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令和3年司法試験租税法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した31項目と5段階の重み付け(AI作成)

本記事は,令和3年司法試験租税法第1問を対象に,公式資料から抽出した31項目と模範解答を示す。
財産分与の対価と取得費,学費の必要経費性,死亡後の賃料の人的帰属が中心となる。

第1 この記事の対象と結論

本問の早見表
項目内容
対象令和3年度 租税法第1問
問題・基準時問題文と設問の指定及び第7の出典・確認範囲による。問題の与件と指定された法令の時点を前提とする。
資料出題の趣旨・採点実感に基づく分析。版・対象範囲・留保は第7の確認状態を参照。
評価項目31項目(重み5:3項目)
重みの合計106(参考の単純和であり,公式配点・満点・得点換算には用いない。)
答案の字数2087字(答案部分の見出しを含み,空白・改行を除く可視文字数)
判例・法改正の留保第7の法令・裁判例と資料の範囲を参照。既存の確認日・参照頁・未確認部分の留保を引き継ぐ。
年度別の案内令和3年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答と評価項目(AI作成)

財産分与では,義務又は請求権の消滅という利益と土地時価を結ぶ説明が重要である。
学費では必要経費の2類型と家事費・家事関連費を分け,賃料では資産所有者を基準に判断する。
本記事の学費否認は採用した一つの論証であり,公式資料が両費用の否認を唯一の結論として指定しているわけではない。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

以下は法務省の公式採点基準ではなく,公式の出題の趣旨と採点実感を踏まえた本記事独自の評価項目である。
重要度は重み1~5だけで示し,適用条件は別に扱う。
条件付きの理論や反対論は採用する答案だけを対象とし,全答案へ累積的に要求しない。
注意は誤った記述を避けるための表示であり,同じ欠落を他の項目と二重に数えない。
「当該細目としての個別の明示なし」は対象問及び関連総論を実読した結果,「間接」は関連記述からの推論を表す。

2 5段階の重み付けの基準

重み5は答案の理解・結論を大きく左右する核心,4は主要な法的判断・規範・当てはめ,3は通常の法的処理・事実評価,2は補足的な理由付け・注意,1は軽い参考事項を示す。
注意の重みも内容の重要性によって決め,一律に低い重みとしない。
重み5の件数に割当てを設けず,合格率から逆算せずに各項目を判断している。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

設問1は,婚姻中にAの収入で取得した土地を離婚時にBへ財産分与し,Bが後に売却した場合の課税関係を問う。
取得額4000万円,分与時価5000万円,売却額5500万円という数値を,それぞれの権利義務と保有期間に対応させる必要がある。

設問2は,鍼灸院を経営するCが趣味の生花及び本人の鍼灸資格のために支出した学費の必要経費性を問う。
設問3は,C死亡後・遺産分割前の建物賃料について,Dによる管理・D名義口座への入金があっても誰に所得が帰属するかを問う。

2 設問が求めること

設問が求めること
設問立場・対象指定・仮定・除外答えるべき到達点
設問1財産分与とBの後の売却4000・5000・5500万円と保有期間を対応。Aの課税,Bの取得費と後の所得・算入額を示す。
設問2二つの学費の必要経費性趣味の生花と本人の鍼灸資格を区別。37条の費用類型と家事費・家事関連費を検討する。
設問3分割前の建物賃料の人的帰属Dの管理・口座入金だけで帰属を決めない。法律的帰属と資産所有者から各相続人への帰属を示す。

