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海外で高額な医療費を請求されたとき―海外療養費・旅行保険・医療費控除と必要書類(AI作成)

第1 請求額,保険給付及び税の控除を分ける

海外旅行中に病気やけがで入院し,高額な請求を受けたときは,①病院への支払,②日本の公的医療保険からの海外療養費,③海外旅行保険等の保険金,④日本の所得税の医療費控除を分けて確認する必要がある。
海外療養費は現地の請求額をそのまま払い戻す制度ではなく,医療費控除も支払額をそのまま還付する制度ではない。
本記事は,令和8年10月8日現在の法令と公表資料に基づき,海外での急な受診後に行う費用精算を整理する。海外療養費の具体的な書類・為替・時効の説明は協会けんぽの案内によるものであり,国民健康保険・健康保険組合等の加入者は自分の保険者の手続も確認する必要がある。

日本からの短期旅行と,海外移住・長期赴任とは,公的医療保険の加入資格や所得税の居住者判定が異なり得る。海外にいる日本人であることだけから,日本の各制度を利用できると判断してはならない。

第2 病院で確認し,持ち帰る資料

1 治療内容の説明と費用の説明

まず診療の必要性と安全を確認し,治療内容,予定される検査・処置,費用の概算,含まれない費用,追加費用が生じる条件を,可能な範囲で医療機関に確認する。
病院費用,医師の手術料,麻酔料,検査料,薬代,個室料等が別々に請求されることがあるため,総額だけでなく請求主体と費目を記録することが有用である。
治療の説明を受けたことと,料金・個室等の追加サービスに同意したことを一つの署名だけから同一視せず,見積書,同意書,請求書,説明時のメール等を保存する。これは費用の確認と証拠整理の提案であり,外国の医療機関の説明義務や請求の適法性を日本法だけで判定するものではない。

2 領収書だけでなく診療明細も取得する

協会けんぽの海外療養費では,申請書のほか,医科の場合の診療内容明細書(様式A),領収明細書(様式B),領収書原本と日本語訳,明細書の日本語訳,渡航期間を確認できる書類及び同意書等が必要となる。歯科の場合には様式Cを用いる。
様式A~Cは,月,受診者,医療機関,入院・外来ごとに分け,担当医に記入・署名を依頼する。申請者自身による記入で代用しない。同じ項目・内容が記載されていれば独自様式も使用できると案内されている。
翻訳文には翻訳者の署名,住所及び電話番号を記載する。退院・帰国後に遠隔で書類を集める負担を減らすため,可能であれば受診中に保険者の様式を病院へ示しておくとよい。

3 請求と支払を照合する

請求書の総額,患者の実際の支払,保険会社による病院への直接支払,保証金・前払金とその返還を区別する。明細と支払記録が対応するかを確認し,同じ治療費を重複して精算表へ載せない。
外貨の領収書には通貨単位,支払日,支払者が分かる資料を添え,カード明細や送金控えも保存する。公的給付の為替換算と所得税の換算は,次に述べるとおり基準が異なる。

第3 日本の公的医療保険の海外療養費

1 海外で支払えばすべて給付されるわけではない

協会けんぽは,海外旅行中や海外赴任中の急な病気・けが等で,やむを得ず現地の医療機関を受診した場合に,申請によって一部の医療費の払い戻しを受けられる制度と説明している。
対象は日本国内で保険診療として認められる医療行為に限られ,治療を目的として海外へ渡航した場合は支給対象とならないと案内されている。保険の加入資格,診療内容及び渡航目的を最初に確認する必要がある。

2 現地の請求額の7割が戻るという計算ではない

給付額は,日本国内で同じ傷病を治療した場合にかかる治療費を基準に計算した額と,実際に海外で支払った額を比べ,低い方から自己負担相当額を差し引いて計算される。
例えば,現地で200万円を支払い,日本の基準による額が30万円,自己負担相当額がその3割となるという仮定であれば,給付は21万円となり,現地支払額の7割である140万円にはならない。この数値は制度の違いを示す仮定であり,実際の診療の査定額を示すものではない。
加入者の年齢等によって自己負担割合も異なる。国内の高額療養費の上限額を,海外の請求総額にそのまま当てはめて最終負担を見積もってはならない。

3 換算日,申請期限及び入金までの時間

協会けんぽは,外貨で支払った医療費について,支給決定日の外国為替換算率(売レート)を用いると説明している。
また,治療費を支払った翌日から2年を経過すると時効により申請できなくなると案内している。審査に通常数か月を要するため,返金予定を直近の生活資金と同じに扱わず,書類がそろい次第手続を進めることが有用である。
提出先や電子申請の対応状況は変わり得るので,申請時に加入保険者の公式案内を確認する必要がある。

