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令和3年司法試験民事系第3問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した63項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和3年司法試験民事系第3問について,公式資料に即した63の評価項目と5段階の重み付け,読みやすく段落を分けた模範解答を示す。中心は,申立事項の解釈,訴訟承継の具体化及び承継後の手続保障である。

第1 この記事の対象と結論

対象は令和3年司法試験の民事系科目第3問(民事訴訟法)である。公式の出題の趣旨と採点実感から63項目を独自に抽出した。重み5は35項目である。立退料を条件とする判決,訴訟承継の意味及び承継後の新主張の扱いを,制度の趣旨と具体的事実から説明することが中心となる。

模範解答では,増額判決を許容し,減額は予告された範囲内に限る構成を採る。Zの訴訟引受けを認め,設問3ではXの却下立論と,重要性の変容・Yの客観的な防御の懈怠に基づくZの反論を対置する。公式資料が理由を付した別構成を許容する事項では,本答案の結論が唯一の正答ではない。

重み5の全項目は第4の分布説明から番号で確認できる。重みは記事独自の分析であり,法務省の公式採点基準,項目別配点又は合格可能性を示すものではない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一つの行は一つの判定対象を表す。必須,高評価,負例,許容分岐を重みと別に表示する。「負例」は誤りを避ける項目であり,その誤った論述を答案へ追加する趣旨ではない。「許容分岐」は記載した構成を採用するときだけ適用する。両方の分岐を全答案へ累積して要求しない。

出典の頁はPDFの物理頁である。「記載なし」は,本問に関する全関連範囲を読んだ結果の表示である。資料からの評価項目の言換えは独自分析であり,資料の逐語引用ではない。一般的な答案作法は重みを付さず表の後に分ける。

2 5段階の重み付けの基準

5=採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格そのもの。4=出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項。3=どちらか一方が明示する中核の理由付け。2=補強又は典型的な誤りの回避。1=一方が控えめに触れる事項。重み4を,全て「高く評価された」事項と同義にはしない。件数の割当てをせず判断した結果,重み1は0件となった。

第3 本問の概要

Xは土地賃貸人,Yは借地人であり,Yが土地上の建物を所有してレストランを経営する。Xは借地契約の更新を拒絶し,1000万円の支払との引換えに建物収去土地明渡しを求める。第1回期日に,Xは金額に強いこだわりがないが,より少額が適切で,必要なら多額の支払も検討すると述べる。設問1は申立てと異なる額の引換給付判決の許否を問う。弁論主義と借地借家法6条の実体解釈は検討対象から除かれている。

訴訟中にYがZへ建物を賃貸し,引き渡す。設問2は民訴法50条の承継を,訴訟物義務そのものの移転に限らず具体化することを求める。XのYに対する訴訟物は,契約終了に基づく目的物返還請求権であるとの前提を維持する。

争点整理・人証調べが終わった後,Zの代理人Lが,契約締結時の1500万円の権利金に更新料前払の性質もあると考える。Yは通帳と振込みを提訴前から把握していた。設問3は,まずXの立場からYの新主張の却下を論証し,その後,Yなら却下されるとの前提の下で,XのZに対する立論とZの反論を求める。設問の配分は40:20:40である。

第4 評価項目と重み

1 設問1・課題1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1増額判決を民訴法246条の申立拘束の問題として位置付ける
必須/両者由来
512頁・第3問:増額判決を民訴法246条の申立拘束の問題として位置付ける。18頁・第3問:増額判決を民訴法246条の申立拘束の問題として位置付ける。
2処分権主義の根拠を私的自治まで遡って説明する
高評価/採点実感由来
3記載なし(本問の関連範囲を実読)18頁・第3問:処分権主義の根拠を私的自治まで遡って説明する。
3246条の原告意思尊重の趣旨を説明する
必須/両者由来
412頁・第3問:246条の原告意思尊重の趣旨。18頁・第3問:246条の原告意思尊重の趣旨。
4246条が双方の不利益の最大限を予告する趣旨を説明する
必須/両者由来
412頁・第3問:246条が双方の不利益の最大限を予告する趣旨。18頁・第3問:246条が双方の不利益の最大限を予告する趣旨。
5訴状と第1回期日の具体的陳述から増額についての現実の意思を分析する
必須/両者由来
512頁・第3問:訴状と第1回期日の具体的陳述から増額についての現実の意思を分析する。18頁・第3問:訴状と第1回期日の具体的陳述から増額についての現実の意思を分析する。
6検討する用意は高額でも払う現実の意思の確定ではないと区別する
必須/両者由来
512頁・第3問:検討する用意は高額でも払う現実の意思の確定ではない。18頁・第3問:検討する用意は高額でも払う現実の意思の確定ではない。
7現実の意思の不明部分を合理的意思の推測で補うという順序を示す
必須/両者由来
512頁・第3問:現実の意思の不明部分を合理的意思の推測で補うという順序。18頁・第3問:現実の意思の不明部分を合理的意思の推測で補うという順序。
8増額判決をできない場合は正当事由不足により請求棄却と特定する
必須/両者由来
512頁・第3問:増額判決をできない場合は正当事由不足により請求棄却と特定する。18頁・第3問:増額判決をできない場合は正当事由不足により請求棄却と特定する。
9棄却判決と増額判決の効果を具体的に比較してXの合理的意思を論ずる
必須/両者由来
512頁・第3問:棄却判決と増額判決の効果を具体的に比較してXの合理的意思。18頁・第3問:棄却判決と増額判決の効果を具体的に比較してXの合理的意思。
10増額許容構成では引換条件がXへの債務名義・支払債務を生まないと説明する
許容分岐/採点実感由来/条件:増額を許容する構成
3記載なし(本問の関連範囲を実読)18頁・第3問:増額許容構成では引換条件がXへの債務名義・支払債務を生まない。
11増額否定構成では高額判決が以後の交渉の基準となる不利益を理由付ける
許容分岐/採点実感由来/条件:増額を否定する構成
3記載なし(本問の関連範囲を実読)18頁・第3問:増額否定構成では高額判決が以後の交渉の基準となる不利益を理由付ける。
12増額でもYに予告された最大不利益を超えないことを論ずる
必須/両者由来
412頁・第3問:増額でもYに予告された最大不利益を超えないこと。19頁・第3問:増額でもYに予告された最大不利益を超えないこと。
13増額の許否は説得的な理由に基づいて結論を示す
必須/両者由来
412頁・第3問:増額の許否は説得的な理由に基づいて結論。19頁・第3問:増額の許否は説得的な理由に基づいて結論。
14昭和46年判決から大幅増額を一律禁止する結論を直結しない
負例/出題の趣旨由来
313頁・第3問:昭和46年判決から大幅増額を一律禁止する結論を直結しない。記載なし(本問の関連範囲を実読)
15設問1を弁論主義の問題と取り違えない
負例/採点実感由来
5記載なし(本問の関連範囲を実読)19頁・第3問:設問1を弁論主義の問題と取り違えない。

