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行政文書の「情報の単位」と業務支障の立証―最高裁令和7年6月3日・6月6日判決(AI作成)

第1 二つの判決から得られる結論

行政機関は,表の「備考」欄又は報告書の一つの項目に不開示情報が含まれる可能性があるというだけで,その欄又は項目の全部を当然に不開示にできるわけではない。行政文書の構造に応じて合理的に区切った範囲ごとに,不開示情報該当性を審理する必要がある。

また,「開示すると監視を免れやすくなる」「委託先が率直に記載しなくなる」といった一般的な説明だけでは足りない。判決の対象となる情報,既に公表された情報,行政機関が委託先へ示した具体的な基準,委託先の知見が公知か独自か及び開示により実際に生じる支障を認定する必要がある。

この結論は,最高裁令和7年6月3日第三小法廷判決(令和5年(行ヒ)第335号)及び同月6日第三小法廷判決(令和6年(行ヒ)第94号)の裁判所公表全文による。いずれも平成28年法律第51号による改正前の情報公開法を適用した事件であるため,現行事件では適用時点と条文沿革を別に確認する必要がある。判例秘書は本記事作成時点で検索していない。

第2 最高裁令和7年6月3日判決

1 事案と二つの破棄理由

事件は,警察庁長官が保有する文書の名称欄・備考欄等の不開示を争ったものである。最高裁は,一部を破棄して東京高裁へ差し戻した。

第一の破棄理由は,違法判断の基準時である。不開示決定取消訴訟では,不開示決定がされた時点で行政文書に不開示情報が記録されていたかを審理すべきである。原審は,その後の変更決定までに加筆・変更された情報を基準として判断しており,基準時を誤った。

第二の破棄理由は,備考欄の審理方法である。原審は,不開示部分の内容を特定できないとして備考欄を更に細分化せず,各欄を一体として判断した。最高裁は,備考欄には多様な情報が記録されることが一般的であり,複数の小項目が設けられていることもうかがわれたため,国に情報構造を明らかにさせ,合理的に区切られた範囲ごとに判断すべきであったとした。

2 多数意見と個別意見を区別する

多数意見は,いわゆる「情報単位論」そのものを全面的に否定したわけではない。国側へ釈明を求めず,情報構造を特定しないまま大きな欄全体を一体として判断した審理不足を問題とした。

宇賀克也裁判官は,個別意見で,情報単位論が部分開示の範囲を必要以上に狭める弊害を詳しく指摘した。同意見は実務上重要であるが,多数意見の判示と同一ではない。準備書面では,「最高裁が情報単位論を否定した」と一括せず,多数意見の審理方法と個別意見の理論的批判を分けて引用する必要がある。

3 原告側が求めるべき釈明

不開示部分そのものを閲覧できない原告は,文書ごとに次の点を特定するよう国側へ求める。

  • 不開示部分に小項目,見出し,セル,箇条書き又は定型欄があるか
  • 各部分が相互にどのような関連を有するか
  • どの部分を開示すると,情報公開法5条各号のどの「おそれ」が生じるか
  • 容易に区分して除くことができない具体的理由は何か
  • 同一文書又は同種文書で既に開示済みの部分がないか

第3 最高裁令和7年6月6日判決

1 機能性表示食品の検証報告書

事件は,消費者庁が外部機関へ委託した機能性表示食品の検証事業の報告書について,検証手法,基準,データ,考察内容及び問題点等の不開示を争ったものである。原審は,開示すれば事業者が事後監視や問題点の指摘を免れやすくなり,委託先の率直な検討も困難になるとして,不開示情報該当性を認めた。

最高裁は,そのような抽象的説明だけでは足りないとした。消費者庁が委託先へ具体的な基準を示した事情はうかがわれず,委託先が用いた知見も,事業者が通常知り得ない独自のものか不明であった。したがって,開示により事業者が監視を免れやすくなると直ちにいうことはできず,検討結果の指摘が困難になる具体的理由も示されていないとして,原判決を破棄して差し戻した。

2 「おそれ」を具体化する項目

行政側が業務支障を主張する場合は,少なくとも次の事実を文書の該当部分と対応させる必要がある。

項目確認する事実
非公知性検証基準・手法・閾値が公表資料,学術文献又は業界実務から通常知り得ないものか
行政の関与行政機関が委託先へ具体的な基準又は重点を指示したか
潜脱方法開示されると,どのような手順で監視を免れることが可能になるか
既存の開示評価結果,届出資料,ガイドライン等が既にどこまで公開されているか
将来業務への影響委託先の記載萎縮又は検証精度の低下が,どの文書・契約・運用から認められるか
開示の公益予測可能性,事業者による改善,行政コストの低減及び透明性向上をどう評価するか

裁判官宇賀克也の補足意見は,5条6号の「おそれ」は抽象的可能性では足りず,法的保護に値する程度の蓋然性が必要であること,国が不開示情報該当性の立証責任を負うこと及び開示による公益も考慮すべきことを述べる。これらは補足意見であるため,法廷意見の具体的判示と区別して用いる。

第4 訴訟記録の作り方

1 文書構造表を作る

開示請求書,不開示決定通知書,変更決定,理由説明書,開示済み文書及び同種文書を並べ,ページ・欄・小項目・セルの単位で表にする。不開示部分を直接見られなくても,前後の見出し,罫線,定型様式,別件開示及び頁数から構造を推定できる場合がある。

文書・頁欄又は小項目開示済み情報不開示理由原告側の反証
対象文書名称・備考・評価欄等同一欄の一部,他年度,同種文書5条の該当号と具体的なおそれ公知資料,既開示資料,行政の説明の不整合

2 基準時を固定する

原処分後に行政文書が加筆・変更された場合,どの時点の文書を審査対象とするかを最初に整理する。6月3日判決は,不開示決定取消訴訟では,不開示決定がされた時点の文書に不開示情報が記録されていたかを判断すべきとした。後の変更決定,追加開示又は文書更新があっても,原処分の違法性判断と,訴えの利益・請求の減縮等を混同しない。

3 主張と証拠を一対一で対応させる

国側の主張が「今後の事務に支障がある」にとどまるときは,支障の発生経路,対象業務,頻度,重大性,既存の安全策及び代替手段を分けて求釈明する。原告側は,公表ガイドライン,学術文献,事業者向け資料,過去の開示決定,第三者委員会資料等により,問題の知見が既に公知であること,又は開示がむしろ業務改善に資することを立証する。

第5 判決の射程と現行法への注意

二判決はいずれも,改正前情報公開法を適用した特定事案の破棄差戻し判決である。差戻審で最終的にどの範囲が開示されるかまで確定したものではない。情報公開法5条3号・4号又は6号に該当し得る情報でも,具体的事実により不開示が認められる場合はある。

また,6月3日判決の多数意見が求めたのは,常に一文又は一語まで細分化することではなく,文書構造に即した合理的な区切りである。開示部分を容易に区分して除けるか,残部に有意な情報が記録されているか及び不開示情報と残部の関係を個別に検討する必要がある。

現行事件では,e-Gov法令検索「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」で現行条文を確認し,処分時の法令,改正附則及び対象行政機関の個別法令を照合する。

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第7 出典及び確認状況