第1 この記事の対象
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科目別のリンクから個別記事へ進み,問題文の設問に対応する評価項目,答案,解説及び出典を確認する。別年度との比較や他の科目を探すときは,司法試験の過去問・参考答案一覧を参照されたい。試験制度と受験資格は,司法試験とはで説明している。
本記事は,令和6年司法試験の論文式試験のうち,選択科目を除く主要7科目(憲法,行政法,民法,商法,民事訴訟法,刑法及び刑事訴訟法)の7問について,山中弁護士ブログに掲載した模範解答の記事7本を一覧にして案内するものである。
7本の記事は,いずれも法務省が公表した「出題の趣旨」及び「採点実感」から答案の評価項目を抽出し,令和7年度の記事と同じ5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答と,出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説を示している。
7本で抽出した評価項目は合計350項目であり,そのうち重み5(答案の骨格又は採点実感が評価の分かれ目とした事項)に当たるのは61項目である。
第2の一覧表で科目ごとの記事を選び,第3で各問題の概要と重み5の事項を確かめてから個別の記事を読むと,どこで答案の差がついたのかをつかみやすい。
選択科目の論文式試験と短答式試験は,本記事の対象としていない。
本記事の記載は,令和8年10月4日時点で公開している7本の記事の内容に基づく。
第2 7記事の一覧
| 科目 | 主な論点 | 評価項目 | 重み5 |
|---|---|---|---|
| 公法系科目第1問(憲法) | 犬猫の販売業の免許制と職業の自由,犬猫の販売の広告でのイラスト・写真・動画の禁止と表現の自由 | 40項目 | 4項目 |
| 公法系科目第2問(行政法) | 市街地再開発事業の事業計画の変更の認可の処分性,「軽微な変更」と都市計画基準による違法性,権利変換処分の取消訴訟における違法性の承継 | 52項目 | 4項目 |
| 民事系科目第1問(民法) | 他人物賃貸借と所有者による相続,留置権の牽連関係,雨漏りによる賃料の減額と必要費の償還,錯誤取消しと民法95条4項の第三者 | 60項目 | 6項目 |
| 民事系科目第2問(商法) | 少数株主が招集する株主総会と監査役による差止め,賛成株主への商品券の贈呈と利益供与,株式の併合による締出しと著しく不当な決議 | 64項目 | 11項目 |
| 民事系科目第3問(民事訴訟法) | 明文なき任意的訴訟担当,弁論準備手続期日の自由な議論での陳述と裁判上の自白,判決確定後の解除権の行使と既判力による遮断 | 55項目 | 9項目 |
| 刑事系科目第1問(刑法) | 暴行後に生じた財物奪取の意思と強盗罪,暗証番号を聞き出す行為と財産上の利益,誤った暗証番号の入力と不能犯,正当防衛の判断の基準者と違法性の相対性 | 51項目 | 14項目 |
| 刑事系科目第2問(刑事訴訟法) | 所持品検査の限界と派生証拠である鑑定書の証拠能力,ビデオ撮影の強制処分該当性と任意処分の限界 | 28項目 | 5項目 |
評価項目の数には,採点実感が誤り又は不十分な答案として挙げた記述から作った「〜しない」の形の項目を含む。
評価項目の数と重みは,各記事が公式資料の書きぶりから付けたものであり,法務省の配点ではない。
第3 各問題の概要と重み5の事項
1 公法系科目第1問(憲法)
本問は,犬又は猫(以下「犬猫」という。)の販売業について,免許制を導入する規制①と,犬猫の販売の広告でイラスト,写真及び動画の使用を禁止する規制②を内容とする架空の法案骨子について,議員連盟から相談を受けた法律家の立場で,その憲法適合性を論じさせるものである。
重み5は4項目である。
番号2:規制①が狭義の職業選択の自由の制限か職業遂行の自由の制限かを検討している
番号10:許可制(免許制)それ自体ではなく,許可要件(第2の1〜3)ごとに憲法適合性を検討している
番号19:第2の2(需給均衡)・3(収容能力)を客観的制限としてより厳密な審査で検討している(より緩やかな手段の有無等)
番号29:真実で誤解を生まない合法的活動の表現について,規制利益が実質的で,規制がその利益を直接促進し,必要以上に広汎でないことを求める基準(又は同等の中間審査)を設定している【適用条件】この基準又は同等の審査を、営利的表現の特性に照らして理由を示して採る場合。特定の定式の暗唱を必須としない。