第4 評価項目と重み

1 設問1⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1資産増加益の清算という譲渡所得課税の基礎から財産分与を位置付ける3関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:所得税法第33条の規定に即して譲渡所得の基礎を踏まえた上で関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:財産分与時の譲渡所得課税についての問題
2最高裁昭和50年5月27日判決の趣旨を正確に理解して論ずる4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:最判昭和50年5月27日民集29巻5号641頁の趣旨を正確関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:上記最高裁判例を理解していない答案が「不良」
3分与義務の消滅という経済的利益を譲渡対価と捉える5関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:財産分与による分与義務の消滅が,その対価に当たる関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:財産分与の義務の消滅が,分与者Aにとっての経済的利益に当たる
4分与義務の価額が通常は交付資産の時価と等しいことを介して5000万円を導く4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:この分与義務の価額は,通常は分与した資産の分与時における価額と等しい関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:金額の理由について⑴及び⑵を通じて述べている答案が「良好」又は「優秀」
5総収入金額から取得費等を控除し譲渡所得の金額まで計算する3関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:譲渡所得の金額の計算当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全47実頁,当該問の主な所在は実頁8・9・11・12。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。
6保有期間を当てはめて長期・短期の別を説明する3関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:長期譲渡所得と短期譲渡所得のいずれに当たるか当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全47実頁,当該問の主な所在は実頁8・9・11・12。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。
7特別控除を先に行い,その後に長期譲渡所得の2分の1計算を行う3当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁23・24。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:金額が2分の1とされるのは特別控除額適用の前か後か
82分の1となるのは総所得金額への算入額であると区別する3当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁23・24。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:2分の1とされるのは譲渡所得の金額なのか総所得金額に算入される金額なのか
9判例と異なる反対論を採る場合も判例の正確な理解を前提とする(判例と異なる反対論を採る場合)4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:学説上は反対論も少なくないので,それらに基づいて論述をすることもできる当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全47実頁,当該問の主な所在は実頁8・9・11・12。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。

2 設問1⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
10取得費について所得税法33条3項と38条の両方を挙げる4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:所得税法第33条第3項,第38条関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁12:所得税法第33条第3項及び第38条の両方を挙げた答案が意外に少なかった
11消滅した財産分与請求権の価額を資産取得に要した金額と捉える5関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:消滅した財産分与請求権の価額が「その資産の取得に要した金額」となり関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:金額の理由について⑴及び⑵を通じて述べている答案が「良好」又は「優秀」
12請求権の価額が通常は分与時の資産価額と等しいことから取得費を導く4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:その価額は,通常は分与された資産の分与時における価額と等しい関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:金額の理由について⑴及び⑵を通じて述べている答案が「良好」又は「優秀」

3 設問2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
13必要経費を収入に個別対応する費用と業務について生じた費用に分ける4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁23:本件の支出は「売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額」に当たらない関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:2つを定めているが,この点を指摘した答案が少なく
14本件学費を37条1項後段の費用として検討する4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:本件の支出は後者に当たることを指摘
15業務の遂行との関連性を要件として示す3関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:その支出が,業務の遂行と関連し当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全47実頁,当該問の主な所在は実頁8・9・11・12。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。
16業務の遂行上の必要性を要件として示す3関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:業務の遂行上必要であることが要件当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全47実頁,当該問の主な所在は実頁8・9・11・12。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。
17家事費を個人の消費生活上の支出と捉える2関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:家事費とは,個人の消費生活上の支出当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全47実頁,当該問の主な所在は実頁8・9・11・12。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。
18家事関連費を家事費と必要経費の両方の性格を持つ支出と区別する2関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:家事関連費とは,家事費と必要経費の両方の性格を持つ支出当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全47実頁,当該問の主な所在は実頁8・9・11・12。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。
19家事費・家事関連費への該当性を学費について検討する4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:家事費・家事関連費(所得税法第45条第1項第1号)関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:家事費・家事関連費への該当性について検討している答案が「優秀」
20施行令96条の主たる部分の業務必要性という条件を示す3関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:その主たる部分が所得を生ずべき業務の遂行上必要当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全47実頁,当該問の主な所在は実頁8・9・11・12。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。
21業務必要部分を明確に区分できる場合の当該部分という算入範囲を示す3関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:その必要である部分を明らかに区分することができる場合当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全47実頁,当該問の主な所在は実頁8・9・11・12。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。
22生花学費について目的・性質と事後の増収を規範に当てはめる4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:2つの支出それぞれについての判断関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:事案を当てはめて結論を導いている答案
23資格取得学費について事業拡大目的と本人に帰属する資格の性質等を当てはめる4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:2つの支出それぞれについての判断関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:資格を取得するための支出や,その他の技能等を得るための支出
24資格取得学費と当年の収入稼得への貢献との関係を検討する2当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁23・24。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:それがその年の収入稼得に貢献していないこと
25資格取得後に開業した場合との均衡を検討する2当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全43実頁,当該問の主な所在は実頁23・24。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁8:資格を取得してから開業した場合とのバランス

