本記事は,令和4年司法試験民事系科目第1問の模範解答と,公式資料から独自に抽出した70件の評価項目を掲載する。複数の許容構成を一律の必須事項にせず,論証の骨格,事実評価及び請求された救済への接続を確認するために用いる。
第1 この記事の対象と結論
対象は,令和4年司法試験の民事系科目第1問(民法)である。問題文,出題の趣旨及び採点実感から,70件の評価単位を独自に抽出した。重み5は27件である。この一覧は法務省の公式採点基準又は項目別配点ではない。
設問1(1)は,Aの重い帰責性を否定してCの引渡請求を退ける。設問1(2)は,C自身を背信的悪意者としないためDへの移転登記請求は認めず,詐害行為取消しによるAへの返還登記を認める。設問2は,確定的な所有権取得を要する構成でFの両月分の賃料請求を認め,異なる前提の㋒を条件付きで検討する。設問3は,後の遺言との抵触による死因贈与の撤回を認める。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
各行は,答案に書かれた内容を個別に判定できる単位に分けた。「必須」「高評価」「負例」「許容分岐」と重みは別の軸である。負例は避けるべき誤り等の指摘であり,許容分岐はその構成を採った場合に適用する。全ての構成を一つの答案へ累積して要求しない。条件付きの別構成を結論まで書くときは,その構成固有の理由付けも必要になる。
表の引用はPDFの空白・改行だけを除いて照合した短い抜粋であり,頁はPDFの物理頁である。引用が文の途中から始まる場合があるため,評価項目の具体的内容と併せて原資料の前後を確認する必要がある。「記載なし」は本問の関連範囲を実読した結果であり,資料全体に類似の一般論がないという意味ではない。末尾の一般的な答案作法は重みなしで別に示す。
2 5段階の重み付けの基準
重みは本記事の分析であり,法務省の配点ではない。
重み5:採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格そのもの。
重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項。
重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け。
重み2:一方が軽い表現で触れる補強又は典型的な誤り。
重み1:一方が控えめに触れるだけの事項。
令和8年度司法試験論文式試験の主要7科目の参考答案と予想される評価項目でも,答案の骨格を重く扱い,個々の補強事情を一律に重み5へ引き上げない考え方を採っている。短く書ける出発点でも,欠くと結論又は救済への法的経路が崩れるなら重く扱う。本問は公表済みの出題の趣旨・採点実感から項目を抽出した分析であり,公式資料公表前の問題文・判例から予想した令和8年度の記事とは,重み4以下の資料上の判定条件が異なる。
重み5の全件を,公開表の番号から確認できるように示す。条件付きの53・55も重み5であるが,全答案に必須の構成ではない。
- 1番 AB間に譲渡の意思表示がなく,BからCへの取得は原則認められないことを示す。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:所有権に基づく請求の出発点であり,原則を飛ばすと信頼保護の例外の意味が失われる。
- 2番 権利外観の信頼保護を94条2項の類推適用として問題にする。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:原則から例外へ進む法的経路を決める骨格である。
- 7番 意思に基づく外観作出又は承認と,意思関与のない外形与因型を区別する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:本人の関与の程度によって保護要件が変わる分岐点である。
- 8番 外形与因型では94条2項と110条の法意を用い第三者の無過失を要求する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:外形与因型に固有の要件を定め,帰責性と信頼の利益調整を決める。
- 17番 二重譲渡におけるDの登記欠缺と177条の適用を示す。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:請求1の成否を対抗問題として位置付ける骨格である。
- 19番 単なる悪意と背信的悪意の違いを定義・例で示す。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:主観的悪意だけで保護を失わせないための判断基準であり,採点実感が説明の有無を評価している。
- 21番 Bの背信性は対抗の相対的制約でありAB売買を無効にしないと説明する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:無効と対抗上の制約を取り違えると転得者の権利を誤るため,構造上の骨格となる。
- 22番 Cの背信性を独立に判断し,Bの地位の当然承継を否定する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:転得者自身について保護を判断することが請求1の結論を決める。
- 26番 Aの契約④を詐害行為取消しの対象としてCへの請求を構成する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:債務者の行為・被告・返還先を確定する請求2の骨格である。
- 27番 共同担保保全の趣旨と,Dの特定物債権が被保全債権になる理由を説明する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:特定物債権者が取消制度を使える根拠を説明する中核の架橋である。
- 29番 177条の対抗法理と詐害行為取消制度の目的・効果の整合性を説明する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:二つの請求の整合性を説明し,対抗できないのに取消しを求められる理由を示す評価の分かれ目である。
- 30番 債務超過を指摘し,Dの4000万円受領も含めて無資力を評価する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:無資力は取消しの中核要件であり,代金受領を無視した事実評価では足りない。
- 37番 424条の6により取消しとAへの返還登記を求める効果を示す。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:成立要件の検討を請求された救済に接続する骨格である。
- 39番 ㋐の根拠を605条の2第1項による所有権随伴の地位移転と説明する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:Gの主張㋐の法的根拠を特定する骨格である。
- 42番 ㋑を605条の2第1項の「譲渡」に担保目的の譲渡が含まれないという主張に位置付ける。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:㋑を条文の要件語の解釈に位置付ける設問の骨格である。
- 44番 ㋒を1項の適用を仮定した2項の類推適用という追加的主張に位置付ける。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:㋒の仮定と追加的反論の構造を定め,㋑との混同を防ぐ。
- 46番 FH間に賃貸借の合意がないため2項の直接適用ができないと指摘する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:直接適用と類推適用を分ける要件事実であり,採点実感が取り違えを問題としている。
- 48番 1項の趣旨を合理的当事者意思又は他の説得的根拠から説明する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:所有権移転に賃貸人の地位が随伴する理由を示す評価の分かれ目である。
- 49番 所有権的・担保的という説名だけから「譲渡」の該当性を決めない。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:説名と条文の「譲渡」との中間命題を省略すると結論を支えられず,採点実感が具体的な説明不足を取り上げている。
- 50番 弁済期経過と担保実行を分け,5月・6月の結論の理由を説明する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:5月と6月の請求の成否を異なる法的時点から導く骨格である。
- 53番 β:担保譲渡も1項の譲渡とするなら,Hの観念的使用収益権・間接占有を説明する。適用条件:担保譲渡も1項の「譲渡」とするβ構成を採る場合,又はその条件枝の結論まで示す場合。重み5の理由:β構成を選ぶ又はその条件枝の結論まで書く場合に,Hが賃貸人の債務を履行できる理由を支える固有の中間命題である。α構成だけの答案への累積要求ではない。
