第1 この記事の対象と結論
本記事は,令和5年司法試験論文式試験の民事系科目第3問(民事訴訟法)を対象に,出題の趣旨・採点実感から独自に抽出した75の評価項目と,約5000字の模範解答を示す。重みは5段階であり,重み5の13項目は答案の骨格又は評価の分かれ目に関わる。法務省の公式解答・公式配点ではない。
中心となる問いは,違法収集証拠の証拠能力,単独控訴における不利益変更禁止,相殺債権の既判力及び補助参加に関連する判決の効力である。答案では,証拠能力と証明力,審理範囲と判決変更の限界,援用する人と相手を区別する。
本答案は,設問1では信義則に基づく総合衡量により証拠能力を否定する。設問2では訴訟外再相殺の丙に法114条2項を類推適用し,(ア)(イ)は控訴棄却,(ウ)は原判決取消し及び200万円の請求認容とする。設問3・課題1は判決効ごとに検討し,丙の弁済と甲の免除で手続機会の違いを評価する。課題2ではZからYへの参加的効力の援用を認める。採用した構成と許容される別構成は,第5の枠外の解説で区別する。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一項目につき一つの判定対象を基本とし,公式資料の記述を答案の何を評価するかが分かる形に整理した。表の番号は設問ごとにリセットせず,1から75まで連続させる。出題の趣旨はPDF12~13頁の第3問部分,採点実感はPDF16~24頁の第3問部分を確認し,対応箇所の頁・設問及び要旨を示す。
「記載なし」は,当該資料の第3問部分を実読した範囲で,当該具体的事項の対応記載を確認できなかったことを示す。一般的な記述から導く項目は「間接」とし,根拠箇所を示す。未読・閲覧禁止・検索で未発見を「記載なし」へ置き換えるものではない。
項目の[必須][高評価][負例][許容分岐]は重みと別の区分である。負例は避けるべき説明を示し,許容分岐はその立場を採る場合に適用する。互いに両立しない分岐を全て答案に書くことや,重み5の高評価項目を全答案の必須事項とすることは求めない。
2 5段階の重み付けの基準
重みは,本記事の分析によるものであり,法務省の項目別配点・予測得点ではない。各段階への件数の割当てはしていない。
①重み5:採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの。
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項。
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け。
④重み2:一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項。
⑤重み1:一方が控えめに触れるだけの事項。
第3 本問の概要
対象は令和5年司法試験論文式・民事系科目第3問(民事訴訟法)である。試験実施日は2023年7月13日であり,問題文中の日時にかかわらず,試験時に施行されていた法令を基準とする。設問1・2・3の公式配点割合は25:35:40である。
XはYに甲債権200万円を請求し,Yは甲の弁済を主位に,乙債権による訴訟上相殺を予備に主張する。Xは乙の弁済及び丙債権による訴訟外相殺を主張し,甲の保証人ZがY側に補助参加する。甲・乙・丙はそれぞれ200万円である。
設問1は証拠能力に限り,証明力や後続事実を検討しない。Yの収集行為は犯罪に当たらないとの前提である。設問2ではXの控訴は適法,甲と丙も審理範囲に含まれ,再相殺の許容性・優先順位・充当の判断は維持される。控訴の利益,利息・損害金・費用は扱わない。設問3課題2では法46条以外の効力を扱わない。
設問1はYが無断で取得した電子メールの証拠能力を,法的根拠・判断基準と具体的な当てはめに分けて問う。設問2は甲・乙・丙の関係を踏まえ,控訴裁判所の三つの心証に応じた判決を問う。設問3は,Xから保証人Zへの後訴と,保証債務を履行したZからYへの求償訴訟とで,前訴判決の作用を区別する。
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | [必須]違法収集証拠の証拠能力を一般的に制限する明文規定がないと示す | 5 | 12頁・設問1:制限した規定はない | 17頁・設問1:制限した規定がない |
| 2 | [必須]違法な収集を助長するおそれを制限の背景として示す | 4 | 12頁・設問1:助長するおそれ | 19頁・設問1:違法な証拠収集を助長 |
| 3 | [必須]公正な裁判への信頼を損なうおそれを制限の背景として示す | 4 | 12頁・設問1:国民の信頼を損なう | 19頁・設問1:国民の信頼を損なう |
| 4 | [必須]選択した制限説の法的根拠を示す | 5 | 12頁・設問1:法的根拠及び判断基準 | 17頁・設問1:法的根拠及び判断基準 |
| 5 | [必須]収集の手段・態様の違法性を判断要素にする | 4 | 12頁・設問1:手段や態様の違法性 | 17頁・設問1:手段・態様の違法性 |
| 6 | [必須]被侵害利益の重大性を判断要素にする | 4 | 12頁・設問1:被侵害利益の重大性 | 17頁・設問1:被侵害利益の重大性 |
| 7 | [必須]証拠の重要性・真実発見の要請を肯定方向の要素にする | 4 | 12頁・設問1:証拠の重要性,真実発見の要請 | 18頁・設問1:肯定する方向の要素 |