2 設問1・課題2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
16減額も246条の二つの趣旨から判断する
必須/両者由来
413頁・第3問:減額も246条の二つの趣旨から判断する。19頁・第3問:減額も246条の二つの趣旨から判断する。
17陳述から格段差のない範囲の減額を求める現実意思を具体的に読む
必須/両者由来
513頁・第3問:陳述から格段差のない範囲の減額を求める現実意思を具体的に読む。19頁・第3問:陳述から格段差のない範囲の減額を求める現実意思を具体的に読む。
18大幅減額を求める現実意思は示されていないと区別する
必須/両者由来
413頁・第3問:大幅減額を求める現実意思は示されていない。19頁・第3問:大幅減額を求める現実意思は示されていない。
19減額についても不明な現実意思と合理的意思を分けて補充する
必須/両者由来
513頁・第3問:減額についても不明な現実意思と合理的意思を分けて補充する。19頁・第3問:減額についても不明な現実意思と合理的意思を分けて補充する。
20Yが出頭した期日の減額陳述と調書記載を予告の基礎として使う
必須/両者由来
413頁・第3問:Yが出頭した期日の減額陳述と調書記載を予告の基礎として使う。20頁・第3問:Yが出頭した期日の減額陳述と調書記載を予告の基礎として使う。
21Yに対して最大不利益として何が予告されたかを具体的に評価する
必須/両者由来
513頁・第3問:Yに対して最大不利益として何が予告されたか。19頁・第3問:Yに対して最大不利益として何が予告されたか。
22格段差のない減額と大幅減額で予告範囲を区別して結論を示す
必須/両者由来
513頁・第3問:格段差のない減額と大幅減額で予告範囲を区別して結論。20頁・第3問:格段差のない減額と大幅減額で予告範囲を区別して結論。
23Yが1000万円でも不足と争うことだけを不意打ちの根拠にしない
負例/採点実感由来
2記載なし(本問の関連範囲を実読)20頁・第3問:Yが1000万円でも不足と争うことだけを不意打ちの根拠にしない。
24増額と減額の各課題で原告意思と被告予告を独立に点検する
必須/両者由来
413頁・第3問:増額と減額の各課題で原告意思と被告予告を独立に点検する。19頁・第3問:増額と減額の各課題で原告意思と被告予告を独立に点検する。

