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令和2年司法試験公法系科目第1問の模範解答・評価項目―57項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和2年司法試験の憲法問題について,職業の自由と移動の自由に対する規制を整理し,法務省の公式資料から抽出した57の評価項目と模範解答を示す。

第1 この記事の対象と結論

対象は公法系科目第1問である。生活路線バスの維持を目的とする規制①と,自家用車の乗入れを制限する規制②の憲法適合性が問われる。本答案は,規制①を骨子のままでは違憲,規制②を区域・時間・例外の適切な限定を前提に合憲とする。公式資料はこの結論を唯一の正解として指定しておらず,異なる構成でも理由付けの一貫性が必要である。

法状態の基準時は実際の試験実施日である令和2年8月12日とする。問題中の「202X年」は仮想の立法場面である。評価項目は独自の整理であり,法務省の公式採点基準や配点ではない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

各行は一つの判定対象である。必須,高評価,負例,許容分岐の区分と重みを別に示す。負例は避けるべき論述であり,答案に書くべき項目ではない。許容分岐には適用条件を付し,別構成をすべて累積して要求しない。「記載なし」は第1問の関連範囲を実読した結果である。根拠欄は本文中の短い照合箇所を示し,評価内容は判定対象欄で言い換えた。

2 重み付けの基準

重み5=答案の骨格又は評価の分かれ目。4=出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項。3=どちらか一方が明示する中核の理由付け。2=一方の補強又は典型的な誤り。1=一方が控えめに触れる事項である。本記事の重み4は「高評価」だけに限定しない。件数の割当ては行っていない。

第3 本問の概要

議連が構想する法案について法律家甲として意見を示す問題である。規制①は,高速路線を生活路線の運行事業者に限定するとともに,生活路線への参入を既存事業者の経営を害さない既存路線外に制限する。高速専業者は生活路線に参入しなければ自ら高速路線を営めず,貸切事業へ転業して受託する道が残る。

規制②は,知事が指定する渋滞区域と時間帯で,域外からの自家用車の乗入れを禁止する。住民又は身体障害者の乗車その他やむを得ない事由がある場合は除かれ,違反は5000円以下の過料となる。移動全般の禁止や自家用車の所有の剥奪ではない。

第4 評価項目と重み

1 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1自説を中心に必要な反対説へ批判的に応答する【必須】4PDF2頁 〔第1問〕:自説と異なる立場を考慮した論述(要旨の照合箇所)PDF1頁 第1総論:自説を中心に(要旨の照合箇所)
2資料中の具体的事実に法的評価を与える【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:規制の強度,規制の目的,生活路線バス事業の特徴等(要旨の照合箇所)PDF1頁 第1総論:法的観点からの評価(要旨の照合箇所)
3権利の性質・制約強度・目的を審査基準へ結び付ける【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:審査基準を定立(要旨の照合箇所)PDF1頁 第1総論:審査基準とのつながり(要旨の照合箇所)
4設定した基準を当てはめにも一貫して用いる【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:規制の憲法適合性について検討(要旨の照合箇所)PDF1頁 第1総論:実質的に整合していない答案(要旨の照合箇所)
5規制ごとに憲法適合性の結論を示す【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:制約の可否を問う(要旨の照合箇所)PDF1頁 第1総論:適用の結論を記載していない答案(要旨の照合箇所)

