令和3年司法試験労働法第1問について,完成答案と公式資料から独自に抽出した30の評価項目を示す。
重みは1~5の独自分析であり,法務省の公式採点基準・配点ではない。
第1 この記事の対象と結論
対象は,令和3年司法試験の選択科目問題の労働法第1問である。
就業規則のない6人規模の会社を舞台に,懲戒処分,使用者から労働者への損害賠償請求,整理解雇を論ずる。
本稿の答案は,出勤停止と整理解雇を無効とし,損害賠償請求は公平な分担の範囲に限って認める構成を採る。
結論だけを独立した評価項目とはせず,根拠・規範・事実評価の一貫性を重視する。
評価項目は30項目,重み合計は119,重み5は12項目である。
第4に全項目,第5に模範解答とその解説を置く。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
出題の趣旨及び採点実感を基に,一項目につき一つの判定対象を示した。
表の頁はPDF実頁であり,本文記載の頁番号とも対応する。
「記載なし」は本問の関連範囲を読んだ結果であり,「間接」は関連する一般的記述からの推論を示す。
必須,高評価,負例,許容分岐という区分は重みとは別である。
番号3は趣旨を掘り下げた高評価の深度,番号17は故意・重過失限定構成を採る場合,番号30は4要素説を採る場合の条件付き項目である。
これらを全答案への累積的要求にしない。
一般的な答案作法と,公式に個別記載のない法的補足は,重み付きの表に混ぜていない。
2 5段階の重み付けの基準
重み5:採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの。
重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項。
重み3:いずれか一方が明示する中核の理由付け。
重み2:一方が軽く触れる補強又は典型的な誤り。
重み1:一方が控えめに触れる事項。
重み4は,採点実感が全件を高く評価したという意味ではない。
段階ごとの件数割当てはせず,重み1が0項目であることもその結果である。
第3 本問の概要
X1は,時間外・休日労働が月60時間を超える中,午後8時以降の在社を禁じられ,無許可で情報媒体を持ち帰り,帰途の電車で紛失した。
翌朝に報告して160人への謝罪に協力したが,7日間無給の出勤停止と48万円の賠償請求を受けた。
その後,売上げが3年連続で低下し,6人の雇用維持が困難となったY社は,協調性・柔軟性を基準にX2・X3を選び,30日予告して解雇した。
朝礼で方針は説明されたが,個別説明は選定後である。
労働契約書には懲戒の定めがあり,解雇の定めはない。
設問は,各処分・請求の法律上の論点と解釈を問う。
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | [必須]6人・1事業場で就業規則作成義務がないことを踏まえて懲戒根拠を検討する | 4 | 実頁32・第1問・設問1(懲戒の法的根拠) | 実頁29・3⑴(懲戒の法的根拠) |
| 2 | [必須]フジ興産判決が就業規則に懲戒の種別・事由の事前設定を要求した立場を明示する | 5 | 実頁33・第1問・設問1(判例の立場と本事案) | 実頁29・3⑴(判例の立場と本事案) |
| 3 | [高評価]判例法理の趣旨を掘り下げて個別契約書の合意による実現可能性を理由付ける | 5 | 実頁33・第1問・設問1(判例趣旨を掘り下げた高評価答案) | 実頁29・3⑴(判例趣旨を掘り下げた高評価答案) |
| 4 | [必須]契約18条の具体的懲戒事由への形式的該当性を判断する | 4 | 実頁33・第1問・設問1(懲戒事由への該当性) | 実頁29・3⑴(懲戒事由への該当性) |
| 5 | [必須]懲戒制度の趣旨から事由を限定し本件行為の実質的な該当性を判断する | 4 | 実頁33・第1問・設問1(趣旨に即した実質判断) | 実頁29・3⑴(趣旨に即した実質判断) |
| 6 | [必須]合理的理由・社会的相当性を労契法15条の濫用規範として示す | 5 | 実頁33・第1問・設問1(懲戒の権利濫用) | 実頁29・3⑴(懲戒の権利濫用) |
| 7 | [必須]長時間労働と在社制限が持出し・紛失の一因であることを懲戒評価に反映する | 3 | 実頁33・第1問・設問1(長時間労働・勤務制限) | 記載なし |