| 8 | [必須]定立した基準と整合する当てはめをする | 5 | 12頁・設問1:判断基準と整合的 | 18頁・設問1:基準と(b)の当てはめが食い違う |
| 9 | [必須]無断で全メールをUSBに保存・持出した態様を評価する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 18頁・設問1:電子メールの全てをUSBメモリに保存 |
| 10 | [必須]健康・子の学業の情報をプライバシー利益として評価する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 18頁・設問1:Xのプライバシーに関する情報 |
| 11 | [高評価]収集行為の違法性と被侵害利益の重大性を分けて当てはめる | 5 | 記載なし(第3問部分を実読) | 18頁・設問1:明確に区別して |
| 12 | [必須]他の客観的証拠がないことを本件文書の重要性に結び付ける | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 18頁・設問1:唯一の客観的証拠 |
| 13 | [必須]衡量を経て本件文書の証拠能力の結論を示す | 4 | 13頁・設問1:総合考慮の結果として | 18頁・設問1:結論を導く |
| 14 | [許容分岐]人格権保護を根拠に著しく反社会的な収集という基準を採用し得る | 4 | 12頁・設問1:人格権の保護を根拠 | 17頁・設問1:人格権の保護を根拠 |
| 15 | [許容分岐]再審事由の法意から制限を導く説には論証が必要と示す | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 17頁・設問1:再審事由 |
| 16 | [許容分岐]文書提出制度の提出除外から論じる場合はプライバシーの保護理由を示す | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 18頁・設問1:プライバシーが問題になる |
| 17 | [負例]基準を信義則違反という文言の繰返しだけにしない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 17頁・設問1:文言を繰り返しただけ |
| 18 | [負例]犯罪行為でないことだけで証拠能力を決めない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 17頁・設問1:犯罪行為による証拠方法 |
| 19 | [負例]証拠価値が高いことを排除方向の理由にしない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 18頁・設問1:証拠価値が高いことは |
| 20 | [負例]自由心証主義そのものを説明なしで排除根拠にしない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 18頁・設問1:直接的に証拠能力を制限する根拠 |
| 21 | [負例]自己利用文書該当性の論証だけに終始しない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 18頁・設問1:自己利用文書該当性の検討に終始 |
2 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 22 | [必須]不利益変更禁止の根拠として法304条を示す | 4 | 13頁・設問2:法第304条 | 19頁・設問2:法第304条 |
| 23 | [必須]不利益変更禁止の趣旨を説明する | 4 | 13頁・設問2:同原則の趣旨 | 20頁・設問2:同原則の趣旨 |
| 24 | [必須]不利益性を原判決と控訴審判決の既判力で比較する | 5 | 13頁・設問2:既判力の比較 | 19頁・設問2:第一審の判決と控訴審の判決を比較 |
| 25 | [必須]審理範囲と取消変更の限界を区別する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 20頁・設問2:審理の範囲の問題 |
| 26 | [必須]乙には相殺以外の理由による不存在判断にも法114条2項の既判力が生じる | 4 | 間接(13頁・設問2:原判決及び各控訴審判決の既判力の比較から導く) | 19頁・設問2:相殺の成立以外の理由 |
| 27 | [必須]原判決が確定した場合の甲の存在の既判力を示す | 4 | 間接(13頁・設問2:原判決及び各控訴審判決の既判力の比較から導く) | 20頁・設問2:原判決が確定した場合 |
| 28 | [必須]原判決が確定した場合の乙の不存在の既判力を示す | 4 | 間接(13頁・設問2:原判決及び各控訴審判決の既判力の比較から導く) | 20頁・設問2:乙債権の不存在の判断 |
| 29 | [必須]訴訟外再相殺の丙に法114条2項を適用・類推するかを理由付きで決める | 5 | 13頁・設問2:法第114条第2項の適用 | 20頁・設問2:適用ないし類推適用 |
| 30 | [許容分岐]訴訟外相殺に既判力を否定するなら通説の論拠を踏まえ自説を論証する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 21頁・設問2:通説の論拠も踏まえて |
