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令和3年司法試験環境法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した41項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和3年司法試験環境法第2問を対象に,公式の出題の趣旨と採点実感から41項目を独自に抽出し,模範解答を示す。
評価項目と1~5の重みは,本記事の分析であり,法務省の公式採点基準・配点ではない。

第1 この記事の対象と結論

本問は,産業廃棄物を野積みした処分者C社と,標準処理費用の3分の1を負担した元請B社への行政措置,許可取消後の対応,住民Dの救済を扱う。
C社への措置命令とB社の補完的責任,緊急代執行,取消後の保管等命令,民事差止めと行政上の義務付けを区別することが中心となる。

評価表は全41項目,重み合計159である。
重み5は番号4・5・6・9・10・13・16・18・20・36の10項目であり,具体的事項は第4で示す。
模範解答は第5の枠内に置き,枠外で評価項目との対応と構成の限界を説明する。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一項目に一つの判定対象を置き,必須,高評価,負例,許容分岐を重みとは別に表示した。
全項目を全答案の累積要求とはせず,番号30のA社への措置命令は,命令根拠が成立するかの検討を伴う条件付き候補である。
負例の番号25と40も重みを付けて表と分布に含めている。

両資料のPDF実頁を表示し,根拠を短く引用又は要約する。
「記載なし」は本件の関連範囲を実読した結果,「間接」は各要件の検討を求める総括記述等からの推論を意味する。
公式資料の記述を原子化した項目であり,法務省が個別に定めた採点項目ではない。

2 5段階の重み付けの基準

重み本記事の基準
5採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格そのもの
4出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項
3どちらか一方が明示する中核の理由付け
2一方が軽く触れる補強又は典型的な誤り・不要な記述の回避
1一方が控えめに触れるだけの事項

高評価や許容分岐に重み5を付けても,全答案における必須事項へ格上げするものではない。
各段階への件数割当てを行わず,三段階からの機械的換算もしていない。

第3 本問の概要

元請B社から基礎工事を受注した許可業者A社が,地中梁の破砕解体を別途受託し,発生したコンクリート破片の処理を許可業者C社に再委託した。
B社の負担は標準処理費用の3分の1である。
C社は自己所有の山林に囲いなく野積みし,乙地区住宅地への崩落危険が生じ,その後経営状況が悪化した。

再委託は禁止規定に抵触せず,管理票も適法である。
設問1⑴ではB社だけを事業者とし,法21条の3第2項ないし第4項は検討しない。
1⑴①は許可を取り消さない場合,②は措置前に小規模崩落と拡大兆候が現れた場合,1⑵は許可取消後である。
設問2は独立しており,D宅の直接隣接や現実の損害を補充しない。

第4 評価項目と重み

1 設問1⑴①―主体別の責任と措置

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1[必須]法2条1項・4項1号と資料の施行令2条9号を結び,破片を産業廃棄物と認定する。3記載なし35頁 第2問について:【資料】に掲げた廃掃法施行令
2[必須]法21条の3第1項により元請B社を排出事業者と位置付ける。437頁 環境法第2問:排出事業者たるB社35頁 第2問について:事業者であるB社
3[必須]C社の野積みについて法16条の投棄禁止と「みだりに捨てる」の意義を具体的に検討する。337頁 環境法第2問:投棄禁止記載なし
4[必須]C社の違反行為を法14条の3第1号に接続し,期間を定めた事業全部又は一部の停止を検討する。537頁 環境法第2問:停止命令の可否36頁 第2問について:これに触れた答案はごく一部
5[必須]C社を不適正処理の実行者として法19条の5第1項1号の措置命令の名宛人とする。537頁 環境法第2問:第19条の5第1項第1号35頁 第2問について:処分者であるC社
6[必須]崩落が実際に始まる前の危険の段階で,生活環境保全上の支障のおそれを認定する。537頁 環境法第2問:乙地区住宅地への危険35頁 第2問について:具体的な危険が生じていることは明白
7[必須]措置命令の内容を撤去・崩落防止など,本件の危険に即した具体的措置として示す。4間接(37頁 環境法第2問:具体的な事情を踏まえて)35頁 第2問について:具体的な措置の内容を踏まえて
8[必須]A社による許可業者C社への適法再委託を踏まえ,B社への法19条の5第1項4号の命令を否定する。337頁 環境法第2問:第19条の5第1項第4号記載なし
9[必須]C社の処分者責任とB社の排出事業者としての補完的責任を異なる根拠条文で区別する。537頁 環境法第2問:第19条の6第1項に基づく措置命37頁 第2問について:排出事業者の責任と処分者の責任を明確に区別
10[必須]法19条の6第1項1号と2号を累積要件として検討し,一方のみで発令を認めない。5間接(37頁 環境法第2問:発令の可否)36頁 第2問について:同項第1号及び第2号のいずれにも該当する必要
11[必須]C社の経営悪化を,処分者等のみでは支障除去が困難又は不十分という1号要件に当てはめる。4間接(37頁 環境法第2問:問題文に現れた具体的な事情)間接(36頁 第2問について:本問の事例に現れる事情を具体)
12[必須]B社の標準費用の3分の1という負担を,適正な対価の不負担という2号要件に当てはめる。437頁 環境法第2問:著しく安価な委託料金間接(36頁 第2問について:そのいずれかに該当することをもって)

