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ストライキ不参加者への慰労金・弁当代は不当労働行為か―支配介入・不利益取扱い,救済命令の限界及び給与課税(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象とする場面

労働組合がストライキを行った日に,非組合員や応援の従業員が代わりに働き,業務が深夜に及ぶことがある。
その後,会社が感謝の気持ちとして,当日働いた従業員に慰労金や「弁当代」を配ることは珍しくない。
本記事は,この支給が労働組合法7条の不当労働行為(1号の不利益取扱い,3号の支配介入)に当たるか,労働委員会がどのような救済を命じ得るか,及び支給した金銭が所得税法上どう課税されるかを,労働委員会命令・裁判例と国税庁の通達等に基づいて整理するものである。
法令・通達は令和8年10月10日時点のものを確認している。

2 結論の要旨

①ストライキ中も操業を続けるための対策を講じることは使用者の自由であるが,ストライキの代替勤務に就いた者だけに後日特別な金員を支給することは,争議行為の効果を減殺し,今後の争議行為をけん制するものとして,支配介入と評価されることがある。
②支配介入に当たるかは,支給の名目・時期・方法・金額・前例の有無,時間外割増賃金との関係,同時期の使用者の言動等を総合して判断される。
③不利益取扱いに当たるかは命令例でも結論が分かれ,支給基準が組合活動と無関係に引かれているか(組合員でない者にも支給対象外の者がいるか)が分かれ目になる。
④救済としては,ポストノーティスや,今後の同種の支給を禁じる不作為命令のほか,ストライキ参加者への金銭の支払を命じた例もある。
⑤税務上は,「弁当代」の名目でも,現金で一律に支給すれば原則として給与として課税され,源泉徴収の対象となる。

第2 ストライキ中の操業継続と,事後の慰労金の支給は別の問題である

最高裁平成4年10月2日判決(集民166号1頁,御國ハイヤー事件)は,ストライキの本質は労働者が労務の提供をしないことにあるとした上で,使用者はストライキの期間中であっても業務の遂行を停止しなければならないものではなく,操業を継続するために必要とする対抗措置を採ることができると述べている。
したがって,非組合員や管理職で操業を続けること,応援の従業員に時間外勤務を命じること自体は,原則として問題とならない。

他方,ストライキが終わった後に,代わりに働いた従業員だけに特別な金員を配ることは,操業の継続そのものではない。
中央労働委員会平成17年9月7日命令(東日本旅客鉄道(千葉動労褒賞金)事件)は,会社がストライキによる影響を最小限に抑えるために対策を講じることは自由であるとしつつ,代替の臨時勤務に就いた者に褒賞金等を支給して会社の方針に協力した者を優遇することは,ストライキの権利行使の効果を減殺するものといわざるを得ないとした。
同命令は,支給がストライキの終了後であっても,今後のストライキに対する抑止力となり得ることも理由に挙げている。

第3 支配介入(労働組合法7条3号)に当たるか

1 判断の枠組み

労働組合法7条3号は,労働者が労働組合を結成し,若しくは運営することを支配し,若しくはこれに介入することを不当労働行為として禁止している。
最高裁昭和29年5月28日判決(民集8巻5号990頁,山岡内燃機事件)は,客観的に組合活動に対する非難と組合活動を理由とする不利益取扱いの暗示とを含む発言により組合の運営に影響を及ぼした事実がある以上,発言者に主観的な認識や目的がなかったとしても,組合の運営に対する介入があったものと解するのが相当であるとした。
慰労金の支給でも,会社が組合を弱めるつもりはなかったと述べるだけでは足りず,支給の客観的な意味が問われる。