2 規制①

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
6職業選択と職業遂行の保障を区別して説明する【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:狭義の職業選択の自由(要旨の照合箇所)PDF1頁 第2規制①:職業「選択」と職業「遂行」(要旨の照合箇所)
7職業の人格的価値を説明する【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:個人の人格的価値(要旨の照合箇所)PDF1頁 第2規制①:人格的価値があるというにとどまらず(要旨の照合箇所)
8社会的相互関連性を規制の必要性の理由とする【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:社会的相互関連性が大きい(要旨の照合箇所)PDF1頁 第2規制①:規制を必要とする理由(要旨の照合箇所)
9高速路線の主体限定を職業への制約として特定する【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:生活路線バスを運行する乗合バス事業者にのみ高速路線バスの運行を認める(要旨の照合箇所)PDF1頁 第2規制①:規制①が(要旨の照合箇所)
10生活路線への新規参入制限を特定する【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:新規参入について(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:骨子第3と第4(要旨の照合箇所)
11形式的遂行規制でも高速専業には選択規制に等しいと評価する【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:狭義の職業選択の自由に対する制約に等しい(要旨の照合箇所)PDF1頁 第2規制①:どちらに関わる問題なのか(要旨の照合箇所)
12能力・資質と無関係な要件で参入が事実上困難と評価する【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:申請者の能力や資質とは無関係の要件(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:規制内容の強さ(要旨の照合箇所)
13薬事法判決を明示してその論旨を使う【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:薬事法事件判決(要旨の照合箇所)PDF1頁 第2規制①:当該判例を明示(要旨の照合箇所)
14薬事法判決の目的・必要性・自由の性質・制限程度の考慮を説明する【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:規制の目的,生活路線バス事業の特徴等(要旨の照合箇所)PDF1頁 第2規制①:規制の目的・必要性(要旨の照合箇所)
15比較考量は第一次的に立法府の責務であると説明する【必須】3記載なし(関連範囲実読)PDF1頁 第2規制①:第一次的には立法府の権限と責務(要旨の照合箇所)
16立法裁量の広狭は規制の性質に応じると説明する【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:立法裁量には事の性質上(要旨の照合箇所)PDF1頁 第2規制①:立法府の裁量の行使(要旨の照合箇所)
17許可制に重要な公共利益のための必要性・合理性を求める【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:重要な公共の利益のために必要かつ合理的(要旨の照合箇所)PDF1頁 第2規制①:薬事法事件判決(要旨の照合箇所)
18消極目的許可制ではより緩やかな業務規制による十分な目的達成の可否を問題にする【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:目的を十分に達成することができない(要旨の照合箇所)PDF1頁 第1総論:立法目的を十分に達成することができないこと(要旨の照合箇所)
19公共交通維持と生命・身体保護の目的の併存を認識する【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:高齢者自身及び第三者の身体・生命の保護(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:積極目的と消極目的が併存(要旨の照合箇所)
20主目的・副目的を区別できるかと採用する主目的を理由付ける【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:主目的と副次的目的の区別(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:その点についての説明が必要(要旨の照合箇所)
21小売市場判決の積極目的に対する広い立法裁量を考慮する【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:広い立法裁量を認めるべき(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:小売市場事件判決が積極目的規制(要旨の照合箇所)
22目的二分論を機械的に採らない理由を説明する【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:積極目的であるからといって審査基準を極端に緩和(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:二分論に従わないのであれば(要旨の照合箇所)
23政策的・専門技術的判断と裁判所の審査能力から裁量尊重を検討する【必須】4PDF1頁 〔第1問〕:政策的裁量や専門技術的裁量(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:裁判所の審査能力(要旨の照合箇所)
24骨子の移動手段確保を収益改善の先にある目的として捉える【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:地域の公共交通の維持(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:「移動手段を維持確保する」(要旨の照合箇所)
25まず規制手段の抽象的な目的促進関係を認めて検討する【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:生活路線バス網を維持する上で(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:観念的・抽象的にであれ(要旨の照合箇所)
26主張する代替手段を具体化して実効性と負担を比較する【許容分岐】(代替手段を理由に審査する場合)5PDF1頁 〔第1問〕:より緩やかな制限(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:現実に取り得る手段を具体的に挙げて(要旨の照合箇所)
27現在も補助金があることを踏まえて代替案との差を説明する【必須】3記載なし(関連範囲実読)PDF2頁 第2規制①:補助金等で補填している現状(要旨の照合箇所)
28高速専業の不利益だけでなく目的の達成と比較する【必須】3記載なし(関連範囲実読)PDF2頁 第2規制①:不利益が過大であるかないかだけ(要旨の照合箇所)
29交通政策と生活路線バスの不可欠性・地域的限定を具体化する【必須】5PDF1頁 〔第1問〕:日常生活上必要不可欠な移動手段(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:バス事業の特殊性(要旨の照合箇所)
30公衆浴場判例との類似性から経営安定規制を評価する【許容分岐】(その類推構成を採用する場合)4PDF1頁 〔第1問〕:公衆浴場の適正配置規制との類似性(要旨の照合箇所)PDF2頁 第2規制①:公衆浴場法に関する判例(要旨の照合箇所)
31酒類販売免許判例の分野別裁量を用いて目的二分論を相対化する【許容分岐】(その判例を援用する場合)3PDF1頁 〔第1問〕:酒類販売免許制事件判決(要旨の照合箇所)記載なし(関連範囲実読)