2 設問1⑴②―緊急代執行

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
13[必須]法19条の8第1項4号を選択し,命令のいとまがない場合の先行命令なしの行政代執行を示す。537頁 環境法第2問:行政代執行法の特別規36頁 第2問について:第19条の8第1項第4号
14[必須]小規模崩落の開始と拡大兆候を,緊急性及び命令のいとまのなさに具体的に結び付ける。4間接(37頁 環境法第2問:その拡大の兆候が現れていた)36頁 第2問について:要件に
15[必須]行政庁が自ら除去等を行い,その費用を徴収する仕組みまで説明する。337頁 環境法第2問:その費用を徴収する仕組み記載なし

3 設問1⑵―許可取消後

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
16[必須]許可取消し後のC社に法19条の10第2項3号を適用し,19条の5の読替準用を示す。537頁 環境法第2問:第19条の10第2項第3号36頁 第2問について:第19条の10第2項に基づく措置命令
17[必須]取消後の保管等命令は基準不適合保管の認定で足り,生活環境上の支障又はおそれを要しないと明示する。337頁 環境法第2問:不要であり記載なし
18[必須]取消後の命令の効果を,処理基準に従う保管その他必要な措置とし,通常の支障除去命令と区別する。537頁 環境法第2問:その他必要な措置を命じる36頁 第2問について:ここまで触れた答案はほとんどなかった
19[高評価]取消しを先行すると改善命令を行えなくなる制度上の空白と,平成29年改正の解決方法を説明する。337頁 環境法第2問:改善命令ができなくなることを懸念36頁 第2問について:改正前のどのような問題点を

4 設問2―救済の順位とC社への請求

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
20[高評価]危険が差し迫る一方で損害は未発生という事情から,実効的な危険除去と早期救済の優先順位を付ける。5記載なし36頁 第2問について:Dの救済方法の優先順位
21[必須]土地及び建物の所有権に基づく妨害予防請求の根拠と内容を示す。437頁 環境法第2問:土地建物の所有権に基づく妨害予36頁 第2問について:土地及び建物の各所有権に基づく妨害予防請求権
22[必須]生命身体に関する人格権による差止請求を,所有権とは別の権利として検討する。437頁 環境法第2問:生命身体に関する人格権36頁 第2問について:人格権に基づく差止請求権
23[高評価]乙地区の隣接とD宅自体の直接隣接を区別し,Dへの危険の到達可能性を吟味する。3記載なし36頁 第2問について:Dの居住地がC社所有山林に直接隣接しているかは明確ではない
24[必須]崩落危険の具体的事情を用いて,受忍限度等の違法性又は正当化事由を検討する。3記載なし36頁 第2問について:受忍限度論など
25[負例]本件では具体的措置を請求できることを踏まえ,抽象的差止請求の可否へ不要に議論を広げない。2記載なし36頁 第2問について:あえて
26[必須]被保全権利と急迫の危険等を示して,仮の地位を定める仮処分を検討する。437頁 環境法第2問:仮処分の可能性37頁 第2問について:仮の地位を定める仮処分

