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令和6年司法試験環境法第1問の模範解答・評価項目―31項目と5段階の重み付け(AI作成)

令和6年司法試験・環境法第1問について,法務省の出題の趣旨・採点実感から独自に抽出した31の評価項目と,2,170字の模範解答を示す。重みは1~5の5段階である。

第1 この記事の対象と結論

対象は令和6年司法試験論文式試験・環境法第1問です。地域脱炭素化促進事業の認定・特例,排出量削減の情報的手法と排出量取引,地球温暖化に関する公害調停の対象範囲を扱います。評価項目は31項目,重み5は12項目であり,法務省の公式採点基準・配点ではありません。

設問1では事業計画の認定を通じた森林法・自然公園法・環境影響評価法の特例を,設問2では情報の公表とクレジット取引による削減誘因を,設問3では法定の公害と温暖化の機序の違いを説明します。模範解答は第5に掲載し,補足と別の構成の扱いは枠外で説明します。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一項目につき一つの判定対象を設け,答案に何を書けば満たすかを具体化しました。「必須」は本問の中核,「高評価」は総合的な充実,「負例」は誤りの回避,「許容分岐」は当該構成を採った場合の評価です。重みと区分は別であり,条件付き項目を全答案への累積要求にはしません。

根拠欄はPDFの物理頁と該当見出しを示します。「記載なし」は本問の関連範囲を実読した結果,「間接」は関連記述からの整理です。法令や判決だけで補った事項は,公式に独立項目として記載されたものと区別します。

2 5段階の重み付けの基準

5=採点実感が評価の分かれ目とした事項又は答案の骨格。
4=出題の趣旨が検討を求め,採点実感も具体的説明・評価・誤りの指摘を通じて取り上げた事項。
3=どちらか一方が明示する中核の理由付け。
2=一方が軽く触れる補強又は典型的な誤り。
1=一方が控えめに触れる事項。

本記事の重み4は「両資料が取り上げる」基準を採用しており,全項目を公式が高く評価したという意味ではありません。件数の割当てや旧方式からの一律換算はしていません。重み合計は記事独自の整理値です。

第3 本問の概要

甲社は,A県B町のC国定公園の普通地域にある所有地で,出力6万キロワットの風力発電事業を計画しています。土地は地域森林計画の対象民有林で,施設整備には森林法上の開発許可,自然公園法上の届出,電気事業法上の工事計画認可が必要です。B町は計画策定市町村で,設置予定地を促進区域に指定しています。地方公共団体実行計画協議会は組織されていません。

設問1は甲社の認定申請手続と規制緩和,設問2は特定排出者への情報的手法及び地方公共団体の排出量取引,設問3は企業の二酸化炭素排出抑制を求める公害調停が対象外となる理由を問います。取消訴訟の一般的訴訟要件や気候訴訟のあらゆる救済の成否を論ずる問題ではありません。

第4 評価項目と重み

1 設問1⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1風力が再生可能エネルギーであることを本件施設に結び付ける。
区分:必須
4PDF33頁・設問1⑴。明示。「風力発電事業」PDF32頁・採点方針又は第1問⑴。明示。「風力が再生可能エネルギー」
2省令2条1号の再生可能エネルギー発電施設に該当すると説明する。
区分:必須
4PDF33頁・設問1⑴。明示。「省令の第2条第1号」PDF32頁・採点方針又は第1問⑴。明示。「省令第2条第1号」
3温対法2条6項の地域脱炭素化促進事業として位置付ける。
区分:必須
4PDF33頁・設問1⑴。明示。「温対法第2条第6項」PDF32頁・採点方針又は第1問⑴。明示。「温対法第2条第6項」
4事業計画を作成し,温対法22条の2第1項に基づき認定を申請する。
区分:必須
5PDF33頁・設問1⑴。明示。「認定申請」PDF32頁・採点方針又は第1問⑴。明示。「地域脱炭素化促進事業計画を作成」
5申請先を計画策定市町村であるB町(町長)と特定する。
区分:必須
4PDF33頁・設問1⑴。明示。「B町長」PDF32頁・採点方針又は第1問⑴。明示。「計画策定市町村」

