令和2年司法試験の公法系科目第2問(行政法)について,完成答案と,公式の出題の趣旨・採点実感から独自に抽出した64項目を示します。評価項目の重みは1~5であり,法務省の公式採点基準や配点ではありません。
第1 この記事の対象と結論
本問の中心は,農用地区域からの除外のための計画変更と申出拒絶の処分性,申出書を返送された後の不作為の違法確認,拒絶通知に対する実体的違法の主張です。答案はX側の弁護士Dの立場からB市の反論を想定し,処分性を肯定する構成を採ります。
評価項目は64件,重み5は26件です。重み5の中核は,計画設定・変更・拒絶の区別,申請権と内部規程の関係,到達後の応答義務,不作為の本案,施行規則の二つの括弧書き,公共投資の効用確保に沿う政令解釈です。第4で全項目を,第5で4971字の答案と解説を掲載します。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一項目を一つの判定対象に分け,番号を記事全体で連続させています。「必須」「高評価」「負例」「許容分岐」と重みは別の分類です。高評価事項や条件付き分岐を,全答案に累積して要求するものではありません。負例は指摘された誤りを避けるための確認項目です。
根拠欄はPDFの物理頁を示し,明示と関連記述からの具体化である「間接」を分けています。「記載なし」は本問の関連範囲を実読した結果です。法令から独立に補った説明と一般的な答案作法は,公式由来の評価項目と分けています。
2 5段階の重み付けの基準
5=採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格。4=出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項。3=一方が明示する中核の理由付け。2=一方が触れる補強又は典型的な誤り。1=一方が控えめに触れる事項。本記事の重み4は,両資料が全てを「高く評価した」との意味ではありません。
重み5の理由は,以下の26項目が各問の法律構成を成立させる骨格,又は採点実感が理解の差・不十分答案を具体的に指摘した事項に当たることです。件数を各段階へ割り当てていないため,重み1は0件です。
第3 本問の概要
Xは所有する農地に医師である長男の医院を建てるため,農用地区域からの除外を申し出ました。市は土地改良事業の全体工事が平成30年に完了し,その翌年度から8年を経過していないとして,申出書を返送しました。本件農地に関係する上流工事は平成20年末に終了しており,Xは高台の土地に事業の恩恵が乏しいとも主張しています。
設問1(1)は計画変更と拒絶の処分性,設問1(2)は処分性を肯定し拒否処分はないとの前提で抗告訴訟を問います。義務付けは検討外です。設問2は今後の拒絶に対する取消訴訟が適法との前提で実体的違法を問います。会議録に従い,手続違法,政令自体の無効,8年の長さ自体の不適切性は論じません。配点比45:30:25は問題に明示された設問間の比率であり,本記事の重み合計とは別です。
第4 評価項目と重み
1 設問1(1) 計画変更・申出拒絶の処分性
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 公権力による直接の権利義務形成・範囲確定が法律上認められるという処分性の定式を示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 処分性を問う | 5・8頁・明示 処分性判断の定式 |
| 2 | 計画設定・個別除外変更・申出拒絶の三つを区別して検討する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 個別の農地についての農用地区域からの除外 | 8頁・明示 計画自体の法的性格(処分性)と計画変更の処分性 |
| 3 | 計画設定が農地所有者の法的地位に与える効果を関係条文に即して示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 様々な農地の利用制限 | 5・8頁・明示 農用地利用計画にいかなる法効果が付与されているか |
| 4 | 農振法17条・農地法4条による指定用途以外への転用制限を説明する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 農地転用許可の拒否処分 | 8頁・明示 転用制限(農振法第17条) |
| 5 | 農振法15条の2により区域内開発行為に許可が必要となることを指摘する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 様々な農地の利用制限 | 8頁・明示 開発制限(同法第15条の2) |
| 6 | 農振法14条・15条の用途供用・協議勧告・調停による利用誘導を説明する。 高評価/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 規制の強度等 | 5・8頁・明示 利用強制 |
| 7 | 昭和57年判決が用途地域指定の処分性を否定したことを正確に示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・明示 法令類似のものであるとする判例 | 9頁・明示 用途地域の指定について処分性を否定 |
| 8 | 同判決の否定理由が,法状態変動を認めながらも効果を一般的・抽象的とした点にあることを説明する。 高評価/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 法令類似のもの | 5・9頁・明示 判例の結論と理由を正確に指摘 |