5 設問2―P県への請求と設問射程

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
27[必須]P県を被告とする法3条6項1号の非申請型義務付けを特定する。437頁 環境法第2問:第3条第6項第37頁 第2問について:非申請型義務付け訴訟
28[必須]B社への法19条の6の措置命令を知事にさせる請求を特定する。437頁 環境法第2問:A社,B社及びC社に対する措置命令37頁 第2問について:B社に対する廃掃法第19条の6
29[必須]C社への法19条の5の措置命令を知事にさせる請求を特定する。437頁 環境法第2問:A社,B社及びC社に対する措置命令37頁 第2問について:C社に対する同法第19条の5
30[許容分岐]A社への措置命令も候補として検討し,法律上の命令根拠と与件を照合する。337頁 環境法第2問:A社,B社及びC社に対する措置命令記載なし
31[必須]義務付けを求める法律上の利益として原告適格を検討する。4間接(37頁 環境法第2問:それぞれの要件充足性)37頁 第2問について:原告適格
32[高評価]措置命令規定の趣旨目的と保護利益の内容性質を用い,Dの個別的利益保護を理由付ける。3記載なし37頁 第2問について:保護しようと
33[必須]回復困難性を踏まえ,重大な損害を生ずるおそれを具体的に検討する。4間接(37頁 環境法第2問:それぞれの要件充足性)37頁 第2問について:損害の重大性と補
34[必須]C社への民事救済等の実効性を考慮し,他に適当な方法がないという補充性を検討する。4間接(37頁 環境法第2問:それぞれの要件充足性)37頁 第2問について:充性〔同法第37条の2第1項,第2項〕
35[必須]法37条の2第5項に従い,行政庁の不行使の裁量逸脱濫用等の本案勝訴要件を検討する。4間接(37頁 環境法第2問:それぞれの要件充足性)37頁 第2問について:本案勝訴要件
36[高評価]現実の危険除去を実現するため,行政代執行そのものの義務付けの可否を検討する。537頁 環境法第2問:行政代執行の義務付け37頁 第2問について:Dへの直截な救済
37[高評価]代執行義務付けについて,処分性と廃掃法19条の8の発動要件を踏まえた可能性を示す。4間接(37頁 環境法第2問:それぞれの要件充足性)37頁 第2問について:行政代執行の義務付けの訴えの可否
38[必須]本案に時間を要する危険を踏まえ,仮の義務付けを検討する。437頁 環境法第2問:仮の義務付けの申立て37頁 第2問について:仮の義務付け
39[必須]仮の義務付けについて,償えない損害・緊急性・本案理由の見込み等の法定要件を検討する。4間接(37頁 環境法第2問:それぞれの要件充足性)間接(37頁 第2問について:仮の義務付け)
40[負例]Dの損害発生を与件に追加せず,損害賠償請求の長い検討を行わない。237頁 環境法第2問:損害賠償請求については36頁 第2問について:具体的な損害発生までは現
41[高評価]設問2の代執行等を検討するとき,設問1⑴②の崩落開始を当然に引き継がない。3記載なし37頁 第2問について:設問が独立していることもあり

6 重みの分布

重み1は0項目,重み2は2項目,重み3は11項目,重み4は18項目,重み5は10項目である。
総項目数は41,重みの合計は159であり,公式得点や合格可能性を意味しない。

番号4は,C社の違反行為を法14条の3第1号に接続し,期間を定めた事業全部又は一部の停止を検討する。
答案の骨格又は評価の分かれ目。
停止命令に触れた答案がごく一部と指摘。

番号5は,C社を不適正処理の実行者として法19条の5第1項1号の措置命令の名宛人とする。
答案の骨格又は評価の分かれ目。
C社の法的責任の主たる根拠。

番号6は,崩落が実際に始まる前の危険の段階で,生活環境保全上の支障のおそれを認定する。
答案の骨格又は評価の分かれ目。
危険段階での措置と緊急時の区別を左右する。

