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法律書デジタル図書館をめぐる著作権・出版権侵害訴訟―公開資料から考える法的論点と主張立証(AI作成)

本ブログ記事は主としてAIで作成したものです。

本稿は、2026年7月14日までに公表された当事者のプレスリリース、法令、文化庁資料及び関係者協議会のガイドラインを基礎としています。同日現在、訴状、答弁書その他の詳細な訴訟資料や判決は、公表資料から確認できていません。以下の「想定論点」及び当事者の主張に関する記載には、公開資料からの分析・予測が含まれます。

第1 はじめに
第2 本件訴訟の概要と背景
第3 公開資料から想定される法的論点
想定論点1:被告図書館は、著作権法第31条の権利制限の主体となる「図書館等」に該当するか。
想定論点2:被告図書館の公衆送信事業は、「営利を目的としない事業」といえるか。
想定論点3:被告図書館の公衆送信は、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当しないか。
想定論点4:送信対象は「図書館資料」といえるか。送信に先立つ複製及び出版権との関係はどうなるか。
想定論点5:被告図書館は、「特定図書館等」として求められる運用体制を具備しているか。
第4 実務上の主張立証と手続選択
第5 総括
第6 参照資料

* 文化庁HPの「著作権法の一部を改正する法律 御説明資料(条文入り)」7頁ないし14頁に「② 図書館等による図書館資料のメール送信等」(2023年6月1日施行部分)に関する解説が載っています。

第1 はじめに

2025年10月15日、中山信弘東京大学名誉教授をはじめとする有志の著作権者並びに著作権法80条1項2号に基づく出版権者である第一法規株式会社及び株式会社商事法務は、一般社団法人法律書デジタル図書館(以下「被告図書館」といいます。)に対し、著作権及び出版権の侵害を理由として、サービスの差止めと損害賠償を求める訴訟を東京地方裁判所に提起しました。株式会社有斐閣は、第一法規及び商事法務と共同でこの訴訟に関するプレスリリースを公表していますが、同リリースが表示する原告には含まれていません。

本件は、令和3年の著作権法改正によって創設された「図書館等公衆送信サービス」の制度趣旨や適用範囲の解釈が問われる、施行後の先例として注目される訴訟です。

本稿では、公開されている資料と現行法令を基礎として、当事者が公表した事実・見解と、公開資料から想定される法的論点とを区別しながら、双方の主張立証上の課題を検討します。

第2 本件訴訟の概要と背景

本件訴訟の根底には、令和3年改正著作権法で認められた図書館等による著作物の一部分の公衆送信(いわゆるメール送信やFAX送信)を可能とする権利制限規定(著作権法31条2項)の解釈があります。この制度は、利用者の調査研究を支援するため、図書館に来館せずとも資料の一部を入手できるという利便性の向上を目的としていますが、同時に、著作権者や出版権者の経済的利益を不当に害することのないよう、厳格な要件が課されています。

原告側の共同プレスリリースは、被告図書館のサービスが同制度の要件を満たさず、権利者の許諾を得ない大量の法律書・法律雑誌の複製及び公衆送信に当たるとの見解を示しています。これは原告側が公表した主張であり、訴訟において証拠により確定した事実ではありません。

一方、被告図書館側は、自らが図書館法2条の私立図書館及び著作権法31条3項の特定図書館等に該当し、公衆送信サービスは適法であって著作権侵害は存在しないとの見解を公表しています。ただし、被告側の2025年10月15日付プレスリリースは、同日時点で訴状を確認していないとしており、個々の請求原因に対する詳細な反論は示していません。

訴状、答弁書その他の訴訟資料が公表されていない以上、現時点で実際の争点を確定することはできません。以下では、当事者の公表資料、著作権法31条及び関係ガイドラインから想定される五つの法的論点を整理します。


第3 公開資料から想定される法的論点

想定論点1:被告図書館は、著作権法第31条の権利制限の主体となる「図書館等」に該当するか。

1 論点の内容

著作権法31条が定める複製・公衆送信の権利制限規定は、その主体を「図書館等」に限定しています。これは、図書館等が有する公共的・非営利的な奉仕機能に着目した権利制限規定だからです。