3 設問2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
2550条の訴訟引受けにおける承継の意味を解釈問題として示す
必須/両者由来
513頁・第3問:50条の訴訟引受けにおける承継の意味を解釈問題として示す。20頁・第3問:50条の訴訟引受けにおける承継の意味を解釈問題として示す。
26承継制度による従前訴訟状態の流用と訴訟経済を説明する
必須/両者由来
413頁・第3問:承継制度による従前訴訟状態の流用と訴訟経済。20頁・第3問:承継制度による従前訴訟状態の流用と訴訟経済。
27相手方の既得的地位維持による公平を制度趣旨として説明する
必須/両者由来
513頁・第3問:相手方の既得的地位維持による公平を制度趣旨として説明する。20頁・第3問:相手方の既得的地位維持による公平を制度趣旨として説明する。
28紛争主体地位という語だけで止めず承継の対象と意味を具体化する
必須/両者由来
513頁・第3問:紛争主体地位という語だけで止めず承継の対象と意味を具体化する。21頁・第3問:紛争主体地位という語だけで止めず承継の対象と意味を具体化する。
29被承継人を適切な当事者とする地位の移転と承継人の適格を接続する
必須/両者由来
513頁・第3問:被承継人を適切な当事者とする地位の移転と承継人の適格を接続する。21頁・第3問:被承継人を適切な当事者とする地位の移転と承継人の適格を接続する。
30Yを契約終了に基づく収去明渡訴訟の適切な被告とする地位を特定する
必須/両者由来
413頁・第3問:Yを契約終了に基づく収去明渡訴訟の適切な被告とする地位を特定する。21頁・第3問:Yを契約終了に基づく収去明渡訴訟の適切な被告とする地位を特定する。
31建物賃貸と引渡しによりZへ移った具体的地位を特定する
必須/両者由来
413頁・第3問:建物賃貸と引渡しによりZへ移った具体的地位を特定する。21頁・第3問:建物賃貸と引渡しによりZへ移った具体的地位を特定する。
32移転した地位がXZ間の退去明渡請求の被告適格を基礎付けると論ずる
必須/両者由来
513頁・第3問:移転した地位がXZ間の退去明渡請求の被告適格を基礎付けると論ずる。21頁・第3問:移転した地位がXZ間の退去明渡請求の被告適格を基礎付けると論ずる。
33XYとXZの訴訟物の相違を捨象して当事者適格の単純移転としない
負例/採点実感由来
5記載なし(本問の関連範囲を実読)21頁・第3問:XYとXZの訴訟物の相違を捨象して当事者適格の単純移転としない。
34一回的解決又は占有という言葉だけで承継の当てはめを終えない
負例/両者由来
213頁・第3問:一回的解決又は占有という言葉だけで承継の当てはめを終えない。21頁・第3問:一回的解決又は占有という言葉だけで承継の当てはめを終えない。
35採用した承継の定義と事実評価を一貫させてZ該当性を判断する
必須/両者由来
413頁・第3問:採用した承継の定義と事実評価を一貫させてZ該当性を判断する。21頁・第3問:採用した承継の定義と事実評価を一貫させてZ該当性を判断する。

4 設問3・課題1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
36157条1項を項まで正確に摘示する
必須/両者由来
413頁・第3問:157条1項を項まで正確に摘示する。17頁・第3問:157条1項を項まで正確に摘示する。
37時機に後れるという要件の具体的意味を示す
必須/両者由来
513頁・第3問:時機に後れるという要件の具体的意味。22頁・第3問:時機に後れるという要件の具体的意味。
38故意又は重大な過失という要件の具体的意味を示す
必須/両者由来
513頁・第3問:故意又は重大な過失という要件の具体的意味。22頁・第3問:故意又は重大な過失という要件の具体的意味。
39訴訟完結遅延の意味を提出・却下の場合の比較で示す
必須/両者由来
513頁・第3問:訴訟完結遅延の意味を提出・却下の場合の比較で示す。22頁・第3問:訴訟完結遅延の意味を提出・却下の場合の比較で示す。
40弁論準備終結・人証取調べ済み・最終期日という進行へ時機要件を当てはめる
必須/両者由来
413頁・第3問:弁論準備終結・人証取調べ済み・最終期日という進行へ時機要件を当てはめる。21頁・第3問:弁論準備終結・人証取調べ済み・最終期日という進行へ時機要件を当てはめる。
41Yが通帳・支払・更新紛争との関係を把握していた事情へ重過失を当てはめる
必須/両者由来
413頁・第3問:Yが通帳・支払・更新紛争との関係を把握していた事情へ重過失を当てはめる。22頁・第3問:Yが通帳・支払・更新紛争との関係を把握していた事情へ重過失を当てはめる。
42更新料前払性質を争うXの反論・反証活動を具体的に予測する
必須/両者由来
513頁・第3問:更新料前払性質を争うXの反論・反証活動を具体的に予測する。22頁・第3問:更新料前払性質を争うXの反論・反証活動を具体的に予測する。
43通帳書証・A尋問を行うYの立証活動を具体的に予測する
必須/両者由来
413頁・第3問:通帳書証・A尋問を行うYの立証活動を具体的に予測する。22頁・第3問:通帳書証・A尋問を行うYの立証活動を具体的に予測する。
44その攻防による追加期日の必要と終結遅延を因果的に接続する
必須/両者由来
513頁・第3問:その攻防による追加期日の必要と終結遅延を因果的に接続する。22頁・第3問:その攻防による追加期日の必要と終結遅延を因果的に接続する。
45174条による167条準用を摘示して説明要求の根拠を示す
必須/両者由来
514頁・第3問:174条による167条準用を摘示して説明要求の根拠。22頁・第3問:174条による167条準用を摘示して説明要求の根拠。
46提出できなかった理由の説明要求によりYに説明義務が生じると示す
必須/両者由来
414頁・第3問:提出できなかった理由の説明要求によりYに説明義務が生じる。22頁・第3問:提出できなかった理由の説明要求によりYに説明義務が生じる。
47説明拒絶・不合理な説明から時機又は重過失が事実上推定され得ると示す
高評価/両者由来
514頁・第3問:説明拒絶・不合理な説明から時機又は重過失が事実上推定され得る。22頁・第3問:説明拒絶・不合理な説明から時機又は重過失が事実上推定され得る。