2 支配介入を認めた例

青森県地方労働委員会平成3年7月10日命令(陸奥製菓事件)は,冬期一時金をめぐる24時間ストライキの当日に勤務した従業員のうち75名に対し,後日,取締役生産部長が現金入りの封筒(感謝金。1人当たり2,000円又は1,000円)を手渡した事案である。
会社は,深夜まで働いた従業員への感謝であり,金額も弁当代相当額にすぎないと主張した。
しかし,命令は,ストライキ時の時間外労働には時間外割増賃金が支払われていたこと,時間外労働をした従業員に割増賃金以外の金員を支給した前例がないこと,ストライキの翌日に社長が組合を誹謗・中傷し社長名の文書で抗議したことを併せ考えて,会社の主張を採用せず,不利益取扱い(1号)と支配介入(3号)に当たると認定した。
会社は社長個人の行為であるとも主張したが,命令は,原資の出所いかんにかかわらず会社の行為とみなさざるを得ないとした。

東日本旅客鉄道(千葉動労褒賞金)事件では,ストライキの当日及びその前後に臨時の勤務に就いた社員に1日3,000円又は5,000円の褒賞金が支給された。
中央労働委員会は前記第2のとおり支配介入を認めた。
その取消訴訟で,東京地裁平成18年9月27日判決は,臨時勤務に従事した社員には通常の勤務と同視できない労苦が生じており,その労苦に報いる相応な表彰には正当な理由があるとして支配介入を否定したが,同判決も,金額や支給対象者いかんによっては支配介入との評価を免れない場合があることを認めている。
控訴審の東京高裁平成19年5月17日判決は,本件褒賞金の支給は争議行為の効果を減殺してこれをけん制又は抑制し,組合の弱体化を図るものであったと評価するのが相当であるとして,支配介入を認めた(最高裁平成19年11月15日決定で上告不受理)。

3 判断に使われる事情

これらの例からすると,支配介入に当たるかは,次の事情を総合して判断されると考えられる。
①支給の対象がストライキの代替勤務に限られているか,通常の勤務でも一定の負担があれば支給する制度か
②時間外・深夜の割増賃金が既に支払われているか,割増賃金では填補されない特別の負担があるか
③過去に同じような支給をした前例があるか,災害・事故等の対応で同じ基準の表彰をしてきたか
④支給の時期と方法(全従業員の面前で手渡す等,会社の評価を示す形になっていないか)
⑤金額の水準
⑥同じ時期に,ストライキを指揮した組合役員の懲戒,組合を非難する発言等,組合を嫌悪する言動がないか

令和7年司法試験の労働法第2問は,陸奥製菓事件とよく似た事実関係(ストライキ当日に所定時間を超えて深夜まで勤務した75名に,始業時の点呼で全従業員の面前において一律2,000円の「弁当代」を「社長からの感謝の気持ちです。」と言って手渡した事案)を素材としていた。
同年の出題の趣旨は,全従業員の面前での手渡し,割増賃金の支払済み,前例がないこと,同時期の組合委員長の懲戒処分を評価すべき事実として挙げている。

第4 不利益取扱い(労働組合法7条1号)に当たるか

不利益取扱いは,労働者が正当な組合活動をしたことの「故をもつて」不利益な取扱いをすることである(労働組合法7条1号)。
ストライキに参加した組合員が慰労金を受け取れないことが,これに当たるかは,命令例でも結論が分かれている。

陸奥製菓事件の命令は,前記のとおり,組合嫌悪の言動と併せて,不利益取扱いにも当たると認定した。
これに対し,東日本旅客鉄道(千葉動労褒賞金)事件の中央労働委員会命令は,組合員でない者でも臨時の勤務をしなかった者や通常の勤務をした者は褒賞金の対象とされていないことを指摘し,臨時勤務をした者だけが支給を受けたのはストライキへの対応策の当然の結果であるとして,不利益取扱いには当たらないとした。
東京地裁平成18年9月27日判決も,組合員に支給されなかったのは支給基準に合致しなかったためであり,組合活動を理由とするものとはいえないとしている。

このように,不利益取扱いの成否は,支給基準が組合活動と無関係に引かれているか(組合員でない者にも基準外の者がいるか),支給額や経緯から組合員への報復と見るべきかによって分かれる。
令和7年司法試験の採点実感も,支配介入は認めつつ,組合員でない者で所定勤務時間を超えて勤務しなかった者が支給対象となっていないことから不利益取扱いとはいえないとする判断の余地があったと述べている。

