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令和3年度司法試験知的財産法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した41項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和3年司法試験の知的財産法第1問について,公式資料から独自に抽出した41項目と,2500字以内の模範解答を示す。
評価項目と5段階の重みは法務省の公式採点基準ではない。

第1 この記事の対象と結論

対象は令和3年司法試験論文式試験の知的財産法第1問であり,法状態の基準日は選択科目試験が行われた令和3年5月12日である。
各設問は独立して検討する。
設問1は均等侵害,設問2は消尽,設問3⑴は特許法101条2号の間接侵害,設問3⑵は同号の主観的要件と102条2項による損害額の算定が中心となる。

本稿の答案は,設問1・2では侵害を否定し,設問3⑴では差止請求を認め,設問3⑵では認識取得前の販売の除外と非侵害用途分の推定覆滅を検討する。
設問1の特段の事情及び設問2の新製造の評価は,理由付けを伴う別の結論も排除されていない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

評価表は「番号|評価項目|重み|出題の趣旨|採点実感」の5列とし,記事全体で1から41まで連番を付す。
頁数はリンク先PDFの実頁である。
「必須」「高評価」「負例」「許容分岐」と重みは別の区分であり,負例は避けるべき書き方を示す。
引用は必要な短い範囲に限り,引用のない欄の「記載なし」は対象関連部分を読んだ範囲での意味である。

38と39は損害不発生と推定覆滅という代替的な説明であり,双方を累積して要求するものではない。
39は102条2項の適用を認める場合の説明となる。
補足的な条文確認や一般的な答案作法は,公式由来の評価表の集計から分ける。

2 5段階の重みと重み5の位置付け

重み5は答案の骨格又は採点実感が評価の分かれ目とした事項,4は出題の趣旨が検討を求め採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項,3は一方が明示する中核の理由付け,2は一方が軽く触れる補強又は典型的な誤り,1は一方が控えめに触れるだけの事項とした。
本問の重み4を,両資料が全て「高く評価した」事項と読み替えることはできない。

番号1「金属製との請求項に樹脂製の針は該当せず,文言侵害を否定する」:文言侵害を否定して均等論へ進む入口である。
適用条件は,当該設問の検討時である。

番号9「意識的除外等の特段の事情がないという第5要件を提示する」:本件が詳しい検討を求める第5要件の規範である。
適用条件は,当該設問の検討時である。

番号11「代替を認識しながらあえて請求項に記載しなかった旨の客観的・外形的表示を第5要件の判断基準とする」:容易想到の不記載と区別する客観的・外形的表示の判断である。
適用条件は,当該設問の検討時である。

番号12「硬い針の開示と樹脂の自明性を技術的特徴に結び付け,外形的表示の有無を具体的に論証する」:当てはめを明細書の技術的特徴と接続する評価深度を分ける。
適用条件は,当該設問の検討時である。

番号15「適法に譲渡された個々の特許製品の使用・再譲渡には特許権の効力が及ばないと示す」:譲渡後の使用・再譲渡に対する効力という消尽の骨格である。
適用条件は,当該設問の検討時である。

番号19「元の製品と同一性を欠く製品の新たな製造なら権利行使が可能という基準を示す」:加工後に権利行使できる範囲を決める新製造の基準である。
適用条件は,当該設問の検討時である。

番号25「生産を,構成要件を満たさない物からこれを満たす物を新たに作出することと定義する」:医療機関による組合せを評価する「生産」の基準である。
適用条件は,当該設問の検討時である。

番号32「一般的用途とは異なることを踏まえ,調査結果付き警告又は訴訟提起による認識取得を論証する」:一般的用途との違いを踏まえたCの認識の当てはめである。
適用条件は,当該設問の検討時である。

番号35「主観的要件充足前の販売は間接侵害不成立であり算定対象から除外する」:認識前後で侵害成立自体を分ける損害算定の骨格である。
適用条件は,当該設問の検討時である。