3 規制②

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
32一時的移動を22条1項の移転に含める理由を説明する【必須】5PDF2頁 〔第1問〕:国内における移動の自由(要旨の照合箇所)PDF3頁 第3規制②:「移転」に含まれるかは自明ではない(要旨の照合箇所)
33個別権である22条1項を先に検討する【必須】5PDF2頁 〔第1問〕:まず検討を要する(要旨の照合箇所)PDF3頁 第3規制②:実体的に関係の近い個別的基本権(要旨の照合箇所)
3422条に含めない場合は13条の一般的自由の保障を検討する【許容分岐】(22条1項の保障を否定する場合)3PDF2頁 〔第1問〕:一般的自由又は幸福追求権(要旨の照合箇所)PDF3頁 第3規制②:包括的自由権の一内容(要旨の照合箇所)
35自家用車乗入れを移動の方法への制約と評価する【必須】5PDF2頁 〔第1問〕:自家用車による移動を制限(要旨の照合箇所)PDF3頁 第3規制②:自家用車による乗り入れを規制(要旨の照合箇所)
36経済的自由とのラベルだけで審査を緩めない【必須】3PDF2頁 〔第1問〕:精神的自由の側面(要旨の照合箇所)PDF3頁 第3規制②:経済的自由だから緩やかな審査(要旨の照合箇所)
37講演会・集会参加という具体的事情から精神的側面を検討する【必須】4PDF2頁 〔第1問〕:講演会や集会への参加(要旨の照合箇所)PDF3頁 第3規制②:抽象的にではなく(要旨の照合箇所)
38車の移動が種々の交通規制に服する性質を示す【必須】5PDF2頁 〔第1問〕:いつ,いかなる場所においても(要旨の照合箇所)PDF3頁 第3規制②:様々な規制に服すること(要旨の照合箇所)
39区域・時間・自家用車という限定から制約の弱さを説明する【必須】5PDF2頁 〔第1問〕:他の移動手段がある場合(要旨の照合箇所)PDF3頁 第3規制②:エリアと時間帯を限った上で(要旨の照合箇所)
40歩行者天国の車両禁止との類似性を示す【高評価】3記載なし(関連範囲実読)PDF3頁 第3規制②:歩行者天国(要旨の照合箇所)
41安全で円滑な移動の確保という目的を評価する【必須】3PDF2頁 〔第1問〕:住民の安全で円滑な移動を確保(要旨の照合箇所)記載なし(関連範囲実読)
42観光バス等も原因となることに対し自家用車規制の効果を検討する【必須】3PDF2頁 〔第1問〕:混雑の主たる原因が観光バス(要旨の照合箇所)記載なし(関連範囲実読)
43区域全体でなく特定道路の禁止で達成できるかを検討する【許容分岐】(慎重な必要性審査をする場合)3PDF2頁 〔第1問〕:特定の道路への進入禁止(要旨の照合箇所)記載なし(関連範囲実読)
44例外・代替交通・範囲に即し過度の負担を審査する【必須】3PDF2頁 〔第1問〕:過度の負担とならないか(要旨の照合箇所)記載なし(関連範囲実読)
45過料を手段の審査で考慮し存在だけで審査密度を上げない【必須】3記載なし(関連範囲実読)PDF3頁 第3規制②:罰則の有無は目的達成手段の審査(要旨の照合箇所)
46集会参加への適用を別に違憲とする余地を説明する【許容分岐】(適用違憲の構成を採用する場合)3PDF2頁 〔第1問〕:これを適用することを違憲(要旨の照合箇所)記載なし(関連範囲実読)