4 設問3

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
26所得税法12条を人的帰属の根拠とし,36条の問題へ置き換えない4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:所得の人的帰属については,所得税法第12条に規定関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁9:所得税法第12条について言及していない答案が「不良」
2712条を法律的帰属説により解釈する4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:いわゆる法律的帰属説が妥当する関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁9:同条及びその解釈に言及している答案が「一応の水準」
28資産所得は通常資産所有者に帰属する基準を用い,事業所得の基準と混同しない4関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:資産から得られる所得は,通常はその資産の所有者に帰属関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁9:資産から生じる所得の人的帰属の判断基準を述べて
29C死亡後・遺産分割前の所有関係に基準を当てはめ,賃料の帰属主体を導く5関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:遺産分割前の相続財産に当てはめればよい関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁9:それを本件に当てはめて結論を導いている答案が「良好」又は「優秀」
30【注意】本問で問われていない遺産分割後の賃料の取扱いへ展開しない2関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁24:遺産分割後において本件の賃料収入がどのように扱われるかは問うていない当該細目としての個別の明示なし(当該問及び総論を実読)。関連論点まで存在しないという意味ではない。読取範囲:同PDF全47実頁,当該問の主な所在は実頁8・9・11・12。本項目の具体化は記事独自の整理として,反対側の出典欄及び問題文と併せて読む。

5 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
31設問1⑵の判例との関係を短く明示する2関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):間接・PDF実頁23:東京地判平成3年2月28日行集42巻2号341頁参照関連記述(引用部分以外は記事による要約・細分化):確認済み・PDF実頁12:これらの答案には,相応の高い評価

6 重みの分布

重み1が0件,重み2が6件,重み3が9件,重み4が13件,重み5が3件であり,合計N=31項目である。
重み5は番号3,番号11,番号29である。
各行の適用条件に従い,採用しない理論枝は評価対象外とする。
重みの単純和を公式配点,答案の満点,予測得点又は合格確率に換算しない。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

以下は判例を基本とする答案例であり,括弧内の条文は原則として所得税法を指す。
設問1の計算は,公式の出題の趣旨・採点実感が明示する長期・短期の区別,特別控除及び総所得金額への算入という検討枠に沿う。
現実の土地譲渡には租税特別措置法の分離課税等が関わり,ここに示す金額を実取引の税額計算へそのまま用いることはできない。
譲渡費用等の金額は問題文にないため,本文の明示する計算前提による。

2 答案

1 設問1について

(1)Aの課税関係

 譲渡所得課税は,所有期間中の資産増加益を,資産が所有者の支配を離れる機会に清算する制度であり,所得税法33条1項の「資産の譲渡」は有償無償を問わない。

 本件土地はAが自己の稼得・貯蓄から取得した特有財産である(民法762条1項)。
Bの家事労働が財産形成に寄与していても,法律上当然に共有となるわけではなく,財産分与によるBへの移転は資産の譲渡に当たる。
清算的財産分与に増加益の実現はないという反対論も考えられるが,別産制の下では既存のBの共有持分を確認するだけの行為とはいえない。

 財産分与の権利義務は離婚によって生じ,協議等により内容が具体化し,履行によって分与義務が消滅する。
その義務消滅がAの得た経済的利益であり,譲渡対価となる(最高裁昭和50年5月27日判決参照)。
本件分与額は適正とされているから,消滅する分与義務の価額は通常,履行として交付した土地の時価と等しい5000万円である。
単に土地時価を収入とみなすのではなく,この対価の評価として36条1項・2項により総収入金額を認定する。

 平成12年12月31日の取得から平成18年3月1日の譲渡まで5年を超えるので,長期譲渡所得となる(33条3項2号)。
他の譲渡益・控除対象及び譲渡費用はないものとして,取得費4000万円(38条1項)を控除した1000万円から特別控除50万円を差し引き,譲渡所得の金額は950万円となる(33条3項・4項)。
その後に22条2項2号を適用し,総所得金額に算入する額を475万円とする。
譲渡所得の金額そのものを半額にするのではない。

(2)Bの課税関係

 Bは財産分与請求権を消滅させる代償として土地を取得したので,「その資産の取得に要した金額」は消滅した請求権の価額となる(33条3項・38条1項。
東京地裁平成3年2月28日判決参照)。
適正な本件分与では,この価額は通常,分与時の土地時価5000万円と等しい。
財産分与は贈与ではなく,60条1項1号によるAの取得費の引継ぎはない。

 Bは平成18年3月1日に取得した土地を平成20年3月1日に5500万円で売却したので,短期譲渡所得である(33条3項1号)。
上記と同じ前提では,5500万円から取得費5000万円と特別控除50万円を差し引いた450万円が譲渡所得の金額となり,2分の1計算をせず総所得金額に算入する(22条2項1号)。

