メインコンテンツへスキップ
       

株主優待・懸賞の賞品は何所得か―配当所得・一時所得・雑所得の区別,収入の時期,会社員の確定申告及び賞品を出す会社の源泉徴収(AI作成)

第1 この記事の要点

本記事は,個人が会社から受け取る株主優待(宿泊券・乗車券・自社製品の割引等)と,懸賞・キャンペーンの賞品(旅行券・商品券・物品等)について,所得税法上の所得の種類,収入として計上する年分,給与所得者の確定申告と住民税の申告の要否,及び賞品を出す会社の源泉徴収を整理するものである。
令和8年10月10日現在の法令及び国税庁の公表資料に基づいて記載している。

要点は,次のとおりである。
①株主優待は,株主の地位に基づいて受ける利益であっても,会社の利益の有無にかかわらず交付されるものは配当所得に当たらず,原則として雑所得になる(最高裁昭和35年10月7日判決,所得税基本通達24-2)。
②懸賞・キャンペーンの賞品は,偶然の当選によるもので役務の対価でなければ,一時所得になる(所得税法34条1項,所得税基本通達34-1(1))。
③懸賞の賞品でも,主催者に対する役務の対価又はこれに付随して受けるもの,勤務先の役員・従業員としての立場に基づいて受けるものは,雑所得又は給与所得になり得る。
④収入の年分は,換金・処分ができる券なら受け取った年であり,譲渡できず,利用できる期間がまだ始まっていない券は,利用できる状態になった年以後に実現したと考えるのが自然である。
⑤1か所から給与を受けて年末調整を受けた会社員は,給与所得及び退職所得以外の所得金額が20万円以下なら所得税の確定申告を要しないが,住民税の申告は別に必要となることがあり,医療費控除等のために確定申告をするときは20万円以下の所得も申告する。
⑥会社が広告宣伝のために賞として支払う金品は,1回50万円を超える部分について源泉徴収の対象となるが,旅行その他の役務の提供で金品と選択できないものは除かれる。

第2 株主優待の所得区分

1 配当所得の範囲

所得税法24条1項は,配当所得を,法人から受ける「剰余金の配当」,「利益の配当」,「剰余金の分配」等に係る所得と定めている。
同項は,「剰余金の配当」から資本剰余金の額の減少に伴うもの等を除いており,所得税法は,会社法の下でも資本と利益を区別し,損益計算上の利益の株主への分配を配当所得として扱っていると読むことができる。

2 最高裁昭和35年10月7日判決

最高裁昭和35年10月7日判決(民集14巻12号2420頁)は,所得税法上の利益配当の観念は商法が前提とする取引社会における利益配当の観念(損益計算上の利益を株金額の出資に対し株主に支払うもの)と同じであるとした。
その上で,いわゆる蛸配当や株主平等の原則に反する配当のように商法上不適法な配当であっても所得税法上の利益配当に含まれるとしつつ,株主相互金融会社の株主優待金は,損益計算上利益の有無にかかわらず支払われるものであって,取引社会における利益配当と同一性質のものとは認め難いとして,利益配当に当たらないとした。

この判決からすると,株主優待が配当所得に当たるかは,株主総会の決議を経たかどうかや株主平等に適うかどうかではなく,会社の利益を出資に対する見返りとして分配するものかどうかで判断することになる。

3 所得税基本通達24-1と24-2

所得税基本通達24-1は,剰余金の配当等には,法人が株主等に対しその株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益が含まれるとする。
他方,所得税基本通達24-2は,株主等である地位に基づいて供与した経済的な利益であっても,法人の利益の有無にかかわらず供与することとしている次のようなものは,法人が剰余金又は利益の処分として取り扱わない限り,配当等に含まれないとしている。
①旅客運送業を営む法人の株主優待乗車券等
②映画・演劇等の興行業を営む法人の株主優待入場券等
③ホテル・旅館業等を営む法人の株主優待施設利用券等
④法人が自己の製品等の値引販売を行うことにより供与する利益
⑤法人が創業記念・増資記念等に際して交付する記念品

同通達の注は,これらの利益で個人の株主等が受けるものは雑所得に該当し,配当控除の対象とならないとしている。

4 一時所得ではなく雑所得になる理由

一時所得は,営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の「一時の所得」で,役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものである(所得税法34条1項)。
株主優待は,基準日に所定の株式を持つ株主に毎年交付されるのが通常であり,株式を持ち続ける限り繰り返し受けるものであるから,「一時の所得」とはいい難い。
そのため,配当所得にも一時所得にも当たらない株主優待は,雑所得(同法35条1項)として扱われる。