| 31 | [必須]アでは甲弁済により予備的相殺の判断が不要になる過程を示す | 4 | 13頁・設問2:甲債権の弁済による消滅 | 20頁・設問2:甲債権の弁済による消滅 |
| 32 | [必須]アで甲の給付を失う不利益を比較する | 4 | 13頁・設問2:Xにとり不利益変更 | 20頁・設問2:Xにとって不利益変更 |
| 33 | [高評価]アで乙不存在の既判力を失う点を比較する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 20頁・設問2:既判力の比較 |
| 34 | [必須]アで請求棄却と区別して控訴棄却と書く | 4 | 13頁・設問2:控訴を棄却する旨 | 20頁・設問2:請求棄却と控訴棄却 |
| 35 | [必須]イで丙による再相殺が失敗し乙相殺が成立する順序を示す | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 20頁・設問2:丙債権による乙債権との相殺の効果は生じず |
| 36 | [必須]イで甲・乙が相殺で消滅し心証なら請求棄却と示す | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 20頁・設問2:甲債権と乙債権が相殺で消滅 |
| 37 | [必須]イで乙不存在の既判力を原判決と比較する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 20頁・設問2:乙債権と丙債権の不存在 |
| 38 | [必須]イで丙不存在の効力を採用説と整合して比較する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 20頁・設問2:乙債権と丙債権の不存在 |
| 39 | [必須]イで甲の不利益を根拠に控訴棄却と示す | 4 | 13頁・設問2:請求棄却判決がXにとって不利益変更 | 20頁・設問2:不利益変更に当たる |
| 40 | [必須]ウで乙弁済により丙再相殺の判断が不要と示す | 4 | 13頁・設問2:判断が不要 | 20頁・設問2:判断が不要 |
| 41 | [必須]ウで甲存在・乙不存在という効力の共通部分を比較する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 20頁・設問2:請求についての判決主文には変わりがない |
| 42 | [必須]ウで丙の判断消失の帰結を採用説と整合して判決へ結び付ける | 5 | 13頁・設問2:帰結について検討 | 21頁・設問2:控訴棄却との結論 |
| 43 | [高評価]類推適用説なら同じ主文でも丙不存在の既判力を除く利益を示す | 5 | 13頁・設問2:既判力の範囲に変更 | 20頁・設問2:控訴審判決の方が有利 |
| 44 | [高評価]類推適用説ならウで取消し及び200万円の請求認容という具体的主文を示す | 3 | 13頁・設問2:原判決を取り消し | 21頁・設問2:具体的に記述すべき |
| 45 | [負例]原判決に既に確定的な既判力が生じていると扱わない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 20頁・設問2:確定的に既判力が生じた |
| 46 | [負例]控訴裁判所の主文を控訴認容・破棄等の曖昧又は不適切な語だけで済ませない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 21頁・設問2:法律用語を正確に |
| 47 | [負例]甲だけを訴求する本件で400万円の支払を命じない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 21頁・設問2:400万円の支払 |
3 設問3・課題1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 48 | [必須]Zが法115条の既判力拡張を受ける者でないと当てはめる | 4 | 13頁・設問3・課題1:法第115条 | 21頁・設問3・課題1:法第115条を引用 |
| 49 | [必須]参加的効力を既判力とは異なる特別な効力と示す | 4 | 13頁・設問3・課題1:特別な効力 | 21頁・設問3・課題1:特別な効力 |
| 50 | [必須]敗訴責任の共同分担から参加的効力はXとZに作用しないと示す | 4 | 13頁・設問3・課題1:参加人と相手方との間 | 22頁・設問3・課題1:参加人と相手方との間には |
| 51 | [高評価]保証人に不利な反射効と保証付従性による有利な作用を区別する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 22頁・設問3・課題1:保証人に不利な効力 |
| 52 | [必須]争点効又は信義則上の拘束力を独立に検討する | 5 | 13頁・設問3・課題1:争点効又は法第2条 | 22頁・設問3・課題1:争点効又は法第2条 |
| 53 | [高評価]丙弁済と甲免除を分けて手続機会の違いを評価する | 5 | 記載なし(第3問部分を実読) | 22頁・設問3・課題1:その違いを具体的に検討 |
| 54 | [必須]甲免除の主張・証明をYが妨げた事実を拘束の検討に反映する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 22頁・設問3・課題1:甲債権に係る債務の免除 |