- 55番 β12:5月のみ請求を認めるなら,弁済期後の権限取得と実行未了の関係を説明する。適用条件:留保合意の期限を重視して5月分のみ認めるβ12構成を採る場合(枠内答案では条件付きの別構成)。重み5の理由:β12の月別結論を支える固有の権限変化の説明である。α1やβ11等を採る答案へ一律に要求しない。
- 59番 契約⑧を554条の死因贈与とし,死亡による効力発生を示す。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:請求4の権利取得原因と効力発生時を確定する骨格である。
- 61番 ㋓を554条を介した1023条1項の抵触による撤回と説明する。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:Lの主張㋓を条文連鎖と抵触の効果に接続する骨格である。
- 63番 Mの反論を1023条1項の準用が554条の「性質に反」するという文言に結び付ける。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:Mの反論を準用の限界に関する法文の解釈へ進める評価の分かれ目である。
- 64番 契約の相手方の期待保護とKの最終意思尊重を対置して優先理由を論じる。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:契約の拘束力と最終意思という対立利益の優先理由を示す評価の分かれ目である。
- 69番 複数制度を関連付け,権利帰属・対抗・取消しの効果を混同しない。適用条件:本問の当該設問に適用。重み5の理由:請求1と請求2の異なる目的・要件・効果を関連付け,結論の整合性を示す設問1(2)の評価の分かれ目である。
第3 本問の概要
設問1(1)では,抵当権抹消のために渡した書類をBが悪用してAからBへの登記をし,Cが買い受けた。Aの意思に基づく権利移転の不存在と,外観に対するCの信頼保護を分けて検討する。設問1(2)は別の事実関係であり,AからDへの先行売買,Bの妨害目的での二重買受け,BからCへの転売を扱う。請求1はDへの登記,請求2はAへの登記という終端の違いがある。
設問2では,賃貸建物についてFがHへ譲渡担保を設定し,弁済期後も担保実行・処分がない。Gの㋐とFの㋑・㋒の根拠を説明し,5月分・6月分の賃料請求の当否を論じる。㋑は1項の「譲渡」該当性,㋒は1項が適用されるとした上での2項類推という前提の違いがある。
設問3では,KがMへ死因贈与した不動産を,後の有効な遺言でN県へ遺贈した。唯一の相続人Lの主張㋓と,Mの契約拘束力に関する反論を検討する。問題文が有効とした遺言の方式等を争わず,請求4の結論へ接続する。
第4 評価項目と重み
1 設問1(1)―権利外観と第三者保護
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | AB間に譲渡の意思表示がなく,BからCへの取得は原則認められないことを示す 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:所有権に基づく請求の出発点であり,原則を飛ばすと信頼保護の例外の意味が失われる。 | 5 | 4頁・民事系科目第1問 1(1) 「しているが、Bは無権利者であり、Cが外観を信じて取引をした者として保護されるかが問題となる。虚偽の外観の作出・存」 | 1頁・第1問・採点方針及び設問1 「においては、無権利者からの譲受人は権利を取得することができないのが原則であること、その例外として、民法第94条第」 |
| 2 | 権利外観の信頼保護を94条2項の類推適用として問題にする 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:原則から例外へ進む法的経路を決める骨格である。 | 5 | 4頁・民事系科目第1問 1(1) 「される場合に法第94条第2項を類推適用し、登記の外形を信頼して無権利者と取引をした善意の第三者の保護を図っている」 | 1頁・第1問・採点方針及び設問1 「4条第2項の類推適用の可否が問題になること、②については、本問のように本人が虚偽の外観作出に直接関与していないが」 |
| 3 | 譲渡行為の不存在を,通謀虚偽表示による無効と取り違えない 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:採点実感における典型的誤り又は低優先事項 | 2 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 2頁・第1問・1(1) 「のBに対する権利移転行為が不存在であるため、AのBに対する譲渡が無効であるという表現は誤りであるが、このような答」 |
| 4 | 意思表示をしていないAについて詐欺取消しを論じない 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:採点実感における典型的誤り又は低優先事項 | 2 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 2頁・第1問・1(1) 「いのであり、詐欺を問題にする余地はない。Cが権利を取得することができないのが原則であるとした上で、多くの答案が民」 |
| 5 | Bが自己の物として売ったことを踏まえ,BC売買を無権代理としない 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 4頁・民事系科目第1問 1(1) 「においては、代理権の存在についての信頼を保護することを趣旨とする法第110条の適用が問題となるわけではない。⑶法」 | 2頁・第1問・1(1) 「るのであり、Aの代理人としてAの土地を譲渡したわけではないから、これを無権代理行為とするのは誤りである。②につい」 |
| 6 | 外観・帰責性・信頼の三つを区別して規範を定立する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 5頁・民事系科目第1問 1(1) 「え、本人Aの帰責性と第三者Cの善意又は善意無過失の要件具備の当否を適切に判断することが求められる。平成18年判決」 | 2頁・第1問・1(1) 「述べた上で、①虚偽の外観の存在、②虚偽の外観の作出についての権利者の帰責性、③虚偽の外観に対する第三者の信頼とい」 |
| 7 | 意思に基づく外観作出又は承認と,意思関与のない外形与因型を区別する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:本人の関与の程度によって保護要件が変わる分岐点である。 | 5 | 5頁・民事系科目第1問 1(1) 「から、上記の「外形与因型」に該当する。「外形与因型」の事例への対処については、判例のように法第94条第2項と第1」 | 2頁・第1問・1(1) 「し、いわゆる外形意思対応型と本問のような外形与因型との区別に言及した上で、真の権利者の意思的関与なしに作出されて」 |
| 8 | 外形与因型では94条2項と110条の法意を用い第三者の無過失を要求する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:外形与因型に固有の要件を定め,帰責性と信頼の利益調整を決める。 | 5 | 5頁・民事系科目第1問 1(1) 「推」により、善意無過失の第三者を保護するものとしている(最判昭和43年10月17日民集22巻10号2188頁、最」 | 3頁・第1問・1(1) 「れ得ること、第三者の無過失が必要であることなどを論じて、定立した規範に詳細に事案を当てはめたものなどである。良好」 |
| 9 | 本人の意思的関与が弱い場面で無過失を加える利益調整を説明する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 2頁・第1問・1(1) 「いことから、AとCの利益の調整を図る観点から、Cが保護されるための要件として無過失が必要であるという点を挙げるに」 |
| 10 | 外観の作出・承認と同視できるほど重い帰責性を要求する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 5頁・民事系科目第1問 1(1) 「承認したと「同視し得るほど重い」帰責性がある場合に無過失の第三者が保護されるとした。本問においても、Cの無過失は」 | 2頁・第1問・1(1) 「比較しても、Aに帰責性があったと容易には認められない事案であると考えられるが、Bに求められるままに登記に必要な書」 |
| 11 | Bによる契約書偽造を,Aの意思関与を否定する事実として評価する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 5頁・民事系科目第1問 1(1) 「の、契約①の契約書がBの偽造によるものであることは重視されるべきである。所有権移転登記それ自体にAの意思的関与は」 | 2頁・第1問・1(1) 「はないこと、売買契約書はBによって偽造されていること、Bによって作出された虚偽の外観をAが是正する契機も見いだせ」 |