記事:令和6年度司法試験公法系第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した40項目と5段階の重み付け
2 公法系科目第2問(行政法)
本問は,都市再開発法に基づく組合施行の第一種市街地再開発事業について,隣接市の法制課訟務係長(弁護士)の立場から,事業計画の変更の認可の処分性(設問1⑴),その違法性(設問1⑵)及び後行の権利変換処分の取消訴訟における違法性の承継(設問2)を検討させるものである。
配点の割合は,設問1⑴,設問1⑵及び設問2の順に35:35:30である。
重み5は4項目である。
番号8:事業計画変更認可は④で成立した権利・法的地位を直接的に変動させる直接的(個別具体的)法的効果を持つ(記載事項→当初認可の効果→変更認可による変化の順)
番号20:本件変更は施行地区の変更を含み、施行令4条1項各号に施行地区の変更は列挙されていないので「軽微な変更」に当たらない(1号非該当。施行地区と設計の概要は並列する別個の概念=法7条の11第1項)
番号36:両観点について否定論拠と肯定論拠を挙げた上で、Dの立場から承継肯定の立論と結論【適用条件】設問指定に従い、両観点で組合の反論を検討しDの立場から承継肯定を導く。肯否を自由に選択する設問として扱わない。
番号44:手続法的観点の肯定論拠:権利侵害の重大性と比較すると、利害関係人への手続保障は後行処分段階での先行処分の違法主張を排除するに十分でない
記事:令和6年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した52項目と5段階の重み付け
3 民事系科目第1問(民法)
本問は,他人の土地を自己の名で賃貸した者を所有者が相続した場合の賃借人の占有権原と留置権(設問1⑴),賃貸建物の一室が雨漏りで使えなくなった場合の賃料の減額と,賃借人が自ら業者に修繕させた費用の償還(設問1⑵),並びに離婚に伴う財産分与として譲渡された土地の錯誤取消しと転得者の保護(設問2)を問うものである。
配点の割合は,設問1及び設問2の順に50:50である。
重み5は6項目である。
番号3:最大判昭和49年9月4日を踏まえ,所有者の地位と賃貸人の地位が融合せず併存し,特別の事情がない限り履行を拒めるとする【適用条件】特別の事情がないことを前提として履行拒絶を認める。地位併存と相続債務の負担をともに説明する。
番号18:最判昭和51年6月17日を踏まえ,他人物賃貸人は返還を請求し得る関係になく,返還拒絶による間接強制の関係が生じないとして牽連関係を否定する
番号31:607条の2の趣旨(賃借人の修繕を賃貸人に対する債務不履行・不法行為でなくする)と608条1項との非接続から,修繕権がなくても必要費償還請求権が成立し得ることを論ずる【適用条件】607条の2を修繕行為の違法性を除く規定と捉える構成の場合。34の自修繕利益保護説も許容される。
番号50:Iが未登記であることについて,95条4項の保護を受けるための権利保護資格要件としての登記の要否を論点として取り上げ,最判昭和49年9月26日を参照して結論を示す【適用条件】権利保護資格要件としての登記の要否を検討することが中心。必要・不要いずれも説得的理由を要する。
番号54:95条4項で保護される場合の所有権移転の経路(G→I直接か,G→H→I順次か)に遡って,IとFの関係の構成を根拠付ける【適用条件】同上。直接移転・順次移転のいずれでも経路と結論の整合性を示す。
番号55:(別構成(1-1))Hの登記によりHが確定的に所有権を取得しFは無権利となるとし,根拠として登記名義人でないGと契約したFは保護に値しないことを挙げる【適用条件】順次移転し、Hの登記によってHの取得が確定しFを無権利とする構成の場合。他の構成に同じ結論を必須としない。
記事:令和6年度司法試験民事系第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した60項目と5段階の重み付け
4 民事系科目第2問(商法)
本問は,筆頭株主が裁判所の許可を得て招集した臨時株主総会において,議案に賛成した株主に商品券を贈呈すると約束した事案(設問1)と,公開会社でない株式会社が,再建を支援してくれた株主だけを株式の併合で締め出した事案(設問2)について,監査役,反対株主及び締め出された株主がそれぞれ会社法上どのような手段を採り得るかを問うものである。
重み5は11項目である。