| 8 | [必須]7日間無給の生活上の重さを評価し上限内というだけで軽い処分としない | 4 | 実頁33・第1問・設問1(出勤停止の重さ) | 実頁29・3⑴(出勤停止の重さ) |
| 9 | [必須]弁明機会の欠如を適正手続又は懲戒濫用の判断に位置付ける | 4 | 実頁33・第1問・設問1(弁明機会と適正手続) | 実頁29・3⑴(弁明機会と適正手続) |
2 設問2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 10 | [必須]使用者から労働者への直接請求として債務不履行又は不法行為を法的入口に置く | 5 | 実頁33・第1問・設問2(直接の損害賠償請求) | 実頁29・3⑴(直接の損害賠償請求) |
| 11 | [必須]労働者が損害賠償責任を負う要件を示して本件の帰責性を判断する | 4 | 実頁33・第1問・設問2(責任成立の検討) | 実頁29・3⑴(責任成立の検討) |
| 12 | [必須]指揮命令する使用者も業務上の危険発生に責任を負うという危険責任を説明する | 5 | 実頁33・第1問・設問2(危険責任) | 実頁29・3⑴(危険責任) |
| 13 | [必須]事業利益を得る使用者が業務上のリスクを負担すべきという報償責任を説明する | 5 | 実頁33・第1問・設問2(報償責任) | 実頁30・3⑴(報償責任) |
| 14 | [必須]公平な損害分担に基づく信義則上の責任範囲制限を規範として示す | 5 | 実頁33・第1問・設問2(責任制限と公平分担) | 実頁30・3⑴(責任制限と公平分担) |
| 15 | [必須]使用者側事情と労働者の帰責性等の具体的事実を責任制限・範囲の判断に適用する | 4 | 実頁33・第1問・設問2(制限を基礎付ける具体的事情) | 実頁30・3⑴(制限を基礎付ける具体的事情) |
| 16 | [負例]本件を第三者への求償権行使だけの問題と誤分類しない | 2 | 記載なし | 実頁29・3⑴(求償への短絡を批判) |
| 17 | [許容分岐]故意・重過失限定構成を選ぶ場合は責任成立を限定する理由を説明する(故意・重過失限定構成を採用するときのみ) | 3 | 実頁33・第1問・設問2(故意・重過失限定は一例) | 記載なし |
| 18 | [負例]他設問の事実を引用するときは引用対象を特定し曖昧な上記・前述だけで済ませない | 2 | 記載なし | 実頁30・3⑴(引用対象の不明確さを指摘) |
3 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 19 | [必須]解雇権の直接根拠として民法627条1項を挙げる | 5 | 実頁33・第1問・設問3(解雇権の根拠) | 実頁30・3⑴(解雇権の根拠) |
| 20 | [必須]解雇規定のないことと法定解約権の存否を区別する | 4 | 実頁33・第1問・設問3(解雇条項がない事案) | 実頁30・3⑴(解雇条項がない事案) |
| 21 | [負例]朝礼で異議がなかったこと自体を解雇権の発生根拠にしない | 2 | 記載なし | 実頁30・3⑴(沈黙から解雇権を導く誤り) |
| 22 | [必須]労契法16条の客観的合理性・社会的相当性による解雇濫用審査を示す | 5 | 実頁33・第1問・設問3(整理解雇法理) | 実頁30・3⑴(整理解雇法理) |
| 23 | [必須]労働者に直接の帰責事由がないため整理解雇にはより厳しい制約が必要と説明する | 3 | 実頁33・第1問・設問3(より厳しい制約の理由) | 記載なし |
| 24 | [必須]必要性・回避努力・人選・手続の4つを検討枠組みとして明示する | 4 | 実頁33・第1問・設問3(4要件・4要素) | 実頁30・3⑴(4要件・4要素) |
| 25 | [必須]人員削減の必要性を売上減少・雇用維持困難の与件から判断する | 3 | 実頁33・第1問・設問3(人員削減の必要性) | 間接:実頁30・3⑴(人員削減の必要性) |
| 26 | [必須]1事業場の小規模会社という実情を踏まえ実行可能な回避措置を具体的に検討する | 5 | 実頁33・第1問・設問3(小規模企業の回避努力) | 実頁30・3⑴(小規模企業の回避努力) |
