/⑷ 設問2・(その他) 「国家賠償請求が可能となる」 |
| 30 | 行訴法9条1項括弧書きを訴えの客観的利益の一般規定と誤認しない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF9頁・4 採点実感・⑶ 設問1⑵/⑷ 設問2・(その他) 「一般規定ではない」 |
3 設問2:実績評価と市長の裁量審査
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 31 | 市長の候補者選定に裁量があることと逸脱・濫用による取消しの枠組みを示す。 区分:必須 | 5 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「本件不選定決定が裁量処分」 |
| 32 | 裁量の有無・幅を,条例26条・規則19条の文言と比較選定の性質の両面から論証する。 区分:高評価 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF10頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(裁量論について) 「条文及び処分の性質の両面」 |
| 33 | 条例25条の公募権限を示す「できる」だけで選定についての効果裁量を認定しない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF10頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(裁量論について) 「権限付与規定」 |
| 34 | 裁量審査の直接対象を市長の選定とし,公募・占用許可・委員会だけへ置き換えない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF10頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(裁量論について) 「市長の選定行為」 |
| 35 | Bの従前地位の保護と委員会の実績評価の合理性を別の前提問題として区別する。 区分:必須 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「検討の結果を踏まえ」 | PDF9頁・4 採点実感・⑶ 設問1⑵/⑷ 設問2・(全体について) 「2点を中心に検討」 |
| 36 | 財産権保護から占用許可更新を原則とする解釈の可能性を検討し,Bの期待利益に関係付ける。 区分:高評価 | 3 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「財産権保護の観点から更新が原則」 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) |
| 37 | Bの10年以上の営業・市とのトラブルなし・生活基盤喪失という事情を評価する。 区分:必須 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「10年以上も屋台営業」 | PDF10頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(①Bの地位への配慮に関する検討) 「10年以上も屋台営業」 |
| 38 | 道路法33条1項の占用許可基準が人的要素を重視しない点を悪質性の評価に用いる。 区分:高評価 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「人的な要素が重視されていない」 |
| 39 | 道路法には名義貸しの明文禁止が見当たらないことと,許可取得者がBでないことを区別する。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「道路法及び本件条例」 | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「名義貸しを明文で禁止する規定」 |
| 40 | 少なくとも形式的には無許可であるという市の反論を受け,全実績を無価値にする悪質性かを評価する。 区分:必須 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「悪質な行為と評価できるか」 | PDF10頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(①Bの地位への配慮に関する検討) 「少なくとも形式的には違法」 |
| 41 | 名義の事実上売買と営業者頻繁交代・継続的協議困難という反対方向の実害も評価する。 区分:高評価 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF10頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(①Bの地位への配慮に関する検討) 「反対方向の事実も取り上げた」 |
| 42 | A市による名義貸しの長期放置・黙認をBの考慮価値の根拠として評価する。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「過去の取扱い」 | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「長年放置(黙認)」 |
