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令和5年度司法試験労働法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した27項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和5年司法試験労働法第1問を対象に,休職満了による自然退職と試験出社中の賃金請求を検討する。
評価項目は公式資料から独自に抽出したものであり,法務省の公式採点基準・配点ではない。

第1 この記事の対象と結論

令和5年司法試験の選択科目問題の労働法第1問を対象とする。
法令・判例の基準時は試験日の令和5年7月12日とし,資料の確認日は令和8年10月13日・14日である。
出題の趣旨と採点実感(選択科目)から27項目を抽出した。

本問の中心は,契約内容となる休職制度の下での復職可能性と,試験出社中の実就労に対する賃金の根拠である。
以下の答案は,設問1・設問2の地位確認請求を棄却し,設問2の実就労分の賃金請求を認める構成を採る。
これは理由付けを伴う一つの構成であり,公式資料が唯一の結論を指定したという意味ではない。

重み5は8項目であり,番号2・4・9・11・12・17・25・26に付した。
番号26は従来契約の本旨履行を否定する場合に適用される。
第5で2141字の答案と評価表との対応を示す。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一つの評価項目には一つの判定対象を置き,答案の何が評価されるかを具体化した。
必須,高評価,負例の回避及び条件付きの構成は,重みとは別に判断する。
結論だけを独立の必須項目にはしていない。

表の頁は保存したPDFの先頭を1頁とする物理頁であり,印刷頁表示とは一致しない場合がある。
出題の趣旨は29~30頁の労働法〔第1問〕,採点実感は30~32頁の3⑴に対応する。
記載なしは許可範囲を実読して独立の要求が見当たらなかったことを表し,未取得を意味しない。
一般的な答案作法及び公式に独立の項目がない補足は,加重集計へ入れない。

2 5段階の重み付けの基準

重み5は評価の分かれ目又は答案の骨格,4は出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げる事項,3はどちらか一方が明示する中核の理由付けである。
重み2は軽く触れる補強又は典型的な誤り,1は控えめに触れる事項とする。
本問では重み4を全て「高く評価された事項」とは言い換えず,高評価の補強は表中でも区別した。
件数を各段階へ割り当てず,項目ごとに根拠から判断した独自の重みである。

第3 本問の概要

職種を限定せず入社したXは,後にシステム開発課の課長補佐となったが,うつ病のため私傷病休職に入った。
休職期間は令和2年1月1日から令和3年6月30日までであり,主治医及び産業医は,改善を認めつつ原職の複雑な業務を無条件に行うことは困難とした。
就業規則は休職中の無給,延長の可能性,復職命令及び復職不能で満了した場合の退職を定める。

設問1ではXが課長補佐としての地位・給与での復職に固執し,他の形での復職を拒否したため,Y社が6月30日で自然退職として扱った。
Xの地位確認請求の当否を問う。
設問2は独立した追加事実であり,設問1の拒否をそのまま持ち込まない。

設問2ではY社が意向を聴き,休職を8月31日まで延長して,総務課の定型的で繁忙度の低い業務へ試験出社を提案した。
週3日の隔日勤務・午後1時から5時までの4時間で,簡易な業務から担当する条件をXは了承したが,2週間ほどで不調となり欠勤を重ねた。
地位確認に加え,実際に事務へ従事した分の賃金請求が問題となる。