| 27 | [必須]経営再建への協力の意味と抽象的・主観的人選の危険を対比して合理性を判断する | 5 | 実頁33・第1問・設問3(抽象的人選基準の検討) | 実頁30・3⑴(抽象的人選基準の検討) |
| 28 | [必須]朝礼の方針説明と選定後の個別説明を区別して説明・協議の実質を検討する | 5 | 実頁33・第1問・設問3(説明・協議手続) | 実頁30・3⑴(説明・協議手続) |
| 29 | [負例]朝礼での沈黙及び30日予告だけで整理解雇の手続が妥当としない | 2 | 記載なし | 実頁30・3⑴(予告等だけの手続評価を批判) |
| 30 | [許容分岐]4要素として論ずる構成を採る場合は総合考慮として運用する(4要素説を採用するときのみ(本答案では該当)) | 3 | 実頁33・第1問・設問3(4要素という構成) | 実頁30・3⑴(4要素という構成) |
4 重みの分布
重み5は12項目,4は9項目,3は5項目,2は4項目,1は0項目であり,総数30,重み合計119である。
重みの合計を試験の点数又は難易度に読み替えない。
重み5は,番号2・3・6(判例の立場,その趣旨の検討,懲戒濫用),10・12・13・14(直接請求,危険責任,報償責任,責任範囲),19・22(解雇権の根拠と濫用),26・27・28(小企業の回避努力,人選,手続)の12項目である。
番号3は高評価の深度であり,重み5であることから当然に全答案の必須事項にはならない。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
法令・判例の基準時は試験実施日の令和3年5月12日である。
答案は各設問につき規範・当てはめ・結論を示し,1→(1)の階層で記す。
本文は改行を除き2494字であり,調査記録・出典説明・枠外解説は字数に含めない。
判例趣旨から個別契約の根拠を導く部分及び本件の各結論は,本稿の解釈である。
2 答案
1 設問1
(1) 懲戒は労働者への制裁であり,使用者が当然に行使できるものではない。
フジ興産判決(最判平成15年10月10日)は,あらかじめ就業規則に懲戒の種別・事由を定めることを要求する。
その趣旨は,制裁の予測可能性を確保し,使用者の恣意的処分を防ぐことにあると解する。
したがって,就業規則作成義務のない小規模企業で,個別契約に種別・事由を明記して合意し,この趣旨が実現される場合には,契約を懲戒権の根拠とすることができる。
Y社は労働者6人,1事業場のみであり,労基法89条の就業規則作成義務を負わない。
契約締結時に,種別・事由を明示した契約書を手交し,X1の署名押印を得ているから,契約18・19条が根拠となる。
(2) 無許可の媒体持帰りは18条3号に形式上該当する。
同号は機密情報の管理による企業秩序維持を目的とする。
会社業務のためでも管理外への持出しは流出の危険を生じさせるから,実質的該当性も否定できない。
ただし,やむを得ない業務目的は違反の重さを弱める。
他方,残務処理のための持帰りと過失による紛失であり,4号の「不正な行為」に該当するとは直ちにいえない。
10号も,先行各号と同程度の企業秩序侵害に限定して解釈すべきである。
(3) もっとも,懲戒が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められなければ,権利濫用として無効となる(労契法15条)。
個人情報を扱う職業紹介業において,無許可で媒体を持ち出し,電車内で紛失したことは信用を損なう重大な不注意であり,一定の懲戒には合理性がある。
しかし,月60時間超の時間外・休日労働が続き,在社時間だけを制限されたため,やむを得ず自宅で残務処理をしていた。
会社業務のための行為で,疲労の蓄積も紛失に影響したと考えられ,使用者の業務管理にも原因がある。
X1は翌朝直ちに報告し,160人への説明・謝罪にも協力した。
7日間無給は生活上軽くない不利益で,14日の上限内というだけでは相当とはいえない。
弁明手続の合意は示されていないため,機会を与えなかっただけで当然無効とはしない。
しかし,当初の経緯説明と処分に対する弁明機会とは異なり,有利な事情を考慮する手続の欠如は相当性を弱める。
以上を総合し,より軽い処分で足り,本件出勤停止は権利濫用として無効と解する。
2 設問2
(1) X1は労働契約に付随する秘密保持・物品保管上の注意義務を負う。