被告図書館が「図書館等」に当たるかは、名称や法人登記だけでなく、図書館法2条1項に従い、図書・記録その他必要な資料を収集し、整理し、保存して一般公衆の利用に供する施設であるか、その目的が教養、調査研究、レクリエーション等に資することにあるか、及び同項所定の主体が設置する施設であるかを、具体的な運営実態に即して検討する必要があります。

2 原告側(著作権者・出版権者)の公表見解

原告側のプレスリリースからは、被告図書館が「図書館等公衆送信制度」の適用を受けるために図書館という形式を整えたにすぎず、その実態は公共的な図書館とは異なるとの問題意識が読み取れます。

具体的には、「図書館の公共的使命とはかけ離れた」「同制度を悪用し」と述べ、後記の営利企業との関係やサービス開始の経緯を指摘しています。もっとも、これは原告側の公表見解であり、図書館法2条1項の各要素について訴訟上どのような主張がされているかは確認できません。

3 被告側(法律書デジタル図書館)の公表見解

被告図書館は、プレスリリースにおいて、自らが「図書館法2条が定める『私立図書館』として開館し、法律の専門図書館として利用者の調査・研究を支援している」と述べています。

また、2万冊を超える法律専門書・雑誌を蔵書資料として備え、蔵書閲覧のほか公衆送信サービス等を提供しているとして、図書館としての物的設備と基本的なサービスを備えているとの見解を示しています。

4 公開資料に基づく検討

本論点では、「実質的公共性」という条文外の独立要件を抽象的に立てるのではなく、図書館法2条1項の要件を一つずつ事実に即して検討する必要があります。

被告図書館については、一般社団法人が設置主体であること、2万冊を超える法律専門書・雑誌を備え、蔵書閲覧を行っているとの公表事実は、図書館該当性を基礎付ける方向に働きます。他方で、蔵書の選択・収集・整理・保存の実態、一般公衆が利用できる範囲、会員資格・開館日・閲覧方法、施設の継続性、意思決定主体及び設置目的を確認しなければ、図書館法2条1項の要件を充足するかは判断できません。

なお、図書館法上、一般社団法人が設置する私立図書館について、一般的な「届出」を図書館該当性の要件とする規定は確認できません。したがって、届出の有無ではなく、同項の実体要件を満たすかが問題となります。著作権法施行令1条の3が図書館法2条1項の図書館を「図書館等」に含めているため、同法上の図書館に当たれば、著作権法31条の主体要件を満たし得ます。

サピエンス社との資金・人的・業務上の関係は、それだけで直ちに図書館該当性を否定するものではありません。ただし、被告図書館の設置目的、資料提供の実態又は意思決定が、一般公衆の教養・調査研究等よりも特定企業の事業補完を中心とすることを示す事情が立証されれば、図書館法2条1項の目的要件又は次の想定論点で扱う「営利を目的としない事業」の判断に影響し得ます。

したがって、この段階で原告・被告のいずれかの主張が当然に採用されるとはいえません。裁判所に提出される定款、事業計画、蔵書管理記録、利用規則、利用実績、組織図及び関連会社との契約等を条文要件に対応させて評価する必要があります。


想定論点2:被告図書館の公衆送信事業は、「営利を目的としない事業」といえるか。

1 論点の内容

著作権法31条に基づく複製・公衆送信サービスは、「営利を目的としない事業として」行われることが求められています。これは、権利者に経済的損失を与え得る例外的な行為を認める以上、それが利益追求の手段として用いられることを防ぐための重要な要件です。

2 原告側(著作権者・出版権者)の公表見解

原告側は、被告図書館の事業が実質的に営利目的であるとの見解を示し、次の事情を挙げています。

  • 被告図書館の代表者が、株式会社サピエンス(以下「サピエンス社」といいます。)の代表者も兼務していること。
  • 被告図書館が、サピエンス社からの資金拠出により設立されたこと。
  • 被告図書館のサービスと、サピエンス社が提供するサービス「LION BOLT」とが酷似し、実質的に連携しているとの指摘。
  • 当初「LION BOLT Prime」と称して計画されていたサービスが、出版社からの警告を受けて中止を表明した後、形式を変えて被告図書館のサービスとして開始されたとの経緯。