| 43 | 条例9条1項2号アの生計維持に係る家族の事実上承継を地位配慮の体系的根拠として使う。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「市道占用許可の要件」 | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「生計の維持の観点」 |
| 44 | 許可名義人の権利の当然取得と,Bの営業実績・期待利益の個別判断での考慮を区別する。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「Bの地位への」 | PDF10頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(①Bの地位への配慮に関する検討) 「Bの従前の営業」 |
| 45 | 条例自体又は経過措置不存在の違法へ答案の対象をずらさない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2 「条例自体の違法性」 |
| 46 | 更新を当然に許可の撤回と同視せず,道路法が必ずしも更新を前提としない点を保持する。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF12頁・5 今後の法科大学院教育に求めるもの 「実質的な許可の撤回」 |
| 47 | 法規である規則19条,公表された指針及び未公表の申合せの3層を区別する。 区分:必須 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(②委員会の申合せの合理性の検討) 「三者の関係」 |
| 48 | 申合せの是認可能性を規則19条各号の解釈として個別に検討する。 区分:必須 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「各号の解釈の問題」 | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(②委員会の申合せの合理性の検討) 「選定基準に照らして」 |
| 49 | 規則19条1号の安全・快適な公共空間・衛生への具体的取組と営業実績との関係を評価する。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「第19条各号の選定基準」 | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「選定基準を個別具体的に分析」 |
| 50 | 規則19条2号の従来の文化の維持と新たな魅力・創意工夫の双方から実績評価を検討する。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「第19条各号の選定基準」 | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「選定基準を個別具体的に分析」 |
| 51 | 規則19条3号の地域貢献の具体的取組を評価し,単なる営業期間との関係を吟味する。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「第19条各号の選定基準」 | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「選定基準を個別具体的に分析」 |
| 52 | 規則19条4号のにぎわい・交流・魅力向上への意欲と実績の意味を評価する。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「第19条各号の選定基準」 | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「選定基準を個別具体的に分析」 |
| 53 | 将来の屋台政策への確実な貢献という申合せの理由を生活救済だけの優遇と区別する。 区分:高評価 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(②委員会の申合せの合理性の検討) 「今後の屋台政策への貢献の期待」 |
| 54 | 実績評価により新規応募者の利益を不当に侵害しないかを具体的に検討する。 区分:必須 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「利益を不当に侵害する」 | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「利益を不当に侵害する」 |
| 55 | 指針はウェブサイトで公表されていたという事実を確認し,申合せとは別に扱う。 区分:必須 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(②委員会の申合せの合理性の検討) 「ウェブサイトで公開」 |
| 56 | 申合せは事前公表されず新規応募者が知り得なかったことを利益保護の検討に使う。 区分:高評価 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「申合せを知るすべもなく」 | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(②委員会の申合せの合理性の検討) 「事前に公表されていなかった」 |
