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移住支援金・定住奨励金は何所得か―一時所得と雑所得の分かれ目,起業支援金及び非課税となる助成金(AI作成)

第1 この記事の要点

地方公共団体から個人に支給される移住支援金,定住奨励金その他の給付金は,名称が似ていても,所得税法上の扱いは支給の仕組みによって異なる。
国税庁の公表資料を並べると,次のように整理できる。

①一括で支給される移住支援金は,一時所得とされた(国税庁の文書回答,平成31年4月10日)。
②取得の翌年度以降に毎年申請し,最高7年間交付される定住奨励金は,継続的に交付を受けるものとして雑所得とされた(東京国税局の文書回答,平成25年10月31日)。
③一度の認定で複数回支給される給付金は,継続的に生ずる所得として雑所得とされた(国税庁の質疑応答事例)。
④起業に要した経費を補助する起業支援金は,個人の場合,事業所得等の総収入金額に算入するとされた(①の文書回答)。
⑤医療費の助成を目的とする助成金のように,非課税とされるものもある(国税庁の質疑応答事例)。

一時所得になれば,50万円の特別控除と2分の1課税によって税負担が軽くなるが,雑所得になれば,必要経費がない限り全額が総所得金額に算入される。
本記事は,令和8年10月10日時点の法令と国税庁の公表資料に基づいている。

第2 所得区分の枠組み

1 非課税規定を先に確認する

所得税法は,所得の発生原因を問わず課税することを原則とし,非課税とされるものを9条等で個別に定めている。
地方公共団体の給付金一般を非課税とする規定はないが,給付の目的によっては,既存の非課税規定に当たることがある。

国税庁の質疑応答事例「地方公共団体が支給する少子化対策のための助成金等の所得税法上の取扱い」は,市が条例等に基づいて支給する不妊治療費の助成金と子の医療費の助成金を,所得税法施行令30条1号の保険金・給付金に類するものとして,非課税所得として扱うとしている(所得税法9条1項18号)。
同事例は,医療費控除の計算では,その助成金の額を医療費から控除するとしている。

2 一時所得の要件と雑所得

非課税に当たらない給付金は,利子所得から譲渡所得までの各所得に当たるかを検討した上で,一時所得(所得税法34条1項)か雑所得(同法35条1項)かを判断することになる。

一時所得は,①利子所得から譲渡所得までの所得以外の所得のうち,②営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の,③一時の所得で,④労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないものである(所得税法34条1項)。
いずれにも当たらない所得が雑所得である(同法35条1項)。

一時所得の金額は,総収入金額からその収入を得るために支出した金額を控除し,さらに特別控除額(最高50万円)を控除した金額であり(所得税法34条2項・3項),その2分の1が総所得金額に算入される(同法22条2項2号)。
雑所得(公的年金等以外)の金額は,総収入金額から必要経費を控除した金額である(同法35条2項2号)。

地方公共団体の給付金では,②と④は問題になりにくく,③の「一時の所得」に当たるかが分かれ目になることが多い。

第3 一括支給の移住支援金と起業支援金

1 移住支援金は一時所得

内閣府地方創生推進事務局長の照会に対する国税庁課税部審理室長の文書回答(平成31年4月10日)は,東京23区から東京圏外等へ移住して一定の中小企業等に就業した人等に対し,都道府県と市町村が共同で支給する移住支援金(単身で最大60万円,世帯で最大100万円,一括の定額渡し切り)について,照会者の見解のとおりで差し支えないと回答している。

照会者の見解は,移住支援金は,利子所得から譲渡所得までの所得のいずれにも当たらず,支給の対象から官公庁に新規就業した者が除かれていることから給与所得にも当たらず,営利を目的とする継続的行為から生じたものではなく,役務又は資産の譲渡の対価としての性質もないとともに,一時に支給されるものであるから,一時所得に当たるというものである。

2 起業支援金は事業所得等の総収入金額

同じ文書回答は,起業に要した経費の2分の1(最大200万円)を補助する起業支援金について,個人の場合は,起業した業務の遂行に付随して生じた収入として,事業所得,不動産所得,山林所得又は雑所得の総収入金額に算入するとの見解を差し支えないとしている。

また,固定資産の取得に充てられた部分が明示される場合等には,国庫補助金等の総収入金額不算入(所得税法42条)の適用があるとしている。
同条は,固定資産の取得又は改良に充てるための国庫補助金等で,その年中に返還を要しないことが確定したもののうち,取得又は改良に要した金額に相当する部分を総収入金額に算入しないとするものであり,返還を要しないことが確定していない場合については43条が定めている。

第4 複数年にわたる定住奨励金・給付金

1 東京国税局の文書回答(定住奨励金)

東京国税局審理課長の文書回答(平成25年10月31日)は,市内に定住する意思をもって新築住宅等を取得した人に対し,取得の翌年度以降毎年度の申請により,最高7年間,固定資産税相当額を基に計算した金額を交付する市の定住奨励金について,照会者の見解のとおりで差し支えないと回答している。