| 55 | [高評価]丙弁済の実際の審理と両審級の否定を拘束の検討に反映する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 22頁・設問3・課題1:丙債権に対する弁済 |
| 56 | [必須]認める効力ごとにZが後訴で争える範囲を示す | 4 | 13頁・設問3・課題1:拘束力の作用を認め得るか | 23頁・設問3・課題1:それぞれについて十分な検討 |
| 57 | [負例]補助参加だけを理由にZへ既判力を当然拡張しない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 22頁・設問3・課題1:当事者ではない補助参加人にも既判力 |
| 58 | [負例]XとZとの参加的効力を,主観的範囲を示さず除外事由だけで否定しない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 22頁・設問3・課題1:主観的範囲を示すことなく |
| 59 | [負例]争点効を明文がないとの一言だけで否定しない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 22頁・設問3・課題1:明文規定がないから認められない |
4 設問3・課題2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 60 | [必須]補助参加人Zから被参加人Yへの逆方向援用を特定する | 5 | 13頁・設問3・課題2:補助参加人から被参加人 | 23頁・設問3・課題2:援用の主体と相手方が逆転 |
| 61 | [必須]法46条柱書が通常は被参加人から参加人への方向を想定すると示す | 5 | 13頁・設問3・課題2:同条自体は | 23頁・設問3・課題2:柱書 |
| 62 | [必須]敗訴責任の公平な分担を逆方向援用の根拠として検討する | 4 | 13頁・設問3・課題2:同条の根拠から正当化 | 23頁・設問3・課題2:参加的効力が認められる根拠 |
| 63 | [高評価]補助するため参加した者ではないYも拘束される理由を手続機会から示す | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 23頁・設問3・課題2:被参加人が不利な参加的効力に拘束される理由 |
| 64 | [必須]通常方向を想定する文言と逆方向援用を肯定する根拠を整合させる | 5 | 13頁・設問3・課題2:整合性をどうつけるか | 23頁・設問3・課題2:文言の双方に折り合い |
| 65 | [必須]甲存在の判断がYとZの後訴に作用するか具体的に示す | 4 | 13頁・設問3・課題2:求償請求訴訟 | 23頁・設問3・課題2:事案に即した検討 |
| 66 | [負例]Yによる妨害を理由にZからの援用を排除しない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 23頁・設問3・課題2:おかしな主張 |
| 67 | [負例]後訴での求償利害対立だけで参加的効力を否定しない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 23頁・設問3・課題2:求償をめぐる利害対立 |
| 68 | [負例]法46条を存在しない項又は本文として引用しない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 23頁・設問3・課題2:第46条第1項第3号 |
5 答案全体
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 69 | [高評価]検討事項を論理的順序と相互関係に沿って整理する | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 間接(16頁・答案全体:論述すべき順序や相互の関係) |
| 70 | [負例]準備した論証パターンを書き出すだけにしない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 間接(16頁・答案全体:論証パターン) |
| 71 | [負例]理由を述べず結論だけを書かない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 間接(16頁・答案全体:理由を述べることなく結論のみ) |
| 72 | [負例]設問に関係しない議論で中心を圧迫しない | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 間接(24頁・答案全体:解答に必要のない論述) |
| 73 | [高評価]具体的な事実を規範の要素へ当てはめる | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 間接(24頁・答案全体:事実から適切なものを拾い上げて) |
| 74 | [高評価]要件事実の構造と上訴の効果を関連付ける | 3 | 記載なし(第3問部分を実読) | 間接(24頁・答案全体:要件事実の構造や上訴) |
| 75 | [負例]判読可能性と正確な日本語・法律用語に注意する | 2 | 記載なし(第3問部分を実読) | 間接(16頁・答案全体:判読不能な文字は白紙答案と同じ) |