| 9 | 用途地域指定と農用地区域について,適用範囲・個別性を比較する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・明示 その適用範囲 | 5頁・明示 法効果との異同を検討 |
| 10 | 用途地域指定と農用地区域について,規制の強度・積極的利用要求の相違を比較する。 高評価/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 規制の強度等 | 5頁・明示 特殊性や利用強制など土地利用制限の相違 |
| 11 | 個別の農地の除外が転用制限等を解除する具体的法的地位の変更であることを説明する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 個別の農地についての農用地区域からの除外 | 5頁・明示 計画の変更によりこれがいかなる影響を受けるか |
| 12 | 当初の計画設定と個別変更の処分性を別個に評価し得ることを理由付ける。 許容分岐/両者由来 適用:当初設定否定・個別変更肯定の構成を示す場合 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 別途,検討を要する | 8頁・明示 両者の区別 |
| 13 | 変更の処分性から申出拒絶の処分性を自動的に導かず,申請権の有無を検討する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 農地所有者等の申請権を読み取り | 9頁・明示 申請権が付与されていれば申請の拒絶は処分性を有する |
| 14 | 農振法に所有者の申請権が明記されていないことを反対材料として指摘する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 内部規程とはいえ | 9頁・明示 農振法には申請権があるとは書かれていない |
| 15 | 運用指針が内部規程であって法令としての効力を有しないことを指摘する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 B市の内部規程 | 9頁・明示 運用指針には法令としての効力がない |
| 16 | 運用指針の提出・可否通知手続を具体的に取り上げる。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・明示 申出と可否の通知が制度化 | 9頁・明示 申出に関する定め |
| 17 | 農振法の趣旨・制度全体と運用指針による具体化を接続し,解釈上の申請権を理由付ける。 高評価/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 農振法の趣旨を具体化したもの | 9頁・明示 法令の仕組み全体を踏まえれば申請権があると解釈し得る |
| 18 | 申出が実務上不可欠という事実に法的意味を与え,単なる会議録の転記で終えない。 高評価/採点実感由来 適用:全答案 | 3 | 記載なし(対象範囲実読) | 9頁・明示 その事実がどのように位置付けられるのか |
| 19 | 申請権を前提に拒絶が諾否応答を受ける地位を確定することを説明する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・明示 可否の通知に処分性を認める解釈 | 9頁・明示 申請の拒絶は処分性を有する |
| 20 | 成熟性について,農地法4条の転用不許可に対する取消訴訟を具体的な代替経路として示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 農地転用許可の拒否処分に対する取消訴訟 | 10頁・明示 転用許可の拒否処分に対して取消訴訟 |
| 21 | 代替訴訟の帰結と計画変更段階の争訟の差異を示し,救済の必要性を実質的に論証する。 高評価/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 救済可能性の評価 | 5頁・明示 別訴を提起した場合に考えられる帰結 |
| 22 | 処分性を本件医院の需要など個人的事情だけで肯定しない。 負例/採点実感由来 適用:全答案 | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 10頁・明示 個別具体的な事情によって左右されない |
| 23 | 昭和57年判決を青写真論・土地収用・換地処分の判例と取り違えない。 負例/採点実感由来 適用:全答案 | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 9頁・明示 土地区画整理事業に関する換地の有無 |
| 24 | 公権力性を主体が公共団体であるという一点だけから認定しない。 負例/採点実感由来 適用:全答案 | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 8頁・間接(関連記述の具体化) 主体が「国又は公共団体」であるか否か |
| 25 | 運用指針を裁量基準とし,通知するかどうかも自由であると論じない。 負例/採点実感由来 適用:全答案 | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 8頁・明示 運用指針を裁量基準であるとする |