5 設問3・課題2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
48Yなら却下されるとの設問上の前提を維持する
必須/両者由来
414頁・第3問:Yなら却下されるとの設問上の前提を維持する。22頁・第3問:Yなら却下されるとの設問上の前提を維持する。
49訴訟状態承認義務の根拠として相手方の既得的地位保護を説明する
必須/両者由来
514頁・第3問:訴訟状態承認義務の根拠として相手方の既得的地位保護。22頁・第3問:訴訟状態承認義務の根拠として相手方の既得的地位保護。
50被承継人への機会付与と利用による代替的手続保障をXの根拠として説明する
必須/両者由来
514頁・第3問:被承継人への機会付与と利用による代替的手続保障をXの根拠として説明する。22頁・第3問:被承継人への機会付与と利用による代替的手続保障をXの根拠として説明する。
51承認対象たる訴訟状態の具体的意味を示す
必須/両者由来
514頁・第3問:承認対象たる訴訟状態の具体的意味。22頁・第3問:承認対象たる訴訟状態の具体的意味。
52訴訟状態承認の基準時を承継原因発生時に固定する
必須/両者由来
514頁・第3問:訴訟状態承認の基準時を承継原因発生時に固定する。22頁・第3問:訴訟状態承認の基準時を承継原因発生時に固定する。
53最終期日の却下判断と承継原因発生時の時間差を説明する
高評価/採点実感由来
5記載なし(本問の関連範囲を実読)22頁・第3問:最終期日の却下判断と承継原因発生時の時間差。
54未却下でも承継時に形成された懈怠・却下原因を引き継ぐとXから論ずる
必須/両者由来
514頁・第3問:未却下でも承継時に形成された懈怠・却下原因を引き継ぐとXから論ずる。22頁・第3問:未却下でも承継時に形成された懈怠・却下原因を引き継ぐとXから論ずる。
55Z反論の前に承認義務の原則とその例外の関係を明示する
必須/両者由来
514頁・第3問:Z反論の前に承認義務の原則とその例外の関係を明示する。23頁・第3問:Z反論の前に承認義務の原則とその例外の関係を明示する。
56例外構成では承継前後での新主張の重要性の変容を説明する
許容分岐/両者由来/条件:承認義務の例外を採用する構成
514頁・第3問:例外構成では承継前後での新主張の重要性の変容。23頁・第3問:例外構成では承継前後での新主張の重要性の変容。
57例外構成ではYの訴訟追行のなれ合い又は客観的防御懈怠を検討する
許容分岐/両者由来/条件:承認義務の例外を採用する構成
514頁・第3問:例外構成ではYの訴訟追行のなれ合い又は客観的防御懈怠。23頁・第3問:例外構成ではYの訴訟追行のなれ合い又は客観的防御懈怠。
58代替的保障の例外はYの追行の評価から理由付ける
必須/両者由来
514頁・第3問:代替的保障の例外はYの追行の評価から理由付ける。23頁・第3問:代替的保障の例外はYの追行の評価から理由付ける。
59Zに重過失がない又は固有の防御であることだけで承認義務を外さない
負例/採点実感由来
5記載なし(本問の関連範囲を実読)23頁・第3問:Zに重過失がない又は固有の防御であることだけで承認義務を外さない。
60全面的な承認義務否定説を採る場合は義務のない承継制度の意義を説明する
許容分岐/両者由来/条件:承認義務を全面否定する構成
314頁・第3問:全面的な承認義務否定説を採る場合は義務のない承継制度の意義。23頁・第3問:全面的な承認義務否定説を採る場合は義務のない承継制度の意義。
61Xの却下立論とZの反論を両方示し一方の結論だけにしない
必須/両者由来
414頁・第3問:Xの却下立論とZの反論を両方示し一方の結論だけにしない。23頁・第3問:Xの却下立論とZの反論を両方示し一方の結論だけにしない。

6 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
62設問1の本案判断を請求棄却と表現し訴え棄却としない
負例/採点実感由来
2記載なし(本問の関連範囲を実読)17頁・第3問:設問1の本案判断を請求棄却と表現し訴え棄却としない。
63157条の用語を時機に後れたと正確に書く
負例/採点実感由来
2記載なし(本問の関連範囲を実読)17頁・第3問:157条の用語を時機に後れたと正確に書く。

一般的な指摘(重みなし):課題の順序・相互関係を整理すること,定型論証だけで終えないこと,条文と用語を正確に書くこと,民事・刑事手続を混同しないこと,設問3にも時間を配分すること,第三者が読める表記を用いること,体系・条文・実務の理解を結び付けることが挙げられる(採点実感17~18頁,23~24頁)。これらは63項目の集計に含めていない。

7 重みの分布

重み1=0項目,2=4項目,3=5項目,4=19項目,5=35項目。合計63項目,重み合計274である。重み合計は項目の数値を足した集計にすぎず,試験の得点ではない。

設問1・課題1の重み5:番号1:増額判決を民訴法246条の申立拘束の問題として位置付ける
番号5:訴状と第1回期日の具体的陳述から増額についての現実の意思を分析する
番号6:検討する用意は高額でも払う現実の意思の確定ではないと区別する
番号7:現実の意思の不明部分を合理的意思の推測で補うという順序を示す
番号8:増額判決をできない場合は正当事由不足により請求棄却と特定する
番号9:棄却判決と増額判決の効果を具体的に比較してXの合理的意思を論ずる
番号15:設問1を弁論主義の問題と取り違えない