第4 評価項目と重み

1 設問1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1休職・満了による自然退職は法定制度ではなく契約による制度であると説明する。(必須)329頁 〔第1問〕:「法令には規定がなく」の対応箇所。30頁 3⑴:「法令に具体的な定め」の対応箇所。
2就業規則の合理性・周知を労契法7条本文の契約内容化へ接続する。(必須)529頁 〔第1問〕:「労働契約法7条本文」の対応箇所。30頁 3⑴:「労働契約法第7条本文」の対応箇所。
3私傷病就労不能は本旨の労務提供不能であり,休職は解雇を猶予する制度だと説明する。(必須)429頁 〔第1問〕:「解雇が猶予され」の対応箇所。30頁 3⑴:「休職制度それ自体」の対応箇所。
4復職可能なら自然退職の効果が発生しないという第35条の効果を示す。(必須)529頁 〔第1問〕:「退職の効果は発生しない」の対応箇所。30頁 3⑴:「自然退職の効果の発生が障害される」の対応箇所。
5自然退職を解雇と同一視して労契法16条を直接適用しない。(負例の回避)2記載なし(対象範囲実読)30頁 3⑴:「自然退職を解雇と同一視」の対応箇所。
6復職可否の検討をせず権利濫用だけを主たる判断枠組みにしない。(負例の回避)2記載なし(対象範囲実読)30頁 3⑴:「端的に復職の可否」の対応箇所。
7まず原則として休職前の職務を通常程度行える健康状態かを判定する。(必須)429頁 〔第1問〕:「職務」の対応箇所。31頁 3⑴:「原則論を土台」の対応箇所。
8主治医・産業医の所見とXの残存症状を原職の複雑な業務へ対応させて評価する。(必須)429頁 〔第1問〕:「主治医及び産業医」の対応箇所。31頁 3⑴:「Xの健康状態」の対応箇所。
9片山組事件の賃金請求で示された判断枠組みを自然退職に用いる理由・射程を示す。(必須)529頁 〔第1問〕:「賃金請求権の存否」の対応箇所。31頁 3⑴:「判断枠組みが自然退職」の対応箇所。
10職種・業務内容の限定の有無を確定し,他業務検討の入口にする。(必須)429頁 〔第1問〕:「職種や業務内容」の対応箇所。31頁 3⑴:「前記の判例の判断」の対応箇所。
11他業務の遂行能力とその労務提供の申出を,他業務による復職判断の要件として示す。(必須)529頁 〔第1問〕:「労働者がその提供を申し出ていた」の対応箇所。31頁 3⑴:「その判旨を正しく理解」の対応箇所。
12能力・経験・地位・会社規模等を挙げ,使用者側の現実的配置可能性も判定する。(必須)529頁 〔第1問〕:「配置・異動の実情及び難易」の対応箇所。31頁 3⑴:「使用者側の事情」の対応箇所。
13Xの原職以外の復職拒否を他業務提供の申出の有無へ当てはめる。(必須)429頁 〔第1問〕:「それ以外の形での復職を拒否」の対応箇所。31頁 3⑴:「諸事情を過不足なく拾い上げ」の対応箇所。
14障害者雇用促進法の趣旨から合理的配慮を要することを,復職判断へ接続する。(高評価)430頁 〔第1問〕:「同法の趣旨」の対応箇所。31頁 3⑴:「合理的な配慮」の対応箇所。
15Yの規模・医師所見・Xの意向に即して合理的配慮の必要性と可能性を評価する。(高評価)430頁 〔第1問〕:「当てはめ」の対応箇所。31頁 3⑴:「必要であり」の対応箇所。

2 設問2の地位確認請求

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
16延長後の休職満了日を判断時点として,設問1とは時点を区別する。(必須)430頁 〔第1問〕:「延長後の休職期間満了時」の対応箇所。31頁 3⑴:「設問1とは異なる時点」の対応箇所。
17設問2でも原職の通常勤務能力の原則と他業務の例外を共通規範で判定する。(必須)530頁 〔第1問〕:「判例の考え方から導き出される規範」の対応箇所。32頁 3⑴:「基本的には規範が共通」の対応箇所。
18試験出社の目的を踏まえ,出社・実作業だけで正式復職と判断しない。(必須)330頁 〔第1問〕:「正式な復職の可否の判断」の対応箇所。記載なし(対象範囲実読)
19総務事務の定型性・低繁忙度,隔日4時間,簡易業務と不調・欠勤を復職能力へ評価する。(必須)430頁 〔第1問〕:「業務がなお他に」の対応箇所。32頁 3⑴:「業務の内容やその遂行状況」の対応箇所。
20試験出社後にも配置できる他業務がなおあるかを会社側の実情を含め検討する。(必須)430頁 〔第1問〕:「業務がなお他にあった」の対応箇所。32頁 3⑴:「同様の判断枠組み」の対応箇所。
21軽減内容と意向聴取を合理的配慮へ評価し,過重だったとのXの主張に応答する。(高評価)430頁 〔第1問〕:「合理的な配慮があった」の対応箇所。32頁 3⑴:「合理的な配慮があった」の対応箇所。
22合理的配慮の有無だけで結論を出し,復職可能性の共通規範を省略しない。(負例の回避)2記載なし(対象範囲実読)32頁 3⑴:「その点のみを検討し」の対応箇所。