2 設問1(2) 不作為の違法確認
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 26 | 変更・拒絶の処分性を前提として維持し,処分性論を長々と再論しない。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・明示 処分であることを前提 | 7頁・明示 申出の拒絶の処分性について長々と論述 |
| 27 | 拒否処分なし・義務付け除外を維持し,不作為の違法確認を選択する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 不作為の違法確認訴訟ということになる | 11頁・明示 訴訟の類型について |
| 28 | 申出が法令に基づく申請であることを行訴法3条5項及び行手法2条3号等に即して示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 法令に基づく申請 | 5・11頁・間接(関連記述の具体化) 行政手続法上の申請に該当 |
| 29 | 申請をしたXに行訴法37条の原告適格があることを示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 訴訟要件充足性 | 10頁・間接(関連記述の具体化) 行政事件訴訟法第3条第5項,第37条 |
| 30 | 処分・裁決が何らされていないことを訴訟要件として示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 それに対する処分がなされていないこと | 11頁・明示 応答されていない状態 |
| 31 | 不作為行政庁が所属するB市を被告とし,A県と混同しない。 必須/採点実感由来 適用:全答案 | 3 | 記載なし(対象範囲実読) | 11頁・明示 A県とB市は別個独立の公共団体 |
| 32 | 申出書の到達が審査義務の発生基準となることを行手法7条から説明する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 行政手続法第7条 | 5・11頁・明示 申出が到達することにより審査義務が発生 |
| 33 | 令和元年5月10日に担当課へ到達したことを認定する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) Xの申出は,いかなる状況 | 5頁・間接(関連記述の具体化) 具体的な事実関係を踏まえた当てはめ |
| 34 | 到達後の返送が法的に申請を消滅させず,応答待ちの状態が残ると説明する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 行政手続法の基本的な理解 | 11頁・明示 返却行為は法的には無意味 |
| 35 | 受理という行政庁の任意行為を申請の効力発生条件にしない。 必須/採点実感由来 適用:全答案 | 3 | 記載なし(対象範囲実読) | 10頁・明示 申請の不受理や申請書の返戻 |
| 36 | 相当期間の経過を不作為の本案要件として,訴訟要件と区別する。 必須/両者由来 適用:相当期間の整理をする全答案 | 5 | 3頁・明示 本案の主張としては | 5頁・明示 訴訟要件及び本案要件 |
| 37 | 公表された通常1年程度という処理期間を相当期間の判断に用いる。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 相当の期間 | 5・10頁・間接(関連記述の具体化) 具体的な事実関係を踏まえた当てはめ |
| 38 | 同時期の他の申出人に既に通知がある事実を用いて,Xについての遅延を評価する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 事案から読み取れる範囲 | 5頁・間接(関連記述の具体化) 具体的な事実関係を踏まえた当てはめ |
| 39 | 行手法7条の遅滞ない審査及び形式不備の場合の補正又は拒否の義務を示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 行政手続法第7条 | 12頁・明示 申請に対する応答義務 |
| 40 | 8年未経過という実体的要件の判断を,審査・応答しない理由にしない。 高評価/採点実感由来 適用:全答案 | 3 | 記載なし(対象範囲実読) | 10頁・間接(関連記述の具体化) 同条によりB市に審査義務が発生 |
| 41 | 本案で諾否の応答をしない違法を論じ,除外を認めるべきかの実体審理と取り違えない。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 本案の主張 | 14頁・明示 不作為という判断 |
| 42 | 返送を拒否処分として取消し又は無効確認の対象にしない。 負例/両者由来 適用:全答案 | 2 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 可否の通知をしていない | 11頁・明示 申出書の返送の取消訴訟 |
| 43 | 本件職員の説明には行政指導の要素がないことを踏まえ,不要な行政指導論をしない。 負例/採点実感由来 適用:全答案 | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 11頁・明示 行政指導の要素は含まれていない |
