令和2年度司法試験の民事系科目第1問(民法)について,法務省の「出題の趣旨」と「採点実感」を踏まえた模範解答と,独自に抽出した68項目の評価表を示す。評価項目の重みは1~5の5段階とし,重み5は19項目である。これは法務省の公式採点基準・得点表ではない。
第1 この記事の対象と結論
基準時は試験実施日である令和2年8月13日であり,同年4月1日施行の改正後民法を用いる。問題文の仮定上の後年の日付を,現実の後年の改正法を適用する理由にしない。
設問1は代金減額と損害賠償債権による相殺を分け,それぞれ債権譲受人Cに対抗できるかを検討する。設問2は法定通行権の範囲と地役権設定契約の解除を分ける。設問3は日常家事代理,表見代理,第三者による本人の相続と追認拒絶を順に検討する。
本答案は,減額の対抗と相殺を認め,a部分の法定徒歩通行を認める一方でc部分全体の法定自動車通行を否定し,約定地役権の解除を認める。表見代理は否定するが,G固有の関与と受益から追認拒絶を信義則上制限し,登記請求を認める構成を採る。これらの結論だけを全答案への必須要求とするものではない。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の区分と出典の示し方
番号は全設問で通算する。「必須」「高評価」「負例」「許容分岐」は重みとは別の区分である。負例は避けるべき誤りを示し,許容分岐はその構成を選ぶ場合にだけ適用する。高評価の事項や重み5の条件付き分岐を,全答案へ累積要求しない。
出典欄の頁はPDFの物理頁である。「Source statement」は引用箇所の直接の記載,「間接」は関連記述からの推論,「記載なし」は本問の関連範囲を実読して当該記載がない場合を表す。項目の原子化と重みの選択は独自の判断(Inference)である。
2 5段階の重み付け
| 重み | 基準 |
|---|---|
| 5 | 答案の骨格,又は採点実感が評価の分かれ目とした事項 |
| 4 | 出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項 |
| 3 | どちらか一方が明示する中核の理由付け |
| 2 | 一方が軽く触れる補強又は典型的な誤り |
| 1 | 一方が控えめに触れる事項 |
重み4の「取り上げた」は,高く評価された事項に限らず,具体的な不十分答案の指摘も含む。件数を先に割り当てたり,旧3段階から一律換算したりしていない。
第3 本問の概要
| 設問 | 対象 | 判断の終点 |
|---|---|---|
| 設問1 | 防音性能を欠く乙建物の売買と残代金債権の譲渡 | 居住を維持しながらCへの支払額を減らす主張 |
| 設問2⑴ | 一部譲渡による袋地と1メートル・3メートルの通路 | Bが主張するa・c各部分の法定通行の可否 |
| 設問2⑵ | 年2万円の地役権設定契約と不払 | B・Dの発言の理論的前提及び自説による解除可否 |
| 設問3 | 妻Fによる無権限売却,E死亡,G相続 | BのGに対する所有権移転登記請求の可否 |
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 居住を維持して契約に基づく支払額を減らす二つの救済を区別する 区分:必須 | 5 | PDF 4頁「設問1」 「二つの救済手段」 確認:Source statement | PDF 1頁「設問1」 「二つの救済方法」 確認:Source statement |
| 2 | 品質適合性を買主の主観的目的だけでなく当事者の合意及び取引上の社会通念から判断する 区分:必須 | 4 | PDF 4頁「設問1」 「取引上の社会通念に照らして」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「買主であるBの目的のみ」 確認:Source statement |
| 3 | 特に優れた防音性能の合意と実際の不備を契約不適合へ当てはめる 区分:必須 | 4 | PDF 4頁「設問1」 「乙建物の品質(防音性能)」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「性能が契約に適合しない」 確認:Source statement |
| 4 | 買主に帰責事由がないことを確認する 区分:必須 | 4 | PDF 4頁「設問1」 「買主に帰責事由がある場合」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「買主に帰責事由がない」 確認:Source statement |
| 5 | 追完の催告と相当期間の経過・追完の不存在を検討する 区分:必須 | 5 | PDF 4頁「設問1」 「相当期間経過後も追完がない」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「代金減額請求を基礎付ける要件」 確認:Source statement |
| 6 | 無応答だけで無催告減額の例外が成立するとしない 区分:負例 | 2 | 記載なし(第1問全関連範囲実読) | PDF 2頁「設問1」 「Aによる応答のないことをもって」 確認:Source statement |
| 7 | 減額請求は形成権であり減額の意思表示によって効果が発生すると示す 区分:必須 | 5 | PDF 4頁「設問1」 「代金減額請求の意思表示が必要」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「法的性質は形成権」 確認:Source statement |
| 8 | 減額の効果は不適合の程度に応じることを示す 区分:高評価 | 3 | PDF 4頁「設問1」 「「不適合に応じた」減額」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 9 | 減額請求自体を金銭債権とみて相殺する誤りを避ける 区分:負例 | 2 | 記載なし(第1問全関連範囲実読) | PDF 2頁「設問1」 「代金減額請求について「相殺」」 確認:Source statement |