番号1:385条1項は取締役の行為を対象とするため、少数株主が裁判所の許可を得て招集する株主総会にそのまま(直接)適用できないことを指摘している
番号2:385条1項の適用又は類推適用の可否を検討している
番号6:否定方向の論拠として、少数株主と取締役とでは立場が異なることを指摘している【適用条件】類推否定の立場を採る場合。肯定説も理由付きで許容される。
番号7:否定方向の論拠として、会社は自ら招集できたのにしなかったのだから、差し止められず事後の取消訴訟で対応することになってもやむを得ないことを指摘している【適用条件】同上。訴えによる事後救済に委ねることの当否を検討する。
番号10:385条1項とは別の被保全権利(監査役の少数株主に対する妨害排除請求権、取消訴訟を本案とする仮処分)に基づく仮の地位を定める仮処分を、権利の存在又は本案の決議不存在の問題まで説得的に検討している【適用条件】385条とは別の被保全権利による仮処分を構成する場合。権利の存在及び本案の対象が存在しなくなる問題を説得的に処理する。
番号21:120条1項が「株式会社」による「当該株式会社又はその子会社の計算においてする」利益供与を禁止し、少数株主が自らの負担で行う行為を直接の対象としないことを指摘している
番号24:120条の主張が採用されない可能性に配慮して、決議の方法が「著しく不公正」(831条1項1号)との主張も立てている
番号33:少数株主が自己の資金で他の株主の議決権行使に影響を与えても、それだけでは『著しく不公正』とはいえないとする見解について、当該総会の会社自身による働き掛けとの違い及び理論的根拠を示し、本件での当否を検討する。【適用条件】少数株主の自己資金による働き掛けを広く許容する見解を採る場合。理論的根拠と本問での当否を示す。
番号42:株式併合は828条の無効の訴えの対象でないため、株式併合の株主総会決議(180条2項)の効力を否定して株式併合の無効を主張すべきことを示している【適用条件】決議の取消し又は無効確認から併合の無効を主張する構成の場合。828条類推の別構成を46で許容する。
番号48:「著しく不当な決議」又は「決議の内容が法令に違反する」といえる場合について自分なりの基準を立て、その理論的根拠を示している
番号49:公開会社でない株式会社では少数株主の利益が株式の金銭的価値に尽きないことに着目し(例:株式併合に正当な事業目的を要求する)、本設問の特質を捉える一般論を立てている【適用条件】非公開会社の少数株主利益に着目する。正当事業目的を要求する立場は例示であり、目的制限を認めない見解も理由付きで許容される。
記事:令和6年度司法試験民事系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した64項目と5段階の重み付け
5 民事系科目第3問(民事訴訟法)
本問は,共同相続により建物の賃貸人の地位を承継したX1,X2及びX3が,賃料不払を理由に賃貸借契約を解除して賃借人Yに建物の明渡しを求める事案を題材に,明文なき任意的訴訟担当(設問1),弁論準備手続期日の自由な議論の中でされた陳述と裁判上の自白(設問2),及び請求棄却判決の確定後の解除権の行使と既判力による遮断(設問3)を問うものである。
配点の割合は,設問1から設問3まで35:35:30である。
重み5は9項目である。
番号5:明文なく許容される要件として,訴訟担当を認める合理的必要があること(合理的必要性)を示す
番号9:非潜脱要件の当てはめで,判例が潜脱なしとした要素(訴訟追行権だけでなく実体上の管理権も併せ有すること)に言及し,本件のX1への授権に同様の事実があるかを検討する
番号24:自白のどの要件を欠くのか(又は撤回の既存の枠組みのどこに位置付けるのか)を明らかにし,自由な議論の予定から一足飛びに結論しない
番号25:(許容される別の構成)意思表明説に立ち,争わない旨の意思の表明又は不利益性の認識がなかったとして自白の成立要件を欠くと構成する【適用条件】意思表明説から自白不成立を構成する場合。26〜28と同時の採用を必須としない。
番号26:(許容される別の構成)同期日の発言を自白と扱わない,又は撤回を自由とする事前の黙示的合意があったと構成する【適用条件】自白として扱わない合意又は撤回を自由とする合意から構成する場合。どの合意を認めるかを明示する。
番号28:(許容される別の構成)事実一致説に立ちつつ,先行自白の不意打ちの危険から相手方主張との一致がないとする【適用条件】事実一致説に立って、先行自白の危険に照らし一致を欠くと構成する場合。