3 設問2の賃金請求

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
23第32条の休職中無給を賃金判断の前提として示す。(必須)430頁 〔第1問〕:「休職中は賃金を支給されない」の対応箇所。32頁 3⑴:「就業規則第32条」の対応箇所。
24試験出社の趣旨及び提案と了承の間の合意内容を事実から確定する。(必須)430頁 〔第1問〕:「合意の内容」の対応箇所。32頁 3⑴:「別個の合意の存否」の対応箇所。
25試験出社の業務・時間軽減が従前契約の本旨に従う履行かを先に判断する。(必須)530頁 〔第1問〕:「債務の本旨に従った労」の対応箇所。32頁 3⑴:「従来の労働契約」の対応箇所。
26本旨の履行を否定する場合にも別個の賃金支払合意等の法的根拠を検討する。(必須)本旨履行を否定する場合。530頁 〔第1問〕:「賃金請求権が発生す」の対応箇所。32頁 3⑴:「別個の合意の存否」の対応箇所。
27実作業の存在だけで賃金発生とせず,休職無給と契約上の対価の根拠を整合させる。(負例の回避)2記載なし(対象範囲実読)32頁 3⑴:「単に、業務への従事」の対応箇所。

4 重みの分布

重み1は0項目,2は4項目,3は2項目,4は13項目,5は8項目である。
総項目数Nは27,重み合計Wは106となる。
負例4項目も公開表のN・Wには数えるが,誤りを犯さないことだけで積極的な論述の網羅率を上げる扱いはしない。

番号2:就業規則の合理性・周知を労契法7条本文の契約内容化へ接続する。
答案の骨格となる法的入口・共通判断枠組み・賃金の主ルート。

番号4:復職可能なら自然退職の効果が発生しないという第35条の効果を示す。
答案の骨格となる法的入口・共通判断枠組み・賃金の主ルート。

番号9:片山組事件の賃金請求で示された判断枠組みを自然退職に用いる理由・射程を示す。
答案の骨格となる法的入口・共通判断枠組み・賃金の主ルート。採点実感31頁が判例枠組みを確実に論じたかを評価の分かれ目とする。

番号11:他業務の遂行能力とその労務提供の申出を,他業務による復職判断の要件として示す。
答案の骨格となる法的入口・共通判断枠組み・賃金の主ルート。採点実感31頁が判例枠組みを確実に論じたかを評価の分かれ目とする。

番号12:能力・経験・地位・会社規模等を挙げ,使用者側の現実的配置可能性も判定する。
答案の骨格となる法的入口・共通判断枠組み・賃金の主ルート。採点実感31頁が判例枠組みを確実に論じたかを評価の分かれ目とする。

番号17:設問2でも原職の通常勤務能力の原則と他業務の例外を共通規範で判定する。
答案の骨格となる法的入口・共通判断枠組み・賃金の主ルート。採点実感31頁が判例枠組みを確実に論じたかを評価の分かれ目とする。

番号25:試験出社の業務・時間軽減が従前契約の本旨に従う履行かを先に判断する。
答案の骨格となる法的入口・共通判断枠組み・賃金の主ルート。

番号26:本旨の履行を否定する場合にも別個の賃金支払合意等の法的根拠を検討する。
答案の骨格となる法的入口・共通判断枠組み・賃金の主ルート。本旨履行を否定する場合に適用する。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

試験実施時までの法令・判例の考え方を用い,設問の各請求について自己の見解を示す。
答案内の数字は全角であり,階層は「1→(1)」を基本とする。
字数は見出し及び「以上」を含め,改行を除いた実測2141字であり,選択科目1問の目安2500字以内である。

片山組事件の最高裁判決(最判平成10年4月9日・平成7年(オ)第1230号,集民188号1頁)は裁判所HPで確認した。
答案の規範は,公式資料の紹介及び平成24年の裁判所公表判決による引用とも照合した。
合理的配慮についても,障害者該当性の詳細が与件だけで確定するとはせず,試験前の法の趣旨を復職判断へ接続する。

2 答案

1 設問1
(1) 休職満了による自然退職の根拠
私傷病休職及び満了による自然退職は法定制度ではなく,労働契約によって効力を生ずる。
就業規則の定めが合理的であり,労働者に周知されている場合には,労働契約法7条本文により契約内容となる。
本件制度は,私傷病により債務の本旨に従う労務を提供できない労働者につき,直ちに解雇せず回復を待つ解雇猶予の制度である。
勤続10年超の者に1年6か月の療養期間を与え,延長も可能とする規定は合理的であり,Xもこれを利用していることから周知も認められる。
したがって,第35条は契約内容となり,満了時にも復職できなければ終了するが,復職可能なら終了しない。
自然退職は解雇意思表示による終了とは異なり,労契法16条を直接適用するのではなく,復職の可否を検討する。