| 10 | 譲渡通知到達による債務者対抗要件の具備を示す 区分:必須 | 3 | PDF 4頁「設問1」 「債務者対抗要件が具備」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 11 | 減額の対抗は468条1項の事由の解釈問題と特定する 区分:必須 | 5 | PDF 4頁「設問1」 「「譲渡人に対して生じた事由」」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「同項の解釈として論じる」 確認:Source statement |
| 12 | 法的基礎で足りる説では通知前の契約①を事由に当てはめる 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 4 | PDF 5頁「設問1」 「契約①の存在をもって」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「それぞれの解釈論を掘り下げつつ」 確認:Source statement |
| 13 | 昭和42年10月27日判決の基礎原因論を踏まえ減額への射程を説明する 区分:必須 | 3 | PDF 5頁「設問1」 「同様に適用可能な解釈準則」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 14 | 引渡し等を要求する説では解除との異質性を論じ上記判例の射程を区別する 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 3 | PDF 5頁「設問1」 「代金減額請求と解除との異質性」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 15 | 追完に代わる損害賠償の根拠を415条1項又は2項等のいずれかに定め一貫させる 区分:必須 | 5 | PDF 5頁「設問1」 「一貫性のある法律構成」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「基本的な要件についての論述」 確認:Source statement |
| 16 | 415条2項構成では該当号とその要件充足を説明する 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 3 | PDF 5頁「設問1」 「同項各号のいずれに該当するか」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 17 | Aの免責事由の不存在を品質保証と過去の近隣トラブルから当てはめる 区分:必須 | 4 | PDF 5頁「設問1」 「近隣トラブル」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「売主に免責事由が存在しない」 確認:Source statement |
| 18 | 自働債権はBのAに対する賠償債権,受働債権は譲渡された代金債権と示す 区分:必須 | 3 | PDF 5頁「設問1」 「損害賠償債権を自働債権」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 19 | 賠償債権の取得時を9月25日の不適合物引渡しと捉える 区分:必須 | 3 | PDF 5頁「設問1」 「不適合物の引渡時」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 20 | 取得時と7月30日の通知を比較し469条1項でなく2項の検討へ進む 区分:必須 | 5 | PDF 5頁「設問1」 「同条第2項の適用の可否」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「同条第1項又は第2項」 確認:Source statement |
| 21 | 1号構成では前の原因の基準と契約及び相殺期待の関係を説明する 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 3 | PDF 5頁「設問1」 「「前の原因」が存在するといえる」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 22 | 2号構成では1項及び2項1号との関係を踏み込んで説明する 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 4 | PDF 5頁「設問1」 「同条第1項及び同条第2項第1号との関係性」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「第1号又は第2号の解釈問題」 確認:Source statement |
| 23 | 減額を469条,相殺を468条だけで処理する取り違えを避ける 区分:負例 | 2 | 記載なし(第1問全関連範囲実読) | PDF 2頁「設問1」 「同法第468条の問題として」 確認:Source statement |
| 24 | 二つの救済の関係を説明し同じ不利益の二重填補を避ける 区分:高評価 | 5 | 記載なし(第1問全関連範囲実読) | PDF 2頁「設問1」 「二つの救済方法がどのような関係」 確認:Source statement |
| 25 | 解除・取消し・不法行為等の設問外の主張を長く論じない 区分:負例 | 2 | PDF 4頁「設問1」 「不法行為等について言及する必要はない」 確認:Source statement | PDF 2頁「設問1」 「長々と論じる答案」 確認:Source statement |
2 設問2⑴
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 26 | 一部譲渡による袋地であることから213条により丙土地の通行権を基礎付ける 区分:必須 | 5 | PDF 6頁「設問2⑴」 「民法第213条」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑴」 「隣地通行権(民法第213条)」 確認:Source statement |
| 27 | 袋地形成に無関係な周囲の所有者へ負担させないという213条の趣旨を示す 区分:高評価 | 3 | PDF 6頁「設問2⑴」 「それ以外の囲繞地に負担」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 28 | 袋地のAからBへの譲渡後も通行権が存続するかを理由とともに検討する 区分:必須 | 4 | PDF 6頁「設問2⑴」 「通行権の存続に影響」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑴」 「袋地が譲渡されたとき」 確認:Source statement |