| 44 | 民事確認の利益の三要素を別途付加しない。 負例/採点実感由来 適用:全答案 | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 10頁・明示 即時確定の利益,対象選択の適否,方法選択の適否 |
| 45 | 不作為訴訟へ取消訴訟の出訴期間を適用しない。 負例/採点実感由来 適用:全答案 | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 11頁・明示 出訴期間の定めが適用される余地はない |
| 46 | 不作為を手続瑕疵のある処分の取消事由として扱わない。 負例/採点実感由来 適用:全答案 | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 14頁・明示 手続的瑕疵が処分の取消事由 |
3 設問2 拒絶の実体的違法
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 47 | 拒絶通知に対する適法な取消訴訟を前提とし,実体的違法を検討する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・明示 その取消訴訟において | 7頁・明示 実体的な違法事由 |
| 48 | 事前回答の理由に対応して5号の適用対象と8年制限の二段階を検討する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3・4頁・明示 農振法第13条第2項第5号の要件 | 6頁・間接(関連記述の具体化) 処分要件を抽出 |
| 49 | 法13条2項5号→10条3項2号→規則4条の3の法令連鎖をたどる。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・明示 農振法第10条第3項第2号 | 13頁・明示 同号を受けて定められた |
| 50 | 計画の農業振興目的,事業の冠水防止目的,本件農地の受益を区別する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 本件事業の目的や本件農地との関係 | 12頁・明示 本件計画,本件事業及び本件農地を明確に区別 |
| 51 | 規則4条の3第1号柱書の災害防止等による除外を示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 同法施行規則第4条の3第1号イ | 13頁・間接(関連記述の具体化) 同号柱書の括弧書 |
| 52 | 冠水防止の主目的と生産性向上が考えにくい事実を柱書へ当てはめる。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 与えられた事案の範囲 | 13頁・明示 Xの主張する事実関係 |
| 53 | 同号イの括弧書きによる個別土地の生産性向上の除外を示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 本件農地との関係 | 13頁・明示 同号イの括弧書 |
| 54 | 高台でほとんど恩恵を受けない事実を,相当程度の生産性向上が見込まれない要件へ接続する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) 本件農地との関係 | 14頁・明示 本件農地は高台にある |
| 55 | 対象事業・土地から除外されるなら5号の期間要件を満たす必要がないという効果を示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 3頁・間接(関連記述の具体化) それに基づいて申出の拒絶の違法事由 | 12頁・明示 どの条項が適用されるのか |
| 56 | 政省令を法規命令と理解し,内部的裁量基準として扱わない。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 4頁・間接(関連記述の具体化) 委任した法律の趣旨目的 | 14頁・明示 農振法施行令は法規命令 |
| 57 | 本問を法令の解釈・当てはめとして処理し,裁量逸脱濫用の一般論に置き換えない。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 4頁・明示 適合するように解釈 | 13頁・明示 裁量権濫用の問題でない |
| 58 | 農振法13条2項5号の公共投資による効用確保を期間制限の目的として明示する。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 4頁・明示 公共投資により得られる効用の確保 | 13頁・明示 農業に関する公共投資により得られる効用の確保 |
| 59 | 政令自体を無効とせず,8年の期間が不適切ともせずに例外解釈を組み立てる。 必須/両者由来 適用:全答案 | 4 | 4頁・明示 無効とまでは言えない | 14頁・明示 政令の規定の法適合性や法に適合するための解釈 |
| 60 | 委任法の趣旨に適合する解釈が必要な理由を示し,単なる不公平だけで例外を認めない。 高評価/両者由来 適用:全答案 | 5 | 4頁・間接(関連記述の具体化) 委任した法律の趣旨目的に適合 | 13頁・明示 なぜ例外を認めるような解釈が可能であるか |