番号9は,C社の処分者責任とB社の排出事業者としての補完的責任を異なる根拠条文で区別する。
答案の骨格又は評価の分かれ目。
実感の優秀答案像が主体別責任の区別を明示。

番号10は,法19条の6第1項1号と2号を累積要件として検討し,一方のみで発令を認めない。
答案の骨格又は評価の分かれ目。
実感が一号のみでよいとする誤りを強く指摘。

番号13は,法19条の8第1項4号を選択し,命令のいとまがない場合の先行命令なしの行政代執行を示す。
答案の骨格又は評価の分かれ目。
緊急時の措置を決める直接根拠。

番号16は,許可取消し後のC社に法19条の10第2項3号を適用し,19条の5の読替準用を示す。
答案の骨格又は評価の分かれ目。
取消後の問の制度選択そのもの。

番号18は,取消後の命令の効果を,処理基準に従う保管その他必要な措置とし,通常の支障除去命令と区別する。
答案の骨格又は評価の分かれ目。
異なる効果まで触れた答案がほとんどないと指摘。

番号20は,危険が差し迫る一方で損害は未発生という事情から,実効的な危険除去と早期救済の優先順位を付ける。
答案の骨格又は評価の分かれ目。
真の救済と優先順位を意識した答案が少数。

番号36は,現実の危険除去を実現するため,行政代執行そのものの義務付けの可否を検討する。
答案の骨格又は評価の分かれ目。
直接除去という救済の終点を左右する。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

法令は選択科目の試験実施日である令和3年5月12日を基準とする。
答案本文は見出し・句読点を含み,空白・改行を除いて2210字である。
所有権・人格権による予防と行政訴訟を並べ,知事への命令請求と直接の代執行請求を区別する。
行政代執行の義務付けは一つの構成を示したものであり,原文未確認の裁判例を確認済み先例として引用しない。

2 答案

1 設問1⑴①

(1)コンクリート破片は,事業活動に伴う工作物の除去によって生じた不要物であり,産業廃棄物に当たる(廃掃法2条1項・4項1号,施行令2条9号)。
B社が元請業者として排出事業者となる(法21条の3第1項)。

(2)C社は処理基準に従う義務を負う(14条12項)。
囲いなしの野積みはこれに違反し,住宅地への崩落危険は,既に生活環境保全上の支障が生ずるおそれに当たる。
知事は実行者C社に,19条の5第1項1号により,必要な限度で期限を定め,撤去・崩落防止等を命ずることができる。
また,16条は「みだりに」廃棄物を捨てることを禁ずる。
自己所有地への仮置きであっても当然に適法ではなく,適正な処理と認められる合理的理由なく,囲いも設けず,住宅地に崩落する状態で放置することは,同条に違反する。
処理基準違反と併せて14条の3第1号の違反行為に当たり,期間を定めた事業の全部又は一部の停止命令も可能である。
19条の3第2号による保管方法の改善命令も考えられるが,危険除去の措置命令を後回しにすべきではない。

(3)B社については,A社が許可業者C社に適法に再委託した以上,19条の5第1項4号による元請責任を問えない。
委託・管理票の違反も与えられていない。
しかし,原因者負担原則を具体化した19条の6は,適法委託をした排出事業者にも補完的責任を認める。
同条1項1号の処分者等のみでは除去が困難又は不十分であることと,2号の適正対価不負担等の双方が必要である。
C社の経営悪化は前者を,B社の標準処理費用の3分の1の負担は後者を基礎付ける。
経営悪化の程度を確認し,C社等のみで対応できないと認められれば,B社に対し,性状・数量・処理方法等から相当な範囲で,期限を定めた除去等の措置命令ができる。
各命令は命令書を交付して行う(19条の4第2項等)。

2 設問1⑴②

小規模崩落が始まり拡大の兆候があるから,緊急に危険を除去する必要がある。
命令を発するいとまがなければ,知事は行政代執行法の特則である19条の8第1項4号により,先行命令なしに自ら撤去・防護等を行える。
単なる命令不履行の場合とは区別する。
費用はC社に負担させ得る(同条2項)。
B社も19条の6第1項各号を満たすときは,相当な範囲で全部又は一部の負担を命じ得る(19条の8第4項)。
徴収には行政代執行法5・6条が準用される(同条5項)。