| 12 | Aが不実登記を是正できる契機の有無を事実から検討する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 5頁・民事系科目第1問 1(1) 「された外観を是正し得る契機も見いだせない。こうしたことからすれば、本問は、上記の平成18年判決の事案よりも平成1」 | 2頁・第1問・1(1) 「虚偽の外観をAが是正する契機も見いだせないことなどの事情を踏まえて判断する必要があるが、事案について詳細に検討し」 |
| 13 | 平成15年と平成18年の先例の事実差を本問に即して比較する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 5頁・民事系科目第1問 1(1) 「問は、上記の平成18年判決の事案よりも平成15年判決の事案に類似しているといえる。法第94条第2項と第110条の」 | 2頁・第1問・1(1) 「数であった。最判平成15年6月13日判時1831号99頁、最判平成18年2月23日民集60巻2号546頁などの事」 |
| 14 | Cの照会とBの説明を踏まえ善意・無過失を事実評価する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 5頁・民事系科目第1問 1(1) 「においても、Cの無過失はもとより、Aの帰責性についても、その判断については相当の慎重さが求められる。Aの帰責性に」 | 1頁・第1問・採点方針及び設問1 「責性の有無、Cの過失の有無などについて論ずる必要がある。」 |
| 15 | Aの帰責性肯定説を採るなら説得的理由を示す(選択枝) 許容分岐 適用条件:Aの帰責性を肯定する構成を採る場合 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 5頁・民事系科目第1問 1(1) 「る。ただし、Aの帰責性を是認する答案も、その論拠が説得的に示されていれば、相応に点を与える。2設問1⑵について⑴」 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) |
| 16 | 単独94条2項類推説等を採るなら判例と類推の限界を説明する(選択枝) 許容分岐 適用条件:判例と異なる類推構成を採る場合 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 5頁・民事系科目第1問 1(1) 「見解もある。論拠が適切に示されているのであれば、判例とは異なる見解に依拠するのであっても等しく評価されるが、いず」 | 2頁・第1問・1(1) 「言及した上で根拠を示して同項のみを類推適用する立場を採るのではなく、単に、権利者の関与の程度によって第三者の保護」 |
2 設問1(2)―対抗関係と詐害行為取消し
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 17 | 二重譲渡におけるDの登記欠缺と177条の適用を示す 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:請求1の成否を対抗問題として位置付ける骨格である。 | 5 | 5頁・民事系科目第1問 1(2) 「例によれば、法第177条にいう「第三者」には背信的悪意者は含まれず、登記がなくても物権の取得を対抗することができ」 | 3頁・第1問・1(2) 「るに当たって民法第177条の適用が問題になることについては、多くの答案が指摘していた。また、判例によれば、単純な」 |
| 18 | 背信的悪意者が登記の欠缺を主張する正当な利益を欠く理由を示す 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 5頁・民事系科目第1問 1(2) 「71頁等)。自由競争の前提となる信義則に違反し、権利濫用法理に違背するような者は、自由競争の範囲を逸脱し、登記に」 | 3頁・第1問・1(2) 「信的悪意者は自由競争を逸脱するものであるという根拠を示していた。背信的悪意者の定義やどのような者が背信的悪意者に」 |
| 19 | 単なる悪意と背信的悪意の違いを定義・例で示す 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:主観的悪意だけで保護を失わせないための判断基準であり,採点実感が説明の有無を評価している。 | 5 | 5頁・民事系科目第1問 1(2) 「されている。背信的悪意者の典型例としては、「不動産登記法第5条の第三者と類似する立場にある第三者」、「不動産取得」 | 4頁・第1問・1(2) 「答案の例は、背信的悪意者の例を挙げながら根拠を示してこれが民法第177条の第三者に該当しないとし、Bが背信的悪意」 |
| 20 | Dを妨害する目的で取得したBを背信的悪意者と評価する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 6頁・民事系科目第1問 1(2) 「の第1売買を妨害する意図をもって自己への所有権移転、Cへの転売をしているため、上記の「不動産取得の目的が著しく信」 | 4頁・第1問・1(2) 「しないとし、Bが背信的悪意者に該当することを本問に即して丁寧に論じた上で、Bは信義則上Dの登記の欠缺を主張するこ」 |
| 21 | Bの背信性は対抗の相対的制約でありAB売買を無効にしないと説明する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:無効と対抗上の制約を取り違えると転得者の権利を誤るため,構造上の骨格となる。 | 5 | 6頁・民事系科目第1問 1(2) 「悪意者につき相対的に判断をしており、第1譲受人との関係で登記の欠缺を主張できない背信的悪意者も所有権取得者であっ」 | 4頁・第1問・1(2) 「きないだけで権利を取得してはいること、したがってBからの譲受人であるCは自身が背信的悪意者でない限り、同条の第三」 |
| 22 | Cの背信性を独立に判断し,Bの地位の当然承継を否定する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:転得者自身について保護を判断することが請求1の結論を決める。 | 5 | 6頁・民事系科目第1問 1(2) 「る転得者は、自身が第1譲受人との関係で背信的悪意者と評価されるのでない限り、登記を備えれば第1譲受人に対抗できる」 | 4頁・第1問・1(2) 「人であるCは自身が背信的悪意者でない限り、同条の第三者に当たることを論じたものなどである。また、Dの債権が詐害行」 |
| 23 | Cの先行売買の認識とBの害意を知らない事実を区別する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 6頁・民事系科目第1問 1(2) 「、Dを害する意図がBにあったことまでは知らなかったというのであるから、背信的悪意者とはいえないものと解される。し」 | 3頁・第1問・1(2) 「り意識せず、単純にCが背信的悪意者であるかどうかを問題とし、これを否定する答案が散見されたが、判例によれば背信的」 |
| 24 | Dが所有権を対抗できる場合の登記請求を真正な登記名義の回復に接続する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 3頁・第1問・1(2) 「はCに対し、真正な登記名義の回復を原因として直接Dに所有権移転登記をするように請求することができる、すなわち請求」 |
| 25 | 悪意者排除説等を選ぶ場合に背信的悪意者排除説への疑問を説得的に示す 許容分岐 適用条件:悪意者排除説等の別説を採る場合 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 6頁・民事系科目第1問 1(2) 「、学説上は、悪意者排除論や有過失者排除論も有力であり、これらを論拠とする場合も、判例法理となっている背信的悪意者」 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) |
| 26 | Aの契約④を詐害行為取消しの対象としてCへの請求を構成する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:債務者の行為・被告・返還先を確定する請求2の骨格である。 | 5 | 6頁・民事系科目第1問 1(2) 「424条)、転得者Cに対し、法第424条の5に基づいて詐害行為取消権を行使することが考えられる。本問において、D」 | 3頁・第1問・1(2) 「張の可否、③二重譲渡事例における詐害行為取消権行使の可否、④詐害行為取消しの要件と本問への当てはめ、⑤詐害行為取」 |
| 27 | 共同担保保全の趣旨と,Dの特定物債権が被保全債権になる理由を説明する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:特定物債権者が取消制度を使える根拠を説明する中核の架橋である。 | 5 | 6頁・民事系科目第1問 1(2) 「定物債権でも窮極において損害賠償債権に変じうることが、その理由とされる。イ詐害行為取消権を行使するための要件とし」 | 3頁・第1問・1(2) 「ることから、共同担保を保全するという詐害行為取消権の趣旨に反するのではないかが問題になる。この点について論ずる答」 |