4 規制①の負例

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
47職業の社会的相互関連性を権利重要性の理由としない【負例】2記載なし(関連範囲実読)PDF1頁 第2規制①:権利の重要性の論拠(要旨の照合箇所)
48営業の人格的価値から精神的自由そのものだと飛躍しない【負例】2記載なし(関連範囲実読)PDF1頁 第2規制①:精神的自由そのもの(要旨の照合箇所)
49福利増進を消極目的に分類しない【負例】2記載なし(関連範囲実読)PDF2頁 第2規制①:消極目的に分類する(要旨の照合箇所)
50赤字全額補助を現実的な代替案と断定しない【負例】2記載なし(関連範囲実読)PDF2頁 第2規制①:赤字は全て補助金で補填する(要旨の照合箇所)
51合併強制をより緩やかな手段と扱わない【負例】2記載なし(関連範囲実読)PDF2頁 第2規制①:合併させる(要旨の照合箇所)
52二つの規制の分析を答案で機械的に重複させない【負例】2記載なし(関連範囲実読)PDF2頁 第2規制①:記述がほぼ重複(要旨の照合箇所)
53効率的政策の提案のみで憲法審査を置き換えない【負例】2記載なし(関連範囲実読)PDF2頁 第2規制①:憲法的観点からの見解(要旨の照合箇所)

5 規制②の負例

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
54一般的自由だというだけで厳格審査を導かない【負例】(13条構成を採用する場合)2記載なし(関連範囲実読)PDF3頁 第3規制②:一般的自由にとどまるとしながら(要旨の照合箇所)
55本問に独立した平等原則の審査を追加しない【負例】5記載なし(関連範囲実読)PDF3頁 第3規制②:平等原則違反も論じた(要旨の照合箇所)
56自家用車の財産権制限へ問題を置き換えない【負例】2記載なし(関連範囲実読)PDF3頁 第3規制②:財産権の制限(要旨の照合箇所)
57刑罰明確性の独立論点を追加しない【負例】2記載なし(関連範囲実読)PDF3頁 第3規制②:刑罰に関する明確性(要旨の照合箇所)

6 重みの分布と重み5の項目

重み1は0項目,2は10項目,3は13項目,4は15項目,5は19項目で,合計N=57,重みの総和W=214である。分岐・負例を含む表の分布であり,全答案への累積要求や公式配点ではない。

  • 番号2:資料中の具体的事実に法的評価を与える。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号3:権利の性質・制約強度・目的を審査基準へ結び付ける。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号4:設定した基準を当てはめにも一貫して用いる。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号5:規制ごとに憲法適合性の結論を示す。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号9:高速路線の主体限定を職業への制約として特定する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号10:生活路線への新規参入制限を特定する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号11:形式的遂行規制でも高速専業には選択規制に等しいと評価する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号13:薬事法判決を明示してその論旨を使う。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号19:公共交通維持と生命・身体保護の目的の併存を認識する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号24:骨子の移動手段確保を収益改善の先にある目的として捉える。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号25:まず規制手段の抽象的な目的促進関係を認めて検討する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号26:主張する代替手段を具体化して実効性と負担を比較する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:代替手段を理由に審査する場合
  • 番号29:交通政策と生活路線バスの不可欠性・地域的限定を具体化する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号32:一時的移動を22条1項の移転に含める理由を説明する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号33:個別権である22条1項を先に検討する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号35:自家用車乗入れを移動の方法への制約と評価する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号38:車の移動が種々の交通規制に服する性質を示す。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号39:区域・時間・自家用車という限定から制約の弱さを説明する。権利・規制・基準・具体的適用の骨格又は評価の分かれ目。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)
  • 番号55:本問に独立した平等原則の審査を追加しない。設問射程を誤る明確な負例で答案の骨格に関わる。適用条件:全答案(別構成の累積要求ではない)