| 57 | 新規応募者の予測可能性・信頼と既存営業者への配慮を比較し,申合せの評価方法の適否を説明する。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「公募に応募した者の権利保護」 | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(②委員会の申合せの合理性の検討) 「前記㋑の観点」 |
| 58 | Bへの地位配慮と新規応募者の利益の保護が利益配分の表裏であることを説明する。 区分:高評価 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF10頁・4 採点実感・⑷ 設問2 「いわば表裏の関係」 |
| 59 | B地位・申合せの評価を市長の裁量判断の瑕疵へ接続し,前提検討だけで終わらない。 区分:必須 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「いかなる違法事由を主張すべきか」 | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(③市長の選定に係る判断の内容の瑕疵の検討) 「裁量判断の瑕疵」 |
| 60 | 公約を重視する一方でBの地位を更に考慮しなかったことを考慮不尽等として構成する。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「自身の公約を重視」 | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(③市長の選定に係る判断の内容の瑕疵の検討) 「市長の考慮不尽」 |
| 61 | 公約の刷新実現を優先して申合せ点を控除したことについて他事考慮等の根拠を示す。 区分:高評価 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(③市長の選定に係る判断の内容の瑕疵の検討) 「他事考慮がある」 |
| 62 | 市長が推薦を覆したこと自体の瑕疵を,選定内容の瑕疵と別に検討する。 区分:必須 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「委員会の推薦を覆した」 | PDF10頁・4 採点実感・⑷ 設問2 「推薦を覆して選定したこと自体」 |
| 63 | 昭和50年判決の答申尊重・特段の合理的理由という一般論を正確に示す。 区分:高評価 | 5 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「特段の合理的な理由」 | PDF6頁・3 答案に求められる水準/4 採点実感 「最高裁昭和50年判決」 |
| 64 | 諮問機関一般の非拘束的な性格と,推薦を尊重する義務の可能性を区別する。 区分:高評価 | 3 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(④行政庁の処分と諮問機関の決定との関係の検討) 「諮問機関一般の性格」 |
| 65 | 有識者委員会の構成・設置趣旨から客観的適正・公正の機能を説明して本件への判例参照を論証する。 区分:高評価 | 5 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(④行政庁の処分と諮問機関の決定との関係の検討) 「高く評価することができた」 |
| 66 | 申合せが合理的であるとの検討を前提に,公約だけで推薦を覆す特段の合理的理由があるかを評価する。 区分:高評価 | 4 | PDF4頁・〔第2問〕・設問2 「特段の合理的な理由」 | PDF11頁・4 採点実感・⑷ 設問2・(④行政庁の処分と諮問機関の決定との関係の検討) 「推薦を覆して選定したこと」 |
4 答案全体
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 67 | 条例9条の審査基準性から条例全体の法規性を否認しない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF7頁・4 採点実感・⑴ 全体的印象/⑵ 設問1⑴ 「条例の全てが同じ法的性質」 |
| 68 | 条例を道路法33条の政令に含め,その理由で委任条例としない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF7頁・4 採点実感・⑴ 全体的印象/⑵ 設問1⑴ 「したがって委任条例」 |
| 69 | 条例の委任による施行規則を行政規則と誤分類しない。 区分:負例 | 2 | 記載なし(第2問関連範囲を実読) | PDF7頁・4 採点実感・⑴ 全体的印象/⑵ 設問1⑴ 「施行規則を行政規則」 |
5 重みの分布
重み1=0項目,2=18項目,3=13項目,4=21項目,5=17項目。総項目数N=69,重み合計W=244です。負例18項目も評価表の件数には含めますが,避けた負例を知識の加点として累積させる扱いはしません。