| 28 | 売買のみと登記具備を分け,履行不能又は賠償債権への転化を早めない 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:採点実感における典型的誤り又は低優先事項 | 2 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 3頁・第1問・1(2) 「るのであり、Bへの譲渡時に既に履行不能になっていたという理解は誤りである。また、対抗要件を具備していない第一譲受」 |
| 29 | 177条の対抗法理と詐害行為取消制度の目的・効果の整合性を説明する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:二つの請求の整合性を説明し,対抗できないのに取消しを求められる理由を示す評価の分かれ目である。 | 5 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 4頁・第1問・1(2) 「なり得るか、民法第177条との矛盾が生じないかなどを論じ、民法第424条や第424条の5の要件を丁寧に当てはめ、」 |
| 30 | 債務超過を指摘し,Dの4000万円受領も含めて無資力を評価する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:無資力は取消しの中核要件であり,代金受領を無視した事実評価では足りない。 | 5 | 6頁・民事系科目第1問 1(2) 「第1に、Aが債務超過状態に陥っていること、甲土地がAの唯一のめぼしい財産であることが事実8に示されていること。ま」 | 4頁・第1問・1(2) 「りであるが、Dから4000万円を受け取っており、これが費消されたなどの事実も問題文にはないため、これをそのまま支」 |
| 31 | 時価4000万円の土地を2000万円で処分する共同担保の減少を評価する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 6頁・民事系科目第1問 1(2) 「あるところ、その半額で売却をしていること。以上より、契約④は詐害行為に当たる。第2に、事実9からすれば、Aに詐害」 | 4頁・第1問・1(2) 「はBに対して低い価格で譲渡しているから、同条の適用場面でないことは明らかであり、同条について言及する必要はない。」 |
| 32 | Aの詐害意思を,事実9から認定する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 6頁・民事系科目第1問 1(2) 「からすれば、Aに詐害意思があることも明らかであり、受益」 | 4頁・第1問・1(2) 「24条の5の要件を丁寧に当てはめ、結論として請求1は認められず、請求2のみが認められるとしているものなどである。」 |
| 33 | 受益者Bの詐害性についての悪意を認定する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 7頁・民事系科目第1問 1(2) 「-7-者Bの悪意も、同事実に示されているとおりである。第3に、事実11において、売買③の存在やAが無資力で」 | 4頁・第1問・1(2) 「24条の5の要件を丁寧に当てはめ、結論として請求1は認められず、請求2のみが認められるとしているものなどである。」 |
| 34 | Cが先行売買とAの無資力を知っていることから転得者の悪意を認定する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 7頁・民事系科目第1問 1(2) 「ているため、転得者の悪意の要件も満たされている。以上より、本問では、Cに対する詐害行為取消権の行使は認められると」 | 4頁・第1問・1(2) 「は、債権者がその債権の履行を受けることができるかどうかに関するものであり、本問のBのような加害意図とは異なるもの」 |
| 35 | 詐害性の悪意を,Bの加害目的の認識と取り違えない 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 7頁・民事系科目第1問 1(2) 「の存在やAが無資力であることにつき転得者Cは知っていたことが示されているため、転得者の悪意の要件も満たされている」 | 4頁・第1問・1(2) 「えようとするBの意図を知らなかったため悪意ではないと記載した答案が見受けられた。しかし、民法第424条第1項ただ」 |
| 36 | 低額処分で明らかに非該当の424条の2へ分量を割かない 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:採点実感における典型的誤り又は低優先事項 | 2 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 4頁・第1問・1(2) 「らかであり、同条について言及する必要はない。⑤については、多くの答案が取消しだけでなく転得者が転得した財産の返還」 |
| 37 | 424条の6により取消しとAへの返還登記を求める効果を示す 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:成立要件の検討を請求された救済に接続する骨格である。 | 5 | 7頁・民事系科目第1問 1(2) 「者Cに対して債務者Aに登記を戻すよう請求することはできるが、直接自己に移転登記せよと請求することはできない(法第」 | 4頁・第1問・1(2) 「はできるが(請求2が認められる)、Dに返還するように求めることはできない(請求1は認められない)ことを指摘してい」 |
| 38 | 不動産は424条の9によりDへ直接移転させることができないと示す 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 7頁・民事系科目第1問 1(2) 「はできない(法第424条の9の反対解釈。最判昭和53年10月5日民集32巻7号1332頁【民法判例百選Ⅱ<第8版」 | 4頁・第1問・1(2) 「められる)、Dに返還するように求めることはできない(請求1は認められない)ことを指摘していた。(イ)答案の例優秀」 |
3 設問2―譲渡担保と賃貸人の地位
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 39 | ㋐の根拠を605条の2第1項による所有権随伴の地位移転と説明する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:Gの主張㋐の法的根拠を特定する骨格である。 | 5 | 7頁・民事系科目第1問 2 「考えられる。下線部㋐が法第605条の2第1項を根拠として、乙建物の所有権移転に随伴して直ちに賃貸人の地位がFから」 | 5頁・第1問・2 「。もっとも、同項が根拠となることや、同項の要件(特に賃借人が対抗要件を具備していること)を満たしていることの指摘」 |
| 40 | Gの引渡しによる借家権の対抗要件を当てはめる 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 7頁・民事系科目第1問 2 「ていること(借地借家法第31条)、乙建物が所有者FからHに譲渡されたことを指摘することが求められる。次に、下線部」 | 5頁・第1問・2 「同項の要件(特に賃借人が対抗要件を具備していること)を満たしていることの指摘が不十分な答案が散見され、合意による」 |
| 41 | 所有権移転登記は地位移転の成立要件と対抗要件を混同しない 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:採点実感における典型的誤り又は低優先事項 | 2 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 5頁・第1問・2 「2第3項)を地位移転の要件とする答案も見られた。民法第605条の2第1項の内容を解釈論として示すものもいくつか見」 |
| 42 | ㋑を605条の2第1項の「譲渡」に担保目的の譲渡が含まれないという主張に位置付ける 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:㋑を条文の要件語の解釈に位置付ける設問の骨格である。 | 5 | 7頁・民事系科目第1問 2 「、譲渡担保は一般的に法第605条の2第1項の「譲渡」に当たらないから、賃貸人の地位はHに移転することなくFのもと」 | 5頁・第1問・2 「言に即して、どの要件が欠けているから「譲渡」に当たらないのかを指摘する必要がある。また、請求3の時点において債務」 |
| 43 | 弁済期経過後でも実行・処分がなく受戻権が存続する状態を示す 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 7頁・民事系科目第1問 2 「しておらず、Fの受戻権が失われていないことを確認することも必要である。さらに、反論㋒が、法第605条の2第2項の」 | 5頁・第1問・2 「しておらず、Fの受戻権が失われていないことに言及した答案はごく少数であった。③については、民法第605条の2第2」 |