| 29 | 土地に付着する権利・残余地の物的負担という判例の理由を用いる 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 3 | PDF 6頁「設問2⑴」 「残余地自体に課された物的負担」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 30 | 承継で消滅する説を採る場合は判例への批判と代替の通行規律を説明する 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 3 | PDF 6頁「設問2⑴」 「判例を批判した上で」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 31 | 211条1項の必要性と隣地の損害最小性を規範として示す 区分:必須 | 5 | PDF 6頁「設問2⑴」 「民法第211条第1項」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑴」 「同法第211条第1項に基づいて」 確認:Source statement |
| 32 | a部分が徒歩による公道到達に必要最小限であることを当てはめる 区分:必須 | 4 | PDF 6頁「設問2⑴」 「徒歩で公道に出るために必要最小限」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑴」 「a部分に成立すること」 確認:Source statement |
| 33 | 自動車通行の必要性・周囲の状況・他の所有者の不利益を総合考慮する 区分:必須 | 3 | PDF 6頁「設問2⑴」 「自動車による通行を認める必要性」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 34 | 徒歩による従前調整・駅徒歩圏・b部分の利用制約を車通行の必要性へ評価する 区分:必須 | 4 | PDF 6頁「設問2⑴」 「甲土地は駅から徒歩圏内」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑴」 「a部分及びc部分への同項の要件の当てはめ」 確認:Source statement |
| 35 | aとcの双方を別に検討し一方の検討だけで終えない 区分:負例 | 2 | PDF 6頁「設問2⑴」 「c部分のうちa部分を除くb部分」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問2⑴」 「いずれか一方についてしか」 確認:Source statement |
| 36 | 法定通行権と約定地役権を区別し約定の成立・消滅で法定権が失われないと示す 区分:高評価 | 3 | PDF 6頁「設問2⑴」 「約定地役権の成立又はその消滅」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑴」 「通行地役権との区別」 確認:Source statement |
3 設問2⑵
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 37 | Bの発言に即して物権契約と対価特約の理解を説明する 区分:必須 | 5 | PDF 7頁「設問2⑵」 「物権契約であると理解する立場」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑵」 「物権契約,片務契約,双務契約」 確認:Source statement |
| 38 | Bのみ年額支払債務を負いDに債務がないという発言の債権債務関係を示す 区分:必須 | 4 | PDF 7頁「設問2⑵」 「Dが債務を負わない」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑵」 「Dの債務とBの債務を混乱」 確認:Source statement |
| 39 | Bの解除理解は自分の債務からの解放に限定するものと説明する 区分:必須 | 5 | PDF 6頁「設問2⑵」 「債権者の負う債務から」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑵」 「自ら負担する債務からの解放」 確認:Source statement |
| 40 | Dの主位発言は債務に限らない広い契約拘束からの解放と説明する 区分:必須 | 5 | PDF 7頁「設問2⑵」 「その債務に限らず広く」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑵」 「それに限られない」 確認:Source statement |
| 41 | Dの予備的発言では設定者が負う具体的な債務内容と対価関係を示す 区分:必須 | 4 | PDF 7頁「設問2⑵」 「地役権を設定する債務」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑵」 「債務の内容を的確に」 確認:Source statement |
| 42 | 設定契約と対価特約を分ける構成では特約不履行が全体解除を導く理由を説明する 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 4 | PDF 7頁「設問2⑵」 「両者の関係をどのように理解」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑵」 「全体として解除できる理由」 確認:Source statement |
| 43 | 契約の構造と解除趣旨を一貫させ自説による解除可否へ結び付ける 区分:必須 | 5 | PDF 6頁「設問2⑵」 「整合的に一方の正当性」 確認:Source statement | PDF 3頁「設問2⑵」 「自説を一貫して展開」 確認:Source statement |
| 44 | 問題の発言分析を省略して通常の解除要件の当てはめだけで終えない 区分:負例 | 2 | PDF 7頁「設問2⑵」 「それぞれの発言につき」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問2⑵」 「自説を展開するだけ」 確認:Source statement |