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

約5400字の答案例である。薬局距離制限事件と薬事法事件は同じ判決を指す。立案段階の憲法適合性を終点とし,存在しない処分の取消訴訟や補償請求を追加しない。異なる基準・結論を採る場合にも,採用した規範と事実評価を対応させる必要がある。

2 答案

第1 規制①の憲法適合性

1 保障される自由と規制の内容

 憲法22条1項は,職業の開始・継続・廃止を自ら決定する自由に加え,選択した職業の活動内容・態様を決定する自由を保障する。職業は生計を維持する活動であるだけでなく,個性を実現し,社会の存続を支える活動でもあるからである。バス事業を営む自由もこの保障に含まれる。

 規制①は,高速路線バスの事業主体を生活路線バスを運行する乗合バス事業者に限定する規制と,生活路線バスへの新規参入を制限する規制からなる。前者によって高速専業の事業者は,生活路線バスに参入しなければ従前の事業を続けられない。後者によって参入の道も既存事業者の経営を害さず,既存路線のない地域に限られる。両者は相まって,職業の開始・継続の自由を強く制約する。

 これに対し,バス事業の営業方法を規律するだけであり,生活路線バスを始めるか貸切バス事業に転業すれば営業を続けられるとの見方がある。しかし,生活路線バスへの参入には車両・営業所・再教育の費用を要し,既存事業者の経営を脅かさずに参入できる地域があるかも疑問とされている。また,貸切バス事業者となって運行を受託することと,自ら路線を設けて高速路線バス事業を営むこととは異なる。受託者としての活動が可能であることは,独立した事業の継続を禁止する負担を解消しない。

2 合憲性の判断枠組み

 職業活動は社会的相互関連性が大きく,精神的自由に比べて規制の必要が強い。他方,経済活動だから一律に立法府の裁量へ委ねられるわけではない。薬局距離制限事件判決が示すように,目的・必要性・内容,制限される自由の性質と制約の程度を比較考量し,立法府の合理的裁量の範囲を定めなければならない。同判決は,許可制を強力な制限と捉え,原則として重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを求め,消極的・警察的規制では,より緩やかな業務規制で目的を十分に達成できないことも求めた。

 この比較考量は第一次的には立法府の権限と責務であり,裁判所はその合理的裁量の限界を審査する。経済規制は専門技術的判断を含み,裁判所の審査能力にも限界があるからである。

 規制①の直接の狙いは事業者の収益改善であるが,その先にある目的は,生活路線バスの廃止・減便を防ぎ,可能なら利便性を向上させ,地域住民の移動手段を確保することである。高齢者や高校生の生活を支え,自家用車に依存する高齢者の事故の背景にも対処する。本来の目的を単なる既存業者の利益保護と捉えるべきではない。

 公共交通の維持・拡充は福利増進という積極目的,高齢者自身及び第三者の生命・身体の保護は危険防止という消極目的であり,両者が併存する。骨子は事業者の収益改善を通じた移動手段の維持確保を中心に据え,運転事故への対応もその維持によって実現しようとしている。したがって,主目的は積極的な交通政策であり,事故防止は副次的目的と解する。小売市場事件判決は,社会経済政策の必要性,対象,手段,態様について立法府の政策的・技術的判断を尊重し,著しく不合理であることが明白な場合に違憲とした。公共交通の収益構造,補助金,人口減少等を調整する本案にも,広い裁量を認めるとの立場が有力である。

 もっとも,酒類販売免許制事件判決は,財政分野の政策的・技術的性格を踏まえて裁量を尊重した。目的の分類だけでなく,当該分野の判断の性質を検討すべきことを示している。

 さらに,薬局距離制限事件判決も,生活上不可欠で高度の公共性を持つ役務について,内容や対価等を厳格に規制し提供を義務付ける反面,独占的地位を付与して経営を安定させる制度を区別している。地域の不可欠な交通を継続する事業者に経営上の利益を与える点は,本案を支持する理由となる。