番号39「同項を適用する場合も非侵害用途分はX製品の販売減少との相当因果関係を阻害し推定が覆滅すると説明する」:非侵害用途と販売減少を結ぶ理由付けが評価を分ける。
38を採る場合の累積要求ではない。
適用条件は,102条2項の適用を認めて覆滅を論じる場合。
38の損害不発生構成との選択・予備的関係である。

第3 本問の概要

Xの特許発明は,縫合糸挿入用の針と保持用の針を固定し,同時に穿刺できる医療用器具である。
設問1のA製品では金属製の針を樹脂製に置き換えたこと,明細書が他の硬い針にも言及し,樹脂製の針がこれに含まれることは当業者に自明であったことが問題となる。

設問2のBは使用済みのX製品を分解・洗浄・再組立て・滅菌して販売するが,部品交換はしていない。
再使用禁止の表示が消尽に与える意味と,これらの処理が新製造に当たるかを分けて検討する。

設問3のC製品は,仮の係止だけでは安全な一体化同時穿刺ができないが,医療機関がクリップを加えると全構成要件を満たす。
調査対象の症例の約3割でその使用が行われ,Xは調査結果を示してCへ警告した。
差止請求と,Cの全販売利益を基礎とする損害賠償請求を区別する。

第4 評価項目と重み

1 設問1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1【必須】金属製との請求項に樹脂製の針は該当せず,文言侵害を否定する5PDF30頁「文言侵害が成立せず」PDF21頁「文言侵害が成立せず」
2【必須】技術的範囲を画する根拠として特許法70条1項を示す3記載なし(対象関連範囲実読)PDF24頁「技術的範囲を画する際の根拠条文」
3【高評価】均等論を,所定の要件の下で異なる構成も技術的範囲に含める解釈法理として説明する4PDF30頁「均等論の意義・根拠」PDF24頁「均等論の内容」
4【高評価】一部置換だけで権利行使を免れられることの不都合から均等論採用の根拠を示す4PDF30頁「均等論の意義・根拠」PDF24頁「その採用の根拠を明示することが不可欠」
5【必須】相違部分の非本質性を示し,固定による同時穿刺という技術的特徴に即して当てはめる4PDF30頁「均等侵害の5要件が充足されるか否かを具体的に論述」PDF21頁「丁寧な当てはめ」
6【必須】針を樹脂製に置換してもX発明の目的・作用効果を維持できると検討する4PDF30頁「均等侵害の5要件が充足されるか否かを具体的に論述」PDF24頁「何と何が同一の作用効果を奏するか」
7【必須】当業者を主体とし製造等の時を基準とする置換容易性を示す4PDF30頁「均等侵害の5要件」PDF24頁「置換容易や公知技術非該当の基準時」
8【必須】A製品全体が出願時公知技術と同一又は当業者に容易推考ではないという第4要件を正確に示す4PDF30頁「均等侵害の5要件」PDF24頁「対象製品(本問ではA製品)」
9【必須】意識的除外等の特段の事情がないという第5要件を提示する5PDF30頁「特段の事情」PDF21頁「第5要件」
10【必須】出願時に容易想到の同効材を請求項に書かなかっただけでは意識的除外にならないと示す4PDF30頁「特許請求の範囲に記載しなかっただけでは」PDF24頁「記載しなかったことだけで」
11【必須】代替を認識しながらあえて請求項に記載しなかった旨の客観的・外形的表示を第5要件の判断基準とする5PDF30頁「客観的,外形的にみて」PDF21頁「客観的,外形的にみて」
12【高評価】硬い針の開示と樹脂の自明性を技術的特徴に結び付け,外形的表示の有無を具体的に論証する5PDF30頁「自説を説得的に論証」PDF24頁「X発明の技術的特徴との関連」
13【負例】文言侵害/均等侵害という分類と,直接侵害/間接侵害という分類を混同しない2記載なし(対象関連範囲実読)PDF24頁「文言侵害及び均等侵害の関係と直接侵害及び間接侵害の関係」
14【負例】樹脂への置換が容易という事実だけで第4要件の非充足を導かない3記載なし(対象関連範囲実読)PDF24頁「この事情を当該要件の当てはめに引用し」