- 番号1:公権力の主体たる行政庁による直接の権利義務形成・確定という処分性の定式を示す。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号2:候補者への選定が利益を付与する処分かを先に検討し,不選定を申請拒否として位置付ける。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号12:候補者の決定が占用許可の中間段階であり,別途許可要件の審査が残ることを検討する。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号13:道路法32条2項による占用許可申請・不許可処分を引き出す取消訴訟を代替経路として具体化する。 高評価となる論証の深度です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号20:同一区画の一枠をめぐるBとCの競願・両決定の表裏関係を具体的に説明する。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号21:昭和43年判決の理由を,本件の比較選定と再審査へ対応させる。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号22:行訴法33条2項の拘束力による再応答・比較再審査を説明する。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号26:再審査でBを選定すべきと判断した場合にC決定を職権取消しする条件付きの帰結を示す。 高評価となる論証の深度です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号27:比較再審査によってBが候補者に選定され得る回復利益を論証する。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号31:市長の候補者選定に裁量があることと逸脱・濫用による取消しの枠組みを示す。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号48:申合せの是認可能性を規則19条各号の解釈として個別に検討する。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号54:実績評価により新規応募者の利益を不当に侵害しないかを具体的に検討する。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号56:申合せは事前公表されず新規応募者が知り得なかったことを利益保護の検討に使う。 高評価となる論証の深度です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号59:B地位・申合せの評価を市長の裁量判断の瑕疵へ接続し,前提検討だけで終わらない。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号62:市長が推薦を覆したこと自体の瑕疵を,選定内容の瑕疵と別に検討する。 主ルートの骨格です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号63:昭和50年判決の答申尊重・特段の合理的理由という一般論を正確に示す。 高評価となる論証の深度です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
- 番号65:有識者委員会の構成・設置趣旨から客観的適正・公正の機能を説明して本件への判例参照を論証する。 高評価となる論証の深度です。対応小問で採用した主ルート・反論を検討する場合に適用します。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
基準時は試験実施日の令和3年5月12日です。問題文・会議録が指定したB支持の立場で,1→(1)の階層により論述します。昭和43年判決は競願と再審査,昭和50年判決は諮問の機能の参照に用います。原判決が直接判断した事件類型と本件を区別し,異なる結論の可能性を理由なく排除しません。答案本文は空白・改行を除き5546字です。
2 答案
1 設問1⑴
(1) 取消訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法3条2項)とは,公権力の主体たる行政庁の行為のうち,国民の権利義務を直接形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められたものをいう。本件不選定決定はBの営業を直接禁止する命令ではなく,市道占用許可の前段階の決定であるため,条例・規則の仕組みと後続許可との関係から検討する。市長が不服申立ての教示をしたことは参考となるが,行政庁の理解だけで処分性が決まるものではない。
(2) 本件条例25条1項は,市長が場所を指定して,その場所で市道占用許可を受けることができる者を公募する制度を設け,26条1項は,公募を行った場合に委員会に諮って候補者を選定するものとする。規則18条は,公募申請者が応募申請書等を期間内に市長へ提出する手続を定め,同21条は,選定だけでなく不選定についても申請者に通知することを求めている。
申請とは,法令に基づき,自己に利益を付与する処分を求め,行政庁が諾否を応答すべき行為である(行政手続法2条3号)。同号の処分は行訴法上の処分と同義であり,申請書と通知の存在だけで処分性を循環的に論証してはならない。候補者の選定は,公物の特別使用に関する法定の公募・審査手続において,市長が特定の者を占用許可を受け得る候補者として公権的に確定する行為である。条例25条・26条及び規則に基づくこの地位の付与を求める応募は申請として位置付けられ,不選定はその地位の付与を拒否する決定となる。もっとも,候補者の地位を取得しても,道路法32条2項・条例8条による占用許可申請と,道路法33条等に基づく審査は別に必要であり,直ちに営業権が発生するわけではない。