照会者の見解は,住宅の取得時に一時金として交付を受ける定住奨励金は一般的には一時所得に当たるが,この奨励金は最高7年間にわたり継続的に交付を受けるものであるから雑所得に当たり,その収入すべき時期は,市長から交付金額の通知を受けた日とするのが相当であるというものである。

同じ文書回答では,この奨励金は住宅の取得と相当の因果関係があるとして,住宅借入金等特別控除の額の計算上,住宅の取得の対価の額から奨励金の見込総額を控除し,後に確定額と異なることとなったときは修正申告又は更正の請求で訂正するとの見解も差し支えないとされている。

2 国税庁の質疑応答事例(複数回支給の給付金)

国税庁の質疑応答事例「一の申請に対し複数回支給される地方公共団体からの給付金の所得区分」(令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づくもの)は,一度の認定請求と審査で受給資格の認定を受けると,資格が消滅しない限り,特段の手続も支給決定通知もなく年3回支給される給付金について,臨時・偶発的に生ずる所得というよりも継続的に生ずる所得であるとして,雑所得に当たるとしている。

3 毎年申請する場合も継続的といえるか

東京国税局の事例は毎年度の申請と交付決定があるのに雑所得とし,質疑応答事例は認定後に手続も通知もないことを理由の一つに挙げている。
そのため,毎年の申請・交付決定があることを理由に,一時の所得が繰り返されているにすぎないとみる余地があるかが問題になる。

令和7年司法試験の租税法第1問は,住宅の取得の翌年以降,毎年申請して5年間に限り交付される定住奨励金の所得分類を問うた。
出題の趣旨は,収入の一回性・偶発性ゆえに担税力が小さいという一時所得の趣旨に照らし,条例の制度枠組みの中で原則5年間継続的に発生することが想定される奨励金は一時所得に当たらないとする筋を示した。
その上で,毎年の申請という構成要素だけを取り出して一回的とする考え方は,最高裁判所第三小法廷平成27年3月10日判決(平成26年(あ)第948号,刑集69巻2号434頁)が,営利を目的とする継続的行為から生じた所得かという要件との関わりで退けた考え方であるとしている。
同判決は,馬券の払戻金について,営利を目的とする継続的行為から生じた所得であるか否かは,文理に照らし,行為の期間,回数,頻度その他の態様,利益発生の規模,期間その他の状況等の事情を総合考慮して判断するのが相当であるとしたものである。

第5 実務での確認手順

給付金を受けた依頼者・顧問先から相談を受けたときは,次の順で確認する。

①支給の根拠(法律,条例,要綱)と目的を確認し,非課税規定に当たらないかを確認する。
②支給の方法が一括か,複数年・複数回か,複数回の場合に毎回の申請・決定があるかを支給要綱で確認する。
③事業や業務に付随する補助金(起業支援金等)か,生活上の給付かを分ける。業務に付随するものは,事業所得等の総収入金額となり得る。
④固定資産の取得に充てる補助金なら,所得税法42条・43条の適用を検討する。
⑤住宅の取得に関連する給付金なら,住宅借入金等特別控除の計算で取得対価から控除する必要がないかを確認する。
⑥一時所得なら特別控除と2分の1課税,雑所得なら必要経費の有無を確認し,収入すべき時期(交付決定の通知日等)を記録する。

文書回答事例と質疑応答事例は,照会に係る事実関係を前提とした国税庁等の見解であり,納税者や裁判所を拘束するものではない。
支給要綱の内容が事例と異なれば,結論も異なり得るので,事例の事実関係と依頼者の給付金の仕組みを並べて比べることが重要である。

第6 関連記事

①令和7年度司法試験租税法第1問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け(AI作成)
②国税庁の法令解釈通達・事務運営指針・文書回答事例・質疑応答事例(AIリライト)
③修習給付金は必要経費のない雑所得であるとした国税不服審判所令和3年3月24日裁決
④災害で自家用車や家財が損害を受けたときの所得税―雑損控除,「生活に通常必要でない資産」及び災害減免法の選択(AI作成)

第7 出典

①所得税法9条1項18号,22条2項2号,34条,35条,42条,43条(e-Gov法令検索),所得税法施行令30条(e-Gov法令検索)
②国税庁「地方公共団体の地方創生起業支援事業及び地方創生移住支援事業に基づき支給される各支援金の課税関係について」(平成31年4月10日回答)
③東京国税局「市の定住条例に基づき複数年にわたり交付する定住奨励金の課税上の取扱いについて」(平成25年10月31日回答)
④国税庁質疑応答事例「一の申請に対し複数回支給される地方公共団体からの給付金の所得区分」
⑤国税庁質疑応答事例「地方公共団体が支給する少子化対策のための助成金等の所得税法上の取扱い」
⑥国税庁タックスアンサーNo.1490「一時所得」
⑦最高裁判所第三小法廷平成27年3月10日判決(平成26年(あ)第948号,刑集69巻2号434頁)
⑧令和7年司法試験論文式試験出題の趣旨(租税法第1問は27頁)

条文は令和8年10月10日にe-Gov法令APIで現行版を確認した。