6 重みの分布
重み5は13項目,重み4は23項目,重み3は21項目,重み2は18項目,重み1は0項目である。総項目数は75,重みの合計は256となる。重みの合計は負例・許容分岐を含む単純合計であり,公式配点や得点へ換算することはできない。項目数から問題の難易度を比較することもできない。
重み5の事項は,次の13項目である。第5の解説で,答案の対応箇所を示す。
・番号1:違法収集証拠の証拠能力を一般的に制限する明文規定がないと示す。
・番号4:選択した制限説の法的根拠を示す。
・番号8:定立した基準と整合する当てはめをする。
・番号11:収集行為の違法性と被侵害利益の重大性を分けて当てはめる。
・番号24:不利益性を原判決と控訴審判決の既判力で比較する。
・番号29:訴訟外再相殺の丙に法114条2項を適用・類推するかを理由付きで決める。
・番号42:ウで丙の判断消失の帰結を採用説と整合して判決へ結び付ける。
・番号43:類推適用説なら同じ主文でも丙不存在の既判力を除く利益を示す。
・番号52:争点効又は信義則上の拘束力を独立に検討する。
・番号53:丙弁済と甲免除を分けて手続機会の違いを評価する。
・番号60:補助参加人Zから被参加人Yへの逆方向援用を特定する。
・番号61:法46条柱書が通常は被参加人から参加人への方向を想定すると示す。
・番号64:通常方向を想定する文言と逆方向援用を肯定する根拠を整合させる。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
以下は学習用のAI作成答案であり,法務省の公式解答ではない。設問1では信義則に基づく総合衡量を,設問2では訴訟外再相殺の丙に法114条2項を類推適用する立場を採る。許容される別説まで累積して書く必要はない。
試験実施日である令和5年7月13日時点の法令と,それ以前の裁判例及び問題の前提に基づく。民事訴訟法を「法」と表記する。答案の階層は「1→(1)→ア」を基本とし,規範,事実の評価及び結論を順に示す。「判例同旨」等の略記は用いず,原文を確認した判決の意義と,本問への類推・信義則の当てはめを枠外で区別する。法廷意見と補足意見を混同して結論を付け加えない。答案は,見出しと末尾の「以上」を含み,改行を除いて4888字である。
2 答案
1 設問1
(1) 法的根拠及び判断基準
民事訴訟法(以下「法」という。)には,違法収集証拠の証拠能力を一般的に制限する明文規定がない。私人間の権利関係について真実を発見し,適正な紛争解決を図るためには,多様な証拠資料を利用する必要があるから,収集方法が不当であったことだけで直ちに証拠能力が否定されるわけではない。証拠の信用性・証明力の問題とも区別すべきである。
しかし,不当な収集による証拠の利用を無制限に認めれば,当事者による違法な証拠収集を助長し,公正かつ適正な裁判に対する国民の信頼を損なうおそれがある。裁判所と当事者に公正な訴訟運営・誠実な訴訟追行を求める法2条の信義則に照らし,例外的に証拠能力を否定することは許されると解する。
もっとも,収集の弊害や信義則違反という抽象論だけでは,具体的な証拠を利用できるか判断できない。そこで,収集の手段・態様の違法性と,侵害された利益の内容・重大性を区別して検討し,これらを証拠の重要性及び真実発見の要請と衡量してもなお証拠の利用を是認できない場合に,証拠能力を否定すべきである。犯罪に該当することは必要条件ではなく,私人間の民事訴訟に刑事訴訟の証拠排除基準をそのまま適用するものでもない。
(2) 本件への当てはめ
まず,収集の手段・態様について,Yは紛争解決の話合いのためXの自室に招かれたにすぎない。Xがコーヒーを買いに短時間外出した隙に,閉じてあったノートパソコンを開き,私用アカウントの電子メールを無断でUSBメモリに全件保存し,持ち帰って全内容を確認した。メールが閲覧可能な状態であったことは,閲覧・複製の承諾を意味しない。偶然発見した取引情報だけを保存したのではなく,有利な証拠を探索するため,無関係な通信まで包括的に取得した点で,目的に比して侵害の範囲が著しく広い。
次に,侵害された利益について,本件メールはXと配偶者Aとの私的な通信であり,Xの健康状態や両者の子の学業成績に関する相談を含む。Xがこうした私生活情報を他人に知られない利益は重要である。保存後もYが繰り返し閲覧できる状態を作り出したことから,侵害は一時的な覗き見にとどまらず,その重大性は高い。
他方,本件動産の売買は口頭で行われ,引渡しも直接交付によったため,その売買契約締結の証明に役立つ他の客観的証拠がない。本件文書は,X自身が購入・引渡しを受けたと配偶者に述べたものであり,唯一の客観的証拠として重要な間接証拠となる。この重要性と真実発見の要請は,証拠能力を肯定する方向に働く。また,Yの行為が犯罪に該当しないことも前提とする。
それでも,証拠がないことを理由に相手方の私生活情報全体の秘密裏の複製を許せば,広範な探索的収集を容認することになる。取引の立証上の必要性を踏まえても,本件の収集態様及びプライバシー侵害の重大性がこれを上回る。したがって,本件文書の利用は訴訟上の信義則に反し,その証拠能力を否定すべきである。
2 設問2
(1) 判断の枠組みと原判決の既判力
第一審判決の取消し・変更は不服申立ての限度でのみ許される(法304条)。処分権主義の上訴審における現れとして,Xのみが控訴し,Y及びZが控訴・附帯控訴をしていない本件では,Xに不利益な変更は許されない。ただし,これは判決の取消し・変更を制限するものであり,審理範囲を乙債権に限定するものではない。甲債権及び丙債権も審理範囲に含まれるという設問の前提に従う。