| 44 | ㋒を1項の適用を仮定した2項の類推適用という追加的主張に位置付ける 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:㋒の仮定と追加的反論の構造を定め,㋑との混同を防ぐ。 | 5 | 8頁・民事系科目第1問 2 「基づく譲渡が同項の「譲渡」に当たると仮定した場合の追加的主張であり、反論㋑を不当とする場合は反論㋒の当否を検討す」 | 5頁・第1問・2 「下線部㋑とは前提を異にしていることに留意する必要がある。本問においては、以上のようなF及びHのそれぞれの主張を正」 |
| 45 | ㋒の留保合意を契約⑦の使用収益継続合意から解釈する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 7頁・民事系科目第1問 2 「ける乙建物の使用・収益に関する合意は賃貸人の地位をFに留保する趣旨を定めたものと解されること、②Fの設定者留保権」 | 5頁・第1問・2 「推適用により賃貸人の地位がFに留保されることを根拠とすることを述べる必要がある。多くの答案は同項が根拠であること」 |
| 46 | FH間に賃貸借の合意がないため2項の直接適用ができないと指摘する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:直接適用と類推適用を分ける要件事実であり,採点実感が取り違えを問題としている。 | 5 | 8頁・民事系科目第1問 2 「さず、同項を直接適用することはできないと考えられる。もっとも、法第605条の2第2項は、賃貸不動産の譲渡にもかか」 | 5頁・第1問・2 「ではFH間に賃貸する旨の合意はない。そこで、同項の適用ではなく、譲渡担保権設定契約における使用収益権限の付与を賃」 |
| 47 | 設定者の利用権限が賃貸借と類似し,賃借人の地位を安定させる類推の基礎を説明する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 7頁・民事系科目第1問 2 「る利用権限は賃貸借に類比することができること、③Fの設定者留保権が担保の実行により消滅すると、賃貸人の地位が確定」 | 5頁・第1問・2 「権限の付与を賃貸借と類似の法律関係と見て同項を類推適用することが下線部㋒の根拠となる。この点について言及した答案」 |
| 48 | 1項の趣旨を合理的当事者意思又は他の説得的根拠から説明する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:所有権移転に賃貸人の地位が随伴する理由を示す評価の分かれ目である。 | 5 | 8頁・民事系科目第1問 2 「、(合理的)当事者意思の推定を根拠とするという説明が一般的になっているが、賃貸人の債務の性質、法律関係の複雑化の」 | 5頁・第1問・2 「かどうかは、同項の趣旨(④)に遡って検討する必要があるが、この点から説き起こした答案はごく少数であった。⑤の結論」 |
| 49 | 所有権的・担保的という説名だけから「譲渡」の該当性を決めない 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:説名と条文の「譲渡」との中間命題を省略すると結論を支えられず,採点実感が具体的な説明不足を取り上げている。 | 5 | 8頁・民事系科目第1問 2 「は、理論上、肯定・否定いずれの結論も導くことができる。検討に当たっては、純然たる所有権的構成ではなく、担保的構成」 | 5頁・第1問・2 「いとしても)直ちに出るわけではない。担保目的の譲渡が同項の「譲渡」に該当するかどうかは、同項の趣旨(④)に遡って」 |
| 50 | 弁済期経過と担保実行を分け,5月・6月の結論の理由を説明する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:5月と6月の請求の成否を異なる法的時点から導く骨格である。 | 5 | 8頁・民事系科目第1問 2 「被担保債権の弁済期到来が譲渡担保権の実体法上の効力にどう影響するのか、特に目的物の処分権限についての制約が撤廃さ」 | 6頁・第1問・2 「譲渡担保権の実行がされていないこととの関係をどのように説明するかが問題になると思われるが、この点についても説得的」 |
| 51 | α1:確定的取得を要すると解し,受戻権存続中の両月分はFが請求できると論じる 許容分岐 適用条件:確定的所有権取得を要すると解するα1構成を採る場合(枠内答案の主構成) 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 8頁・民事系科目第1問 2 「考えられる(構成α―1)。他方で、所有権留保に関しては、担保目的で所有権を留保する」 | 6頁・第1問・2 「の立場から、含まないと考える場合には、被担保債権の債務不履行後、帰属清算や処分清算がされる前の段階でも賃貸人たる」 |
| 52 | α2:所有権と占有権限で足りる構成を採るなら,不履行後の権限変化を論じる 許容分岐 適用条件:所有権と占有権限で足りると解するα2構成を採る場合 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 9頁・民事系科目第1問 2 「考えられる(構成α―2)。⑺以上のような法律構成に対して、債権担保目的での所有権移転も「譲渡」に当たると解した上」 | 6頁・第1問・2 「場に応じて、賃貸人たる地位が移転するために実行を要するかどうかや使用収益権がいつまでFに与えられているかなどの契」 |
| 53 | β:担保譲渡も1項の譲渡とするなら,Hの観念的使用収益権・間接占有を説明する 許容分岐 適用条件:担保譲渡も1項の「譲渡」とするβ構成を採る場合,又はその条件枝の結論まで示す場合 重みの理由:β構成を選ぶ又はその条件枝の結論まで書く場合に,Hが賃貸人の債務を履行できる理由を支える固有の中間命題である。α構成だけの答案への累積要求ではない。 | 5 | 9頁・民事系科目第1問 2 「取得した上で間接占有を取得し(譲渡担保は、抵当権と同様に非占有担保として扱われることが多いが、不動産譲渡担保に関」 | 6頁・第1問・2 「限も取得して間接占有しているなどの説明が必要になるが、この点について言及した答案はほぼなかった。また、5月分と6」 |
| 54 | β11:実行未了から黙示の期限猶予を認めるなら,留保継続を説明する 許容分岐 適用条件:実行未了から黙示の猶予・留保継続を認めるβ11構成を採る場合 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 9頁・民事系科目第1問 2 「があり得る(構成β―1-1)。他方で、本件合意は、債務αの弁済期経過によりHは債権担保目的に伴う制約である処分権」 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) |
| 55 | β12:5月のみ請求を認めるなら,弁済期後の権限取得と実行未了の関係を説明する 許容分岐 適用条件:留保合意の期限を重視して5月分のみ認めるβ12構成を採る場合(枠内答案では条件付きの別構成) 重みの理由:β12の月別結論を支える固有の権限変化の説明である。α1やβ11等を採る答案へ一律に要求しない。 | 5 | 9頁・民事系科目第1問 2 「り立ち得る(構成β―1-2)。さらには、法第605条の2第2項の類推適用を否定する考え方もあり得る(構成β―2)」 | 6頁・第1問・2 「った。また、5月分と6月分とで結論を異にする理由についても、6月分の請求時点でも譲渡担保権の実行がされていないこ」 |
| 56 | β2:2項類推を否定するなら1項による両月不認容と整合させる 許容分岐 適用条件:2項類推を否定するβ2構成を採る場合 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 9頁・民事系科目第1問 2 「もあり得る(構成β―2)。この立場からは、同第1項の原則に従い、賃貸人の地位はHに移転しており、反論㋒は妥当せず」 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) |
| 57 | 371条の果実への効力との均衡と,弁済期後の担保権の実体効を検討する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 8頁・民事系科目第1問 2 「効力が及ぶ(法第371条)とされていることとの均衡上、譲渡担保においても被担保債権の弁済期到来が譲渡担保権の実体」 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) |
| 58 | 2項の趣旨を賃借人の地位の不安定化を避けた留保合意の許容と説明する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 8頁・民事系科目第1問 2 「)を受けて、賃借人の法的地位の安定化を阻害しない範囲で、賃貸人の地位の留保合意の効果を認めるものである。そのため」 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) |
4 設問3―死因贈与と後の遺言