(2) 復職可能性の判断
原則として,休職前の職務を通常程度行える健康状態へ回復していれば復職可能である。
しかし,Aはなお3か月程度の療養を要し複雑な業務は困難と診断し,Bも適切な配慮なしのプロジェクトマネージャー業務は困難としている。
起床困難や注意力の散漫も残り,Xの自信や意欲だけでは課長補佐としての複雑な業務を通常程度行えるとはいえない。

もっとも,片山組事件最判平成10年4月9日の考え方によれば,職種等を限定しない契約では,能力,経験,地位,企業の規模・業種,配置・異動の実情及び難易等に照らし,現実的に配置可能な他業務を行え,その労務提供を申し出ている場合には,原職を十全に行えないだけで本旨の履行提供がないとはいえない。
これは賃金請求の事案の判断であるが,契約上の労務提供可能性という共通の問題であり,自然退職の判断にも用いるべきである。
Xは職種限定なく入社し,昇進だけで限定合意が成立したとはいえず,約500名のY社では他業務への配置の余地がある。
他方,Xの遂行能力だけでなく,Y社の組織内で現実に配置できるかも考慮する。

障害者雇用促進法36条の3は,雇用する障害者の職務遂行を妨げる事情の改善措置を,過重な負担とならない範囲で求める。
長期のうつ病により職業生活に制限を受けるXの復職についても,その趣旨及び労契法5条に照らし,医師の所見と会社規模を踏まえた業務・勤務時間の軽減を検討すべきである。
ただし,Xは課長補佐の地位と給与に固執し,原職以外の復職を拒否している。
原職の複雑な業務を軽減しても通常の遂行へ戻れるとの具体的見通しは示されておらず,他業務の提供の申出もない。
本人の意向を尊重することは,遂行できない原職をそのまま与える義務を意味しない。
第33条ただし書も当然の延長請求権を与えるものではない。
よって,6月30日にも復職できず第35条による終了を認めるべきであり,地位確認請求は棄却すべきである。

2 設問2
(1) 地位確認請求
延長後の満了日である8月31日を基準として,同じ原則及び例外の枠組みで判断する。
試験出社は復職可能性の観察のためであり,出社しただけで正式復職とはならない。
原職の通常の業務を行えるまで回復した事情はなく,他業務への現実的な配置可能性を検討する。

Y社は,Xのフルタイム勤務への不安を受け,繁忙度の低い定型的な総務事務につき,週3日の隔日勤務,午後1時から5時までの4時間とし,簡易な業務から担当させた。
Xの意向を聴き,起床困難や注意力の低下に対応して,業務・日数・時間の負担を大幅に軽減している。
了承だけで配慮が十分になるわけではないが,これらの措置は合理的な配慮と評価でき,条件が過重だったという主張は認め難い。
この軽い業務でも2週間ほどで不調となり欠勤を重ねており,さらに他の現実的配置可能な業務を安定して行えることを示す事情はない。
配慮の有無だけで結論を出すのではなく,その下でも契約上の労務を提供できないことから,満了時に復職不能と認める。
よって,自然退職の効果が生じ,地位確認請求は棄却すべきである。

(2) 実就労分の賃金請求
第32条は休職中を無給としており,試験出社は復職判断のための措置である。
Xの業務・時間は従来の課長補佐としての8時間勤務から大幅に軽減され,正式復職とはしないことも合意されている。
そこで,従来の休職中の契約についての本旨に従った労務提供とは認め難く,月額50万円の全額は当然には発生しない。

しかし,本旨の履行でないことから直ちに賃金請求を否定することもできない。
Y社は総務事務への従事を指示し,Xもこれを了承して,実際にY社の事業のための業務を行った。
単なる通勤訓練や見学ではなく,会社が指示した実業務であり,復職判断という目的はその労働の対価性を失わせない。
第32条も通常は労務を提供しない休職を想定したもので,実業務を無償とする明確な合意はない。
以上から,従来の休職中の契約とは別に,短時間の総務業務を行い,その対価を支払う黙示の合意が成立したと解する。
労契法6条・8条を踏まえ,当該合意に基づく実就労分の賃金請求を認めるべきである。
具体額は合意の合理的解釈及び賃金規程により業務・実働時間等に対応して定まり,出勤日数等が示されていないため確定額は算出できない。
自然退職も既発生の対価債権を消滅させない。
以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

設問1の(1)は番号1~6,(2)は番号7~15に対応する。
設問2の(1)は番号16~22,(2)は番号23~27に対応する。
重み5の番号2・4は契約上の入口と効果,9・11・12は判例の射程と他業務の判断,17は共通規範,25・26は賃金の主ルートと否定後の別構成である。