原告側は、これらの事情から、被告図書館が一般社団法人という形式をとりながら、サピエンス社の営利活動と一体であると評価しています。これらも原告側の公表見解であり、訴訟で確定した事実ではありません。

3 被告側の公表内容と未確認事項

被告側のプレスリリースには、非営利目的に関する具体的な反論、会費等の算定根拠、サピエンス社との契約関係又は両法人間の資金移動は記載されていません。被告側はサービスが適法であるとの結論を公表していますが、訴訟上どのような事実を根拠として「営利を目的としない事業」であると主張しているかは、公開資料からは確認できません。

したがって、一般社団法人であること、会費等が実費弁償の範囲にあること又はサピエンス社から組織的・会計的に独立していることを被告側の既存の主張として扱うべきではありません。これらは、答弁書等が公表された場合に確認すべき事項です。

4 公開資料に基づく検討

本論点では、法人の名称や形式だけでなく、公衆送信事業の目的、収支構造及び関連当事者との取引を具体的に検討する必要があります。一般社団法人であることと、個別の公衆送信事業が「営利を目的としない事業」であることは同義ではありません。他方、会費又は利用料を徴収していることや、営利企業から資金提供を受けたことだけで、直ちに営利目的であるともいえません。

原告側が公表した、①代表者の同一性、②設立資金の出所、③事業内容の類似性、④旧サービス計画から被告図書館のサービス開始までの経緯は、両法人の事業的一体性を推認させ得る間接事実です。しかし、これらの事情から営利目的を認定するためには、サピエンス社が被告図書館の運営又は送信の対価としてどのような利益を得る仕組みであるかを、契約及び会計資料によって具体化する必要があります。

実務上は、被告図書館の定款・事業計画・予算書・決算書・総勘定元帳、会費及び送信手数料の算定資料、役員報酬、剰余金の使途、サピエンス社その他の関連当事者との業務委託契約・データ利用契約・ライセンス契約、債権債務及び資金移動、システム費用の負担、顧客紹介又は広告上の連携を確認する必要があります。

料金が実費を上回る場合も、その一事だけで結論を出すのではなく、料金の設定目的、継続的な収益の帰属及び使途を検討すべきです。反対に、被告図書館のサービスがサピエンス社の有料サービスへの顧客誘導又は同社のデータ資産の収益化の一部として設計されていることが具体的に立証されれば、原告側に有力な事情となります。

したがって、公開資料だけから「営利を目的としない事業」の要件を欠くと断定することはできません。原告側には両法人間の経済的利益の流れを特定する立証が、被告側には料金の実費性、意思決定の独立性及び関連当事者間取引の合理性を客観資料で示す立証が、それぞれ重要になります。


想定論点3:被告図書館の公衆送信は、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当しないか。

1 論点の内容

令和3年改正法では、公衆送信サービスを認めるに当たり、権利者保護の観点から重要なセーフガード規定が設けられました。それが著作権法31条2項ただし書です。

同ただし書は、たとえ他の要件を満たしていても、「当該著作物の種類及び用途並びに当該特定図書館等が行う公衆送信の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には、公衆送信を行うことができないとしています。

2 原告側(著作権者・出版権者)の公表見解

原告側の共同プレスリリースは、被告図書館が権利者の許諾を得ずに極めて多数の法律文献を公衆送信し、法律書・法律雑誌の無断複製物を検索後即時に送信するサービスを行っており、著作権者の利益及び専門書出版文化を害するとの見解を示しています。

この公表見解は、被告図書館の送信が正規の書籍販売、電子書籍、章・論文単位の販売又はデータベース提供を代替するとの主張につながり得ます。しかし、どの書籍・雑誌・版・章・論文について、いつ、何頁を、何回送信したことが請求の対象とされているのか、その時点でどのような正規の電子提供が存在したのかは、公表資料からは分かりません。

したがって、正規市場との競合は本件の重要な検討項目ですが、個々の対象著作物及び送信行為に即した立証が必要です。

3 被告側の公表内容と未確認事項

被告側のプレスリリースは、公衆送信サービスが著作権法に基づく適法なものであるとの結論を述べていますが、対象資料の選定方法、送信可能な分量、正規の電子提供との重複を回避する仕組み又はSARLIBから指定された除外資料の処理について、具体的な反論を公表していません。