設問1・課題2の重み5:番号17:陳述から格段差のない範囲の減額を求める現実意思を具体的に読む
番号19:減額についても不明な現実意思と合理的意思を分けて補充する
番号21:Yに対して最大不利益として何が予告されたかを具体的に評価する
番号22:格段差のない減額と大幅減額で予告範囲を区別して結論を示す

設問2の重み5:番号25:50条の訴訟引受けにおける承継の意味を解釈問題として示す
番号27:相手方の既得的地位維持による公平を制度趣旨として説明する
番号28:紛争主体地位という語だけで止めず承継の対象と意味を具体化する
番号29:被承継人を適切な当事者とする地位の移転と承継人の適格を接続する
番号32:移転した地位がXZ間の退去明渡請求の被告適格を基礎付けると論ずる
番号33:XYとXZの訴訟物の相違を捨象して当事者適格の単純移転としない

設問3・課題1の重み5:番号37:時機に後れるという要件の具体的意味を示す
番号38:故意又は重大な過失という要件の具体的意味を示す
番号39:訴訟完結遅延の意味を提出・却下の場合の比較で示す
番号42:更新料前払性質を争うXの反論・反証活動を具体的に予測する
番号44:その攻防による追加期日の必要と終結遅延を因果的に接続する
番号45:174条による167条準用を摘示して説明要求の根拠を示す
番号47:説明拒絶・不合理な説明から時機又は重過失が事実上推定され得ると示す

設問3・課題2の重み5:番号49:訴訟状態承認義務の根拠として相手方の既得的地位保護を説明する
番号50:被承継人への機会付与と利用による代替的手続保障をXの根拠として説明する
番号51:承認対象たる訴訟状態の具体的意味を示す
番号52:訴訟状態承認の基準時を承継原因発生時に固定する
番号53:最終期日の却下判断と承継原因発生時の時間差を説明する
番号54:未却下でも承継時に形成された懈怠・却下原因を引き継ぐとXから論ずる
番号55:Z反論の前に承認義務の原則とその例外の関係を明示する
番号56:例外構成では承継前後での新主張の重要性の変容を説明する(承認義務の例外を採用する構成)
番号57:例外構成ではYの訴訟追行のなれ合い又は客観的防御懈怠を検討する(承認義務の例外を採用する構成)
番号58:代替的保障の例外はYの追行の評価から理由付ける
番号59:Zに重過失がない又は固有の防御であることだけで承認義務を外さない

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

2021年5月13日の試験で施行されていた法令を基準とする。本文は約5667字(空白・改行を除いて計数)である。各設問の課題と指定された立場を保ち,答案の階層を「1→(1)→ア」とする。昭和46年判決と昭和41年判決は判決原文を確認した。後発の訴訟デジタル化等の改正法を本答案へ適用しない。

2 答案

1 設問1

(1) 課題1
ア 裁判所は当事者が申し立てていない事項について判決することができない(民事訴訟法246条)。これは,私的自治に由来する処分権主義を判決の面から定めた規定である。原告の意思を尊重するとともに,当事者双方に不利益の最大限を予告し,訴訟の負担を見積もって主張立証できるようにする趣旨を有する。したがって,引換給付判決の許否は,請求の趣旨の文字だけでなく,口頭弁論における陳述も踏まえて原告が求める権利保護の範囲を解釈し,被告に予告された不利益を超えないかを検討して判断する。

イ 昭和46年判決は,原告が申出額又はこれと格段の相違のない範囲の金員の支払意思を表明した事案で,増額した立退料の支払との引換給付判決を認めた。しかし,格段の相違を超えた増額を一律に禁止したものではない。その許否は,本件の申立ての趣旨から独立に検討すべきである。

ウ 裁判所が必要と考える立退料が1000万円と格段の相違のない範囲を超えるのに,その支払との引換給付を認めないなら,申出額では正当事由を補完できず,Xの明渡請求は棄却される。1000万円を条件とした請求をそのまま認容することも,立退料なしの明渡しを命ずることもできない。
これに対し,より多額の立退料を条件とする判決は,Xに金銭支払を無条件に命じるものではなく,その支払をして初めて明渡しを実現できるという判決である。Xは明渡しを得たいときに支払えばよく,支払わなければ明渡しを強制できない。請求棄却と比べれば,増額条件の下でも明渡しを実現する可能性が残る点でXに有利である。Yについても,申出額より多くの金員の支払を条件とする以上,明渡しの負担を増大させず,予告された不利益を超えない。

エ もっとも,原告が金額に明確な上限を設けていれば,裁判所が合理的意思の推測でその限界を取り払うことはできない。本件では,Xは1000万円に強いこだわりがなく,明渡しが一番大事で,裁判所が多額の支払を必要と考えるなら検討する用意があると陳述している。したがって,格段の相違を超える金額であるというだけで直ちにXの意思に反するとはいえず,全部棄却よりこの判決を望むという合理的意思を認めることができる。
ただし,「検討する用意」は,高額でも具体的に支払うという現実の意思を明示したものではない。以上は,判決の効果を比較して不明な部分を補う合理的意思の推定である。高額の判決が以後の交渉の基準となるので棄却を望むとの反論も考えられる。しかし,引換条件の記載はXに対する金銭給付の債務名義ではなく,Xにその金員を支払う債務を負わせるものではない。明渡しを最も重視する本件のXには,支払って明渡しを実現する選択肢を残す方が合理的である。したがって,現実に上限を限定する意思が明らかでない本件では,格段の相違のない範囲を超える増額判決も許されると解する。

