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非享受目的の著作物利用はどこまで許されるか――複製,上映,著作権法30条の4及び49条1項2号(AI作成)

第1 結論

著作物を試験、解析又は技術開発のために端末へ記録し、その後に人へ見せた場合は、全体を一つの「利用」として扱わず、少なくとも①端末への記録という複製、②画面での再生という上映、③その後の目的変更を分けて検討する。

非享受目的の複製が著作権法30条の4で許されても、その複製物を後に鑑賞のために利用すると、同法49条1項2号により複製を行ったものとみなされ得る。30条の4を一度満たせば、その複製物を後の目的で自由に使えるわけではない。

第2 行為を複製と上映に分ける

著作権法21条は複製権、22条の2は上映権を定める。映像等をタブレット、サーバー又は記録媒体へ保存する行為は複製として検討し、保存された映像を画面で再生する行為は上映として検討する。

同じ端末を使う一連の行為でも、支分権、要件及び権利制限規定は同じとは限らない。行為ごとに「誰が、いつ、どの著作物を、どの方法で、何人に、何の目的で利用したか」を表にする。

第3 著作権法30条の4の要件

著作権法30条の4は、著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し、又は他人に享受させることを目的としない場合に、必要と認められる限度で、方法を問わず著作物を利用できると定める。

確認すべき要件は、①利用時の目的が非享受目的か、②利用がその目的に必要な限度か、③著作物の種類・用途と利用態様に照らして著作権者の利益を不当に害しないか、である。文化庁は、技術開発の試験、情報解析、人の知覚による認識を伴わない電子計算機処理等を例示している。

名称だけで判断せず、実際に人が表現内容を鑑賞することが予定されていたかを確認する。
非享受目的と鑑賞目的が併存する利用は、30条の4の適用対象外である。
もっとも、人が実際に映像を見たという結果と、利用者がその人に思想又は感情を享受させる目的を持っていたことは別の問題である。
利用の説明、対象者の募集、画面の向き、全編再生、人の視聴を止めたか許容したか等を対応させ、目的の併存を具体的に判断する。

作画技術の習得を目的とする漫画教室でも、著名な漫画を手本として複製・配布し、受講者が模写し、その作品を投影して吟味する利用について、30条の4が当然に使えるわけではない。
文化庁の令和元年10月24日付け解説問7(PDF15頁・本文8頁)は、これらの例に一般に享受目的も併存すると説明する。
同条の適用を否定しても、引用などの他の権利制限が使えるかと、運営者の教材複製・受講者の模写の主体が誰かは、別に検討する。

第4 上映権と「公に」の要件

上映権は、著作物を公に上映する権利である。そこで再生行為については、まず「公に」に当たるかを検討する。著作権法2条5項は、「公衆」に特定かつ多数の者を含むと定める。

少人数であれば常に公衆でないとはいえず、参加者の特定性、人数、相互の人的結合、利用主体との関係及び利用の継続性を具体的に確認する。複製が適法であっても、上映が別に権利侵害となる可能性がある。

店頭の体験参加者など不特定の者に映像を提示する場合は、実際の視聴者が少数でも、その不特定性を含めて「公に」の要件を判断する。
「見る必要はない」と伝えたことだけで、上映行為や公衆への提示を当然に否定することはできない。
上映権の成立要件を先に確認した上で、その利用について30条の4等の権利制限が認められるかを別に判断する。

第5 目的外使用と49条1項2号

著作権法49条1項2号は、30条の4の適用を受けて作成された複製物を用い、その著作物の思想又は感情を享受し、又は他人に享受させる目的で利用した者を、21条の複製を行ったものとみなす。

したがって、試験・解析用に適法に保存したファイルを、その後、説明会、顧客へのデモ、職員の鑑賞又は宣伝等へ転用する場合は、当初の複製だけでなく目的外使用を再確認する。別の権利制限規定、許諾又は引用等の要件が満たされるかも行為別に検討する。