番号44:遮断を否定するアプローチとして期待可能性説(前訴での主張立証がおよそ期待できなかった事実には遮断効が生じない)を挙げる【適用条件】遮断を否定するアプローチ又は反対説として期待可能性説を検討する。採用を唯一の正解としない。
番号46:自己の立場(期待可能性説を採る場合)について判断基準を定立し,説得的に展開する(例外を認めない場合は事実から遮断相当の根拠を丁寧に示す)【適用条件】期待可能性説を採るなら基準と当てはめを示す。例外を認めないなら制度的効力に照らした理由と事実評価を示す。
番号50:「基準時後の形成権行使の可否」(請求権に内在・付着する瑕疵か否か)の観点から遮断の可否を論じたり,反対説としてその趣旨で言及したりしない
記事:令和6年度司法試験民事系第3問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した55項目と5段階の重み付け
6 刑事系科目第1問(刑法)
本問は,【事例1】で甲及び乙の罪責(暴行後に生じた財物奪取の意思と強盗罪,キャッシュカードの暗証番号を聞き出す行為と「財産上不法の利益」,誤った暗証番号を入力した行為と不能犯)を問い,【事例2】で丙に正当防衛が成立することを前提に,幇助犯である丁と共謀共同正犯である甲の罪責を,正当防衛の判断の基準者と違法性の相対性という観点から整合的に説明させるものである。
重み5は14項目である。
番号R5:自ら作出した反抗抑圧状態を利用して財物を奪取した場合に強盗罪が成立するかを問題として示している
番号R6:新たな暴行・脅迫の要否・程度について、反対の考え方(不要説等)を意識しつつ自説の論拠を明らかにして規範を定立している
番号R7:新たな暴行・脅迫必要説(東京高裁昭和48年3月26日判決等)に立ち、その内容・程度を反抗抑圧状態を維持・継続させるもので足りるとする等の規範を示している(現場存在説・不要説も許容)【適用条件】新たな暴行・脅迫必要説を採る場合の例示。現場存在説・不要説又は必要説から強盗を否定する構成も、理由と事実評価を伴えば排除しない。
番号R11:維持継続説に立つ場合に、新たな脅迫の該当性を「この財布はもらっておくよ」の行為について検討し、財物奪取の意思を生じる前の「持っているものを見せろ」を新たな脅迫として検討していない【適用条件】維持継続説を採る場合。『持っているものを見せろ』は奪取意思発生前の発言である。
番号R18:キャッシュカードと暗証番号を併せ持つことで事実上ATMを通して預貯金の払戻しを受け得る地位という、財物の取得と同視できる程度に具体的かつ現実的な財産的利益を得るとする考え方(東京高裁平成21年11月16日判決)を示している【適用条件】財産上の利益を肯定する構成の場合。否定説を採る場合は19・22につなぐ。
番号R23:乙は既に本件カードを所持しており、本件カードを客体とする奪取罪を検討していない
番号R26:入力した数字が暗証番号と異なり事後的・客観的には引出し不能であった事情を指摘し、未遂犯か不能犯かを問題として示している
番号R27:未遂犯と不能犯の区別基準として、具体的危険説(行為時に一般人が認識し得た事情及び行為者が特に認識していた事情を基礎に一般人の立場から判断)又は修正された客観的危険説(仮定的事実の存在可能性)等の規範を示している
番号R37:誰を基準として正当防衛の成立要件を判断するかについて、結論と論拠を示している(例:幇助犯による対抗行為を観念できないので正犯基準、共同正犯は各人基準又は実行者基準)
番号R38:違法性の判断が共犯者間で異なることがあるかについて、結論と論拠を示している(制限従属性による連帯、最小従属性を前提とする相対化、人的違法要素等)
番号R39:幇助犯の成否について反対の考え方(最小従属性を前提に、背後者が不必要に緊急状況を作出した場合などは違法性阻却の効果を援用できないとする考え方等)を意識しつつ自説の論拠を示している
番号R40:援用不可の考え方に立つ場合、丁が不必要に緊急状況を作出したとは認められないことを当てはめている【適用条件】正犯の違法性阻却の効果の援用を一定の場合に認めない構成を採る場合。
番号R45:反対の考え方(現実に対抗行為を行った実行行為者を基準とし、違法性阻却の効果は背後者に連帯的に及ぶが、背後者が不必要に緊急状況を作出した場合は援用できない)を意識している【適用条件】反対説の検討は必要。ただし自説が実行者基準の場合は、反対説と自説の役割を入れ替えて説明。
番号R48:丁についての説明と甲についての説明の整合性に触れている