2 設問2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
15【必須】適法に譲渡された個々の特許製品の使用・再譲渡には特許権の効力が及ばないと示す5PDF30頁「特許権の消尽を認めるべき」PDF21頁「消尽論の意義・根拠」
16【高評価】消尽の根拠として特許製品の円滑な流通を示す4PDF30頁「市場における特許製品の円滑な流通」PDF24頁「その根拠に全く言及しない」
17【高評価】消尽の根拠として譲渡時の利得確保の機会を示す4PDF30頁「特許権者の利得確保の機会の存在」PDF24頁「その根拠に全く言及しない」
18【必須】再使用禁止という権利者の主観的意思だけでは政策的な消尽の効果を変更できないと説明する4PDF30頁「特許権者の意思でその効力を変更することはできない」PDF24頁「特許権者Xの主観的意思」
19【必須】元の製品と同一性を欠く製品の新たな製造なら権利行使が可能という基準を示す5PDF30頁「同一性を欠く」PDF21頁「同一性を欠く新たな製品」
20【高評価】製品の属性・発明内容・加工交換の態様・取引実情を総合考慮する判断手法を示す4PDF30頁「取引の実情等を総合考慮」PDF24頁「総合考慮」
21【必須】部品交換のない分解・洗浄・再組立て・滅菌を技術的構成と関連付けて評価する4PDF30頁「分解,洗浄,再組立て,滅菌処理等」PDF21頁「Bによる再生処理の態様」
22【許容分岐】単回使用を要請する公衆衛生上の取引実情を論じる場合,禁止表示をその裏付けの一要素として位置付ける2記載なし(対象関連範囲実読)PDF25頁「公衆衛生の観点からその単回使用が強く要請」

3 設問3⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
23【必須】C製品それ自体では一体化同時穿刺ができないため直接侵害を否定する4PDF30頁「直接侵害及び」PDF21頁「直接侵害及び」
24【必須】非侵害用途が存在し101条1号の専用品性がないと説明する4PDF30頁「一体化同時穿刺以外の態様で使用することが可能」PDF25頁「専用品に当たると解することには無理」
25【高評価】生産を,構成要件を満たさない物からこれを満たす物を新たに作出することと定義する5PDF30頁「「生産」の意義を明らかにしつつ」PDF25頁「「生産」の意義を明らかにしつつ」
26【必須】医療機関による係止とクリップ付加を充足品の生産に当てはめる4PDF30頁「C製品が「物の生産」に用いるものといえるか」PDF21頁「汎用クリップを使用しなければ」
27【高評価】添付文書の禁止と現実の3割の使用実態を対比し,生産用途の現実性を論証する4PDF30頁「禁じた添付文書の記載との関係」PDF21頁「一体化同時穿刺の方法が禁止されており」
28【高評価】課題解決に不可欠を,発明の特徴的技術手段を構成し課題の解決に不可欠なものと定義する4PDF30頁「「課題の解決に不可欠なもの」の意義」PDF21頁「「課題の解決に不可欠なもの」といえるか否か」
29【必須】C製品の針・一体化機構をX発明の同時穿刺による課題解決へ結び付ける4PDF30頁「X発明の技術的特徴との関係」PDF21頁「「課題の解決に不可欠なもの」といえるか否か」
30【必須】特許発明であることの認識を101条2号の主観的要件として示す4PDF31頁「主観的要件」PDF21頁「主観的要件」
31【必須】C製品が当該発明の実施に用いられることの認識を別に検討する4PDF31頁「主観的要件」PDF21頁「主観的要件」
32【高評価】一般的用途とは異なることを踏まえ,調査結果付き警告又は訴訟提起による認識取得を論証する5PDF31頁「Cへの警告や本件訴えの提起」PDF25頁「Cへの警告や本件訴えの提起」
33【負例】医師の行為が当然に非侵害だと根拠なく仮定し,従属説から間接侵害を否定しない2記載なし(対象関連範囲実読)PDF25頁「医師の行為は特許権侵害にはならない」
34【負例】本件で必要性のない101条3号の検討に分量を使わない2記載なし(対象関連範囲実読)PDF25頁「同条第3号の成否を検討」