2 設問1⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
622条の2第3項の認定と認定計画に従う行為を特例の前提とする。
区分:必須
5PDF33頁・設問1⑵。明示。「認定地域脱炭」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「当該認定地域脱炭素化促進事業計画に従って」
7森林法10条の2第1項の開発許可という本来の規制を示す。
区分:必須
4PDF33頁・設問1⑵。明示。「森林法」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「森林法第10条の2第1項」
8温対法22条の6第1項により開発許可があったものとみなされると示す。
区分:必須
5PDF33頁・設問1⑵。明示。「みなし許可」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「温対法第22条の6第1項」
9普通地域の自然公園法33条1項の届出という本来の規制を示す。
区分:必須
4PDF33頁・設問1⑵。明示。「自然公園法」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「自然公園法第33条第1項」
10温対法22条の8第2項により自然公園法の関係規定が不適用になると示す。
区分:必須
5PDF33頁・設問1⑵。明示。「関係規定の不適用」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「温対法第22条の8第2項」
11出力6万kWを資料の閾値に当てはめ第一種事業と判定する。
区分:必須
5PDF33頁・設問1⑵。間接(関連記述を法源・与件で具体化)。「環境影響評価法」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「第1種事業に該当」
12温対法22条の11により計画段階配慮手続が適用除外されると示す。
区分:必須
5PDF33頁・設問1⑵。間接(関連記述を法源・与件で具体化)。「特例措置」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「計画段階配慮手続」

3 設問2⑴

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
13特定排出者の算定排出量報告義務を温対法26条に結び付ける。
区分:必須
5PDF33頁・設問2⑴。明示。「温対法第26条」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「温対法第26条」
14報告された事項が温対法29条により公表されると示す。
区分:必須
4PDF33頁・設問2⑴。明示。「報告事項の公表」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「報告された事項を公表」
15情報を用いる手続的誘導を実体的基準の遵守を強制する伝統的規制と比較する。
区分:必須
5PDF33頁・設問2⑴。明示。「手続的アプロー」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「伝統的な規制手法との対比」
16市場による評価を介して一層の排出削減を誘導する効果を説明する。
区分:必須
4PDF33頁・設問2⑴。明示。「排出抑制状況を市場に評価」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「一層の排」

4 設問2⑵

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
17東京都条例を例に事業者への二酸化炭素排出量の削減義務を示す。
区分:必須
4PDF33頁・設問2⑵。明示。「削減を義務付ける」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「削減を義務付ける」
18クレジット購入により削減義務を履行できると説明する。
区分:必須
5PDF34頁・設問2⑵。明示。「クレジットの購入」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「クレジットの購入」
19義務量を超える削減をクレジット化できると説明する。
区分:必須
4PDF34頁・設問2⑵。明示。「義務量以上の削減」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「義務量以上の削減」
20クレジット化により義務達成後も継続的な削減誘因が働くと説明する。
区分:必須
4PDF34頁・設問2⑵。明示。「継続的な削減イン」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「継続的な削減インセンティブ」
21排出量取引の経済的手法を自力での基準達成を強制する従来規制と比較する。
区分:必須
5PDF34頁・設問2⑵。明示。「伝統的な規制手法と対比」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「経済的手法の特徴」

5 設問3

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
22公害紛争処理法2条から環境基本法2条3項への定義の接続を示す。
区分:必須
4PDF34頁・設問3。明示。「公害紛争処理法」PDF33頁・第1問⑴・⑵。明示。「「公害」の定義」
23相当範囲の大気汚染等による健康・生活環境被害という公害の定義を示す。
区分:必須
5PDF34頁・設問3。明示。「公害に該当しない」PDF34頁・第1問・各水準の答案。明示。「「公害」の定義を示しつつ」
24温暖化を地球環境保全と位置付け,従来の公害対策との制度的相違を説明する。
区分:必須
4PDF34頁・設問3。間接(関連記述を法源・与件で具体化)。「地球温暖化の問題」PDF33頁・第1問⑴・⑵。間接(定義・制度比較の記述)。「制度の経緯とその特徴」
25本件CO2大量排出による温暖化が法定の大気汚染に該当しない理由を示す。
区分:必須
5PDF34頁・設問3。明示。「「大気の汚染」ではない」PDF34頁・第1問・各水準の答案。明示。「論理的に説明」
26公害被害に係る民事紛争という調停の対象要件に該当しないと説明する。
区分:必須
4PDF34頁・設問3。間接(関連記述を法源・与件で具体化)。「調停」PDF33頁・第1問⑴・⑵。間接(定義・制度比較の記述)。「公害紛争処理法」