5 法人税法の側の判例との違い

株主優待金について,最高裁昭和43年11月13日大法廷判決(民集22巻12号2449頁)は,株主相互金融会社が株主に支払った株主優待金を,株主たる地位に基づいてなされる金銭的給付として,法人税法上その性質は配当以外のものではあり得ないとし,会社の損金に算入することを否定した。
これは会社の所得計算(損金算入の可否)に関する判断であり,個人株主の所得区分に関する最高裁昭和35年10月7日判決とは,問題の場面が異なる。
令和7年司法試験の採点実感も,株主たる地位に基づく利益であることから配当所得とする立場を「正答とは評し難い」としつつ,この大法廷判決や所得税基本通達24-1等の一般論に依拠する主張としてはあり得なくはないとしている。

第3 懸賞・キャンペーンの賞品の所得区分

1 一時所得の要件と計算

一時所得は,①利子所得から譲渡所得までの各所得以外の所得のうち,②営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で,③労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものである(所得税法34条1項)。
所得税基本通達34-1は,「懸賞の賞金品,福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除く。)」と,「法人からの贈与により取得する金品(業務に関して受けるもの及び継続的に受けるものを除く。)」を一時所得の例として挙げている。

一時所得の金額は,総収入金額から,その収入を得るために直接要した金額を控除し,さらに特別控除額(最高50万円)を控除した金額である(所得税法34条2項・3項)。
総所得金額には,一時所得の金額の2分の1に相当する金額が算入される(同法22条2項2号)。
したがって,他に一時所得がなければ,賞品の価額が50万円以下である限り,一時所得の金額は0円になる。

2 役務の対価かどうか

懸賞の応募にアンケートへの回答等が求められていても,多数の応募者から抽選で偶然に当選した者だけが受ける賞品は,回答の対価とはいい難い。
令和7年司法試験の採点実感も,アンケートに回答した数千人の中から偶然に当選した者の利益と回答との間に対価性を見いだす議論は説得的でないとしている。

これに対し,国税庁の質疑応答事例「マラソン大会の賞金・褒賞金の課税関係」は,マラソン大会の主催者から支払われる入賞賞金・記録更新賞金を,主催者に対する役務の対価又はその役務に付随して取得するものとして雑所得とし,主催者以外の団体から記録更新の褒賞として支払われる褒賞金を一時所得としている。
「賞金」「賞品」という名称ではなく,誰から,何に対して支払われるかで所得区分が分かれる。

3 勤務先の懸賞に役員・従業員が当選した場合

給与所得は,雇用契約又はこれに類する原因に基づき提供された非独立的な労務の対価として受ける給付であり,法人の役員が職務を遂行したことの対価として受ける経済的利益もこれに当たる(最高裁平成17年1月25日判決,民集59巻1号64頁)。
名古屋地裁平成4年4月6日判決(昭和61年(行ウ)第30号)は,法人の役員に対し当該法人から支給される金銭又は経済的利益は,その支給が役員の立場と全く無関係に,法人からみて純然たる第三者との間の取引ともいうべき態様によりなされるものでない限り,原則としてその職務執行の対価の性質を有するものとみることができるとした(役員への土地の低額譲渡の差額を役員賞与と認めた事案)。

そのため,勤務先が実施した懸賞の賞品を役員・従業員が受けた場合は,給与所得に当たらないかを検討する必要がある。
役員・従業員が一般の顧客と同じ条件で応募し,抽選で偶然当選したなど,役員・従業員としての立場と全く無関係に,第三者と同じ態様で受けたといえる場合には,一時所得として扱う余地がある。
他方,当選者の選定に立場が考慮されたなど,役員・従業員であることが利益の原因になっている場合は,給与所得となり得る。

第4 収入として計上する年分

1 収入すべき時期の考え方

各種所得の金額の計算上の収入金額は,その年において「収入すべき金額」であり,金銭以外の物又は権利その他経済的な利益をもって収入する場合には,その物若しくは権利を取得し,又はその利益を享受する時における価額による(所得税法36条1項・2項)。
最高裁昭和49年3月8日判決(民集28巻2号186頁)は,旧所得税法の下で,現実の収入がなくても収入の原因たる権利が確定的に発生した時点で所得の実現があったものとする権利確定主義を採用していると解した。

一時所得については,所得税基本通達36-13が,総収入金額の収入すべき時期を原則としてその支払を受けた日とし,その日前に支払を受けるべき金額が支払者から通知されているものは,その通知を受けた日によるとしている。