被告側がただし書に該当しないと主張するためには、単に「一部分」であることや「調査研究目的」であることを示すだけでは足りません。対象となった版の入手可能性、電子版・データベース・章単位販売の有無、送信頁数、画質、送信回数、同一利用者による反復申請、送信までの時間及び除外資料の照合結果を、対象資料ごとに示す必要があります。

4 公開資料に基づく検討

このただし書は、正規の電子出版その他の商用市場との競合を防ぐ上で、本件の中心的な検討項目となります。ただし、その適用は「法律専門書を扱うサービスだから違法である」という抽象的なカテゴリー判断ではなく、対象となった著作物、掲載資料、版及び送信態様に即して行う必要があります。

文化庁の令和3年改正解説は、電子配信されている高額な新刊本について一章単位の有償提供が行われているのに、その配信開始と同時に図書館等からも一章単位で公衆送信する場合を、正規市場との競合が生じ得る例として挙げています。関係者協議会のガイドライン7も、正規市場の規模、電子配信の実施状況、資料の発行形態、利用者の属性、画質及び送信分量等を考慮し、SARLIBが指定した除外資料等を公衆送信の対象外としています。

実務上は、対象ごとに、①書名・雑誌名、版、発行日及び送信日、②送信した著作物の単位と頁数、③紙書籍の販売状況、④電子書籍、章・論文単位販売又はデータベース収録の有無・価格・提供開始日、⑤送信画質・形式・速度、⑥同一利用者による反復申請、⑦SARLIBの除外指定及び被告図書館独自の除外判断、⑧補償金の算定・徴収・報告を一覧表にして比較することが有効です。

ガイドラインが「一部分」を原則として各著作物の2分の1を超えない範囲としていることは、送信可能量の上限に関する運用基準です。その範囲内であれば常にただし書に該当しないという安全港ではありません。また、論文や判例評釈が独立した著作物に当たる場合でも、独立した著作物性と市場代替性は別の問題です。実際に論文単位の有償提供があるか、利用者の需要をどの程度代替するかを具体的に立証する必要があります。

正規電子版又は章・論文単位の有償提供と同時期に、同一内容を高画質で迅速かつ反復可能な形で送信していた事実が立証されれば、原告側の有力な事情となります。他方、対象が絶版・入手困難な旧版であり、正規の電子提供もなく、送信量・回数・画質が厳格に制限されていた場合には、被告側の反論余地があります。したがって、現段階でサービス全体がただし書に該当すると断定するのではなく、対象著作物及び送信行為ごとに判断すべきです。


想定論点4:送信対象は「図書館資料」といえるか。送信に先立つ複製及び出版権との関係はどうなるか。

1 論点の内容

著作権法31条2項の公衆送信は、特定図書館等が「図書館資料」を用いて行うものです。また、公衆送信のために必要な複製が同項の範囲に含まれるとしても、送信に先立って作成された全てのスキャンデータが当然に適法になるわけではありません。データの作成時期、作成主体、作成目的、原本との関係及び被告図書館への移転経緯を区別して検討する必要があります。

2 「図書館資料」の確認

関係者協議会のガイドラインは、「図書館資料」を図書館等が選択、収集、整理及び保存している資料と説明しています。寄贈資料については、図書館等に所有権・処分権限があれば対象となりますが、処分権限を有しない寄託資料は寄託条件に従うとされています。

したがって、送信の基礎となった紙の原本又は電子データについて、被告図書館がいつ、誰から、どのような契約で取得し、蔵書として選択・収集・整理・保存していたのかを確認する必要があります。関連会社が保有していたデータを利用した場合には、データの移転だけでなく、原本の所在、複製時の権限、被告図書館の処分権限及び蔵書管理記録が重要になります。

3 送信に先立つ複製及び外部委託

ガイドラインは、利用者からの申込受付以降の事務処理を外部事業者へ委託することを認めていますが、その場合も、図書館等が監督権限等を定めた契約を締結し、主体的に適否を判断することを求めています。