4 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 45 | 請求の根拠を売買契約上の560条の登記移転義務とその承継に置く 区分:必須 | 4 | PDF 7頁「設問3」 「登記移転義務(民法第560条)」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問3」 「登記移転義務の相続」 確認:Source statement |
| 46 | 子・直系尊属・他の兄弟姉妹がいないこととFの放棄からG単独相続を示す 区分:必須 | 4 | PDF 7頁「設問3」 「Gが単独でEを相続」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問3」 「条文(民法第889条第1項第2号)」 確認:Source statement |
| 47 | Fの放棄によって初めてGが相続人になるという不正確な説明を避ける 区分:負例 | 2 | 記載なし(第1問全関連範囲実読) | PDF 4頁「設問3」 「Fが相続放棄した結果としてGが相続人となる」 確認:Source statement |
| 48 | 預金解約・払戻しから921条1号の法定単純承認を指摘する 区分:高評価 | 1 | PDF 7頁「設問3」 「法定単純承認があった」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 49 | Fに売却の任意代理権がないことを確認する 区分:必須 | 4 | PDF 7頁「設問3」 「売却の権限を与えられていない」 確認:Source statement | PDF 5頁「設問3」 「任意代理権がない」 確認:Source statement |
| 50 | 761条の明文は連帯責任だがその前提として相互代理権を認める理由を示す 区分:必須 | 5 | PDF 8頁「設問3」 「連帯責任の前提として」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問3」 「特段の解釈を示すことなく」 確認:Source statement |
| 51 | 日常家事とは夫婦の共同生活で通常必要な法律行為であると定義する 区分:必須 | 4 | PDF 8頁「設問3」 「通常必要な法律行為」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問3」 「日常家事債務の定義」 確認:Source statement |
| 52 | 内部事情・目的と行為の種類性質を客観的に考慮する基準及び根拠を示す 区分:必須 | 5 | PDF 8頁「設問3」 「客観的に判断されるべきこと」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問3」 「判断基準とその根拠」 確認:Source statement |
| 53 | 医療費目的・G事業資金・特有不動産・高額非日常取引を範囲外判断へ用いる 区分:必須 | 4 | PDF 8頁「設問3」 「非日常的な,高額の取引」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問3」 「丁寧に論じて本問に当てはめ」 確認:Source statement |
| 54 | 日常家事代理権に基づく110条の一般的適用が夫婦の財産的独立を害することを述べる 区分:必須 | 5 | PDF 8頁「設問3」 「夫婦の財産的独立を損なう」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問3」 「その根拠をどのように考える」 確認:Source statement |
| 55 | 110条趣旨類推の信頼対象は代理権でなく日常家事の範囲であると固定する 区分:必須 | 5 | PDF 8頁「設問3」 「相手方に代理権があることではない」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問3」 「表見代理における信頼の対象」 確認:Source statement |
| 56 | 委任状や印鑑を代理権への信頼資料と日常家事の範囲への資料に区別する 区分:負例 | 5 | PDF 8頁「設問3」 「日常家事の範囲についての信頼」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問3」 「判断要素をそのまま用いて」 確認:Source statement |
| 57 | 正当理由の当てはめは特有不動産の非日常性から結論へつなぐ 区分:必須 | 4 | PDF 8頁「設問3」 「Bの信頼に正当の理由はない」 確認:Source statement | PDF 5頁「設問3」 「一般論に対する事実の当てはめが不整合」 確認:Source statement |
| 58 | 判例と異なる代理権・第三者保護説を採る場合は判例を批判して説得的に理由付ける 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 3 | PDF 8頁「設問3」 「最高裁判決を批判した上で」 確認:Source statement | PDF 4頁「設問3」 「判例の立場に対する的確な批判」 確認:Source statement |
| 59 | 113条によりEの追認なしには効果が帰属しないことを示す 区分:必須 | 3 | PDF 8頁「設問3」 「Eの追認がない限り」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 60 | Gは無権代理人本人でなく第三者の本人相続で選択権を承継すると区別する 区分:必須 | 4 | PDF 8頁「設問3」 「第三者の本人相続」 確認:Source statement | PDF 5頁「設問3」 「Gは無権代理人ではないものの」 確認:Source statement |
| 61 | Gの事前相談・売却賛成を固有の信義則事情として評価する 区分:必須 | 3 | PDF 9頁「設問3」 「事前にFから相談を受けて」 確認:Source statement | PDF 5頁「設問3」 「問題文の事情を丁寧に考量」 確認:Source statement |