| 61 | 除外によって事業の効用確保を損なうかを,一律制限の例外の判断軸とする。 必須/両者由来 適用:全答案 | 5 | 4頁・間接(関連記述の具体化) 本件事業の「効用」に与える影響 | 13頁・明示 公共投資により得られる効用の確保 |
| 62 | 全体完了と本件農地の関連工事の約10年前の完了を区別して例外を当てはめる。 高評価/両者由来 適用:全答案 | 4 | 4頁・間接(関連記述の具体化) 本件農地に対する適用 | 14頁・間接(関連記述の具体化) 事案の事情は拾えている |
| 63 | 事実の転記だけで考慮不尽とせず,条文要件・例外・違法効果へ接続する。 負例/採点実感由来 適用:全答案 | 2 | 記載なし(対象範囲実読) | 12頁・明示 したがって考慮不尽に当たる |
| 64 | 他の除外要件の充足まで無根拠に補わず,本問で争われる拒絶理由の違法として結論を示す。 必須/両者由来 適用:全答案 | 3 | 3頁・明示 事前の相談においてB市から示された拒絶の理由 | 12頁・間接(関連記述の具体化) 論ずべきポイント |
4 答案全体
次の指摘は一般的な答案作法です。重みを付さず,64件の集計へ算入していません。
- 指示と設問の順序:会議録の指示を全て回収し,X側から反論も想定する。
- 知識量ではなく思考:根拠条文・具体的事実・法的意味をつなぐ。
- 定義と法令階層:処分・申請・届出・不利益処分・法規命令・内部規程を区別する。
- 構成:段落を整理し,挿入・順序交換を減らす。
- 時間配分:設問2まで解答を完結し,一般論が実体解釈を圧迫しない。
- 文字と誤字:読みやすい字・適切な大きさ・間隔,意味を変える誤字を避ける。
- 判例学習:事案・個別法の仕組み・判決の射程を確認する。
- 法理の基礎:複数当事者・複雑紛争も法理の根本から検討する。
5 重みの分布
重み1=0件,2=10件,3=5件,4=23件,5=26件。総項目数N=64,重み合計W=257です。この合計を公式得点,難易度又は合格可能性へ換算することはできません。
重み5の全項目は次のとおりです。条件を付した高評価項目は,その論証深度を示すものであり,一律の必須事項へ変更しません。
- 番号2:計画設定・個別除外変更・申出拒絶の三つを区別して検討する。(必須。適用:全答案)
- 番号3:計画設定が農地所有者の法的地位に与える効果を関係条文に即して示す。(必須。適用:全答案)
- 番号6:農振法14条・15条の用途供用・協議勧告・調停による利用誘導を説明する。(高評価。適用:全答案)
- 番号8:同判決の否定理由が,法状態変動を認めながらも効果を一般的・抽象的とした点にあることを説明する。(高評価。適用:全答案)
- 番号10:用途地域指定と農用地区域について,規制の強度・積極的利用要求の相違を比較する。(高評価。適用:全答案)
- 番号13:変更の処分性から申出拒絶の処分性を自動的に導かず,申請権の有無を検討する。(必須。適用:全答案)
- 番号15:運用指針が内部規程であって法令としての効力を有しないことを指摘する。(必須。適用:全答案)
- 番号17:農振法の趣旨・制度全体と運用指針による具体化を接続し,解釈上の申請権を理由付ける。(高評価。適用:全答案)
- 番号20:成熟性について,農地法4条の転用不許可に対する取消訴訟を具体的な代替経路として示す。(必須。適用:全答案)
- 番号21:代替訴訟の帰結と計画変更段階の争訟の差異を示し,救済の必要性を実質的に論証する。(高評価。適用:全答案)
- 番号27:拒否処分なし・義務付け除外を維持し,不作為の違法確認を選択する。(必須。適用:全答案)
- 番号30:処分・裁決が何らされていないことを訴訟要件として示す。(必須。適用:全答案)
- 番号32:申出書の到達が審査義務の発生基準となることを行手法7条から説明する。(必須。適用:全答案)
- 番号34:到達後の返送が法的に申請を消滅させず,応答待ちの状態が残ると説明する。(必須。適用:全答案)
- 番号36:相当期間の経過を不作為の本案要件として,訴訟要件と区別する。(必須。適用:相当期間の整理をする全答案)
- 番号39:行手法7条の遅滞ない審査及び形式不備の場合の補正又は拒否の義務を示す。(必須。適用:全答案)
- 番号41:本案で諾否の応答をしない違法を論じ,除外を認めるべきかの実体審理と取り違えない。(必須。適用:全答案)
- 番号48:事前回答の理由に対応して5号の適用対象と8年制限の二段階を検討する。(必須。適用:全答案)
- 番号49:法13条2項5号→10条3項2号→規則4条の3の法令連鎖をたどる。(必須。適用:全答案)
- 番号51:規則4条の3第1号柱書の災害防止等による除外を示す。(必須。適用:全答案)
- 番号53:同号イの括弧書きによる個別土地の生産性向上の除外を示す。(必須。適用:全答案)
- 番号56:政省令を法規命令と理解し,内部的裁量基準として扱わない。(必須。適用:全答案)
- 番号57:本問を法令の解釈・当てはめとして処理し,裁量逸脱濫用の一般論に置き換えない。(必須。適用:全答案)
- 番号58:農振法13条2項5号の公共投資による効用確保を期間制限の目的として明示する。(必須。適用:全答案)
- 番号60:委任法の趣旨に適合する解釈が必要な理由を示し,単なる不公平だけで例外を認めない。(高評価。適用:全答案)
- 番号61:除外によって事業の効用確保を損なうかを,一律制限の例外の判断軸とする。(必須。適用:全答案)
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