6 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
27適用条項の誤記・取り違えを避ける。
区分:負例
2記載なし(第1問関連範囲実読)PDF32頁・採点方針又は第1問⑴。明示。「適用条項の指摘」
28配付資料を具体的な法解釈・適用に用いる。
区分:必須
3記載なし(第1問関連範囲実読)PDF32頁・採点方針又は第1問⑴。明示。「与えられた資料を丁寧に読み解いて」
29規範から事実評価・効果への説明に論理的な飛躍を残さない。
区分:必須
3記載なし(第1問関連範囲実読)PDF32頁・採点方針又は第1問⑴。明示。「論理的に記述」
30複数の考え方がある部分で特定結論との一致だけを評価せず筋の通った構成を認める。
区分:許容分岐
条件:問題の当該部分に複数構成を示す場合。単一構成答案に累積要求しない。
3記載なし(第1問関連範囲実読)PDF32頁・採点方針又は第1問⑴。明示。「筋の通っ」
31各設問の中核事項をバランスよく記載する。
区分:高評価
3記載なし(第1問関連範囲実読)PDF34頁・第1問・各水準の答案。明示。「バランスの良い記載」

7 重みの分布

重み5:12項目/4:14項目/3:4項目/2:1項目/1:0項目。総項目数N=31,重み合計W=130です。

重み5の全12項目は次のとおりです。これらは本問の主ルートを示す項目で,表の通し番号から確認できます。

  • 番号4:事業計画を作成し,温対法22条の2第1項に基づき認定を申請する。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:申請手続そのものが小問の骨格。
  • 番号6:22条の2第3項の認定と認定計画に従う行為を特例の前提とする。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:認定と特例の架橋が答案の骨格。
  • 番号8:温対法22条の6第1項により開発許可があったものとみなされると示す。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:許可擬制の直接効果が骨格。
  • 番号10:温対法22条の8第2項により自然公園法の関係規定が不適用になると示す。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:不適用の法的効果が骨格。
  • 番号11:出力6万kWを資料の閾値に当てはめ第一種事業と判定する。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:数値と環境影響評価法の入口が骨格。
  • 番号12:温対法22条の11により計画段階配慮手続が適用除外されると示す。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:免除する段階の限定が骨格。
  • 番号13:特定排出者の算定排出量報告義務を温対法26条に結び付ける。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:情報制度の法定義務が骨格。
  • 番号15:情報を用いる手続的誘導を実体的基準の遵守を強制する伝統的規制と比較する。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:比較軸が小問の骨格。
  • 番号18:クレジット購入により削減義務を履行できると説明する。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:自力遵守からの変更が制度の骨格・評価の分かれ目。
  • 番号21:排出量取引の経済的手法を自力での基準達成を強制する従来規制と比較する。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:比較と制度変化が採点実感の評価の分かれ目。
  • 番号23:相当範囲の大気汚染等による健康・生活環境被害という公害の定義を示す。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:対象範囲判断の法的骨格。
  • 番号25:本件CO2大量排出による温暖化が法定の大気汚染に該当しない理由を示す。 適用条件:当該設問を説明する答案。位置付け:定義を当てはめる理由が優秀答案の骨格。

一般的な指摘:設問ごとに読みやすく改行し,条文・規範・事実・効果をつなぐ。補足(公式に独立項目として記載なし):協議会不存在と県知事同意の区別,森林審議会の意見聴取,県基準の存在条件,自然公園法33条2項の不適用,アセス全体と工事認可の維持,情報誘因の限界及び費用効率は法令・一次資料を踏まえた補足です。これらには独立の重みを付していません。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

選択科目の試験日は令和6年7月10日です。法令は公式の出題法令基準に従い,原則として令和6年1月1日施行法を用い,判例は試験日前のものを参照しています。以下の答案は空白・改行を除き2,170字で,1問2,500字の目安以内です。番号は「1→(1)→ア」の順とし,「以上」までが答案本文です。

2 答案

1 設問1

(1)甲社は,温対法22条の2第1項に基づき地域脱炭素化促進事業計画を作成し,計画策定市町村であるB町に認定を申請することが考えられる。

風力は再生可能エネルギーであり,風力発電施設は温対法2条6項及び資料の省令2条1号の地域脱炭素化促進施設に当たる。ただし,施設整備だけでなく,地域の脱炭素化のための取組を一体的に行い,地域の環境保全並びに経済及び社会の持続的発展に資する取組を併せて行う事業とする必要がある。計画には,目標・期間,施設の種類・規模,土地,資金及びこれらの取組等を記載する(22条の2第2項)。