4 設問3⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
35【必須】主観的要件充足前の販売は間接侵害不成立であり算定対象から除外する5PDF31頁「主観的要件の充足が認められる前に販売されたC製品」PDF25頁「その数量を算定の基礎から除外」
36【必須】102条2項は侵害者利益を損害額とする法律上の事実推定であると示す4PDF31頁「法律上の事実推定規定」PDF22頁「同項の推定の覆滅」
37【必須】侵害がなければXが利益を得た事情を同項の適用条件として本件へ当てはめる4PDF31頁「特許権者が利益を得られたであろう」PDF22頁「Cの侵害行為がなければ,Xが利益を得られた」
38【許容分岐】非侵害用途分はCの販売がなければX製品が売れたとはいえず損害不発生・適用否定となる構成を示す(相互に代替・予備的)4PDF31頁「損害が生じていない」PDF22頁「損害の発生が認められず」
39【必須】同項を適用する場合も非侵害用途分はX製品の販売減少との相当因果関係を阻害し推定が覆滅すると説明する(相互に代替・予備的)5PDF31頁「相当因果関係を阻害する事情」PDF25頁「といった理由にまできちんと言及」
40【負例】一般的な覆滅事由の列挙で済ませず認識前販売と非侵害用途を本問の事実として処理する2記載なし(対象関連範囲実読)PDF25頁「競合品の存在や侵害者の営業努力等」

5 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
41【負例】101条2号等の条・項・号の階層を正確に引用する2記載なし(対象関連範囲実読)PDF23頁「「(同)条第2項」又は「(同)条第1項第2号」」

6 重みの分布

表の全41項目について,重み1は0件,2は6件,3は2件,4は23件,5は10件である。
N=0+6+2+23+10=41,W=0+2×6+3×2+4×23+5×10=160となる。
負例と許容分岐も表の分布には含めているが,重み合計を得点又は全答案への累積要求と扱うことはできない。

第5 模範解答

1 前提と表記

以下はAIが作成した参考答案であり,法務省の公表答案ではない。
特許法の名称を適宜省略し,条・項・号を区別する。
答案は改行込み2364字,改行を除いて2340字であり,見出しと末尾の「以上」を含む。

2 答案

1 設問1
(1)特許発明の技術的範囲は,特許請求の範囲の記載に基づいて定める(特許法70条1項)。
A製品の樹脂製の針は金属製の針に当たらず,文言侵害は成立しない。

(2)もっとも,一部の置換だけで権利行使を免れられると発明保護を全うできず衡平にも反するため,解釈上,所定の要件の下で均等な構成も技術的範囲に含まれる。

すなわち,相違部分が発明の本質的部分でなく,置換しても発明の目的を達成でき同一の作用効果を奏し,対象製品の製造等の時に当業者が置換を容易に想到でき,対象製品が出願時の公知技術と同一又は当業者が当該出願時にこれから容易に推考できたものではなく,意識的除外等の特段の事情がなければ,均等侵害が成立する。

本件の特徴は2本の針を固定し同時穿刺を可能にした点にあり,金属という材質自体は本質的部分ではない。
樹脂製でも同じ目的・作用効果を実現でき,出願時から置換が容易であるから製造時にも容易に想到できる。
置換の容易性は,A製品全体が出願時の公知技術から容易推考であることを意味せず,第4要件を否定する事情はない。

(3)出願時に樹脂への置換を容易に想到できたのに請求項に記載しなかっただけでは,第5要件の特段の事情には当たらない。
早期出願を迫られる出願人に,将来の侵害態様を全て記載させるのは相当でないからである。
他方,代替構成を認識しながらあえて記載しなかった旨を客観的・外形的に表示したときは,第三者の信頼を保護する禁反言から均等の主張は許されない。