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 59 | 契約⑧を554条の死因贈与とし,死亡による効力発生を示す 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:請求4の権利取得原因と効力発生時を確定する骨格である。 | 5 | 9頁・民事系科目第1問 3 「)であって、Kの死亡によってそれが効力を発したことを理由に、Kの唯一の相続人として贈与者の地位を承継しているLに」 | 6頁・第1問・3 「た。厳密にはKが死亡してその効力が発生していること、Mが相続人としてKの死因贈与契約に基づく義務を承継しているこ」 |
| 60 | 唯一の相続人Lが贈与者の義務を承継することをMの請求に接続する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 9頁・民事系科目第1問 3 「相続人として贈与者の地位を承継しているLに対し、契約⑧の履行を求めるものである。これに対するLの㋓の主張は、死因」 | 6頁・第1問・3 「人としてKの死因贈与契約に基づく義務を承継していることも必要であるが、この点について言及した答案は少なかった。②」 |
| 61 | ㋓を554条を介した1023条1項の抵触による撤回と説明する 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:Lの主張㋓を条文連鎖と抵触の効果に接続する骨格である。 | 5 | 9頁・民事系科目第1問 3 「ことになる(法第1023条第1項準用)。Lの㋓の主張の当否は、遺言に関する法第1022条及び第1023条が死因贈」 | 6頁・第1問・3 「1項のほうがより直接的に適用可能な規定であり、同項を根拠として挙げるべきである。また、同条第2項を問題にする答案」 |
| 62 | 後遺言の事案に1023条2項を適用しない 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:採点実感における典型的誤り又は低優先事項 | 2 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 6頁・第1問・3 「ある。また、同条第2項を問題にする答案もあったが、本問では同項の適用は問題にならない。③については、Mとしては民」 |
| 63 | Mの反論を1023条1項の準用が554条の「性質に反」するという文言に結び付ける 必須 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:Mの反論を準用の限界に関する法文の解釈へ進める評価の分かれ目である。 | 5 | 10頁・民事系科目第1問 3 「るのは「その性質に反しない限り」としていることをどのように考えるかによって左右される。Mからの反論としては、遺言」 | 7頁・第1問・3 「るかどうかが反論のポイントであることを指摘した答案はそれほど多くはなかった。また、この点について判例の立場に言及」 |
| 64 | 契約の相手方の期待保護とKの最終意思尊重を対置して優先理由を論じる 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:契約の拘束力と最終意思という対立利益の優先理由を示す評価の分かれ目である。 | 5 | 10頁・民事系科目第1問 3 「踏まえつつ、契約の相手方の保護と死亡後の財産の処分に係る被相続人の最終意思の尊重との調整をどのように行うかについ」 | 7頁・第1問・3 「ことを述べていずれの要請を優先するかを丁寧に論じるものが挙げられる。良好に属する答案の例は、優秀に属する答案に比」 |
| 65 | 1022条の方式部分を除く準用という判例の立場を示す 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 10頁・民事系科目第1問 3 「023条)の準用を原則として肯定しつつ(最判昭和47年5月25日民集26巻4号805頁)、負担付死因贈与において」 | 7頁・第1問・3 「の点について判例の立場に言及した答案はほぼなかった。贈与は書面によってされた場合には解除することができないとする」 |
| 66 | 判例の例外に言及するなら負担履行又は事案事情を根拠に射程を区別する 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:一方が明示する中核理由又は選択した構成の説明 | 3 | 10頁・民事系科目第1問 3 「場合における個別事例に即した例外(最判昭和58年1月24日民集37巻1号21頁)を認める立場であるものと一応まと」 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) |
| 67 | 550条と1023条を一般的な優劣関係にせず,異なる拘束力調整として扱う 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:採点実感における典型的誤り又は低優先事項 | 2 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 7頁・第1問・3 「1023条の優劣関係という問題の捉え方は不正確であると思われる。④の結論については一貫した論述ができていればいず」 |
| 68 | 準用肯定・否定・個別事情説を採る場合はその立場の理由と結論を一貫させる 許容分岐 適用条件:採用した準用肯定説・否定説・個別事情説に応じて適用。他説を累積要求しない 重みの理由:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的誤りの指摘を通じて取り上げた事項 | 4 | 10頁・民事系科目第1問 3 「いて検討し、結論を示すことが求められる。その際、第2については、上記のとおり、判例の立場の捉え方も、学説上の見解」 | 7頁・第1問・3 「できていればいずれでも得点が与えられるが、民法第1023条第1項の準用を認めるのであれば、遺言者の最終の意思の尊」 |
5 答案全体に関わる横断事項及び用語
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 69 | 複数制度を関連付け,権利帰属・対抗・取消しの効果を混同しない 高評価 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:請求1と請求2の異なる目的・要件・効果を関連付け,結論の整合性を示す設問1(2)の評価の分かれ目である。 | 5 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 7頁・第1問・今後の学習(設問1⑵の複数制度) 「を規律し得る複数の制度の関係をどのように理解するかを論ずることが望ましいが、全体として、このような複数の制度を相」 |
| 70 | 遺言・遺贈・死因贈与と受遺者・受贈者の用語を区別する 負例 適用条件:本問の当該設問に適用 重みの理由:控えめな用語上の注意 | 1 | 記載なし(本問の関連範囲を実読した結果) | 7頁・第1問・3 「贈者」などのそれぞれの意味を正確に理解していないのではないかと思われる答案が散見された。イ答案の例優秀に属する答」 |
69番は設問1(2)で二つの制度を関連付ける事項,70番は設問3の用語に関する負例である。一般的な答案作法としては,①知識の列挙で終わらず具体的事実から結論を導く,②判例と異なる見解を採るなら判例を正確に指摘して批判する,③判例の前提事実・価値判断・論理構造・射程を検討する,との指摘がある(採点実感7~8頁)。この3件は重み付け及び項目数の集計に含めない。
6 重みの分布
重み1=1件,重み2=7件,重み3=12件,重み4=23件,重み5=27件。項目数はN=1+7+12+23+27=70,加重総量はW=1+2×7+3×12+4×23+5×27=278である。このWは許容分岐・負例も含めた表の分布であり,一つの答案の必須得点分母ではない。
重み5は全70件のうち27件(約38.6%)である。制度の出発点,判断基準,具体的な救済への接続をそれぞれ判定できる行に分け,53・55番のように採用する構成に応じた項目も一覧に含めている。各行の重み5の理由は第2の2に示した。70件全てを一つの答案の累積的な必須事項とする趣旨ではない。
年度・科目によって根拠資料と評価単位の分け方が異なるため,令和8年度ハブの件数・割合に合わせる調整はしていない。比較する際は,重みの数だけでなく,答案の骨格か,理由付けか,補強かという各項目の役割を確認する。重みの合計から公式得点,難易度又は合格可能性を推測することはできない。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
試験実施日の令和4年5月12日当時の法状態を基準とする。問題文の将来の年号は事例の時点として扱い,その年における将来の改正法を推測して適用しない。条文番号だけの引用は民法を指す。㋐~㋓及び契約①~⑧は問題文の表示に対応する。
設問2の主構成はα1である。㋒については根拠と別構成の帰結を説明するためβ12を条件付きで扱う。これらを同時に成立する一つの結論とはしない。設問3は遺贈規定の準用を肯定する立場を採る。以下は一つの完成答案例であり,公式が許容する別構成を排除するものではない。