記事:令和6年度司法試験刑事系第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した51項目と5段階の重み付け
7 刑事系科目第2問(刑事訴訟法)
本問は,覚醒剤の密売拠点と疑われるアパートの捜査を素材として,〔設問1〕で,職務質問に伴う所持品検査に続いて捜索差押許可状により差し押さえられた覚醒剤の鑑定書の証拠能力を,〔設問2〕で,喫茶店内での約20秒のビデオ撮影(【捜査①】)と,向かいのビルから約2か月間毎日24時間続けたビデオ撮影(【捜査②】)の適法性を論じさせるものである。
重み5は5項目である。
番号1:鑑定の対象の覚醒剤は令状に基づき差し押さえられた(差押手続自体は違法でない)が,先行する所持品検査(承諾なく,いきなりかばんに手を差し入れて探り,注射器を取り出した)の違法性が鑑定書(派生証拠)の証拠能力に与える影響が問題となることを示す
番号9:派生証拠の証拠能力に関する自説(違法性の承継論,毒樹の果実論,端的に排除法則を適用する考え方等)を明示し,その論拠を示す(派生証拠の判断枠組みを示さないまま,漫然と違法収集証拠排除法則を当てはめない)【適用条件】違法性の承継論・毒樹の果実論・端的適用説などから自説を示す。列挙した全説を同時採用しない。
番号15:強制処分に対する規律の趣旨・根拠を踏まえ,強制処分と任意処分を区別する基準を論述する(昭和51年決定。撮影の判例は強制処分性を明示的に判断していないこと)
番号19:強制処分と評価する場合に,法定の強制処分類型(検証)に該当するか等を検討する【適用条件】当該撮影を強制処分と評価する構成の場合。任意処分とする構成に同じ分岐を必須としない。
番号20:任意処分の限界の判断枠組み(侵害される権利・利益の内容・程度と,目的達成のために当該手段を採る必要性との比較衡量による相当性。昭和51年決定・平成20年決定)を示す(昭和51年決定をあらゆる任意処分の一般原則のように扱って,必要性・緊急性・相当性を漫然と列挙しない)【適用条件】任意処分として適法性を検討する場合。必要性・緊急性・相当性を機械的に列挙せず利益と必要性を具体的に比較する。
記事:令和6年度司法試験刑事系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した28項目と5段階の重み付け
第4 7記事に共通する作り方
1 評価項目の抽出
評価項目は,各問題の出題の趣旨又は採点実感の記述から抜き出したものに限り,一つの項目に一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形に言い換えている。
採点実感が誤り又は不十分な答案として挙げた事項は,正しい書き方の項目の裏返しであればその項目にまとめ,独立の注意点であれば「〜しない」の形の項目にしている。
各項目には,出題の趣旨と採点実感のどこに根拠があるかを頁又は見出し番号で示している。
2 5段階の重み付け
重みは,公式資料の書きぶりの強さから各記事が付けたものであり,法務省の配点ではない。
①重み5:採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの
②重み4:出題の趣旨が検討を求め,採点実感も取り上げた事項
③重み3:どちらか一方が明示する中核の理由付け
④重み2:一方が軽い表現で触れる補強の事項,又は典型的な誤りとして指摘された事項
⑤重み1:一方が控えめに触れるだけの事項
重み5・重み4の具体的な基準は,採点実感の書きぶりに合わせて記事ごとに少しずつ言い換えているので,正確には各記事の第2を参照されたい。
3 模範解答と解説
各記事の模範解答は,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で示し,その後に出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説を付けている。
7本とも,まず出題の趣旨・採点実感を読まずに問題文と法令・判例だけで答案を作って固定し,その後に公式資料と照合して作り直すという手順で作成されている。
各記事の末尾には,関連する山中弁護士ブログの記事と,出典及び確認状態(公式資料,法令及び裁判例の確認の範囲)を掲げている。
第5 重みの分布の比較
| 科目 | 重み5 | 重み4 | 重み3 |
|---|---|---|---|
| 憲法 | 4 | 15 | 8 |
| 行政法 | 4 | 26 | 4 |
| 民法 | 6 | 27 | 8 |
| 商法 | 11 | 22 | 6 |