このため、個々の利用申込みに応じて被告図書館の監督下で必要な頁を複製したのか、それ以前に別事業又は将来の一括提供のため大量のスキャンデータが作成されていたのかは、法的評価を左右し得ます。後者である場合には、その先行する複製行為自体が31条2項の目的及び必要な限度に含まれるかを別途検討しなければなりません。

4 出版権との関係

原告には、著作権法80条1項2号に基づく出版権者が含まれます。同号の出版権を主張するには、各対象著作物について、設定行為が電磁的記録としての複製物を用いた公衆送信を対象としているかを、出版権設定契約及び登録関係資料等により確認する必要があります。

他方、著作権法86条3項は、31条による権利制限を出版権にも準用しています。したがって、31条の要件を満たす公衆送信であれば出版権との関係でも権利制限が問題となり、要件を満たさなければ著作権侵害と出版権侵害の双方が成立し得ます。対象書籍ごとの権利帰属、出版権の設定範囲、登録及び侵害行為を個別に対応させる必要があります。

5 主張立証上のポイント

原告側は、対象著作物、権利帰属、出版権の設定範囲、被告図書館が使用した原本又はデータ、複製・送信の日時及び具体的態様を特定する必要があります。被告側は、原本・データの取得経路、蔵書登録、選択・整理・保存の記録、利用申込み、複製作業記録、委託契約、監督記録及び送信ログを対応させ、各複製と公衆送信が31条の範囲内であることを具体的に説明することが重要です。


想定論点5:被告図書館は、「特定図書館等」として求められる運用体制を具備しているか。

1 論点の内容

公衆送信サービスを実施できるのは、著作権法31条1項に定める「図書館等」の中でも、さらに同条3項の要件を満たした「特定図書館等」に限られます。これには、責任者の設置、職員への研修、利用者情報の適切な管理、データの目的外利用を防止・抑止するための措置などが含まれます。

これは、電子データが容易に複製・拡散され得るというリスクに対応し、制度の適正な運用を担保するための重要な要件です。

2 原告側(著作権者・出版権者)の公表見解

原告側の共同プレスリリースは、被告が図書館等公衆送信制度を悪用しているとの見解を示していますが、著作権法31条3項の責任者、研修、利用者情報管理その他の要件について、どのような具体的な不備を主張しているかは公表していません。

したがって、被告図書館の内部規程や管理体制が実効性を欠くことを原告側の既存の主張として記載することはできません。この点が訴訟上争われているか、訴状等による確認が必要です。

3 被告側(法律書デジタル図書館)の公表見解

被告図書館は、プレスリリースで「一般社団法人図書等公衆送信補償金管理協会(SARLIB)に登録の上、著作権法31条3項が定める『特定図書館等』として」サービスを提供していると述べています。

SARLIBへの登録は、補償金管理制度に参加し、送信実績の報告及び補償金の支払を行うための重要な手続を経たことを示します。ただし、個々の送信が著作権法31条の全要件を満たすことを行政機関又は裁判所が終局的に認定したことを意味するものではありません。また、被告側は、専門家、文化庁著作権課及びSARLIBへの相談・説明を経て運営体制を整えたとの見解を公表しています。

4 公開資料に基づく検討

本論点は、被告図書館の内部的な運用体制という、外部からは見えにくい事実関係の認定が中心となります。SARLIBへの登録や専門家等への相談は被告側に有利な事情となり得ますが、それだけで個々の法定要件の充足が確定するわけではありません。

関係者協議会のガイドラインに照らすと、確認すべき証拠は、①責任者の選任書及び権限規程、②研修資料・実施日・受講者・出欠記録、③本人確認方法及び利用者情報管理規程、④利用目的を記載した申請書、⑤利用規約の説明・同意記録、⑥全頁への利用者ID、データ作成館名及び作成日の挿入、⑦誤送信防止策、データ保存期間及び破棄記録、⑧利用停止・事故対応記録、⑨除外資料を照合した記録、⑩SARLIBへの送信実績報告及び補償金支払記録、⑪外部委託契約及び監督記録です。

外部事業者が申込受付、複製又は送信作業に関与している場合には、被告図書館が個々の依頼の適否を主体的に判断し、委託先に対する監督権限を契約上・実務上行使していたかが重要です。利用者情報が関連会社に共有されていたかについても、現時点で共有の事実を前提とせず、委託契約、プライバシーポリシー、アクセス権限及びデータ移転記録によって確認すべきです。