| 62 | Gの資金利用申入れと実際の受領を固有の信義則事情として評価する 区分:必須 | 3 | PDF 9頁「設問3」 「実際にも,代金の一部」 確認:Source statement | PDF 5頁「設問3」 「問題文の事情を丁寧に考量」 確認:Source statement |
| 63 | Gの契約立会いと親族了解の表示を固有の信義則事情として評価する 区分:必須 | 3 | PDF 9頁「設問3」 「売買契約締結に立会い」 確認:Source statement | PDF 5頁「設問3」 「問題文の事情を丁寧に考量」 確認:Source statement |
| 64 | 追認拒絶を認める説ではGの関与受益にもかかわらず認める理由を示す 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 3 | PDF 9頁「設問3」 「根拠を丁寧に説得的に」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 65 | 追認拒絶を制限する説では追認と同様の効果が生じ契約効果がGに帰属する橋を説明する 区分:許容分岐 条件:当該構成を採る場合に適用。別の許容構成には累積要求しない。 | 5 | PDF 9頁「設問3」 「追認がされたのと同様の効果」 確認:Source statement | PDF 5頁「設問3」 「追認したのと同様の効果」 確認:Source statement |
| 66 | 533条の同時履行関係と残代金提供を登記請求の認容へつなぐ 区分:高評価 | 3 | PDF 9頁「設問3」 「同時履行の抗弁(民法第533条)」 確認:Source statement | 記載なし(第1問全関連範囲実読) |
| 67 | 表見代理を認めた枝に当然に追認拒絶の信義則問題を累積しない 区分:負例 | 2 | 記載なし(第1問全関連範囲実読) | PDF 5頁「設問3」 「一貫性のない答案」 確認:Source statement |
| 68 | 本人の授権表示を欠く109条表見代理を長く論じない 区分:負例 | 2 | 記載なし(第1問全関連範囲実読) | PDF 5頁「設問3」 「民法第109条に基づく表見代理」 確認:Source statement |
5 答案全体の一般的な指摘
以下は重みを付けない一般的な指摘であり,68項目と加重合計には算入しない。条文の項・号,主張の相手方,時点を明記し,規範から事実評価・法的効果までつなぐ。理由付けの異なる許容構成を継ぎ合わせず,設問が指定した発言の分析を自説の結論で置き換えない。
6 重みの分布
| 重み | 項目数 | 加重値 |
|---|---|---|
| 1 | 1 | 1 |
| 2 | 9 | 18 |
| 3 | 20 | 60 |
| 4 | 19 | 76 |
| 5 | 19 | 95 |
| 合計 | 68 | 250 |
N=1+9+20+19+19=68,W=1×1+2×9+3×20+4×19+5×19=250である。加重値は項目構成の確認用であり,法務省の配点ではない。
第5 模範解答
1 前提と表記
問題文の事実を前提とする答案例である。条文は特記しない限り試験当時の民法を指す。枠内は約5700字で,金額が問題文から確定しない部分は変数で示す。設問1の相殺は469条2項1号を主たる根拠とし,2号構成は補充的な別構成として位置付ける。
2 枠内答案
第1 設問1
1 契約不適合と請求の相手方
品質に関する契約適合性は,当事者の合意の内容及び取引上の社会通念に照らして判断する。乙建物について特に優れた防音性能を備えることが合意の内容となっている。現に引き渡された建物はその性能を備えず,昼間のチェロの音に近隣住民が苦情を述べているので,品質に関する契約不適合がある(民法562条1項)。Bに起因する不適合でもなく,発見後直ちにAに通知しており566条の期間制限も妨げとならない。
Cへの債権譲渡は,Aからの通知が7月30日にBに到達したため,Bに対抗できる(467条1項)。また,譲渡されたのは代金債権であり,Aの売主としての地位や追完債務が当然にCへ移るわけではない。そこでAに対する契約不適合の救済と,その効果をCに対抗できるかを分けて検討する。
2 代金減額
Bは563条に基づく代金減額を主張できる。これは形成権であり,BがAに減額請求の意思表示をすることによって代金債務が減額される。金銭債権を取得して相殺する制度ではない。同条1項は,売主に追完の機会を与えるため,相当期間を定めた催告とその間の追完の不存在を要求する。Bの申入れは防音性能を備えるようにする追完の催告といえる。
もっとも,期間の指定は問題文にない。期間を定めない催告でも,催告後客観的に相当な期間が経過すれば,売主に追完の機会が与えられたとして減額を認めるべきである。点検・申入れから10月30日までの経過と,工事の手配及び施工に必要な期間を比較し,相当期間が経過していれば減額できる。見積書の提示を受けながらAは何ら対応しておらず,本問ではこの追完の機会を経た催告減額を認める。Aの無応答だけで明示的拒絶や追完見込みの明白な不存在を認めて無催告減額とすべきではない。
減額の効果をCに対抗できるかにつき,468条1項の「対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由」には,既に具体化した抗弁だけでなく,後に抗弁を発生させる基礎がその時までに存在した場合も含むと解する。譲渡によってBの契約上の地位を不当に悪化させないためである。請負報酬債権の譲渡後に不履行と解除が生じた場合でも,譲渡前の反対給付義務の存在を解除原因の基礎とした最判昭和42年10月27日の考え方が参考となる。売買代金減額も対価的な給付の不適合に由来し,この点では同じ保護理由が及ぶ。本件では通知前の5月20日に防音性能の合意を含む契約①が成立している。引渡し・発見・催告が通知後でも,その契約から生じる減額の効果はCに対抗できる。
減額額は不適合の程度に応じて定め,修補費用と必ずしも同じではない。減額額をR万円とすると残額は原則5000万円-R万円となる。算定資料がなく具体額は確定できない。
3 損害賠償債権による相殺