2 答案
第1 設問1(1)
1 Cの引渡請求は,甲土地の所有権に基づく返還請求である。AB間の契約①の契約書はBが偽造したものであり,Aは売却に合意していない。したがって,契約①による所有権移転はなく,登記にも公信力がないため,B名義の登記だけではBは所有者にならない。BC売買の成立だけでは,Cの所有権取得は根拠付けられない。
2 Cは,不実の登記への信頼を理由に,民法94条2項,110条の類推適用を主張すると考えられる。BはAの代理人として売却したのでなく,自己が所有者であるとして売却したから,110条の直接適用はない。また,AB間に通謀がないため,94条2項の直接適用もない。
もっとも,虚偽の権利外観を信頼した第三者を保護すべき場合はある。所有者が外観を作出又は承認した場合には94条2項の法意が及ぶ。所有者が不実登記を知らなかった場合でも,自ら外観を作出したり,知りながら放置したりした場合と同視できるほど重い帰責性があり,第三者がその外観について善意無過失であれば,同項と110条の類推適用により保護することができる。本人の意思的関与がない場面では,善意だけで第三者を保護すると所有者の犠牲が大きい。そこで,外観作出への帰責性を慎重に認定するとともに,第三者にも合理的な信頼すなわち無過失を要求して利益を調整する。単なる書類交付から,当然に重い帰責性を認めるべきではない。
3 Aは不動産取引の経験がなく,従前不動産業を営んでいた友人Bを信頼し,実在する抵当権登記の抹消を任せた。そのための書類と説明され,所有権移転に必要な書類等を渡した点には不注意がある。しかし,Bへの移転を承認した事情はなく,契約書もBが偽造している。書類交付から不実登記までは3日,Cの購入までも短期間であり,不実登記を知って放置した事実もない。売却意思のない本人が契約書への署名押印や不実の申請への押印を漫然と許した平成18年判決の事案とは異なり,必要書類を別の登記手続のために渡し短期間に悪用された平成15年判決の事案に近い。Aに外観を是正する契機もなく,外観を自ら作出した場合と同視できるほどの帰責性は認められない。
Cは登記を確認し,短期転売についてBに説明を求め,Aが未知の買主を不安視するため一旦Bが買ったと説明された。Cが不実登記を知っていた事実はない。この説明には取引上の合理性があり,Aへの直接照会まで当然に要求すべきではないから,Cは善意無過失と評価する。ただし,そのことだけでAの帰責性を補えるわけではなく,類推適用による保護は成立しない。Cは所有権を取得せず,Aは引渡しを拒める。
第2 設問1(2)
1 請求1
AD間の契約③により,Dは甲土地の所有権を取得する(176条)。もっとも,不動産の所有権取得は登記がなければ第三者に対抗できない(177条)。BはDへの譲渡を知るだけでなく,嫌っていたDを困らせる目的で,登記未了を利用して二重に買い受けた。単なる先行売買の認識を超え,第一譲受人の取得を害意をもって妨げる取得者は,不動産取引の自由競争の範囲を逸脱する。Bは登記の欠缺を主張することが信義則に反する背信的悪意者であり,同条の第三者から除外される。
しかし,この除外は,Bとの関係でDが登記なく所有権を対抗できるという相対的な効果にとどまり,AB間の契約④を無効にするものではない。転得者Cも,自身が背信的悪意者でない限り177条の第三者に当たる。
Cは契約③とAの資力不足を知っていたが,Dを害するBの意図は知らず,C自身にDを害する目的等がある事実もない。単なる悪意では足りないから,Cは第三者として保護され,登記のないDは所有権取得を対抗できない。Dが所有権をCに対抗できれば,真正な登記名義の回復を原因とする自己への移転登記を求められるが,本件では対抗できず,請求1は認められない。
2 請求2
(1)Dは,詐害行為取消請求として契約④を取り消し,Cに甲土地をAへ返還するための登記を求めることが考えられる(424条,424条の5第1号,424条の6第2項)。取消対象は債務者Aの処分である契約④であって,BC間の契約⑤ではない。
(2)Dの元の債権は特定の土地の所有権移転・登記を求めるものである。詐害行為取消制度は債務者の責任財産を保全し,一般債権者の共同担保を確保する制度であり,特定物債権を持つことだけで自己への移転を優先的に実現する制度ではない。
しかし,特定物債権も窮極には履行に代わる損害賠償債権に変じ得るため,債務者の一般財産によって担保される必要がある。債務者による目的物の処分がその無資力をもたらす場合,特定物債権者もその処分を取り消せる。本件では単に契約④を締結しただけで当然に履行不能となったと捉えてはならないが,最終的にCが対抗力ある登記を取得し,AがDに移転を実現できない状態に至っている。自ら二重処分に協力したAに免責事由はなく,Dの債権は415条1項,2項1号による金銭的損害賠償によって保護されるべきものである。その原因である契約③は契約④に先行し,424条3項・4項にも適合する。
確かに,登記を備えないDが後の売買を取り消すことは177条と矛盾するようにも見える。しかし,177条は所有権取得の対抗を規律するのに対し,詐害行為取消しは無資力を要件として総債権者の共同担保を保全する制度である。Dの所有権を優先させるのでなくAの一般財産を回復するため,目的・要件・効果が異なり,矛盾しない。
(3)契約④は財産処分である。甲土地の時価は4000万円であるのに,Bへの代金は2000万円にとどまる。したがって,責任財産を2000万円分減少させる廉価処分である。
Aは契約③の代金全額を受領してもなお債務超過で,甲土地以外に見るべき資産がない。半額処分は共同担保を減らし,Dの損害賠償債権の回収を困難にするから詐害性がある。Aは自己の債務超過と先行売買を知りながら処分したので,債権者を害する認識がある。BもDへの売却を知り,Dの取得を妨げる目的で廉価で買っているから,受益時に害することを知っていたと認められる。
(4)転得者Cには,転得時に契約④が債権者を害することを知っていたことが必要である。背信的悪意者のような加害目的までは必要でない。Cは契約③の存在と,Aには債務を弁済するだけの資力がないことを告げられている。この状態で甲土地の登記を取得すれば,Dへの移転が履行不能となり,Dの損害賠償債権の回収もできなくなると認識できるから,詐害性を知っていたと評価できる。Bの加害目的を知らなかったことは,この悪意を否定しない。
(5)よって,Dは契約④を取り消して,Cに甲土地のAへの返還を求めることができ,請求2は認められる。不動産であるため,424条の9によるDへの直接の引渡しを求める場面ではない。Aに登記を戻すことが,共同担保の回復という請求の目的に対応する。
第3 設問2
1 ㋐の根拠
Gは乙建物の引渡しを受け,借地借家法31条の対抗要件を備える。Gの主張は,乙建物の譲渡によって所有権に随伴して賃貸人たる地位がHへ移転するという605条の2第1項を根拠とする。Hは登記も備え,同条3項によるGへの対抗が可能である。第3項の登記は地位移転そのものの成立要件ではない。通常の譲渡であれば,Fは賃貸人の地位を失い,Gに賃料を請求できない。
2 ㋑の根拠と当否
(1)㋑は,担保目的の譲渡は605条の2第1項の「譲渡」に当たらず,Fに賃貸人の地位が残るという主張である。譲渡担保では債権担保の目的に必要な範囲で所有権が移るが,設定者は弁済によって完全な所有権を回復できる。請求3の時点では弁済期は経過しているものの,Hは担保を実行せず,第三者に処分してもいないので,Fの受戻権は存続する。
(2)同項の趣旨は,所有権を譲り受け使用収益を提供できる者が,対抗力ある賃借権の負担に対応する賃貸人の地位も引き受けることが合理的な当事者意思に沿う点にある。譲渡人のもとに賃貸人の債務だけを残すと,権限と義務が分離し,法律関係も複雑になる。
ただし,担保目的の移転が「譲渡」に当たるかは,形式や学説名だけでは決められない。担保目的の譲渡には非占有担保として設定者が使用収益を継続する形態と,担保権者が使用収益する形態があり,どちらも成立し得る。
本件ではFがGに使用させ賃料を収受し,Hへの移転は債権回収のための制約付きの移転にとどまる。Fの受戻権が存続する間は,Fが使用収益させる地位を保持することが取引の合理的意思に沿う。そこで,本件の「譲渡」は確定的な所有権移転を要すると解し,担保設定時に同項による賃貸人の地位の移転はないと考える。
(3)弁済期経過後は,Hは換価処分等によって担保権を実行する権能を取得する。しかし,不履行と実行の完結は別であり,5月31日に当然に確定的所有権を取得するわけではない。抵当権に関する371条との均衡から不履行後の果実にも担保の効力を認めることと,賃貸人の契約上の地位が移転することも別である。果実の担保的把握の可能性は,Fの契約上の地位を当然に消滅させない。
Hは実行も処分もしていないから,6月にも受戻権が存続し,確定的な譲渡はない。よって㋑を採用し,Fは5月分及び6月分各30万円を請求できる。
3 ㋒の根拠と,㋑を採らない場合の検討
㋒は,担保譲渡も第1項の「譲渡」に当たると仮定した追加的な反論であり,㋑とは前提が異なる。本答案は㋑を採用するため㋒に依拠する必要はないが,その根拠と別構成の帰結を示す。