(3) そこで,候補者性が占用許可の法的要件となるかが問題となる。条例9条1項2号は,現営業者の一定の配偶者・直系血族か,候補者であることを許可の基準とする。しかし,設問の指定に従い,同条は行政手続法上の審査基準として扱う。審査基準は,行政庁の判断の統一・公正を確保するための行政内部の基準であって,法令と同じ外部的拘束力を持つものではない。したがって,候補者でないことが当然に法律上の欠格事由になるとか,Bが占用許可を申請すること自体が禁止されるとはいえない。
また,道路占用許可は公物の特別使用権を設定する特許として把握され,占用を求める者に許可を受ける実体的請求権が当然にあるとはいえない。このため,許可を受けられないという不利益だけで具体的な法行為性を認めることもできない。市は,不選定は準備行為にすぎず,Bが道路法32条2項により占用許可を申請し,不許可処分を受け,その取消訴訟で不選定判断の違法を主張する方法があると反論し得る。
しかし,審査基準であっても,行政庁は合理的理由なくこれを外れて判断することはできない。本件は,場所ごとに総合成績が最も優れた1名を選び,その者が当該場所で占用許可を受けるという制度である。Bは他人名義で営業してきた者であり,条例9条1項2号アの親族としての経路によるとの事情はない。市長がこの制度に従ってBを不選定とし,同時にCを選定した以上,Bによる占用許可の申請は,候補者でないことを理由に拒否されることが相当程度確実である。
後続不許可の取消訴訟でも,候補者でないことを唯一の理由とする拒否であれば,不選定の違法を基礎として拒否の違法を争う余地はある。しかし,Bは許可申請・拒否まで待つ負担を負い,その間にCへの許可や営業開始が進めば,再審査と候補者地位の回復が複雑になる。中間判断であるとの反論を踏まえても,一枠の比較選定を決着させる現段階で争わせることが実効的である。生活上の不利益だけでなく,法令上の申請・応答制度,候補者地位の付与と後続許可を左右する効果を併せ,処分性を認めるべきである。
よって,本件不選定決定は,Bの候補者としての地位と占用許可を受ける可能性を確定する拒否判断として,取消訴訟の対象となる処分に当たると解する。
2 設問1⑵
(1) 取消しを求める訴えの利益は,取消判決により回復できる法律上の利益がある場合に認められる(行訴法9条1項)。Bは本件区画で屋台営業を続けるために応募しているが,同区画では既にCが候補者に選定されている。市は,Cの決定が残る限りBを選定できず,Bの不選定決定だけを取り消しても目的を達成できないと反論することが考えられる。
(2) 昭和43年12月24日最高裁判決は,同一周波数をめぐる競願について,原告への免許拒否と競願者への免許付与が表裏の関係にあり,拒否に係る決定の取消しにより行政庁が白紙の状態へ戻って両申請の優劣を再審査すべきこと,その結果によっては競願者の免許を取り消し原告へ免許を与えることもあり得ることから,拒否側のみの取消しを求める利益を認めた。
本件でも,同じ区画について選定される者は1名である。CがBより優れているという比較判断の結果として,Cの候補者決定とBの不選定決定がされたのであり,両者は表裏の関係にある。この点で同判決の理由が妥当する。
(3) Bの不選定決定を取り消す判決が確定すれば,市長は判決の趣旨に拘束され,改めてBの申請に対する処分をしなければならない(行訴法33条1項・2項)。その際には,Bだけを形式的に審査するのでなく,判決が違法とした評価を排除して,Cとの比較審査をやり直すことになる。
もっとも,取消判決の形成的効果が直接消滅させるのはBの不選定決定である。第三者効を定める同法32条によってCの別個の候補者決定まで当然に消滅するわけではなく,Bが当然に候補者になるわけでもない。しかし,再審査でBが優位と判断されれば,市長がCの候補者決定を職権で取り消してBを選定する可能性があり,Cの決定の存在は回復可能性を排除しない。
したがって,Bには,適法な比較審査を通じて本件区画の候補者となり,占用許可を得る経路を回復する利益があり,訴えの利益は失われていない。
3 設問2
(1) 判断枠組み
本件条例26条1項は市長を選定主体とし,規則19条各号は,公共空間・衛生,屋台文化・新たな魅力,地域貢献及びにぎわい創出について評価を求める。これらには将来予測や専門的評価が含まれ,候補者の比較選定に一定の裁量が認められる。ただし,市長は同条の基準と制度目的に従い,関係する事実を適切に考慮して判断しなければならない。重要な考慮事項の欠落,無関係な事項の重視又は評価の著しい不合理は,裁量権の逸脱・濫用として違法となる(行訴法30条)。
Bとしては,自己の営業実績と従前の地位を適切に考慮した委員会の評価を,市長が公約実現のため一律に排除したという判断内容の瑕疵と,専門的な推薦を合理的理由なく覆したという判断過程の瑕疵を主張すべきである。
(2) 従前の地位への配慮
市は,Bには道路法32条の許可がなく,他人名義の営業実績は保護に値しない上,条例13条が名義貸しの一掃を求めており,6か月の暫定継続で十分に配慮したと反論し得る。
確かに,B自身は道路法32条の許可を取得しておらず,従前の営業は少なくとも形式的には無許可である。また,名義の事実上の売買や営業者の頻繁な交代は,継続的な話合いを困難にする実害を生む。もっとも,悪質性をそのような一般的実害だけで決めず,Bの営業実態を検討すべきである。道路法33条1項は場所・構造等を中心とし,人的要素を重視する基準ではなく,名義貸しを明文で禁止する規定もない。A市は問題を認識しながら長年是正せず,Bは10年以上同一区画で営業して市とのトラブルもなかった。これらは,Bの実績を全て法的保護に値しないほど悪質とする評価を弱める。条例13条の本人営業義務を従前の営業へ遡及させることもできない。