本件明細書は針の代替材質について硬い針も使用できると明示し,樹脂製の針がこれに含まれることは当業者に自明である。
材質は同時穿刺を実現する針の剛性に関わる記載であり,技術的構成と無関係な一般的記載ではない。
金属に限定した請求項と併せれば,樹脂による代替を認識しながら記載しなかった旨の外形的表示と評価できる。
補正の不存在はこれを妨げない。
したがって,第5要件を欠き,Aの製造販売は侵害とならない。

2 設問2
(1)Xが国内で適法に譲渡した個々のX製品については,特許権の目的が達成され,その使用・再譲渡には効力が及ばないと解する。
流通の安全を確保し,譲渡時に対価確保の機会を得た権利者の二重利得を防ぐためである。
消尽は政策的に権利の効力を画するから,再使用禁止というXの意思表示だけでは阻止できない。

(2)ただし,加工等により元の特許製品と同一性を欠く製品が新たに製造された場合は,特許権を行使できる。
製品の機能・構造・材質・用途・耐用期間・使用態様,発明内容,加工・部材交換の態様及び取引の実情等を総合して判断する。

医療器具では衛生上の単回使用の要請があり,禁止表示もその実情の一要素となる。
しかし,Bは部品を交換せず,分解・洗浄・再組立て・滅菌を行うにとどまる。
2本の針を固定して同時穿刺する構成は元の部品のまま維持されており,単回使用の表示から直ちにその技術的機能が失われたとはいえない。
禁止表示を決定的とせず加工の程度を重視すれば,同一性を欠く新製造には当たらない。
したがって消尽の効果が及び,Bの販売は侵害とならない。

3 設問3⑴
(1)C製品はそのままでは安全な一体化同時穿刺ができず,αを充足する物の直接侵害は成立しない。
また,別々に穿刺する実用的用途があるから,101条1号の専用品でもない。
同条2号を検討する。

(2)「生産」とは,発明の構成要件を充足しない物を素材として,これを充足する物を新たに作り出すことをいう。
医療機関が係止したC製品にクリップを付加すると,全要件を充足する安全な同時穿刺器具が作出される。
禁止表示やクリップの必要性はあるが,3割の症例で現実に行われる以上,特異な使用ではなく,C製品はその生産に用いる物に当たる。

「課題の解決に不可欠」とは,発明の特徴的な技術手段を構成し,その作用により課題を解決するため不可欠なことをいう。
C製品の2本の針と一体化機構は,クリップによる補強を伴い,迅速・確実な縫合という課題を解決する同時穿刺構造を実現するから,これに当たる。
クリップ自体の汎用品性と対象物を混同してはならず,この専用構成のC製品は広く一般に流通する規格品・普及品には当たらない。

(3)Cは調査結果を示した警告により,X発明が特許発明であること及びC製品がその実施に用いられることを認識したといえる。
禁止表示はこの現実の認識を覆さず,少なくとも訴訟で具体的使用実態を示された後は認識を否定し難い。
Cは業として製造販売を継続しており,2号の間接侵害が成立する。
医師の診療も業としての実施であり,医療器具の組合せは69条3項の調剤行為でもない。
医師だから当然非侵害とはいえない。
Xは100条1項により製造販売の差止めを請求できる。

4 設問3⑵
(1)Cは,認識取得前の販売には101条2号の間接侵害が成立せず,その数量を算定対象から除くべきと反論できる。
103条の過失推定で同号固有の認識を代替できない。

(2)102条2項は侵害者の利益額を損害額とする法律上の事実推定規定である。
侵害がなければXが利益を得た事情があれば適用され,Xも実施品を販売しているから,間接侵害への適用は妨げられない。

しかし,認識取得後でも,同時穿刺に用いられない販売分は,Cの販売がなければX製品が売れた関係になく,Xに損害がない。
また,適用を認めても,その分には相当因果関係を阻害する事情があり,推定が覆滅されると主張できる。
Cは非侵害用途の7割に対応する利益の控除を求めるべきである。
ただし,症例比率を販売数量・利益に当てるには調査対象・期間との対応が必要であり,3割を直ちに確定賠償割合とすることはできない。