端末内のファイルを直ちに削除したとしても、それまでに成立した侵害が遡って適法になるわけではない。
他方、将来の差止めについては、利用を終了したか、別の保存物や再使用の計画があるかなど、侵害のおそれを別に確認する。
実験終了時の削除記録と、実験中の画面の提示方法・参加者への説明を、それぞれ保存することが有用である。

第6 実務上の確認表

行為主な権利主な確認事項
端末・サーバーへの保存複製権非享受目的、必要限度、権利者利益への不当な害
画面・プロジェクターでの再生上映権公衆性、参加者、場所、目的
保存物の後日の転用49条のみなし複製、利用態様に応じた支分権当初目的からの変更、許諾又は別の権利制限

第7 AI学習等との関係

AI学習、検索用インデックス又は品質評価であっても、30条の4が自動的に適用されるわけではない。学習・評価の過程で人が著作物の表現を鑑賞する目的があるか、生成物として元の創作的表現を回答させることを目的とする仕様か、必要限度を超えた利用か、著作権者の市場を不当に害するかを確認する。

プログラムの調査・解析では、本来の効用を得るために機能を利用する場合と、調査のために実行する場合を分ける。
30条の4第3号の実行に関する括弧書きだけから、解析のための実行にも同条全体が常に適用されないと結論付けず、非享受目的、必要な範囲及び権利者の利益への影響を具体的に検討する。
解析用の複製・改変と、その後の業務利用、納品又は配布も別の行為であり、後日の享受目的の利用では49条1項2号及び二次的著作物について同条2項3号を確認する。

内閣官房国家サイバー統括室「サイバーセキュリティ関係法令Q&Aハンドブック」Ver.3.0(令和8年10月)Q25・本文117~122頁(PDF実頁137~142頁)は、プログラムの解析を扱う行政の説明である。
同Q&Aが紹介する知財高裁平成22年4月27日判決は、現行30条の4を適用した判決ではなく、個別事情の下で損害を否定した判断である。
利用契約、解析委託及び外部AIへの送信は、著作権の制限とは別に検討する。
https://security-portal.cyber.go.jp/guidance/pdf/law_handbook/law_handbook_3.pdf#page=137

解析の実務手順と、同判決・原審・政府Q&Aの関係は、次の記事で整理する。
ソフトウェアの解析・リバースエンジニアリングは適法か―著作権法30条の4・利用契約と実務の確認事項(AI作成)
https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/20/software-reverse-engineering-chosakuken-keiyaku/

第8 関連記事

固定カメラ映像・編集映像の著作物性――撮影の工夫,シーンの選択・配列及び類似映像(AI作成)

複製、上映、公衆性及び目的の認定を段階に分ける具体例は、令和5年司法試験知的財産法第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した44項目と5段階の重み付け(AI作成)の設問3も参照されたい。

漫画・イラスト教室の教材と著作権―コピー・上映・模写と営利教室の許諾確認(AI作成)では、営利教室の教材コピー・上映・配布と、受講者の自主的な模写を分けて整理する。

第9 出典と確認範囲

法令はe-Gov法令検索の著作権法2条5項、21条、22条の2、30条の4及び49条1項2号を確認した。制度趣旨は文化庁の平成30年著作権法改正の公式解説・Q&Aを確認した。

設問構造は、法務省の令和5年司法試験論文式試験出題の趣旨及び令和5年司法試験の採点実感(選択科目)の知的財産法部分を確認した。本記事の作成では判例秘書の新規検索をしておらず、公衆性、目的外使用又はAI学習に関する裁判例を網羅したものではない。

令和8年10月20日までの追補では、プログラム解析に関する知財高裁平成22年4月27日判決(平成21年(ネ)第10070号)とその原審(大阪地裁平成21年10月15日・平成19年(ワ)第16747号)について、判例秘書の事件情報・判決本文と裁判所の原文を照合した。
この確認は、上記の公衆性、目的外使用又はAI学習の裁判例を網羅するものではない。
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-80152.pdf
https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-38146.pdf