B町の実行計画に適合し,事業が円滑かつ確実に実施される見込みがあること等が認定要件である(同条3項)。促進区域内であることを踏まえ,町の計画で定めた条件を満たす計画にする。協議会が組織されていないので,協議会の協議を経る必要はない。もっとも,認定に必要な行政機関との協議・同意は別問題である。

(2)ア 森林法10条の2第1項の許可を要する開発行為及び国定公園の普通地域における自然公園法33条1項の届出対象行為なので,B町は認定前にA県知事に協議し,同意を得る必要がある(温対法22条の2第4項2号・6号)。森林法関係では,許可要件を満たすと認める場合に知事が同意し,その前に都道府県森林審議会の意見を聴く(同条5項2号,11項2号)。したがって,認定制度は環境保全の実体的審査を全面的に免除するものではない。

認定を受け,認定計画に従って対象民有林で施設整備を行う場合,森林法の開発許可があったものとみなされる(22条の6第1項)。また,国定公園内で認定計画に従って整備する場合,自然公園法33条1項の届出及び同条2項の措置命令の規定が適用されない(22条の8第2項)。普通地域の届出を「許可があったものとみなす」とするのではない。これにより関係手続が一括化される。

イ 出力6万キロワットは資料の5万キロワット以上の基準を満たし,環境影響評価法の第一種事業に当たる。認定事業者が認定計画に従って施設を整備し,かつ,A県が温対法21条6項の基準を定めている場合,同法22条の11により環境影響評価法第2章第1節の計画段階配慮事項に係る手続が適用されない。促進区域の設定・計画認定で環境保全に配慮する仕組みがあるためである。ただし,県の基準の有無は与件だけでは確定できず,特例は条件付きである。方法書以下の環境影響評価手続全体が免除されるわけではない。電気事業法47条1項の工事計画の認可も,温対法の認定によって当然に代替されない。

2 設問2

(1)温対法は,特定排出者に排出量を算定させ,毎年度事業所管大臣に報告する義務を課し(26条),環境大臣・経済産業大臣が通知された事項を記録・公表する仕組みを採用する(28・29条)。これは情報的手法である。削減量や削減技術を行政が命じ,違反を制裁で抑止する直接規制と異なり,情報の開示を通じて自主的な削減を促す。算定・報告は法的義務だが,個別の排出量削減自体を直接強制する制度ではない。

排出量の把握により事業者が対策の立案と効果の検証を行える。公表により他者との比較が可能になり,消費者・投資家等の評価や社会的圧力が削減の誘因となる。国民の理解・取組の気運も高められる。事業者が事情に応じた手段を選択できる反面,情報への反応に依存するため,一定量の削減が必ず達成される保証はない。

(2)東京都等が採用する総量削減義務と排出量取引制度,すなわちキャップ・アンド・トレードである。対象事業者に排出量の削減義務を設定し,自力での削減が困難な場合はクレジットの購入による義務履行を認める。義務量を超えて削減した部分はクレジット化して売却できるため,義務達成後も継続的に削減する誘因が働く。削減義務は直接に課す一方,各事業者が自ら削減するか他者の削減量を取得するかを選べる点で,一律の基準遵守だけを求める規制を修正している。削減費用の低い者が多く削減し,高い者が購入することで,所定の削減を全体としてより少ない費用で達成することが期待される。義務・上限の設定という規制的手法と,価格を通じた経済的誘因とを組み合わせた仕組みである。

3 設問3

公害紛争処理法26条1項の調停は,公害に係る被害についての民事上の紛争を対象とする。同法2条が引用する環境基本法2条3項の公害は,事業活動等に伴う相当範囲の大気汚染等の典型7公害により,人の健康又は生活環境に被害が生ずることをいう。

他方,地球全体の温暖化に係る環境保全は,同条2項の地球環境保全に位置付けられる。国際協調と社会全体の取組を要する問題であり,従来の地域的な公害対策に係る制度・規律は維持しつつ,別の施策体系で対応する趣旨である。

二酸化炭素の排出が人の健康や生活環境を害する大気汚染に当然に当たるとはいえない。本件で問題となるのは,排出物質の影響が及ぶ相当範囲で大気の状態を悪化させるという機序ではなく,地球全体での二酸化炭素濃度の変化を介した温暖化である。したがって,大気汚染等の法定の公害による被害についての紛争に該当せず,調停の対象とならない。地球温暖化の被害の重要性を否定するものでも,あらゆる民事的救済が不可能と判断するものでもない。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1)答案と評価項目の対応