Bは564条・415条によりAに対する損害賠償債権を取得し,これを自働債権としてCの残代金債権と相殺する構成も主張できる。約束された品質の建物を引き渡さないことは債務の本旨に従った履行でない。Aは以前も音漏れについて近隣住民とのトラブルを経験しており,約束した性能の不足はAが契約及び取引上の社会通念に照らして責任を負うべき事由といえる。
必要かつ相当な防音工事の費用は,不適合によって通常生じる損害として賠償の対象となり得る(416条1項)。契約以上の性能を得る費用は含まれない。本答案では追完に代わる賠償を415条2項3号の適用によって構成する。防音性能は特に合意した重要な品質であり,その欠缺は軽微ではない。Bの催告後,相当期間を経てもAが対応していないことにより541条の解除権が発生するから,同号の要件を満たす。解除権の発生と現実の解除は異なり,Bは契約を維持したまま填補賠償を請求できる。
CはBに債権を有するが賠償債務者はAであるから,債権譲渡における相殺の特則を検討する。契約不適合に基づく損害賠償債権の発生の基礎となる取得時は,不適合物が引き渡された9月25日と捉える。修補に代わる賠償債権が引渡時に発生し,期限の定めがないものとして直ちに弁済期にあるとした最判昭和54年3月20日も参考となる。本件の填補賠償の要件と行使可能性は前述のとおり満たされる。
7月30日の通知より後の取得であるから,469条1項だけで処理せず2項を検討する。本答案では1号の「前の原因」を,自働債権の主たる発生原因が通知前に存在し,同一契約上の関連性により相殺の合理的期待が認められる場合を含むと解する。契約①は通知前に成立し,賠償債権と残代金債権はその同じ売買契約から生じるから,1号により相殺をCに対抗できる。
2号を主たる根拠とするなら,「前号に掲げるもののほか」との文言から,発生原因まで通知後にある同一契約債権をも保護する補充的規定であることと,1号の原因を狭く捉える場合に本件を2号で保護する理由とを説明すべきであり,1号との関係を無視して番号だけを当てはめてはならない。
BがCに相殺の意思表示をすれば(506条),弁済期にある金銭債権は対当額で消滅する(505条)。残代金の弁済期は引渡しから1か月以内であり,10月30日には到来している。賠償額をS万円とすると,残額は5000万円からS万円を控除した額となる。
4 構成相互の関係
減額は対価の均衡を回復し,損害賠償は不履行の損害を填補する。両者は成立要件も法的性質も異なるが,同一の価値減少について二重に控除できない。Bは選択し,又は減額で回復されない別個の損害に限り併用する。契約全部の解除は居住継続という目的に合わず,一時的な支払拒絶も最終的な減額とは異なるため,主張の中心にしない。
第2 設問2
1 法定の通行権
甲土地はDの土地の一部が分割・売却されて袋地となったものであるから,213条2項・1項の適用が問題となる。同条は任意の分割・一部譲渡に由来する不利益を関係土地間で処理し,無関係な周囲の所有者に負担させない規定である。最判平成2年11月20日は残余地の特定承継について,相隣関係は対人的関係でなく土地利用の調整を目的とし,通行権は袋地に付着する物権的権利であるとした。本問は袋地側の特定承継であるが,その理由からAからBへの譲渡でも権利は存続する。Bは丙土地を通行でき,償金を要しない。
通行の場所・方法は,211条1項の趣旨に従い,甲土地の利用に必要であり,丙土地への損害が最も少ないものに限られる。従来徒歩通行に利用している端のa部分は幅1メートルで公道につながる。甲の居住利用には徒歩通行が必要であり,端の既存通路を使うことは丙への負担を小さくする。したがって,a部分を徒歩で通行する権利があるとのBの発言は正当である。
これに対し,c部分全体は幅3メートルの自動車通路である。現代の生活で自動車の利用が重要でも,車で通れないことだけから当然に3メートルの通路を要求できない。自動車通行の必要性,周辺の状況及び丙の所有者が受ける不利益を総合的に考慮する。本件は鉄道駅から徒歩圏内の住宅地であり,Bの具体的事情は自家用車の購入計画である。仕事上や身体上の不可欠な必要性は示されていない。一方,幅を1メートルから3メートルに広げるとDの土地利用が制約され,Dが予定する花壇利用も妨げる。よって,契約②によらずc部分全体を自動車で通行できるとの主張は認め難い。
2 地役権設定契約と解除
Bの㋑の発言は,地役権設定契約を,合意によって直ちに物権変動を生じさせる物権契約と捉えたものと解される。Dは設定合意によって地役権を成立させれば給付を完了し,将来に向けた債務を負わず,Bのみが毎年2万円の支払債務を負う。この債権債務関係を前提に,解除の趣旨を,相手方が履行しない場合に自己の反対債務から解放される制度に限定すれば,反対債務を負わないDには解除の利益がないとの結論になる。
Dの㋒の発言は,Bと同様にDの債務を否定しても,解除は自己の反対債務からの解放だけでなく,履行されない契約による拘束や既に生じた給付の効果から解放する制度であると捉えたものである。Dは対価を得られないまま地役権による土地利用の制限を受けている。物権変動が完了したことは,対価の支払が履行されたことを意味しない。この利益保護のため,片務契約であっても債務不履行解除を認める余地がある。541条も双務契約に限定する文言ではない。
さらにDの後半の発言は,設定者が地役権者の通行を妨げず,その利用を継続的に受忍する不作為債務を負うと捉えたものである。するとDの受忍債務とBの年2万円の支払債務とが対価関係にある双務契約となり,B自身のいう反対債務からの解放という理解によっても解除を認めることができる。
私見としては,物権設定と対価特約を分析上区別しても,本件では車通行を継続的に認める対価として年額支払を約した一体の有償取引である。特約の不履行はその基礎を失わせ,設定部分を含む契約全体の解除を正当化する。継続して有償の通行利用を認める契約②には受忍義務が含まれ,少なくとも契約拘束からの解放という解除利益があると解する。Bは初年のみ支払い,令和4年以降数年にわたり全額を支払っていない。これは有償の継続利用の基礎となる義務の全面的な不履行で,軽微とはいえない。Dは金銭の支払につき1週間の期間を定めて催告し,Bはその期間内に支払わなかった。期間は相当であり,条件付きの解除通知の条件が成就した3月8日の経過により契約②は解除される。これにより約定地役権によるc部分の通行はできなくなるが,a部分の法定通行権は別の根拠によるため存続する。
第3 設問3
1 配偶者の代理権
FはEの代理人として契約③を締結したが,Eから丁土地の売却に関する代理権を授与されていない。委任状はFの作成したもので,Eの実印や印鑑登録証明書を所持していたこと自体は授権を意味しない。