2 換金・処分ができる券

譲渡や利用期間に制限がなく,金券ショップ等で換金できる株主優待券や商品券は,受け取った時点で経済的価値を自由に処分できる状態にある。
そのため,実際に使うのが翌年以降であっても,受け取った年の収入金額になると考えられる。
令和7年司法試験の採点実感も,換金・処分が可能で金銭的評価も可能な宿泊券は,宿泊が翌年以降でも,受け取った年に実現があったものとして総収入金額に算入すべきであるとしている。

3 譲渡できず,利用期間が後に始まる券

当選の通知を受けた時点では,翌年から始まる期間内でなければ利用できず,譲渡もできず,使わなければ失効する旅行券のような場合は,通知の時点では,まだ行使も処分もできない権利が生じたにすぎない。
令和7年司法試験の採点実感は,このような旅行ギフト券に基因する経済的利益について,券を受領し現に旅行を通じて利益を享受した年の収入金額とするのが自然であるとしている。
所得税基本通達36-13の通知日の取扱いも,支払を受けるべき「金額」が通知された場合のものであり,当選の事実だけが通知され,価額も実際の旅行費用に応じて変動するような場合には,そのまま当てはまるとは限らない。
年をまたぐ懸賞では,通知・受領・利用の各時点の事実と,券の譲渡性・利用期間・失効時の扱いを記録しておくのがよい。

第5 会社員の確定申告と住民税の申告

1 所得税の確定申告を要しない場合

居住者は,所得控除後の所得金額に税率を適用した所得税額が配当控除の額を超えるときは,原則として確定申告書を提出しなければならない(所得税法120条1項)。
もっとも,給与等の金額が2000万円以下の居住者で,一の給与等の支払者から給与等の支払を受け,その全部について源泉徴収(同法183条)又は年末調整(同法190条)による所得税の徴収をされた者は,給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計額が20万円以下であるときは,確定申告書を提出することを要しない(同法121条1項1号)。
2か所以上から給与を受ける場合は,同項2号の要件による。
同族会社の役員等が,その会社から給与等のほかに貸付金の利子や資産の賃貸料等の支払を受ける場合には,この特例は適用されない(同項ただし書,所得税法施行令262条の2)。

2 20万円は所得金額で判定する

20万円以下かどうかは,収入金額ではなく所得金額で判定する。
株主優待の雑所得は総収入金額から必要経費を控除した金額(所得税法35条2項2号),懸賞の賞品の一時所得は特別控除(最高50万円)を控除した金額(同法34条2項・3項)で数える。
例えば,1か所から給与500万円を受けて年末調整を受けた会社員が,ほかに時価20万円の株主優待券だけを受け取った場合,雑所得の金額は20万円で「二十万円以下」に当たるから,所得税の確定申告は要しない。
同じ会社員が懸賞で時価40万円の賞品を受け取っただけなら,一時所得の金額は0円である。

3 医療費控除等のために申告するとき

国税庁のタックスアンサーNo.1900のQ&A「確定申告を要しない場合の意義」は,所得税法121条は確定申告を要しない場合を定めたものであり,確定申告を行う場合にも20万円以下の所得を申告しなくてよいという規定ではないとしている。
そのため,医療費控除の適用を受けるための還付申告を行う場合には,給与所得だけでなく,20万円以下の株主優待等の所得も併せて申告する必要がある。

4 住民税の申告は別である

市町村民税の申告について,地方税法317条の2第1項ただし書は,給与支払報告書の提出義務者から給与の支払を受けている者で,前年中に「給与所得以外の所得」を有しなかったもの等を,申告の義務から除いている。
したがって,所得税の確定申告が不要な会社員であっても,給与所得以外に雑所得等がある場合には,住所地の市町村に住民税の申告をする必要があることがある。
所得税の確定申告書を提出した場合には,住民税の申告書が提出されたものとみなされる(地方税法317条の3第1項)。

第6 賞品を出す会社の源泉徴収

1 広告宣伝のための賞金

居住者に対し国内において「広告宣伝のための賞金」で政令で定めるものの支払をする者は,その支払の際に所得税を源泉徴収しなければならない(所得税法204条1項8号)。
政令で定める広告宣伝のための賞金は,事業の広告宣伝のために賞として支払う金品その他の経済上の利益であり,旅行その他役務の提供を内容とするもので,金品との選択をすることができないものとされているものは除かれる(所得税法施行令320条7項)。
したがって,現金と選べない旅行招待は,この源泉徴収の対象とならない。