第5 労働委員会が命じる救済とその限界

1 命令例

陸奥製菓事件の命令は,会社が支給した感謝金の額のほとんどが1人当たり2,000円であったことから,ストライキに参加した組合員85名に1人当たり2,000円を支給すること及び組合に文書を手交することを命じ,陳謝文の社内掲示・新聞掲載の申立ては文書の手交で足りるとした。
文書には,ストライキに関して組合を誹謗・中傷したことと,ストライキ当日勤務した従業員75名に感謝金を支給したことが不当労働行為と認定された旨及び今後繰り返さないことが記載されている。

東日本旅客鉄道(千葉動労褒賞金)事件の中央労働委員会命令は,組合員への金員の支給を命じた初審命令の部分を取り消し,会社は,組合の行う争議行為に際して,今後,争議不参加者に対し,褒賞金等の名目をもって金員を支給するなどして組合の運営に支配介入してはならないと命じた。

2 救済命令の裁量とその限界

最高裁昭和52年2月23日大法廷判決(民集31巻1号93頁,第二鳩タクシー事件)は,労働委員会には個々の事案に応じた適切な是正措置を決定する広い裁量があるが,救済命令は不当労働行為による被害の救済としての性質を持つものでなければならず,そこから導かれる一定の限界を超えることはできないとした。
ストライキ参加者への同額の支払は,不利益取扱いが成立する場合には原状回復として意味を持つが,参加者はストライキ当日に勤務しておらず,代替勤務の負担も負っていない。
支配介入だけが成立する場合には,ポストノーティス(文書の掲示・交付)や今後の同種の支給を禁じる不作為命令で足りるかを検討することになる。
受け取った従業員に返還させる命令や,既にされた支給の差止めを求めることは,実現の可能性に乏しく,令和7年司法試験の採点実感でも,民事訴訟と混同した救済の例として挙げられている。

3 申立ての期間

救済申立ては,行為の日(継続する行為はその終了した日)から1年を経過すると受け付けられない(労働組合法27条2項)。
慰労金の支給日を特定し,同じ時期の懲戒処分や発言と併せて申し立てるかを早めに整理する必要がある。

第6 支給した金銭の課税(給与課税と源泉徴収)

1 現金の「弁当代」は原則として給与になる

給与所得は,俸給,給料,賃金,歳費及び賞与並びにこれらの性質を有する給与に係る所得である(所得税法28条1項)。
使用者が従業員に支給する慰労金や「弁当代」は,名目にかかわらず,勤務に関連して支給されるものであれば給与等に当たり,支払の際に所得税を源泉徴収しなければならない(同法183条1項)。

国税庁タックスアンサーNo.2594「食事を支給したとき」は,食事を支給するのではなく現金で食事代の補助をする場合には,深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり650円(消費税等を除く。)以下の金額を支給する場合を除き,補助をする全額が給与として課税されるとしている。
国税庁の質疑応答事例「使用者が使用人等に対し食事代として金銭を支給した場合」も,金銭の支給は食事の支給に当たらないとしている。

2 残業時の食事の非課税と,深夜勤務の夜食代の例外

所得税基本通達36-24は,残業又は宿日直をした者(通常の勤務時間外の勤務として行った者に限る。)に,その勤務をすることにより支給する食事については課税しなくて差し支えないとしている。
これは食事の支給(現物)についての取扱いであり,後日まとめて配る現金には当たらない。

昭和59年7月26日直法6-5「深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて」は,深夜勤務者(労働協約又は就業規則等により定められた正規の勤務時間による勤務の一部又は全部を午後10時から翌日午前5時までの間において行う者)に,夜食の現物支給が著しく困難であるためその代わりに通常の給与に加算して勤務一回ごとの定額で支給する金銭で,一回の支給額が650円以下のものは課税しなくて差し支えないとしている。
ストライキの日に所定時間を超えて深夜まで働いた者は,正規の勤務時間が深夜にかかる深夜勤務者ではなく,後日一律に配る2,000円もこの定額の要件と金額を満たさない。
したがって,このような「弁当代」は給与として課税され,支給月の給与等として源泉徴収の対象になると考えられる。