761条は夫婦の日常家事債務の連帯責任を定めるが,その前提として夫婦相互に日常家事に関する代理権を認めたものと解する。日常家事の範囲は社会的地位,職業,資産,収入や地域慣習のほか,行為の種類・性質を客観的に考慮して定める。夫婦の内部的な目的だけで決めると,その事情を把握できない取引相手方の利益を害するためである。医療費の支払は日常家事となり得るが,相続取得した特有財産である土地を2000万円で売却する行為は,継続する共同生活の通常の事務とは性質を異にする。代金の一部をGの事業に充てる目的もある。したがって契約③は日常家事代理権の範囲に入らない。
2 表見代理
日常家事代理権を基礎に110条を一般的に適用すると夫婦の財産的独立を害するため,相手方が当該行為をその夫婦の日常家事の範囲内と信じるにつき正当な理由がある場合に,同条の趣旨を類推適用するにとどめるべきである。
ここでの信頼の対象はFに個別の売却代理権があることではなく,土地売却が当該夫婦の日常家事の範囲内であることである。委任状,実印及び印鑑登録証明書は通常,個別代理権を信じる資料となるが,土地処分という行為の性質を日常家事へ変える資料ではない。Eの医療費という目的を考慮しても,高額の特有不動産の処分を夫婦共同生活の通常の事務とみる客観的根拠はない。Gの了解もEF夫婦の日常家事の範囲を決めるものではない。したがってBの上記信頼に正当な理由はなく,表見代理は成立しない。原則として契約③の効果はEに帰属しない(113条1項)。
3 相続と追認拒絶
Eの死亡後,Fは相続を放棄したので初めから相続人でなかったものとみなされ(939条),Eには子,直系尊属及びG以外の兄弟姉妹がいないので,姉Gが単独でEの財産及び追認・拒絶の地位を承継する(889条1項2号,896条)。Gはもともと相続人であり,Fの放棄によって初めて相続資格を得るわけではない。売主の登記移転義務(560条)の承継がBの履行請求の根拠である。預金解約・全額払戻しは相続財産の処分として法定単純承認に当たる(921条1号)。無権代理人F自身が本人を相続した場合ではないから,相続だけを理由に契約が当然に有効になるとはいえない。Gの預金解約・医療費弁済もEの財産を相続人として処理する行為であり,契約③を当然に追認した行為とは区別すべきである。
もっとも,追認拒絶権も信義則(1条2項)による制約を受ける。GはEの財産管理をFと相談して行っていた者であり,売却に賛成した上,自己の事業資金のために代金の一部の使用を申し入れ,契約締結に同席し,現に200万円を受領した。Gの無権限の認識や委任状偽造への共謀は明示されておらず,これを補うことはできない。他方,土地売却の形成に積極的に関与して自ら利益を得たという客観的な関与は明らかである。
日常家事の範囲への信頼に正当な理由がなく表見代理が成立しないことは,Gの固有の関与に基づく信義則の問題を当然に排除しない。Gが,より高い2600万円の売却打診を受けた後に,自己も形成・実現に関与した売買の効力を相続人の地位から否定することは,一方でその利益を享受しながら他方で負担だけを免れる矛盾した行動となる。本人と無関係な相続人一般を拘束するのではなく,本件の積極的関与と受益に照らし,Gの追認拒絶は信義則上許されないと解する。
Gは本人の地位と追認の選択権を単独で承継し,そのうち拒絶する選択だけが信義則上許されないので,Bとの関係では追認したのと同様に契約の効果がGに帰属すると解する。この効果帰属により,Gは560条の登記移転義務を負う。代金と登記は同時履行の関係にある(533条)が,Bは残代金1600万円を提供している。したがって契約③に基づく所有権移転登記手続請求は認められる。
以上
3 枠外解説
減額請求権は形成権であり,金銭債権の相殺とは違う。468条の「事由」と469条の債権取得・「前の原因」の基準時を区別する。損害賠償を415条1項で構成するか,同条2項で構成するかは,それぞれの要件と一貫した説明を要する。
通行権では袋地側と残余地側の承継を区別して判例の理由の射程を述べる。解除では物権契約・対価特約・設定者の債務を分析し,特約の解除から契約全体の解除へ至る理由を省略しない。
日常家事代理権を基礎とする110条趣旨類推では,信頼の対象は「その夫婦の日常家事の範囲」である。委任状や実印があるという事情だけを,その範囲への信頼の根拠へ移さない。表見代理が成立する枝では,通常,効果が本人に帰属するので,相続後の追認拒絶の問題を無条件に重ねない。
重み5の全項目と適用範囲
番号1:居住を維持して契約に基づく支払額を減らす二つの救済を区別する
区分:必須。「居住を維持して契約に基づく支払額を減らす二つの救済を区別する」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号5:追完の催告と相当期間の経過・追完の不存在を検討する
区分:必須。「追完の催告と相当期間の経過・追完の不存在を検討する」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号7:減額請求は形成権であり減額の意思表示によって効果が発生すると示す
区分:必須。「減額請求は形成権であり減額の意思表示によって効果が発生すると示す」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号11:減額の対抗は468条1項の事由の解釈問題と特定する
区分:必須。「減額の対抗は468条1項の事由の解釈問題と特定する」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号15:追完に代わる損害賠償の根拠を415条1項又は2項等のいずれかに定め一貫させる
区分:必須。「追完に代わる損害賠償の根拠を415条1項又は2項等のいずれかに定め一貫させる」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号20:取得時と7月30日の通知を比較し469条1項でなく2項の検討へ進む
区分:必須。「取得時と7月30日の通知を比較し469条1項でなく2項の検討へ進む」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号24:二つの救済の関係を説明し同じ不利益の二重填補を避ける