以上

3 解説と別構成

設問1では,均等論そのものの採用根拠と第5要件の禁反言の根拠を分ける。
置換が容易であることと対象製品全体が出願時の公知技術から容易推考できることも区別する。
本答案は硬い針の開示を技術的構成に関する代替の外形的表示と評価したが,樹脂の具体的な開示の程度を重視して特段の事情を否定する場合も,事実の評価と規範との接続が必要となる。

設問2では,再使用禁止の意思表示だけで消尽を阻止できるとしない。
他方,衛生上の単回使用の必要性と表示を,製品の属性・使用態様・取引の実情を示す事情として考慮する余地はある。
本答案は部品交換がないことなどから新製造を否定したが,衛生上の寿命等を重視して同一性の喪失を論じる別構成も,総合考慮の理由が要る。

設問3⑴は,医療機関の組合せによる生産とCによるそのための物の供給を分ける。
クリップが汎用品であることだけで,問題となるC製品の汎用品性を決めてはならない。
医師の行為を根拠なく非侵害と仮定せず,特許法69条3項の調剤に関する例外の対象とも区別する。
この条文確認は補足であり,公式資料が同項の説明を独立の必須事項としたという意味ではない。

設問3⑵では,主観的要件充足前は侵害が成立しない問題と,成立後の非侵害用途分について損害又は因果関係がない問題を区別する。
番号38の損害不発生・適用否定と,番号39の推定覆滅は代替的な構成である。
完成答案は両者を主位・予備的に示した。
症例比率から販売数量や利益の比率を直ちに確定することには別の検証が必要となる。

第6 関連記事

1 同年度の問題

令和3年度司法試験民事系第1問の模範解答と評価項目(AI作成)
令和3年度司法試験刑事系第1問の模範解答と評価項目(AI作成)

2 評価項目の読み方

令和7年度司法試験公法系第1問の模範解答と評価項目(AI作成)
5段階の重みや評価表の見せ方を比較するための関連記事であり,本問の法的内容の根拠ではない。

第7 出典及び確認状態

1 法務省の公式資料

令和3年司法試験論文式試験問題・選択科目のPDF18~19頁,第1問を確認した。
令和3年司法試験論文式試験問題出題趣旨はPDF30頁の知的財産法見出しから31頁の第2問直前まで,令和3年司法試験の採点実感はPDF21~22頁の第1問採点方針,23頁の科目共通部分以降の第1問部分,24頁,25頁の第2問直前まで,28頁の共通末尾を確認した。
PDF全体の取得と,対象範囲の実読は区別している。

2 当時の法令

特許法・令和3年4月28日施行版の本則2条,68~70条,100~103条をe-Gov法令APIで確認した。
試験実施日までに施行された版を用いており,後発改正で本問の答案要求を変更していない。

3 裁判例

最高裁平成29年3月24日第二小法廷判決(平成28年(受)第1242号)・マキサカルシトール事件は日本語判決のPDF1~7頁の理由を確認した。
最高裁平成19年11月8日第一小法廷判決(平成18年(受)第826号)・インクタンク事件の裁判所公表英訳は,特にPDF9~10頁の最高裁の判断を確認した。
英訳8頁にある原審の基準と最高裁の判断を混同していない。
日本語原判決の独立確認はできていない。

東京地裁平成23年6月10日判決(平成20年(ワ)第19874号)・医療用器具事件は日本語判決のうちPDF101~102頁,104~110頁,143~149頁の関連理由を確認した。
同事件の具体的な器具構造・使用比率を本問の事実へ置き換えてはいない。
ボールスプライン事件(最高裁平成10年2月24日第三小法廷判決・平成6年(オ)第1083号)及びごみ貯蔵器事件(知財高裁平成25年2月1日特別部判決・平成24年(ネ)第10015号)は本稿では公式資料の記載に基づく参照であり,各原判決の独立確認済みとはしていない。

4 確認状態の区別

法令・判決の実読範囲,公式資料に書かれた要求,本件の当てはめと独自評価は別のものとして扱った。
41項目の粒度,重み,模範解答及び別構成の評価は本稿の判断である。
原判決の未到達部分を,資料が存在しないこと又は判例がないことの根拠にはしていない。