被告側は、上記資料を時系列で整理し、制度開始時から継続して運用していたことを示す必要があります。原告側は、規程の不存在だけでなく、規程と実際の送信ログとの不一致、研修の未実施、除外資料の送信、反復申請の看過又は委託先への監督不在等を具体的に指摘することが重要です。

したがって、この論点も、関連会社との関係だけから結論を出すことはできません。法令及びガイドラインの各要件と客観的証拠を一対一で対応させて判断する必要があります。


第4 実務上の主張立証と手続選択

1 請求原因の組立て

原告側は、サービス全体を一括して「違法」と評価するだけでなく、対象著作物ごとに、①著作物及び著作者、②著作権又は出版権の帰属、③出版権については設定行為の範囲、④被告が行った複製・公衆送信の日時、対象部分及び具体的態様、⑤著作権法31条の要件を満たさないとする理由、⑥差止めの必要性、⑦損害及び因果関係を対応させて主張する必要があります。

著作権法112条1項は、著作権者及び出版権者等に侵害の停止又は予防を請求する権利を認め、同条2項は侵害の停止又は予防に必要な措置の請求を認めています。差止めの対象は、対象著作物、複製・送信行為及び必要な措置を可能な限り特定し、適法な資料まで過度に対象としないよう設計する必要があります。

損害賠償については、対象著作物ごとの送信回数、送信頁数、受信者数、利用料金、正規電子版又はデータベースの価格・販売数、許諾料及び被告の利益に関する資料が重要です。著作権法114条の損害額推定等に加え、損害額の立証が極めて困難な場合には同法114条の5による相当な損害額の認定が問題となります。

2 原告側が確保すべき証拠

原告側は、対象書籍・雑誌の現物、奥付、著作権又は出版権の設定契約・登録関係資料、電子版・章単位販売・データベース収録の提供条件及び販売履歴、被告サービスの利用申込みから受信までの画面・メール・送信ファイル、ヘッダー・フッター情報、送信時刻及び料金領収書を保存することが重要です。複数回の申込みを問題にする場合には、同一著作物の異なる部分が反復して提供されたことを、申込者、日時、頁及びファイル単位で整理する必要があります。

関連会社との一体性を主張する場合には、代表者の同一性や設立資金だけでなく、業務委託、データ利用、システム提供、費用負担、顧客誘導、収益帰属及び意思決定の関係を示す契約・会計資料が必要です。公開ウェブサイト、利用規約、プライバシーポリシー、広告、旧サービス計画の案内及び変更履歴も、時系列で保存すべきです。

3 被告側が確保すべき証拠

被告側は、図書館法2条及び著作権法31条の各要件に対応させて、定款、事業計画、蔵書目録、資料取得・寄贈・寄託契約、蔵書登録記録、一般公衆の利用実績、料金算定資料、会計帳簿、関連当事者間契約、責任者選任書、研修記録、利用者登録・本人確認資料、利用目的申請、送信判断記録、除外資料照合記録、送信ログ、補償金報告・支払記録、事故・苦情対応記録及び委託先監督記録を保存する必要があります。

とりわけ、各送信について、どの原本を蔵書として保有し、誰が、どの申込みに応じ、どの頁を複製し、どの基準で送信可能と判断したかを追跡できることが重要です。ログを後から整えるのではなく、通常業務として継続的に作成・保存していたことを示せれば、運用体制の実効性を裏付けやすくなります。

4 証拠収集と営業秘密への配慮

著作権法114条の2は、侵害訴訟で被告が原告主張の具体的態様を否認する場合に、相当な理由があるときを除き、自己の行為の具体的態様を明らかにすることを求めています。同法114条の3は、侵害行為の立証又は損害計算に必要な書類・電磁的記録について、裁判所が当事者に提出を命じる手続を定めています。送信ログ、会計データ、契約書及びシステム記録の取得を検討する際には、これらの規定を踏まえて、必要性と対象を具体化することが重要です。

他方、関連会社との契約、料金原価又はシステム構成に営業秘密が含まれる場合には、著作権法114条の6以下の秘密保持命令等を検討し、立証の必要性と秘密保護を両立させるべきです。