不利益性は給付主文だけでなく,原判決が確定した場合と控訴審の判決が確定した場合との既判力を比較して判断する。訴訟物たる甲債権については主文に包含される判断に既判力が生ずる(法114条1項)。相殺のため主張した乙債権の成立・不成立の判断にも,相殺で対抗した200万円の範囲で既判力が生ずる(同条2項)。乙が相殺以外の原因で消滅したとの判断にも,この既判力は生ずる。
丙債権による相殺は訴訟外で既に確定的にされたものであり,訴訟上の再相殺とは異なり許容される。この許容性,優先順位及び充当は与件である。ただし,その判断に丙債権についての既判力が生ずるかは別途検討を要する。
法114条2項が相殺の自働債権について例外的に既判力を認めるのは,相殺により受働債権への請求を排斥した後,自働債権を再び請求するという利益の二重取得と,判断の矛盾を防ぐためである。訴訟外相殺を再抗弁として主張する場合も,その理由により丙を消費して乙を消滅させ,甲の請求を認容させたのに,後に丙を改めて請求することを防ぐ必要は同様に存在する。相殺の意思表示が訴訟外でされたという相違は,この必要性を失わせない。そこで,同項を類推適用し,丙についても相殺に供した200万円の範囲で既判力を認めると解する。
原判決が確定した場合,甲200万円の存在に法114条1項の既判力が生ずる。乙は丙との相殺で消滅しており,その不存在に同条2項の既判力が生ずる。また,丙も相殺で消滅しているから,その不存在に同項の類推適用による既判力が生ずる。以下,この状態と各控訴審判断とを比較する。
(2) アの場合
甲が弁済により消滅しているという心証によれば,まずXの請求を棄却することになる。主位的な甲の弁済が認められる以上,予備的な乙による相殺の判断は不要であり,丙による再相殺の判断も不要である。したがって,その判決が確定すれば甲の不存在に既判力が生じ,乙及び丙の存否には既判力が生じない。
これは,甲の存在を認めた原判決からXの200万円の給付を失わせる変更である。さらに,原判決にあった乙の不存在についての既判力も失われ,乙を別訴で請求され得る状態になる。丙の不存在についての既判力がなくなる点だけを取り出して有利と評価しても,甲の給付を失わせる変更は正当化できない。よって,原判決を取り消して請求を棄却することは法304条に反し,Xの控訴を棄却すべきである。
(3) イの場合
甲及び乙が弁済で消滅していない一方,丙の存在が認められなければ,Xの訴訟外相殺の再抗弁は理由がない。その結果,Yの相殺の抗弁が認められ,乙を自働債権として甲と乙が200万円の対当額で消滅するので,心証どおりならXの請求を棄却することになる。
この判決が確定すると,甲の不存在及び乙の不存在に既判力が生ずる。丙の不存在についても,再相殺のため主張した債権の不成立の判断として,法114条2項の類推適用による既判力が生ずると解する。原判決と比べれば,乙及び丙の不存在という既判力は共通するが,甲の存在が不存在へ変わり,Xの200万円の給付を失わせる。この不利益な変更は許されない。したがって,この場合もXの控訴を棄却すべきである。
(4) ウの場合
甲が弁済で消滅しておらず,乙が弁済で消滅していれば,Yの相殺の抗弁は理由がない。そのため,丙による訴訟外相殺の再抗弁を判断する必要はなく,Xの200万円の請求を認容することになる。
この判決が確定すると,甲の存在及び乙の不存在に既判力が生ずる一方,判断されない丙の存否には既判力が生じない。原判決が確定した場合と給付主文は同じであり,甲及び乙の既判力も同じであるが,丙の不存在についての既判力が取り除かれる点でXに有利となる。
したがって,単なる判決理由の交換ではなく,既判力の範囲を変更する必要がある。法302条2項による控訴棄却にとどめることはできず,原判決を取り消し,YにXへの200万円の支払を命ずる請求認容判決をすべきである。甲と丙を合わせた400万円の支払を命ずるものではない。
3 設問3
(1) 課題1
前訴の当事者はX及びYであり,ZはYの補助参加人にすぎない。Zは法115条1項各号の当事者,他人のために訴訟をした当事者に係るその他人,口頭弁論終結後の承継人等のいずれにも当たらない。保証人であることや補助参加したことだけでは,前訴判決の既判力はZに拡張されない。
法46条の参加的効力は,補助参加人と被参加人が共同して訴訟を追行し,敗訴責任を公平に分担するための特別な効力であり,既判力とは異なる。そうした責任分担関係はYとZとの間に存在し,相手方XとZとの間には存在しない。したがって,XはZに参加的効力を援用できない。ここでは主観的範囲の外にあるのであり,同条各号の除外事由を検討してはじめて効力を否定するものではない。
反射効も,本件では保証人Zを不利に拘束する根拠とならない。主債務の消滅に伴って保証債務も消滅するという付従性は,主債務不存在の判決を保証人に有利に援用する方向で問題となる。主債務の存在を認めた判決だけで保証人の独自の争う機会を奪うことは,法115条の限定とその手続保障に反する。
もっとも,争点効や法2条の信義則による拘束力も検討を要する。理由中の判断に一般的な争点効を認めると,法114条の限定を超えて争いを封じることになるから,独立の制度的効力としては認めない。しかし,先行訴訟で十分に争った事項を,後訴で矛盾した形で蒸し返すことが,公平や相手方の合理的信頼を著しく害する場合には,信義則による制限があり得る。Zの具体的な訴訟追行状況に即して区別する必要がある。