無許可持帰りに加え,個人情報の入った媒体を電車内で紛失したことは義務違反であり,帰責性も認められるから,民法415条の損害賠償責任が問題となる。
不法行為責任(709条)も考えられる。
160人に対する各3000円,合計48万円の金券は,個人情報流出への不安に対応し,信用を回復するための支出であり,人数・単価から必要かつ相当な対応費用と評価できる。
現実の情報悪用が明らかでなくても,直ちに損害性を否定できず,紛失との相当因果関係を認める。
(2) しかし,使用者は指揮命令する業務に伴う危険発生にも責任を負い(危険責任),労働者の活動から利益を得る以上,そのリスクも負担すべきである(報償責任)。
通常過失でも責任成立を認めた上で,全額転嫁による不公平を避けるため,事業の性格・規模,業務内容,労働条件,勤務態度,加害行為の態様,使用者の予防・損失分散への配慮等を考慮し,信義則上相当な限度でのみ請求できる。
Y社が小規模であること,個人情報管理が重要な業種であり,X1に不注意があることは請求を支持する。
他方,本件は私的利益のための持出しではなく,過重な業務と午後8時以降の在社禁止が持帰りと疲労の背景にある。
Y社も業務量や処理方法を適切に管理して危険を防止すべき立場にあり,X1は速やかに報告して事後処理に協力した。
保険加入や具体的安全措置の有無は不明であり,欠如を断定しない。
したがって,48万円全額の請求は許されず,これらの事情を踏まえた公平な分担額に限り認められる。
具体的割合を一律に定める根拠はない。
懲戒と損害填補は目的が異なり,出勤停止処分がされたこと自体で賠償請求が排除されるものではない。
3 設問3
(1) 無期労働契約について使用者は法定の解約権を有するから(民法627条1項),契約書に解雇の定めがないだけで解雇権を否定できない。
30日の予告(労基法20条)とは別に,客観的合理性・社会的相当性による濫用審査(労契法16条)が必要である。
本件は経営悪化に伴う人員削減であり,労働者の責任によらず生活基盤を失わせるため,16条の審査は整理解雇法理によって具体化され,より厳しい制約を受ける。
人員削減の必要性,解雇回避努力,人選の合理性,説明・協議等の手続を,小規模企業の実情を踏まえて総合考慮する。
(2) 顧客を奪われ売上げが3年連続で低下し,6人の雇用維持が困難であるから,削減の必要性は認められる。
1事業場6人という規模では配転先や財源に制約がある。
配転先を持つ大企業と同じ回避措置は要求できない。
他方,希望退職や労働時間の調整等,小企業でも実行可能な措置によって2人の解雇を避ける余地を検討した事情は示されていない。
実施ゼロと断定せず,回避努力の相当性を裏付ける事情が乏しいと評価する。
再建に協力する人材を残すことは,小企業では一定の合理性を持つ。
しかし,協調性・柔軟性という抽象的基準だけでは,社長の主観で異論のある者を排除する危険がある。
X2・X3の具体的な勤務態度と再建への支障を説明する必要がある。
X1の紛失事故は直ちに再建適性を否定するものではないが,同人を残す判断と他の2人を選ぶ判断の一貫性も検討を要する。
朝礼で方針を説明し,選定後にも通知したことは評価できる。
しかし,全員が質問しなかっただけで個別解雇への同意や十分な協議を認めることはできず,選定前の具体的説明や代替策の協議が尽くされたとはいい難い。
(3) 以上から,必要性と小企業の制約を考慮しても,回避努力,人選及び手続の裏付けが十分でなく,両名の解雇は社会通念上相当性を欠く権利濫用として無効と解する。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案1の(1)は番号1~3,(2)は4・5,(3)は6~9に対応する。
答案2の(1)は10・11・16,(2)は12~15及び18に対応する。
答案3の(1)は19~24及び30,(2)・(3)は25~29に対応する。
番号17の故意・重過失限定構成は採用していない。
(2) 懲戒の根拠と処分の相当性
番号2・3では,「就業規則がないから懲戒できない」と短絡することも,「署名があるから当然に有効」とすることも避ける。
判例が求める事前設定の意味を予測可能性と恣意防止から説明し,本件の合意がそれを満たすかを論ずる。
この趣旨の整理と小規模企業への接続は本稿の解釈であり,フジ興産判決が個別契約による懲戒を直接判示したとは記さない。
番号5は,会社業務のための行為でも情報管理上の秩序違反があるかという実質判断である。