道路法が当然の更新権を保障するとはいえず,不更新を直ちに許可の撤回と扱うこともできない。しかし,継続的な特別使用と設備・営業の基盤について財産的利益を保護する観点から,支障がなければ更新を原則とする解釈は考えられる。Bは名義人の更新権を当然に取得するものではないが,長期の営業と市の取扱いを背景とする継続への期待には,個別選定で配慮すべき価値がある。条例9条1項2号アも生計維持に着目して一定の家族従事者の事実上の承継を認める。6か月以内に新店舗・仕事を確保する困難と生活基盤喪失も考慮し,名義貸し解消に必要な措置と従前営業者の利益を調整すべきである。
これらは,当然に選定される権利を生じさせるものではないが,移行時の利益調整と将来の屋台政策への貢献を評価する際に考慮すべき事情である。条例自体の違法ではなく,個別選定において考慮価値を一律に否定したことを問題とする。
(3) 委員会の申合せの合理性と新規申請者の利益
市は,各号5点の評価は公表された指針にない既存営業者の優遇であり,新規者の公正な競争を損なうと反論することが考えられる。Bは,生活維持だけを理由に,全項目で当然の加点を受けるべきだと主張するのでなく,実績が各基準に関連する理由を示す必要がある。
第1号について,市とトラブルなく継続した実績は,安全・衛生への取組の実行可能性を予測する資料となる。第2号では,長年地域で営業した経験は従来の屋台文化を守る能力の裏付けである。第3号では,過去の地域との関係が地域貢献の取組を実行する確実性を支えるかを審査すべきであり,単に長く営業したことを清掃等の具体的取組の提示に置き換えてはならない。第4号では,実際に営業を続けてきた事実は,にぎわいや交流の創出への意欲と能力を判断する資料となる。Bの特定の清掃活動等は与えられておらず,営業期間だけで各号の取組を充足したとはいえない。
申合せは,トラブルのなかった営業者について,将来の確実な貢献を期待できるとの評価に立つ。各号25点の範囲内で5点を与えるもので,配点外に20点を上乗せするものではない。新規申請者も残る評価部分で具体的な提案を示して競争でき,新たな魅力を求める第2号の審査も失われない。実績を将来貢献の資料として評価する限り,直ちに不合理な既得権保護とはいえない。
ただし,指針は公表されていたが申合せは事前公表されていない。新規応募者は指針を読んで応募を判断し,見えない既存者優遇がなされないという利益を有する。Bへの配慮を厚くすれば新規者の選定機会が減る点で,両者の利益保護は表裏の関係にあり,Bの生活困難だけで優遇を正当化できない。本件選定には行政手続法3条3項の適用除外を踏まえ,同法第2章と同内容のA市行政手続条例を用いる。5条に相当する規定の具体化・公表の趣旨から,固定点が独立の審査基準の追加であれば不公表は問題となる。他方,Bとしては,実績の考慮は従来の文化維持・将来貢献という公表済みの各号評価を具体化するもので,新たな欠格基準ではなく,配点内20点に限られ,新規者の提案も残る80点を含め比較されると主張する。指針に書かれていない申合せを知り得たとは仮定せず,予測可能性への負担と評価の関連性・程度を衡量すべきである。仮に公表手続に瑕疵があっても,その是正と,関連する実績を一律に無価値として控除することとは別問題である。
(4) 市長の判断内容の瑕疵
市長は,ほとんどの区画で他人名義営業者が推薦されたことを不審に思い,選挙公約の刷新を実現するため,申合せ点を差し引いた。市は,最終決定権は市長にあり,名義貸しの一掃と新たな魅力を生む政策判断であると反論し得る。
しかし,Bを本人名義の候補者に選定し,適法な許可を受けて営業させれば,名義貸しは解消する。名義貸し一掃と営業者交代は同じではない。条例の目的は,従来の文化を守りながら新たな魅力を創出することも含み,交代自体を優先してトラブルのない実績を無評価にするものではない。
公約を政策の背景として考える余地はあっても,規則各号に関連する事実の一律排除はできない。Bの生活・営業の継続利益を適切に衡量せず,将来貢献の資料となる実績を全面的に排除して順位を逆転させたことは,考慮不尽及び評価の不合理として裁量権の逸脱・濫用に当たると主張する。
(5) 推薦を覆した判断過程の瑕疵
昭和50年5月29日最高裁判決は,諮問機関の答申を尊重して処分する制度の趣旨を,答申を慎重に検討し,十分に考慮し,特段の合理的理由なく反する処分をしないことにより,処分の客観的適正妥当と公正を担保する点に求めている。
市は,判例の制度には答申尊重の明文があるが本件条例にはなく,委員会は附属機関にすぎないと反論し得る。確かに,条例26条の選定権は市長にあり,推薦に絶対的拘束力はない。
それでも,同条が有識者委員会への諮問と規則に基づく推薦を必要としているのは,多角的・専門的な評価を介在させ,限られた区画の比較選定の客観性と公正を確保するためである。単に推薦を受けさえすれば理由なく排除できるとの解釈では,この制度を空洞化させる。同判決の趣旨は,この限度で本件にも参照できる。