(2) 課題2
ア 1000万円より少額との引換給付は,Xにとって支払条件を軽くし,Yにとって明渡しと引換えに受けられる金額を少なくする。したがって,増額の場合と異なり,請求の一部認容だから当然に許されるとはいえない。訴状の条件を形式的に捉えると,Xが求めている以上の権利保護を与え,Yへの不意打ちにもなり得る。

イ しかし,Xは1000万円が早期解決のため若干多めの提示であり,その見込みがなくなった以上,より少額が適切だと述べている。この陳述からは,1000万円又はそれと格段の相違のない範囲内で減額した金額との引換給付を求める意思が認められる。Yも出頭した期日でこの陳述を聞き,陳述が口頭弁論調書に記載されているため,当該範囲内の減額を予測して防御できる。したがって,その範囲内で少額の立退料との引換給付判決をすることは許される。

ウ 大幅な減額を求める現実の意思が不明である点については,合理的意思を補う必要がある。Xは明渡しを最優先し,より少額が適切だとも述べているため,さらに少額で明渡しを得られること自体を望むと推定できる。他方,有利な条件を明示して求めなかったことから申立てを限定する意思を推定する余地もあるが,本件の陳述からは前者が合理的である。ただし,原告の意思の範囲に含まれることと,被告への最大不利益の予告があることは別である。
他方,格段の相違のない範囲を超える大幅な減額まで,この陳述からYに予告されたとはいえない。「若干多め」という陳述の意味を逸脱し,Yは1000万円程度の支払を条件とする明渡請求として防御してきたのに,著しく低い条件による明渡しを命じられることになる。したがって,本件の申立ての下ではそのような大幅減額は許されない。裁判所が少額の支払で正当事由を補完できると考えても,申立てに含まれる条件の範囲で判決すべきである。

2 設問2

(1) 民事訴訟法50条1項は,訴訟係属中に第三者が訴訟の目的である義務を承継した場合,当事者の申立てにより訴訟を引き受けさせることを認める。これを訴訟物たる義務そのものの移転に限定すると,係争物の支配が第三者へ移り,従前当事者に対する判決だけでは紛争解決ができなくなる場合に,第三者を相手とした新たな訴訟を必要とする。既に積み重ねた審理を利用できず,相手方の負担が増し,訴訟中の処分によって解決を妨げられる。
訴訟承継制度は,従前の訴訟資料及び訴訟状態を流用して訴訟経済を図り,相手方が従前の審理で獲得した既得的地位を維持して公平を確保する趣旨を有する。そこで,同条の承継には,訴訟物たる義務の移転に加え,従前の被告を当事者として適切な者としていた法的地位が第三者に移り,その地位が原告と第三者との訴訟でも第三者を適切な被告とする場合を含むと解する。同じ訴訟物について当事者適格だけが移転する場合に限られず,従前の義務の一部を包含する義務について,係争物の占有と従属的利用権原が移り,従前の訴訟資料がその存否を判断する資料となる場合も含む。単なる事実上の関係や審理の便利さだけでは足りない。

(2) 本件の訴訟物は,XY間の賃貸借終了に基づく目的物返還請求権としての建物収去土地明渡請求権である。Zは土地賃貸借契約上の賃借人地位を譲り受けたわけではなく,建物収去義務そのものを負担したものでもない。Yを適切な被告としていたのは,土地賃借人として本件建物を所有し,本件土地を占有して,契約終了時には建物を収去し土地を返還すべき地位である。この収去義務には建物から退去すべき部分も含まれる。ZはYから建物を賃借して引渡しを受け,建物及び敷地の占有とYの権原に依存する利用上の地位を取得した。この占有に対応する退去義務の存否の紛争は,XZ間の紛争へ移行する。ZはXとの土地賃貸借の当事者ではなく,XのZに対する請求は土地所有権に基づく建物退去土地明渡請求であって,XのYに対する契約上の請求とは訴訟物が異なる。しかし,Zの占有の適否はYの土地賃貸借が終了したかに依存し,Yの主張立証とXの反対資料を用いて判断できる。この占有・権原上の地位が,Zを新請求の適切な被告とする。
この結果,XがYだけを相手に土地返還を求めても,Zの建物占有が残り,現実の土地明渡しを実現できない。Zに対する別訴で契約終了を一から審理するのは,承継制度の趣旨に反する。したがって,ZはYの紛争主体たる地位をその占有に対応する範囲で承継しており,XがZに対する建物退去土地明渡請求を定立して訴訟引受けを申し立てることができる。

(3) Zに独立した利用権原があれば,単なる紛争との関連だけでは承継を認められないが,本件ではYからの建物賃貸借に基づく従属的地位である。Zには審尋及び引受け後の主張立証の機会を保障して,従前訴訟利用と防御権の調整を図るべきである。なお,Zが引き受けることからYの義務が当然に消滅したり,Yが当然に訴訟を脱退したりするものではない。