5 本案訴訟と仮処分

継続中の送信を本案判決前に停止させる必要がある場合、原告側には差止めの仮処分を申し立てる選択肢があります。ただし、民事保全法13条2項により、保全すべき権利又は権利関係と保全の必要性を疎明する必要があります。サービス停止を求める仮の地位を定める仮処分では、同法23条2項の「著しい損害又は急迫の危険」を具体的に示さなければなりません。

仮処分では迅速性が重視される一方、対象著作物を超えてサービス全体を停止することの相当性、継続する市場損失、被告及び利用者への影響、対象資料を限定する代替措置の有無が問題になります。対象書籍、版、送信部分及び正規市場との競合を絞って疎明することが、申立ての実効性を高めます。

6 相手方の反論への備え

原告側は、「SARLIB登録済みである」「一部分しか送っていない」「調査研究目的である」「知へのアクセスに資する」との反論に対し、登録が個別送信の適法性を終局的に確定しないこと、2分の1以下という運用基準がただし書の安全港ではないこと、社会的意義が法定要件の代替にならないことを、対象ごとの証拠で示す必要があります。

被告側は、「関連会社と一体である」「正規市場を代替する」「管理体制が形式だけである」との主張に対し、意思決定、契約、会計及びデータ管理の独立性、料金の算定根拠、送信対象の除外・制限、反復申請の防止、研修及び監督の実績を、客観的な同時作成資料で示す必要があります。

和解又は暫定的な運用調整を検討する場合には、正規電子版・章単位販売がある資料の除外、SARLIB除外指定への即時対応、新刊の送信猶予、送信頁数・回数の上限、反復申請の統合判定、第三者監査、関連会社との情報遮断及び過去ログの保存を組み合わせることが考えられます。


第5 総括

本件訴訟は、デジタル・ネットワーク時代における知のアクセスと、それを支える創作・出版文化の維持という、二つの重要な価値の調和点をどこに見出すべきかという、現代社会が直面する根源的な問いを司法の場で問うものです。

もっとも、公開資料だけから本件の結論を先取りすることはできません。被告図書館が図書館法2条の図書館に当たるか、公衆送信事業が営利を目的としないか、個々の送信が正規市場と競合して著作権者の利益を不当に害するか、送信に用いた原本・データが図書館資料であり、その複製が適法であるか、及び特定図書館等の人的・物的管理体制が実効的に運用されているかを、別々の要件として検討する必要があります。

原告側が公表した、関連会社との人的・資金的関係、旧サービス計画からの経緯、大量の法律文献を検索後即時に送信するという指摘は、非営利性及び正規市場との競合を基礎付け得る重要な事情です。ただし、それだけで結論が決まるものではなく、対象著作物、出版権の設定範囲、複製・送信の具体的態様、関連当事者間の契約・会計及び市場への影響を立証する必要があります。

被告側が公表した、私立図書館としての施設・蔵書、SARLIB登録、専門家等への相談及び運営体制の見直しも、被告側に有利な事情となり得ます。ただし、登録や相談だけで適法性が保証されるわけではなく、蔵書管理、利用申込み、除外資料の照合、送信ログ、補償金報告、研修、情報管理及び委託先監督が、個々の送信において実際に機能していたことを示す必要があります。

この訴訟を通じて、図書館による公共的な情報提供の重要性を再認識すると同時に、その活動が、新たな知を生み出す著作者や出版社の持続可能な経済的基盤を不当に損なうものであってはならない、という原則が具体化されることが期待されます。そして、出版社側もまた、利用者のデジタル環境における利便性向上のニーズに真摯に向き合い、より魅力的なサービスの開発を加速させることが、出版文化の未来にとって不可欠であると言えるでしょう。

本件の意義は、図書館か出版社かという二者択一にあるのではありません。権利制限の要件を、対象資料、送信態様及び運用体制に即して検証可能な形で示し、知へのアクセスと正規市場の双方を持続可能にする実務基準を形成できるかにあります。その意味で、本件の司法判断は、今後の図書館サービス、出版ビジネス及び我が国の知のインフラ全体に影響を与え得るものです。

第6 参照資料