答案1(1)は番号1~5,1(2)アは6~10,1(2)イは11・12,答案2(1)は13~16,2(2)は17~21,答案3は22~26に対応します。番号27・28・29・31は答案全体で確認します。番号30は競合構成を実際に採用する場面の条件付き方針であり,本答案に複数説を追加することを求めません。

(2)認定と三つの特例

番号8の許可擬制と番号10の規定不適用を区別します。本件は国定公園の普通地域であるため,自然公園法20条の特別地域の許可ではありません。協議会がないことは,県知事との協議・同意まで不要にするものではありません。番号12の特例は配慮書段階に限られ,方法書以下の手続全体の免除ではありません。A県の基準の存在は問題文だけでは不明なので,条件付きで説明します。

環境省の試験前手引きは,大規模な発電事業の早期計画段階では配慮書特例のための認定と,評価書確定後の変更認定で申請するワンストップ特例とを分ける運用を示しています。本答案の特例説明は認定計画遵守を前提とする法定効果の整理です。工事認可や残るアセス手続を先取りして免除する趣旨ではありません。

(3)情報と排出量取引の誘因

番号15・16では,情報の報告が義務であることと削減そのものを直接強制しないことを分けます。番号18・21では,自ら基準を達成することだけを強制する規制と,クレジットを買うことによる履行を比較します。番号19・20は売手の立場です。義務量を超える削減を売却できるから,義務達成後も削減誘因が続くという接続を落とさないことが大切です。

(4)公害調停の射程

番号23・25は,環境問題一般と法定の公害の範囲を分ける項目です。東京地裁平成26年9月10日判決の裁判所判断を踏まえ,地球全体の濃度変化を介する温暖化の機序と,大気汚染等の法定概念とを比較します。単に二酸化炭素が無毒であるからとする説明や,地球環境保全に分類されるものはすべて公害になり得ないという一般化にはしません。

(5)答案の弱点と扱わなかった事項

県知事同意や森林審議会などは制度理解の補足であり,限られた時間には評価表の中核事項を先に書くことが適切です。情報的手法の限界や費用効率にも独立の公式配点はありません。採点実感は,複数の考え方がある部分では特定結論との一致よりも筋の通った記述を重視すると述べています。本記事も理由付けの一貫性を評価します。気候訴訟の差止め・損害賠償全般の可否は扱っていません。

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第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①令和6年司法試験論文式試験問題・選択科目:PDF30~33頁(環境法第1問・資料)。
②令和6年司法試験論文式試験問題出題趣旨:PDF33頁の環境法第1問開始から34頁の第2問開始直前。
③令和6年司法試験の採点実感・選択科目:PDF32頁の環境法総論と第1問,33頁,34頁の第2問開始直前,37頁の今後の出題・教育に関する総論。第2問の内容は本記事の評価項目へ使用していません。
④令和6年司法試験の実施について:出題法令の基準日。

2 法令

①地球温暖化対策の推進に関する法律(令和5年4月1日施行版):2条,21条,22条~22条の11,26~29条等。
②環境基本法(令和3年9月1日施行版):2条及び地球環境保全に関する規定。
③森林法・自然公園法・電気事業法・環境影響評価法施行令・公害紛争処理法は問題資料及び特例の参照条項を照合しました。
④環境省・地域脱炭素化促進事業のFAQ(令和5年1月20日):問30。
⑤環境省・地方公共団体実行計画策定・実施マニュアル(地域脱炭素化促進事業編,令和6年4月):PDF196頁(本文185頁)の特例運用。
⑥東京都環境局・総量削減義務と排出量取引制度の概要:試験前から存在する制度の沿革・基本構造。後発の制度改正は本答案に取り込んでいません。

3 裁判例

東京地裁平成26年9月10日判決(平成24年(行ウ)第322号等,各生活環境被害調停申請却下決定取消請求事件):PDF1~3頁と61~66頁の裁判所判断を確認しました。公害の対象範囲に関する理由と,一部の原告適格に関する訴え却下の理由は区別しています。

4 確認状態

問題文,旧版法令及び判決の上記範囲は原文を確認しました。公式資料の記述と,そこから独自に整理した評価項目・重み・答案は区別しています。A県の促進区域設定基準が実際に定められているかは問題文から確定できず,アセス特例の説明は条件付きです。実際の事業計画の認定要件充足も設問から確定できません。評価項目は法務省の公式採点基準・項目別配点又は得点予測ではありません。