| 民事訴訟法 | 9 | 20 | 4 |
| 刑法 | 14 | 11 | 3 |
| 刑事訴訟法 | 5 | 19 | 0 |
| 合計 | 53 | 140 | 33 |
| 科目 | 重み2 | 重み1 | 項目数 | 重みの合計 |
|---|---|---|---|---|
| 憲法 | 13 | 0 | 40 | 130 |
| 行政法 | 17 | 1 | 52 | 171 |
| 民法 | 16 | 3 | 60 | 197 |
| 商法 | 25 | 0 | 64 | 211 |
| 民事訴訟法 | 19 | 3 | 55 | 178 |
| 刑法 | 16 | 7 | 51 | 162 |
| 刑事訴訟法 | 4 | 0 | 28 | 109 |
| 合計 | 110 | 14 | 350 | 1158 |
評価項目の数は,公式資料の記述の量と設問の数に左右され,誤りの指摘を独立の項目にするか正しい書き方の項目にまとめるかという切り分け方でも変わるので,科目の間で難易や配点を比べる指標にはならない。
例えば,刑事訴訟法の記事は採点実感の誤りの指摘の多くを正しい書き方の項目にまとめたため項目数が少なく,刑法の記事は反対の考え方の意識を論点ごとに項目にしたため重み5の数が多い。
他方で,重み5の項目の中身を7問で並べると,共通する傾向が見える。
本記事では,その傾向を,結論そのものよりも,判断の枠組み又は判断基準を立てること,その根拠を示すこと,及び事案の事実をその基準に当てはめる筋道に重みが置かれている,と整理する。
例えば,憲法では許可要件ごとの審査と主観的制限・客観的制限の区別,行政法では事業計画の法的効果の段階的な論証,民事訴訟法では遮断の制度的根拠と自己の立場の判断基準,刑事訴訟法では所持品検査の限界と違法収集証拠排除法則の判断基準が,重み5とされている。
また,民法の設問2,商法,民事訴訟法の設問2・設問3及び刑事訴訟法の各記事は,公式資料が結論を一つに限っていないことを指摘しており,この点も同じ整理に沿うものである。
第6 関連記事
①令和5年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目
②令和7年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目
③令和8年度司法試験論文式試験の主要7科目の参考答案と予想評価項目
④令和8年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の参考答案と予想評価項目
⑤法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧
⑥司法試験の採点実感から学ぶ法律文書の書き方―準備書面・意見書・相談メモのチェックリスト
⑦司法試験論文式の予想評価項目の作り方と読み方―公式資料公表前の問題文・法令・判例による5段階評価
⑧司法試験の合格点・採点・成績通知―短答式の足切り,論文式の最低ライン,総合点及び順位
⑨司法試験とは―受験資格,5年間の受験期間,試験科目,合格判定及び合格後の流れ
⑩ 令和6年度司法試験論文式試験の選択科目8科目の模範解答と評価項目(AI作成)
第7 出典
1 公式資料
①法務省「令和6年司法試験の実施について」
②令和6年司法試験の実施日程等について
③法務省「令和6年司法試験問題」
④令和6年司法試験論文式試験問題(公法系科目)
⑤令和6年司法試験論文式試験問題(民事系科目)
⑥令和6年司法試験論文式試験問題(刑事系科目)
⑦法務省「令和6年司法試験の結果について」
⑧令和6年司法試験論文式試験出題の趣旨
⑨法務省「令和6年司法試験の採点実感」
⑩令和6年司法試験の採点実感(公法系科目)
⑪令和6年司法試験の採点実感(民事系科目)
⑫令和6年司法試験の採点実感(刑事系科目)
2 確認状態
第2から第5までの記載(各問題の概要,評価項目の数,重みの分布及び重み5の事項)は,令和8年10月4日に公開中の7本の記事の本文から取った。
評価項目の数と重みの内訳は,各記事の評価項目の一覧表を数え直し,各記事の題名及び本文の記載と一致することを確認した。
重みの合計は内訳から計算し直した。
上記①から⑫までの公式資料は,同日にいずれも法務省のウェブサイトで応答があることを確認したが,本記事のために出題の趣旨及び採点実感を読み直してはいない。
本記事は裁判例を直接引用していないので,各問題で用いた裁判例の裁判年月日,事件番号及び確認の範囲は,各記事の出典欄を参照されたい。