本答案は該当性を認めつつ,業務上の動機,過重労働,事後対応,無給の重さ,弁明機会の欠如を相当性の段階で評価した。
(3) 直接請求と責任制限
番号10の責任成立を飛ばして,直ちに過失相殺又は第三者への求償とすることはできない。
本答案は保管上の義務違反を入口とし,通常過失でも成立を認めた上で,番号12・13の危険責任・報償責任から番号14の範囲制限へ進む。
出題趣旨が例示する故意・重過失限定構成を採るなら,番号17に従い,責任成立を限定する根拠と本件の過失の程度を別に論ずる。
金券48万円の必要相当性と因果関係,懲戒と損害填補の目的差は,公式に独立した項目として明記されていない補足である。
これらを公式由来の必須項目として数えていない。
(4) 小規模企業の整理解雇
番号19の解雇権の根拠と番号22の濫用統制を分ける。
番号26では,1事業場の会社に他事業場への配転を定型的に要求せず,実行可能な代替策に即して判断する。
番号27は再建の必要だけで人選を正当化せず,抽象的基準が主観的な排除に使われる危険まで検討する。
番号28・29は朝礼の説明,選定後の個別説明,30日予告の役割を区別し,実質的な説明・協議を問う。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
媒体の実際の悪用,保険加入,具体的な回避措置,X2・X3の個別勤務態度は,問題文から一意に確定できない。
不記載を不存在に置き換えず,必要な判断を与件の範囲で示した。
未払残業代,労働時間規制の行政上の責任,具体的な再就職支援は,この答案の検討対象としていない。
第6 関連記事
1 同じ年度の司法試験の別の模範解答
①令和3年度司法試験民事系第1問の模範解答と評価項目(AI作成)
②令和3年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事
①整理解雇は30日前に予告すれば有効か―民法627条,解雇回避措置・人選基準・説明協議(AI作成)
②能力不足・協調性不足による普通解雇―改善指導・配置転換・解雇回避措置と裁判例(AI作成)
関連記事は比較学習のための紹介であり,試験後の法・判例を本問当時の答案根拠に用いるものではない。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①令和3年司法試験問題・法務省
②選択科目問題PDF(労働法第1問:実頁22~23)
③出題の趣旨PDF(労働法第1問:実頁32末尾~34の第2問直前)
④採点実感PDF(本問:実頁29~30第2問直前,総合評価・末尾:実頁32後半~33)
2 法令
①労働基準法・厚生労働省法令等データベース
②岩手労働局「労働基準法のあらまし」2009年版(労契法6・15・16条は実頁70~71)
③労働契約法の施行について・平成24年8月10日基発0810第2号
④中央労働委員会あっせん事例集19(実頁4の民法627条1項)
労基法89条は10人以上の作成義務,20条は予告を定める。
法令集の現行画面全体を試験当時の統合版として扱わず,使用条文と改正沿革,試験前の公的資料の対応部分を区別した。
民法(令和3年4月28日施行版・e-Gov原応答)で,第1・415・416・627・709・715条を確認した。
試験前の施行版を指定し,本文の条文と附則の同番号条文を区別している。
3 裁判例
①フジ興産事件・最判平成15年10月10日(原文実頁1~2)
②最判令和2年2月28日・平成30年(受)第1429号(原文実頁1~7)
②の法廷意見実頁3は,使用者と被用者の損害の公平な分担を説明し,使用者から被用者への求償制限に言及する。
事件自体は被用者から使用者への逆求償であり,本件の直接請求と同一の事案ではない。
同判決が引用する最判昭和51年7月8日は,引用された範囲を確認したもので,その原判決の全文を独立に確認したものではない。
4 確認状態
確認日は令和8年10月16日である。
問題,出題趣旨,採点実感は法務省掲載正本を用い,上記の本問関連範囲を実読した。
原資料の取得・実読により確認した事項,公式資料が述べる要求,本記事独自の項目化・重み・当てはめ及び原判決を取得していない事項を区別して記載した。
採点実感の読みやすい文字・論理の一貫性等の科目共通の指摘は一般的な答案作法であり,30項目の集計には加えていない。