丙の弁済については,Z自身が主張し,Xがこれを争い,証拠調べを経て第一審・控訴審のいずれでも認められなかった。Zは当該争点について実際に争う機会を持ち,Xもその主張への対応を尽くした。この判断は再相殺により乙を排斥し甲を認容するために必要である。ZがXとの後訴で同じ弁済を再主張して甲の存在を争うことは,信義則上許されないと解する。
これに対し,甲の免除については,Yがその事実を否定したためZの主張はYの訴訟行為に抵触し効力を有しない(法45条2項)。YはZ自身の証人尋問の申出も撤回しており,Zは免除の事実を十分に争うことを妨げられた。したがって,その再主張を蒸し返しと評価して信義則で制限することはできない。以上より,Zは免除により甲債権の存在を争うことができる一方,十分に審理された丙の弁済による蒸し返しは制限される。
(2) 課題2
Zが保証債務を履行してYに求償する後訴では,補助参加人Zが被参加人Yに前訴判決を援用する。法46条柱書の「補助参加人に対してもその効力を有する」という文言は,通常,被参加人から補助参加人への援用を想定しており,本件はその方向が逆である。
しかし,同条の根拠である敗訴責任の公平な分担からすれば,補助参加人だけでなく,共同して訴訟を追行した被参加人も前訴の必要な判断に拘束されるべきである。Yは補助のために参加した者ではないが,もともと主たる当事者として十分な訴訟行為を行い,Zの行為と抵触する行為をすることもできた。Zより強い手続保障を受けるYが,自ら敗訴した判断の拘束を一切免れるのは公平でない。柱書が通常方向を明示するのは,当事者でない補助参加人にも効力が及ぶことを明らかにするためであって,逆方向の援用を排除する趣旨ではないと解する。
参加的効力は,敗訴の結論に必要な理由中の事実認定・先決的権利関係の判断にも及ぶ。甲の存在はYへの支払命令の直接の基礎であり,丙の弁済がないとの判断も,丙による再相殺を認め乙の相殺の抗弁を排斥するために必要である。
免除の主張及びその証明が妨げられた事情は,通常方向なら法46条2号・3号により補助参加人Zを保護する事情となる。しかし,この除外規定を妨害したY自身のために用いて,Zからの援用を否定することは,その保護目的に反する。Yは自ら免除を否定し証人尋問を撤回する権限を行使したのであり,自己の手続機会を欠いていない。丙の弁済についても実際に審理され,除外を基礎付ける事情はない。
よって,ZはYに対して前訴判決の参加的効力を援用でき,Yは甲の不存在を主張して前訴の必要な判断と矛盾する判断を求めることができない。求償をめぐる後訴の利害対立は,この責任分担の効力を否定する理由にはならない。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
番号1(重み5)は,答案1(1)第1段落で,証拠能力を一般的に制限する明文規定がないことを出発点にする。
番号4(重み5)は,答案1(1)第2段落で,法2条の信義則を例外的な制限の法的根拠とする。
番号8(重み5)は,答案1(1)第3段落及び1(2)で,三つの衡量要素を定立し,その同じ基準に沿って当てはめる。
番号11(重み5)は,答案1(2)第1・第2段落で,「まず」収集態様,「次に」被侵害利益と分けて評価する。
番号24(重み5)は,答案2(1)及び各小問で,原判決と心証どおりの控訴審判決がそれぞれ確定した場合の既判力を比較する。
番号29(重み5)は,答案2(1)第4段落で,利益の二重取得と判断矛盾の防止から丙への法114条2項の類推を理由付ける。
番号42(重み5)は,答案2(4)第2・第3段落で,丙について判断が不要となる帰結を,取消し及び請求認容へつなぐ。
番号43(重み5)は,答案2(4)第2段落で,同じ給付主文でも丙不存在の既判力が除かれる利益を示す。
番号52(重み5)は,答案3(1)第4段落で,一般的な争点効と,具体的な信義則上の制限を別に検討する。
番号53(重み5)は,答案3(1)第5・第6段落で,実際に審理された丙の弁済と,主張・証明を妨げられた甲の免除を分ける。
番号60(重み5)は,答案3(2)第1段落で,援用者をZ,相手をYと固定する。
番号61(重み5)は,答案3(2)第1段落で,法46条柱書が通常想定するYからZへの方向を示す。
番号64(重み5)は,答案3(2)第2段落で,当事者Yの手続保障と責任の公平な分担から,文言と逆方向援用の整合性を説明する。
(2) 設問1:背景,法的根拠,判断基準と当てはめ
設問1では,証拠能力制限の明文がないことと,例外的制限を正当化する背景・法的根拠を分ける。違法収集の助長や司法への信頼は背景であり,その語だけでは本件に当てはめられる基準にならない。収集態様,被侵害利益,証拠重要性を区別する。他の客観的証拠がないことは証拠能力を肯定する方向の事情である。
(3) 設問2:既判力の比較と許容される別構成
設問2では,「審理できる」と「不利益に判決を変更できる」を分ける。比較するのは未確定の原判決が将来確定した場合と,心証どおりの控訴審判決が確定した場合の効力である。本答案の類推適用説では,(ア)(イ)は控訴棄却,(ウ)は原判決取消し及び200万円の請求認容となる。
採点実感21頁は,訴訟外相殺には法114条2項の既判力を認めない立場も,通説の論拠を踏まえて適切に論証されていれば相応に評価すると述べる。その立場では(ウ)も丙の既判力は変わらないため,法302条2項による控訴棄却となる。完成答案は通説を採るが,否定説の結論だけを誤りとしてはならない。