令和2年8月12日の試験実施時の法状態を基準とし,事案の判断時は同年5月13日です。農振法等は問題の配付条文,行政手続法は平成30年4月1日施行版,行政事件訴訟法は平成29年4月1日施行版を確認しています。答案の文字数は空白・改行を除く4971字です。
昭和57年4月22日判決の判示は原文で確認しています。個別除外と申請権を肯定する構成,政令の例外の具体的境界は本問に即した解釈であり,同判決が直接判断した事項でも公式の唯一解でもありません。
2 答案
1 設問1(1)について
(1) 判断枠組み
抗告訴訟の対象となる処分とは,公権力の主体が行う行為のうち,直接国民の権利義務を形成し,又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。計画という形式だけで処分性を否定することはできず,根拠法令による具体的な効果と救済の仕組みから判断すべきである。
(2) 本件計画の法的性格
ア 本件計画は,農振法8条2項1号により,農用地区域と区域内の土地の農業上の用途区分を定めるものである。その設定により,区域内の農地について農地法4条6項1号イにより非農業用途への転用許可はできなくなり,農振法17条も指定用途以外への転用を認めない。また,農振法15条の2により開発行為に許可を要し,14条による指定用途への供用の勧告や権利移転等についての協議の勧告,15条の調停の対象となり得る。したがって,計画は行政内部の指針にとどまらず,土地所有者の利用上の法的地位に影響する。
イ B市は,用途地域指定についての最高裁昭和57年4月22日判決と同様,規制は区域内の不特定多数の者に対する一般的,抽象的なものにすぎないと反論するであろう。同判決は,工業地域指定によって建築物の用途等の基準が変わり法状態が変動することを認めながら,その効果の一般的,抽象的性格から処分性を否定し,建築を阻止する具体的処分を争う途があるとする。
しかし,用途地域指定は地域の面的な区分を通じて一般的な建築基準を適用するのに対し,農用地利用計画は個々の土地の農業上の用途を定め,その用途での利用を積極的に求める仕組みを伴う。非農業用途への転用も原則的に遮断される。本件計画の規制の程度と個別の土地に対する具体性は,用途地域指定とは異なるとして,その法的性格を区別すべきである。
(3) 個別除外のための変更
本件変更は,農業振興地域全体の将来像を抽象的に定め直すものではなく,X所有の特定の農地を農用地区域から除外するものである。これがされれば,Xの土地について農用地区域内であることを理由とする転用禁止等が解除され,転用許可の審査を受け得る地位となる。直ちに医院建築の許可を得るわけではないが,この特定の規制解除は現在の法的地位の具体的な変更である。仮に当初の計画設定は一般的,抽象的であると評価しても,個別の除外変更は別に判断でき,その処分性を肯定すべきである。
(4) 申出の拒絶
ア 変更の処分性を肯定しても,職権発動を促す陳情の拒絶には当然に処分性が認められるわけではない。拒絶がXの法律上の地位を確定するためには,申出が諾否の応答を求めることのできる法令上の申請といえるかを検討する必要がある。
B市は,農振法13条が職権による変更を定め,所有者の申請権を明記していないこと,運用指針も内部規範であって申請権を創設する法令ではないことから,申出は陳情にすぎないと主張するであろう。
イ しかし,法13条1項は情勢の推移により必要が生じたときに遅滞なく変更すべきことを定め,同条2項は非農業用途の利用を目的とする個別除外の要件を設けている。土地の利用需要の変化は所有者の申出によって初めて把握できることが多く,この変更制度は所有者の具体的な利用利益にも関係する。個別除外については,その要件に即して行政庁の判断を求める申請権を解釈上認める余地がある。
本件では,運用指針4条が申出書と必要書類の提出,審議会への付議,県との協議,可否の通知を定めている。これは法13条による変更制度を具体化し,申出人の個別の利用計画に応答する制度が形成されていることを示す。指針のみから申請権を導くのではなく,法13条の趣旨及び制度と併せて,Xには諾否の応答を受ける地位があると主張する。その拒絶はこの地位を確定するから処分に当たる。
ウ B市は,XがA県知事に農地法4条の転用許可を申請し,不許可処分の取消訴訟で農用地区域に維持されることの違法を主張すれば足りると反論するであろう。確かに,区域内であることは不許可理由であり,申請そのものが禁止されているわけではないから,その争訟経路も考えられる。
しかし,転用許可と計画変更は主体も判断内容も異なる。前者では区域内である限り不許可とされ,後者では他用途との調整を含む計画変更の必要性をB市が判断する。Xが求めるのは当初指定時の違法だけでなく,現在の事情に基づく個別除外である。不許可訴訟では,計画変更を拒むことが違法であるとの主張を通じて救済を求める余地がある。しかし,県に対する判決がB市の計画変更を当然に形成するわけではなく,転用申請と不許可を経る負担もある。計画変更段階で市の判断を直接争う救済には独自の必要性があり,後続処分への争訟の可能性は拒絶の処分性を否定する決定的理由とはならない。
以上より,本件変更及びその申出の拒絶について処分性を肯定する構成を採る。
2 設問1(2)について
(1) 提起すべき訴訟と訴訟要件
拒否処分がされていない以上,申出書の返送を拒否処分とみなして取消訴訟を提起することはできない。Xは,本件申出に対して何らかの処分をしないことについて,不作為の違法確認の訴え(行訴法3条5項)を提起すべきである。義務付けの訴えは検討しない。