605条の2第2項は,地位を譲渡人に留保する合意に加え,譲受人が譲渡人に賃貸する合意を要求する。これは譲渡人が賃借人に使用収益させる権限を確保し,賃借人の地位を不安定にしないためである。FH間に賃貸する合意はなく直接適用はできないが,設定者の利用権限が賃貸借に類似し,権限を確保できるため,類推適用が㋒の根拠となる。
担保譲渡も「譲渡」とする立場では,Hが観念的には使用収益権限も取得し,Fを介して間接占有しているので,Gに使用収益させる債務の履行が可能であると説明する。その上で,契約⑦の弁済期までの使用収益継続を,Fに地位を留保する合意と解する。
期限を文言どおり解するなら,5月分は留保期間中の賃料としてFに帰属するが,6月分は留保が終了してHに地位が移り,Fは請求できない。理由は実行の完結でなく,Hの権限に対するFの期限付き利用権限の終了である。実行未了から留保の延長を認定せず期限を重視する別構成であり,㋑による両月請求とは混同しない。
第4 設問3
1 契約⑧はKの死亡によって効力を生ずる死因贈与である(554条)。有効に存続すれば,Kの死亡によってMは丙不動産を取得し,Kの権利義務を承継する唯一の相続人L(896条)に移転登記を求められる。
2 死因贈与には性質に反しない限り遺贈の規定が準用される。死後の財産処分では贈与者の最終意思を尊重する必要があり,1022条が方式に関する部分を除いて準用される。また,先行処分と後の遺言が抵触する場合には1023条1項により,抵触する部分が撤回されたものと扱われる。
Kは丙不動産をMへ贈与する契約⑧の後,同一の不動産をN県へ遺贈する有効な遺言を作成した。両者は同時に実現できず,全部が抵触する。よって,Lは554条,1022条及び1023条1項を根拠に,契約⑧が撤回されたと主張できる。
3 Mは,死因贈与は受贈者の承諾によって拘束力が生じる契約であり,遺贈と異なると反論できる。単独行為によって相手方との契約を一方的に覆すことは,554条の「その性質に反」し,1023条1項を準用すべきでないという。書面による契約であることも,MがKの熟慮した約束を信頼したという評価を補強する。
確かに契約の拘束力と受贈者の期待は無視できない。しかし,550条は書面によらない贈与で意思の慎重な形成を確保するための規定であり,死因贈与について最終意思を尊重する必要があるかとは別の問題である。書面によることだけで554条による撤回の準用を排除すべきではない。負担付死因贈与で負担を履行した場合や,訴訟上の紛争を裁判上の和解で解決するために約束した場合は,受贈者の利益を特に保護し自由な撤回を制限すべき場合がある。しかし,本問にはそのような履行や合意形成の事情は示されない。幼少時からかわいがられていた事実は贈与の動機を示すが,撤回を妨げる履行等の事情には当たらない。関係が悪化した後,Kは有効な遺言を作成してLとN県に知らせており,N県へ遺贈する意思も明確である。
4 したがって,Mの反論は採用できず,契約⑧は撤回されている。Mは丙不動産の所有権を取得しないため,請求4は認められない。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1)権利帰属・対抗・救済を分ける
1~14番では,Aの意思表示の不存在を出発点として,類推適用による例外を論じる。17~38番及び69番では,Bの背信性が売買を無効にするわけではないこと,Cの背信性を独立に判断すること,D自身への登記とAへの返還登記を区別することが重要である。27・29番では,特定物債権も一般財産による担保を必要とする理由と,対抗制度と共同担保保全制度の整合性まで説明した。
(2)条文の要件語と採用構成の理由を結ぶ
39~58番では,所有権的構成・担保的構成という名称だけで「譲渡」該当性を決めない。1項の趣旨を説明し,弁済期の経過・実行・受戻権を区別して月別の結論を導く。βの条件枝を示す以上,53番の観念的な使用収益権と間接占有の説明も落とさない。55番では,期限後の利用権限の終了を,担保実行の完結とは別に説明した。
(3)準用の限界を法文と対立利益から論じる
59~68番では,Mの期待を述べるだけでなく,554条の「その性質に反しない限り」という文言に結び付ける。550条の書面による拘束と,死後処分における最終意思の尊重を一般的な優劣関係にしない。負担履行等による例外は事実上の射程を分け,問題文にない履行を補わない。
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詐害行為取消しの「悪意」と転得者―受益者との違い,認識の時点と証拠の整理は,認識の時点,受益者・転得者の条文上の違い,証拠と返還先を実務の視点から整理している。
1 同じ年度の司法試験の別の模範解答
令和4年度の主要7科目をまとめて読む場合は,令和4年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答を参照できる。同じ年度の他の6問の模範解答は,次のとおりである。
- 令和4年度司法試験公法系第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した58項目と5段階の重み付け
- 令和4年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した53項目と5段階の重み付け
- 令和4年度司法試験民事系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した55項目と5段階の重み付け
- 令和4年度司法試験民事系第3問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した53項目と5段階の重み付け
- 令和4年司法試験刑事系科目第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した48項目と5段階の重み付け
- 令和4年司法試験刑事系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した50項目と5段階の重み付け
同じ年度の公法系については,令和4年度司法試験公法系の出題の趣旨・採点実感―未読復元との一致・相違及び答案上の教訓も参照できる。こちらは未読復元と公式資料との校正を扱う記事である。
2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
- 令和4年司法試験・民事系科目の論文式試験問題(全13頁のうち,第1問は2~4頁。表紙及び第1問を実読)
- 令和4年司法試験論文式試験問題の出題趣旨(全44頁のうち,4頁の民事系科目冒頭~10頁の第2問直前を実読)
- 令和4年司法試験の採点実感・民事系科目(全25頁のうち,第1問と一般的指摘に当たる1~8頁を実読)
評価表は,これらの法務省資料をもとに独自に編集・加工したものである。引用以外の評価項目の分割・区分・重みは本記事の分析であり,法務省が作成した基準ではない。資料の利用に関しては法務省ウェブサイトのコンテンツの利用について(公共データ利用規約第1.0版)を参照した。利用日:令和8年10月8日。
2 法令
- 民法・令和4年4月1日施行時点の履歴本文(e-Gov法令API)。176・177条,94・110条,415条,424条以下,550・554条,605条の2,896条,1022・1023条等を確認。
- 借地借家法・試験日前の施行履歴本文(e-Gov法令API)。31条を確認。
現行本文だけでなく施行履歴を選択し,試験日後の改正を混入させないようにした。
3 裁判例
- 最高裁平成18年2月23日判決:権利外観と本人の帰責性。全3頁を実読。
- 最高裁平成15年6月13日判決:書類交付と短期間の不正登記。全5頁を実読。
- 最高裁平成8年10月29日判決:背信的悪意者からの転得者。全8頁のうち理由の中心である5~6頁等を実読。補足的な箇所の一部は根拠に用いていない。
- 最高裁大法廷昭和36年7月19日判決:特定物債権と詐害行為取消し,対抗制度との整合。1~2頁の多数意見を実読。3~5頁の補足意見等は評価の根拠に用いていない。
- 最高裁昭和57年9月28日判決:譲渡担保の権限と受戻し。全2頁を実読。賃料請求の本問と同一事案の判例ではない。
- 最高裁昭和47年5月25日判決:死因贈与の撤回。1頁の理由を実読。2頁の手続部分は根拠に用いていない。
- 最高裁昭和57年4月30日判決:負担履行と撤回の制限。全2頁を実読。
- 最高裁昭和58年1月24日判決:裁判上の和解による死因贈与の撤回制限。全3頁を実読。
4 確認状態
公式資料の本問該当範囲,法令の施行履歴及び上記裁判例の記載は確認した。評価単位の分割と重み,事実の類似性,本答案での構成の選択は独自の判断である。採点実感6頁の相続人に関する「Mが相続人としてK…義務を承継」との記載は,問題文及び896条に照らしてLを指す誤記と判断した。表の出典引用は原文を書き換えず,評価項目と答案で区別した。
譲渡担保を設定した賃貸建物について,本問と同一の賃料帰属を直接判断した裁判例の一次本文は特定できていない。したがって,枠内答案の設問2の結論を直接の判例結論として扱わず,公式資料が許容する構成と,確認した法令・譲渡担保の一般法理から論証している。検索で到達できなかったことは,該当裁判例が存在しないことの証明ではない。