2 設問2について

(1)37条1項は,売上原価等の収入に個別対応する費用と,販売費・一般管理費等の業務について生じた費用を区別する。
両学費は前者ではなく,後者として,業務との関連性及び業務遂行上の必要性を検討する。
他方,自然人の消費生活上の支出である家事費は必要経費とならない。
家事と業務の両面を持つ家事関連費も,45条1項1号・施行令96条により,主たる部分が業務遂行上必要で,その必要部分を明確に区分できる場合の当該部分等に限って算入される。

(2)生花の学費は,Cが趣味のために技能を得る支出であった。
後に待合室へ生花を飾って売上げが毎月1割増えた事実は有益性を示すが,支出の目的・性質まで遡って業務費用へ変えるものではない。
業務必要部分の区分を示す事情もないから,平成26年分の必要経費には算入できない。

(3)鍼灸の学費には,自ら施術をして事業を拡大するという業務上の目的があり,関連性を肯定する事情がある。
しかし,Cは有資格者Fを雇用することで既に経営できており,経営自体に資格は不可欠でない。
資格はC本人に帰属し,将来Q以外でも使える地位をもたらす。
将来の施術のための支出であり,問題文上,当年の資格に基づく収入稼得に貢献した事情は示されていない。

 もとより,一般対応の経費について当年の増収がないことだけでは否定できない。
しかし,資格取得後に初めて開業する者の学費との均衡を考えても,既に経営していることだけで本人の資格取得費全額を業務費用とすることは相当でない。
家事関連費としても業務必要部分を明確に区分できる事情がなく,青色申告の承認も与件にないから,平成27年分の必要経費には算入できない。

3 設問3について

 所得の人的帰属は所得税法12条により,収益の法律上の真の帰属を基準とする法律的帰属説によって判断する。
不動産所得のような資産所得は,通常,その資産の所有者に帰属する。
事業の経営者を判定する基準や,口座の名義・現金の引出しを基準とするものではない。

 C死亡後,遺言も遺産分割もない本件建物は,唯一の相続人であるD・Eが各2分の1で共有している(民法898条・899条・900条4号)。
令和2年に生じた賃料債権は,遺産自体と別個の財産として,各人が相続分に応じて分割単独債権として取得する。

 Dの契約・管理への関与,無償居住及びD名義口座への受領合意は,Eの所有権・収益帰属をDへ移すものではなく,入金は分割までの共同管理にすぎない。
未引出しであることもこの帰属を左右しない。
したがって,賃料収入はCではなくD・Eに各2分の1ずつ帰属し,各人の不動産所得となる。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

評価項目と答案の対応表

主な評価項目と条件付き項目について,答案の参照箇所を示す。
注意は誤った記述を避けるための表示であり,別の理論構成の記載を一律に求めるものではない。
この対応表に掲げない番号は5・6・7・8・15・16・17・18・20・21・24・25・30・31である。
対応する設問の答案と,以下の解説を併せて参照する。

評価項目と答案の対応(重み5・4及び条件付きの項目)
番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
13資産増加益の清算という譲渡所得課税の基礎から財産分与を位置付ける答案1(1)
24最高裁昭和50年5月27日判決の趣旨を正確に理解して論ずる答案1(1)
35分与義務の消滅という経済的利益を譲渡対価と捉える答案1(1)
44分与義務の価額が通常は交付資産の時価と等しいことを介して5000万円を導く答案1(1)
94判例と異なる反対論を採る場合も判例の正確な理解を前提とする(判例と異なる反対論を採る場合)答案1(1)。判例と異なる反対論を採用する場合だけ。
104取得費について所得税法33条3項と38条の両方を挙げる答案1(2)
115消滅した財産分与請求権の価額を資産取得に要した金額と捉える答案1(2)
124請求権の価額が通常は分与時の資産価額と等しいことから取得費を導く答案1(2)
134必要経費を収入に個別対応する費用と業務について生じた費用に分ける答案2
144本件学費を37条1項後段の費用として検討する答案2
194家事費・家事関連費への該当性を学費について検討する答案2
224生花学費について目的・性質と事後の増収を規範に当てはめる答案2
234資格取得学費について事業拡大目的と本人に帰属する資格の性質等を当てはめる答案2
264所得税法12条を人的帰属の根拠とし,36条の問題へ置き換えない答案3
27412条を法律的帰属説により解釈する答案3
284資産所得は通常資産所有者に帰属する基準を用い,事業所得の基準と混同しない答案3
295C死亡後・遺産分割前の所有関係に基準を当てはめ,賃料の帰属主体を導く答案3