区分:高評価。「二つの救済の関係を説明し同じ不利益の二重填補を避ける」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 二つの救済を併せて述べる際の整理を評価する。法務省の独立した必須採点項目と同一視しない。
番号26:一部譲渡による袋地であることから213条により丙土地の通行権を基礎付ける
区分:必須。「一部譲渡による袋地であることから213条により丙土地の通行権を基礎付ける」は適用条文と範囲を閉じる答案の骨格に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号31:211条1項の必要性と隣地の損害最小性を規範として示す
区分:必須。「211条1項の必要性と隣地の損害最小性を規範として示す」は適用条文と範囲を閉じる答案の骨格に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号37:Bの発言に即して物権契約と対価特約の理解を説明する
区分:必須。「Bの発言に即して物権契約と対価特約の理解を説明する」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号39:Bの解除理解は自分の債務からの解放に限定するものと説明する
区分:必須。「Bの解除理解は自分の債務からの解放に限定するものと説明する」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号40:Dの主位発言は債務に限らない広い契約拘束からの解放と説明する
区分:必須。「Dの主位発言は債務に限らない広い契約拘束からの解放と説明する」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号43:契約の構造と解除趣旨を一貫させ自説による解除可否へ結び付ける
区分:必須。「契約の構造と解除趣旨を一貫させ自説による解除可否へ結び付ける」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号50:761条の明文は連帯責任だがその前提として相互代理権を認める理由を示す
区分:必須。「761条の明文は連帯責任だがその前提として相互代理権を認める理由を示す」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号52:内部事情・目的と行為の種類性質を客観的に考慮する基準及び根拠を示す
区分:必須。「内部事情・目的と行為の種類性質を客観的に考慮する基準及び根拠を示す」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号54:日常家事代理権に基づく110条の一般的適用が夫婦の財産的独立を害することを述べる
区分:必須。「日常家事代理権に基づく110条の一般的適用が夫婦の財産的独立を害することを述べる」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号55:110条趣旨類推の信頼対象は代理権でなく日常家事の範囲であると固定する
区分:必須。「110条趣旨類推の信頼対象は代理権でなく日常家事の範囲であると固定する」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 当該検討の骨格となる規範・主体・事実・効果の接続を確認する。
番号56:委任状や印鑑を代理権への信頼資料と日常家事の範囲への資料に区別する
区分:負例。「委任状や印鑑を代理権への信頼資料と日常家事の範囲への資料に区別する」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 避けるべき対象の取り違えを示す。結論の一致だけでは充足しない。
番号65:追認拒絶を制限する説では追認と同様の効果が生じ契約効果がGに帰属する橋を説明する
区分:許容分岐。「追認拒絶を制限する説では追認と同様の効果が生じ契約効果がGに帰属する橋を説明する」は救済・根拠・効果を閉じる骨格又は採点実感の評価分岐に当たる。 本答案のように追認拒絶を制限する構成を選ぶ場合の基準であり,拒絶を認める構成にはそのまま累積しない。
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1 同年度の関連資料
令和2年度司法試験公法系の出題の趣旨・採点実感―未読復元との一致・相違及び答案上の教訓(AI作成)
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2 調べ方に関する記事
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法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧(AI作成)
第7 出典及び確認状態
法務省・令和2年司法試験論文式試験問題(民事系科目):表紙及び第1問(PDF1~5頁。5頁は図)を確認した。
法務省・令和2年司法試験論文式試験問題の出題趣旨:PDF4頁の民事系第1問の開始から,9頁の第2問開始前までを確認した。
法務省・令和2年司法試験の採点実感(民事系科目):PDF1~6頁の第1問関連部分を確認した。
e-Gov法令検索・民法(令和2年4月1日施行版):試験基準時の改正後条文を確認した。
最高裁昭和42年10月27日判決:請負報酬債権譲渡後の解除と原因の基礎。全文2頁を確認した。改正前の抗弁喪失部分は現行規律へ移していない。
最高裁昭和54年3月20日判決(昭和53年(オ)第827号):修補に代わる賠償債権の発生・弁済期。全文5頁を確認した。改正前請負規律と本問の売買の要件は区別した。
最高裁平成2年11月20日判決:残余地の特定承継と袋地通行権。全文5頁(反対意見を含む)を確認した。本問の袋地側承継への射程は判決の理由からの推論である。
最高裁平成18年3月16日判決:自動車通行の必要性と周囲の土地の不利益。全文8頁を確認した。
最高裁昭和44年12月18日判決:日常家事の範囲及び110条趣旨類推。全文3頁を確認した。
確認状態は,法令・判決本文・公式資料の取得及び実読がConfirmed,公式資料に書かれた評価や許容構成はSource statement,本答案の構成選択・個別の重み・判例の射程評価はInferenceである。判例秘書は未検索であり,データベース上の収録の有無はUnknownである。問題文から減額・賠償の具体額は確定しないが,請求構成の検討を妨げない。