市長は,申合せが各号の評価に適合するかを慎重に検討し,合理的理由がある場合に推薦と異なる判断をすべきである。ところが,議事録で申合せを知った後,公約実現のために点数を一律控除し,Bの個別的実績や各号との関連を再検討した事情は示されていない。合理的な推薦を覆す特段の理由として,営業者交代の希望だけでは足りない。したがって,必要的諮問の趣旨に反する判断過程の瑕疵も主張でき,Bは以上の実体・手続双方の違法を理由に本件不選定決定の取消しを求めるべきである。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案1は番号1~17,答案2は番号18~30,答案3は番号31~66に対応します。番号67~69は答案全体の分類上の誤りを避ける確認です。重み5の全17項目は第4の分布欄に番号を掲げました。一般的な指摘として,採点実感は読解・分析・構成・表現の明確さ,誤字の回避,適切な段落及び「占用」の正確な表記も求めています。これらは重みを付した69項目と別です。
(2) 不選定の処分性と申請概念
番号2・6・9~14では,申請書や通知があるだけで処分とせず,授益的な選定の法的効果を先に確認します。条例9条が審査基準であることと,候補者選定が事実上・制度上許可を左右することを分け,中間判断を争わせる実効性を後続不許可訴訟と比較しました。処分性について一つの結論だけが公式の正解とされているわけではありません。
(3) 競願と取消判決の効果
番号20~27では,B不選定とC選定の比較関係を踏まえ,再応答・再審査から回復可能性を追跡します。行訴法32条による第三者効や取消しの形成力によってCの別決定が当然に消えるとの説明は避けます。再審査の結果Bが優位であれば職権取消しがあり得るという条件付きの帰結です。
(4) 従前の地位・申合せ・新規者の利益
番号36~42は,許可名義人でないBの形式的違法と,継続期待・悪質性・市の従前対応を区別する箇所です。番号48~58では,過去実績を将来貢献の資料として規則各号へ関連付け,新規者の応募機会と公表済み指針への期待も比較します。20点は100点に追加する点ではありません。配点内の割合だけで不公表の問題が消えるともしません。
(5) 市長の判断内容と推薦尊重
番号59~66では,前提検討を市長の裁量判断へ接続します。名義貸し解消と営業者交代は別であり,個人の実績を公約だけで一律排除することを問題としました。昭和50年判決の制度には明文の答申尊重規定があったという差があります。市長の最終権限と推薦の非拘束性を認めつつ,本件の有識者委員会・必要的諮問の機能から尊重の必要性を理由付けしています。
(6) 答案の弱点と扱わなかった事項
更新を原則とする考え方は,本件でBに当然の更新権を認めるものではありません。また,指針の細かな例示,B・Cの個別の採点内容及び新規者の提案内容は与えられていません。長期営業だけで具体的な衛生・清掃活動を実施したと補わず,実績評価を是認する論証には事実上の限界があります。未公表の固定点を独立した基準追加とみる構成なら,公表の瑕疵をより厳しく評価する余地があります。条例自体の無効,国賠請求及び設問が仮定した訴訟要件への再検討は中心答案に混ぜません。
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関連実務記事は理解の補助です。試験実施日より後の法改正・裁判例を本問当時の答案要求へ遡らせる根拠にはしていません。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①法務省「令和3年司法試験論文式試験問題・公法系科目」(第2問:PDF6頁の表紙,本文7~13頁)
②法務省「令和3年司法試験論文式試験問題出題趣旨」(PDF3頁の〔第2問〕から4頁の次科目直前まで)
③法務省「令和3年司法試験の採点実感・公法系科目」(第2問:PDF5~12頁,採点方針・水準・全体的印象・各設問・末尾の教育に関する指摘)
2 法令
行政事件訴訟法(試験日当時の版)
行政手続法(試験日当時の版)
道路法(試験日当時の版)
行訴法3・9・30・32・33条,行手法2・3・5・10条,道路法32・33条を中心に確認しました。A市条例・規則及び手続条例は架空の問題設定であり,問題文の抜粋と同内容との指定を用います。地方公共団体の条例に基づく処分へ行手法第2章を直接適用せず,市の手続条例を介して論じます。
3 裁判例
①最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・昭和37年(オ)第296号・民集18巻8号1809頁(判決PDF全2頁)
②最高裁昭和43年12月24日第三小法廷判決・昭和40年(行ツ)第73号・民集22巻13号3254頁(判決PDF全6頁)
③最高裁昭和50年5月29日第一小法廷判決・昭和42年(行ツ)第84号・民集29巻5号662頁(判決PDF全11頁)
4 確認状態
Confirmed(確認済み):上記範囲の公式本文,試験日当時の法令及び3判決の原文を確認しました。Source statement(資料記載):表の引用と公式の要求・評価です。Inference(推論):評価単位への整理,重み,処分性の採用構成,Bへの期待利益の配慮及び推薦尊重義務の本件への参照です。これらを法務省の公式配点又は判決が本件を直接判断した結論とは表示しません。
Unknown(未確認・与件不足):指針の詳細な全文,個別採点,新規者の具体的提案内容,判例秘書の収録状況及び検索網羅性です。資料取得経路の失敗を資料不存在と扱わず,与えられていない事実は補充していません。特に未公表申合せの許容範囲は,上記の事実不足を踏まえたB側の論証です。確認日は令和8年10月8日です。