 公衆浴場法事件判決(最判平成元年3月7日)も,自家風呂のない者に不可欠で,利用者が地域的に限定され企業としての弾力性に乏しく,自家風呂の普及で経営が困難となる浴場の安定を重視して適正配置規制を認めた。生活路線バスも,自家用車を使えない住民の生活に不可欠で,利用者の地域的限定と自家用車の普及による経営難がある。この類似性は経営安定を通じた路線網維持の必要性を支える。

 もっとも,目的の積極性や公共性のみで,既存の高速専業事業者を事業から排除する強い制限まで審査を緩めることは相当でない。小売市場事件では特定の市場形態への規制に限定され,他の営業形態が残っていた。本案は既に営んでいる独立の事業を継続できなくさせ,入口を既存業者への影響という本人の努力だけでは左右しにくい事情に結び付ける。そこで,公共性と政策裁量を考慮しつつ,重要な目的との実質的関連性があり,負担が必要な範囲を超えず,目的との均衡を保つかを具体的に審査する。

3 目的と手段の検討

 生活路線バスの大半が赤字で,廃止・減便が続き,依存する高齢者・高校生の日常生活に大きな支障が生じている以上,その維持・拡充は重要な公共の利益である。目的自体は正当である。

 高速路線バスの収益によって生活路線バスの赤字を補填している例が少なくない。高速専業を排除して生活路線事業者の高速路線収益を増やすこと,生活路線への参入を促すこと,既存生活路線の収益が競争により減少することを避けることには,交通維持との一定の関連がある。高収益の生活路線だけへの参入を許すと,既存業者の内部補助を損なうという説明にも理由がある。

 しかし,まず高速路線の収益の確保が生活路線の維持・増便にどの程度結び付くかを検討する必要がある。骨子には,生活路線の運行規模や高速収益をその維持へ充てる仕組みが示されていない。少数の生活路線を運行する事業者を含めて高速事業を独占させても,赤字路線の維持へ利益が回るとは当然にはいえない。地方で顕著な問題への対策として全国の高速専業を排除する範囲も広い。

 次に,既存事業者の経営を害さず,既存路線がない場合しか生活路線への参入を認めないと,事業として成立しにくい地域への参入と追加投資を求められる。参入して高速事業を継続できるという説明は,実際の参入可能性を伴わなければ意味が乏しい。交通維持に資する新規業者まで排除し,競争によるサービス改善の機会を失わせるおそれがある。

 経営を保護しなければ赤字路線が消えるとの反論は重要である。しかし,現に補助金があるから単に補助金を出せばよいと述べるだけでは代替案にならない。赤字路線の維持実績と必要費用に応じた助成の拡充,その財源を安定的に確保する制度,生活路線の維持を条件とする契約や負担制度など,利益と公共的負担をより直接に結び付ける方法との比較を要する。これらには財源や実施可能性の裏付けが必要であり,赤字を全て公費で埋める案や事業者に合併を強いる案を,当然に現実的でより緩やかな手段とはいえない。厳格な代替手段審査をするなら,公共交通の維持という同じ目的を十分達成できるかまで比較すべきであり,負担が小さいだけでは足りない。本問の事実だけでは各案の同等の実効性までは断定できない。そこで代替案の存在のみで違憲とはせず,前述した利益の還元と規制範囲の不対応,実際の参入経路の閉鎖を重視する。

 したがって,提示された骨子のままでは,①の二つの参入制限は,目的との実質的関連・負担の均衡に十分な限定がなく,22条1項に違反すると考える。広い政策裁量の立場からは,内部補助の実績,新規参入による高収益路線の収奪防止,転業・受託の余地を重視して合憲と評価し得るが,私は事業継続を奪う強度と参入経路の狭さを重くみる。立案時には交通維持の負担に応じた要件へ改め,参入可能性を確保し,従前事業者の移行負担にも配慮する必要がある。