第4 海外旅行保険・カード付帯保険

外務省は海外旅行保険への加入を勧め,治療・入院・緊急移送の費用や救援者の渡航・宿泊費等を案内している。ただし,実際に補償される費目,金額,免責事項は各契約による。
受診時には保険会社の窓口へ連絡し,契約番号,診断名,受診先,治療見込み,概算費用を伝え,キャッシュレス受診・事前承認・必要書類を確認することが有用である。カード付帯保険では,付帯条件,旅行代金の支払条件,補償期間,限度額,既往症の扱いも確認する。
公的給付と民間保険を併用する場合は,他の保険・給付の申請状況を各窓口へ伝え,それぞれの約款・精算方法に従う。すべての保険金が実費だけを補填するとは限らない一方,すべてを重複して受け取れると判断することもできない。

第5 海外で支払った医療費と医療費控除

1 外国の医師への支払も対象になり得る

所得税法73条は,居住者が自己又は生計を一にする配偶者その他の親族に係る医療費を支払った場合の医療費控除を定める。非居住者については同法165条が医療費控除の規定を適用対象から除いており,海外赴任・移住の場合は居住者期間と支払時期を確認する必要がある。
国税庁の「海外旅行先で支払った医療費」は,外国の医師への医療費も控除対象となると説明している。日本の公的保険から給付されるかと,税の医療費控除の対象となるかは別の問題である。
ただし,病院への支払全額が対象になるとは限らない。所得税法施行令207条は「一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額」とし,診療・治療等の対価を定めている。健康診断,予防目的の支出,旅行そのものの費用等を治療費と混同しない。

2 外貨で支払った医療費の円換算

国税庁の同Q&Aは,治療費を外国通貨で支払った場合,支払日の電信売相場と電信買相場の仲値(TTM)で円換算して控除額を計算すると説明している。
海外療養費の支給決定日の売レートと同じではない。精算表には原通貨,外貨額,支払日,換算レートとその確認資料を残し,給付決定額は決定通知書から別に転記する。
カード決済による円建て精算や複数回の支払が絡む場合も,外貨の請求書と実際の決済記録を保存し,どの支払に関する換算であるかを明らかにする必要がある。

3 補填金を差し引き,控除額と還付額を区別する

所得税法73条は,支払医療費から「保険金、損害賠償金その他これらに類するものにより補てんされる部分の金額」を除くとしている。海外療養費や治療費を補填する旅行保険金等は,対象となる医療費と対応させて確認する。
国税庁によれば,補填金はその給付の目的となった医療費を限度として差し引き,余りを他の医療費から差し引かない。
控除額は,対象医療費から補填金を引いた額から,原則10万円(総所得金額等が200万円未満の場合はその5%)を差し引き,上限200万円となる。これは所得から控除する金額であり,同額の税金が戻るという意味ではない。
例えば,その年の対象医療費が100万円,対応する補填金が60万円,差引基準が10万円という仮定なら,医療費控除額は30万円である。還付額は所得,税率,既納付税額等によって異なる。

4 申告時に保険金が未確定の場合

国税庁は,申告時に補填金が未確定の場合は見込額で計算し,後日確定額と異なった場合は修正申告又は更正の請求で訂正すると説明している。
保険金が翌年入金となることだけを理由に,医療費を支払った年の控除計算から無視してはならない。申請控え,見込額の根拠及び支給決定通知をひとまとめに保管する必要がある。
医療費控除の明細書を作成し,医療費通知で記載を簡略化した部分を除き,領収書は確定申告期限等から5年間保存する。海外療養費の申請で原本提出が必要な場合は提出前に写しを残し,税務上の確認に備えて原本の提出先も記録しておくとよい。

第6 相談・申請前の確認順序

①受診時の日本の公的医療保険の加入資格と,旅行か治療目的の渡航かを確認する。
②患者,医療機関,診療内容,請求主体,通貨,支払日,実際の支払者を整理する。
③公的保険と旅行保険の申請書類・期限をそれぞれ確認する。
④医療費ごとに,支払額,給付見込額,確定給付額,最終負担を対応させる。
⑤医療費控除では,納税者の居住者判定,対象年分,生計関係,対象費用,円換算及び補填金を確認する。
⑥病院請求の内容に争いがある場合は,費用の説明・同意資料を保存し,保険会社や必要に応じて現地の法律専門家へ相談する。

一般的な旅行準備は「海外旅行前・旅行中・帰国時に確認する公的情報」,交通事故の賠償と医療費控除は「交通事故の慰謝料に税金はかかるか」で扱っている。

第7 出典

①所得税法73条・165条,所得税法施行令207条。法令原文を令和8年10月8日に確認。
https://laws.e-gov.go.jp/law/340AC0000000033
https://laws.e-gov.go.jp/law/340CO0000000096

②全国健康保険協会「海外療養費」。対象・算定・必要書類・換算日・時効の案内。
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/benefit/overseas_medical_expenses/

③外務省「海外旅行保険加入のおすすめ」。
https://www.anzen.mofa.go.jp/c_info/hoken.html

④国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」及び補填金未確定の場合のQ&A。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120_qa.htm

⑤国税庁「No.1122 医療費控除の対象となる医療費」及びQ4「海外旅行先で支払った医療費」。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122_qa.htm

国税庁の説明は行政解釈・手続案内である。資料整理・相談順序・数値例は本記事の提案であり,個別の診療・保険給付・税務申告の認定結果ではない。