3 設問3

(1) 課題1――Xの立場
ア 民事訴訟法157条1項により攻撃防御方法を却下するには,故意又は重大な過失により時機に後れて提出し,これによって訴訟の完結を遅延させることが必要である。「時機に後れる」とは,訴訟の進行状況から本来提出すべき適切な時期を過ぎることをいう。故意は遅れを知って提出を留保した場合,重大な過失は容易に適時提出できたのに著しく注意を欠いた場合をいう。遅延は,提出された場合と却下した場合を比較し,追加の審理によって終結が遅くなるかで判断する。
本件では,争点及び証拠の整理を終えて弁論準備手続が終結し,Cの証人尋問及びXYの当事者尋問も終了して,次回期日に弁論を終結する予定である。本件新主張は,更新拒絶の正当事由を判断するために従前の事情を補う防御方法であり,本来は争点整理中に提出すべきものだった。最終期日に初めて提出するのは時機に後れる。

イ Yは,Bから権利金の支払と更新時の紛争への備えとして通帳を保管すべきことを伝えられ,契約書と共に通帳を厳重に保管し,提訴前にも振込みを把握していた。Yは既に立退料の不足等を争い,契約更新の可否が争点であることを認識していた。更新時の問題に備えて保管するよう言われた1500万円もの金員について,性質を確認し,争点整理段階で相談・調査して主張することは容易だった。
Yが法律の専門家でなく重要性を理解していなかったとしても,知識不足だけで重大な過失が否定されるわけではない。Xは,以上の具体的事情から,少なくとも重大な過失があると主張する。故意に留保していたという事実までは問題文から認められない。

ウ Xは権利金の支払及び更新料前払という性質について認否し,特に後者を争う。Yは通帳を提出し,Aの尋問によって契約締結時の合意内容を立証しようとする。通帳の振込み記載だけでは金員の性質が明らかでなく,Aの尋問やこれへの反証が必要となり,最終期日に弁論を終結できず,追加期日の指定を要する。新主張を却下すれば予定どおり終結できるから,提出と遅延の因果関係がある。
ただし,Xが新主張を全面的に認める等により追加の審理を要しないなら,最終期日に出たというだけで遅延を認めることはできない。遅延は本件で予想される認否,証拠申出,反証の必要性に基づいて示す。

エ Xは,174条が準用する167条に基づき,Yに対して弁論準備手続終結前に本件新主張を提出できなかった理由の説明を求めることができる。説明要求を受けたYは説明義務を負う。説明を拒み,又は合理性を欠く説明しかできない場合には,時機に後れたこと又は重大な過失が事実上推定され得る。通帳と振込みを知りながら重要でないと考えて提出しなかったという説明を引き出せば,早期提出を期待できた事情を明らかにし,却下の論証を補強できる。ただし,法定の推定や当然の失権ではなく,他の事情と併せて判断する。

(2) 課題2――Xの立論とZの反論
ア Xは,訴訟承継の趣旨から,Zは承継原因発生時に形成されていた訴訟状態を承認しなければならないと主張する。Yに対して進めた争点整理及び証拠調べを無駄にせず,Xが得た手続上の既得的地位を保護するためである。また,被承継人に与えた主張立証の機会とその利用をもって承継人への手続保障に代えることができる。ここで訴訟状態とは,既に行われた訴訟行為,提出済みの資料及び不提出・懈怠に伴う手続上の地位を含む,その時点までの訴訟追行から形成された状態をいう。承継人が防御方法を改めて無制限に提出できれば,訴訟承継によって審理を振り出しに戻すことになり,157条の趣旨も失われる。
設問の前提によれば,Yが最終期日に提出するなら本件新主張は却下される。承継原因は最終期日指定直後の建物賃貸・引渡しであり,その時には争点整理と証拠調べが終了し,Yは既に早期提出を怠っていた。課題1の却下判断の対象はその後の最終期日の提出であるから,両者の時点は異なる。しかし,承継原因発生時にも,将来提出すれば既存の遅延・懈怠の事情から却下されるという手続上の不利益が形成されていた。したがって,Xは,Zが承継するのはそのような手続状態であり,Z自身が直ちに弁護士へ依頼したとしても,Yに許されない新主張を復活させることはできず,却下すべきだと立論する。

イ Zは,原則として承認義務を負うことを認めつつ,代替的手続保障を正当化できない事情があるときは例外を認めるべきだと反論する。その検討対象は,Z自身が勤勉に委任・調査したかというだけではなく,Yの訴訟追行がZの防御を代替するものと評価できるかである。
本件では,Yはレストランの経営継続の必要性を従前の防御の中心としていた。ところが経営から退いてZに任せたことがその主張に不利に斟酌されるおそれがあるため,承継前には他の防御事情の陰にあった権利金の更新料前払としての性質が,承継後には防御のため一層重要となった。判断の基準時が契約満了時でも,問題文が示すこの不利益の可能性を踏まえると,新主張の重要性の変容を無視できない。
また,YはBから更新時の紛争に備えて通帳を保管するよう伝えられ,支払を把握していたのに,重要でないとして主張・調査しなかった。XYのなれ合いを認める事実はないが,客観的には有力な防御方法の提出を怠った訴訟追行と評価し得る。Yに機会を与えたことだけで,このような不利用までZのための十分な手続保障と評価するのは適切でない。
以上の重要性の変容及びYの客観的な防御の懈怠を理由に,この新主張について承認義務の例外を認めるべきである。Zが直ちにLに委任し,Lが通帳と相場を調査した事情は,この例外の下で改めて提出の適時性を評価する際に意味を持つ。Zは,Yなら却下されるとの前提を維持しても,Zによる本件新主張を却下すべきではないと反論できる。承継人に常に拘束がないとか,Zに重過失がないから当然に承認義務が消えるという主張ではない。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