3 実務上の対応

当日の負担に配慮したいのであれば,当日の勤務中に弁当等の食事を現物で支給する方法が,所得税基本通達36-24の範囲で非課税となり得るうえ,事後に特定の従業員だけを公然と優遇する形にもなりにくい。
現金で慰労金を支給する場合は,給与として源泉徴収し,賃金台帳等に支給の理由と基準を記録しておく。
社会保険料・労働保険料の算定基礎に含めるかは,支給が臨時のものか等により別途確認を要する。

第7 会社・組合が確認すべき事項

1 会社側

①慰労金の支給基準が,ストライキの代替勤務に限られていないか(災害・事故等の対応と同じ基準の表彰制度があるか)
②時間外・深夜の割増賃金を所定どおり支払っているか,割増賃金では填補されない負担があるか
③支給の時期と方法(全従業員の面前で手渡す,ストライキ中の協力への感謝と述べる等)が,組合への評価を示す形になっていないか
④同じ時期に,組合役員の懲戒や組合を非難する管理職・現場監督者の発言がないか
⑤源泉徴収と記録を行ったか

2 組合側

①支給の日付,対象者,金額,支給方法,その場での発言を記録する
②割増賃金の支払状況と前例の有無を確認する
③同じ時期の懲戒処分や発言と併せ,労働組合法7条の何号に当たるかと,求める救済(ポストノーティス,不作為命令,金銭の支払)を分けて申立書に書く
④行為の日から1年の申立期間を管理する

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②不当労働行為救済申立書の作り方―団交拒否・賞与差別・組合施設利用の請求趣旨と証拠(AI作成)
③会社施設を利用した組合活動―レターケース,組合掲示板,施設管理権及び支配介入(AI作成)
④福利厚生費の税務上の取扱い-給与・交際費との区分と食事・社員旅行の基準(AI作成)
⑤労働協約(AIリライト)

第9 出典

1 法令・通達等

①労働組合法(e-Gov法令検索)
②所得税法(e-Gov法令検索)
③所得税基本通達36-24(国税庁)
④昭和59年7月26日直法6-5「深夜勤務に伴う夜食の現物支給に代えて支給する金銭に対する所得税の取扱いについて」(国税庁)
⑤国税庁タックスアンサーNo.2594「食事を支給したとき」
⑥国税庁質疑応答事例「使用者が使用人等に対し食事代として金銭を支給した場合」

2 裁判例・労働委員会命令

①最高裁判所第二小法廷平成4年10月2日判決(平成元年(オ)第676号,集民166号1頁)
②最高裁判所第二小法廷昭和29年5月28日判決(昭和27年(オ)第1053号,民集8巻5号990頁)
③最高裁判所大法廷昭和52年2月23日判決(昭和45年(行ツ)第60号,民集31巻1号93頁)
④青森県地方労働委員会平成3年7月10日命令(平成元年(不)第2号,陸奥製菓)
⑤中央労働委員会平成17年9月7日命令(平成5年(不再)第22号,東日本旅客鉄道(千葉動労褒賞金))
⑥東京地方裁判所平成18年9月27日判決(平成17年(行ウ)第455号等)
⑦東京高等裁判所平成19年5月17日判決(平成18年(行コ)第283号)

3 司法試験の公式資料

①令和7年司法試験論文式試験問題集(選択科目)
②令和7年司法試験論文式試験出題の趣旨
③令和7年司法試験の採点実感(選択科目)

4 確認状態

条文はe-Gov法令検索で,通達・タックスアンサー・質疑応答事例は国税庁のウェブサイトで,令和8年10月10日に確認した。
最高裁判所の判決は裁判所ウェブサイトの判決全文で,労働委員会命令と東京地裁・東京高裁の判決は中央労働委員会の労働委員会関係命令・裁判例データベースの全文で,引用した判断を確認した。
東京地裁・東京高裁の判決は裁判所ウェブサイトには掲載がなく,判例秘書での収録の有無は確認していないため,同データベースの事件番号とURLを出典として示した。
最高裁平成19年11月15日決定(上告不受理)は,同データベースの記載によるものであり,決定書は確認していない。