3 設問1⑵

取消後のC社は処理業者ではなく,19条の3の改善命令を受ける地位にない。
この空白に対応した19条の10第2項3号は,19条の5を読み替えて準用する。
取消対象の産業廃棄物を処理基準に適合しない状態で保管していると認められれば足り,生活環境保全上の支障又はそのおそれは要しない。
知事は,基準に従った保管その他必要な措置を命じ得る。
効果も19条の5の支障除去命令と異なり,C社自身に無許可での処分を命ずるものではない。
本件では崩落危険も存在するため,19条の5第1項1号による支障除去命令も可能である。

4 設問2

(1)損害発生が明示されない以上,賠償よりも危険の予防と早期の除去を優先する。
DはC社に,土地建物の所有権に基づく妨害予防請求及び生命身体に関する人格権に基づく差止請求をし,撤去・防護措置を求め得る。
違法な野積みの悪質性,崩落の危険と被害の重大性,対策の可能性を考慮すれば,具体的な侵害危険が及ぶ住民に受忍を求めることはできない。
ただし,隣接するのは乙地区住宅地であり,D宅の直接隣接までは不明である。
D宅への到達可能性を検討し,所有物又は生命身体に危険が及ぶことを示す必要がある。
具体的措置を特定でき,抽象的差止めの可否を論じる必要はない。
急迫の危険又は著しい損害を避ける必要があれば,これらを被保全権利として仮の地位を定める仮処分を申し立てる(民事保全法13条2項,23条2項)。

(2)P県には,知事がB社に19条の6,C社に19条の5の命令をすることを求める非申請型義務付け訴訟が考えられる(行訴法3条6項1号,37条の2)。
A社に対する命令は,適法再委託等の与件だけでは根拠が足りない。
原告適格は,廃掃法1条及び措置命令の生活環境保全目的,守られる生命身体・財産利益の性質から判断する(37条の2第3・4項,9条2項)。
危険が及ぶ範囲の住民を個別的にも保護していると解され,その範囲にDが属すれば適格を有する。
崩落による生命身体・住居の被害は回復困難で,重大な損害のおそれもある。
他に適当な方法がないことも必要である。
C社への民事救済の実効性を経営悪化等から検討する。
本案では,危険の切迫性,知事の認識,処分者等の対応能力に照らし,命令しないことが裁量権の逸脱・濫用となるかを判断する(同条5項)。
さらに,C社の資力低下により命令だけでは除去できないなら,直接の救済となる行政代執行の義務付けも検討する。
19条の8による強制的な除去は公権力を行使する事実行為として処分に含まれると解し,37条の2の要件を検討する。
ただし,設問は独立しており,1⑴②の崩落開始を流用できない。
命令不履行等又は命令のいとまがない緊急性を本問の事情から示す必要がある。
緊急時は,本訴に加え,償えない損害を避ける緊急の必要,本案理由の見込み及び公共の福祉に重大な影響のおそれがないことを示し,仮の義務付けを求める(37条の5第1・3項)。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案1は番号1~12,答案2は番号13~15,答案3は番号16~19に対応する。
答案4の民事請求は番号20~26,P県への請求と射程は番号27~41に対応する。
番号30はA社への命令を当然に認容する項目ではなく,許可業者への適法再委託等の与件から命令根拠を吟味するための条件付き候補である。

(2) 措置命令・事業停止・緊急代執行の区別

番号4の事業停止は将来の事業を止める措置であり,番号5・6の既存危険の除去とは役割が違う。
B社に対しては,番号9~12のとおり,処分者等による除去の困難性と適正対価不負担等の双方が必要になる。
崩落前の危険でも通常の措置命令を検討し,現実の崩落と拡大兆候がある場合には,番号13・14の緊急性と命令のいとまのなさを別に判断する。