設問1課題1は番号1~15,課題2は16~24,設問2は25~35,設問3課題1は36~47,課題2は48~61,答案全体は62~63に対応する。番号11と60は本答案が主位として採用しない許容分岐であり,下記で位置付けを説明する。負例の行は誤りの回避として監査する。

(2) 立退料と申立事項

増額では,現実の支払意思が不明であることを認めてから,請求棄却判決と増額判決を比較する。金銭の引換条件はXへの独立した支払命令ではない点が重要である(番号5~10)。他方,高額判決が交渉の基準となる不利益を理由に,棄却を望む合理的意思を論じる構成も,説得的な理由があれば許容される(番号11,採点実感18~19頁)。

減額でも,現実の意思,合理的意思,被告への予告を順に分ける(番号17~22)。少額ならXに有利であるというだけではYへの予告を証明しない。本答案は,格段差のない減額は期日陳述から予告されたが,大幅減額までは予告されていないとする。Xがより有利な判決を求めていない以上,申立条件を限度とする意思と読む構成や,訴状の1000万円を予告の限度とする構成にも理由付けの余地がある。

(3) 承継の具体化

「紛争主体たる地位」とだけ書くのでは足りない(番号28~32)。従前のYを適切な被告とする地位,建物賃貸と引渡しで移った地位,その地位がZを新請求の適切な被告とする理由を示す。昭和41年判決は,契約に基づく収去義務に退去部分が含まれ,占有移転によりその紛争が第三者との退去義務紛争へ移り,訴訟資料も依存することを理由とした。XYとXZで訴訟物が異なることを無視して当事者適格がそのまま移ったと扱ってはならない(番号33)。

(4) 却下要件と承継後の防御

157条1項では,時機,故意・重過失,訴訟完結遅延を別々に定義して当てはめる(番号36~44)。XY双方の主張立証活動とは,権利金の性質を巡る本案上の攻防である。174条・167条の説明要求は,説明義務と,拒絶・不合理説明からの事実上の推定まで述べる(番号45~47)。

Xの承認義務の根拠は既得的地位保護と代替的手続保障であり,基準時は承継原因発生時である(番号49~54)。Z反論でその義務を外すには,Z自身に重過失がないというだけでなく,重要性の変容又はYの追行の懈怠を通じて代替的保障の不足を示す必要がある(番号55~59)。本答案はなれ合いを創作せず,客観的な懈怠を検討する。

承認義務を全面否定する構成も,理由が十分なら公式資料上許容される。ただし,義務を伴わない承継制度でも従前資料の利用により訴訟経済を図れること,既得的地位維持との緊張をどう説明するかなど,制度の意義を別に示す必要がある(番号60)。本答案は原則承認と個別例外の構成を採る。

(5) 答案の限界と扱わなかった事項

本答案は,立退料の実体法上の相当額,弁論主義,YZ間の賃貸借の全実体問題及び承継後の全訴訟関係を網羅するものではない。設問が求める終点を優先した。公式が許容する学説の全原典を網羅確認したわけではなく,選択した構成の理由と事実評価を示す模範例である。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の別の模範解答

①令和3年度司法試験民事系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した71項目と5段階の重み付け(AI作成)
②令和3年度司法試験刑事系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した56項目と5段階の重み付け(AI作成)
③令和3年司法試験公法系第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した68項目と5段階の重み付け(AI作成)

2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①令和4年度司法試験民事系第3問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した53項目と5段階の重み付け(AI作成)。別年度の民事訴訟法の答案と比較するための関連記事であり,本問の法的根拠には用いない。

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①令和3年司法試験論文式試験問題(民事系科目):物理10頁の第3問表紙,11~14頁の本文。
②令和3年司法試験論文式試験問題出題の趣旨:物理12頁の民事系第3問開始から14頁の刑事系開始直前まで。
③令和3年司法試験の採点実感(民事系科目):物理17~24頁の第3問全体,採点方針・各設問・末尾の指摘まで。

2 法令

①民事訴訟法(2021年4月28日施行版):2条,41条,48条,50条,156条,157条,167条,174条,246条の原文を確認した。e-Govの改正履歴から試験日に対応する版を特定した。

3 裁判例

①最高裁昭和46年11月25日第一小法廷判決(昭和41(オ)1005):全文2頁を確認。旧借家法の事案における立退料の役割と当該申立ての範囲を扱う。
②最高裁昭和41年3月22日第三小法廷判決(昭和39(オ)620):全文2頁を確認。旧民訴法74条の建物賃借人への訴訟承継を扱う。旧条文下の判示と本問での50条解釈を区別した。

4 確認状態

問題文,公式解説の該当範囲,当時の条文及び上記2判決原文は実読した。評価項目と重みは公式資料の記述を踏まえた独自の整理であり,本件への当てはめ,合理的意思の推定及び例外の理由付けは本記事の分析である。訴訟状態承認義務の全学説・例外裁判例を網羅調査した結果ではない。法務省の公式配点・採点基準・合格可能性の推計とは区別して利用されたい。