(2) 自然退職の入口と復職可能性

第35条を挙げるだけでは,その規定が契約上の効力を持つ理由を説明できない。
答案は労契法7条の合理性・周知を示した上で,原職を通常程度行える健康状態か,他業務に現実的配置可能性があるか,という順序を採る。
Xの制度利用から周知を認める部分は与件からの推認であり,別途周知方法が明示された事実ではない。

他業務の問題はXの能力だけでは完結せず,会社側の配置実情と本人の提供申出も必要になる。
番号9は,賃金請求に関する判例規範を地位確認の問題へ用いる理由を示すための項目である。
原職の地位・給与への固執と他業務拒否を踏まえた結論を採ったが,原職を軽減した場合の遂行見通しを肯定するなら,配慮の内容と配置の現実性について具体的な理由が必要となる。

(3) 試験出社後の地位と賃金

設問2でも復職可能性の規範は共通し,判断時点は延長後の8月31日になる。
合理的配慮の有無だけで終了の効果を論ずる答案にはせず,軽い総務業務での不調・欠勤を,なお配置可能な他業務の有無まで評価する。
会社が軽減した条件を用意したことと,正式復職が成立したことは区別した。

賃金は,本旨の履行かを先に検討する。
否定しても直ちに請求棄却にはせず,会社の指示,了承,事業のための実業務及び受領から別個の対価合意を認定する。
実業務があれば当然に従前の月額50万円が全額発生するとの論証は採っていない。
別合意の存否は解釈であるため,無償の訓練合意を認定する反対構成なら,実業務性と無給規定をどう整合させるかを説明する必要がある。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

配置できる具体的職務の一覧,実出勤日数,対価の単価は与件にないため,確定した事実や金額を補っていない。
合理的配慮を必要とする障害の状態及び過重な負担の詳細も,資料上の規範と本問の推認を分けた。
損害賠償,休業手当や具体的な最低賃金額へ請求を広げず,第33条の延長論は短い補足にとどめた。

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②司法試験の過去問・参考答案一覧―令和元年~令和8年の年度別・科目別ガイド(AI作成)

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①社員が私傷病休職を開始する際に使用者が注意すべき事項(AI作成)
②休職期間中の無給と休業手当の区別――民法536条2項,労働基準法26条及び就業禁止条項(AI作成)

関連実務記事は後年の解説として紹介するものであり,試験答案の基準時より後の法令・裁判例を答案の根拠に混ぜていない。

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省,令和5年司法試験選択科目問題:物理26~28頁の労働法第1問。
②法務省,令和5年司法試験論文式試験問題の出題の趣旨:物理29~30頁の労働法〔第1問〕。
③法務省,令和5年司法試験の採点実感(選択科目):物理30~32頁の労働法総論・第1問と,物理34頁末尾~35頁の科目共通評価・学習上の指摘。
評価表の引用は対応する抽出本文で実在を照合した。

2 法令

①e-Gov法令検索・労働契約法:3条・5条・6条・7条・8条・16条。
②e-Gov法令検索・障害者の雇用の促進等に関する法律:2条,36条の3・4。
③厚生労働省,平成23年改訂の職場復帰支援の手引き:物理4頁・21~22頁。
④厚生労働省大分労働局,平成28年の障害者差別禁止・合理的配慮に関する説明資料:物理1・4~5頁。

e-Govの取得XMLは取得時の版であり,試験日断面の全文XMLを取得済みとする意味ではない。
答案で用いた合理的配慮の規定は試験前の平成28年行政資料とも照合した。
その後の制度改正を本答案へ遡って適用していない。

3 裁判例

①東京地裁平成24年12月25日判決・平成22年(ワ)第46135号:物理64~66頁の復職判断及び片山組事件引用部分を確認した。
②片山組事件・最一小判平成10年4月9日(平成7年(オ)第1230号,集民188号1頁):裁判所HPで判決を確認した。
③東海旅客鉄道事件・大阪地判平成11年10月4日,日本電気事件・東京地判平成27年7月29日:上記公式資料による紹介を確認した(いずれも裁判所HP未掲載)。

4 確認状態

公式PDFの対象部分は本文を実読し,抽出した引用を照合した。
上記の裁判例は,記載した範囲で原文を確認した。
公式資料が紹介する裁判例の位置付けは公式資料の記載によるものであり,重み,事実からの推認及び答案の結論は本記事の分析である。
会社内部の具体的配置先,実出勤日数及び対価額は,問題文から確定できない。
評価項目の件数や重み合計は法務省の得点・配点・合格可能性を表していない。