(3) 取消後の読替準用と効果

番号16~18の命令は,許可取消しによって改善命令の対象から外れた者に対する保管等の命令である。
生活環境上の支障のおそれを要しないことと,効果が適正保管その他必要な措置であることをセットで押さえる。
環境省の平成30年指針は,この命令が適正保管を担保するもので,自らの処分を求めるものではないと説明する。
本件のように危険も認められるときは,法19条の5の支障除去命令の経路が別に残る。

(4) 住民にとっての実効的な救済

番号23のとおり,乙地区住宅地の隣接とD宅の直接隣接は同じではない。
所有物や生命身体への具体的危険を個別に検討した上で,番号24の受忍限度等を論じる。
C社の資力等から命令だけで除去が進まない場合には,番号36・37の直接代執行の義務付けが真の救済へ近づく。
これらは原告適格,重大損害,補充性,本案勝訴要件と,廃掃法上の発動要件を別々に満たす必要がある。

(5) 答案の弱点と扱わなかった事項

数量・地形・D宅への到達可能性やC社の具体的資力は,問題文から確定できない。
答案では条件付き評価を用い,命令・差止め・直接代執行が必ず認められると一般化していない。
損害賠償や抽象的差止めを詳論せず,許可取消し自体の適否,設問1⑴で除外された特則にも分量を割いていない。
原因者負担原則等の理念は個別の条文要件と結び付けるために用い,理念だけで責任を決めない。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の別の模範解答

同年度の問題と各科目の構成は,法務省「令和3年司法試験問題」(https://www.moj.go.jp/jinji/shihoushiken/jinji08_00056.html)に掲載されている。

2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事

産業廃棄物処理業者から適正処理困難通知を受けたとき―排出事業者の調査・措置・報告と措置命令(AI作成)(https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/09/23/sanpai-tekisei-shori-konnan-tsuuchi/)
司法試験の過去問・参考答案一覧―令和元年~令和8年の年度別・科目別ガイド(AI作成)(https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/11/shihoushiken-kakomon-touan-index/)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

法務省「令和3年司法試験論文式試験問題・選択科目」(https://www.moj.go.jp/content/001348317.pdf)
PDF実頁32~33の環境法第2問及び資料。

法務省「令和3年司法試験論文式試験問題出題の趣旨」(https://www.moj.go.jp/content/001355370.pdf)
PDF実頁36の第2問見出し以後と37頁の環境法部分。

法務省「令和3年司法試験の採点実感(選択科目)」(https://www.moj.go.jp/content/001357782.pdf)
PDF実頁34の環境法共通方針・第2問概要,35頁の第2問見出し以後,36~38頁の関連部分。
同一PDFの別科目・第1問本文は本稿の根拠に用いていない。

2 法令

廃棄物の処理及び清掃に関する法律・令和2年4月1日施行版(https://laws.e-gov.go.jp/law/345AC0000000137/20200401_429AC0000000061)
行政事件訴訟法・平成29年4月1日施行版(https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000139/20170401_427AC0000000059)
民事保全法・令和2年4月1日施行版(https://laws.e-gov.go.jp/law/401AC0000000091/20200401_501AC0000000002)
民法・令和3年4月28日施行版(https://laws.e-gov.go.jp/law/129AC0000000089/20210428_503AC0000000024)

環境省「行政処分の指針について(通知)」平成30年3月30日(https://www.env.go.jp/content/900479531.pdf)
PDF実頁1,36~38の保管等命令に関する部分。
法令と行政解釈資料を区別して参照した。

3 裁判例

行政代執行の義務付けを検討すること自体は公式資料に明示されている。
本稿では,対応する裁判原文を独立確認した特定先例として引用せず,行訴法の処分概念と廃掃法の行政代執行制度から構成を示した。

4 確認状態

確認済み:問題本文,公式資料の上記範囲,試験日前の最新施行版として選択した法令及び平成30年指針の上記範囲。
公式資料の記載:何を論じることが期待されているかという記述。
独自分析:評価単位の原子化・重み,問題事実の当てはめ,採用した救済構成。
未確定:問題文に記載されないD宅の位置,具体的資力・損害,原文を独立確認していない裁判例の射程。