2 税額と賞品の評価

源泉徴収税額は,賞金の金額から,同一人に対し1回に支払われる金額のうち50万円を控除した残額に10%の税率を乗じて計算する(所得税法205条2号,所得税法施行令322条)。
賞金が金銭以外のもので支払われる場合,その価額は,受ける者がそのものを譲渡するとした場合に通常受けるべき価額(金銭と選択できる場合はその金銭の額)による(所得税法施行令321条)。
所得税基本通達205-9は,この価額について,商品券は券面額,公社債・株式等や貴金属・美術品等はその受けることとなった日の価額,それ以外の物は通常の小売販売価額(いわゆる現金正価)の60%相当額によるとしている。
これは源泉徴収税額を計算する場面の評価であり,受け取った個人の確定申告での収入金額は,所得税法36条2項の価額による。

3 会社の損金算入

懸賞の賞品の費用は,不特定多数の者を対象とする広告宣伝の費用として,法人税法37条7項括弧書により寄附金から除かれるのが通常である。
得意先等の特定の者に対する贈答の性質を持つ場合は,交際費等の損金不算入(租税特別措置法61条の4)に当たるかを別に検討する。
もっとも,賞品として渡す旅行券等を先に購入して代金を支払っていても,その代金が実費に応じて精算され,未使用分が返還される約定であれば,支払った年度の末に費用の額が確定しておらず,損金算入が翌年度以後になることがある(法人税法22条3項2号)。
令和7年司法試験の租税法第2問は,この論点を出題している。

第7 関連記事

①令和7年度司法試験租税法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した43項目と5段階の重み付け(AI作成)
②所得税の確定申告に関するメモ書き(AIリライト)
③年末調整に関するメモ書き(AIリライト)
④損害賠償金の遅延損害金に税金はかかるか―雑所得となる場合と非課税となる場合(AI作成)
⑤示談金・解決金・和解金に税金はかかるか―名目ではなく補填対象・所得区分・権利確定時期で判断する(AI作成)
⑥福利厚生費の税務上の取扱い-給与・交際費との区分と食事・社員旅行の基準(AI作成)

第8 出典

1 法令

①所得税法22条,24条,34条,35条,36条,120条,121条,204条,205条(e-Gov法令検索)
②所得税法施行令262条の2,320条,321条,322条(e-Gov法令検索)
③地方税法317条の2,317条の3(e-Gov法令検索)
④法人税法22条,37条(e-Gov法令検索)
⑤租税特別措置法61条の4(e-Gov法令検索)

2 通達・国税庁の公表資料

①所得税基本通達24-1・24-2(国税庁)
②所得税基本通達34-1(国税庁)
③所得税基本通達36-13(国税庁)
④所得税基本通達205-9(国税庁)
⑤国税庁タックスアンサーNo.1490「一時所得」
⑥国税庁タックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」
⑦国税庁タックスアンサーNo.1900のQ&A「確定申告を要しない場合の意義」
⑧国税庁質疑応答事例「マラソン大会の賞金・褒賞金の課税関係」
⑨令和7年司法試験の採点実感(選択科目)(法務省)

3 裁判例

①最高裁判所第二小法廷昭和35年10月7日判決(昭和35年(オ)第54号,民集14巻12号2420頁)
②最高裁判所大法廷昭和43年11月13日判決(昭和36年(オ)第944号,民集22巻12号2449頁)
③最高裁判所第二小法廷昭和49年3月8日判決(昭和43年(オ)第314号,民集28巻2号186頁)
④名古屋地方裁判所平成4年4月6日判決(昭和61年(行ウ)第30号)
⑤最高裁判所第三小法廷平成17年1月25日判決(平成16年(行ヒ)第141号,民集59巻1号64頁)

4 確認状態

法令は,e-Gov法令APIで令和8年10月10日時点の現行の版(所得税法・地方税法・租税特別措置法は令和8年10月1日施行の版,所得税法施行令は同年5月22日施行の版)を取得して確認した。
通達,タックスアンサー及び質疑応答事例は,令和8年10月10日に国税庁ウェブサイトの本文で確認した(タックスアンサーは「令和8年4月1日現在法令等」,質疑応答事例は「令和7年8月1日現在の法令・通達等」との表示がある)。
裁判例は,いずれも裁判所ウェブサイトの判決全文で,本記事で述べた判示の文言を確認した。
①の判決の民集の頁は2420頁と表記したが,裁判所ウェブサイトの書誌では2421頁と表示されている。
④の判決の掲載誌(行政事件裁判例集)は,裁判所ウェブサイトの書誌に表示がなく,照合していない。
令和7年司法試験の採点実感は試験問題の事案についての記述であり,個別の取引に当てはめるときは,券の譲渡性,利用期間,失効時の扱い,当選者の選定方法等の事実を確認する必要がある。