訴訟要件として,法令に基づく申請がされ,その申請者である原告に対して何らの処分もされていないことが必要である。相当の期間の経過は本案要件として区別する。前問の構成により,Xの申出は法13条の趣旨と具体化された応答制度に基づき,自己に利益を付与する変更処分を求め,行政庁が諾否の応答をすべき行為であるから,行手法2条3号の申請にも当たり,Xは申請者として原告適格を有する(行訴法37条)。被告は処分権限を有する行政庁が所属するB市である(同法38条1項,11条1項1号)。
B市は,窓口で受け取らず,郵送分も返送したから申請は受理されていないと主張するであろう。しかし,申請の成立を行政庁の受理という任意の行為に依存させれば,行政庁が受理を拒むことで応答義務を免れ得る。行政手続法7条も事務所への到達を審査開始の基準としている。本件申出書は令和元年5月10日に担当課へ到達しており,返送によって到達の事実が消えることはない。Xも申出をやめる意思がないと表明しているから,取下げはなく,申請は残存している。
(2) 本案での主張
ア 争点は,計画変更を認めるべきか自体ではなく,諾否いずれかの処分をしないことが違法かである。B市による処分は農振法に基づくから,条例又は規則を根拠とする地方公共団体の処分に関する行政手続法3条3項の除外には当たらず,申請に関する同法7条が適用される。
同条によれば,到達した申請の審査を遅滞なく開始し,形式上の要件を欠く場合も,相当期間を定めた補正を求め,又は拒否しなければならない。B市は法13条2項5号の期間要件を満たさないとするが,これは計画変更の実体的要件に関する判断である。これを申出を受け付けない理由にして審査・応答をしないことは許されない。仮に申請期間に関する形式不備に当たるとしても,補正又は拒否という処理を要し,単なる返送のまま放置できない。
イ B市は通常1年程度を要すると公表しているところ,翌年5月13日の相談時には到達から1年が経過し,同時期の他の申出人には既に4月中に通知がされている。計画変更には審議会や県との協議を要するが,本件だけ処理が長期化する特別な事情は示されていない。拒否処分もなく,相当の期間内に応答がない状態にあるとして,本案要件である相当期間の経過を主張する。
職員の発言は申出を受け付けられないという市側の取扱いの説明であり,Xに一定の作為又は不作為を求めるものではない。行政指導として申請取下げの任意性を論ずる必要はなく,申請が残り,応答義務が履行されていないことを問題とする。
通常の処理期間と他の申出の処理状況から,相当期間の経過後も諾否の処分をしないB市の不作為は違法である。この確認を求めるのであって,確認判決だけで本件農地が区域から除外されると主張するものではない。
3 設問2について
(1) 法13条2項5号の適用対象ではないとの主張
同号による8年の制限は,変更対象の土地が法10条3項2号の土地に当たる場合に適用される。同号の土地改良事業は,施行規則4条の3第1号柱書により,主として災害防止を目的とするものその他農業の生産性向上を直接の目的としないものを除く。また,同号イの括弧書きは,用排水施設の事業による生産性向上が相当程度見込まれない土地にあっては,当該事業を除く。この事業全体の目的と,個々の土地の受益の二つを分けて判断すべきである。
本件事業は老朽施設を補修・改修し,大雨時の冠水を防止することを主目的とするという。Xは,これが主として災害防止を目的とする事業であり,生産性向上を直接の目的としないため,柱書の除外に当たると主張する。B市は,維持管理労力を軽減し,安定した用排水によって生産性を高める目的もあると反論するであろう。そこで単に改修事業という名称だけでなく,事業計画や改修内容から直接の目的を確認すべきである。
さらに,仮に事業全体では生産性向上を目的としていても,本件農地は高台にあり,ほとんど冠水防止の利益を受けない。従来の用排水の支障や改修による労力軽減等についても,相当程度の生産性向上が見込まれないことを示せば,イの括弧書きによる除外が認められる。Xはこの二つの構成を主張し,本件農地が5号の適用対象でないのに期間未経過だけで拒絶したことが法令の解釈・適用の誤りであるとする。
(2) 期間制限の例外を認める解釈
仮に5号の適用対象であるとしても,政令9条をその委任元の趣旨に適合させて解釈すべきである。政令と施行規則は法律の委任に基づく法規命令であり,法的拘束力のない裁量基準ではない。法13条1項は必要が生じたときの変更を義務付けているから,本問の拒絶理由を裁量逸脱・濫用の一般論に置き換えず,法令の要件解釈と当てはめで検討する。法13条2項5号が明示する目的は,農業に関する公共投資によって得られる効用の確保であり,法2条も農業上の利用と他の利用との調整を要求する。8年という期間は,公共投資の効果を一定期間維持し,投資後すぐに非農業用途へ転用することを防ぐための合理的な基準であり,その有効性は争わない。
通常は一体の事業全体の工事完了年度を基準とするから,平成30年度の翌年度初日である平成31年4月1日から8年は経過していない。しかし,変更対象地に関係する独立した部分の工事が既に終了し,その効用を8年以上維持しており,残工事や計画変更がその土地への効用に関係せず,除外によって他の農地の受益を害さない場合まで,一律に全体完了時を適用することは委任目的に沿わない。「当該変更に係る土地」と「事業の工事」の対応関係から,この場合には当該土地に関係する工事の完了を基準とする例外的解釈が許されると主張する。