第2 規制②の憲法適合性

1 移動の自由とその制約

 憲法22条1項の居住・移転の自由は,生活の本拠を変更する自由だけでなく,一時的に移動する自由も保障すると解する。移動は経済活動や人的交流の前提であり,個人の自律的な生活に不可欠である。帆足計事件判決の多数意見は外国への一時旅行を22条2項で保障したもので,国内移動についての直接の判示ではない。しかし,移転を生活の本拠の変更だけに限定すると,その準備や生活圏の選択に不可欠な一時的移動の自由を保障できない。この条文の趣旨から,国内の一時的移動も1項に含めるべきである。同事件の補足意見のように移転に含めない立場でも13条の一般的自由として保障され得るが,まず関係の近い22条1項を検討し,同項の保障を肯定する。

 自家用車での移動も,移動の自由を実現する一つの方法として保障範囲に含まれる。

 自家用車を用いることが常に独立の強固な権利になるわけではなく,徒歩や公共交通による区域への立入りは可能だから,移動自体は禁じていないとの反論がある。しかし,移動手段の選択も移動の実効性に関わり,禁止に違反すれば過料が科される。方法の限定であっても自由への制約である。代替手段の存在は,直ちに保障範囲又は制約の存在を否定する事情ではなく,制約の程度と正当化において評価すべきである。

2 判断枠組みと当てはめ

 旅券発給拒否事件(最判昭和60年1月22日)の伊藤正己裁判官補足意見は,海外渡航について人的交流による人格形成等の側面を指摘した。本問でも,講演会・集会への参加を目的とする移動に規制が及ぶので,精神的活動の実効性への影響を考慮すべきである。ただし,その補足意見を多数意見の判示とすることはできず,移動の自由全体を精神的自由そのものと扱うべきでもない。

 移動の自由は職業活動にも使われるが,精神的活動や人格的交流にも関わるため,職業規制の積極・消極目的二分論をそのまま用いない。他方,道路は多数人の共同利用に供され,自動車は道路容量と他者の安全に直接影響するから,合理的な交通調整を避けられない。本案は身体を拘束し,移動全般を禁じるものではなく,限られた区域・時間の自家用車乗入れを制限する。歩行者天国に伴う車両進入禁止のように,自動車による通行は常にあらゆる場所で許される性質のものではない。喫煙禁止事件判決の合理的制限の考え方も参考になるが,拘禁施設とは場面が違い,そこでの管理上の必要を本問へ直接持ち込むものではない。そこで,重要な目的のために必要かつ合理的で,制約が過大でないかを審査する。

 渋滞が住民の移動を著しく妨げ,道幅の狭い場所で歩行や緊急車両の通行を困難にし,安全・安心な生活を脅かしている。このような支障を除去する目的は重要である。自由を守るために他者の移動や救命活動まで妨げる道路利用を無制限に保障することはできない。

 域外からの自家用車の流入を抑えることは,車両数を減らし渋滞を緩和するから,目的との関連がある。観光バス等も渋滞の原因なので自家用車だけの規制には意味がないとの意見もある。しかし,一部の原因への対策でも有意な改善が見込まれれば関連性は認められる。他の車両を放置して自家用車を禁止しても改善が見込めない区域まで指定することは許されない。

 骨子は,日常生活に著しい支障を来す程度の渋滞区域に限定し,知事が時間帯を定める。想定範囲は最大でも混雑のひどい数平方キロメートルで,時間も観光地の週末・休日の昼間,住宅密集地の通勤・通学時等である。全面的・恒常的な移動禁止ではない。道路拡幅もできない地区では,車両流入の抑制以外の対策に限界がある。ただし,特定の狭い道路だけの進入禁止で同じ支障を解消できる場合に,区域全体の乗入れを禁じる必要はない。区域指定は混雑が面的に生じる範囲に即して行うべきである。

 住民が乗車すれば域外居住者の運転する車でも例外となり,障害者の乗車等やむを得ない事由も除外される。徒歩・公共交通に置き換えにくい生活上の必要へ配慮する仕組みがある。残る者も区域・時間を避けるか別の移動手段を利用でき,制裁も5000円以下の過料である。ただし,代替交通が実際に利用できない場合まで,形式的に他の手段があるという理由で禁止を正当化してはならない。