(4) 設問3・課題1:効力の種類と手続機会
設問3課題1では,既判力,参加的効力,反射効,争点効・信義則の根拠と作用先を分ける。丙の弁済はZの主張について両審級で実際に審理されたが,甲の免除はYに主張・証明を妨げられた。この差を無視して全て拘束される,又は全て自由に蒸し返せると処理しない。本答案の信義則の当てはめは一つの構成であり,その結論自体が公式によって一律指定されたわけではない。
(5) 設問3・課題2:援用の方向と除外事由
設問3課題2では,条文の通常方向Y→Zと,本件の援用方向Z→Yを矢印で固定する。参加人を保護する除外事由を,妨害した被参加人Yに有利に使ってZの援用を封じるのは,その保護目的と合わない。求償をめぐる利害対立は,参加的効力を生じさせる典型的な背景でもある。
(6) 答案の弱点と扱わなかった事項
本答案は総合衡量説と訴訟外再相殺への類推適用説を選んだ一例である。類推の要否,X・Z間での信義則上の制限及び逆方向援用の理由付けは,本問への独自の解釈・当てはめを含む。公式資料が評価するのは,採用した立場に沿う理由と結論の一貫性であり,本答案の結論だけを唯一の正解とするものではない。裁判例原文の確認範囲と未確認事項は第7に示す。
設問1は証拠能力に限り,証明力や後続事実を検討しない。Yの収集行為は犯罪に当たらないとの前提である。設問2ではXの控訴は適法,甲と丙も審理範囲に含まれ,再相殺の許容性・優先順位・充当の判断は維持される。控訴の利益,利息・損害金・費用は扱わない。設問3課題2では法46条以外の効力を扱わない。
第6 関連記事
1 同じ年度の司法試験の別の模範解答
①令和5年度司法試験公法系第1問(憲法)の模範解答と評価項目
②令和5年度司法試験公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目
③令和5年度司法試験民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目
④令和5年度司法試験民事系第2問(商法)の模範解答と評価項目
⑤令和5年度司法試験刑事系第1問(刑法)の模範解答と評価項目
⑥令和5年度司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目
⑦令和5年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答
2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事
①補助参加と後訴の判決効―援用する人・相手・判断内容・手続保障の確認
②訴訟告知の使い方―参加的効力の範囲,告知の方式と敗訴後の求償・損害賠償への備え
関連記事は実務への応用を整理したものであり,令和5年の答案の基準時と区別する。補助参加と後訴の判決効の記事は,令和8年10月4日時点の施行中の条文による実務解説である。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①法務省・令和5年司法試験論文式試験問題(民事系科目)
②法務省・令和5年司法試験論文式試験出題の趣旨
③法務省・令和5年司法試験の採点実感(民事系科目)
④法務省・令和5年司法試験の実施日程等
実読範囲は,問題がPDF10~13頁(第3問の冊子2~5頁),出題の趣旨がPDF12頁の第3問開始以降及び13頁の第3問部分,採点実感がPDF16~24頁である。実施日程はPDF1頁の民事系科目の実施日を確認した。頁番号は各PDFの先頭から数える。
2 法令
e-Gov・民事訴訟法。本答案は現行版ではなく,令和5年6月6日時点の改訂本文を基準とし,2・45・46・114・115・247・302・304条等を確認した。試験実施日は令和5年7月13日である。
3 裁判例
①最高裁昭和45年10月22日判決・補助参加の判決効に関する原文:全3頁を実読した。参加的効力が必要な理由中判断に及ぶ特別な効力であることを確認した。逆方向援用を直接判示した判決としては扱わない。
②最高裁平成10年4月30日判決・再相殺に関する原文:全5頁を実読し,訴訟上再相殺と訴訟外相殺の区別を確認した。民集52巻3号930頁の書誌は公式資料にも記載される。
③裁判所・相殺と不利益変更禁止に関する判決原文:全2頁を実読し,給付主文と相殺債権の既判力を比較する論理を確認した。事件番号等の正確な書誌同定は未了である。
4 確認状態
確認済み:上記の問題,試験当時の法令本文及び判決原文について,記載した範囲を実読した。公式資料の記載:出題の趣旨・採点実感が何を要求し評価したか。独自の分析:評価項目への整理,重み付け,本問への類推及び信義則の当てはめ。公式資料の判例引用を読んだことと,引用判決の原文を独立に読んだことは区別する。
未確認:公式資料が引用する東京高判昭和52年7月15日の原文,訴訟外再相殺の丙への既判力及び本問と同型のX・Z間の信義則制限を直接判示した原文は確認できていない。これらを「実読した範囲で記載なし」又は「存在しない」としてはいない。判例秘書の原文も本記事の根拠として独立確認していない。
独立再構成の段階では対象年度の出題の趣旨・採点実感等を閲覧対象から外し,その答案を固定した後に公式資料を読んで校正した。現在の掲載答案・評価表は校正後のものである。独立再構成時の閲覧制限と,校正後に実読した公式資料の確認状態を混同しない。