本件農地を直接の受益地とする上流部分は平成20年末に終了しており,その翌年度初日は平成21年4月1日である。これによれば平成29年4月1日に8年が経過している。全体工事が遅れたのは後の計画変更と中断によるから,上流部分の効用が既に確保されていること,後続工事が本件農地の受益に影響しないことを具体的に示す。高台で受益が乏しいことは,投資効用を損なう程度の小ささも支える。
B市は,公共投資は事業全体として評価すべきであり,個別例外は基準の公平性と明確性を害すると反論するであろう。これに対しては,単なる医院建築の希望で8年を短縮するのではなく,本件土地に関する効用が既に8年以上確保され,全体の効用にも影響しないという一般化できる限定条件による解釈であると答える。近隣に医療施設がなく農家の需要が強いことは,他用途との調整の必要性を補強するが,それだけで政令の期間を無視する根拠とはしない。
以上の解釈に基づき例外の該当性を審査せず,全体完了から8年未経過という理由だけで拒絶することは,法13条2項5号及び政令9条の解釈・適用を誤るものとして,その取消しを求める。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案1が番号1~25,答案2が番号26~46,答案3が番号47~64に対応します。重み5の項目は,上記の番号と具体的命題から照合できます。一般的な指摘は答案の整理・精度を支えるものであり,独立の配点ではありません。
(2) 計画・変更・拒絶を分ける理由
番号2・13・15・17は,計画が法的効果を有すること,個別変更が規制を解除すること,拒絶について法令上の申請権が必要であることを別々に評価します。指針に申出書と通知の制度があるというだけでは,法令上の申請権の理由付けになりません。番号20・21では,A県への転用申請と不許可取消訴訟を具体化し,B市の計画変更を争うこととの効用差を説明します。
(3) 不作為の訴訟要件と本案
番号27~39の要点は,申請が到達していること,返送がこれを消滅させないこと,何らの処分がないことを訴訟要件として整理し,相当期間の経過を本案で判断することです。職員の受付不可という説明に,申請取下げを求める行政指導を補ってはなりません(番号43)。また,応答をしない不作為の違法と,除外を認めるべきかという実体判断は別です(番号41・46)。
(4) 施行規則と政令の解釈
番号51・53は,事業の主目的による除外と,個別土地の生産性向上による除外を別に検討する項目です。主として災害防止という文言を「専ら」と狭めず,生産性向上の要件に高台という事実を接続します。番号55~61では,政省令を法規命令として扱い,法13条2項5号の公共投資の効用確保から,8年制限の適合的解釈を組み立てます。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
例外の判断には,部分工事の独立性,残工事との受益関係,他農地の効用への影響が重要です。問題文はその全てを実証しているわけではないため,答案はXの主張として示すべき事項を明らかにしています。関連工事の完了時から8年を計算する解釈は,効用確保を損なわないことを条件とする一つの構成であり,単なる医療需要による期間短縮を認めるものではありません。他の除外要件の充足,個別除外・拒絶の処分性に関する裁判例の網羅的調査までは確認していません。
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1 同じ年度の司法試験の別の模範解答
同年度の公法系については,令和2年度司法試験公法系の出題の趣旨・採点実感―未読復元との一致・相違及び答案上の教訓(AI作成)も参照できます。
令和2年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事
①行政庁の勧告・指示・公表に対する争い方―処分性,差止め,執行停止及び重大な損害(AI作成)
②令和7年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目(AI作成)
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①法務省・令和2年司法試験論文式試験問題(公法系科目):PDF7~13頁の第2問・会議録・関係法令。
②法務省・令和2年司法試験論文式試験問題出題趣旨:PDF2頁の第2問見出しから4頁の民事系見出し直前。
③法務省・令和2年司法試験の採点実感(公法系科目):PDF5~15頁の第2問総論・各設問・末尾。
2 法令
①行政手続法:試験時の版について2条3号,3条3項,6条,7条を確認。
②行政事件訴訟法:試験時の版について3条5項,11条,37条,38条を確認。農振法・農地法・政省令・運用指針は本問の配付資料を基準としています。
3 裁判例
最高裁昭和57年4月22日第一小法廷判決(昭和53年(行ツ)第62号,民集36巻4号705頁):工業地域指定の処分性について判決原文全2頁を確認。指定の具体的な規制効果を否定した判例ではなく,その効果の一般的・抽象的性格と後続処分による救済を重視した判例です。
4 確認状態
Confirmed:問題文・配付条文,基準時の行手法・行訴法,指定最高裁判決原文の確認範囲。Source statement:公式出題趣旨・採点実感が述べる答案要求と負例。Inference:64項目への原子化と重み,個別除外の肯定構成,期間制限の例外の具体的境界。Unknown:裁判例の網羅的調査及び例外適用に必要な個別の受益実態。これらの限界から,評価表を公式配点や唯一の正解として扱うことはできません。