設問1の要点は,時価5000万円という結論だけで止めず,分与義務・請求権の消滅とその価額を説明することである(番号3・4・11・12)。
長期譲渡所得では控除後に2分の1計算を行い,譲渡所得の金額と総所得金額への算入額を区別する(番号5~8)。
Bについても,取得費の根拠条文を二つとも挙げる(番号10)。

設問2では,学費が37条1項後段の費用として問題になることと,家事費・家事関連費に関する検討が水準を分ける(番号13・14・19)。
当年の収入への貢献と資格取得後に開業する場合との均衡は,採点実感が高く評価した発展的な理由であり,それぞれ独立した最低要件ではない(番号24・25)。
一般対応の費用は,当年の増収に直接対応しないことだけで否定されず,資格取得費がおよそ全て控除不能という一般化もしない。

設問3では,12条から法律的帰属説と資産所有者基準を示して当てはめる(番号26~29)。
口座からの引出しの有無を人的帰属の基準とせず,遺産分割後の処理へ答案を展開しない(番号30)。

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3 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

①令和4年司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した34項目と5段階の重み付け(AI作成)
②令和5年度司法試験租税法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した30項目と5段階の重み付け(AI作成)
③親の土地を子に使用貸借して賃料を子の所得にできるか―大阪地裁令和3年4月22日判決と大阪高裁令和4年7月20日判決(AI作成)
④離婚時の財産分与と税金(AIリライト)
⑤弁護士登録初年度の確定申告-給与・弁護士報酬・源泉徴収票・必要経費(AI作成)
⑥賃貸アパートの所有者が死亡した直後の相続実務―家賃,管理会社,敷金,火災保険,修繕及び税務(AI作成)
⑦個人事業主の学費・資格取得費と必要経費

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

令和3年司法試験論文式試験問題・選択科目(法務省):租税法第1問はPDF実頁6~7。
令和3年司法試験論文式試験問題の出題の趣旨(法務省):PDF実頁23~24の租税法第1問。
令和3年司法試験の採点実感・選択科目(法務省):PDF実頁8~9の第1問及び11~12の関連総論。

2 法令及び裁判例

所得税法(e-Gov):試験法令基準に対応する2021年1月1日施行版の本則12・22・26・27・33・36・37・38・45・59・60条を参照した。
民法(e-Gov):2020年4月1日施行版の別産制・財産分与・共同相続関係を参照した。
所得税法施行令(e-Gov):家事関連費に関する96条。
最高裁昭和50年5月27日第三小法廷判決(昭和47年(行ツ)第4号,民集29巻5号641頁):財産分与と譲渡所得。
東京地裁平成3年2月28日判決(昭和62年(行ウ)第123号):分与資産の取得費。
大阪高裁令和2年5月22日判決(令和元年(行コ)第167号,判例秘書の判例番号 L07520675)・国税庁税務訴訟資料270号順号13408(裁判所HP未掲載):柔道整復師学費に関する事例であり,本問の鍼灸学費と事実が同一という意味ではない。
最高裁平成17年9月8日第一小法廷判決(平成16年(受)第1222号,民集59巻7号1931頁):共同相続と相続開始後の賃料。

3 確認状態

公式資料の状態
資料状態確認範囲・留保
問題実読済み法務省公表の問題PDFの全頁を確認した。
出題の趣旨実読済み法務省公表の出題の趣旨PDFの全頁を確認した。出典欄は,原文の引用と記事による要約・細分化を区別して示す。
採点実感実読済み法務省公表の採点実感PDFの全頁を確認した。「当該細目としての個別の明示なし」は,関連する記述まで存在しないという意味ではない。

資料は,法務省公表の問題・出題の趣旨・採点実感による。
評価項目の区切りと重みは記事独自の整理であり,公式の採点項目・配点を示すものではない。
出典欄は原文の引用と関連記述の要約を区別し,条件付きの項目はその条件を満たす構成に適用する。

確認基準日は令和8年10月16日である。
公式資料の記載,法令・判決原文で確認した範囲及び本問への当てはめ・重み付け・答案例(本記事独自の分析)を区別して記載した。
学費の結論や重み付けは公式見解そのものではなく,採点上の評価を保証しない。