 公共交通の増便や域外駐車場からの乗換え等を組み合わせることは負担を軽減する。しかし,公共交通の増便だけで自家用車の流入が十分減るとは限らず,拡幅も困難な場所がある。区域・時間を実際の渋滞に即して限定し,必要な乗入れを例外として扱う本案は,そのような対策と併用する限り,過大な制約とはいえない。講演会等への参加も,自家用車以外の実効的な手段が残る限り,直ちに重大な妨害とはならない。他方,開催場所への代替交通がなく,時間変更もできず,乗入れ禁止によって参加自体が妨げられる場合には,必要性と負担を個別に検討して例外を認めるべきである。骨子の「やむを得ない事由」をこの必要に即して扱うことを前提に,規制②は22条1項に適合する。

第3 結論

 規制①は,公共交通維持という目的は正当であるものの,現行骨子の参入・継続制限が過大であり,修正を要する。規制②は,深刻な渋滞の区域・時間に限定し,生活上やむを得ない乗入れを除く制度として,憲法上許容される。

3 解説

(1) 答案と評価項目の対応

番号2・3・4・5は答案全体の事実評価,基準の接続,一貫した適用と各規制の結論に対応する。番号9・10・11・13は答案第1の1〜2における二つの参入制限,制約強度及び薬事法判決の位置付けに対応する。

番号19・24・25・26・29は第1の2〜3の混合目的,移動手段確保,内部補助による目的促進,代替案の比較と生活路線の不可欠性に対応する。番号26は代替手段を理由に審査する場合の項目であり,財源や同等実効性を事実なく断定しない。

番号32・33・35・38・39は第2の1〜2の一時的移動の保障根拠,個別権の先行,自家用車という方法の制約,交通調整の必要及び区域・時間の限定に対応する。番号55は負例であり,住民等の例外を第2の2の負担評価へ組み込み,独立した平等審査を追加しないことで回避している。

(2) 規制①

規制①では,経営保護という直接の手段の先に公共交通維持という目的がある。薬事法判決の合理的裁量と許可制の強度を踏まえ,小売市場型の広い裁量や公衆浴場の公共性を検討してから,自説の審査密度へ接続する。単に高速専業者の損失が大きいだけでは足りず,収益の確保が路線維持へ結び付く仕組みと参入の可能性を評価する。

(3) 規制②

規制②では,一時的移動を22条1項に含める理由を示し,講演会・集会への参加という事情を踏まえつつ,区域・時間・手段の限定を審査密度へ結び付ける。住民等の例外は自由への負担の評価に用いる。本問では独立した平等原則の審査,財産権や刑罰明確性の論述を追加しない。

帆足計事件の多数意見が直接扱ったのは外国旅行と22条2項である。国内の一時的移動の保障は,本答案の条文解釈として理由付けている。旅券事件の人格形成等の指摘は伊藤正己裁判官の補足意見であり,多数意見へ帰属させない。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

規制①について広い政策裁量を採る立場や,規制②について13条の一般的自由を採る立場も許容される。本答案の基準と結論を,他の構成の必須結論とはしない。骨子に示された事実だけでは代替案の財源等を確定できず,その存在だけを違憲の決め手としない。財産権・刑罰明確性や,存在しない個別処分の取消訴訟は扱っていない。

第6 関連記事

同年度の別問題・校正記事と別年度の模範解答である。本記事の法的内容は,第7の一次資料に基づく。

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

2 法令・判例

3 確認状態

問題はPDF1〜5頁,出題の趣旨は1頁及び2頁の第1問部分,採点実感は1〜4頁の総論・本問・末尾注記を確認した。同一PDF内の別問題は本記事の根拠にしていない。判例は裁判所の原文を確認し,酒類販売免許制事件は多数意見の関連部分を使用した。

確認済み(Confirmed):公式資料の対象・関連範囲と引用箇所,判決原文,憲法の関係条文。資料の記載(Source statement):公式資料が述べる要求と負例。推論(Inference):評価項目の重みと,本件事実への規範の適用・結論。未確定(Unknown):収益還元の実態や代替助成の財源・同等の実効性は問題文だけでは確定できない。その不足を架空の立法事実で補っていない。